【最新】裁判・裁判所を知るおすすめ入門本

裁判・裁判所を知ろう

裁判と法律はどのような役割を果たしているのか、司法権の行使に当たる裁判所はどのような芭蕉なのでしょうか。今回は身近にありながら複雑なところも多い、裁判・裁判所について知ることができる書籍を紹介します。

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出典:出版社HP

裁判所ってどんなところ?:司法の仕組みがわかる本 (ちくまプリマー新書)

裁判の基礎知識が身に付く

裁判員制度が導入され、いつ誰に通知や呼出状が届くか分からないようなこのご時世で、裁判に関する基礎知識はあって損はありません。本書では、司法制度の仕組みや、裁判について深く理解することができます。内容は、比較的専門性が高く、司法に関心のある方にとっては非常に興味深いものになっています。難解ではないので、初学者にとっても有益な1冊です。

目次

第一章 日本の裁判所はいつからあるか
1 「遠山の金さん」「大岡越前」は裁判所の人?
2 とても歴史の浅い日本の裁判所
3 裁判所「裁判をするところ」
「裁判権」と「司法権」どこがどう違う?/裁判を受ける権利
4 裁判所の日本近代史
初代法務大臣を死刑に/調味料を欠いた五目ずし/立憲主義の成立と裁判所のその後/戦後大きく変わった裁判所
コラム1 日本人の伝統的意識とのギャップ

第二章 裁判所の中はどうなっているか
1 法廷ってどんな場所?
法廷の見取り図/法廷内の決まり/公開の場としての法廷/弁論の場としての法廷/真相解明の場としての法廷
2 法廷のほかには何がある?
裁判官は普段はどこにいるか/結論はどこでどうやって決まるか/法廷外の裁判手続
3 裁判官ってどんな人たち?
日本の裁判官はキャリア・システム/裁判長・右陪席・左陪席の順序/裁判官の女性比率/法服を着ない裁判官たち/裁判官の給料はどれくらい?
4 裁判官以外の裁判所にいる人たち
書記官と事務官/速記官、執行官、廷吏、法廷警備員/家庭裁判官と調停委員/各種委員と審判員、そして裁判員
コラム2 意外に多彩な裁判官の素顔

第三章 裁判所にはどんな種類があるか
1 「最高、高等、地方、簡易」——縦の関係
各県の地方裁判所と八つの高等裁判所/三審制の審級図/三審制とは裁判を三回やり直すこと?/最高裁判所の役割——司法の流動性/最高裁判所判事にはどういう人がなるか/最高裁事務総局とは何か/簡易裁判所の役割/特別裁判所の禁止
2 「民事、刑事、家庭裁判所」——横の関係
裁判所の民事部と刑事部/民事と刑事の違いとは?/行政裁判所とは何か/特殊な家庭裁判所の位置づけ/微妙な「家裁」の仕事/漫画『家栽の人』/家庭裁判所の役割——裁判による福祉
3 全国に散らばる支部と簡易裁判所
実は身近なところにある裁判所/弁護士なしでできる少額訴訟
コラム3 少年法と家庭裁判所

第四章 憲法は裁判所についてどう定めているか
1 司法って何をすること?
司法とは——法を適用して事件を解決すること/証拠って何?——事実の痕跡/『ヴェニスの商人』に見る法の適用——「司法」を誤解した物語
2 三権分立と裁判所
「権力を弱める」という考え方/行政の裁判所への影響力——司法行政権の問題/法務省・検察庁・裁判所の関係を整理すると/憲法が認める/行政機関の裁判/裁判所が裁判しない方が良い場合がある?/裁判官の身分保障/裁判官はみな平等——上司も部下もない世界
3 法と良心にしたがう
「法の番人」としての裁判所/「法治国家、法律、民主主義」の三位一体/国家法と自然法/裁判官の良心とは——悪法にもしたがうのか?
4 基本的人権と違憲立法審査権
「人権の砦」としての裁判所/「法律の留保」/近代憲法の原理——国会中心の法治国家/現代憲法の原理法治国家から司法国家へ/違憲立法審査って何をすること?/憲法裁判所との違い/「法の支配」の変化/基本的人権と自然法
コラム4 「人権宣言」「立憲主義」と裁判所

第五章 裁判所という世界の美しい理念
1 裁判所と真理——「論理に基づく真実の裁き」
紛争を論争に変換/民主主義モデルと真理モデル/「投票で真理は決まるか」
2 裁判所と人権——「人権を保障し自由と平等を実現する」
人権と国民主権の関係/国民主権と裁判所/「民主的専制」「多数者支配」とは何か/司法の積極主義と消極主義/日本の人権救済のあり方
3 裁判所と正義——「徳・善・正義の要請」
犯罪被害者の訴え「正義を示してほしい」/公害問題で被害住民を救済-無過失責任へ道を開く/医療問題では患者側に——因果関係のハードルを外す/家族関係では旧弊打破——尊属殺人罪違憲判決/投票価値の平等と違憲判断/集会・デモの自由には消極的/公務員の労働基本権では二転三転/自衛隊と憲法九条では現状追認/様々な社会正義の実現
コラム5 裁判所をめぐる「民主主義的原理」と「自由主義的原理」

