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健康経営とは?どのように実践する?
近年、従業員の健康管理が企業にとってますます重要な課題となっています。長時間労働の常態化やメンタルヘルス不調などにより、従業員が健康で元気に働くということが実現しにくくなくなっています。そこで注目を集めるのが健康経営です。健康経営の推進による企業のメリットは多くありますが、いざ実践しようと思っても何から行えば良いかわからないという経営者も多いかもしれません。そこで今回は、健康経営の基礎から実践方法まで具体的に学べる本をご紹介します。
日本一わかりやすい健康経営 ー超人手不足社会でも会社が強く、元気になる初めての実践ガイド
日本の未来を明るくする
「健康経営」の本は、とにかくわかりにくいという不満を解決してくれる本です。この本はまるで謎解きをしていくようなワクワクする内容です。とても端的に、それぞれの立場で進めていくことが明確になっており、わかりやすい構成となっています。経営者はもちろん従業員や家族も読むべき内容です。
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なぜ、今、健康経営なのか?
大学病院を辞めて予防医療に9年間取り組んできた医者の私が、なぜ「健康経営」に真剣に取り組んでいるのか? 私の中には 「健康経営」への取り組みをきっかけに本物の予防医療が広まって、会社の未来も日本の未来も明るいものに変わっていけるとい う強く大きな確信があるのです。
2011年を境に日本は大きな岐路に立たされてきました。大震災によって私たちの中に、助け合って分け合って共に生きる、「共生する」考え方が育ち始めました。育ち始めたというよりは、 蘇ってきたという表現の方がピッタリくるかもしれません。
この時代に健康経営をどう捉えるかによって、会社だけでなく日本そのものが全く違った10年後を迎えることになるのです。
健康経営とは「社員を家族のように大切にすること」。この元気になった社員が会社の経営を元気にしてくれ、同時に地域の医 療費・介護費を抑制してくれる。まさに日本の未来を明るくするために天から舞い降りてきた千載一遇のチャンスだと感じている のです。
私が「このままでは医療財政破綻で、日本は沈没する」と確信したのが1995年、23年前のことです。社会保障破綻のシナリ オはすでに厚生労働省のデータでも示されていました。ただ、そのことを問題視する声を聞くこともないまま、私たち一般人は、 つい最近まで「どうにかなる」と感じてきた、あるいは感じさせられてきたのです。1995年の時点で、全てのデータが、近い 将来、年金も医療保険も介護保険も破綻することを示していたにもかかわらず。
超高齢社会は確実に進み、2016年には65歳以上の人口が27.3%となりました。高齢化率は世界No1です。また、高齢化 の中で病気の治療や介護の必要な高齢者がどんどん増加し、医療費の自己負担が上がり、4割負担、5割負担になる可能性も出て きています。年金の受給開始年齢は65歳から70歳、75歳と上がり、安心して年も取れない時代がすぐに訪れることは、経済に詳し くない医者の私にも分かります。「なるかもしれない」という予想ではなく、確実に少子超高齢社会の到来と社会保障の破綻の方 向に向かっているのです。
それなのに、国も私たち国民も有効な手立てを講じないまま、問題を先送りしてきました。その結果、2018年、見事に予想 通りの事態が訪れました。社会保障は毎年40兆円近い税金での補填なしには成り立たない状況。これを赤字国債で補っているので す。年金受給年齢も70歳になり、いずれ年金はスズメの涙ほどになり、生涯現役で働かなくては生活できない時代がすぐそこまで来ています。
日本における医療費や介護費の増加も、会社での社員の体調不良、メタボ、メンタル不調の増加も、その根本的な原因は同じだ と考えているのです。今日まで、「病気にならない」「メタボにならない」「メンタル不調にならない」「うつにならない」「介 護の世話にならない」といった予防医療の実践的な取り組みがないまま、「病気になった人を見つけて治療する」早期発見・早期 治療という現代医療のみをつづけてきたのです。その結果、病人が増え続けています。車でたとえれば、事故車を見つけて修理し ているのと同じです。そもそもの事故の原因の究明が必要なことは、誰が考えても当たり前のことです。原因を解決していかない かぎり事故も病気も減らないのです。
そして、超高齢化と少子化の時代が到来し、社会保障は支えられる側の増加と支える側の減少で、コマのように頭でっかちになり、とても不安定なだけではなく、何もしなければすぐにでも倒れてしまいそうです。
会社の社員も高齢化し、病気やメンタル不調の社員が増加し、家族の介護で仕事に集中できず、生産性も低下してきています。 日本の1人当たりの労働生産性はOECD加盟国の中でなんと1位なのです。ショックでした。
元気な社員
元気な経営陣
元気な家族
元気な高齢者
これなしに日本の未来はありえません。もちろん会社の未来もありません。そしてこの元気を実現するためには、「ヒト」とい う人的資源=人財を健康にする予防医療的なアプローチが不可欠だということ。
「予防医療には日本(会社)の未来を明るくする力がある!」
健康経営は会社を通して、社員と経営者を元気にし、家族を元気にし、会社を元気にする、そして日本中に予防医療を普及する絶好のチャンスだと感じているのです。
この「健康経営」を実現するためには、経営陣が社員を家族のように大切にすること。家族がガンになったら大変です、家族がうつになったら大変です、子供がいじめ(ハラスメント)に遭ったら命がけで守ってあげたいはずです。家族の幸せと同じように 社員の幸せ(健康と豊かさ)を考えることで、社員は会社の繁栄を考え、そこにやりがいを感じて仕事をする。その結果、モチベ ーションが上がり、生産性が上がり、収益が上がる。会社と社員は共に生きているという「共生」の考えなしに健康経営は成り立 ちません。社員は自動車や機械のように老朽化したら使い捨てできるものではありません。長時間労働すればカラダが壊れます。 ハラスメントを受ければココロが折れます。長年ケアをして大切に付き合うパートナー的な存在なのです。
そのためには社員のカラダとココロが元気でなければならない。だから予防医療的なアプローチなしに、実現できるはずがない のです。
理想論だという人もいるかもしれません。でもここへ向かわない限り、会社と日本の明るい未来がないとしたら。ここは百歩譲 って、明るい未来を目指して、みんなで一緒にできることからチャレンジしてもいいのではないでしょうか。
この本は、私が実際に「健康経営」の顧問をしている会社での具体的な進め方をまとめたものです。できるだけシンプルで分か りやすいように、またどの章から読んでもらっても楽しめるようにしました。みなさんの会社で「社員と経営者が元気になる」 「会社の生産性が上がる」ためのエッセンスが詰まっています。「健康経営」を成功に導くための実践的なガイドブックとしてお役に立てれば、これ以上の幸せはありません。
金城実
contents
序文 なぜ、今、健康経営なのか?
第一章 これでいいのか健康経営
◆健康経営が目指すことは何か?
健康経営の本当の意味をご存じですか?
あなたの会社の健康経営実践度をチェック
健康経営という考え方はアメリカで誕生
健康経営の意味を理解していない健康経営優良法人も?
◆健康経営とは社員を家族のように大事にすること
健康経営、こんな取り組みをしていませんか?
健康経営の本当のインセンティブは何か
やるべきことは労働環境改善と社員の健康増進サポート
その取り組みでは健康経営が実現できない理由
健康診断では病気は減らない
健康経営の目的を理解しなければ社員は動かない
◆社員の健康と会社の経営は直結している
社員を大事にすることがなぜ経営にとって良いのか?
1人の社員が3カ月病欠すれば、最低でも300万円の損失
社員の長期病欠による「見えない」三つの損失
社員が疲弊すると生産性は低下する
元気な社員と不健康な社員、どちらが欲しい?
今年元気な社員が来年も元気とは限らない
設備や機械のメンテナンスをするのになぜ大切な社員の健康管理をしないのか
予防医療(セルフケア)にかかる費用は治療費の100分の1
◆健康経営は会社の明るい未来への投資
健康経営で生産性を1・5倍に
良い人材は健康経営企業に集まる時代
労働力人口が800万人減少健康経営は会社生き残りの切り札
第二章 日本の未来から見た健康経営の意味
◆世界ナンバー1の超高齢社会・日本の衝撃
医者の私が企業の健康経営実現に力を入れる理由
人口動態から読み解く日本の近未来
2050年には高齢人口が4割に
「棺桶型」人口ピラミッドの社会とは?
◆超高齢化する日本の未来を明るくするには
超高齢社会で何が起きるのか―医療費の側面から
医療費はもっと抑えることができるはず
予防医療で健康人口を増やし医療費を削減
健康経営の大きなポテンシャル
第三章 健康経営を成功させるには「予防医療」が不可欠
◆健康な身体を作るのは治療医学ではなく予防医療
大学病院で現代の医学に取り組んだがガンの死亡者数は増えていた
先端医療で治療するより、予防医療で病気にかかる人を減らせ
70年代後半から予防医療を国策で進めたアメリカ
アメリカではガンの死亡率が低下している!
◆現代医療(治療医学)は必ずしも健康に結びつかない
ガン検診で見つけられるのは10ミリ以上のガン
治療医学は対症療法 血圧の薬を飲んでも動脈硬化は治らない
予防医療は症状を根本的に治せる
セルフケアは適度な運動と適切な食事から
セルフケアでガンの発症時期も先に延ばせる?
◆予防医療への理解がまだまだ浅い日本
ファッション化した日本の健康ブーム
日本人の楽観的すぎる健康観
「まあまあ元気」の意識を変える
◆予防医療が目指すのは長寿ではなく健康長寿
医療や介護を受ける時期を先へ延ばしていこう
予防医療の重要ポイントはメタボ対策
「クラシックカー」を目指すのが予防医療
第四章 健康経営プロジェクトに向けて準備!
◆健康経営プロジェクトをスタート
健康経営でやるべきことはシンプル
プロジェクトにはチームとスケジュールが必要
健康経営プロジェクトの年間スケジュール
◆健康経営実現で大事なのは準備
チームを結成し健康経営の目標を共有
健康経営成功のカギは社長による「健康経営宣言」
健康経営宣言は会社の内外で繰り返す
健康経営宣言を繰り返すことでコーチング効果も
第五章 労働環境を改善して社員を元気にしよう
◆労働環境改善の第一歩は現状チェックから
職場の疲労度をチェックする
職場のストレス度をチェック
仕事量、自由度、人間関係がストレスに影響
◆長時間労働削減への取り組み 残業時間はイエローカードです
日本の労働生産性は世界4位 長時間労働は効率が悪い
起床から2時間が過ぎたら「酒気帯び運転」状態
起床5時間後の仕事の質は飲酒運転状態
長時間労働を削減するには会議時間を短縮すればいい!
スタンディングで会議を効率的に
長時間労働削減と同時に残業代の補填も必要
コラム●アメリカではスタンディングデスクが人気に
◆ハラスメントはどのように撲滅していくか
ハラスメント撲滅宣言のポスターを社内に
何がハラスメントなのかを明確に示そう
ハラスメントは連鎖する
第六章 健康経営プロジェクトセルフケア実践編
◆健康診断表から問題点、課題をチェック
前年と比べて数値の変動はないか
BMIと体脂肪率から万病のもと「肥満」傾向がわかる
体重ではなく体脂肪率で判断せよ
血圧から血管や血液の状態も見えてくる
課題や気になることを書き出し改善目標を立てよう
コラム●詳しい健康改善アドバイスが欲しい人はDr.セルフチェックを
◆日々取り組むセルフケアを設定する
毎日続けられる運動と食生活の心がけを一つずつ
会社で社員みんなで運動をするのも効果的
「カラダ改善計画&記録シート」に社員全員で記録していこう
◆セルフケアの取り組みのヒントを紹介
ヒントその1 腕振り体操
ヒントその2 バンザイストレッチ
ヒントその3 ゆっくり階段上り
ヒントその4 1日1食は伝統的な日本食を
ヒントその5 箸置きを使ってゆっくり食事
ヒントその6 ベルトが腹八分目を教えてくれる
ヒントその7 食べ過ぎた時は3日間でプラスマイナスゼロに
ヒントその8 お風呂で代謝アップ、免疫力アップ
コラム●私が勧めるメタボ対策 脂肪を落とすことより筋肉をつけることを考えよう
第七章 健康経営実現はセルフケアの習慣化にかかっている
◆社員にセルフケアを実践してもらうには?
