【最新】インサイトについて学ぶためのおすすめ本 – 基礎知識から活用法まで

インサイトとは?どのように見つけ、活用する?

インサイトとは、本人も気づかない購買の動機や欲求といった、人の購買意欲の核となるものをいいます。あらゆる分野の事業者たちは、消費者や顧客のインサイトを見つけ、それを商品開発や宣伝広告に生かすことによって、購買意欲を引き出そうとしています。ここでは、このように重要な意味を持つインサイトの基礎知識からこれを活用した戦略まで学べる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

戦略インサイト――新しい市場を切り拓く最強のマーケティング

これ1冊で「インサイト」がわかる

インサイトとは狭義にマーケティング・リサーチのこと、と理解されがちだが、本書にはリサーチだけではなく、マーケティングそのものの哲学、目的、方法論、ブランドの定義、そしてマーケティング・マインドを持った(つまりインサイトの読める)組織の作り方、が体系的に書かれています。しかし学者本でなく実務書なので読みやすいです。

桶谷 功 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2018/5/24)、出典:出版社HP

はじめに

「いいモノ」さえつくれば売れる――技術的にすぐれた、性能や品質のいいモノをつくって流通さえさせれば売れる、という日本企業のかつての成功法則は通用しなくなってきている、そう感じている方は多いでしょう。
日本でも海外でも、人々が求めるモノを提供できなければ、いくら高品質でも買ってもらえないことに誰もが気づいていると思います。
日本企業の優れた「モノづくり」の強みを活かしながら、日本の、そして世界の人々に買ってもらえるモノをつくるためには、どうしたら良いでしょうか?
人々の視点で、ニーズをとらえて、モノづくりをすればいい。ほとんどの日本企業にとって、答えはわかっているはずですが、なかなか実現できないのはなぜでしょうか?それは、日本企業にはそれを実現する「仕組み」がなかったからではないでしょうか。
「マーケティング」という言葉は誰もが知っています。そして、マーケティングは「顧客価値を創造すること」であり、マーケティング4P(Product/Price/Promotion/Place)の概念もよく知られています。
しかし、日本企業で「マーケティング」は何を指しているでしょうか?
「販売」「広告」「調査」「顧客サービス」など、限られた企業活動を指していることが多いのではないでしょうか。そして、最も重要な「モノづくり(製品開発)」が含まれてこなかったのではないでしょうか。
製品は、自社の独自技術や研究開発の成果から生み出され、マーケティングは、製品が出来上がってから、それを販売する手段としてスタートする。これでは、ニーズをとらえたモノづくりをしようがありません。しかし、この方法で成功体験を積み重ねてきた日本企業は、そう簡単には変わることができないでいます。

国内市場が人口減で縮小していく中、日本企業が成長していくためには、海外市場の開拓が不可欠です。海外の人々に買ってもらう、あるいは利用してもらうためには、海外の人々が何を求めているかを見極め、製品開発に活かす必要があります。今までのような、高機能・高品質な製品というだけでは、見向きもされないでしょう。モノづくりにもマーケティングの考え方を取り入れる必要があるのです。
国内市場でも、縮小するパイを取り合いしていたのでは成長は見込めません。人々の潜在ニーズを掘り起こし、新たな需要を創造していく必要があります。また、日本国内にとどまっていたとしても、海外からグローバル企業が参入してきます。それらのグローバル企業と戦うためにも、人々のニーズをとらえるマーケティングの考え方は不可欠です。
「日本も、世界の中のひとつの市場」なのです。