第六章 裁判所をめぐる理想と現実のギャップ
1 民事裁判は書面主義「法廷は三分で終わり」
民事司法は中身より事件処理件数/極端な書面主義は憲法違反の疑いあり
2 刑事裁判は検察依存「九九・九パーセント有罪」
刑事裁判官と民事裁判官の大きな違い/日本の刑事司法は中世並み?
3 憲法訴訟は判断回避「違憲はいけん」
裁判所の違憲判断の実績/国際平和と戦争放棄から手を引く
4 これからの裁判所を展望する
新しい公共世界の主役/社会の中で変わりつつある「裁判の真実」「裁判所の正義」
コラム6 集団的自衛権容認で国家緊急時の人権保障はどうなるか

あとがき

法律と裁判ってなに? (きみが考える・世の中のしくみ)

法律と裁判をやさしく理解

暮らしにおける法律やその種類、民事裁判や刑事裁判などについて、わかりやすいイラストを用いて紹介されています。刑事裁判はどのように行われ、どのような工夫がされているのかなど、具体的な内容もカバーされています。小学校中学年から対象の社会科絵本です。

峯村 良子 (著, イラスト)
出版社 : 偕成社 (2013/3/7)、出典:出版社HP

法律や裁判ってむずかしそうだし、 わたしたちのくらしから はなれたところにあるものと おもっていませんか?

この本では、 くらしのなかの法律や、法律の種類、 我事裁判や刑事裁判などについて、 わかりやすいイラストレーションで しょうかいします。

学校の授業はもちろん、 新聞やテレビのニュースにも 興味をもつきっかけとなる、
社会科の入門絵本!

もくじ

くらしをまもる法律
年令と法律
法律ってどういうもの?
法律の種類
人と人のあいだの法律「民法」
民事裁判を起こした!
事件が起こった
事件をしらべる
刑事裁判とは?
裁判がはじまった
裁判は慎重におこなわれる
ばつと更生について
判決がでた
公正な裁判のために
国のしくみの中の裁判所

峯村 良子 (著, イラスト)
出版社 : 偕成社 (2013/3/7)、出典:出版社HP

トラブル解決のルール! 裁判のしくみ絵事典 基本の流れから裁判員制度まで

裁判のことがよくわかる

イラストや写真を豊富に使って、裁判の仕組みや様子をわかりやすく説明しています。内容は3章立てで、その他にも3つのコラムが載っています。本書は子どもたちが裁判について理解するための絵本ですが、法律の基礎知識がない大人にとってもおすすめの入門書です。

もくじ

はじめに

第1章 裁判のしくみを知ろう
裁判って何?
日本国憲法と三権分立
ふたつの裁判~①民事裁判~
ふたつの裁判~②刑事裁判~
裁判は3回まで受けられる!
裁判所には5つの種類がある!
裁判官って何をする人?
検察官って何をする人?
弁護士の役割って何だろう?
日本と世界の裁判をくらべてみよう!

コラム もし海外で裁判を受けることになったら

第2章 裁判のようすを知ろう
裁判は見ることができる!
民事裁判はどのように行われるの?
民事裁判にかかわる人びと
和解で終わることも多い民事裁判
刑事裁判はどのように行われるの?
刑事裁判にかかわる人びと
刑罰の重さってどうやって決まるの?
えん罪事件って何?
犯罪被害者の人権は守られているの?
少年法ってどういう法律なの?
少年事件はどのように裁かれるの?
コラム 日本の裁判制度の歴史

第3章 裁判員制度を知ろう
裁判員制度ってどんな制度?
裁判員はどんなことをするの?
裁判員裁判はどのように行われるの?
コラム 裁判を見てきたよ!

裁判所に行ってみよう!
さくいん(五十音順)

はじめに

みなさんは毎日のように、テレビのドラマや新聞で「裁判」を見ていると思います。なぜ裁判は必要なのでしょうか。

みなさんも学校や家、地域の中でいろいろなルールを学んでいますね。みんながルールを守ることで、たくさんの人間が社会の中でいっしらせるのです。法律は、そのルールのひとつです。わが国には、とってりの人間が大切にされ、みんなが平和があります。そして、憲法のもとにたくさんの法律がつくられているのです。

たくさんの人間がいっしょにくらしていると、どうしても争いが起こります。また、悲しいことですが、犯罪も起こります。「裁判」は、人と人との争いが起こったときに、どちらのいい分が正しいのかをきちんと決めてくれます。また、犯罪を犯してしまった人には罰を与え、みんなが安心してくらせるようにします。したがって、裁判の役割は、紛争を解決し、社会の中に正義を実現することにあるといえるでしょう。

2009年には「裁判員裁判」がはじまりました。みなさんも20歳になったら、裁判員として裁判に加わることになるかもしれませんね。この本がみなさんの裁判への道案内になれば幸いです。

