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ロジカルシンキングを学ぼう!

情報が氾濫している現在において、社会人も学生も思考力を高めていくことは最も必要なスキルの一つになってきています。今回は初心者からでも学べるロジカルシンキング書籍を紹介します。

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出典:出版社HP

マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書

マッキンゼー流ロジカルシンキングのエッセンス

ロジカルシンキングというものに初めて触れる人間でも非常に馴染みやすく、ロジカルシンキングの大枠を理解するには最適の一冊です。施工テクニックもいくつか紹介されているので挑戦してみるのも面白いです。

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP

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これらについて、著作権法で認められるもの、規約等により許諾が明示されているものを除き権利者に無断で転載・複製・翻訳・販売・貸与・印刷・データ配信(Webページへの転載など送信可能化を含む)・改ざん等する行為は、固く禁じられています。

講義の前に

最初に、個人的なことをお話しますが、私は「ロジカルシンキング(論理思考)」が大好きな人間ではありません。どちらかといえば「直感」や「いい感じ」といった、自分の感覚を大事にするタイプだと思っています。それなのに、なぜマッキンゼーという、世間のイメージではロジカルシンキングの権化のような場所で修業をして、そのあともコンサルタント、エグゼクティブ・コーチとして「ロジカルシンキング」とは切っても切れない仕事をしているのか。
自分でも不思議なのですが、その理由は、マッキンゼーで体験した「ロジカルシンキング」が、すごくクリエイティブなものだったからだと思っています。
常に「自分なりの答え」「独自の知見」をつくり出そうとする姿勢は、クリエイティブな空気にあふれたラボのような印象でした。

*ゼロ発想”という言葉に象徴されるように、過去の経験や知見をもとにしながら、同時に、ときには無邪気なぐらいそれらに縛られず、「それ、いいね」とみんなを引き寄せるバリューのあるアウトプットを出すことが「当たり前」。
私が経験した「ロジカルシンキング」というのは、その人にしかできないクリエイティブな発想や仕事を生み出すためにあるものだったのです。
社会人になって最初に、その基本を叩き込まれたからこそ、私のように感覚的な人間でも「ロジカルシンキング」を身に付けたいと思ったわけです。
なぜなら「ロジカルシンキング」を武器にすれば、自分の思考がすごくスッキリしてクリエイティブな発想を生かすことができ、みんなに「それ、いいね」と賛同してもらえることが増えるのですから。
皆さんはどうでしょうか。「ロジカルシンキング」って、フレームワークだとか、なんとなく堅苦しいイメージで苦手。もしかしたら、そんなふうに感じている人もいるかもしれません。難しい内容を「理路整然と聞かされる」ような印象もありそうです。言っていることは正しいけれど、なんだかぐっとこない。誰だって、そんなものと付き合いたくはないですよね。この本で、お伝えするのは、それとはまったく逆で、皆さんの魅力やバリューをアップさせるための思考術と行動です。
本当の「ロジカルシンキング」は、「それ、面白い!どうやったらできるの?」と、相手が身を乗り出したくなるような提案や行動を生み出してくれるものなのです。
では早速、ちょっと考えさせられるケースを見ながら、「ロジカルシンキング」のオリエンテーションに入っていきましょう。

目次

講義の前にー

オリエンテーション
女性が喜ぶプレゼントの落とし穴?
クリティカルに考え、ロジカルに展開する

第1講義 論理思考は難しくない! ロジシンの基礎講義
香りのしないコーヒー豆では人は振り向かない
そもそも「論理思考」は、なんの役に立つのか?
論理思考と生まれつきの頭の良さは関係ない?
仕事ができる人ほど、対人で「論理思考」を大切にする
私のこと (My Value)ではなく、私たちのこと(Our Value)にするために
本物の論理思考は、みんなの行動も変えてしまう。
あらゆるビジネスで「論理思考」が必要になっている
本当は怖い「決め付け」の魔力
世の中をぜんぶロジカルに切り取ってみる
ゼロ発想を意識して生きる なぜ「論理的」なだけではダメなのか

第2講義 クリティカルに考える考えを深くするコツ
「知ってるつもり、わかっているつもり」から脱け出す
「相関関係」と「因果関係」を一緒にしない
毎朝バナナを食べると健康にいい?
当たり前のことを言わない
クリティカルな思考の3つの基本姿勢
クリティカルな思考を鍛える7つの習慣

第3講義 ロジカルに展開するわかりやすく伝える方法
説得力のない自分から卒業する
ロジカルにわかりやすく展開するときの3つのポイント
ピラミッドストラクチャーに展開する−頭の中を見渡そう
ピラミッドストラクチャーのつくり方
そもそも、なにからどう考えればいいのか
「演繹法」を使ってみる
まったく新しい思考をしたいとき
「帰納法」を使ってみる なにから話せば説得力が出るのか
「大丈夫です」は、大丈夫ではない

第4講義 クリティカルに発想する。それ、いいね
みんなと同じ発想から脱け出す
自分以外の人になりきって考える
アイデアが出ないのは「論理思考を使っていない」から
独自のユニークな発想ほど、論理思考が大きな武器になる

第5講義 クリシン+ロジシンで独創的な飛躍をする
論理的なだけでは食べていけない
「クリシン+ロジシン」を鍛えるノート
新規事業が盛大にコケるのはなぜ?
自分の考えが「うまくいく」シナリオをつくる
シナリオ分析で「未来」を見に行く
もっと自由に、本当にやるべきことのために生きる
「論理思考」の穴も知っておく

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP

講義のあとに

オリエンテーション
頭がいいのに、仕事もプライベートも なぜか「うまくいかない」人がいるワケ

女性が喜ぶプレゼントの落とし穴?
結婚3年目を迎える共働き30代のKさん夫婦。 広告会社で営業をしている旦那さんのKさんは、ここのところ仕事が忙しく、帰宅はだいたい深夜になっていました。(そういえば、もうすぐ結婚記念日か……)
終電に乗りながら、スマートフォンで《女性が喜ぶプレゼントランキング》というネットの記事を眺めていたKさん。女性が喜ぶプレゼントの1位にアクセサリーがランキングされているのを見ながら、ふと自分の奥さんのことを思い浮かべました。
そして、翌日。仕事の打ち合わせの帰りにジュエリーショップに立ち寄り、奥さんのために、かわいいネックレスを買ったのです。
(最近、一緒に買い物にも行ってなかったからビックリするだろうな)
結婚記念日の夜。その日も終電ぎりぎりで帰宅したKさんは、奥さんの喜ぶ顔を想像しながらサプライズでネックレスの箱を手渡しました。するとー。
奥さんは「ありがとう」とは言ってくれたものの、Kさんの予想に反して、それほど嬉しそうな様子ではありません。いったい、なぜ?
皆さんも、こんな経験があるのではないでしょうか。
相手のために良かれと思ってしたことや、言ったことが、なぜか受け入れられない。決して間違ってはいないはずなのに、伝わらなくて悔しい思いをする。
それどころか「本当に、ちゃんとわかってる?」と相手から不安に思われてしまっり……。 どうすれば、自分がいいと思ったことがちゃんと相手にも受け入れてもらえるようになるのでしょうか。この本では、そんな「正しいはずなのに、うまくいかない」現象を解き明かし、いろんなことが今よりも確実にうまくいくための正解”を論理的に導き出す方法をお伝えしていきます。
もっと日常的にいえば、自分が考えたこと、自分の発言や行動に、相手が笑顔で「いいね」と頷いてくれることが格段に増やせるようになればいいと思いませんか。
さて、先ほどのKさんの話に戻りましょう。じつは、この数週間前、少しだけいつもより早く帰宅できたときに、Kさんの奥さんはKさんに、ファッション情報のサイトを見せながら、ちょっと目を輝かせてこんなことも言っていたのです。
「ねえ、このネックレス良くない?」
このことを覚えていたKさんは、余計に、奥さんはほしがっていたネックレスをサプライズでもらってきっと喜んでくれるだろうと期待したわけです。
「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」
→ 「奥さんがネックレスをネットでチェックしていた」
→ 「結婚記念日にサプライズでプレゼントしよう」
きっとKさんは、こんな思考を働かせて奥さんを喜ばせたいと思ったわけです。
たしかにアクセサリーが好きな女性は多いでしょう。
キラキラしたものを見れば目も輝きます。Kさんの奥さんだってネットで見ていたネックレスが気になっていたのは事実ですが、それ以上にとても気になっていたのは「旦那さんのこと」だったとしたらどうでしょう。
本当は、最近Kさんが忙しすぎて、なかなかふたりの時間が取れないから、結婚記念日には奥さんはふたりで話がしたかった。そのきっかけ”がネックレスの話題だったのかもしれません。お互い忙しい毎日で、いつもより早く帰宅した Kさんと話ができる時間が嬉しくて、結婚記念日も、少し早く帰ってきてくれるかもしれないと密かに期待していた…。
でも、実際はいつものように時間が過ぎていってしまった。もし、それが事実であれば、「女性が喜ぶプレゼントラ ンキング1位のアクセサリーをサプライズで渡したら、奥さんが喜ぶ」という論理展開は成り立っていなかったことになります。
では、Kさんの場合の“正解”は、なんだったのでしょうか。

クリティカルに考え、ロジカルに展開する
奥さんが結婚記念日にネックレスをもらって、嬉しいか嬉しくないかといえば当然「嬉しい」わけであり、奥さんを喜 ばすという意味においては、その選択は正解だったといえます。しかし、もし奥さんが結婚記念日にふたりで話す時間を持ちたかったのであれば、最適な解は、ネックレスよりも「いつもありがとう。すごく幸せだよ。ゆっくりふたりで食事しながら過ごそう」というKさんの言葉だったのかもしれないわけです。
人間は、近しい相手であっても、自分が「本当はこう思っている」ということや「こんなふうにしてもらったら嬉しい」ということをなかなか直接相手に伝えられないことがよくあるものです。
あれっ、この本はビジネスの現場で使えるロジカルシンキングの本だったはず。
なのに、なんで男女間のコミュニケーションの行き違いの話をしてるの?
そんなふうに思われるかもしれませんが、じつは、こうした「正解なのに、うまくいかない」現象は、ビジネスの現場、対クライアントとの人間関係や職場でもたくさん発生しています。そして、そのような現象を「伝え方の問題」として仕方のないことと思っていないでしょうか。

しかし、職場や取引先で「伝え方の問題」として片づけられていることが、じつは「論理思考」不足の問題だったとしたら、ちょっと、その対応策も変わってきます。
「あの人、言っていることは正しいけど、なんかしっくりこないんだよな」
「いつも言いたいことがうまく伝わらなくて後悔する」
「ちゃんとやったはずなのに、なんでダメだったんだろう」
「そんなこともわからないの? 言っている意味わかる?って上司に困った顔される」
「こちらがやってほしかったことと、まったく違うものが提案されて、その理由もわからず、ビックリしたよ」
私たちの周りでは、常にこんな言葉が飛び交っています。あまりにも日常的なので「仕方ない」と無意識のうちに諦めてしまっているかもしれません。
とはいえ、私たちはみんなKさんのように、できれば相手に喜んでもらいたい、相手にうまく伝えたい、相手を理解したいし自分のこともちゃんとわかってほしいと考えて行動しています。行き違いを望んでいる人はいません。
それなのになぜ、こんなにも多くの「うまくいかない」ことが起こるのでしょうか。
ここでもう一度、先ほどのKさんの思考と行動をふり返ってみます。
「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」 【前提ルール】
「奥さんがネックレスをネットでチェックしていた」 【調査観察] 「結婚記念日にサプライズでプレゼントしよう」 【結論行動】
一見すると、ちゃんと論理展開が成り立っているように思えます。
しかし、そもそも「前提ルール」とした「アクセサリーは女性が喜ぶプレゼントランキング上位だ」というのが、本当にKさんの奥さんにも当てはまっていたかどうか。
Kさんが最初にネットで見つけた《女性が喜ぶプレゼントランキング》は、じつは、独身女性を母集団にしたデータだったかもしれないのです。
既婚者の女性を母集団にしたアンケートだったら、異なる結果になっていたかもしれません。たとえば、案外、モノのプレゼントよりも「自分の存在が相手に幸せをもたらしている」という証になるような言葉や、「自分が大切にされている」と確認できるような言葉がほしいというのが、ランキングの上位にくるかもしれません。
ただ、そういった「心の深層にある本当の気持ち、感情=インサイト」は、日常ではほとんど表には出てこないもので す。もっといえば、当事者である本人も、自分の本当の気持ちに気づいていないことだってあるのです。
それなのに、表に見えている状況や目先の情報を「前提」にして、本当のところはどうなのかというインサイトを見極める「深い洞察」をしないで結論を出したり行動してしまうことで、「こんなはずじゃなかった」という悲劇”が発生するわけですね。
でも大丈夫です。私たちは、普段から基本的には「論理的」に考え行動することができています。ただ、そこにもう少しだけ「深さ」を加えられれば、いろんな場面で最適な“正解”を出せるようになります。

その方法=論理思考こそが、皆さんにお伝えしたいこと。
この本では、主にビジネスパーソンが仕事やプライベートのあらゆる場面で「うまくいく」ための論理思考術を、私がマッキンゼーで伝授されたエッセンスを交えて、わかりやすく、すぐ実践できるようにまとめて1冊の教科書にしました。
そもそも「ロジカルシンキング(論理思考)」とは、どのような思考のことをいうのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
ここでいう論理思考とは「クリティカルに考え(深い洞察による自分の考えを持ち)、ロジカルに展開する(わかりやすく伝える)」ということです。論理思考の基本は、たったこれだけです。論理思考の本質は、このようにシンプルなのですが、その中にはとても重要な視点が含まれています。それは、クリティカルに考える(深い洞察による自分の考えを持つ)という視点です。これがとても大切。クリティカルに考えるという視点があるか、ないかで「それ、いいね」と言われるかどうか、あるいはぐっとくるか、こないかが左右されます。
深い洞察から自分の考えを導き出すことこそが、本質に迫るような思考をすることにつながる。それが「本物の論理思考」です。
論理思考とは、ただ単に決まった公式、のようなものに当てはめて思考を形式化することではありません。クリティカルに考える(深い洞察による自分の考えを持つ)こととセットで行うのが「本物の論理思考」だということなのです。
世間でいう「ロジカルシンキング」が、最初から答えありきで、その答えに矛盾や間違いがないことを論理的に検証するものだとしたら、マッキンゼー流の「ロジカルシンキング」とは、常にゼロ発想、仮説思考で、その場に最適で的を射た「新しい答え」をクリエイティブ(創造的)につくっていくもの。
その思考作業は、みんなそれぞれの「センス」の違いを出すことができて、とても面白く、マッキンゼーでは、そうした「人を惹き付ける思考」で新しいバリューを出すことを「セクシー」と呼んでいました。この本では、そんなふうに本当にセクシーでぐっとくる、「クリティカル+ロジカル(深くてわかりやすい)」思考を「論理思考」と呼んでいくことにしましょう。