本書のタイトルにもなっている「インサイト」とは、人々の潜在的なニーズのこと。まだ顕在化していない、人々自身も気付いていないようなニーズのことです。本書では、インサイトという潜在ニーズを見極め、製品開発を含むマーケティング活動に活かして、事業に成功をもたらす考え方や方法論についてお話ししていきます。
海外でも、日本でも、人々が声にできるような顕在化したニーズは、既に満たされています。まだ、どの企業もとらえていない潜在ニーズをとらえ、新たな市場を創造することが、グローバル企業との体力勝負や現地企業との価格競争に陥らずに成功するカギとなるのです。
けっして、インサイトを見つけることがゴールではありません。インサイトを製品開発などのマーケティング活動に結びつけ、事業に成功をもたらすことがゴールです。
また、その成功を、単発ではなく継続的なものにするため、本書では、個々の製品開発にとどまらず、事業全体の成長を見据えた「戦略的に活用できるインサイト」を取り上げます。インサイトは、広告表現のフックや販促の切り口探しなど細かな戦術の開発にも活かせますが、本書では経営にインパクトを与えるような戦略開発に使えるインサイトを取り上げていきます。
戦略は、けっして大企業だけが必要とするものではありません。中小企業やベンチャー企業こそ、市場を一点突破するための戦略が必要だからです。
筆者は、1990年代からグローバル企業で、インサイトを核にしたブランド戦略開発に携わってきました。そして、そのインサイトの考え方を、2005年に初著「インサイト消費者が思わず動く、心のホットボタン」で、日本ではじめて体系的に紹介しました。
その後、インサイトの考え方を日本企業がもっと取り入れて飛躍してほしいという思いから、2010年にインサイト社を設立。さまざまな日本企業に対して、事業開発や商品開発、ブランド開発などのコンサルティングを行ってきました。
取り組んできた業界は、食品・清涼飲料・ビール・紙おむつ・女性用品・洗剤・化粧品などの消費財をはじめ、家電・クルマ・住宅(マンション開発)などの耐久消費財、フィットネスクラブや百貨店・ファッションECサイトなどのサービス業と多岐に渡ります。BtoB企業でも、インサイトから新規事業開発を行い、インサイトがイノベーション開発に有効であることがわかりました。
また、海外でも、中国・インド・ASEANなどで、インサイト探索から製品戦略などのマーケティング戦略開発を行ってきました。その中核を担うインサイトワークショップは、日本本社・現地法人・現地の生活者が参加する、とてもエキサイティングなものです。
さらに、インサイトを製品開発に活かし事業の成功をもたらすためには、機能別の部門を超えた全社的な取り組みが必要なため、全社的にインサイトの考え方を導入し企業文化として根付くようお手伝いをしています。
欧米のグローバル企業と日本企業、両方での戦略開発経験から、日本企業の強みも弱みも見てきました。日本企業の強みである技術開発力が、インサイトやマーケティングの弱さから十分に活かされず、事業の成功に結びついていないというのは、あまりに「もったいない」こと。

日本企業が、海外で、そして日本で、人々の潜在ニーズをとらえ、製品開発部門を含む全社でマーケティングに取り組む「マーケティング・カンパニー」になることで、もっともっと世界で活躍することができる。本書が、その一助になれればと願っています。

日本企業が、マーケティングを経営の中心においた「マーケティング・カンパニー」になり、海外でも日本でも成功するための5つの秘訣を、お話ししていきたいと思います。
まず、第1章では、「インサイト起点のマーケティング」が、どのような成果を生み出すか。そして、どのようなフレームワークで取り組むかという全体像をお話しします。そして、第2章以降で、どう具体的に取り組み、それを「仕組み化」していくかに話を進めます。

目次

第1章 「インサイト起点のマーケティング」の全体像を把握する
第2章 市場機会を見出し、「成長戦略のシナリオ」を描く
第3章 「インサイトからマーケティング戦略」を開発する
第4章 製品開発部門を含む「全社」で取り組む
第5章 製品を超えた「ブランド」戦略を持つ
おわりに――日本を「世界の中のひとつの市場」として見直す

インサイトをとらえた製品が、世界で愛用される
すばらしい画期的な技術を使った製品でも、人々のニーズと結びついていなければ、人々に買ってもらえません。しかし、同じような技術でも、人々のインサイト(潜在ニーズ)を見つけ出し、それをとらえた製品にすることができれば、世界的な大ヒットを生みます。そんな例を、ひとつご紹介しましょう。
それは、パイロットコーポレーションの「フリクション」。(図1参照)ボディ端のラバーでこすると書いたインクが消える、「消せるペン」として世界的に大ヒットしている製品です。