弁護士
國學院大學法科大学院教授
村 和男

ニッポンの裁判 (講談社現代新書)

ニッポンの裁判の真相と深層に迫る

裁判の表裏を知り抜いた元エリート裁判官による判例解説本です。刑事訴訟や国策捜査、名誉棄損訴訟、厳罰訴訟、住民訴訟などについて理解できます。不条理な判決、でっち上げの証拠や不誠実な弁護士などが存在する日本の現状がよくわかるので、司法制度について学びたい方には必読の1冊です。

瀬木 比呂志 (著)
出版社 : 講談社 (2015/1/16)、出典:出版社HP

はしがき——ニッポンの裁判

あなたがたは、みずからの裁きによって裁かれ、みずからの秤によって量られる
マタイによる福音書第七章第二節

本書は、『絶望の裁判所』([講談社現代新書、二〇一四年]以下、本書では『絶望』として引用する)の姉妹書である。『絶望』が制度批判の書物であったのに対し、本書は、裁判批判を内容とする。つまり、両者は、内容は関連しているが、独立した書物である。もっとも、双方の書物を読むことでより立体的な理解が可能になることは間違いがない。その趣旨から、本書では、前記のとおり、『絶望』を適宜引用している。

より具体的に述べよう。『絶望』は、もっぱら裁判所、裁判官制度と裁判官集団の官僚的、役人的な意識のあり方を批判、分析した書物であり、裁判については、制度的な側面からラフスケッチを行ったにすぎなかった。これに対し、本書は、そのような裁判所、裁判官によって生み出される裁判のあり方とその問題点について、具体的な例を挙げながら、詳しく、かつ、できる限りわかりやすく、論じてゆく。

裁判所、裁判官が国民、市民と接する場面はまずは各種の訴訟であり、その結果は、判決、決定等の裁判、あるいは和解として実り、人々を、つまりあなたを拘束する。その意味では、裁判や和解の内容こそ国民、市民にとって最も重要なのであり、制度や裁判官のあり方は、その背景として意味をもつにすぎない。

しかし、裁判の内容を正確に理解するのは、それほどやさしいことではない。法学部や法科大学院の学生たちにとってさえ、最初のうちはそうである。私が、裁判の分析に先行して、まずは、誰にとってもその形がみえやすくその意味が理解しやすい制度の分析を行ったのは、そうしておかないと裁判の内容の理解も難しいからということが大きい。

そして、日本の裁判の内容は、実は、一般市民が考えている以上に問題が大きいものなのだ。そのことは、弁護士を含む法律実務家(以下、本書では、この意味で、「実務」、「実務家」という言葉を用いる)にも、あるいは十分に理解されていないかもしれない。学者も、それぞれの専門分野のことはよく知っていても、全体を見渡す視点まで備えているとは限らない。ましてや、メディア、ことにマスメディアの司法や裁判に対する理解は、本書でも述べるが、一般的には、かなり浅いのが普通だ。

以上のような意味では、おそらく、日本の裁判全体の包括的、総合的、構造的な分析も、これまでに行われたことはあまりなかったのであり、本書の内容に驚愕され、裁判に対する認識を改められる読者は多いはずである。

書物の構成について簡潔に解説しておく。

まず、第1章、第2章では、私の、三三年間の裁判官としての経験とそれと並行して進めてきた学者としての研究に基づき、裁判官の判断構造の実際を、機能的に、また、リアリスティックに分析する。そして、裁判の内容は、裁判官の人間性や能力によっていくらでも異なりうることを、具体的なケースに触れながら明らかにする。

第3章から第5章までは本書の中核部分であり、詳しくわかりやすい記述に努めている。第3章では刑事裁判(冤罪と国策捜査)について論じる。第4章、第5章は広い意味での民事系の裁判を対象としている。第4章では、名誉毀損損害賠償請求訴訟、原発訴訟という二つの訴訟類型を中心に、最高裁判所事務総局が下級審の裁判内容をコントロールしてきたことについて述べ、第5章では、行政訴訟、憲法訴訟等官僚裁判の弊害が顕著ないくつかの訴訟類型を選んで分析する(最高裁判所事務総局は、裁判官と裁判所職員に関わる行政、すなわち「司法行政」を行うことを目的とする最高裁判所内部の行政組能であり、人事局等の純粋行政系セクション(官房系に相当)と民事局、行政局、刑事局等の事件系セクションとに分かれている。『絶望』一八頁以下)。

第6章では、裁判官の手の内を明かしつつ、日本の裁判官が行う和解の国際標準を外れた実態とその裏面について、掘り下げた検討を行う。これは、あなたが民事訴訟の当事者となる場合には、ぜひとも知っておくべき事柄である。

第7章では、日本の裁判がなぜ事なかれ主義、先例や権威追随志向のものになるのかを構造的に説き明かす。この章の内容には当然制度的な分析を含むが、『絶望』では触れなかった側面を中心に、「裁判」に関連する限りでかつそのような角度から論じてみたい。

