著者はIoTNEWS代表の小泉耕二氏である本書は二部構成で、第1部ではIoTが生み出す日常の変化について、第2部ではIoTが生み出す産業の変化について解説されています。帯には“いちばん丁寧な「IoT」解説書”と書いており、ITについての初心者にとってわかりやすい内容となっている。今後どんどんIoT化すると言われていますので、このあたりで「IoT」について一度理解しておく必要がありそうです。
IoTってなに?
よく言われるのは“Internet of things”、“モノのインターネット”。「そんなこと言われてもわからない」「わかった気がするけど、気がするだけかも」。なんとなくもやもやする。IoTとは「ありとあらゆるものがインターネットに接続する世界」であるといえます。本書の良いところはIT初心者のわからないポイントを先回りして解説してくれているところです。「そう、そこが引っかかってた」と何度も頷いてしまいます。
IoTにおいては、単にモノがインターネットにつながることがよい、というわけではなく、こういったよくある課題を解決できることが、モノがインターネットにつながるメリットとなるのです。
気持ちはわかるが、どうしても弊害について考えてしまうし、そんなうまくはいかないと思ってしまいます。本書において覚えたばかりの「スマートロック」だが、やはり小さい子どもにもスマートフォンを持たせなければいけないし、親が遠隔で開けてあげればいいと言っても手があいていなかったり気づかないこともあります。
IoTの本格的な導入には、こういった突出した利便性、もしくは、価格破壊について訴求できることが重要なのです。
ここではSuicaが普及した例が挙げられています。たしかに、便利でICカードで払った方が安いというメリットから普及したと思います。だが、それだけではなく、Suicaを忘れたとしても券売機で切符を買えばなんとかなる、ということも関係しているのではないでしょうか。そういった代替案があるIoTなら普及していきます。
IoTによる物流の革命
生活消耗品の残量を自動で計測し、必要なタイミングで自動発注してくれるアマゾン社のDash Replenishment Service(DRS)です。必要な買い物が自動化されて、自由な時間が増えます。筆者も
歴史的に見ても、「自由な時間が増える」ことに対しては、ヒトは歓迎する傾向にあるので、IoTによって起きる物流面での革命がこの動きを加速するのだろうと予測できます。
と述べています。
IoTに対してポジティブに捉える
IoT化によって危惧され続けている「ヒトの仕事を奪われる」ということ。これは考え方を変えるべきだと感じた。著者は
つまり、「ロボット」の本質は、ヒト型ロボットである場合もあるかもしれないけれども、実際はドローンかもしれないし、ドアかもしれないし、コーヒーメーカーかもしれない。人工知能で制御され、ヒトへのアクションができるモノなのです。(中略)つまり、今後のIoTの社会においては、ロボットに仕事を取られるという発想ではなく、むしろロボットを自分が使って、自分の代わりに働かせるという発想が重要なのです。
IoTに対して悲観的に考えていたが、考え方次第ではどうとでもなる気がしてきます。ヒトが作り出したモノをヒトが上手く使わなければ意味がないということなのでしょう。
どのページにも図解があり、非常に理解しやすい構成となっています。たしかに、2時間で読み終わります。本書は「IoTってなに?」という初心者の方、そして「よくわかんないけどIoTって悪いモノなんじゃないの?」というなんとなくの批判派の方にオススメできる一冊です。IoTについての基礎的な知識や、それがどのように生活と関わってくるのかを学べ、そして「IoTは意外と良いものかも」と前向きに捉えることができるようになるので、読んでみるとよいのではないでしょうか。