桶谷 功 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2018/5/24)、出典:出版社HP

「思わず買ってしまう」心のスイッチを見つけるための インサイト実践トレーニング

今日から使えるツール満載

様々なインサイトを引き出す為の仕掛けを、実例を基に書いてくれてます。消費者インサイトの見つけ方、そのインサイトの中からキーインサイトを導く方法、そしてプロポジションへの落とし込みといった流れが丁寧に網羅されています。

はじめに

人々は、なぜその商品を買うのか?人々は、どういう商品を求めているのか?

それがわかれば、売れる商品を作れるし、売り方もわかります。でも、消費者に直接聞いてもなかなか答えは出てきません。それは、消費者自身もよくわかっていないからです。
人が何か行動するとき、意識しているのはほんの一〇%程度で、九〇%は無意識で行動しているといわれています。また、行動の理由は、大半が後付けであることが最近の脳科学の研究でわかってきました。まず意思決定がなされ、自分の行動に一貫性を持たせたり、自分自身に納得させたりするために、あとからそれらしい理由が加えられるというわけです。
ある人に二種類のコーヒー飲料の銘柄A、Bから、好きなほうを選んでもらったとしましょう。その人はBを選び、「AよりBのほうがおいしい」と言い、さらに「Bのほうが甘くなくてすっきりしていて、後味がいいから」とまで、はっきり答えたとします。
しかし、それは本当に、味だけの違いなのでしょうか?
実験をしてみましょう。それぞれの飲料をボトルからコップに移し、見ただけではAかBかわからない状態にして、どちらの味が好きか聞いてみます(いわゆるブラインド・テストです)。
すると、再びBが選ばれるとは限らないのです。
容器に入った状態で飲んでいるときは、知らず知らずのうちに味だけでなく、メーカー名やボトルのデザインなど、さまざまな情報の影響を受けています。商品名やラベルのキャッチフレーズから「甘くなさそう」という連想が働いたのかもしれませんし、パッケージの色からすっきりした印象を受けたのかもしれません。
逆にいえば、どこから「すっきりしたおいしい味」が連想されたのか、その無意識の部分を解明できれば、売れる商品を設計することができます。
人が思わずモノを買ったり、行動を起こしたりする心のホットボタンを、「インサイト」と呼びます。もともとは効果のある広告をつくるために生まれた考え方です。私が二〇〇五年に前著『インサイト』を出版した頃、このキーワードをご存知だったのは一部のグローバル企業の戦略部門の方々に限られていました。しかしインサイトはここ数年で、製品開発、サービス開発、店舗開発、プロモーションなど、あらゆるマーケティング活動で広く使われるようになりました。
ただ、インサイトの考え方は理解できても、実際に使いこなすのは、なかなか難しいものです。ビジネススクールのマーケティング講座で教えたり、また実務でワークショップを開催したりする中で、多くの人が陥りやすい失敗がどこにあるかわかってきました。
どうやって、インサイトを見つけ出すのか?仮説の立て方は?検証の仕方は?組織の中で、その提案をどうやって説得していったらいいのか?

インサイトを見つけてから、消費者の目に触れるカタチにするまでには、さまざまなハードルがあります。本書では、これらをクリアする実践的な方法、実際のプランニングに役立つツールを、テンプレートとともに紹介します。
第1部は、ひとりで使える、さまざまなツールを紹介していきます。インサイトを見つけ活用する「スキルを養う」うえでも有効です。

・1章:インサイトをいかに見つけ出すかという「発見ツール」
・2章:キーインサイトの仮説をつくる「仮説ツール」
・3章:キーインサイトをもとに解決案であるプロポジション(戦略的な提案)をいかに発想するかという「発想ツール」
・4章:そのインサイトとプロポジションが正しいかどうかをチェックする「検証ツール」
第2部では、組織でインサイトを発見し共有する、「インサイト・ワークショップ」という方法をご紹介します(基本的な流れは5章を参照)。すべての関係者を巻き込み、インサイトを旗印として同じ方向に力を結集させるためのもので、ビジネスの現場でよく登場する二つのテーマを取り上げます。
・6章:新しい市場をつくったり拡大したりするときに使われる「ヒューマン・インサイト」
・7章:成熟市場での差別化などでよく使われる「カテゴリー・インサイト」