第8章では、『絶望』の読者から寄せられた疑問の一つ、日本の司法をよりよいものにしてゆくために一般市民は何ができるのだろうかという問いかけに、可能な限り具体的に答え、併せて、裁判官の人間としての側面、その孤独と憂鬱について語っておきたい。私が、ただ裁判官を批判するだけの学者ではないことが、おわかりいただけるはずである。

ところで、『絶望』は、司法、法律系の一般書としてはほとんど初めてといってよいほどの大きな反響を呼んだ。新聞、雑誌、テレビ、ラジオからウェブマガジンまで、私が知る限りでも四〇以上のさまざまなメディアが本書を取り上げたのである。国際的にも反響が大きく、韓国最高裁は留学中の裁判官に命じて至急一〇冊を送らせたというし、また、出版の五か月後にはいち早く韓国語版が刊行されている。アメリカ等の海外メディアからの取材、照会も入るようになり、私は、アメリカのロースクールにおける日本法研究者にも複数の知己を得ることができた。

それはなぜだろうか?

二つの理由が考えられると思う。

一つは、日本の裁判所、裁判官が抱えるさまざまな問題を、インサイダーとアウトサイダー双方の視点から包括的、構造的に批判、分析した書物がそれまでに存在しなかったことによるのではないだろうか。

もう一つの理由は、司法、裁判に対する人々の不信と不満が耐えがたいほどに鬱積していたことによるのではないだろうか。

民事訴訟は、いずれかが勝ち、いずれかが負けるものだから、その利用者の満足度(訴訟制度に対する満足度)は、本来なら五〇%に近くてよいはずであり、これが三三%を割れば、かなり危機的な状況であろう。ところが、日本における広範なアンケート調査の結果は、実に一八・六%(二〇〇〇年度)にすぎなかったのであり(『絶望』五頁)、法曹界がタイアップしたその後の二回の調査でも、その数値は、二四・一%(二〇〇六年度)、二〇・七%(二〇一一年度)と、ほとんど改善していない(日本弁護士連合会編著『弁護士白書』二〇一二年版六二頁)。

しかも、この間、地裁民事訴訟事件新受件数は二〇〇九年度をピークとして、訴訟事件以外の事件をも含めた地裁民事事件全新受件数は二〇〇三年度をビークとして、いずれも減少しており、二〇一三年度には、前者はビーク時の六七・五%、後者はビーク時の四五・一%という有様なのだ(『絶望』一六〇頁に示した二〇一二年度の数字からさらに大期に減少)。また、私が転身した二〇一二年ころの民事訴訟は、難しい事件の割合が目にみえて減ってきており、国民の訴訟離れの傾向が、実感としても感じられるようになっていた。

司法制度改革が行われ、弁護士数は激増、裁判官数も相当に増加している状況下の以上のような惨憺たる数字は、司法、裁判に対する人々の深い失望を現しているとみるほかないであろう。日本の裁判所、裁判官に、また、司法と裁判に「絶望」しているのは、おそらく、私だけではない。

本書も、『絶望』同様、国民、市民が司法の機能とその実態を知り、それを継続的に監視するとともに、それをよりよいもの、真に国民、市民のためのものとしてゆくために必要な、基本的な知識と視点を提供するための書物である。

『絶望』同様、大きな情報をコンパクトに凝縮した密度の高い記述を行っているので、じっくり読み込んで、司法、裁判に対する自分なりの見方をもち、それに適切に対処できる市民となるための一助としていただきたい。

それでは始めよう。

瀬木 比呂志 (著)
出版社 : 講談社 (2015/1/16)、出典:出版社HP

目次

はしがき——ニッポンの裁判

第1章 裁判官はいかに判決を下すのか? ——その判断構造の実際
裁判にはどんなものがあるか? 三審制は国際標準か?/裁判官の判断は積み上げなのか直感なのか? FBI心理分析官による分析との共通性/判決の役割とそのあるべき姿/裁判官の総合的能力と人間性の重要性/裁判の生命——事件の個別性と本質を見詰める眼/事実認定の難しかった四つの裁判

第2章 裁判官が「法」をつくる——裁判官の価値観によって全く異なりうる判決の内容
裁判官が「法」をつくるーリアリズム法学の考え方/結争正当化のためのレトリック/気の毒な未亡人の訴えを粗暴な論理で踏みにじった控訴審判決/問題の大きな最高裁判決に特徴的なレトリック/裁判官は正義の自動販売機?

第3章 明日はあなたも殺人犯、国賊——冤罪と国策捜査の恐怖
1国家による犯罪であり殺人である築罪
罪は国家の犯罪である/捏造証拠の後出し?
袴田事件/連壊した科学裁判の神話―足利事件と東電OL殺人事件/明日はあなたも殺人犯! ——恵庭OL殺人事件、女性にも起こりうる罪の恐怖/自白はいかにして作られるか?/日本の刑事司法は中世並み?
2民主主義国家の理念と基本原則に反する国策捜査
3あなたが裁判員となった場合には…..