読み進めていただくと、いかにいろんな場面で論理思考の「ある・なし」が、私たちの選択とその結果を左右しているかがわかると思います。
そして、大げさではなく、その積み重ねが「自分が望むもの」を手に入れられることにもつながっていくことが見えてくると思います。
ぜひ、今のうちに「マッキンゼー流ロジカルシンキング」を身に付けて、深い洞察とその結果がもたらしてくれる「うまくいく」人生を楽しんでください。

大嶋 祥誉 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2014/4/18)、出典:出版社HP

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

伝え方のスキルが確実に上がる

本書の特筆すべき点は、ロジカルシンキングを「相手に合わせて」「文章に落とす」実行可能な方法論を、徹底的にわかりやすく解説してくれていることです。この本を読むことで、「ロジカルシンキングを相手に伝わる形に変換する」スキルを身に付けることができるはずです。

山崎 康司 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2011/4/8)、出典:出版社HP

まえがき

日本語のハンディを乗り越える

ピラミッド原則は、世界中の一流経営コンサルティング会社においてレポート・ライティングの基本コンセプトとして広く採用されているライティング手法です。
バーバラ・ミント女史が1970年代にマッキンゼーで教え始めて以来、ピラミッド原則をまとめた著書The Pyramid Principle (邦訳『考える技術・書く技術』ダイヤモンド社)は10数カ国語に翻訳され、コンサルティング会社や調査会社の定番図書として定着しています。

私がこの本に出合ったのは、某米国系経営コンサルティング会社に入社した1984年のことです。このコンセプトに強く惹かれ紆余曲折を経て、1992年には企業顧客を中心にレポート・ライティングの教育指導に取りかかる一方、1 995年には同書の邦訳に、1999年には新版の刊行に携わるなど、かれこれ四半世紀にわたってピラミッド原則の普及に取り組んできました。

しかし今なお、心残りがあります。ピラミッド原則はグローバルに通用するものですが、いざ実践しようとすると、日本語特有の問題が足を引っ張るのです。
たとえば、欧米言語の方からすれば信じられないことかもしれませんが、日本語のおよそ8割の文章には主語がありません。主語への意識が極めて薄いのです。これは、考えを正確に表現し、ロジカルに組み立てる際にかなりのハンディキャップとなります。

また、日本語では接続詞を気安く使えてしまうせいか、前後のロジックを問わずに文章をつないでしまっても、何の違和感も持たれないという難点もあります。詳しくは本書で解説しますが、たとえば、「が」に至っては、順接(and)と逆説(but)の両方に使われているほどです。ピラミッド原則の基本は、考えを1つの文章で表現することにあります。しかし、こうした日本語特有の問題が、考えを1つに絞ることを妨げています。単に表現上の問題ではなく、考える行為そのものの足を引っ張っているのです。私たちは普段使っている日本語についてさほど意識することはありませんが、論理思考に苦手意識を持つ人が少なくない背景には、こうした問題があるのです。

本書はレポート・ライティングの初級者を対象に、とりわけ日本語特有の問題に配慮し、考えを表現する方法を提示、「日本人による日本人のための実践ガイド」に徹しました。また、日常業務ですぐに使えることを念頭に、メール・ライティングについてのアドバイスもまとめています。
読者の皆様がピラミッド原則を理解するのみならず、本書によって実践スキルを身につけ、日々の仕事に活かしていただければ幸いです。

2011年3月
山崎康司

山崎 康司 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2011/4/8)、出典:出版社HP

目次

まえがき 日本語のハンディを乗り越える

序章 誤解だらけのライティング
日本人がロジカル表現を苦手とする本当の理由

誰も教えてくれなかったレポート・ライティング
●誤解l 書きたいことを書きなさい
●誤解2 起承転結で書きなさい
グローバル・スタンダードを学ぶ
●レポートを受ける立場になって読んでみる
●考えるプロセスと書くプロセスを分ける

1章 読み手の関心・疑問に向かって書く
OPQ分析で読み手の疑問を明らかにする

読み手は何に関心を持ち、どんな疑問を抱くのか
読み手の関心を呼び起こすには
読み手の疑問を明らかにする「OPQ分析」
OPQ分析のコツ

2章 考えを形にする
メッセージを絞り、グループ化する「ピラミッドの基本」

メッセージの構造を明らかにする
●一度に覚えられる数には限界がある
●メッセージ構造をそのまま文書へ

グループ化と要約メッセージ
●メッセージが一般論にならないようにする
要約メッセージを文章にするときの「4つの鉄則」
●鉄則① 名詞表現、体言止めは使用禁止とする
●鉄則② 「あいまい言葉」は使用禁止とする
●鉄則③ メッセージはただ1つの文章で表現する
●鉄則④ 「しりてが」接続詞は使用禁止とする
「So What?」を繰り返す

3章 ピラミッドを作る
ロジックを展開する、チェックする

帰納法でロジックを展開する
●帰納法の仕組み
●「同じ種類の考え」を前提とする
●帰納法は「つなぎ言葉」でチェックする
●結論を先に述べる
演繹法でロジックを展開する
●ビジネスで演繹法を使う際の注意点
●演繹法は「前提」をチェックする
ピラミッド作成のコツ
●コツ① 1つの考えを短く明快に
●コツ② 縦と横の「二次元」を意識する
●1対1の関係に要注意
●1対1の番外編「イメージによる説得」

4章 文書で表現する
導入から結びまで、気をつけるべきポイント

文書全体の構造はピラミッドに同じ
●ケース「X事業投資」
●主メッセージの位置
●目次のつけ方
段落表現のビジネス・スタンダード
●段落は「改行+大きめの行間」で
文章のわかりやすさは「接続詞」次第
●ロジカル接続詞
●「しりてが」接続詞の使用ルール
●曖昧な接続詞は誤訳のモト
読み手を引きつける「導入部」
●OPQ分析を使って導入部を作る
「結び」で今後のステップを示唆する

終章 メール劇的向上術
毎日のメールでピラミッドが身につく一石二鳥作戦

メールが見違えるように変わる「感謝の言葉にPDF」
「1日1回ピラミッド」×4カ月

巻末付録 ピラミッドの基本パターン
参考文献

山崎 康司 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2011/4/8)、出典:出版社HP

序章 誤解だらけのライティング

日本人がロジカル表現を苦手とする本当の理由

私たちは社会人になるまで、レポート・ライティングを学ぶ機会がありませんでした。

感想文や作文で習ってしまった癖、日本語ならではのあいまいさ……
まずは、私たちがロジカル表現をする際にひっかかる日本語特有の落とし穴に注意しましょう。

誰も教えてくれなかったレポート・ライティング

あなたは今まで、職場の上司や仲間、学校の先生や先輩から、「君の書いたもの、ちょっとわかりにくいのだけど ……」「もう少しわかりやすく書いて欲しい」などと言われた経験はありませんか?

私自身も経営コンサルティング会社に入社して間もない頃、米国人上司からそのように言われたことがあります。レポート・ライティングはコンサルタントの生命線の一つですから、心中、穏やかではありません。その2カ月後、ニューヨーク本社から教育部部長(ハーバード・ビジネススクールの元教授)が日本オフィスにやって来てライティング指導が行われました。その結果、わずか数日間で、その部長からMIP (Most Improved Player、最も上達した人)と言われるまでに変身しました。

それまでの私のライティングはまったくの我流でした。問題は「英語」ではなく「考え方」にあったのです。基本さえ理解できれば簡単なのですが、残念ながら、日本の学校でレポート・ライティングを習う機会はなかなかありません。ほとんどの人が、社会に出ていきなり、もっとわかりやすいレポートを書けと言われるのです。

米国のほとんどの大学では、何を専攻するかに関わらず、ライティングが必修科目となっています。留学していた私の娘も1年次に「ライティング基礎」を、3年次に「ライティング上級」を受講しました。どちらも必修でした。ビジネス専攻の学生であれば、ビジネス・ライティングやスライド表現といった講座も欠かせません。
このように、ライティングに関する意識や教育の日米格差は歴然ですが、問題はそれだけにとどまりません。ビジネスがスピード化・グローバル化し、eメール1本で相手を説得したり、スライド・プレゼン一発で重要事項を決定したりすることが当たり前となった今、もはやグローバル企業ではライティングの下手な人は出世が困難となっているのです。それが現代の趨勢です。
さて、日本の教育においてライティングを勉強する機会がなかったということは、とりもなおさず、小中学校の国語の時間に習ったことが私たちの頭の中にこびりついていることを意味します。そのうち、典型的な誤解を紹介しましょう。

●誤解1 書きたいことを書きなさい

「あまり考えすぎると書けなくなるので、思いついたことを書くようにしなさい」
「自分の書きたいことをそのまま書きなさい」。
学校の先生からこう言われた経験をお持ちの方は多いと思います。しかし、この教えは万能ではありません。あくまで、日記や感想文などで、書くテーマが見つからない場合のアドバイスです。

ビジネス文書では、何について書くのかを決めるのは、あなたではありません。それは読み手です。あなたは読み手の知りたいことを、読み手の関心に向かって書くのです。読み手は忙しいのですから、自分に関係のないあなたの関心事や思いつきに付き合っている暇はありません。

この読み手のために書く、読み手を理解するという教育が日本ではほとんど行われていません。作文や感想文のみならず、中学や高校の国語の試験でも、書き手の意図を答えさせる問題ばかり登場します。小説ならまだしも、実社会では書き手の意図がわかりにくいレポートなど、それだけで失格です。
しかし、社会人になったからといって、急に読み手の立場を考えて書けと言っても無理な話です。皆さんはどうでしょう。ライティングの前に、「読み手の関心はどこにあるのだろうか」「読み手はこの文書で何を求めているのだろうか」と考えているでしょうか。

●誤解2 起承転結で書きなさい

「起承転結で書きなさい。結論は最後に書きなさい」
学校の先生からこのように言われて育ったせいか、起承転結という言葉が私たちの頭の中に呪文のように刷り込まれています。
そもそも起承転結とは、起句・承句・転句・結句の4つから成る絶句と呼ばれる漢詩の構成を表したものです。つまり、ストーリー構成の一つの型を示しているに過ぎません。物語を考える際は便利でしょうが、レポート・ライティングの構成とは無関係です。

さらにやっかいなのは、結論を最後に持ってくるメッセージ・スタイルが、無用な摩擦を避けて和を尊ぶ日本の社会風土にマッチしていたことです。その結果、起承転結は「結論は最後に」という教えとして私たちの中にすっかり定着してしまいました。

ビジネス文書では、結論は冒頭に書くのが原則です。読み手は、目下関心を持っている事柄について、いち早くあなたの考えを知りたいのです。ただ、そうわかっていても、結論によほどの自信がないと躊躇するのも仕方ありません。しかし、それは訓練と経験で克服できます。30年前の私がそうだったように、ライティングの基本的な考え方を理解し、習慣として身につければ、起承転結の呪縛を打破することはまったく難しいことではありません。

このように、国語教育から来る誤解や日本語特有の構造が足かせとなって、ピラミッド原則になじめない人は少なくないようです。逆に言えば、この誤解さえ解ければ、「なるほど」と思うことばかりです。

グローバル・スタンダードを学ぶ

「ピラミッド原則」は、1970年代半ばに経営コンサルタント育成とレポート・ライティング向上を目指して開発され、今や世界中のコンサルティング会社や企業、大学などで採用されています。英語であれ、フランス語であれ、中国語であれ、日本語であれ、何語であろうと考え方は同じ。ピラミッド原則は、考え、書くことの「グローバル・スタンダー ド」です。
一方で、これまで受けてきた自身の日本語教育と、ピラミッド原則の間には、大きなジャンプが必要であることも確かです。いきなり本題に入る前に、軽くウォーミングアップをしましょう。読み手の立場から、主たるメッセージを絞り、考えを整理し、組み立て、文書に落とし込むという一連の流れを、簡単なケースで体験します。

レポートを受ける立場になって読んでみる

次の文書(原文)は、某一流企業で実際に書かれた「事業本部の業績」レポートの一部を抜粋したものです。まずはこの文書を読み、書き手が何を伝えようとしているのかを考えてみてください。「この文書のどこが悪いの?」と思った方は、もう一度読み返してください。「これではわかりにくい」と思った方は、自分だったらどのように書き直すか、考えてみましょう。そのうえで、修正見本を見て両者の違いを考えてください。

原文

修正見本

原文と修正見本を見比べて、どう感じましたか?
今回の原文ぐらいの短さならば何とか我慢できるかもしれませんが、この調子で数ページの報告書を読まされてはかないません。
修正見本では「結論」が冒頭に明快に表現されています。また、結論を導く「3つの判断根拠」も箇条書きでわかりやすく表現されており、全体として「メッセージ構成」が一目でわかるようになっています。
両者の主な違いは、「書くプロセス」ではなく、その前段階の「考えるプロセス」にあります。メッセージ構成を文書上、一目でわかるよう表現するには、文書を書き始める前に、伝えたい考えを明快に組み立てておく必要があるのです。
考える作業で大切なのは、最も重要な考え(主メッセージ)を見つけることです。原文では主メッセージが埋もれてしまっており、一読しただけでは見つけにくい状態でした。

主メッセージを明確にした後は、それを説明するメッセージ(下部メッセージ)との関係を整理します。今回の例では、事業推移のステージを3つ(成長ステージ、急落ステージ、平衡ステージ)に切り分けて解説するのがわかりやすいでしょう。
このような一連の考えの構成を一目でわかるよう、ピラミッド型に配したのが、次ページの「メッセージ構成」です。ここまで来れば、あとはできあがったピラミッドを文書に置き換えるだけです。この「メッセージ構成」を頭に入れて、先ほどの「修正見本」を見てください。