セルフケア定着には社員への声かけが必須
記録シートを使って社員とコミュニケーションを
定期的チェックで継続に向けてブッシュ
実行率が高い社員やチームは表彰を
習慣になるには最低3カ月かかる
◆健康経営プロジェクトとしての目標設定は?
健康経営プロジェクト1年目、評価の基準は?
1年で10名の社員がセルフケアを実践するようになれば大成功
10%の「イニシエーター」と連携しよう
3年目に30%達成で健康経営の成功が見えてくる
◆セルフケアの習慣化には認知行動療法を!
命令されたこと、頑張ることは続かない
行動を継続するには自己決定と自己効力感が必要
「目標達成率100%」のセルフケアを設定
続けるコツは「少し物足りない」目標設定
セルフケアの取り組みでは完璧主義はやめよう
「セルフモニター」で自己効力感を高める
担当者はポジティブな働きかけを繰り返そう
コラム●セルフケアを続けるためのヒント集
おわりに
「健康経営」推進ガイドブック
健康経営がよくわかる
漠然とした言葉であった「健康経営」をわかりやすく説明しています。「健康経営」という言葉に興味がある方には、おすすめです。健康経営の普及啓発に長年取り組んできた筆者が、健康経営の基本的考え方、取り組みを進める際のポイントや手順などをコンパクトに解説してくれています。
「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
はじめに
職場での不安感や心配が心身の疾病の原因となりうることが医学的研究で明らかになり、働く人の心身の健康問題が社会的にも注目されています。精神障害等に係る労災請求件数も増加しており、使用者の安全配慮義務をめぐる労災民事訴訟でも高額な損害賠償請求が認められる判例が見受けられます。このようなことから、経営者には一人ひとりの従業員の健康に配慮し、元気に働けるような職場環境を醸成すること、すなわち働く人の健康に積極的な対応をすることが強く求められています。
従業員の健康に経営者が先行投資することで、職場の生産性が向上すること、休業率が減少することは、すでに多くの研究でも指摘されているところです。企業は人なり、といわれているように、企業生産力の源はコンピューターやロボットではありません。企業が存続し続けるためには、その基盤に、お互いの健康に配慮する職場環境があるのです。
また、高齢社会を迎えた今日、従業員の健康に配慮することは、いきいきとしたセカンドライフへとつながります。退職した従業員は、消費意欲の高い顧客の立場で企業を支えたり、地域社会の支え手となることが見込まれます。その結果、地域社会と企業が良好な関係を構築し、連携してお互いを支える関係に変わることも十分考えられます。
経営者が企業利益の創造と働く人の健康増進を両立させることを目的に健康経営を推進し、働く人は自分自身の健康と職場の健康が両立できるよう自らが働きかけることによって、より高いパフォーマンスが発揮されるようになります。
そのためには、経営者はまず先行的に効果的な健康投資を行ないます。その結果、生産性の向上が認められたなら、さらに健康投資を進め、一層の生産性の向上をめざすように経営者が働く人と十分なコミュニケーションを取り、職場環境を改善することでも、いままで以上に高い生産性を確保でき、働く人たちもまた、元気で職務に取り組むことが可能となります。
本書は、「健康経営とはどのようなことか」などの健康経営の基本的な考え方から、具体的な推進方法について述べたものです。経営者、管理監督者、そして働く人の一人ひとりが自分自身の健康に高い関心を持ち、そしてお互いの健康を気遣う職場をつくることが健康経営の実践であり、それが、企業としての活力を維持し続けることにながることでしょう。
2015年7月
特定非営利活動法人
健康経営研究会理事長
岡田邦夫
目次
はじめに
1.健康経営の基本的な考え方
利益追求と働きがい/健康経営とは/健康経営推進の重要性/経営者、管理監督者の大きな影響力/健康経営の基本的考え方/不可欠な職場のコミュニケーション/従業員満足がもたらす労働意欲の向上/成熟した社会の構築に向けて
2.健康経営の3つの柱
[第1の柱]経営者が進める健康経営トップダウンで進める戦略構想
健康経営者としての役割/健康経営事業への展開
Q1.健康経営とはどのような考え方ですか。
Q2.経営者が自社の健康経営に取り組むポイントを教えてください。
Q3.経営者の健康経営の表明とはどのようなものですか。
Q4.健康経営に係る戦略構想とはどのようなものですか。
Q5.健康投資とはどのようなことから始めればよいですか。
Q6.健康経営推進にあたっての経営者の働きかけやコミュニケーションの留意点にはどのようなものがありますか。
Q7.経営者は健康経営に取り組むにあたり、どのようなことから着手すればよいでしょうか。
Q8.事業者と保険者の連携(コラボヘルス)とはどのようなものですか。
Q9.健康経営の目的や効果はどのようにとらえたらよいでしょうか。
[第2の柱]
管理監督者が進める健康経営―職場の快適化
Q1.管理監督者が健康経営に取り組む際の課題を教えてください。
Q2.職場環境の改善に向け、どのような配慮が必要ですか。
Q3.職場環境改善に向けた従業員からの提案や要因、どのように受け止めたらよいでしょうか。
Q4.メンタルヘルスケアにおける「ラインによるケア」とは、どのようなものですか。
Q5.メンタルヘルス不調を発症した部下の復職支援は、どのように進めればよいでしょうか。
[第3の柱]
働く人が進める健康経営一自ら築く健康と体力
Q1.自分自身の健康づくりに取り組むことの大切さとは、なんでしょうか。
Q2.「自己保健義務」とはどのようなことですか。
Q3.メンタルヘルスケアにおけるセルフケアでは、何をすればよいのでしょうか。
Q4.ストレスの気づきはどうすればよいのでしょうか。
Q5.いつも忙しいので運動ができません。どうすればよいですか。
3.参考資料
1.健康経営評価指標(全体像)
2.健康づくり自己点検表
3.「企業の「健康投資」ガイドブック」
コラム
安全配慮義務とはどのようなものか
経営トップの想いと推進担当者の熱意
「健康ソリューション企業」をめざすルネサンス
健康情報の取得・管理と個人情報保護の留意点
国民の健康寿命延伸に向けた健康経営の促進施策
表紙デザイン一矢部竜二
課題ごとに解決! 健康経営マニュアル
健康経営実践のコツがわかる
健康経営は大企業だけでなく中小企業にも普及し始め、関心も高まりつつあります。この本では、健康経営に取り組むための基礎知識はもちろんのこと、顕彰制度の表面的な情報ではわからない時間や労力、コストに見合った効果を出すための実践的手法やコツをわかりやすく解説しています。
はしがき
本書を手に取っていただいたあなたは何らかの形で健康経営に関与するか、実際の担当を担う役割にあるか、助言、指導を行う立場にある方だと思います。あるいは近い将来に職場の健康管理やメンタルヘルス対策に携わる可能性があり、実務に役立つ知識を得たいと考えているかもしれません。
そうした方々に健康経営の顕彰制度で示されている表面的な情報ではわからない、時間や労力、コストに見合った効果を出すための実践的な手法とコツをわかりやすく紹介するのが、本書の目的です。
健康経営を企業等で展開していく際には、やりっ放しにせず、堅実に効果を上げていくことを目指すべきです。失敗すると取り返しがつかない面もありますから、本書では、健康経営を本格的に進めていくにあたって知っておくとよいポイント、課題、基礎知識と実務上のコツを解説しました。最初から通しで読んでいただいた後に、健康経営を推進できる、一通りの知識とスキルが身につくことを目指しています。そのためにとっつきやすく読める具体的な場面も描いてみました。
本書の読者として想定しているのは、健康経営に関する対応を迫られている企業等の管轄部門や責任者、担当者の方、健康保険組合で企業等と連携して健康経営を進める立場にある方です。あるいは、東京商工会議所による健康経営アドバイザー制度で資格を取得した、ないしその予定である社会保険労務士、中小企業診断士、管理栄養士、健康運動指導士や産業カウンセラーの方も含みます。
これまで健康経営に関連するコンサルティングや研修、講演、執筆を多数取り扱った経験では、企業等の担当者、健康保険組合の関係者、社会保険労務士、中小企業診断士等の方々には次の事柄が不足していると感じています。
- 予防医学の基本的な知識
- 職場の健康管理の基本的な知識
- 職場の健康管理の実務経験
- 効果のある健康経営を展開するコツ(スキル)
職場の健康管理を専門にする医師、看護職等の専門家でなければ、これらを知る術はないのですが、それを知らなければ効果の出る健康経営を展開したり、外部専門家として適切な助言や指導はできません。
続く第1章では、職場の健康管理と予防医学のごく基本的な知識を説明します。これらは経済産業省の顕彰制度の前提となる事柄ばかりですが、実際にはよくご存じない方が多いのです。そのままでは、健康経営はキャンペーンを散発的に実施していくだけで終わってしまい、健康経営で目指す従業員の活力向上や組織の活性化は達成できません。
定期健康診断を核とする健康管理は医学を中心に据えた、いわば平面的な対応です。従業員の活力向上と組織の活性化を目指すためには、従業員の健康をより立体的、多面的に捉える必要があります。つまり、健康管理を人事労務管理や経営管理まで範囲を広げ、「健康は人材の課題と対応、人的資源管理の一部である」という考え方にリセットしなければなりません。
本書には、健康経営で効果を出せるコツや鍵となる事柄を盛り込んでみました。例えば、担当者が頭を悩ますことの多い、経営者に健康経営を説明し了承を得る際のポイントを示しています。意思決定者の理解と同意がなければ、健康経営を推進することはできないからです。
筆者の実務経験で得た知識とスキルをご活用いただき、様々な職場で失敗のない、効果の出る健康経営を展開していただければ幸いです。
2018年3月
株式会社健康企業代表・医師亀田高志
目次
序章 健康経営に取り組む前に知っておきたいこと
1 健康経営ブームの到来
2 健康経営の原点、”Healthy Company” とは?
3 日本に輸入された“ヘルシー・カンパニー”
4 共通言語となった健康経営
5 健康経営を展開する力
6 健康経営の見かけは経済産業省、中身は厚生労働省
7 ストレスチェックでも目立つギャップと弊害
8 健康経営の顕彰制度に応募する供給サイド
9 健康経営は総論賛成でも各論は?
10 健康経営の障害となる「手段の目的化」
11 健康経営は企業価値を高めるのか?~ニワトリが先か、タマゴが先か?
12 手段の目的化の副作用
13 総花的な健康経営にしてはいけない
第1章 健康経営を進める際に必要な基礎知識
本章のポイント
1 予防医学には4つの段階がある
2 予防医学的な対策における2つの戦略
(1) 2つの戦略とは?