ここでは、実際に行われたワークショップの様子をご紹介しながら、いわば実況中継のようなスタイルで解説します。疑似体験を通して、実践的なスキルを身につけていきましょう。

インサイトが生み出す画期的な解決策

インサイトを活用することで、今までにない、どのような解決策を生み出すことができるのか、具体的な例をお話ししましょう。
松下電器産業(現パナソニック)の「新・子育て家電」は、インサイトを取り入れて、頭打ちだった「食器洗い乾燥機」市場を成長させることに成功しました。それまで、テクノロジーが市場を開拓すると思われてきた製品カテゴリーですが、まったく新しい切り口から市場を創り出したのです。
「食器洗い乾燥機」は、二〇〇五年当時、普及率二〇%程度から伸び悩んでいました。欲しい家電の優先順位で、薄型テレビなどと比べて低い順位にありました。
一般に、成長している製品カテゴリーでは、消費者がすでにそれを「欲しい」と思っているので、新しい機能や競合製品との違いを打ち出すだけでよいのですが、伸び悩んでいる製品カテゴリーの場合は、そもそも「欲しい」という気持ちにさせるところから始めなければなりません。つまり、動機付けが必要なのです。言い換えれば、インサイトを見つけ出し、いかに消費者の心のホットボタンを押すかが課題となります(図A)。

図A
伸び悩んでいる製品カテゴリー

まず、食器洗い乾燥機の買われ方を見ると、結婚、出産、子供の入園や入学、子供の独立といった人生の節目に当たるときということがわかりました。この事実を掘り下げていくと、「新婚期」「出産・子育て期」「シニア期」のどのグループでも受容性が高かったものの、特に「小さな子供のいる子育て期の家庭」で圧倒的な支持を得ていることがわかりました。
そこで、この子育て期の母親のインサイトを探り見つけたのが「育児を楽しみたいけど、家事に追われてイライラしてしまう」というもの。これを受けて、開発したプロポジション(戦略的な提案)が、「新・子育て家電―子供との時間を少しでも長く楽しく。子育てを応援します」というものでした(図B)。

図B

すばらしいのは、「忙しい子育て期に、食洗機があったら楽ができますよ」というプロポジションを打ち出さなかったことです。こういう提案では、ターゲットの母親たちは、「手抜きをしたがっているみたい」と後ろめたさを感じてしまうからです。「食器洗いは家電に任せて、できるだけ子供との時間を長く。忙しい毎日にゆとりの時間をプレゼントします」という提案だからこそ、お母さんたちは、食器洗い乾燥機が欲しいと声を大にして言うことができたのです。
このプロポジションに沿って製品特徴をうまく表現し、広告プロモーションを打った結果、二〇五年六~八月期の新発売期の販売実績は、対前年比一四〇%を超えました。

製品特徴

・子供用食器をしっかり除菌……低温ソフトコースで熱に弱いプラスチック食器も除菌
・(子供を抱きながらでも片手でセットできる)オープンドーム
・子育て家庭にうれしい、エコな設計(水道も電気も節約)

広告プロモーション

・店頭は、従来のブルーから、「ピンク」の展示台に変更・赤ちゃん用品の専門流通「アカチャンホンポ」(赤ちゃん本舗)と共同で「子育てもっとハッピー計画」というプロモーションを実施
・ウェブサイトは製品説明に終始せず、「子育て応援サイト」を立ち上げる
・育児誌ともタイアップ企画を行う
さらに同社は、ここで得たインサイトとプロポジションを、他の製品カテゴリーにも拡大。「食育の応援」(フードプロセッサーなど)、「赤ちゃんのためのハウスダスト対策」(掃除機や空気清浄機など)といった切り口で、さらに大きな需要を創出することに成功しました。
このように、育児に関する悩みにいろいろな角度から応えることで、消費者に対して「子育てを応援するメーカー」という印象を与え、ブランド構築にもつなげていったのです。