考えるプロセスと書くプロセスを分ける

以上の例で察していただけたかと思いますが、もしあなたの報告書がわかりにくいとすれば、その原因のほとんどは書く前の段階、すなわち伝えるべき考えを明快に表現し構成するという「考えるプロセス」にあるのです。

メッセージ構成

山崎 康司 (著)
出版社: ダイヤモンド社 (2011/4/8)、出典:出版社HP

ロジカル・シンキング (Best solution)

コミュニケーション能力の向上

本書は、ロジカルシンキングのためのツールを説明してくれる本です。この本を読むことで物を考える際に,洩れなく被ることもなく最大限に考える方法が身に付きます。しっかりと仕事や学業で活用していきたい、そのために学びたいという人におすすめです。

照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2001/4/1)、出典:出版社HP

はじめに

変化するビジネス環境が求めるロジカル・コミュニケーション

企業を取り巻く環境は、ここ10年で大きく変化した。バブル経済がはじけ、これまで経験したこともない長い経済停滞が続いている。経済の低成長下で収益を上げるためにはどうしたらよいのか。かつてはおとなしかった株主のリターン追求に対するプレッシャーも増大している。大企業といえども安穏とはできず、血の滲むような経営努力が必要だ。

これまで以上にシビアに事業を見直すことが必要になり、日本企業同士の合併、買収なども日常茶飯事になってきた。
こうした変化に伴いビジネスにおけるコミュニケーションの領域でも、大きな変化が起きており、さまざまな業種のビジネスの前線にいる方々から、次のような問題意識を伺う機会がとても増えた。

「ソリューション提案型営業には、私たちが顧客の課題をどう捉えているのか、それをシステムでどう解決できるかを、十分に説得できる力が不可欠」(コンピュータネットワーク関連業界)

「顧客自身も、何が問題なのかはっきりとはわからないが、何かをしなければ、という危機意識が強い。顧客との議論の中から相手の問題意識を正確に読みとり、正しい答えを返す力が重要になっている」(サービス業)

「サプライヤーとも新しい関係を築かなければならない。今の状況はどうなっており、なぜ新しい考え方が必要なのか、その中で当社は何をしたいのか、そのためにサプライヤーにはどうしてほしいのか。これをきちんと理解してもらうことが非常に大事だ」(製造業)

「現場では人手不足のために仕事に追われ、コミュニケーションの機会が減ったせいか、通達等の情報が周知徹底されなくなってしまった。情報の発信源となる部門が今まで以上にポイントを明快にして伝える必要を感じている」(サービス業)

「業界再編の嵐の中で、他社と手を組むということが人ごとではなくなっている。
これからは、いままでのようになあなあなコミュニケーションで何とか仕事が進んでいく、などとは思えない。異なる背景や文化をもった人ともきちんと論理的に議論をして、自分の考えを正しく伝え、相手を説得できる力が必要」(金融業)
どのようなビジネスもコミュニケーションなくしては成り立たない。

ビジネスが変化すればコミュニケーションにも変化が求められるのは必然だろう。
ビジネス上のコミュニケーションの相手は、顧客、取引先、提携相手、あるいは株主や消費者、そして上司、部下、同僚、関連部門等、さまざまだ。

そうした多様な利害関係者に対して自分や組織の考えをわかりやすく伝えて納得してもらい、自分の思い通りに動い てもらう。これによって物事を先に進め、より早く確実に成果に結びつけることが、今まで以上に求められるようになっている。
このようなニーズに応える有効な手立てが「ロジカル・コミュニケーション」だと、筆者は考えている。ロジカル・コミュニケーションとは言葉は少々厳めしいが、要は「論理的なメッセージを伝えることによって、相手を説得して、自分の思うような反応を相手から引き出すことだ。

誰でも必ず「論理的な伝え手」になれる

ロジカル・コミュニケーションの重要性には多くのビジネスパーソンの方が気づいているのだが、残念なことにその大半の方が体系立った方法論を持たないために、具体的にどうしたら相手にわかりやすく伝えられるか、と暗中模索状態にあることだ。

確かに自己流で何とかなる、という考え方もあろう。しかし、自己流では自分が習熟したテーマならうまくいくが、全く新しいテーマや課題に突き当たったとたんにお手上げになり、再現性がない。また、自分ではできても、部下を指導することは難しい。さらに、組織全体でコミュニケーションの共通言語があれば、さまざまな活動の生産性をぐんと引き上げることができるが、この点でも自己流アプローチの寄せ集めには限界がある。
本書の狙いは、体系立った、しかもシンプルで実践的なロジカル・コミュニケーションの技術をご紹介することにある。
筆者2名は、ロジカル・コミュニケーションのスペシャリストとして仕事をしている。

その仕事の中心に経営コンサルティングの領域があるが、コンサルティングとは、クライアントの抱えるさまざまな課題に解決策を提言し、その実行を支援するものだ。したがって、クライアントにその直面する現状や、課題解決のための提言を論理的にきちんと説明して納得してもらい、実行を意思決定してもらう、というコミュニケーションは不可欠であり、極めて重要だ。
こうしたコミュニケーションの過程で、筆者は、コンサルティング・チームのメッセージが、クライアントの視点に立ったときに本当にわかりやすく、論理的に筋の通った説得力のある構成になっているのかを検証する。つまり、伝え手のメッセージを、受け手にとってわかりやすく納得感のあるものにするために、「盛り込むべき要素に過不足はないか」「提示された情報で本当にこの結論が導かれるか」「結論とその他の要素をどう構成すればよいのか」といった観点からアドバイスや具体的な改善案を作っていく。

本書では、このような仕事を実践する中で培ってきた「ロジカル・コミュニケーションの技術」を紹介する。
もちろん、この技術はコンサルティングや戦略立案などの特定領域だけで有効なものではない。例えば、顧客との商談や商品説明、あるいは朝礼での指示・報告・連絡など、日常業務のちょっとしたコミュニケーションにもすぐに活用でき、威力を発揮する。また、あえてこれを「技術」と呼ぶのは、これまでの経験から訓練を積めば誰でも身に付けられると確信するからだ。
コミュニケーションというととかく「あの人の書くものには天性の冴えがある」「彼の話術は生まれ持った才能だ……..」というように、センスや感性に巧拙の要因を求めがちだ。確かにそれも重要だが、ことビジネスにおけるコミュニケーションでは土台を築いた上で備わっていればなおよい、という類のものだ。その土台こそがロジカル・コミュニケーションなのだ。

本書の構成と特徴

本書は、次のような3部構成になっている。第1部では、論理的な伝え手になるための第一歩として、例えば、報告書を下書きするなど、コミュニケーションの具体的な準備に取り掛かる前に必ず確認したいポイントを解説する(第1章、2章)。
第2部では、伝え手の頭の中や手元にあるさまざまな情報やデータを、「論理」を作る「部品」として整理するための「論理的に思考を整理する技術」を紹介する。MECE(第3章)とSo What? /Why So? (第4章)の2つの技術だ。そして第3部では、個々の「部品」を「論理」に組み立てるための「論理的に構成する技術」を扱う。「論理」の構造を定義し(第5章)、ビジネスの実践に役立つ2つの論理パターン、並列型と解説型(第6章)、そしてその活用のポイントを解説する(第7章)。

MECE、So What? /Why So? という2つの「論理的に思考を整理する技術」と、並列型と解説型という2つの「論理的に構成する技術」。この4つの技術を駆使して論理構成までできるようになれば、ロジカル・コミュニケーションの土台を築くことができる。あとは論理構成した中身を論理的に書く・話すことになる。この書く技術や話す技術ももちろん重要であり、これも機会があればぜひ紹介したいが、本書では土台の論理構成までに焦点を絞る。

読者がこの4つの技術をマスターし、使いこなせるよう、企業研修等での経験を踏まえ、本書では以下の工夫を心がけている。

第1に、読者が自分の仕事に重ね合わせて理解できるように、「確かにこのようなことがある」というような、日本のビジネスの場面に即した事例をできる限り多く盛り込んだ。 第2に、4つの技術を実際に使ってみる手がかりとして、第3章、第4章、第6章、第7章の最後に「集中トレーニング」を設けている。この中には、解き方の解説と解答例を示した例題と、解き方のヒントをつけた豊富な練習問題が載録してあるので、挑戦してもらいたい。

最後に、最も望ましいのは第1章から読み進めることだが、関心や必要性が高い部分を選んで読み始めても理解できるよう、重要な点は各章で繰り返し解説をしてある。

ビジネスの環境が大きく変化する中で、たくさんのビジネスパーソンの方々が自己の能力開発に高い関心を持っている。あらゆるビジネスに必須の、ロジカル・コミュニケーションの技術を習得してもらいたい。その際のよき案内役として本書がお役に立てば、筆者としてこれ以上の喜びはない。

照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2001/4/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1部 書いたり話したりする前に

第1章 相手に「伝える」ということ
1 「自分しか見えない病」「にわか読心術師症候群」にかかっていないか?
2 相手に伝えるべきメッセージとは
◆確認1:課題(テーマ)を確認する
◆確認2:相手に期待する反応を確認する
3 何を言えば「答え」になるのか
4 なぜ、相手に自分の「答え」が通じないのか
◆結論が伝わらないときの2つの落とし穴
COLUMN 当初に設定した課題の「答え」ではないことを伝えたいとき
◆根拠が伝わらないときの3つの落とし穴
◆方法が伝わらないときの2つの落とし穴
COLUMN 感度のよい受け手になるために
感度チェック
COLUMN eメールを確実に読んでもらうために

第2章 説得力のない「答え」に共通する欠陥
1 話の明らかな重複・漏れ・ずれ
◆話の重複は「私の頭の中は混乱中」のサイン
◆話の漏れは、「一点突破、全面崩壊」につながる
◆話のずれが、そもそもの目的やテーマからの脱線を招く
2 話の飛び

第2部 論理的に思考を整理する技術

第3章 重複・漏れ・ずれを防ぐ
1 MECE ———話の重複・漏れ・ずれをなくす技術
◆MECE とは?
◆たくさんのMECE のポケットを作ろう
◆知っておくと便利なMECE のフレームワーク
2 グルーピング———MECEを活かした情報の整理
◆グルーピングとは漏れ・重複・ずれのない部分集合を作ること
COLUMN グルーピングの留意点

集中トレーニング1
(1) MECEに強くなろう
(2) グルーピングに強くなろう

第4章 話の飛びをなくす
1 So What? /Why So? ———話の飛びをなくす技術
◆So What? /Why So? する習慣をつける
2 2種類のSo What? /Why So?
COLUMN So What?/Why So? にあうんの呼吸は禁物だ
◆「観察」のSo What? /Why So?
◆「洞察」のSo What? /Why So?
◆洞察のSo What? は観察のSo What? なくしてならず

集中トレーニング2
(1) 「観察」のSo What? /Why So? に強くなろう
(2) 間違った「観察」のSo What? /Why So? に気づけるようになろう
(3) 「洞察」のSo What? /Why So? に強くなろう

第3部 論理的に構成する技術

第5章 So What?/Why So? とMECE で「論理」を作る
1 論理とは?
◆縦の法則So What? /Why So?
◆横の法則MECE
◆論理の基本構造
2 論理はコンパクトなほどよい
◆縦方向にどこまで階層化するのか?
◆横方向には、いくつに、どのように分解するのか?

第6章 論理パターンをマスターする
1 並列型
◆並列型の構造
◆使用上の留意点
◆適用ケース
2 解説型
◆解説型の構造
◆使用上の留意点
◆適用ケース
COLUMN 自分の専門分野ほど要注意

集中トレーニング3
(1) 論理パターンの基本をマスターしよう
(2) 非論理的なものを見抜く力をつけよう
COLUMN 宝くじがあたったら

第7章 論理パターンを使いこなす
1 論理パターンはこう使う
◆1つの課題に答えるとき
COLUMN 判断基準の納得感こそ大事
◆2つの課題に同時に答えるとき
COLUMN 課題はいくつ?
2 論理FAQ

集中トレーニング4
(1) 情報を論理パターンでわかりやすく構成しよう
(2)図表を使って論理的に説明しよう
(3)相手を納得させる論理構成の力をつけよう

おわりに

第1部

書いたり話したりする前に

コミュニケーションとは、相手と「メッセージ」のキャッチボールをすることだ。では、その「メッセージ」とは何だろうか。そして、「メッセージ」に必ず求められる構成要素とは何だろうか。
この2つの問いに、あなたは自信を持って答えることができるだろうか。
もし、「メッセージ」とは自分の言いたいことの要約、あるいは自分が伝えたいことのエッセンスだ、と考えたり、「メッセージ」の内容はその時々で千差万別になるのだから、構成要素を特定することなどできない、と思った人は、ぜひこの第1部を読んでもらいたい。自分では論理的に話すこと、書くことを心がけているのに、自分の考えが思うように相手に伝わらない、と悩んでいるビジネスパーソンは少なくない。こうした方々に筆者はいつも、同じアドバイスを繰り返している。
「人に何かを伝えるときには、自分の言いたいことをどうまとめようか、どう話そうか、どう書こうか、などと考える前に、必ず課題(テーマ)と相手に期待する反応を確認しよう」と。

自分の考えを整理したり論理構成する前に、この2つの確認をすることが、論理的な伝え手になるための第一歩だ。第1部では、このポイントを「相手に伝える」とはどういうことかをひもときながら解説しよう。

第1章 相手に「伝える」ということ

1 「自分しか見えない病」「にわか読心術師症候群」にかかっていないか?