第4章 裁判をコントロールする最高裁判所事務総局——統制されていた名誉毀損訴訟、原発訴訟
1政治家たちの圧力で一変した名誉毀担担害賠償請求訴訟
国会の突き上げを受けての御用研究会、御用論文/一変した認容額とメディア敗訴、予断と偏見に満ちた認定判断
2統制されていた原発訴訟
一般には知られていない裁判官「協議会」の実態/実質的な判断放棄に等しかった原告敗訴判決群/大飯原発訴訟判決/もう一度電力会社、官僚、専門家、そして司法を信用できるのだろうか?

第5章 統治と支配の手段としての官僚裁判―これでも「民主主義国家の司法」と呼べるのか?
1「超」絶倒の行政訴訟
刑事訴訟と並んで権力寄りの姿勢が気者な日本の行政訴訟/住民訴訟もまたイバラの道/住民が勝っても首長の債務は戦消し! ——堕然、呆然の最高裁「債権放棄議決是認」判決/刑事・行政・憲法訴訟等における裁判官たちの過剰反応の根拠は?
2そのほかの訴訟類型
憲法判例は裸の王様?/訴訟類型と裁判官によって結論の分かれる国家賠償請求訴訟/アメリカに後れて始まったスラップ訴訟/担保が高すぎ、仮処分命令の出し
渋り傾向も根強い民事保全
3裁判の質の信じられない劣化

第6章 和解のテクニックは騙しと脅しのテクニック? ——国際標準から外れた日本の和解とその裏側
民事訴訟における和解の重要性/和解を得意とする裁判官の類型/和解のテクニックは騙しと脅しのテクニック?/アメリカにおける和解との比較/日本では対席和解は無理なのか?本当にそうなのか?

第7章 株式会社ジャスティスの悲惨な現状
最高裁判所の問題点/下級裁判所の問題点/あなたはそれでも株式会社ジャスティスに入社しますか?/裁判所と権力の関係/最高裁長官史と裁判所の空気の移り
変わり/コンプライアンスを行う意思が全くないことを明らかにした最高裁判所

第8章 裁判官の孤独と憂鬱
裁判官の孤独と/同法が変われば社会が変わる/客観的な批判にはきわめて弱い裁判所/司法健全化のためにあなたができること/マスメディアのあり方とそれに関して注意すべき事柄/法曹一元制度の提言という苦渋の選択/最高裁判所という「黒い巨塔」の背後に広がる深い闇

あとがき——宇宙船と竹刀

瀬木 比呂志 (著)
出版社 : 講談社 (2015/1/16)、出典:出版社HP

日本の裁判がわかる本

日本の裁判が面白いほどよくわかる

大人気ゲームである「逆転裁判」の個性豊かなキャラクターが登場し、裁判について解説してくれます。法廷で活躍する弁護士、検察官、裁判官の仕事内容がよくわかります。豊富な図解・イラストによって目で見て楽しく読める雑学本です。

ベリーベスト法律事務所 カプコン (監修)
出版社 : 日本文芸社 (2018/10/26)、出典:出版社HP

日本の裁判がわかる本……目次

逆転裁判の世界

第1章 裁判の基礎知識
そもそも裁判とは?
裁判所の種類と三審制
最高裁判所の役割
刑事裁判と刑事法
民事裁判と民事法
家庭裁判所と簡易裁判所
裁判員制度の仕組み
裁判員の仕事と役割
裁判の傍聴
刑の重さはどう決まる?
死刑制度
検察審査会の役割
冤罪と推定無罪
第1章まとめ

第2章 弁護士の仕事
弁護士の役割
弁護士になるには
私選弁護人と国選弁護人
弁護士費用の相場は?
弁護士を支えるスタッフたち
弁護士という仕事
「法テラス」ってなんだ?
第2章まとめ

第3章 検察官の仕事
検察官の役割
起訴と不起訴
検察官になるには
検察官の官名と職名
検察事務官とは
特捜部(特別捜査部)とは
犯罪被害者の支援
進む検察改革
第3章まとめ

第4章 裁判官の仕事
裁判官の役割
裁判官になるには
最高裁判所の裁判官になるには
裁判官の罷免
裁判官は転勤族?
裁判官の服はなぜ黒い?
裁判官は超ハード
速記官と書記官の違い
裁判所を支える職員たち
第4章まとめ

第5章 裁判の仕組み
裁判が行われるまでの流れ
起訴の種類
起訴猶予とは?
被疑者と被告人
裁判の流れ
裁判の流れ① 冒頭手続
裁判の流れ②-1 証拠調べ手続
裁判の流れ②-2 証人尋問
裁判の流れ③ 論告・求刑から判決まで
控訴と上告
刑罰の種類
併合罪とは?
刑の執行停止
保釈と保釈金
時効の仕組み
少年事件の扱い
正当防衛と過剰防衛
逆転無罪の事例