(2) ハイリスク戦略の狙い
(3) ポピュレーション戦略の狙い
3 健診と検診の違い
4 定期健康診断の事後措置と就業上の措置
5 健康管理のマネジメントシステム(健康経営全体のPDCAサイクル)
6 個別の項目に適用する「課題ごとのPDCAサイクル」
7 リスクアセスメント
8 健康管理を含む労働衛生の5管理
9 長時間労働対策を5管理で考える
10 健康経営で見直したい健康の定義
11 健康経営の施策に対する評価の仕方
12 評価軸と目標設定はペアで考える
13 ワークエンゲイジメントとは?
14 ヘルスリテラシーとは?
15 アブセンティーズムとプレゼンティーズム
第2章 健康経営全体の PDCAサイクルの運営の実際
本章のポイント
1 健康経営全体のPDCAサイクルを俯瞰する
2 経営理念(経営者の自覚)として行うこと
(1) 健康経営は経営者の自由意思
(2) 経営者との対話のポイント
(3) 経営者からいきなり指示があったら
(4) 健康宣言や健康経営の方針を文書化する
3 組織体制を整備する
4 制度・施策実行
(1) 主体は健康保険組合か企業等か?
(2) 企業等と健康保険組合との連携の実際
(3) 企業等と健康保険組合との連携のメリット
5 制度・施策実行における課題の整理
(1) 健康経営のリスクアセスメントを実施する
6 法令遵守・リスクマネジメント
(1) 労働安全衛生法令における要求事項への順守状況をチェックする
(2) 衛生委員会の開催と活用
7 評価・改善
(1) 評価と改善のための目標設定
(2) 対策の優先順位付けにおける注意点
(3) 三次・四次予防、二次予防、一次予防の順番が基本
(4) メンタルヘルス対策も三次・四次予防から
(5) 評価と改善・再計画の流れ
第3章 課題ごとのPDCAサイクルに取り組む前に
本章のポイント
1 健康課題と対策状況の再確認
(1) 健康経営に示された健康課題は?
2 健康課題ごとの問題と実態
(1) 定期健康診断における課題
(2) ストレスチェックの実施
(3) 健康教育
(4) 治療と仕事の両立支援
(5) 健康増進活動
(6) 感染症対策
(7) 過重労働対策
(8) メンタルヘルス不調者への対応
第4章 健康経営の実践~健康課題ごとの PDCAサイクルを回していく~
本章のポイント
A 動脈硬化への対策
(1) 動脈硬化の本質的な問題は?
(2) 動脈硬化に対する具体的な健康施策と優先順位は?
(3) 健康診断は年中行事?
(4) 定期健康診断の充実を図る~定期健康診断の効果的な運営の流れ
(5) 過重労働対策における動脈硬化の重要性
(6) 過重労働対策の全体を把握し、確実に実行する
(7) 労働衛生の5管理から過重労働対策を俯瞰する
(8) 予防医学の4段階での再整理
(9) 動脈硬化に関する従業員のリテラシーを強化する
(10) 心筋梗塞を模擬体験
(11) 行動変容の可能性を高める工夫
(12) 動脈硬化に対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(13) 動脈硬化に対する健康施策から活力向上・活性化を実現する工夫 ~社会的な健康から考える
(14) 身体的な面から活力向上と活性化を図る
(15) メンタルヘルス面の活力向上と活性化は可能か?
B メンタルヘルスへの対策
(1) メンタルヘルスの本質的な問題は?
(2) 厚生労働省の準拠するストレス理論とは?
(3) 精神科医はどのように不調を診立てているのか?
(4) うつ病のメカニズムと職場への影響
(5) メンタルヘルス不調は珍しくない
(6) メンタルヘルス不調の定義を再確認する
(7) メンタルヘルスに対する具体的な健康施策は?
(8) メンタルヘルスに対する健康施策の優先順位は?
(9) やりっ放しのストレスチェックと行き当たりばったりの不調者への対応
(10) メンタルヘルス対策の充実を図る 1~ストレスチェックの確実な実施
(11) メンタルヘルス対策の充実を図る 2~不調者への対応の確実な実施
(12) 不調者への対応で人事部門が行う作業は?
(13) メンタルヘルス不調への対応におけるコンプライアンスを理解する
(14) メンタルヘルス対策に対して労働衛生の5管理は機能しているか?
(15) メンタルヘルスに関する管理職のリテラシーを強化する
(16) メンタルヘルスに対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(17) メンタルヘルスに対する健康施策から活力向上・活性化を実現する工夫
(18) 集団分析の結果をもとに職場環境改善活動に取り組む
(19) 健康情報管理の堅実な運営
(20) 障害者雇用も意識する
C がんへの対策
(1) 職場におけるがんの本質的な問題は?
(2) がんに対する具体的な健康施策は?
(3) がん検診を推進する
(4) がん検診の精度管理という考え方
(5) がん検診で人気の腫瘍マーカーの問題
(6) 職場復帰支援と治療と仕事の両立支援を優先する
(7) リテラシー強化をどう図るか?
(8) 管理職に伝えたいこと
(9) がんに対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(10) 施策の上手な運営と活力向上と活性化を得るコツ
D 生産性と活性化等への対策
(1) 生産性や活性化に関する本質的な課題とは?
(2) 経営者の健康習慣と健康状態の影響
(3) 高年齢労働者の機能低下への対応 ~年齢や加齢現象に配慮する
(4) ストレスチェックを組織の活性化に活用する ~集団分析の活用方法から
(5) 集団分析の結果を管理職にフィードバックする
(6) 職場環境改善活動を行う
(7) 職業性ストレス簡易調査票の利用
(8) 従業員の生産性を向上させるセルフケア研修
(9) プレゼンティーズムの最小化
(10) 就労不能状態を経済面でカバーする
(11) 海外赴任の問題
(12) 嗜好品である、タバコ対策を考える
(13) 感染症対策の応用~危機管理対策との統合
(14) 働きやすい職場づくり
(15) 健康経営と人事施策との統合
巻末資料
健康経営に関する参考ウェブページ (2018年2月時点)
改訂版 企業・健保担当者必携!! 成果の上がる健康経営の進め方
健康経営の基本がよくわかる
健康経営について基本的な考え方と進め方をわかりやすく解説しています。企業内で既存の産業保健の取組みを活用して、どのように健康経営を推進するかを解説した初めての本格的な書籍です。日本を代表する産業医の先生が書かれており、非常にわかりやすく書かれています。
はじめに
本書は、自社の従業員のために、ビジネスとして、そして行政施策としてなど、様々な立場で健康経営®に関わるすべての関係者のために書いたもので、健康経営の基本的考え方と進め方を私なりに整理した内容になっています。これまで健康経営に関しては、理念や行政施策を紹介する書籍は出版されていますが、企業内で既存の産業保健を活用して、どのように推進するかについて書かれた初めての本格的な書籍だと認識しています。
最近では、私が健康経営の専門家であるように受け取られ、このテーマを政策課題とする省庁、ビジネスにしようとする企業、健康経営を推進しようとする企業などから相談が来るようになりました。しかし、私は自らを健康経営の専門家として位置付けたことはありません。長年、産業医学または産業保健という分野を専門として、様々な実践および研究の経験を積んできましたが、そこに健康経営というキーワードが降ってきたにすぎないのです。それでも、2013年4月に産業医科大学産業生態科学研究所に産業保健経営学研究室が発足し、その初代教授に就任したことにより、本格的に産業保健を経営的側面から分析・検討することになりました。同じタイミングで、厚生労働省の政策研究である厚生労働科学研究で、「労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究」に研究代表者として取り組むことになりました。それ以降、産業保健経営学研究室では、産業保健活動が企業の生産性や経営上の成果に与える影響の分析、従業員の健康への投資における経営資源の適正配分の検討、企業グループ全体での産業保健の統括マネジメントのあり方などを主な研究テーマにしています。これらは、明らかに健康経営の推進に必要な主要テーマとなります。つまり私は、産業保健を経営的な側面から検討し、「企業トップがリーダーシップを取って展開する自律型産業保健活動」が我が国で推進されることを目標に研究を行っているわけですが、それに健康経営という名前が付けられたということになるわけです。
健康経営には、政策側面、研究側面、実践側面があります。私が、健康経営の政策側面に関わったのは、2013年に開始された次世代ヘルスケア産業協議会の委員に選ばれ、健康投資ワーキンググループの主査になったことによります。ある後輩の推薦でその話が来たのですが、健康経営推進の検討を行いながら、健康経営の定義や推進に関していくつもの課題を感じていました。そもそも健康投資ワーキンググループは、経済産業省が担当していることもあり、企業に従業員の健康についてどのように投資させるかといった政策側面の議論が中心です。2006年にNPO法人「健康経営研究会」が設立され“健康経営”が商標登録されていますが、研究側面について、健康経営が企業の経営に与える影響に関する研究結果は主に欧米のものであり、日本でのデータは不足しています。また、企業はどのように従業員の健康に投資するかといった実践側面の話はほとんど出てきません。すなわち政策側面が先行しているのです。
研究側面は引き続き研究を続けるとして、実践側面については早急に概念整理が必要と考えました。特に、健康経営の評価指標や公表資料では労働者の健康に関連した法令遵守やリスクマネジメントは当然のこととして、それ以上の取組みを健康経営として評価しようとしています。しかし、この当然のことこそがまず行うべきことであり、その達成には専門知識とかなりの努力が必要であり、十分なレベルに達成している企業は多くはないいという実態があります。そのような課題の中で、自律型産業保健活動である健康経営の実践論の具体化が早急に必要と感じました。
私はこれまで40冊以上の書籍の出版に関わってきましたが、単著での執筆はめったになく、本書は、私にとって2003年に出版した「マネジメントシステムによる産業保健活動」(労働調査会)以来の単著での書籍です。本書の執筆を思い立ったのは、健康経営の具体的実践論を表現したいということに加えて、2つの想いがありました。
第一は、産業保健スタッフに向けてのものです。最近の労働安全衛生法の改正や行政ガイドラインのテーマには、受動喫煙防止、ストレスチェック、化学物質リスクアセスメント、両立支援などがあります。これらを並列プログラムとして捉えると、産業保健がどんどん拡大していると感じ、産業保健スタッフの多くが振り回されてしまいます。私は、2013年に出版された『産業保健マニュアル改訂第6版』(南山堂)の総編集を務めました。416ページにわたって、細かい字で大量の情報が記述されており、おそらく産業保健に関するもっとも多くの情報が詰込まれたマニュアル本です。並列で考えれば、それだけの情報を理解して取り組まなければならないのが産業保健です。しかし、このようなたくさんの並列型プログラムで成り立っているというのは誤解であり、そこには基本的な枠組みとプロセスがあり、それを理解すれば、産業保健はそれほど複雑なものではありません。『産業保健マニュアル』も辞書的な目的で用いればよいのです。そこで本書では、そのような基本的な枠組みやプロセスを中心に記述して、テーマ別の活動プログラムの記述は例示に留めることにしました。
第二は、極めて個人的な理由です。1995年に30代で『企業医務部の挑戦、産業医奮闘す!』(日本経済新聞社)を単著で出版した際、40代、50代とその時点で自分自身が到達した産業保健体系を書籍として社会に提示しようと決意しました。40代は、ちょうど外資系石油会社の専属産業医から大学教員に異動する際、『マネジメントシステムによる産業保健活動』(労働調査会)を出版する機会を得ました。そして、今回、50代の書籍を出版する機会を得たのです。60代の書籍が書けるかどうか定かではありませんが、まだまだ駆け出しの産業医だったころの決意を現実化することができました。