相手に自分の考えを伝え、相手に「うん」と言ってもらう、あるいは相手から何らかのアドバイスをもらい、自分の考えをさらに練りあげていく業種や職種を問わず、仕事は人とのコミュニケーションすなわち情報や考え、提案をやりとりすることの連続だ。
電子メールなどの情報通信技術の革新によって、情報が相手の手元に届くまでのスピードは圧倒的に速まっている。

しかし、問題は、あなたの考えや提案が相手の手元に届いた後なのだ。相手がそれらを読んだり聞いたりした後に、あなたの考えや提案が相手の頭の中に正しくインプットされ、思考回路の中で正しく理解されるまでの時間、そしてあなたが望む反応が出てくるまでの時間――これをいかに短縮できるかがビジネスの世界では勝負になる。この部分は、さしもの情報通信技術でもいかんともしがたい。伝える人のスキルにかかっているからだ。
すると、自分の言いたいこと、自分が重要だと考えていることを相手に理解してもらうためにはどうすればいいのだろうかと悩んでしまう。そして自分の言いたいことをうまくまとめるために、提案書や報告書を何度も書き直す、あるいは、言い回しやフォーマット、はたまたデザインや色使いなどに凝る、ということに走りがちだ。

実は、ここに相手に伝わらない最大の要因が潜んでいる。大事なことは「あなた」が言いたいことではない。「あなた」が大切だと思っていることでもない。それが、相手にとって、伝えられることが期待されている「メッセージ」になっているかどうかなのだ。
コンサルタントと話をしていると、よく「プロジェクトチームとして次回のミーティングでクライアントに言うべき内容がまとまらない」という話が出る。もし5人のチームであれば、言いたいと思うこと、
すなわち伝える側の「思いの丈」は、五人五様であろう。しかし、極論すれば、ビジネスにおいて、伝え手の「思いの丈」など、受け手にとってはどうでもいいことなのだ。

ここで、「そうか、自分ではなく相手のことを考えなければならないのか。そういえば、相手のことを考えなさい、と物心ついた頃から言われ続けたな」と気づけば立派なもの。しかし、相手について考えるとき、往々にして次のような落とし穴に陥りがちだ。

「午後は山田部長と打ち合わせだ。部長は英語がきらいだ。カタカナ表記を極力なくさなければ。お天気屋の部長には機嫌の悪いときに難しい案件の話は御法度だ。今日の様子を午前中に会議のあった総務部に聞いておこう」

確かに相手のことを考えてはいる。しかし、問題は、伝え手が相手である山田部長のことを考えるうちに、部長との打ち合わせのゴールを、無意識に「とりあえず部長のご機嫌を損ねることなく打ち合わせを終わらせること」にしてしまっていることだ。おそらくこの打ち合わせで、この施策をやろうとか、止めよう、といった事業上の大きな意思決定がなされることはないだろう。継続検討や様子見、といった無難 な線で収まるはずだ。しかし、そんな打ち合わせを繰り返したところで、物事は何も進まない。そもそもそのような打ち合わせをする必要があったのか、ということになってしまう。

悲しいかな私たちは心理学者でも読心術師でもない。
自分以外の人間の気分や好みを100%把握することは、しょせん無理だ。それどころか、「にわか読心術師」になりすまして相手によって表現やニュアンスを変えているうちに、いつの間にか中身までもが少しずつ変わってしまい、蓋を開けると「あっちとこっちで言っていることが違う」という事態になりかねない。これではビジネスの“いろは”ができていないことになってしまう。コミュニケーション・スペシャリストという仕事でさまざまな業界のいろいろな企業におじゃましてみると、伝える中身以前に、この「自分しか見えない病」や「にわか読心術師症候群」に陥っているビジネスパーソンの何と多いことか。
自分の考えを論理的に伝える第一歩。それは逆説的だが、「いきなり伝える中身について考えない」ことだ。

2 相手に伝えるべきメッセージとは

「私が申し上げたいことは」という口上から話し始める人がよくいる。しかし、大事なことは「私が申し上げたいこと」ではなく「私がいま答えるべき課題(テーマ)について相手に伝えるべきメッセージ」であることは前述の通りだ。
では、メッセージとは何か。メッセージとは、次の3つの要件を満たしているものだ。
まず、そのコミュニケーションにおいて答えるべき課題(テーマ)が明快であること。

第2に、その課題やテーマに対して必要な要素を満たした答えがあること。
そして第3に、そのコミュニケーションの後に、相手にどのように反応してもらいたいのか、つまり相手に期待する反応が明らかであることだ。
「課題」「答え」「相手に期待する反応」の3点セットが、本書で定義するメッセージである。「私が申し上げたいこと」は、3点セットの「答え」の部分にすぎない。これは裏返せば、自分がある文書を手にしたとき、あるいは人の話を聞いたとき、課題はこれで、それに対する相手の答えはこれで、自分にこれをして欲しいと言っているのだな、ということが自分の頭に明快に残るかどうか。これらをクリアしてはじめてメッセージと言える。

「自分しか見えない病」や「にわか読心術師症候群」に陥らないためには、常にこのメッセージの定義に戻り、1課題(テーマ)を確認する、2相手に期待する反応を確認する、という2つの確認作業をする
ことだ(図1-1)。

まず、そのコミュニケーションにおいて自分が相手に答えるべき課題は何なのか、を確認することだ。それは10分間の説明でも、1時間の商談でも、報告書や提案書、企画書を作るのでも同じこと。「自分がいま、相手に答えるべき『課題(テーマ)」は何だろう」と自問自答してみよう。あなたの考えがどんなに素晴らしいものであっても、「課題(テーマ)」がずれていては、相手の検討の俎上にのることすらできない。それが上司や本社から与えられた課題であっても、自ら設定した課題であっても同様だ。

ビジネスの現場で、そもそも課題をまったく誤って認識していた、ということはまれだろう。誰しも最初は正しい課題認識のもとに検討を進める。しかし、検討を進めるうちに、気になる発見やそれまで見えていなかった課題などが出てくると、そちらに注意が奪われ、いつの間にか自分の頭の中で課題のすり替えが起こってしまう。検討に熱が入れば入るほど、これは自然な成り行きだ。

例えば「案件Aの事業化に取り組むべきか」という課題について検討していたとしよう。すると、案件Aは事業化どころか、すでに事業化の前提となる既存の販売網に重大な問題があることが明らかになった。しかも事態は急を要する。すると、事の重要性ゆえに、いつの間にかあなたにとっての課題は「既存の販売網が抱える重大課題をいかに解決すべきか」にすり替わってしまう。たとえこの問題意識自体は正しく、案件Aよりも既存の販売網について優先的に議論すべきであったとしても、案件Aの事業化について議論すべく集まったメンバーに、いきなり「今日は事の重要性に鑑み、既存の販売網の現状と課題について議論します」とぶちあげたらどうだろう。課題が変わったこと、なぜそうする必要があったのかを明示しなければ、あなたの望む議論は始まらないだろう。課題が“あさって”では、せっかくの提言も“あさって”なものになってしまう。

文書を書く前、人に説明を始める前に、「今日の課題(テーマ)は何だったっけ?」「これから説明するのは○○という課題(テーマ)についてだな」と課題を確認することを習慣づけてもらいたい。いくら 自分が「これは重要です!」と力んでみても、相手がその課題を「いま検討するべき課題」と認識していなければ、議論の土俵にすら登れない。

昨今はやりの提案営業の難しさは、まさにここにある。引き合い営業の場合、顧客自身が何か不便を感じていたり、何かを改善するために商品やサービスを注文するので、誰よりも顧客自身が課題を明快に認識している。ところが、提案営業は、言ってみれば提案をする側が勝手に「これがお宅の課題です」と考え、その課題への解決策として自社の商品なりサービスなりを提案するわけだ。顧客の側が、たとえ潜在的であっても提案者と同じように問題を認識してくれれば御の字だ。しかし、まったく問題意識のない順客の場合、商品やサービスを提案する以前に、なぜそれが必要なのか、どういう問題があるのかを認識してもらうこと、言い換えれば、商品やサービスの必然性を示すために顧客がいまどのような課題に直面しているか、について共通認識を作ることが大前提となる。ここに思いを至らせることなくサービスや商品をいくら勧めても、色好い答えが返ってくることは期待薄だ。

「自分しか見えない病」にかかっている人は「私がいま言いたいこと、言うべきことは何だろう」と考える。まずはこれを改めよう。正しいアプローチは「自分がいま、相手に答えるべき「課題(テーマ)』は何だろう」と自問自答することだ。すると自然に、「その『課題(テーマ)」に対する自分の答えは何だろう」という問いに行き着くのだが、その前にもう1つ、確認すべきことがある。

◆確認2:相手に期待する反応を確認する
会議を持つとき、文書を作るとき、それによって相手にどのようにしてもらいたいのか、どんな反応を引き出したいのか、という期待成果のないコミュニケーションは「独白」でしかない。そして昨今、「独白」につきあう暇のある企業も人も少ないのではあるまいか。
ビジネスにおいて、相手に何かを伝えるという行為自体が目的となるケースはわずかだろう。伝えることによって相手に理解してもらったり、相手のニーズや意見を引き出したり、あるいは相手に何かのアクションをとってもらうなど、相手に何らかの「反応」をとってもらうことが最終目的であるはずだ。伝えることは手段であり目的ではない。
例えば、上司と30分のミーティングをするとしよう。自分が説明する事柄で頭が一杯でミーティングに臨む人と、30分後に上司が席を立つときに、「あなたの言ったA、B、Cという選択肢の中では、私はBがよいと思う。次にはコスト分析と関係部門へのヒアリングをやってみたらどうか」という上司自身の考えや指示を引き出そう、と考えてミーティングに臨む人とでは、ミーティングの成果は大きく異なるはずだ。また、顧客に15分間でサービスの説明をするとしよう。これまた、とにかく15分で説明しよう、と考える人と、15分後に顧客から「では、うちの会社だったら具体的にどんなサービスをどのように提供してくれるのか?」という質問を引き出せれば成功だ、と考えながら説明に臨む人とでは、説明の中身自体も変わってこよう。

コミュニケーションの後に、相手からどのような反応を引き出せれば、そのコミュニケーションは成功と言えるのか。この質問にあらかじめ答えを用意しておくことは、「自分しか見えない病」予防の処方箋でもある。
こう言うと、営業に携わっている方の中には、「営業活動の目的は常に、売上を上げることであり、顧客に期待する反応などいちいち考えるまでもない」と思われるかもしれない。しかし、1回目の営業活動で受注に至ることはまれだろう。そこで、あらかじめプランを練る。
例えば、まず1回目の訪問では、自分と自分の会社、商品を知ってもらうことを目標とする。「へえ、xx株式会社がこんな商品を出したのか。なかなか面白い商品だ」と商品に関心を持ってもらう。
そして、2回目の訪問時には、当社の新商品は従来からある他社の商品と何が違うのか、その顧客にとってこの新商品を使うことでどのような便益があるのかを理解してもらう。新商品の競合優位性を知ってもらい、自分にとってのベネフィットを理解してもらうことが目的だ。顧客はその商品を使うイメージをぐっと具体的に持つことができるだろう。
そして、3回目で強力に動機づける。期間限定のお得なプランを用意したり、実際にその商品を使っている顧客の声を聞かせたりして、「それなら使ってみようか」の一言を引き出す。
営業マンであれば、誰しもこの手の営業の計画を練るはずだ。3回の営業活動の最終目的自体は「買ってもらう」ということであっても、それぞれのコミュニケーションで顧客から引き出したい反応を事前に考えておけば、情報を詰め込みすぎて顧客を消化不良にしたり、顧客から押し売りと思われたり、という事態を避けることもできる。また、うまくいかなかったときの軌道修正も容易だ。逆に言えば、どのような相手にもどのような状況にも同じセールストークを呪文のように唱える人には 、「このコミュニケーションで顧客からどういう反応を引き出したいのか」という発想がないことが多い。ビジネスにおいて相手に期待する反応は、次の3つで捉えればよいだろう(図1-2)。

伝える内容を相手に正しく理解してもらった上で、知っておいてもらいたい場合。
業務連絡、事務連絡などは、ほぼこのケースにあてはまる。
(2)相手に「意見や助言、判断などをフィードバック」してもらう伝える内容を相手に正しく理解してもらった上で、相手がその内容についてどのように考えるのか、賛成なのか反対なのか、何か抜けている点はないのかなど、相手から判断や助言、感想などを投げ返してもらいたい場合。ヒアリングやテスト・マーケティングで顧客のニーズを引き出す場合などがこれにあたる。社内での会議や報告などでも該当するものは多いだろう。

照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2001/4/1)、出典:出版社HP

マンガでわかる! 入社1年目からのロジカルシンキングの基本

正しく「考える」ことができるようになる

この本の良いところはロジシンでおさえるべきポイントが簡潔にまとまっていて、5分くらい中身をパラパラ見るだけでロジシンのツボが抑えられることです。企画書が煮詰まってしまった時や時間がない時に頼りになる本です。

かんべ みのり (著)
出版社: SBクリエイティブ (2016/2/27)、出典:出版社HP

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はじめに

「かんべちゃん、この会社で生き残りたかったら、自分の考えをもっちゃだめだよ」
サラリーマン生活3年目にして言われた衝撃のセリフを、私は今でも忘れることができません。当時の私は、イベント企画会社に勤務していました。同い年の先輩たちに少しでも早く追いつきたくて、サービス残業が当たり前の職場でがむしゃらに働きました。その結果、デザイン系の仕事も兼務していた私は、マウスのクリックのしすぎで利き腕が使えなくなってしまいました。
毎月の治療費は1万円超。家賃と治療費を払うと生活はカツカツです。あまりのしんどさに、そもそもの会社の仕事の進め方に疑問をもち、会社に意見を述べたところ、横で聞いていた上司に言われたのが先ほどの言葉です。そして会社から与えられた答えは「部署移動」、そして約半年間にわたる「何もするな」という指示でした。
今思えば私の伝え方も悪かったのかもしれません。一方、自分の考えをもっちゃだめ、と私に進言したおじさん上司は、くたびれたスーツで先の擦れた靴を履き、役員におべっかばかり使っています。ぞっとする未来が見えました。あのおじさんと同じくらいの年齢になった時、自分はどんなスタンスで仕事をしているのか……。
すぐに転職活動を開始し、ビジネススクールでMBAを取得することにしました。
ビジネススクールでは、最初に「クリティカルシンキング」という、ものを考える土台を作るための授業の履修が勧められています。ものの考え方の基本を身につけて、その土台の上にマーケティングやアカウンティングなどの知識を構築していくのです。
自ら学び、考える力を鍛えていくと自分の生活がすごい勢いで変わってきました。
指示待ちで受け身でいちいち上司の許可をもらって動いていた私が、自分から考えて先まわりして提案して、企画を進めるために必要な情報を自分で集めるようになりました。
そして、気づきました。
口では威勢のいいことを言っていても、自分の頭で物事をちゃんと考えて判断して仕事をしている人は、そんなに多くないのかもしれない、有言実行ができる人はあまりいないのかもしれない。
この本では、考えること、伝えることの2つを軸に、ビジネスパーソンとして身につけておきたい「考え方」の基礎をまとめました。
伝えるという点では、資料の見せ方についてこだわって書きました。ワードやパワーポイントの便利でかっこいい機能に惑わされ、結果として自己満足の塊みたいな、読み手のことをまったく考えていないアウトプットを出す人が多いからです。
また、フォロワーシップについての記述も加えました。これは、ある程度の中堅の年齢になってMBAを取得したあと、20代の頃を振り返り、部下としてああやっておけばよかったな、という自分の反省も踏まえています。
今、若手の方、これはチャンスです。他人である私の失敗と学びをぜひ自分の経験に追加して、成長を加速させてください。キャリア形成を考えた時、いきなり転職やMBA取得となるとハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。でも、考え方の基本を学ぶこと、仕事のコツを身につけることは今すぐできるチャレンジです。この本の主人公であるヤングかんべちゃん (20代の頃の私です……笑)といっしょに、学んでみませんか。