監修協力 ベリーベスト法律事務所

ベリーベスト法律事務所 カプコン (監修)
出版社 : 日本文芸社 (2018/10/26)、出典:出版社HP

逆転裁判の世界

『逆転裁判』は弁護士を主人公とした法廷バトルアドベンチャーゲームです。本書は『逆転裁判』シリーズに登場するキャラクターたちとともに、日本の裁判についてわかりやすく解説した一冊です。

成歩堂龍一
(ナルホドウ リュウイチ)
真実を追求する熱血弁護士
『逆転裁判』の主人公である若き弁護士。正義感が強くお人よし。どんな不利な状況になってもけっしてあきらめず、依頼人の無罪を証明するため「逆転の発想」を武器に法廷に挑みます。通称ナルホド。

御剣怜侍
(ミツルギ レイジ)
被告人を追いつめる若き天才検事
法曹界に名を轟かす天才検事。凄腕ですが、一方で有罪判決を得るためなら手段を選ばないという黒い噂も…。成歩堂のライバルとして法廷で相まみえることになります。

綾里千尋
(アヤサト チヒロ)
ナルホドの師匠である美人弁護士
「綾里法律事務所」の所長を務める美人弁護士。成歩堂の師匠で、新人の成歩堂に弁護士としてのイロハを教える厳しくも優しい女性です。

綾里真宵
(アヤサト マヨイ)
ナルホドの助手を務める霊媒師の少女
千尋の妹。倉院流霊媒道の霊媒師のタマゴで、ある事件をきっかけに成歩堂と知り合い、以降は助手として一緒に行動することになります。

綾里春美
(アヤサト ハルミ)
強い霊力を持つマヨイの従姉妹
真宵の従姉妹である少女。礼儀正しい少女で、霊媒師として天才的といわれるほどの才能の持ち主。

矢張政志
(ヤハリ マサシ)
お騒がせなトラブルメーカー
小学校時代からの成歩堂の親友。「事件のカゲにヤッパリ矢張」と言われるほどのトラブルメーカーで、さまざまな事件に巻き込まれます

狩魔冥
(カルマ メイ)
完璧な勝利を追求するエリート検事
アメリカ育ちのエリート検事。「カンペキな立証」をモットーとし、有罪判決を得ることに強い執念を持ちます。

裁判長
(サイバンチョウ)
お茶目な一面もある法の番人
事件の審理を行う裁判長。人情味溢れる性格ですが、検察や弁護人の意見に流されやすい一面も……。

ゴドー
(ゴドー)
その素顔を仮面に隠した謎の検事
成歩堂の前に立ちはだかる、正体不明の謎の検事。秘められた過去があり、どうやら、成歩堂に強い敵意を抱いているようです。

糸鋸圭介
(イトノコギリ ケイスケ)
おっちょこちょいだが、正義感の強い刑事
殺人事件の初動捜査を担当する所轄署の刑事。正義感が強く、成歩堂の調査に協力することも。通称イトノコ刑事。

※本書中に、『逆転裁判』シリーズのゲーム攻略に関わる内容はありません。
※『逆転裁判』のキャラクターはイメージであり、記事の掲載内容とは設定が異なる場合があります。

ベリーベスト法律事務所 カプコン (監修)
出版社 : 日本文芸社 (2018/10/26)、出典:出版社HP

新版 わたしたちと裁判 (岩波ジュニア新書)

法の精神がよくわかる

裁判員制度が導入され、みなさんも裁判員に選ばれる日がいつか来るかもしれません。裁判は、争いごとを解決し世の中をよくするための大事な手段です。本書では、法や裁判に関することが中高生にも理解できるようにわかりやすく解説されています。

後藤 昭 (著)
出版社 : 岩波書店 (2006/10/20)、出典:出版社HP

はじめに

「裁判」という言葉を聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべるでしょうか。黒い服をまとって壇上に座る、いかめしい裁判官を思い浮かべる人もいるでしょう。最近では、オウム真理教の代表者だった松本(麻原)被告、あるいはライブドアの社長だったホリエモンに対する裁判を思い出す人もいるかもしれません。それもたしかに裁判の例です。そして、多くの人は、裁判とは悪い人を罰するためのもので、自分とはあまり関係のないものと考えるかもしれません。

しかし実は、裁判にもいろいろな種類のものがあります。人の犯罪に関わる裁判のほかに、契約や財産、あるいは家族関係のもめ事から起きる裁判も、たくさんあります。また、一人の人が国を相手に訴えるような裁判もあります。それらの裁判は、わたしたちが住む社会を動かしている強力な仕組みの一つです。ですから、裁判はわたしたちの暮らしに大きな影響を与えます。そして、この世の中に生きている限り、誰でも自分自身が裁判に関わる可能性があります。

その裁判への関わり方も、誰かに訴えられたり犯罪を犯したと疑われたりして、否応なしに巻き込まれるだけではありません。裁判は、わたしたちが何かの目的を実現するために、だいじな手段として使えるものです。あなたも裁判という手段を使う必要に迫られるかもしれません。また、ほかの手段では実現できないあなたの願いが、裁判という仕組みを使うことによって実現できるかもしれません。