長年温めた本書の執筆は、それほど苦労なく一度終えたのですが、健康経営と産業保健の基本から始まって、健康経営で展開される産業保健プログラムの内容、そしてその運用方法に及んだ内容は、健康経営に関わる多くの人に読んでいただきたいという想いに比べて、とても難解になってしまっていました。そこで、ドラネクスト社という架空の会社の担当者に登場してもらい、彼らの健康経営の推進を支援することを前提とした解説という形をとらせていただきました。また、コラム、イラスト、図表などで、可能な限り分かりやすく表現したつもりです。特にイラストは、産業保健を十分に理解している方にお願いしたいと考え、私の担当する産業医実務研修センターで専門的な修練を積んで産業医として活躍している簑原里奈先生と横山麻衣先生の二人にお願いしましました。読者の理解を進めるうえで、期待以上に素敵なイラストを描いてくれたと思います。それでも、まだ難しいというお叱りを受けると思いますが、ぜひ、お付き合いください。
最後に、解決していない課題について触れたいと思います。今回のストーリーは、ドラネクスト社の澤下社長からの大崎部長に対する健康経営導入の検討という指示から始まっています。しかし、健康経営の推進に興お味のない経営者に対して、健康経営の価値を理解していただき、投資の意思決定をしていただくための方略については見つかっていません。政策面でも、実践面でも、健康経営が広がるためにも大変重要な事柄です。ぜひ、皆さんも一緒に考えていただきたいと思います。
2016年11月森晃爾
本書の初版本を出版して2年間が経ちました。この間、私たちの当初の予想をはるかに超えるスピードで健康経営の取組みは広がりました。私自身、企業や健康保険組合、その他の講演会で健康経営について話をするたくさんの機会をいただいており、参加される方の真剣度を肌で感じています。ただ、私のように長く職域における予防医学に関わってきたものからすると、今の動きが一過性のブームで終わるのではないかと少し不安です。これからの数年は、健康経営が日本社会により深く浸透するとともに、社会の課題解決に貢献できるような成果を出していく勝負の期間です。読者の皆さんをはじめ、多くの方々と取り組んでいきたいと思います。
2018年10月森晃爾
「健康経営®」は、特定非営利活動法人・健康経営研究会の登録商標です。
目次
はじめに
プロローグ
第1日 健康経営と産業保健の背景
1. 産業保健とその目的
2. なぜ企業は、産業保健体制を構築し、活動を行わないといけないのか
3. 企業の視点での産業保健と労働者の視点での産業保健
4. 健康経営の経緯と政策側面
5. 健康経営が企業経営に及ぼす効果
6. 産業保健と健康経営の統合
第2日 健康経営・産業保健活動の考え方
1. 健康経営の目的と社会的価値
2. 自律型産業保健活動における法令遵守と自己規律達成の関係
3. リスクマネジメントの基本的考え方
4. 安全配慮義務と知る権利
5. 法令遵守のための取組み
6. 健康増進活動の勧めと働き方改革
7. 健康経営と人材マネジメント
第3日 健康経営のための体制づくり
1. 健康経営に必要な社内体制
2. 経営トップのリーダーシップの重要性
3. 産業保健を担う専門人材の活用と専門職の価値
4. 産業保健マネジメントの仕組みと産業保健チームの構成
5. 管理監督者の役割
6. 健康保険組合との連携、コラボヘルス
7. 産業保健サービスの質の管理と外部委託
第4日 リスクマネジメント型産業保健プログラム
1. リスクマネジメント型産業保健プログラムの基本
2. 職場環境や作業に存在するリスク対策
3. 仕事と個人の適応性に存在するリスク対策
4. 健康障害要因による健康影響の評価
5. 生活習慣病等の個人に存在するリスク対策
6. クライシスマネジメント
第5日 支援・増進型産業保健プログラム
1. 支援・増進型産業保健プログラム
2. 治療と仕事の両立支援というアプローチ
3. プレゼンティーイズム対策
4. 高年齢労働者、女性労働者等の従業員の特性に合った健康支援
5. ポジティブヘルスアプローチ
6. 働き方や職場環境へのアプローチ
7. 健康情報の管理と活用
第6日 産業保健マーケティング
1. 産業保健マーケティング
2. 職場の理解とニーズ把握
3. 産業保健プログラムの優先順位
4. 健康経営・産業保健活動の評価指標
5. 健康経営・産業保健プログラムの企画
第7日 産業保健マネジメント
1. マネジメントシステムの基本
2. 基本方針・要求事項・目標
3. マネジメントシステムを用いたプログラム展開
4. 監査と継続的改善
5. 目的別プログラムとマネジメントシステム
6. 健康経営の取組み開示と健康会計
第8日 健康経営の実践
1. 健康経営の導入
2. 健康経営の展開
3. 健康経営の定着
4. グループ経営への展開とグローバルマネジメント
5. 中小企業における健康経営
6. 経営施策とHealth Impact Assessment
7. 社会的課題に対する健康経営の貢献
エピローグ
おわりに
プロローグ
ある日、知人の紹介で、自動車部品会社のドラネクスト株式会社から大 崎人事部長が、部下の山上人事課長を伴い、私の研究室にやってこられま した。ドラネクスト社でも健康経営を展開することになったとのこと、相 談に乗ってほしいというのが、来訪の目的でした。
経緯をお聞きすると、5ヵ月ほど前に、同社の澤下社長が出席していた 業界団体の会合で、同業の企業が取り組む健康経営が話題となったようで、 会合から戻った澤下社長に呼ばれた大崎部長に、ドラネクスト社に合った 健康経営の取組みについて検討するように指示があったということでした。
大崎部長は、人事課で健康経営の検討を担当するように山上課長に指示 するとともに、その後、雑誌の記事や行政機関、経団連等の民間団体が主 催するいくつかの関連シンポジウムに参加して、自分なりに健康経営の目 的や取組みのイメージを大よそ掴むことができたようです。しかし、多く が枠組みの話であったり、うまく行った事例であったりで、その中から具 体的な自社に合った健康経営を考えあぐねていたようです。
私は、ドラネクスト社という名前を知っていましたが、学会でもこの会 社の産業医や保健師に会ったことがなく、どのような特徴のある会社か、 これまでどのような産業保健活動が行われているのか、まったく情報があ りませんでした。そこで、少し会社のことを聞いてみることにしました。
ドラネクストは、大手自動車会社の日田自動車の系列部品会社で、従業員数約 6,500人、国内外の子会社を含めると従業員数37,000人の規模である。主に、 自動車のエンジンや電装品等の部品を製造しており、最近では日田自動車以外の自 動車会社にも製品を供給している。主な事業所は、本社の外、国内に4工場、海外 に10工場(アメリカ2工場、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、中国2工場、 タイ、イギリス、ベルギー)、日本、アメリカ、ドイツに研究開発拠点を持っている。
この会社の健康経営を考えるにあたって、その基盤となる産業保健につ いて、人事部ではメンタルヘルス対策には関与していたようですが、多く を環境安全室に任せていたので十分に知識を持っていないようでした。ま た、会社の産業医も産業保健が専門ではないとのことでしたので、まずは、 産業保健の基本的なことから話を始めることにしました。
※本書に出てくる社名、登場人物、場面設定は、すべてフィクションです。
●登場人物紹介●
大崎 人事部長
山上 人事課長
森田 常務理事
堀川 保健師
橋口 環境安全部長
働き方改革を意識した 健康経営実践マニュアル
健康経営のノウハウがよくわかる
健康経営を実践するためのノウハウや、働き方改革関連法への対応はもちろん、健康経営度調査票の回答・入力方法についてもあますところなく解説しています。著者が社会保険労務士、中小企業診断士、産業医と各分野のスペシャリストなので、健康経営の道すじがわかりやすく解説されています。働き方改革と連動しているのもこの本のいいところです。
はじめに
わが国の超少子高齢化社会においては様々な問題がありますが、特に企業では喫緊に解決しなければならない最重要課題に「人手不足」が挙げられます。この人手不足というのは「ただ人が足りなくて仕事が回らない」だけではなく、結果的には長時間労働、メンタルヘルス不調等にも波及し、経営者やそこで働く従業員の心も身体もどんどん疲弊させてしまいます。企業規模に関係なく、経営者と従業員がともに健康で活き活きと働くためには職場環境の整備や、それまで自己責任として考えられていたヘルスリテラシーを高め、個人の健康の保持増進が重要といえる時代となっています。
2013年以降、健康寿命の延伸や医療費の適正化等を解決するための施策としてわが国に急速に広まり始めているのが「健康経営」です。この健康経営というのは、土台が法令遵守であり、職域健康づくり、人事労務管理、リスクマネジメント、人材育成、生産性向上、業績向上等のさまざまな経営課題を、健康経営というキーワードを軸に解決するツールです。
一方、健康経営の大前提である法令遵守に目を向けると、2019年4月以降、順次働き方改革関連法がスタートしていますが、特に中小企業では法改正への対応に苦慮している実態が見受けられます。例えば、「時間外労働の上限規制」や「使用者による年次有給休暇の時季指定」に対応はしているけどコストが増加し、利益率が低下している企業も少なくありません。それはなぜか?「組織風土に根付いていない」、「経営者及び従業員が行動変容できない」、「ヘルスリテラシーが向上しない」、「仕事の仕方が何も変わらない」等の内部からの対応が進まないからではないでしょうか。そこで実体験を申し上げますが、「働き方改革」を実践し効果を上げている企業は、必ず「健康経営」の視点を取り入れ、この2つの取組みを車の両輪として同時に実践しています。その結果、「人の健康」と「企業の健康」を保持増進させ、課題を解決し、そこで働く従業員の自己実現の達成、そして社会への貢献とつながっていると感じています。
本書は、働き方改革だけがクローズアップされてしまいがちな状況の中、健康経営との親和性や両軸としての必要性を語った他にはない内容と自負しています。それは「人事労務管理の専門家」である社会保険労務士、「企業の経営課題をトータルに解決できる」中小企業診断士、「産業保健のプロフェッショナル」である産業医とコラボし、各専門家の経験や視点に基づき、企業に求められる「働き方改革関連法への対応」や「健康経営への取組み」について、横ぐしをさしている構成になっているからです。
加えて健康経営の取組みが進んできた企業が目指す顕彰制度に「健康経営優良法人」があります。中小企業に対しては、経済産業省から「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定基準解説書」が発行されていますが、「健康経営優良法人(大規模部門)」を目指し、さらにその上位500社である「ホワイト500」の認定を目指す大規模法人が提出する「健康経営度調査」には、網羅的な解説書がないため、企業も自社が実施している取組みを「健康経営度調査」の各項目と紐づけることに苦戦をしている実態があります。そのような企業の担当者の皆様にも、健康経営アドバイザーを所持し健康経営コンサルタントを行う専門家の皆様にも、知識の整理が進むような構成になっています。
結びになりますが、企業の継続的発展のため「攻めの働き方改革」や「攻めの健康経営」として前向きに取り組み、また職場で働く皆様が健康で活き活きと仕事に取り組み、その能力を最大限に発揮できるような環境に寄与できる書籍になれば幸いです。
2020年4月
特定社会保険労務士
健康経営エキスパートアドバイザー稲田耕平
目次
第1章 健康経営が労務管理のベースとなる日
第1節 健康経営とは
1 はじめに
2 健康経営とは
3 わが国の抱える課題
1生産年齢人口の減少等による労働力不足
2従業員の高齢化等
3医療費の適正化等6
4メンタルヘルス不調者増加
4 職場環境と従業員の健康との関係
5 健康経営の効果
6 健康経営実践のための各々の役割
1経営者の役割
2管理職の役割
3従業員の役割
4産業保健スタッフの役割
7 働き方改革と健康経営の関わり
1個の視点と組織の視点
2ホワイト企業を目指すには? 10
第2節 健康経営に関する顕彰制度
1 健康経営のフレームワーク
2 健康経営に関する顕彰制度
1健康経営銘柄とは
2健康経営銘柄の選定方法
3健康経営優良法人(大規模法人部門)とは
4健康経営優良法人(中小規模法人部門)とは
5健康経営優良法人の対象となる法人
第2章 健康經營優良法人 (大規模法人部門・ホワイト 500)を取得しましょう
第1節 健康経営度調査と記入ポイント
1 健康経営度調査とは