かんべ みのり (著)
出版社: SBクリエイティブ (2016/2/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章 「考える」ことができると人生は変わる
Prologue かんべちゃん「ロジカルシンキング」に出会う
「考える」とは、どういうことか

1章 根性と経験に流されない「正しく考える」方法
1-1 ビッグワードって何だ?
「みんな」の正体をつかもう
言葉と思考を「具体的」にするメリット
1-2 イシューを押さえる
昨年と同じでなぜいけないか
イシューとは「考えるべき問い」のこと
1-3 考え方の枠組み
MECEは、考えるための基本ルール
問題解決には、順番と方法がある
競争戦略「3C分析」
自社の立ち位置を見つける「SWOT分析」
世の中の環境を分析する「PEST分析」
2つのマトリクスで情報を整理する
[1章コラム] As is/To be

2章 「仮説思考」を学べばムダな仕事もなくなる
2-1 仮説を立てよう
仮説がなぜ必要か
2-2 仮説力を身につけよう
PDCAのサイクルを回せば人は必ず成長する
[|2章コラム] クイック&ダーティ

3章 上司と部下の行き違いを減らすには「前提」を確認しよう
3-1 前提を考える
リーダーシップとフォロワーシップ

4章 「君は何を言いたいのかさっぱりわからない」と言われないための伝え方
4-1 伝え方を考える
実際、「伝え方」で損することは結構ある
4-2 メールでの伝え方
忙しい時は「箇条書き」こそが気配りだ
4-3 文書での伝え方
デザイナーの視点を意識しよう
見やすい資料って?
グラフの罠には気をつけよう
[4章コラム] 定型文登録という裏技

終章 かんべちゃん、リーダーになる
Epilogue かんべちゃん晴れてリーダーに

あとがき

かんべ みのり (著)
出版社: SBクリエイティブ (2016/2/27)、出典:出版社HP

「考える」とは、どういうことか

社会人になると、「もっとよく考えてから発言しろ」とか「そのくらい自分で考えろ」とか、言われるようになります。
でも、簡単にそんなこと言いますけど……「考える」って一体、どういうこと?
私、これでも考えてますけど?
とりあえず自分なりに考えてみて再度結論をもっていっても、「まだ物足りない」「答えにたどり着いていない」「現実的に実現不可」と言われたり、自分で考えた意見を会議で伝えても、さらっと流されて歯がゆい思いをしたり……。
あれもこれも、「考え方」がちゃんとわからないから起こることです。考え方にも空手のように型があって、いくつかの基本を押さえ、自分の頭の中を整理することで問題解決につながります。それを知らないままだと、同僚に愚痴って終わり(こういう人は大抵、2週間後も同じことで愚痴っている)とか、上司の指示に従って終わり(失敗したら他人のせいにできる)とか、成功している人の人生を見て羨んで終わりという残念な結果になります。
「考える」ことは、プライベートでも大事です。

私は今年年女です(何回目のって? それは想像にお任せします)。海外生活も経験して、いろんな仕事もして、ビジネススクールに通ってMBAを取得して、出版もさせてもらったので、こんな年齢になると、友達や読者の方から相談を受けることもあります。
「転職しようかどうか迷ってるんですけど、かんべさんは転職してどうでしたか?」
「今付き合ってる彼が結婚を決めてくれなくて……」
「子育てしながらMBAってとれるかな……」
相談を受ける立場になって思うのは……こんなことを言ってしまうと身も蓋もないですが、「それって所詮他人の人生」ってことなんです。
もちろん、親身になって相談には乗るし、自分がどうやってきたかとか、考えの整理には付き合いますよ。でも、その結果を引き受けるのは相談者自身です。極端なことをいうと、相談者が、私が言ったことを実行して失敗しても私は痛くもかゆくもないんです。
人って自分のことじゃないと、結構好き勝手なことも言えるし、理想論も語れます。
だから、自分で考えてちゃんと自分の人生に責任をもち、自分の道を自分で決めて歩かないといけないと私は思います。
とはいうものの、悩み事の真っ只中にいる時は、なかなか自分のことが見えません。
ぐるぐるぐるぐると同じことを考え続け、心配事に支配されてしまいます。他人の意見や占い師にすがりたくもなります(私も2時間かけて占い師さんに見てもらいにいったことがありました。今から考えると笑い話ですが)。

医学的な見地から考察すると、人間が1つのことに集中できる時間はせいぜい10分程度なんだそうです。つまり1時間悩んでいるとしても、そのうち3分ほどは、最初と同じ問いに戻っているか、そもそも問題を解決する気がないのか、悩んでいる自分に酔っているのか、惰性で悩んでいるのか……ということになります。
なんともったいない時間の浪費でしょう。0分でサクッと考えてサクッと解決策を探って、残りの3分で美味しいものを食べにいったほうが有意義な1時間になると思いませんか。

「Control your destiny or someone else will.(自分の人生は自分でコントロールすべきだ。さもないと、誰かに コントロールされてしまう)」ジャック・ウェルチ(実業家)

仕事だって自分で考えて結果を出すことで、自分の成長につながるのです。ただ指示を待ってそれに従っているだけでは、機械と同じですよね(いや、ミスをしない分機械のほうが上かも?)。正しく考えて、自分で道を見つけ、結果を出していく。それが仕事の基本でもあるのです。
そして、自分で考えるということは、自分で答えを出し、それを実行することにつながります。良い結果も悪い結果も含め、自分で自分の人生を引き受けるということです。人にどうのこうのと適当なことを言われ、指示されたことばかりやって生きていくより、そっちのほうが面白いと思いませんか。

まとめ

人は他人の話なんてあんまり真剣に聞いてない。自分の頭で考えて行動しよう

かんべ みのり (著)
出版社: SBクリエイティブ (2016/2/27)、出典:出版社HP

「お前の言うことはわけがわからん! 」と言わせないロジカルな話し方超入門

伝わらない悩みが解決

図解が分かりやすく、文字を全部読まなくても右ページの図を見れば理解でき、見開き1ページで1つのコツを教えてくれる構成なのでスキマ時間を使って読みやすいです。優しく、実践的な内容の本ですので、ロジカル勉強が初めての人にもおすすめです。

別所 栄吾 (著)
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン; 新装版 (2019/7/12)、出典:出版社HP

本書に掲載した会社名、プログラム名、システム名などは、米国およびその他の国における登録商標または商標です。本文中ではTM、Rマークは明記していません。

目次

PART 1 「それ、根拠あるの?」と言わせない完璧な根拠の作り方
ROUND 01 理解してもらうための根拠を作る
ROUND 02 相手に納得させる
ROUND 03 事実を確認する
ROUND 04 あいまいな意見を具体化する
ROUND 05 本当に伝えたいことは何かをはっきりさせる
ROUND 06 丁寧に理由づけする
ROUND 07 結論まではっきり伝える
ROUND 08 主張を最初に伝える
ROUND 09 情報を整理してから伝える
ROUND 10 理由づけで主張の捉え方が変わる
ROUND 11 的を射た理由づけをする
ROUND 12 理由づけの違いに注意する
ROUND 13 前提条件を確認する
ROUND 14 三角ロジックを組み合わせる
ROUND 15 飛躍のない話をする
ROUND 16 相手からの反論に備える
ROUND 17 水掛け論を回避する
ROUND 18 三段論法を活用する

PART 2 「結局、なにが言いたいの?」と言わせない共感されるストーリーの作り方
ROUND 01 2手先、3手先を考える
ROUND 02 キーワードを連続させる
ROUND 03 網羅的に先読みする
ROUND 04 自問自答して間を埋める
ROUND 05 先の先まで準備する
ROUND 06 妥当性をたしかめる
ROUND 07 争点を見つける
ROUND 08 1つの争点で安心しない
ROUND 09 いきなり検索しない
ROUND 10 縦と横で情報を整理する
ROUND 11 筋道に三角ロジックを追加する
ROUND 12 ゴールから逆向きに考える
ROUND 13本当の原因を突き止める

PART 3 「それ、あんまり興味ないかも」と言わせない刺さるメッセージの作り方
ROUND 01 書くことで思考を整理する
ROUND 02 喜んで動いてもらう
ROUND 03 3つの理解で相手を動かす
ROUND 04 根拠を言葉にして伝える
ROUND 05 根拠に事例を添える
ROUND 06 手順も伝える
ROUND 07 暗黙知を形式知にする
ROUND 08 相手が知りたい結論から話す
ROUND 09 質問を使い分ける
ROUND 10 相手の役割を意識する
ROUND 11 何が得られるかを伝える
ROUND 12 相手の関心に合わせて話す
ROUND 13 要約文で説得する
ROUND 14 4つの質問でニーズをつかむ
ROUND 15 相手がほしい情報だけを伝える
ROUND 16 比較して説明する
ROUND 17 検討のプロセスを考える
ROUND 18 問題の本質を理解する
ROUND 19 相手が話そうとしたら待つ

PART 4 「お前の言うことはわけがわからん!」と言わせない伝わる構造の作り方
ROUND 01 必要最低限の情報で伝える
ROUND 02 詳しすぎない簡単すぎない
ROUND 03 話の要点は最大7つ
ROUND 04 たくさんある場合は詳しく
ROUND 05 タイトルで重要性を伝える
ROUND 06 トピックごとに段落を区切る
ROUND 07 要約文を段落の先頭に書く
ROUND 08 不要な情報を削る
ROUND 09 冗長な表現をしない
ROUND 10 短い文を心掛ける
ROUND 11 正しい日本語で書く
ROUND 12 比喩と図解でイメージさせる
ROUND 13 キーワードを強調する
ROUND 14 好感度を上げる
ROUND 15 熟知すると好感度があがる
ROUND 16 発問で惹きつける
ROUND 17 ダメよりも惜しい
ROUND 18 期待を相手に伝える
ROUND 19 思いつきで追加しない

あとがき

別所 栄吾 (著)
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン; 新装版 (2019/7/12)、出典:出版社HP

[練習問題アプリ付き]問題解決のためのロジカルシンキング

論理的思考力を鍛えるための練習本

問題に答えながら学ぶ構成となっているので、読むだけのものに比べ数倍の浸透力があります。問題数は全50問あり、ビジネス上のあらゆる場面を想定した問いになっていますので、それらの問題について考えていく中でビジネス全般の基本が学べます。

生方 正也 (著)
出版社: クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2017/3/27)、出典:出版社HP

「で、何を言いたいの?」
「わかりにくいんだよね、○○さんの話は」
「ちゃんと考えてしゃべってくれる?」

けっこう頑張って説明したつもりなのに、
こんな風に言われてしまう。

そう言われると、確かに自分でも
頭の中がごちゃごちゃしていて、
いまいちまとまってない……。

この本は、そんな人のためにつくりました。

ビジネスパーソンの重要スキルの
ひとつと言ってもいい
「論理的に考える」能力。

ぜひ本書+オリジナルアプリで、
その考え方を身につけてください。

はじめに

この本は、ロジカルシンキング(論理思考)の手法をベーシックなところから解説したものです。ロジカルシンキングとは、ひと言で言えば「筋道の通った考え方」ということです。
「ロジカルシンキング」という言葉を聞くと、「難しそう」「堅苦しい」「スピードが遅くなりそう」と感じる人もいるかと思います。しかし、実際にはロジカルシンキングはとてもシンプルで、柔軟で、スピーディな行動につながるものです。

ロジカルシンキングが難しそうに感じるのは、シンプルに考えていくと、驚くほど複雑なことを考えることができるようになるからです。逆に、ロジカルに考えずに複雑なことを考えるのはとてもできません。ロジカルシンキングが堅苦しく感じるのは、「筋道を通して考えるためのルールがはっきりしているから」です。しかし、見方を変えれば、そのルールから外れていなければ、どんな発想もよしとされます。逆にルールがなかったり、整然としたルールがなかったりするとき、むしろ発想が縮こまってしまうことはありませんか?自由に考えるには、むしろある程度のルールがあったほうが望ましいのです。

ロジカルシンキングを実践していると、スピード感に欠けるように感じるのは、完璧な答えを出そうとしてしまうからです。そうすると、「情報が少ないから判断できない」と感じてしまいます。ロジカルシンキングを実践する場合、手元にある限られた情報をもとに筋道立った仮の答え、つまり「仮説」を出していきます。仮説をもとに行動を取れば、思いつきとは違ったものになるでしょうし、新たに情報が加われば柔軟に変更できます。
こうして、ロジカルシンキングをしていくことで、自分の考えをスムーズに実行に移すことができるようになるのです。
冒頭で述べた通り、ロジカルシンキングとは「筋道の通った考え方」です。
何か新しい考え方のように感じるかもしれませんが、実は仕事やプライベートなど日常生活のほとんどの場面で、私たちは筋道の通った考え方をしています。

仕事での決断はもちろん、プライベートの予定を立てたり、買い物をしたりする時、自分なりに何らか筋道立てて考えているはずです。ロジカルシンキングは、そうした考え方の延長線上にあるものだと思ってください。その上で、より丁寧に筋道立てて考えてみるとどうなるか、いつの間にか筋道立った考え方ができなくなってしまうことがないようにするためにはどうするのか、というのがこの本で紹介している考え方です。
買い物のとき、気がついたら買う気のない商品を思わず買っていた。
そんな経験は誰でもあると思います。これは、いつの間にか筋道の通った考え方ができなくなってしまったからです。大した金額のものでなければ笑い話にもなるのでしょうが、月給の何割もするような商品の場合には笑い事では済まされません。