インサイトを突くことで、市場を拡大し、ブランドのロイヤリティを高めていく――それでは、第1部より具体的な方法について見ていきましょう。

目次

インサイト実践トレーニング
はじめに
目次

第1部インサイト実践ツール
ひとりでできる、さまざまな技法
chapter1
インサイトを発見しよう
発見ツール1 ユーザーお絵描きと吹き出し
発見ツール2 パーティはお好き?
発見ツール3 ベンチの隣に座った人は、どんな人?
発見ツール4 「○○の惑星」に行ってみよう
発見ツール5 写真選び/写真集め
chapter2
キーインサイトの仮説をつくろう
仮説ツール1 シミュレーションゲーム
仮説ツール2 中心を探す。中心をつくる。タイトルをつける
仮説ツール3 心の葛藤にチャンスあり
仮説ツール4 ひとりワークショップ
仮説ツール5 日常の出来事から仮説力を鍛える
chapter3
インサイトからプロポジションを発想しよう
発想ツール1 ヒューマン・インサイトからの発想
発想ツール2 カテゴリー・インサイトからの発想
発想ツール3 インサイトと製品やブランドを結びつける
発想ツール4 インサイトとプロポジションを行き来する。セットで考える
発想ツール5 プロポジションから実施プランへ
chapter4
インサイトとプロポジションを検証しよう
検証ツール1 絞り込み/チョイス
検証ツール2 もう一度ターゲットになりきって見直す
検証ツール3 検証調査は、消費者に見えるカタチで

第2部インサイト・ワークショップ
すべての関係者を巻き込んで成果につなげる方法
chapter5
インサイト・ワークショップの進め方
インサイト・ワークショップをどのように開催するか
開催からまとめまでの、基本的な流れ
chapter6
実況中継ヒューマン・インサイトを探す
シニア男性のインサイトを探る
独身男性のインサイトを探る
chapter7
実況中継カテゴリー・インサイトを探す
発見ツール4で比較:「男はみんな料理をする星」「男は誰も料理をしない星」
発見ツール1で比較:「料理ができる男」「料理教室に通っている男」
グループワーク:インサイト・ストーム
結論

おわりに

「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方 (宣伝会議)

インサイトでヒットを生み出す

インサイトリサーチをサービスとしている会社の代表と元執行役員により、インサイトの見つけ方をこの1冊の本でまとめてくれています。また、表現がわかりやすくすっと理解できます。今までにないビジネスに生きるアイデアを考えたい方におすすめです。

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP

はじめに

人は何を「欲しい」と思っているのだろう?
多くの人が、それを知りたいと思っています。
何が欲しい?どんなものが欲しい?どんな風にして欲しい?なぜ欲しい?
それがわかれば、新しい価値を生み出せる。ヒットを生み出せる。そう信じて、「欲しい」について考えています。

しかし、そう簡単に「欲しい」が見えてこないのが、今の時代です。
どんなものにも「だいたい、良いんじゃないですか?」と思える時代。悪くはない、でも決め手がない、だからとりたてて「欲しい」という気持ちになれない。
ほとんどの商品やサービスを前にして、人々はそんな気持ちを抱いているのが実情です。
普通に見ていても、人々の「欲しい」は、視界に入ってこない。
行きたいところにたどりつけない迷子のように、多くの人がさまよっている。
「欲しい」が見えてこないのは、なぜなのでしょう?

それは、当然のことです。
「欲しい」は、隠れているからです。
だから、普通にぼんやりと眺めていても、あなたの目には入ってきません。

では、どうしたらいいのでしょう?