この本では、このような裁判の仕組みや働きについて、なるべくわかりやすく説明しようと思います。そして、多くの若い読者に、裁判について関心をもっていただきたいと思います。

そこで、はじめの章では、最近の話題である司法改革を簡単に紹介します。司法改革とは、裁判のあり方を大きく変えようとする試みです。それから第二章では、裁判の働きや手順を大まかに説明します。そのために、小学生や中学生が起こした裁判の実例を紹介します。こんな裁判もあることを知っていただければ、あなたにも裁判が身近なものに感じられるかもしれません。第三章では、裁判所で実際に裁判をしているところを見る方法や、あなた自身が裁判をする裁判員制度を説明します。第四章では、裁判や法律を扱うことを仕事にしている人たち、つまり弁護士・検察官・裁判官などのことを書きます。最後の第五章では、裁判と法との関係を考えます。

ただし、この本は、必ずしも最初から順を追って最後まで読まなくてもかまいません。とりあえず裁判を直に見てみたい方は、第三章から読んで下さい。弁護士や裁判官の仕事に興味のある方は、第四章から始めてもけっこうです。この本では、同じような言葉の説明が、繰り返し出てくるかもしれません。それは、法律や裁判についての言葉に慣れていただくためと、全体を順番どおりに読まなくても意味がわかるようにするためです。最後の章は、中学生・高校生の読者には、少し難しいかもしれません。もし読んでみてわからなければ、二、三年たってからもう一度読んでみて下さい。そうすれば、もっとよくわかるでしょう。

では最初は、司法改革の話です。

後藤 昭 (著)
出版社 : 岩波書店 (2006/10/20)、出典:出版社HP

目次 新版 わたしたちと裁判

はじめに

第一章 司法改革とはなんだろうか

第二章 裁判とはどんなものか
1 髪型の自由を訴えた子どもたち
2 裁判は何のためにあるか
3 裁判の登場人物
4 訴訟のいろいろ
5 民事訴訟の手順
6 刑事訴訟の手順
7 訴訟でない裁判
8 裁判を受ける権利の保障

第三章 裁判所へ行ってみよう
1 裁判は誰でも見ることができる
2 どうやって傍聴するか
3 法廷ではどんなことをするか
4 市民の裁判参加
5 裁判員になったら

第四章 法律を扱う人たち
1 弁護士は、どんな人たちか
2 検察官は、どんな人たちか
3 裁判官は、どんな人たちか
4 弁護士・検察官・裁判官の関係
5 特定分野の法律家
6 法律の専門家の資格を得るには

第五章 裁判と法
1 法律に従って裁判するわけ
2 裁判での法律の働き方
3 法律の中味は、はっきりしているか?
4 法律の解釈による結論の違い
5 法を作る裁判
6 法を作るのは誰か

あとがき

イラスト=サトウナオミ
〈写真提供〉
法曹会(200ページ、法曹会刊『日本の裁判』より)

後藤 昭 (著)
出版社 : 岩波書店 (2006/10/20)、出典:出版社HP

裁判官が答える 裁判のギモン (岩波ブックレット)

裁判について、Q&Aでよくわかる

現役裁判官とOBで作られたユニークで熱い組織である「日本裁判官ネットワーク」が、裁判の基本を徹底解説しています。基本用語や裁判に対する疑問、離婚や相続などで当事者になった場合の考え方など、Q&A方式で幅広く回答しています。ケースがとても具体的で、初学者にも最適の1冊です。

日本裁判官ネットワーク (著)
出版社 : 岩波書店 (2019/4/6)、出典:出版社HP

目次

はじめに
Q1 裁判所にはどんな種類があって、何回チャレンジできる?
——裁判所の種類と三審制

刑事事件編
Q2 悪いことをした人に、なぜ黙秘権や弁護士を付ける制度があるの?
——黙秘権、国選弁護人制度
Q3 痴漢を疑われたら、逃げた方がいい?
——逮捕・勾留制度
コラム1 「有罪慣れ」は怖いですね
Q4 交通事故を目撃し警察で証言しましたが、裁判所には呼ばれないですね?
——伝聞証拠の意味
Q5 被害者の側に弁護士が付かないのは納得できないのですが?
——被害者参加制度
Q6 裁判員になりたくない、どうすればいい?
——裁判員裁判

民事事件編
Q7 民事裁判の傍聴で内容がさっぱりわからないのですが?
——傍聴人にもわかりやすい民事裁判
コラム2 裁判官も人の子——甘い物にはつい手が伸びて
Q8 裁判官は医者でもないのに、医療過誤を正しく判断できるの?
——専門訴訟
Q9 昔の借金を請求され、時効と思うが、裁判所に行く必要はある?
——当事者主義
Q10 インターネット上での訴訟が実現する?
——民事訴訟のIT化
Q11 裁判で使われる言葉が難しすぎないか?
——裁判用語の難しさ
Q12 裁判に勝ったのにお金が回収できないのはなぜ?
——訴訟と執行の関係