こうならないようにするためには、もともと何のために買い物をしようとしているのか、本当にいま購入しなければならない商品なのか、予算は適切か、といったことを考えなければなりません。ロジカルシンキングもまったく同じです。仕事で大きなミスにつながらないように、実現したいことを本当に実現するためには、筋道立てて考えることが必要になります。この本では、こうした考え方をするためのポイントについて紹介していきます。
この本は、大きく5つのパートに分かれます。

第1章では、ロジカルシンキングとは何かについてまとめています。
冒頭述べたことも含め、ロジカルシンキングは印象とは意外と違うものです。
その部分を確認してみてください。

第2章では筋道を立てるための考え方の基本を紹介します。
取っつきにくく感じるかもしれませんが、自分の考え方を振り返ってみると必ずこうした発想をしているはずです。

第3章では、問題解決に焦点を当ててみます。
トラブルへの対応や新たな企画を考えるとき、筋道立てて考えることは必須です。
その流れといくつかの手法を紹介します。

第4章は、相手に伝える場面でのロジカルシンキングの使い方がテーマです。
仕事では他の人とのコミュニケーションが鍵です。
そこをいかにうまくできるかは、 仕事ができるかどうかに直結します。
キーワードは「相手にとってわかりやすい」です。

第5章は少し発展的なテーマを扱います。
目標やPDCAサイクルや数値データ。
それぞれ一冊の本になりそうなものですが、それらもロジカルシンキングと密接に関わります。
また、「本を読んだだけでは身についたかどうか不安」「もう少し練習したい」と感じる人も多いでしょう。この本ではアプリで「身についたか」を確認できるようになっています。ぜひ腕試しでアプリにも チャレンジしてみてください。

本編に入る前に、最後に一点だけ。
ロジカルシンキングは使ってこそ意味がある、とよくいわれます。
そうすると、「なかなかうまく使いこなせなさそうだから、やめておこう」と考えてしまいがちです。ロジカルシンキングを使う場合、まずは「使ってみる」ことが大切です。
使っているうちにうまく使いこなすことができるようになります。

最初からうまく使いこなせるか不安なので使わない、というのは本末転倒です。
最初から自転車を乗りこなせる子どもは滅多にいません。
「うまく乗れないから自転車に乗らない」と言っていては、一生自転車に乗ることはできないでしょう。何度も転んでも、とにかく乗ってみる。そうして乗りこなせるようになるのです。
ロジカルシンキングもまったく同じです。うまく使いこなせるかどうかを気にする前に、とにかく使ってみる。そうしていくうちに、次第に使い方のコツも見えてきます。
もちろんしっかり使いこなせているかのチェックは欠かせません。そのときは、もう一度、本などで確認すればよいのです。

この一冊が、ロジカルシンキングを使いこなすための伴走者となれば、これほど嬉しいことはありません。

生方正也

生方 正也 (著)
出版社: クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2017/3/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに
各項目の構成&付属アプリについて

第1章 すべての仕事の基本は「ロジカルに考える」こと
01 「ロジカルに考える」とはどういうことか?
ロジカルシンキングとは
02 ロジカルシンキングはビジネスパーソンのOS
仕事における位置づけ
03 コミュニケーションと問題解決に活かす
ロジカルシンキングの活用場面。
04 ロジカルシンキングを実践するときの4つのポイント
ロジカルシンキングの基本姿勢
05 時間のない人こそロジカルシンキングを使え
思考・行動のスピードアップ
06 ロジカルシンキングに欠かせない3つの「目」
効果的に使うための視点

第2章 ロジカルに考えるための基礎
01 「目的」を明確にするのが最初の一歩
ビジネスで使う前提
02 全体像をつかむための「枠組み」を考える
思考の幅の確保
03 「モレ」や「ダブり」のない状態をつくる
MECE
04 観察事項から結論を導く演繹的な論理展開
論理展開の基本①
05 共通の事実から結論を導く帰納的な論理展開
論理展開の基本②
06 「結局、何が言えるか?」を考える問いかけ
So What?
07 問題の本質を探るため原因と結果を押さえる
因果関係

第3章 速く、深く、的確に考えるためのツール
01 問題解決は「4つのステップ」を踏む
問題解決のステップ
02 解決すべき「問題」は何か?
問題の明確化
03 2つの軸でシンプルに全体像をつかむ
マトリクス
04 問題点・原因・解決策を効率的に探る
ロジックツリー
05 切り分け方の幅を広げる
因数分解
06 プロセスを問題解決に活用する
プロセス分析
07 「なぜ?」を繰り返す
原因の把握
08 問題点同士の関係を図にする
因果の構造化
09 ベストな解決策をつくり、選ぶ
解決策の立案

第4章 ロジカルに伝える技術
01 「自分本位」の説明になっていないか?
説得力を高めるための3要素
02 論理の展開を図で整理する
ピラミッド・ストラクチャー
03 トップダウンのピラミッド・ストラクチャー
代表的な作成プロセス①
04 ボトムアップのピラミッド・ストラクチャー
代表的な作成プロセス②
05 相手の関心や知識レベルをつかむ
受け手の分析
06 「内容」+「手段」で説得の流れをつくる
ストーリーの作成
07 ロジカルに議論を進める
建設的な議論の条件
08 双方向のコミュニケーションを生み出す質問
質問の仕方
09 対立意見をまとめるための3つのステップ
意見が対立したときの対処

第5章 さらに問題解決力を磨くトレーニング
01 新しいアイデアを生むために「見方」を変える
視座・視野・視点
02 「適切な目標」を設定するにはどうするか?
目標設定のSMART
03 ロジカルシンキングを「PDCA」に活用する
仕事のマネジメント
04 「見える化」して考えをわかりやすくする
思考の可視化
05 数字をベースに客観的にものごとを見る
数値の活用
06 結論を導き出すために「比較」をする
ロジカルシンキングに比較を活かす
07 ロジカルシンキングはどうやって鍛える?
日常でできるトレーニング法

各項目の構成&付属アプリについて
◆各項目の構成
それぞれの項目の冒頭には、「困りごと」として、仕事の中で解決したい具体的状況を提示。本文でそうした状況を打開するのに効果的な考え方や知識を解説していきます。項目の末尾には、「使えるのはこんな場面!」として、そのパートで押さえておきたい知識や実際に使えるシチュエーションを短くまとめています。
◆アプリについて
iPhoneやiPadなど「iOS」のみ対応しています(※)。
AppStoreにて「問題解決ナビ」と検索してインストールしてください。
iOS以外のスマートフォン/タブレットをお使いの方や、パソコン等のブラウザから本サービスをお使いになる方は、下記のウェブサービスをご利用ください(本書のシリーズやアプリの最新情報なども随時掲載します)。
問題解決ナビ
http://www.monkai-navi.jp/
※ 2017年3月現在。なおiOSアプリとウェブサービスは、アカウントを同期させることはできませんのでご了承ください。

生方 正也 (著)
出版社: クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2017/3/27)、出典:出版社HP

考え方の基本がゼロからわかる! ロジカルシンキング見るだけノート

やさしく直感的に理解できる

タイトル通り、イラストでの説明が多く、隙間時間にパラパラと読み進めることができます。辞書のような感覚で気軽に読むことができる点がこの本の特徴です。ロジカルシンキングのとっかかりとして最適な一冊です。

はじめに

ロジカルシンキングはあなたの人生を豊かにする

自分ではいいアイデアを思いついたつもりなのに、上司や同僚の反応はイマイチで、プレゼンでも自分の企画はいつも不採用。
取引先との商談でもうまく相手を納得させることができなくて、クロージング(契約)までなかなかたどり着かない……。
あなたはこのような経験をしたことはありませんか?
心当たりのある方は、自分のアイデアが表面的なものになっていないかようか確かめてみてください。そうすると、大概そのアイデアはありきたりの陳腐なものだったり、大事なポイントが抜けていたりします。
要するに深く掘り下げて考えることなく、単なる思いつきで提案したアイデアだったわけです。
自分のアイデアや考えを他人に説明して共感・納得してもらうには、「論理」が必要です。
ここで言う論理とは相手に「なるほど」と思ってもらうための一本筋の通った思考の流れを指します。
たとえば、「AならばBである。BならばCである。ゆえにAならばCである」という有名な三段論法は十分に「論理的」といえます。
あるいは、「私は商品 A よりも商品Bのほうに販売促進費をかけるべきだと思う。その理由として、次の3つが挙げられる。ひとつは……」というように「結論一根拠」の関係が単純明快であるときも「論理的」です。
こうした「論理」が会話や文章、資料などに抜けているからこそ、あなたのアイデアは誰からも評価されないのです。
では、どうしたらいいのか。
答えは簡単です。「論理」が欠けているなら「論理」を身につければいいのです。
すなわち論理的思考を自分のものにすればいいのです。
論理的思考を英語で言えば「ロジカルシンキング (logical thinking)」。すなわち、本書のタイトルになっている言葉です。
ロジカルシンキングは、自分の考えを相手にわかりやすく伝えるビジネススキルとして、問題解決や情報整理などさまざまなシーンで活用されています。問題を分解して整理することで、仮説の検証に必要な情報と分析作業を明らかにし、適切な判断によって結論を導き出す思考法のひとつであり、筋道を立てて考えることが特徴です。
今やロジカルシンキングは、ビジネスにおける思考の「グローバル・スタンダード」になりました。仕事を進めていくうえでの必須のスキルといってもいいでしょう。
本書はこのような状況の下、ロジカルシンキングについて全く知らない方でもイラストと会話を多く含む文章でロジカルシンキングの基礎が俯瞰できるようになっています。ロジカルシンキングって何?という疑問から始まり、ロジカルシンキングを学ぶうえで重要な「ピラミッド構造」や「MECE(モレなくダブりなく)」のエッセンスが一気に学べます。
ビジネスシーンでリアルタイムにバリバリ頑張っている方から、これから企業に就職しようという方だけでなく、知的好奇心からロジカルシンキングのことを知りたいといった方にも楽しんでいただけると思います。
ロジカルシンキングはビジネスだけでなく、私たちの日常生活の中でも役に立っています。というのも、人間は生きている限り、絶えず何らかの判断を迫られているからです。たとえば、夕飯のおかずを決めることひとつをとっても、冷蔵庫にある食材や一緒に食べる家族の好みなどさまざまな要素を考慮しながら人は論理的に思考しているのです。
ロジカルシンキングを身につけることで、あなたの人生がより豊かになることを願ってやみません。

contents

Chapter 1
ビジネスパーソンに超必須のスキル ロジカルシンキングとは?
01 目標達成に向けた課題を正確に捉える
ロジカルシンキング
02 ロジカルシンキングの基礎の基礎
帰納法・演繹法
03 論理的思考は「A4 メモ書き」で身につける
A4用紙
04 マトリックスで頭の中を整理する
マトリックス
05 アクション・マトリックスを使う
アクション・マトリックス
Column01
ロジカルシンキングの対極にあるラテラル・シンキングとは?
用語解説①

Chapter 2
論理的に考える基本 「ピラミッド構造」
01 論理力を高めるピラミッド構造とは?
ピラミッド構造
02 物事を分析しながら具体性を高める
フェルミ推定
03 物事を分解するとき、最初の切り口(ゴールデンカット)が重要!
ゴールデンカット
04 隣り合う項目は同じような抽象度・重要度にそろえる
重要度、抽象度
05 ひとつの箱には明確に設定された項目を入れるべき
再定義
06 ピラミッド構造は四則計算で形作られている
四則計算(+-×÷)
07三段論法を使用する
三段論法
08 論理のブラックボックス化にご用心
ブラックボックス
09「逆」「裏」「対偶」の法則を利用してロジックをチェック
正、逆、裏、対偶
10 論理の外に目を向けることで、帰納法をよりうまく使いこなす
帰納法
11 サンプリングの偏りによるバイアスに気をつける
バイアス
Column02 ロジックツリーとは?
用語解説②

Chapter3
モレなくダブりなく考える「MECE」
01 物事を分解して考えるのに役立つ「MECE」とは?
MECE、ダブリ
02 物事の範囲を可能な限り大きく捉える
多角展開
03 考える要素にモレやヌケがあると的外れな思考に陥る
ビッグピクチャー
04 ビジネスマン必須のMECEのフレームワーク①3C分析
3C分析
05 ビジネスマン必須のMECEのフレームワーク②PPM
PPM
06 ビジネスマン必須のMECEのフレームワーク③バリューチェーン
バリューチェーン
07 ビジネスマン必須のMECEのフレームワーク④問題発見の4P
問題発見の4P
08 時間軸と空間軸の2つで全体像を理解する
ライフサイクル
09 手順を圧縮して効率を上げる
圧縮
10 MECEを活かした情報処理(グルーピング)を行おう
グルーピング
Column03 NSチャートで、モレのない思考法ができる
用語解説③

Chapter4
問題解決のためのロジカルシンキング
01 あるべき姿と現状のギャップを認識して正しい問題設定をする
ギャップ
02 問題解決の秘訣は「What」から「How」へ向かうこと
What、How
03 問題と考えている「主語」を明確にする
主語
04 「80/20」の法則を利用する
80/20
05 正しい答えにたどり着く鍵は「仮説」を持つこと
仮説
06 「仮説」を出発点として論点で構成されるピラミッド「イシューツリー」
イシューツリー
07 最初の仮説にとらわれずに仮説をどんどん進化させる
状況、再検証
08 「なぜ」を5回繰り返すことで、問題を多面的に捉える
なぜ
09 話の飛びをなくす技術―So What?とWhy So?
So What?、Why So?
10 So What?とWhy So?を習慣化する
習慣化
11 「観察」のSo What?とWhy So?
観察
12 「洞察」のSo What?とWhy So?
洞察
13 So What?とWhy So?、True?を繰り返す癖をつける
True?
14 論理のパターンを理解する①並列型
並列型
15 論理のパターンを理解する②解説型
解説型
Column04 ロジカルシンキングのデメリット
用語解説④

Chapter5
思考の質を高めるためのロジカルシンキング
01 情報量と思考量との意外な関係
情報量、思考量
02 徹底した懐疑論者になる
前提、常識
03 隠れた構造を明らかにする
構造
04 ミクロとマクロの眼を持つ
ミクロ、マクロ
05 グラフをうまく活用する
グラフ化
06 偽の相関を見抜く
擬似相関
07 思考停止ワードに気をつける
思考停止
08 一般解ではなく個別解を探る
個別解
Column05 「ロジハラ」にご用心!
用語解説⑤