隠れているものを探すには、そのための道具が必要です。
それが、「インサイト」です。

「インサイト」って、何ですか?
疑問を感じた方のために、まずその「定義」だけをお伝えしておきます。

インサイトとは、「人を動かす隠れた心理」のことです。
これがわかれば、見えてこなかった「欲しい」が理解できるようになります。

普通に考えていては見えづらい「欲しい」がわかるようになれば、ヒットを生み出すアイデアも手に入れられます。
そのインサイトという強力な「武器」は、身につけられるのです。
この本では、インサイトという武器の考え方、使いこなし方を紹介していきます。
そして、「欲しい」を知りたいと悩み、迷子となっている人の力になります。

この本が、インサイトをそのように説明し、伝えられるのはなぜなのか、を理解していただくために、ここで著者である私たちのことを少しお話しします。
私たちは、過去5年間でインサイトを扱うプロジェクトを、さまざまな企業から依頼を受けて600件以上担当してきました。商品やブランドの開発、コミュニケーションやマーケティングアイデアの開発をはじめ、インサイトに着目した企業の新たなビジネスの支援や、インサイトを社内に理解・浸透させるための企業内セミナー
といったことも実施しています。
今でこそ、このように書くことができますが、過去には苦い経験も数多くありました。
インサイトという考え方は面白い。だから一緒にやってみましょう、御社の力になれます!とスタートしたプロジェクト。
それなのに、思ったようにインサイトを見つけることができない。
リサーチを行い、分析して探し当てたインサイトを報告しても、そのインサイトそのものを理解してもらえない
こちらでは良いインサイトを見つけたつもりでも、そこからプロジェクトとして良いアイデアにつながらない。
自分たちも自信を失いかけたことがありました。

しかし、その失敗を糧に、「なぜダメなのか?」を考え、その答えを探してきました。
逆に「こんな風にできませんか?」という問いかけに応えるべく、必死で新しい方法を生み出し、大小さまざまな改善を繰り返してきました。

そのような改善の過程を経て理解を深めると同時に、「なんとなくインサイトを活用する」という企画者の勘に頼った、その場その場での対応ではないものが必要と考えました。
作業を体系化し、使いやすいフレームを作り上げ、一部の人だけでなく誰もがインサイトを使って答えを出せる方法論にまとめたのです。それが、本書で紹介する、「インサイトに関する体系化された実践知」です。最後までお読みいただければ、その実践知を理解し、身につけていただくことができます。
また、インサイトの活用に関する事例もいろいろと紹介します。インサイトについての理解が深まらない理由には、説明に具体性が不足していることも大きな原因となっていると思うからです。「こういうことがインサイトなのか」といったことを、具体的にお見せすることによって理解していただけます。

マーケティング、研究開発、事業開発の部門に携わる方にはぜひご一読いただきたい内容となっています。あるいは、アイデアを作る仕事に関係する人、イノベーションを起こしたい人、そのような方であれば、この本は間違いなく力になるはずです。さらに、コミュニケーションや広告のクリエイティブ、プロモーション、eコマース、サイト運営、Web制作、アプリ開発、等々に関わる、さまざまな領域の方に、有効なヒントを発見していただけます。
それでは「欲しい」の本質、インサイトについて具体的に説明していきましょう。

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 人の欲しい、は隠れている
01 いま、消費者は「だいたい、良いんじゃないですか?」の時代
インサイトの考え方が求められる背景とは
問題がゴロゴロ転がっていた時代は、その問題を解決すれば良かった
「ガラケーからスマホ」のような、隠れた欲求を満たすものが必要
02 人を動かす隠れた心理=インサイト
マクドナルドの大きな誤算
優れた心理を探る
「5%の無意識」にアプローチする
「家の鍵を開けること」に優れたインサイト
イノベーションは「顧客の声」からは生まれない
消費行動に影響を与える「認知バイアス」
答えを持っていないのに、聞かれると答えてしまう
「インサイト」と「ニーズ」の違い
03 なぜ先進企業はインサイトに注目するのか
当初は広告領域で注目された概念
徐々にマーケティング領域に拡大
新たな潮流「デザイン思考」との共通項
人間が求めているものは何か、を見出す
インサイトは企業でどう使われているか
インサイトを戦略の核に置く、グローバル企業