2 調査票の入手
3 「健康経営銘柄・健康経営優良法人認定制度」の選定(認定)フロー
4 健康経営銘柄選定における必須要件兼健康経営優良法人(大規模法人部門)認定要件
5 健康経営度調査票の目次
6 健康経営度調査票の回答入力時のポイント
第2節 申請スケジュールと取得ポイント
1 申請スケジュール
2 申請単位
3 保険者の要件
4 取得のポイント
1大規模法人部門
2ホワイト 500
5 調査結果集計データ
第3節 健康経営優良法人認定基準のポイント
1 前段の企業情報の回答 (企業属性、従業員属性)
2 「1. 経営理念 (経営者の自覚)」
3 「2. 組織体制」
1「経営層の体制」
2「保険者との連携」
4 「3. 制度・施策実行」
1「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」―健康課題の把握
2「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」―対策の検討
3「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―ヘルスリテラシーの向上
4「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―ワークライフバランスの推進
5「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―職場の活性化
6「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―病気の治療と仕事の両立支援
7「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―保健指導
8「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―健康増進・生活習慣病予防対策
9「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―感染症予防対策
10「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―受動喫煙対策
11「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―その他の施策
12「取組の質の確保」―専門資格者の関与
5 「4. 評価・改善」―取組の効果検証
6 「5. 法令遵守・リスクマネジメント」(自主申告)
第3章 働き方改革関連法 ~健康経営と働き方改革は車の両輪~
第1節 働き方改革関連法
1 働き方改革関連法の概要・改正内容・施行時期
2 労働時間法制の見直し
3 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
4 各改正法の施行の時期と中小企業への猶予措置
5 適正な労働時間の把握義務
6 社員の健康増進を意識した働き方改革
第2節 改正法の内容
1 労働時間に関わる改正
1時間外労働の上限規制 (労基 36)
2高度プロフェッショナル制度 (労基 41の2)
3フレックスタイム制の拡充 (労基32の3、32の3の2)
2 年次有給休暇に関わる改正事項
1年次有給休暇制度の基本的なルール
2年5日の年次有給休暇の確実な取得の義務化
3 労働時間等設定改善法についての改正事項
1勤務間インターバル制度の概要
2勤務間インターバル制度導入の現状
3勤務間インターバル制度導入への数値目標
4企業で勤務間インターバル制度を導入する際のフロー
5勤務間インターバル制度の運用事例
6勤務間インターバル制度を導入する場合の就業規則記載例
4 労働安全衛生法に関わる改正
1労働時間の状況の把握(安衛法66の8の3、安衛則 52の7の302)
2産業医等の活用
3面接指導の徹底
第4章 業種別・職種別 働き方改革を意識した健康経営事例
第1節 業種別編
1 建設業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
2 介護業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
3 医療機関のケース 173
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
4 運送業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
5 調査研究・コンサルティング業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
第2節 職種別編
1 事務職編
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
2 営業職のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
第3節 生産性向上事例 「従業員の作業を顧客の作業に置き換える」
1 居酒屋のセルフオーダーシステム
2 スーパーのセルフレジ (セミセルフレジ)
3 他業種への応用例 ~ネット経由での注文~
第5章 ドーイツ博士とローチン助手の 今更きけない同一労働同一賃金キホンのキ
第1節 ほんとに初歩の初歩!基礎知識編
1 働き方改革と同一労働同一賃金
2 均等待遇と均衡待遇
3 説明義務、行政による助言・指導等、施行時期
第2節 企業は一体何をやればいい?実務編
1 対応の流れ
2 均等待遇・均衡待遇の確認の具体例
3 外部リソースの活用
第3節 ガイドラインダイジェスト
【巻末資料】(外部リソース、関連サイト等の紹介)
実践健康経営 健康的な働き方への組織改革の進め方
健康経営の実践書
この本は、とある企業の経営企画室を中心に始められたプロジェクトを描いたストーリーを軸として、その場面にまつわるテーマごとに、基礎から実践まで、順序立てて構成しています。なぜ今健康経営なのか?健康とは何か?どのように行動したらいいか?実践にヒントになる一冊です。
はじめに
近年、健康経営や働き方改革について、関心が高まってきています。その関心に応えるべく、今回、本書をとりまとめました。なぜ今、健康経営が注目されるのか、働き方改革が促進されるのか、その背景や目的、具体的な施策や進め方まで、幅広い読者の皆様方に最後まで関心を持っていただけるように簡単なストーリーを挟み込みながら、実践書という位置づけで網羅的にまとめたものです。
本書は、人事部門の方々だけでなく、健康経営を目指す組織のリーダーはもちろん、その仕組みをつくり・支える、草の根としての社員の方々も同時に対象としています。そのため、基礎的なことから実践的なことまで、順序立てて構成しています。
PART1では、厚生労働省の取組みや社会的背景などを整理しています。PART2では、健康的な働き方を目指す上での方針や取組みの方向性を示し、PART3で、実際のアクションプランとして、組織改革のステップを順に解説しています。
解説部分だけであれば、ご関心のある部分からお読みいただけると思います。一方、網羅的に、ストーリー仕立てで健康的な働き方と組織改革の進め方を紹介していることが本書の特徴です。ストーリーの展開に対応した内容を、それぞれ解説していく形で本書は読み進めることができますので、組織の中で健康的な働き方の仕組みを構築する主人公・松田のストーリーを楽しみながら、本書をお楽しみいただければ幸いです。
本書は、3人のコンサルタントによる共著という形で執筆しています。
吉岡拓也はデロイトトーマツグループの人事コンサルタントです。厚生労働省や全国各地の各組織に対して、人事・労務の面から最前線でコンサルティングをしています。本書では、PART1の健康的な働き方の必要性に関するパートやストーリー部分を担当しています。
折本敦子グレイスは、健康経営やヘルスケア分野の政策を中心に活躍するコンサルタントです。普段は、健保組合の立ち上げや各組織の健康経営について、まさに本書で取り上げるテーマでコンサルティングをしている一方で、自治体向けの医療・介護・健康関係の計画立案なども手掛けています。PART1の健康経営に関する解説や、PART2の事例紹介のパートを担当しています。
根本大介は、厚生労働省や医療施設に向けたコンサルティング、健康的な働き方に直接的につながる勤務環境改善やヘルスケア分野の基盤整備の支援などで活躍しているコンサルタントです。本書ではPART2のマインドや組織分析、PART3の健康的な働き方に向けたステップのパートを担当しています。
本書により、健康的な働き方に向けた活動が活発になることを何より期待しております。
2018年11月
有限責任監査法人トーマツ
著者一同
目次
はじめに
STORY 登場人物
PART 1 健康的な働き方を求める社会的背景
STORY プロローグ
1-1. 個人に応じた健康的な働き方の必要性
1-2. 世界から見た日本の労働環境
1-2-1. 労働生産性
1-2-2. 長時間労働
1-2-3. 休暇・休日
1-2-4. 仕事の仕方、させ方
1-3. 多様化する労働者意識やワークスタイル
1-3-1. 多様化する労働者の価値観
1-3-2. キャリア形成の変化
1-3-3. 現代人の仕事観と新たなワークスタイル
1-3-4. 良い労働環境とは何か
STORY 健康であることの必要性
1-4. 健康経営とその背景
1-4-1. 健康的な働き方の発端(ヘルシーカンパニーとは)
1-5. 各省庁での施策
1-5-1. 各省庁での取組み
1-5-2. 旧労働省の政策動向
1-5-3. 働く環境の変化
1-5-4. 従業員の健康への投資
1-5-5. 各政策の企業のとらえ方
1-6. 健康経営
1-6-1. 健康経営銘柄とは
1-6-2. 経営理念・方針
1-6-3. 組織体制
1-6-4. 制度・施策実行
1-6-5. 評価改善
1-6-6. 法令遵守・リスクマネジメント
PART 2 健康的な働き方を目指して
STORY プロジェクトの発足
2-1. 戦略としての「健康的な働き方」の意義
2-1-1. 短期的なメリット
2-1-2. 中長期的なメリット
2-2.効率化と健康度の両立に向けて
2-2-1. 業務と健康管理は「トレードオフ」か~モーレツ社員の終焉~
2-2-2. 非効率に業務をこなすことで、健康を確保するパターン
2-3. “健康”と”働くこと”は、トレードオフではない
2-3-1. 業務とはそもそも苦しいものなのか
2-3-2. マインドの重要性
2-3-3. 健康確保と会社への貢献を両立するモデルを目指す
2-3-4.経営と健康的な働き方を両立する、医療機関における制度事例
2-3-5. 労働集約型産業における、働き方改善の意義
2-3-6. 健康経営の推進にインセンティブを付与する事例
2-4.個人の行動変容がキーとなる
2-4-1. 行動変容の重要性
2-4-2. 無関心期からの脱出がカギ
2-4-3. 無関心層へのアプローチー
STORY 第2回プロジェクトミーティング
2-5. 業務・組織のタイプと健康的な働き方
2-5-1. 業務・組織のタイプによって変わる健康的な働き方の対策
2-5-2. なぜ組織風土に応じて健康的な働き方に対するアプローチを変える必要があるのか
2-5-3. 組織風土の分類
2-5-4. 健康的な働き方に向けた取組み
2-5-5. 組織風土は「過去のもの」であり、マネジメント可能なもの
2-5-6. 組織タイプ別の健康的な働き方の意義
STORY 組織分析結果の共有
2-6. 健康経営事例
2-6-1. 健康経営銘柄・ホワイト500取得企業から見えてくる企業タイプ
2-6-2. ローソン
2-6-3. ロート製薬
2-6-4. ダイフク
2-6-5. 伊藤忠商事
2-6-6. ANAホールディングス
2-6-7. ベネフィットワン・ヘルスケア
2-6-8. 丸井グループ
STORY 幸福度の必要性
2-7. 幸福度
2-7-1. 幸福度曲線
2-7-2. 「幸福度」に関する最近の研究
2-7-3. 幸福度と健康の関係
2-7-4.健康観が主観的なものなら、解釈方法も主観的な方法を活用する場合も
PART 3 健康的な働き方に向けたステップ
STORY プロジェクト再始動
3-1. 健康的な働き方に向けたステップ
3-1-1. 方針設定
3-1-2. 現状把握のための手法と項目
3-1-3. ステークホルダー視点での注意点
3-2. 体制構築
3-2-1. トップの理解
3-2-2. 社内外への情報発信
3-3. 健康的な働き方の仕組みづくり・施策