Chapter6
コミュニケーションをロジカルにして説得力を高める
01 結論から先に述べる
アンサーファースト
02 「結論」→「根拠」→「たとえば」の3段ピラミッドで話す
結論、根拠、事実
03 ポイントを3つに絞る
3つ
04 CRFの原則を使えば、話に説得力が増す
結論、理由・根拠、事実・裏付け
05 パワーポイントを有効に使う
パワーポイント
06 一次情報、定量情報、中立情報の3つを重視する
一次情報、定量情報、中立情報
07 ピラミッド構造に物語性を与えて人の心を動かす
ストーリー展開、共感
08 話す前の2つの確認①課題(テーマ)を確認する
課題
09 話す前の2つの確認②相手に期待する反応を確認する
リアクション
10 結論が伝わらないときの2つの落とし穴①
食い違い
11 結論が伝わらないときの2つの落とし穴②
付帯条件
12 根拠が伝わらないときの3つの落とし穴①
ロジック
13 根拠が伝わらないときの3つの落とし穴②
曖昧
14 根拠が伝わらないときの3つの落とし穴③
前提条件、判断基準
15 方法が伝わらない2つの落とし穴①
公理
16 方法が伝わらない2つの落とし穴②
修飾語
17 話の重複は自分の頭が混乱中であるサイン
重複
18 話のモレは会話の信頼性を一気に崩壊させる
モレ
19 話のズレがそもそもの目的やテーマからの脱線を招く
脱線
20 話が急に飛んだりすると、相手を疑心暗鬼にさせる
飛び
21 ロジカルに説明したあとは相手にイメージを想像させる
イメージ
22 話している自分と相手を俯瞰してみる
メタ認知
23 根回しやアフターフォローも必要に応じて行うべし!
アフターフォロー
24 SDS法とPREP法
SDS法、PREP法
25 新しい取り組みを説明するときのPCSF法
PCSF法
26 相手が何を質問しているのかを見つける
パターン
27 話が伝わらなくなる4つのタブー
ポジション
28 プレゼンもミュージシャンと同じライブでダイブ
ダイブ
Column06 アンガーマネジメントを身につけよう!
用語解説⑥

Chapter7
思考実験で自然と身につく「ロジカルシンキング」の訓練
01 トロッコ問題
功利主義
02 テセウスの船
本物
03 アキレスと亀
視点
04 誕生日のパラドックス
イメージ
05 チキンゲーム
チキン
06 ジャガイモのパラドックス
意外性
07 臓器くじ
くじ引き
08 やっかいな新提案
感情
09 特定保健用食品の偽装
内部告発
10 タイムマシン物語
タイムパラドックス
11 トランプの奇跡
誤謬
12 抜き打ちテスト
論理的
13 共犯者の自白
囚人のジレンマ
14 コンピュータが支配する世界
ディストピア
Column07 ビジネスにおける論理的思考力を鍛えるためには「思考実験」は最適!
用語解説⑦
おわりに
参考文献

ロジカル・シンキング練習帳

ロジカルシンキングの基本が身に付く

メールを題材にビジネスに必要な粒度でのロジカルシンキングを学べます。少し入り組んだ内容のメールを書くときに特に役に立ちます。分かりやすい論理構成で、事例による練習ができるので、この本を参考に実践してみると良いでしょう。

照屋 華子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/6/22)、出典:出版社HP

この作品は、2018年7月に東洋経済新報社より刊行された書籍に基づいて制作しています。電子書籍化に際しては、仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

巻頭サンプルメール
この扉の裏に掲載しているメールは、各章のLessonで使用するサンプルメールです。 Lessonの学習を進めるときに、使用してください。

残念メール

改訂メール

はじめに

仕事に直結する論理的な考え方と書き方の基礎力を身につける

日本書の練習で身につく技術
本書は、ロジカル・コミュニケーションの「基本の型」を身につけるための練習帳です。ロジカル・コミュニケーションとは「わかりやすく論理的に、しかも速く、感じよくメッセージを伝えて、仕事を前進させる」ことです。誰にとっても普段の仕事に直結するものです。
拙著『ロジカル・シンキング』(共著)、『ロジカル・ライティング』を上梓してから、私はさまざまな業種のビジネス・パーソンのみなさんとロジカル・コミュニケーションの研修を行ってきました。その中で採り入れている、ロジカル・コミュニケーションの基礎を身につける練習を、本書にまとめました。この練習は、「こんな要素をこう整理して、こう並べる」という伝え方の「基本の型」を身近なビジネスメールを使って学ぶというものです。
「え、メール?」と意外に感じるかもしれませんが、研修で受講者のみなさんは、「基本の型」に自分や同僚のメールを照らして、自分や同僚のくせに気づきます。
「こうなっていないから、『で、何なの?』と言われるのか」
「これがないから、伝わらないのか」というように。
頭と手を動かしてエクササイズをすると、
「いつものやり方のここを変えればいいのか」
「論理思考をこう使えばいいのか」
「メールだけでなく、話すときにも適用できる」と納得します。
「メールの返事が速くくるようになった」
「会議で応用したら、すんなりOKが出た」
「部下のメールに変化が表れた」などの声も研修後にいただきます。
基本の型を作るためには4つの技術が必要です。
本書でもこの4つの練習に取り組みます。
①伝える前の準備の技術
②思考を整理・構成する技術
③構成を視覚化して表現する技術
④日本語表現を好感度も含めて整える技術
①と②はわかりやすく論理的に考えを整理する「ロジカル・シンキング」の技術、③と④は論理的に整理したものをわかりやすく表現する「ロジカル・ライティング」の技術です。思考整理と表現の両方の基礎の技術をバランスよく持つことがロジカル・コミュニケーションにつながります。4つを練習して「基本の型」を身につけること――。
それが練習の狙いです。
「技術」は効果的な練習を繰り返せば、誰でも身につけることができるものです。
また、基礎をしっかり身につけておけば、応用の技術――例えば、社内外への提案を構成するための論理構成のパターン、それらをプレゼンテーションする際の表現方法などもスムーズに習得できるでしょう。ロジカル・コミュニケーションの基礎力を磨きたい、部下の基礎力アップを図りたいという方に、本書をぜひ活用していただければと思います。

本書の構成−全体

第1章では、メッセージの伝え方の「基本の型」を解説します。
第2章から練習を開始します。

●第1章:全体像
メッセージの伝え方の基本の型を「これを満たすようにメッセージを伝えよう」というチェックリストの形で共有します。自分や部下の伝え方を照らしてみてください。「練習ポイント」が浮かんでくるでしょう。
ロジカル・シンキング&ライティングの予備知識がない場合は、第2章以降を順に練習していくとよいでしょう。既習の場合は、自分の練習ポイントに該当する章から取り組むことも可能です。
●第2章:準備
伝わるメッセージを構成するための準備を練習します。どんなに時間がないときでも、これだけは確認しておきたい2つの事柄と、その確認の方法を学びます。
メッセージが伝わらないと悩んでいる人の盲点になりがちな準備ですが、練習をすれば効果がすぐに出ます。
●第3章:構成
メッセージの構成を、ロジカル・シンキングをどう使うかを中心に練習します。「導入部→本論→結び」というメッセージのセクションごとに構成を練習していきます。準備で確認した要素で構成するのが導入部です。
本論の構成は、ロジカルシンキングの2つの考え方を用いて行います。1つは、テーマに対してずれることなく、So What?/Why So?(結局、何なのか?/なぜ、そう言えるのか?)を明確にすること。もう1つは、説明が羅列にならないように、また大きな欠けもないように、MECE (Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive;相互に重なりなく、全体として漏れがない)という考え方を活用して整理することです。2つの考え方を構造ボックスの図で練習します。
●第4章:視覚化
メッセージの要点が速く伝わるように、構成をパッと見てわかるように表す練習をします。頭の中で思考が整理・構成できても、相手にそのように読めたり、聞こえたりしなければ、メッセージは正確に伝わりません。しかも、仕事では、要点が速く伝わるための工夫が重要です。ロジカル・シンキングで構成した内容を、効果的に表現するコツを練習します。
●第5章:日本語表現
メッセージが伝わるために不可欠な日本語表現について練習します。あなたが普段使っている日本語は、伝えたい内容を的確に、しかも違和感なく好感を持ってもらえるように表していますか。「社内でみんなが使っているから」「特に考えることもなく」と、何気なく使っていることばや言い回しの中に、伝わりにくさのもとがあると残念です。自分のチェックリストを持ってください。

練習の進め方

第2~5章は「Lesson→例題→練習問題」という流れで練習を進めます。
●Lesson
各章の重要なポイントを、1レッスン1テーマで解説します。問題に取りかかる前に確認しましょう。サンプルメールは第1章と同じものです。巻頭に全文がありますので、それを読んでください。
●例題
Lessonで学んだ考え方をどう使うかを解説のもとで練習します。
第2~4章の例題は、3つの同じ文例で構成されていますが、設問は章ごとに異なります。例題に2回取り組めば、みっちり練習できます。
・1回目は各章の例題を、本の順番で取り組む。
(例題2-1 →例題2-2→例題2-3など)
・2回目は同じ文例の例題ごとに準備→構成→視覚化の順で取り組む。
(例題2-1→例題3-1 →例題3-4→例題4-1など)
なお、第2~4章の例題のメールの改訂例は、巻末の「メールの改訂例」に掲載しました。
●練習問題
Lessonと例題をふまえれば取り組める問題です。設問ごとの解説・解答例はありませんが、第2~4章の練習問題で取り上げたすべてのメールと練習問題5-5については、改訂例を巻末の「メールの改訂例」に載せました。解答の参考にしてください。

例題・練習問題のメールは、本書の練習用に作成したものと、私の研修の演習で使用したものとで構成しました。すべて架空の設定・内容です。一連の問題には、研修などでご提供いただいた実際のビジネスメールを拝見して分析した「伝わりにくいメッセージの特徴」を反映させています。問題の一部には、実際のメールを参考に作成したものもありますが、個人・組織の特定やその固有情報の把握が一切できないように設定・内容を変更しました。身の回りにあるような内容、実務でロジカル・シンキング&ライティングの技術を使うイメージを持ちやすい内容を心がけました。

いま、私たちビジネスパーソンは日々の報連相(報告・連絡・相談)や依頼、ちょっとした提案をメールで行います。普段の仕事を思い浮かべながら練習に取り組んで、ロジカル・コミュニケーションの「基本の型」を習慣にしていただければ幸いです。

照屋 華子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/6/22)、出典:出版社HP

目次

巻頭サンプルメール 残念メールと改訂メール
はじめに

第1章【全体像】
ビジネスメールで論理思考を習慣にする!
メッセージの「基本の型」とそのチェックポイント
Warm-up わかりやすく論理的に、しかも速く、感じよくメッセージを伝えて、
仕事を前進させる!
Goal&Check 伝わるメールには「基本の型」がある!
Check1 テーマがわかるか?
Check2 期待する反応がわかるか?
Check3 グループ化が見ただけでわかるか?
Check4 グループごとに要点がわかるか?
Check5 「具・簡・論・好」の日本語を使っているか?
Goal 「基本の型」は練習で身につく!

第2章【準備】
伝わるものは書く「前」に決まる!
相手に「動いてもらう」ための重要な準備
Lesson1 「伝えた後」を考える
Lesson2 相手の時間を犠牲にしない
Lesson3 何について書くかをはっきりさせる
Lesson4 相手にしてもらいたいことをはっきりさせる
Lesson5 会議もメールも同じこと
[例題] 2-1 【準備】業務改善プロジェクト
[例題] 2-2 【準備】新ボイスメール
[例題] 2-3 【準備】 シラバス作成
[練習問題] 2-1 【準備】社内便
[練習問題] 2-2 【準備】勤続表彰式
[練習問題] 2-3 【準備】電話システムの切り替え
[練習問題] 2-4 【準備】QC表彰式
[練習問題] 2-5 【準備】電話増設
[練習問題] 2-6 【準備】海洋性コラーゲン
[練習問題] 2-7 【準備】調理機器の入れ替え

第3章【構成】
頭の中を「構造ボックス」で整理する!
わかりやすく論理的なメッセージの構成法
Lesson1 メッセージは3つのセクションで構成する
Lesson2 導入部はメッセージの全体像を伝える
[例題] 3-1 【導入部】業務改善プロジェクト
[例題] 3-2 【導入部】新ボイスメール
[例題] 3-3 【導入部】 シラバス作成
[練習問題] 3-1 【導入部】社内便
[練習問題] 3-2 【導入部】勤続表彰式
[練習問題] 3-3 【導入部】電話システムの切り替え
[練習問題] 3-4 【導入部】QC表彰式
Lesson3 本論は2つの考え方で整理する
Lesson4 「構造ボックス」で思考整理の習慣をつける
Lesson5 要素分解、ステップ、対照概念でグループ化する
ウォーミングアップ① 受信ボックスのグループ化
ウォーミングアップ② 自己紹介のグループ化
Lesson6 構造ボックスの内容は「文」の形で考える
Lesson7 結びで好印象を残す
[例題] 3-4 【本論】業務改善プロジェクト
[例題] 3-5 【本論】新ボイスメール
[例題] 3-6 【本論】 シラバス作成
[例題] 3-7 【本論】 シラバス作成(応用)
[練習問題] 3-5 【本論】社内便
[練習問題] 3-6 【本論】電話システムの切り替え
[練習問題] 3-7 【本論】勤続表彰式
[練習問題] 3-8 【本論】QC表彰式
[練習問題] 3-9 【本論】海洋性コラーゲン
[練習問題] 3-10 【本論】調理機器の入れ替え
[チャレンジ問題] 3-1 【本論】部員の不満の背景
[チャレンジ問題] 3-2 【本論】顧客Aさんへのヒアリング