第2章 ”人を動かす隠れた心理=インサイト”の構造を理解する
01 優れた作り手は消費者の心理をどう読んだのか
事例「会いに行けるアイドル」AKB48
キーインサイト、バリュープロポジション、アイデアというフレームワーク
事例「大人が夢中になれる場所」ディズニーランド
事例「受験生を応援する」キットカットインサイトの活用領域
02 インサイトを構成する4つの要素
「客観的な事実に基づく感情」がインサイト
感情だけを追うと、アイデアが的外れになる
インサイトを構成する4つの要素
03 インサイトは3つのタイプに分類できる
3つのタイプ「価値」「不満」「未充足欲求」
「価値」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「不満」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「未充足欲求」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「キーインサイト」の要件「信値」のインサイトで人はどう動くか
「不満」のインサイトで人はどう動くか
「未充足欲求」のインサイトと「人が動く」の関係
人を動かさない心理はインサイトではない
人の欲望は天使と悪魔の両面で捉える
欲求を基点としてインサイトを考える
表(番)だけを見ると「きれいごと」になりがち
人間の欲望を8つに分類した「欲望マンダラ」
デビルインサイトの例「制」做優・支配
デビルインサイトの例「泉」暴発・色欲
エンジェルインサイトの例「容」親密・承認
エンジェルインサイトには要注意、一度デビルを疑ってみる

第3章 ユーザーや競合ではなく”人間を見に行く”
01 “人間を見に行く”ことがイノベーションの出発点
「人間を見に行く」から始める
近視眼的な発想では消耗戦を続けるだけ
02 イノベーションを実現したアイデアとインサイト
イノベーションに必要なのは「非連続性」
「新路線(破壊系)」の例AKB?
「新路線(破壊系)」の例ディズニーランド「新
路線(ズラシ系)」の例マウンテンバイク
03 人間を見に行く=ターゲットの興味や関心に寄り添うこと
直接、消費者に答えを求めてはいけない
人間を見に行くことから、「買わない理由」を理解する
事例幼児向け通信教育ブランドの価値向上
事例若者のクルマ離れを食い止める
「関心のないこと」のインサイトを、「人間を見に行く」考え方で調べる
事例男性ミドル層のスキンケアに関するインサイトを調べる
普通の人のちょっと変わった事象を収集する「新奇事象」
「新奇事象」を収集するには
人間を見に行くための道しるべ
04 ”人間を見に行く”ふたつの道しるべ
アプローチVIL
アプローチの生活の仕分類

第4章 成熟市場におけるビジネス機会の見つけ方
01 6つのフェーズで構成されるプロジェクトの工程
インサイトは現状を打開するための有効な手段
6つのプロセスに分類できる
02 インサイトリサーチの前に必要なオポチュニティ発見
「オポチュニティ発見」とインサイト
03 オポチュニティ発見のメソッド
強制発想法を用いたオポチュニティの見つけ方「スペースファインダー」
事例白髪まじりの黒髪を銀に見せるワックス
「Webアクチュアルデータ分析」によるオポチュニティ発見
事例「Google Trends」によるオポチュニティ発見
オポチュニティも玉石混治。「玉」を見つけるには「玉度モデル」

第5章 インサイトを発掘する方法
01 インサイトを明らかにする方法
意識の下に隠れている「無意識」へのアプローチ
インサイト探索の留意点
「考えさせない」ことがもっとも重要
インサイトリサーチの手法は「心理学」系と「文化人類学」系の2系統
インサイト理解のためのデータ収集のパターン「集める」と「集まる」
02 心理学に基づく感情からのアプローチ
ビジュアル刺激店
写真を用いて無意識にアプローチするビジュアル刺激法
ビジュアル刺激法の実施方法
消費者が求める「五感」をリッチに言語化
文章完成法
文章完成法による投影
03 文化人類学に基づく事実からのアプローチ
行動観園
行動観察によるインサイト探落
観察する際の留意点
行動観察のプロセスと、留意すべきポイント
ソーシャルリスニング
ネット上の発言を素材としてインサイトを探るソーシャルリスニング
ソーシャルリスニングの3つのステップと留意点
コミュニティリサーチ
コミュニティリサーチ(MROC)は集めて、集まる
実況報告のように書き込んでもらい、利用状況を把瑠
04 インサイトの読み解き方
ポイント①「離せ、戻せ」で考える
ポイント②良いアイデアにつながるかどうかを意識する
ポイント③生の素材から感じる遠和感を大切にする
ポイント④正しい、ではなく、面白い
ポイント⑤「既存路線」でない「新路線」に着目する
ポイント⑥「組み合わせの妙」を見つける
ポイント⑦回していること、言えないことを意識する
インサイトの3分類・4要素で考える