3-3-1. 教育機会の設定
3-3-2. 病気の治療と仕事の両立支援
3-3-3. 食生活の改善に向けた取組み
3-3-4. 運動機会の増進に向けた取組み
3-3-5. ディスプレイを見続ける時間が多い場合
3-3-6. 座り仕事の時間が多い場合
3-3-7. 受動喫煙対策に関する取組み
3-3-8. その他喫煙対策を進める上の留意事項
3-3-9.感染症予防に向けた取組み
3-3-10. 長時間労働者への対応に関する取組み
3-3-11. メンタルヘルス対策
3-3-12.ストレスチェック
3-4. 振り返りと改善の重要性について
3-4-1. 振り返りチェックをする意義
3-4-2. 評価の考え方と今後の取組み(アクションプラン)の設定
STORY エピローグ
まとめ Future of Work プロジェクトを終えて
参考文献
おわりに
索引
PART 1
図表1-1. OECD加盟国の国民1人当たりGDP(2016年)
図表1-2. 就業形態別総実労働時間およびパートタイム労働者比率の推移
図表1-3. 月末1週間の労働時間が60時間以上の雇用者の割合
図表1-4. 1人当たり平均年間総実労働時間
図表1-5.1-6. 世界各国における祝日数、有給休暇比較
図表1-7. 日本におけるフリーランスの人数推移
図表1-8. 完全失業率および就業者の対前年増減の推移
図表1-9. 有効求人倍率、新規求人倍率(四半期平均、季節調整値1963年第1四半期~2018年第1四半期)
図表1-10. 労働政策に関する国内の動き
図表1-11. 健康経営に関する国内の動き
図表1-12. 労働基準関係法令違反に係る公表事案に掲載された代表的な案件
図表1-13. 主な死因別にみた死亡率の年次推移
図表1-14. コラボヘルスの意義
図表1-15. DBJ健康経営格付融資評価項目
図表1-16. 健康経営に係る顕彰制度の対象法人
図表1-17. 健康経営の成功要因
図表1-18. 健康経営度調査評価モデル
図表1-19、健康保持・増進に対する方針の明文化
図表1-20. 健康保持・増進の最高責任者の役職
図表1-21. 評価改善の有無
図表1-22. 効果検証 3つの視点
PART 2
図表2-1. 医療従事者の勤務環境改善に取り組む医療機関への支援体制の構築
図表2-2. 行動変容のステージモデル
図表2-3. 組織風土の確認シート
図表2-4. 健康経営の推進タイプ4分類
図表2-5. ローソンの取組み
図表2-6. ロート製薬の取組み
図表2-7. ダイフクの取組み
図表2-8. 伊藤忠商事の取組み
図表2-9. ANAホールディングスの取組み
図表2-10. ベネフィットワン・ヘルスケアの取組み
図表2-11. 健康教育の例
図表2-12.健康課題と取組み
図表2-13. 丸井グループ健康的経営
図表2-14. 丸井グループの取組み
図表2-15. 松田さんの幸福度曲線
図表2-16. あなたの幸福度曲線
図表2-17. 年齢ごとの主観的幸福感(米国との対比)
図表2-18. 幸福度を判断する際に重視する項目
PART 3
図表3-1. 計画立案の流れ
図表3-2. 健康的な働き方を進める目標
図表3-3. 健康確保に係る指標の特定、データ保有者例
図表3-4. 既存データを管理している所管となる部門の例
図表3-5. ゴールの明確化
図表3-6. 健康経営に係る情報開示の事例一覧
図表3-7. 働き方改革の施策レベルと影響度
図表3-8. 事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
図表3-9. ストレスチェックと面接指導の実施に係る流れ
図表3-10. ストレスチェックの実施概況
図表3-11. ストレスチェックの分析事例
図表3-12. 健康的な働き方への到達イメージ1
図表3-13. 健康的な働き方への到達イメージ2
【STORY ~登場人物】
松田正平(43歳) 経営企画室長
新卒から管理部門に配属され、つい最近経営企画室長に抜擢された。仕事に対する思いが強く、周囲からの信頼も厚い。
加藤豊(55歳) 代表取締役社長
生え抜きの社長であり3代目。強烈なリーダーシップを取るというよりは、 周囲の声を聴きながらバランス感覚をもって会社を引っ張っている。
西本進(51歳) 取締役専務執行役員
松田の上司。管理部門を管掌している。社長からの信頼も厚く、松田も尊 敬している。安定感があり次期社長と期待されている。
川原和夫(56歳) 人事部長
大阪出身で関西弁が抜けない。何を言われても動じず、面の皮が厚いとい う評判で、現場からは恐れられている。
溝口大輔(43歳) 営業課長
松田と同期。入社以来営業一筋で、当社の営業マンとしては優秀モデルと なるような人材である。松田とは新卒の時から連絡を取り合っている仲で ある。
堀尾剛史(32歳) 経営企画主任
経営企画の若手ホープ。明るい性格で人懐っこく、松田も可愛がっている。 運動が好きで学生時代はテニスをやっていたが、最近は少し肥満体型に なってきた。
塚本理香(29歳) 営業主任
営業畑で主任に順調に昇進してきた。少し控えめな性格ではあるが、銀行 からは「かゆいところに手が届く対応をしてくれる」と評価が高い。
なぜ「健康経営」で会社が変わるのか: 判例から学ぶ、健康に配慮する企業が生き残る理由
健康経営の実践テキスト
この本は、健康経営研究会理事長・岡田邦夫氏を著者として、健康経営の基本的な考え方、健康経営を推進し構築するための具体的方策や実践面でのアドバイス、そして、参考となる労働判例を盛り込んだハンドブックです。「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」認定をめざす企業、企業経営者、人事、労務、厚生、管理監督者、産業医、産業保健スタッフに是非手に取ってもらいたい一冊です。
はじめに
働く人の健康問題が大きな社会問題となり、また労働災害として認定され、さらには、訴訟となって経営者に多額の賠償が請求されるようになっている。本来、働くことは私たちの生活や人生に生きがいや充実をもたらすものであるが、一方では、不幸にも長時間労働などによって健康障害の原因となっているのが現状である。
『女工哀史』に記述されている過酷な労働は、多くの若い人の命を奪うことになった。その轍を踏まないために工場法が制定され、現在では労働法によって働く人の安全と健康を確保することが事業者の責務となっている。労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定し、「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものであること、と通達に記載されている。従来、判例法理であった「安全配慮義務」が、ようやく法律として明文化されることになったのである。
さらに昨今では、従業員の健康障害にかかわる損害賠償の根拠法律として、民法のみならず会社法も適用されるという現状がある。また、パワーハラスメントに基づく従業員の心身の不調については、刑法上の違法性についても言及されるようになってきた。企業の根幹を揺るがしかねない従業員の健康問題が、社会的にも大きな課題であることはいうまでもない。
わが国の急速な少子高齢化により、今後、生産年齢人口はさらに減少し、企業が労働省を確保することはますます難しくなり、これを経営課題としてとらえなければならない時代になってきた。人材を確保するためには、多くの人が働きたいと感じるような職場環境の醸成が重要であり、喫緊の課題でもある。それを実現するためのひとつの方策が、「健康経営」として浮上してきた感がある。経営と健康の両立は果たして経営戦略として結果を出すことができるのか、は企業未来を予測することにもつながる。
企業の未来を考えたとき、経営上のリスクとして、従業員の健康問題は避けることのできないものである。しかし、そのリスクを回避するための手立てとして、従業員の健康づくりを事業として位置づけ、経営戦略として投資を行い、利益を創出することは、すなわお、労働生産性の確保と従業員の健康の保持増進の両立を促すことになる。
「健康経営」は、企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面でも大きな効果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することである。従業員の健康管理、健康づくりの推進は、単に医療費というコスト面の節減のみならず、生産性の向上、創造性の向上、企業イメージの向上など、さまざまな効果が得られ、かつ、企業におけるリスクマネジメントとしても有効である。従業員の健康管理者は経営者であり、その指導力のもと、健康管理を組慧戦略に則って展開することが、これからの企業経営にとってますます重要となっている。
「健康経営」は、単に従業員の健康の保持増進を事業として推進することだけではない。企業ブランドを創造するためには、経営者の「雇い方」、管理監督者の「働かせ方」、そして従業員自らの「働き方」を踏まえて、働きがいのある職場や職務を創造することが不可欠となる。人事労務管理による企業リスクの回避、少子高齢社会における労働生産性の向上、高齢化する従業員の健康増進対策と豊かなセカンドライフの基盤づくりなど、社会的存在としての企業の果たすべき役割が求められている。
「健康経営」の基盤には法令遵守があるが、会社法に基づいて起業した会社が、今、会社法によって、経営者に対する損害賠償請求がなされるようになった。まさしく、従業員の健康問題は経営責任であるとの司法判断がなされ、経営者としても健康管理担当者に一任するだけではその責務を果たしていないことになったのである。現在、CHO(Chief Health Officer)を選任する動きも加速しており、経営者は、経営責任として働く人すべての健康問題に取り組まなければならない。
働き方改革は、このような現状から、労働生産性の向上と健康の保持増進の両立をひとつの目的として提案されたものである。正規・非正規それぞれの雇用のあり方、高齢者の雇用と健康問題、低迷する労働生産性など、山積する課題を抱えるわが国の企業の行く末をいかに乗り切っていくのか。経営者が、多くの人々や組織等とスクラムを組んで実践していかなければならない。
本書は、このような社会的状況において経営者が「健康経営」に取り組み、企業価値を高めることの重要性について理解を深め、同時に、過去の労働者の健康問題に関する判例から企業における健康問題の発生防止対策と解決法を学ぶことを目的としたものである。働くことは、従業員の健康の保持増進に直結するとともに、従業員を支える家族の健康にも多大な影響を及ぼす。経営者自らが推進する「健康経営」の積み重ねが、社会の健康にも寄与するものであると確信している。
なお、本書には、経営学の立場から神戸大学大学院経営学研究科・金井壽宏教授、行政の立場から経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課長・西川和見氏に原稿をお寄せいただいた。ご多忙の折、また限られた時間のなかでご執筆を賜ったことに厚く御礼申し上げる。
健康経営研究会理事長
岡田邦夫
目次
はじめに
第1章 「健康経営」とは何か
健康経営という新たな潮流
「経営」と「健康」の歴史
「健康経営」という考え方
健康経営を構成する3つの軸
第1軸:コスト軸体と心の健康―コンプライアンス軸
●判例にみる健康診断の重要性
●パワーハラスメントと従業員の心の健康問題
●突然の無断欠勤は自殺のサイン
第2軸:マネジメント軸ストレス対応とリスク回避―リスクアセスメント軸
●管理監督者へのメンタルヘルス教育は不可欠
●上司に求められるメンタルヘルスケアの知識とスキル
●会社法による経営責任の追及
●ストレスや不安要因を定量的に把握
第3軸:投資軸環境改善とコミュニケーション向上ソリューション軸
●判例にみる職場環境とメンタルヘルス
●健康経営の効果的な進め方
健康経営における健康投資とは
第1の投資「時間投資」
第2の投資「空間投資」
第3の投資「利益投資」
健康経営のすすめ
第2章 健康経営で企業はどう変わるのか
3つの柱で健康経営を推進
経営者が進める健康経営
教育によりリスクを回避する
業務に起因する健康障害をどう防ぐか
問われる産業医の専門性:リスク回避と経営者の責任
管理監督者による健康経営の推進
自分を超える部下の育成
パーソナリティ問題への知識と対応
心の健康問題と復職支援
「手引き」に準じた対応を
解雇の有効性が問われた判例
従業員による健康経営の推進