第4章【視覚化】
「見てわかる」ように書く!
メッセージが速く正確に伝わる書き方
Lesson1 「飛ばし読み」でも正確に伝わる書き方を覚える
Lesson2 So What?先出しが原則
Lesson3 視覚化のコツ① スペース&記号を活用する
Lesson4 視覚化のコツ2 見出しを付ける
Lesson5 視覚化のコツ3 文頭で切り口を示す
Lesson6 「見てわかる」は文書でも同じ
[例題] 4-1 【視覚化】業務改善プロジェクト
[例題] 4-2 【視覚化】新ボイスメール
[例題] 4-3 【視覚化】 シラバス作成
[練習問題] 4-1 【視覚化】QC表彰式
[練習問題] 4-2 【視覚化】 ママさん社員・イクメン社員の支援策
[練習問題] 4-3 【視覚化】X社の状況
[練習問題] 4-4 【視覚化】主要なチーム会議の概略
[練習問題] 4-5 【視覚化】社内便
[練習問題] 4-6 【視覚化】構成の視覚化
[練習問題] 4-7 【視覚化】顧客Aさんへのヒアリング

第5章【日本語表現】
具・簡・論・好で伝わる力がアップする!
伝わるメッセージを支えることばの使い方
Lesson1 いつもの“なんとなく”の日本語表現で大丈夫?
Lesson2 [具体性] So What?をことばにする
Lesson3 [簡潔さ] パッと見て意味をつかめるように書く
Lesson4 [論理性] 接続の関係を明示する
Lesson5 [好感度] よい印象を残すことばの使い方
[例題] 5-1 【具体性】 クリーンデーの廃棄物処理
[例題] 5-2 【具体性】社会人大学院生の増加の背景
[例題] 5-3 【簡潔さ】中国の工業用ミシン市場の概況
[例題] 5-4 【簡潔さ】今後の研修
[例題] 5-5 【簡潔さ】増員と強化
[例題] 5-6 【簡潔さ】オフィス移転
[例題] 5-7 【好感度】見積もりプロセスの改革事例に関する資料
[練習問題] 5-1 【日本語表現】サイレント・チェンジ
[練習問題] 5-2 【日本語表現】支店でのFAX機交換について
[練習問題] 5-3 【日本語表現】社内報

メールの改訂例
おわりに

照屋 華子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/6/22)、出典:出版社HP

入社1年目から差がつく ロジカル・シンキング練習帳

すぐに使えて一生役立つ技術

思考が進まずどうどう巡りに陥りがち、伝えたいことがうまく伝わらない、根拠のある数字を提示するのが苦手、相手が求めていることとズレてしまうという悩みをお持ちの方におすすめです。実践的なドリルとなっているので確実に身につきます。

グロービス (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2020/6/26)、出典:出版社HP

この作品は、2020年7月に東洋経済新報社より刊行された書籍に基づいて制作しています。電子書籍化に際しては、仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

まえがき

「ロジカル・シンキング」ができる人とは?

本書で紹介する思考の技術は、十数年の間、社会人のみなさんとクラスの場で多くの演習、並びにディスカッションをする中でみえてきたものです。「つい陥ってしまう思考の罠」や、逆に、「ちょっと意識しておくだけで成果が大きく違ってくるポイント」です。「ロジカル・シンキング」ができる人は、実はこうしたちょっとした「罠」や「ポイント」をしっかりと理解し、思考できる人たちです。
本書は、「ロジカル・シンキング」に初めて触れる人、これから社会人生活をスタートさせる人へ向けての入門書です。当たり前のことではあるものの、意外に難しく、そして実は重要……そんなポイントを20個、ピックアップしました。

重要性を増す「プログラミング・AI」もカバー

20個のポイントは、担当している複数の科目から選択をしました。その結果、いわゆる「論理思考」と「コミュニケーション」の領域にとどまらず、「数字」についての扱いや、今後、より重要性を増してくる「プログラミング・AI」といった要素をカバーしている点が特徴です。全体は5つの章で構成しています。
・CHAPTER 1は、「まず「根拠」から考える
「ロジカル」の基本にあたる内容です。他の4つの領域すべてに関連するテーマであり、【土台】となる頭の使い方です。
・CHAPTER 2は、「「何が起こっているか」正しく認識する
「ロジカル」であるための出発点となる内容です。何らかの思考をスタートさせる【起点】となる頭の使い方です。
・CHAPTER 3は、「「数字」に仕事をさせる」
「ロジカル」である人は、数字を上手く使うことができます。「数字」を上手く【活用】するための頭 の使い方です。
・CHAPTER 4は、「上手く「伝え」、上手く「聞く」」
「ロジカル」に自分で考えられるだけでは、成果につながりません。【相手】とのコミュニケーションにおいて必要となる頭の使い方です。
・CHAPTER 5は、「コンピュータを味方にする」「ロジカル」は、コンピュータが得意な領域です。これから必要となってくる【今後】へ向けた頭の使い方です。
【土台】→【起点】 →【活用】→【相手】 →【今後】と順に理解を進められる流れになっています。

頭でわかっていても実践できなければ意味がない

1つ1つの思考技術は、いずれも基本的なことです。読んでしまえば、当たり前のことと感じる方も少なくないでしょう。ただ、基本的なことは、得てして、頭ではわかっているけど、いざやってみようとするとできないものです。そこで、本書では、わかることとできることを少しでも近づけていくために、3つのステップで理解を進められるようにしました。
まず、どのように考えればよいのかを例題と共に解説しています。また、どのように頭を使っていけばよいのかを手順化して示しています。基本となる考え方についての理解と方法を押さえてください。次に、「演習問題」を用意しました。例題を通じて、頭で理解できたことを、自分の頭を使って、実際に考えてみることができるようになっています。
読み進めてしまうのではなく、たとえ、1分でも2分でも、ちょっと考えてみることをお勧めします。
最後に、さらに理解を進めるために、関連するポイントや発展させた考え方を紹介しています。また、象徴的な頭の使い方をできる限り図示化したこと、そして、20の思考技術ごとにポイントを5つにまとめましたので、日々活用する際にご利用ください。

自分の思考を客観視することを意識しよう

本章に入っていく前に、そのすべてに共通する大切な頭の使い方を紹介しておきましょう。それは、「自分自身の考え」に対して、客観視して捉えなおすことができるということです。いわば、もう一人の自分を出現させて、自分の思考に対して、きちんと評価をさせるというイメージです。「メタ(高次の) 認知」という言い方などもされます。普通に思考をしているレベルから、次元をあげて、俯瞰的に物事を捉えることと理解してください。
このメタ的な頭の使い方ができると、自分の思考に対して、自身でフィードバックを入れることができます。そうすることによって、自分自身の思考の質を高めることができます。また、相手がいる場においても「その場」で議論している自分と、その場で何が起こっているのかを客観的に理解しようとするもう一人の自分を置くことができます。その結果、議論の背景の理解や、そもそも論じなければならないことなどを考えやすくなります。
得てして、人は、自分自身が何を考えているかが、わかっていないものです。意識的に、もう一人の自分を育て、自分自身の思考をチェックさせられるようになることが、「ロジカル・シンキング」を身につける近道になります。ここからは、もう一人の自分を育てながら、20の技術を読みすすめていきましょう!

目次

まえがき

CHAPTER1 まず「根拠」から考える
LESSON1 根拠を具体化する
LESSON2 立体的な根拠にする
LESSON3 都合の悪い情報を探してみる
LESSON4 根拠の弱さに目をつぶらない

CHAPTER2 「何が起こっているか」正しく認識する
LESSON5 違った角度からみる
LESSON6 幅を変えてみる
LESSON7 経緯をみる
LESSON8 分けて、みる

CHAPTER3 「数字」に仕事をさせる
LESSON9 単位当たりの数字にする
LESSON10 実数と率の両方を使う
LESSON11 平均がわかっている
LESSON12 バラつきがわかっている

CHAPTER4 上手く「伝え」、上手く「聞く」
LESSON13 相手の立場からメッセージを考えよう
LESSON14 自分の言いたいことがわかる
LESSON15 相手のことが聞ける
LESSON16 グラフに仕事をさせよう

CHAPTER5 コンピュータを味方にする
LESSON17 手順化できる
LESSON18 定量化ができる
LESSON19 相関がわかる
LESSON20 AIがわかっている

卒業試験
あとがき
参考図書

グロービス (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2020/6/26)、出典:出版社HP

LESSON1 根拠を具体化する

根拠には具体性を持たせよう、事例も添えて具体化しようということは言われます。
しかし、どうしたら具体化できるのかについては、あまり考えられていないものです。
根拠を具体化するためには、いったいどうしたらよいのでしょうか。

新設された部署に配属されたあなた。新しい役割に張り切っています。
そんな中、課長から、キックオフのための合宿を企画して欲しいと依頼されました。
どこに行くかを決めなければなりません。
そこで、箱根を候補とし、根拠を2つ、考えてみました。
どちらの説得力が高いでしょう?
A 多くの社員が行きたいに違いないので、部門合宿は、箱根がよい
B 多くの社員が行きたいと言っていたので、部門合宿は、箱根がよい
Aの「行きたいに違いない」は自分の推測であって主観。
一方、Bの「行きたいと言っていた」は、客観的な事実です。
根拠が、主観によって支えられているか、客観的な事実で支えられているかの違いです。多くの人が納得できるのは、主観よりは客観。主張を支える根拠には、客観性のある事実を示すようにしましょう。

では、「多くの社員が行きたいと言っていたので、部門合宿は、箱根がよい」をさらに具体化するため には、どう考えればよいでしょうか。
たとえば、「多くの社員」とは、実際に何人で、社員全体の何割ぐらいなのか、「行きたいと言っていた」のはどのような状況での発言なのかについて説明されているとよいでしょう。客観的な事実をさらに具体化することで、説得力を高めることができます。
具体化のためのポイントは2つです。

POINT

①根拠の内容を分解し、どういう要素から構成されているのかを押さえる
②構成要素ごとにどのように具体化できるかを考える

先ほどの例題を使いながら、それぞれについて詳しく説明していきます。

①根拠の内容を分解し、どういう要素から構成されているのかを押さえる
主張である「部門合宿は、箱根がよい」に対する根拠は、「多くの社員が箱根がよいと言っていた」からでした。根拠の内容を分解すると、「多くの社員」ということと「箱根がよいと言っていた」という2つの要素から成り立っていることがわかります。
②構成要素ごとにどのように具体化できるかを考える
それぞれの要素ごとにどのように具体化が可能かを考えてみましょう。まず「多くの社員」を具体化するためには、「多く」がどの程度多かったのか、具体的に何人だったのかを提示することができます。また、人数だけではなく、社員のどのくらいの割合の人たちが言っていたのかを示すこともできます。

次に「箱根がよいと言っていた」については、どのような状況下で箱根がよいと言っていたのかを具体的にすることができます。「部門合宿はどこがよいのか?」ということを議題にした会議の中での発言なのか、飲み会の席で何となく盛り上がった際の発言なのかによっても説得力が違ってきます。
具体化するためには、何を具体化することができるのか、その要素を明らかにすること。そして、要素ごとにどう具体化ができるのかを考えましょう。
今回は、「多く」について、具体的に「人数や割合を付与すること」、つまり「定量的な情報を付与する」という具体化の方向性があるということです。
また、「言っていた」については、具体的に「どのような状況での発言だったのか」について言及すること、つまり「状況の提示」という具体化の方向性があるということになります。

演習問題

主張「部門合宿は、箱根がよい」ということを根拠づけるために、「多くの社員が行きたいと言っていた」以外の根拠を考えました。
A 費用が安いので、箱根がよい
B 友達と行ったことがあるので、箱根がよい
A、B、それぞれの説得力をあげるためには、どうすればよいでしょうか。

まず、Aについては「費用が安い」ということに、定量情報の付与ができそうです。
具体的にいくらなのか、たとえば、「一人2万円と費用が安いので、箱根がよい」といったように具体的な金額が示せるとよいでしょう。
次にBについては「友達と行ったことがある」ということに、状況提示の方向で具体化できそうです。たとえば、「前職の同僚と行ったことがあるので箱根がよい」の方が、より説得力が高まります。

STEP UP!

ここまで考えてきたことの全体を、最後に整理しておきましょう。最初に確認したことは、「主観より客観がよい」、「客観情報は、具体的な方がよい」ということでした。

ただ、このレベルで思考が止まってしまうと、「具体化」というキーワードだけの認識でそれ以上には思考が進みません。ここからさらに進むためには、どうしたらよいでしょうか。演習問題を例に考えてみましょう。
「一人2万円」と数字が示されることで具体性はあがりますが、その数字がよいのか悪いのかがわからないという点に工夫の余地が残っています。
他の候補地との比較において安いということを示す、予算内に入っているといった基準を示す、などといった工夫がされるとより説得力が増してきます。定量的な情報は、その数字だけでは判断できません。定量的な情報を示す際には、数値そのものとその数字を評価するための情報も揃えましょう。


また、Bの「前職の同僚と行ったことがある」についても、さらに具体化ができそうです。
「前職の同僚」と「行ったことがある」それぞれの要素についてどうあればよいのかを考えてみましょう。
まず、「前職の同僚」についてです。新しい部門での合宿として適切だ、ということが最終的に言いたいことです。したがって、前職は、たとえば、同業種であったなどということが言えると、聞き手は安心できそうです。また、同僚や前の部署についても、今回の部署と似た人員構成であるなどということが言えるとよいでしょう。つまり、対象の類似性が訴求できるとよいということになります。
次に「行ったことがある」についてです。これは、「いつ」行ったかがポイントになります。10年前のことなのか、3年前のことなのか、どちらがよいのかということです。何年前ならよいのかという程度の間題はありますが、最近のことであるということが示せるとよいでしょう。つまり、時間の近接性が訴求できるとよいということになります。

このように「状況の提示」については、対象そのものがどれだけ似ているか(対象の類似性)、時間軸としてどれだけ最近のものなのか(時間の近接性)といった視点で具体化を考えていく必要があるということになります。

思考の粒度を細かくすることは、労力もかかりますし、難しいものです。その結果、どうしても、「何となくこんな感じ」、今回のケースでは、「具体化できるといいよね」というレベルで思考を停止してしまいがちです。
だからこそ、もう一歩、踏み出して、具体的に考えられることが、説得力を高めることにつながります。またそれは、思考力を鍛えることにもつながります。考えがまとまったレベルからもう一歩、二歩深めて考えるという姿勢を常に持っておくようにしましょう。

まとめ

根拠には主観ではなく客観的な事実を用意する
具体化は根拠の構成要素ごとに行う
具体化の方向性は、定量的な情報の付与と状況の提示
定量的な情報の付与には、数値そのものと評価のための情報があるとよい
状況の提示は、対象の類似性や時間の近接性を意識すること

グロービス (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2020/6/26)、出典:出版社HP