家事事件編
Q13 離婚調停の場に出てきた「調停委員」の身分は?
——家事調停制度
コラム3 当事者からいただいた唯一の記念品
Q14 浮気の慰謝料の相場は?
——離婚の際の慰謝料請求
Q15 離婚に際し子どもの親権を得るには?
——親権の帰属
Q16 認知症の親に代わり、自分が代理人になっても構わない?
——成年後見制度
Q17 親の遺言状が2通、どちらが有効?
——複数の遺言の効力

少年事件編
Q18 少年の悪事に対して、処分が軽いのでは?
——少年事件における保護主義
コラム4 法律用語の不思議(その1) 善意? 悪意?
Q19 少年事件の裁判が見られないのはどうして?
——少年審判の原則非公開

裁判一般編
Q20 担当の裁判官を替えられますか?
——裁判の公平の確保と事件の割り振り
Q21 裁判で宣誓する意味は?
——宣誓の趣旨
コラム5 傍聴人は帽子を脱ぐべき?
Q22 神様でもない裁判官が、真と偽をなぜ判断できるの?
——証明責任
Q23 裁判官は3人で結論を出しているの?
——合議の実情

裁判官編
Q24 裁判官の多忙ぶりはどんなもの?
——裁判官のワークライフバランス
コラム6 法律用語の不思議(その2)「原告と被告とを離婚する」?
Q25 裁判官は転勤を拒否できますか?
——裁判官の身分保障
Q26 裁判官はSNSを使って発信していいの?
——裁判官の市民的自由
Q27 意見が異なる場合、判決は「上」の判断?
——裁判官の独立

まとめ編
Q28 裁判は良くなってきているのですか?
——【座談会】裁判の変化について
おわりに

日本裁判官ネットワーク (著)
出版社 : 岩波書店 (2019/4/6)、出典:出版社HP

はじめに

「悪いことをした人に、なぜ黙秘権があって、国の費用で弁護士を付けられるの?」

この質問(本書のQ2)に、「そうそう」と思われる方は結構多いと思います。裁判官で構成し、元裁判官がサポーターを務める私たち「日本裁判官ネットワーク」は、市民の皆さんとの交流を行う中で、そうした疑問の数々に接してきました。インターネット等を通じて情報が氾濫している世の中ですが、裁判についての正確な基礎知識は、まだまだ広がってはいないのではないでしょうか。そのうえ、裁判には難しくて堅苦しく、近寄りがたいイメージがあるため、すすんで正確な知識を得ようという思いも生じにくいのではないかと感じます。

プレーを理解するためには

裁判には、刑事裁判の有罪・無罪、民事裁判の請求認容・棄却をはじめとして、「勝敗」があります。誤解を恐れずに言いますと、裁判と同様に勝敗のあるスポーツや囲碁・将棋等は、ある程度ルールや仕組み、例えばサッカーのオフサイド等を理解していないと、試合を十分楽しむことはできないでしょう。逆に、それらを正確に理解していれば、試合を楽しめるだけでなく、巧みなプレーにもっと感動し、それを行うプレーヤーを応援したくなるのではないでしょうか。そして、そこでの審判の役割が実はとても大きいことも理解できるでしょう。

極刑(死刑)も制度化されている裁判の場合は、スポーツ等とは異なる厳粛な面がありますが、似た面があることも否定できません。ですので、市民の皆さんに、裁判を十分に理解していただき、裁判のプレーヤーや審判を務める法律家の行動を時には称賛し、時にはたしなめていただくためには、裁判のルールや仕組みを正確に理解していただくことが重要だと思います。また、裁判について目の肥えた市民が増えることは、裁判の質を上げていくことにもつながるでしょう。もちろんプロスポーツ等とは異なり、裁判の場合は、どなたでも、例えば交通事故や相続争い等で、裁判の当事者になる可能性があります。激烈な言動が横行する現代においては、冷静に立証と理を尽くして結論を出していく裁判手続は、皆さんの権利保障や紛争解決のために特に重要です。裁判についての正確な基礎知識を持っていただくことは、裁判をより使いやすく、より身近なものにするでしょう。

そんなことを考えて、私たち日本裁判官ネットワークは、市民の皆さんが素朴に抱く裁判の「ギモン」に率直に答えて、裁判の基礎知識をお伝えすべく、このブックレットを編みました。現役裁判官の執筆のほか、老練な元裁判官にもサポーターとして執筆協力をしてもらっています。

ぜひ司法に希望を持って下さい

私たちは、一九九九(平成一一)年に始まった司法制度改革の意義を正しく評価し、同法に希望があることを、若い法律家や学生等に伝えるため、二〇一六(平成二八)年一一月に『希望の裁判所』(LABO刊)という本を出版しました。このブックレットには、その市民版という性格もあります。本書によって同法を少しでも理解していただき、裁判が司法制度改革等を通して変化してきていることを知っていただき、同法に希望が持てると思っていただければ幸いです。

日本裁判官ネットワーク (著)
出版社 : 岩波書店 (2019/4/6)、出典:出版社HP