ヘルスリテラシー向上に基づく自己健康管理意識の醸成
健康食の養用対効果を考える
職場の人間関係が労働生産性に影響
第3章 長時間労国の解消と過労死対策
法令順守、CSR、そして健康経営へ
従業員の健康管理問題と企業の取り組み方の変化
健康経営における法令遵守とリスクマネジメントの意義
法令遵守と公法的規制・私法的規制
安全配慮義務をめぐる議論の進展
●事上の損害賠償責任と安全配慮義務
●安全配慮義務と労働安全衛生上の義務の関係
●安全配慮義務の範囲をめぐる裁判例を通じた拡大化
●安全配慮義務の拡大化に対する歯止めの必要性
●判例にみる安全配慮義務と自己保健義務・プライバシーとの関係
●安全配慮義務の履行と経営者や管理監督者の果たすべき役割
長時間労働と健康問題に関する法的規制の変遷
1990年代までの状況
過労死に関する労災認定基準の改定
●認定基準の対象拡大
●脳・心臓疾患の発症と漢眠時間との関連性に留意
●二次健康診断により脳・心臓疾患の予防を図る
労働時間の適正な把握に向けて使用者が講ずべき措置
管理監督者の過労死事案も多数存在
「総合対策」の策定と長時間労働者に対する面接指導
過労死等防止対策推進法の制定とその後の状況
健康経営の視点からみた長時間労働対策
健康経営と健康診断の実施
①健康診断の実施②健康診断実施後の措置③健康診断結果と「要配慮個人情報」
ワーク・ライフ・バランスと長時間労働の抑制
働き方改革実行計画と健康経営
第4章 メンタルヘルス対策に対するニーズの高まり
メンタルヘルス不調に関する法的規制の変遷
「判断指針」策定に至るまでの経緯
2006年の労働安全衛生法改正とメンタルヘルス指針の策定
新認定基準の策定
2014年の労働安全衛生法改正とストレスチェック制度
●ストレスチェックの流れ
●定期健康診断とストレスチェックの関係をめぐる法的課題
健康経営の視点からみたメンタルヘルス対策
運営におけるペンタルヘルス対策の位置づけ
快適な職場環境の整備
●健康経営と快適職場づくり指針
●受動喫煙防止対策
ワークエンゲージメント
ストレスチェックに関する集団ごとの集計・分析を職場環境の改善につなげる
●メンタルヘルス不調者が出れば損害賠償責任を問われる可能性も
職場の人間関係とハラスメント問題
①セクシュアルハラスメント②パワーハラスメント③マタニティハラスメント
職場復帰の支援
①私傷病休職制度の趣旨②復職判定③復職条件の決定④退職・解雇⑤「手引き」が提示する職場復帰支援の5つのステップ
働き方改革実行計画とメンタルヘルス対策
第5章 多様化する雇用形態と多様な人材活用
日本型雇用システムとその変容
非正規雇用をめぐる課題と法規制
非正規雇用とは何か
有期契約労働者
●雇用の不安定さに対する「雇止めの法理」
●労働条件の相違をめぐる争い
パートタイム労働者
●雇用の不安定さに対する改善措置
●処遇の低さに対する改善措置
派遣労働者
●雇用安定のための措置
●処遇の低さに対し派遣会社が講ずべき措置
非正規雇用と労働者の健康問題
雇用関係によらない働き方
日本型雇用システムを見直す契機として
雇用関係によらない働き方における働き手と健康問題
多様な人材活用をめぐる課題と法規制
ダイバーシティの意義
女性労働に関する労働法上の規制の概要
①平等取扱原則との関係②母性保護との関係③少子高齢化と就業支援
女性活躍推進法の制定
①制定の経緯と法律の概要②女性活躍推進法の概要
女性労働と健康管理問題
高齢者雇用
①高齢者雇用に関する法規制の概要②高齢者雇用と健康問題
障害者の活躍推進
①障害者雇用に関する法規制の概要②障害者雇用と健康問題
健康経営と多様化する雇用形態、多様な人材活用
働き方改革実行計画にみる雇用形態の多様化・多様な人材活用
第6章 これからの健康経営のあり方
わが国における「働くこと」の意義
●労働時間は長く、生産性は低いという現状
雇い方・働かせ方・働き方の重要性
働き方改革と健康経営
●変わりつつある「働く人と企業の関係」
企業と従業員がウィンウィンの関係に
安全と健康の両立を図るルールづくり
コラボヘルスの望ましいあり方
健康経営による企業ブランドの確立を
【特別寄稿】
健康経営銘柄とは
経済産業省商務・サービスグルーブヘルスケア産業課長 西川和見
働くひとのモティベーションやキャリアに配慮する健康経営への視点
神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏
【健康経営ミニ知識】
計画のグレシャムの法則/パンとサーカス
新型うつ病ディスチミア親和型/健康情報と「匿名化」を通じた活用
ホーソン効果とは/パワハラをめぐる誤解
フリーランスという働き方/「M字カーブ現象」の解消に向けて
巻末資料
関連する最近の裁判例
不適切な言動(暴言、パワーハラスメントなど)として認められた事例
長時間労働による脳・心臓疾患の発症に関する労災認定の可否(業務上外の判断)をめぐる最近の裁判例
長時間労働による脳・心臓疾患の発症に関する民事上の損害賠償責任の有無をめぐる最近の裁判例
メンタルヘルス不調(精神障害)の発症に関する労災認定の可否(業務上外の判断)をめぐる最近の裁判例
メンタルヘルス不調(精神障害)の発症に関する民事上の損害賠償責任の有無をめぐる最近の裁判例
メンタルヘルス不調(精神障害)を理由とする休職者の復職可否の判断をめぐる最近の裁判例
関連する通達・ガイドライン
定期健康診断における有所見率の改善に向けた取組について
障害者差別禁止指針
合理的配慮指針
あとがき
こんな会社で働きたい 健康経営企業編
社員を大切に思う企業の取り組みがわかる
健康経営推進企業11社の取り組み内容を詳しく紹介しています。それぞれの会社の健康経営から得られるものは多く、それぞれの取り組みを知ることができて、読み物としても面白い本なので、経営管理について学びたい方だけでなくどんな方にもおすすめです。
はじめに
クロスメディアHR総合研究所は、ビジネス書出版事業を手掛けるクロスメディアグループの「経営と人事」に特化した研究機 関として発足しました。『こんな会社で働きたい』は、労働人口が東京都に一極集中するという環境の中で、地方の優良企業に目 を向けて、Uターン就職・Iターン就職を促し、「地方創生」を後押しすることを目的として誕生した書籍シリーズです。
2018年、第一弾として東京への就職人口流出率が最も高い「千葉編」を皮切りに、その後、「埼玉篇」「神奈川篇」「茨城 篇」「大阪篇」「広島篇」「兵庫編」「奈良編」「石川編」と、現在までにシリーズ9作を出版してきました。本書『こんな会社 で働きたい 健康経営企業編』でシリーズ10作目になります。今回は「地域」ではなく、企業の取り組みとしての「健康経営」を テーマした初めての書籍になります。
健康経営は、特定非営利法人健康経営研究会によって以下のように解説されています。
健康経営とは
健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを意味しています。従業員の健康管理・健康づくりの推進は、単に医療費という経費の節減のみならず、生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、か つ、企業におけるリスクマネジメントとしても重要です。従業員の健康管理者は経営者であり、その指導力の下、健康管理を 組織戦略に則って展開することがこれからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられます。
(特定非営利法人健康経営研究会Webサイトより)
働き方改革関連法の施行によって、時短勤務や残業規制、テレワークなど働きやすい環境への取り組みは広がりました。ただ、 根幹である従業員各人の「生産性や創造性の向上」のための「健康づくり」という点では、中々取り組みをできていない企業もま だ数多く存在すると思います。
生産性向上への取り組みが十分でない状態で単純に時短勤務、残業規制をすることは、「時短ハラスメント」という言葉もある とおり、意欲ある従業員のスキルアップへの意欲を削いだり、逆に限られた時間で業務を行わなければならないプレッシャーからストレスを高める要因ともなり得ます。
従業員が心身ともに健康な状態で、仕事のパフォーマンスを最大限に発揮できてこそ、企業の業績にも寄与するものだと思います。
本書では「健康経営」に積極的に取り組む1社の取り組みを実例で紹介します。健康経営の目的は、先の解説にもある通り、企 業としての業績や株価、企業イメージの向上といった点にあります。ただ、本書の取材を進める中で、工夫を凝らし、試行錯誤し ながら従業員にとって働きやすい制度や環境を整えようと奮闘する企業のリアルな姿をみました。もちろん業績のためといった目 的はあるにせよ、健康経営推進企業とは、従業員にとっては紛れなく「社員を大切に思う会社」であると実感しました。
本書制作の過程で、新型コロナウイルスの感染が全世界に広がり、人々や企業を取り巻く環境は一変しています。マスクや消毒液といった衛生用品が、市場から枯渇するなど、一時はパニックともいえる状況に陥りました。
日本国内においても、本書を出版する8月時点で感染者数は再び増加傾向にあり、人々の健康に対する意識が一層高まっています。
また、感染拡大を防ぐため、企業においてもリモートワークや在宅勤務の導入など、これまでのオフィスへの通勤を当たり前と した「働き方」からのパラダイム・シフトが起こっています。
リモートワークや在宅勤務には、通勤時間を削減できるというメリットがある一方で、企業が従業員の勤務状況を逐一把握する ことが難しい、社員間のコミュニケーションが希薄化する、といった点も懸念されます。また、外出が減ることによる運動不足、 外に出られない・人と会えないことによる心理的ストレス、自宅で仕事をすることによって起こる食べ過ぎなど、生活習慣の面で も影響が出てくるでしょう。
これから、企業にとっても働く個人にとっても「健康」は益々重要なファクターになってくると思います。
就職・転職活動中の方には「健康」という側面で見た企業選びの参考に、これから健康経営に取り組む、また、現在取り組みは じめた企業の経営者・担当者の方には、本書がその取り組みを一歩進めるきっかけになればうれしく思います。
CONTENTS
はじめに
巻頭企画
なぜ今、健康経営なのか
産業カウンセラー/エグゼクティブ・コーチ
帝京平成大学現代ライフ学部教授
ライフバランスマネジメント研究所代表
渡部卓
就活生は会社のネームバリューよりも「健康」を重視
健康経営とは何か
働き方改革と健康経営はどう違うのか
健康経営企業には国からの「お墨付き」も
中小企業は半分以上が「知らない」
健康経営を推進する企業のメリット
健康投資のリターンは3倍に?
超高齢化時代のワーク・ライフ・ソーシャル・バランス
労働生産性の低さをどう克服するか
日本人は頑張りすぎ? 増え続けるメンタル疾患者
メンタルヘルス対策としての「傾聴」
悪循環スパイラルとその断ち切り方
経営者自らが健康経営戦略を語れるか
日本の健康経営をグローバルスタンダードにするチャンス
特集1
株式会社 タニタ
タニタの健康経営に迫る!!
日本オラクル 株式会社
全ては、社員が生み出す業務成果の最大化のためにグローバルな視点から「柔軟な働き方」を実現
株式会社 オカムラ
誰もが健康に働き続けることができるオフィスや環境づくりが、私たちの使命
トーテックアメニティ 株式会社
どんなことをしてもらったら嬉しいか どんな制度があったら喜んでもらえるか徹底した「社員目線」での健康経営
特集2
株式会社 ベネフィット・ワン
ベネフィット・ワンが語る日本企業の福利厚生と健康経営
ENEOS 株式会社
「安全・環境・健康」を大切にしたい価値観に掲げ、健康経営を推進
株式会社 ディマージシェア
働きがいと働きやすさを両立し、事業成長/収益向上に直接貢献する使康経営を目指す
江崎グリコ 株式会社
「おいしさと健康」で豊かな食文化といきいきとした生活づくりに貢献する
コラム
ビジネスパーソンのための疲労回復専用ジム
ZERO GYMプログラムディレクターが見た
「現場の健康経営」
株式会社ビジネスライフ執行役員
ZERO GYMプログラムディレクター
松尾 伊津香
特集3
株式会社 エムティーアイ
エムティーアイが進めるICT *健康経営の最前線
東京建物 グループ
世紀を超えた信頼を誇りとし企業の発展と豊かな社会づくりに挑戦する
ヤマトシステム開発 株式会社
保健師と一体となって取り組む生活習慣の見直しとメンタルヘルス対策
経営戦略としての「健康経営」: 従業員の健康は企業の収益向上につながる!
健康経営の全容がわかる!
最新の研究結果や健康経営に取り組んだ企業の事例がわかりやすくまとめられています。健康経営優良法人の認定項目の解説もされており、企業の経営層や関連部署の方が読むにはとてもおすすめの本です。
この本を最愛なる息子(1歳)に捧げる。
きみが二十数年後、働くであろう社会では、「健康経営」が当たり前になっていることを願う。
そして、100歳を超えても“健康”に過ごすことを、妻と共に切に願っている。
新井 卓二
※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
はじめに 健康経営ブームと今後の課題
「健康経営」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 企業における新しい経営手法として注目されており、日本政府の「日本再興戦略」(2014年~)、「未来投資戦略」(2017年~)に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとして、政府内の主に経済産業省が推進しています。
「健康経営」とは、所管する経済産業省によると「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営学的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。つまり「企業で働いている従業員の健康状態が良好でなければ、会社業績は向上しない」という概念となります。この概念を、企業や組織において実践する経営手法が「健康経営」となり、具体的には、働いている人や環境等に対し、法律で義務づけられている以上の健康投資が求められています。
「企業で働いている従業員の健康状態が良好でなければ会社業績が向上しない」と書くと、当たり前と言えばそのとおりで、企業において働いている従業員は、古くから大切な資産であり、また利益の源泉であり、また人財(材)と言われるほど重要でもあり、当然従業員の健康は、企業にとって、大切な経営項目の一つでした。
ではなぜ、近年「健康経営」と言われ始めたのでしょうか? まず法律の流れから見ていきましょう。古くは、鉱山や潜水等の仕事に従事していた従業員の健康状態は、その企業や組織において死活を決める大切な経営項目でした。そして働いている従業員を危険から守るため、そして労働災害の防止のため、労働基準法と相まって、1972年に労働安全衛生法が施行されました。同法の施行によって、単に法律で定める労働災害の防止のための基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないことになりました。さらに、労働安全衛生法は時代に合わせて改正され、2015年にはストレスチェック制度が義務化され、労働者のメンタルも健康状態に含めることになりました。このように従業員の健康の範囲は、労働災害の防止から始まり、身体やメンタル、健康増進まで拡大し、企業に対し従業員の健康が課せられてきました。
次に企業で働く従業員の動向から見ると、働く人口(生産年齢人口/15~64歳)は、戦後一貫して増え続けていましたが、1995年の8726万人をピークに減少に転じました。その後、ITや技術革新により生産性の向上が図られ、さらに65歳以上の働き手の増加、女性の就業者の増加等で、働き手の減少スピードは緩やかなものとなりました。しかし、2015年以降の年少(15歳未満)人口の減少や、共働き世帯の増加により生産年齢人口の減少スピードは速まり、ますます働き手の総数が 減っていくことが予測されています。
一方、働き手から見ると、労働基準法や関連法令を守らず、従業員に長時間労働やサービス残業などを強制する企業をさす「ブラック企業」という言葉が認知されるようになりました。これにより求職者、特に大学生からはブラック企業の情報がSNS等で拡散され、就職を避ける傾向がみられました。また、ブラック企業の対義語であるホワイト企業を探す動きも現れ、健康経営アワードの一つである健康経営優良法人(大規模法人部門)は、「ホワイト500」(2020年から変更予定)とも呼ばれ、認定企業はホワイト企業として認知され始めています。
そしてもう一つ、経営面でも意識の変化がありました。それは、従来の「従業員の代わりはいくらでもいる」という考え方からの変化です。知名度が高い企業では、就職希望者が多いため、健康状態が不調に陥った従業員がいても、すぐに労働市場から労働者を雇うことができていました。
しかし、うつ病等の精神疾患の病気により、元気に働けなくなる従業員が増えると同時に、昨今の景気拡大も相まって、そうした企業でさえも、深刻な人手不足(働き手・従業員不足)が発生しました。またブラック企業としての悪評を得ると、労働者の採用が困難になり、雇用コストが増加するだけでなく、離職率も高まるようになってきました。結果、ブラック企業を含め全企業にとって、現在働いている従業員の貴重性が高まってきました。さらに、従業員を大切にしている企業は、自社のブランドイメージを上げ、採用につながる動きも現れてきました。
これらの、法律の改正や労働人口の減少、ブラック企業の認知といった社会的背景、加えて企業側の意識の変化もあり、近年特に「健康経営」の重要性が高まり、具体的な取り組みが始まってきました。
2019年度の「健康経営アワード」において「健康 経営優良法人ホワイト500(大規模法人部門)」で、全上場企業(3660社)の23%の859法人と、非上場941法人が参加し、821法人が認定されました。 法律で義務化されていない制度としては、類を見ない普及といえるでしょう(表1)。
表1 健康経営アワード(表彰制度)の認定数
年度 | 健康経営銘柄 | 健康経営優良法人ホワイト500(大規模法人部門) | 健康経営度回答企業数 | 健康経営優良法人(中小規模法人部門) |
2015 | 22 | - | 493 | |
2016 | 25 | - | 573 | |
2017 | 24 | 235 | 726 | 318 |
2018 | 26 | 539 | 1239(718) | 776 |
2019 | 37 | 821 | 1800(859) | 2503 |
取り組み企業が、全上場企業の23%を超えたということは、図1のとおりロジャーズ氏が提唱したイノベーター理論によると、キャズム(別名死の谷。16%)を越え、普及期を迎えました。つまり「健康経営」に取り組まないと時代遅れと言われるほど、上場企業を中心にブームとなり浸透してきました。今後は中小企業も含め日本の全企業に対し普及していくものと思われます。
図1 イノベーター理論の図
ブームの反面、健康経営の研究者として、今後のさらなる普及についていくつか課題も見つかってきました。
まず既存学術学会による学術論文の少なさです。つまりエビデンスがないことです。「健康経営」はアメリカの事例を参考に、日本に導入されてきましたが、日本での実証や検証は少なく、さらに学術論文においては数えるほどしかありません。これは、「健康経営」が、「健康」分野と「経営」分野をまたぐため、 既存の学術学会では対応が難しいからであろうと推察します。
次は、ブームによってできた団体や協会等の活動の縮小または停止です。2015年からさまざまな団体や協会ができました。 最初は華々しく活動していましたが、その後残念ながら続かない団体や協会も出ています。さらに、「健康経営」に取り組む企業が増えたため、「健康経営」に資するサービスやモノを開発・提供する企業からも、見込んでいたほど利益が上がらないと悩み、縮小や撤退するところがでてきました。
もう一つ、「健康経営」を管轄・推進する省庁への依存もあげられます。省庁からの委託事業への依存や、委託事業が終了すると同時に活動を停止する団体や協会が出てきており、継続性に疑問を呈してきました。
加えて、初めての不景気の到来もあげられます。過去には不景気になると、広告宣伝費と共に法定以上の制度や福利厚生費が真っ先に削減の対象となってきました。「健康経営」の顕彰制度が始まった2015~2019年まで、景気は戦後最長の拡大を続けてきましたが、制度開始以来、初めての景気後退局面を迎えることとなり、「健康経営」の普及が正念場を迎えることになりそうです。
本書では、第1章で、基礎となる経営戦略の歴史から最新の経営手法(CSV経営等)や現在企業に求められているSDGs等の「戦略」、そして「イノベーション」について紹介します。第2章では、「健康経営」の歴史やブームの立役者ともいえる経済産業省の“取り組み”を紹介します。第3章では、労働衛生の延長としてとらえられることの多い「健康経営」を、「経営戦略」の視点で紐解きます。第4章では、「健康経営」の実証や最新の研究の成果を紹介します。そして第5章では、取り組み1年で「健康経営優良法人ホワイト500(大規模法人)」に認定された株式会社富士通ゼネラル、2019年「健康経営銘柄」に初選定されたヤフー株式会社、「健康経営銘柄」の制度開始から5年連続で選ばれているSCSK株式会社の3社を紹介します。
また、「健康経営」というワードが誕生する以前から取り組まれてきた株式会社フジクラに、パイオニアならではの視点で「健康経営」取り組みのプロセスについてアドバイスをいただきました。「おわりに」では、筆者なりの問題解決策や今後の普及策、そして日本の国力として「健康経営」の位置づけを提示します。
本書は、「健康経営」を初めて経営学的にとらえた書籍となります。そして日本で初めて学術的なエビデンスをもって、「健康経営」の期待される効果や実証結果を紹介していきます。
残念ながら健康経営の取り組みの歴史は浅く、まだ表れていない、または感覚値として効果はあるが測定できていない項目もあります。今後、さらに多くの効果が実証されていくなかで、本書がその一助となれば幸いです。また現在働いている皆様のためにも、未来に働く子どもたちのためにも、今後、健康経営が企業にとって当たり前(基本)の経営手法になっている世の中を信じています。
最後に、「健康経営」は、一つの経営手法です。つまり、他の経営手法を採用し、「健康経営」に取り組まなくてもかまいません。ただ本書を読み終わる頃には、取り組まないと、これから訪れる不景気を乗り切れない、または会社存続のために必要な経営手法だと思っていただけるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
新井卓二
注1 日本健康会議と経済産業省の共催で、健康経営に取り組む企業の顕彰や健康経営促進のためのディスカッションを行うことを目的に、2019年2月1日に開催。
2 2015~2018年までは1業種1社、またROE(自己資本利益率)等基準があったが、徐々に緩和され2019年からは1業種1社以上認定できる制度へ変更された。
もくじ
はじめに 健康経営ブームと今後の課題
第1章 経営戦略の流れからみる健康経営(玄場公規)
1 企業における戦略
2 イノベーション
3 環境経営
4 CSRとCSV
5 SDGsとESG投資
第2章 健康経営の歴史(新井卓二・第2章~第4章)
1 健康経営と先行研究
2 日本における普及
3 他省庁や自治体の取り組み
4 ブームの理由
5 現在の「健康経営」は産業安全や労働衛生の延長
第3章 戦略としての「健康経営」
1 期待される五つの効果とアメリカとの違い
2 日本独自の健康経営と期待できる効果
3 イメージアップとリクルート効果
4 大学生アンケートからみる健康経営
5 健康経営の誤解
第4章 投資効果を上げる健康経営の取り組み
1 健康経営銘柄、健康経営優良法人への取り組み
2 取り組みの基本
3 波及効果と効果を最大化する健康経営手法
4 日本で初めての投資リターンと効果測定
5 「働き方改革」との関係
第5章 最新の「健康経営」取り組み事例
1 株式会社富士通ゼネラル(健康経営推進室 室長 佐藤光弘)
2 ヤフー株式会社(グッドコンディション推進室 川村由起子)
3 SCSK株式会社(ライフサポート推進部 副部長 杉岡孝祐)
健康経営のパイオニアが指南する実行プロセスの手引き
株式会社フジクラ (CHO補佐)兼 株式会社フジクラ 健康社会研究所(代表取締役 浅野健一郎)
おわりに 健康経営が当たり前の社会へ
参照:【最新】健康経営おすすめ本 – 会社の持続的成長を実現ためには? – https://uguide.jp/3801