第6章 既成概念を壊してアイデアを手に入れる
01 ワークショップでアイデアを開発する
イノベーションを阻む「既成概念」を壊す
インサイトとアイデアの関係を「枠の中」で考える
ワークショップの基本構成
「なんとなくワークショップ」とは完全に異なる場を作る
02 アイデア開発の精度を高める。ひとこと化メソッド“
優れたアイデアは「ひとこと」で表現できる
ひとこと化メソッドの基本
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則に理想プレゼン
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則④タイム&ロケーションシフト
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則にズラす新鮮
03 インサイトマンガ。でインサイトを直観的に共有する
「伝わり方」が格段に違ってくる
マンガでアイデアの理解も容易になる
04 アイデアの実現可能性をコントロールする技術カード:
アイデアをインサイトとシーズの画面から考えるために
技術カードの作成プロセス
05 キーインサイト・パリュープロポジション・アイデアの検証
そのキーインサイトはどれだけ共感を集めるか
アイデアのプロトタイピングと検証
キーインサイトの評価とアイデアの評価の関連性で検証する

第7章 インサイトを活用した業務プロセスの構築
01 インサイトを起点とする業務プロセスの再確認
「人間を見に行く」ことから始める考え方
インサイトをベースに発想する業務プロセス
02 インサイトを活用した業務プロセスを構築する際のポイント
4つのポイントがある

あとがき

 

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP

insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力

自己のインサイト認識を仕事や人生に生かす

本書は、自分を客観視して自己認識をし、その結果を仕事や人生に生かす方法について述べられています。戦略的な視点でインサイトについて述べられている一般的な書籍とは違い、自己認識という新しい視点を経由してインサイトを学ぶことができます。

ターシャ・ユーリック (著), 中竹竜二 (監修), 樋口武志 (翻訳)
英治出版 (2019/6/26)、出典:出版社HP

ママ、ノニ、そして愛するSPに

INSIGHT
Why we’re not as self-aware as we think, and how seeing ourselves clearly helps us succeed at work and in life by Tasha Eurich
Copyright © 2017 by Tasha Eurich Japanese translation rights arranged with The Eurich Group, LLC do Fletcher & Company, New York through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo

真実を語る者には大きな危険がともなう。口をつぐまざるを得ないときや、沈黙を強いられるときもあるだろう。しかしたとえ真実を口にはできずとも、せめて知っておくべきだ。たとえ人には進んで語らずとも、決して自分自身に嘘をついてはならない。
フランシス・ハーディング

編集部注
*原書内の脚注は、★で章末に表記した。
*未邦訳の書籍は、仮題のあとの括弧に原題を記載した。

INSIGHT 目次

第1章 二一世紀のメタスキル
第1部 基礎と障壁
第2章 自己認識の解剖学
――インサイトを支える七つの柱
インサイトの七つの柱
内から外、外から内へ――外的自己認識の重要性
第3章 ブラインドスポット
――インサイトを妨げる目に見えない心のなかの障壁
スティーヴ病の蔓延
三つの盲点
勇敢かつ賢く―見えない状態から見える状態へ
第4章 自分教というカルト
――インサイトを阻む恐ろしい社会的障壁
潮流の変化――努力から自尊へ
私、ワタシ、わたし(のセルフィー)
自己陶酔から自己認識へ――自分教に抗う

第2部 内的自己認識―迷信と真実
第5章「考える」=「知る」ではない
――「内省をめぐる四つの間違った考え
間違った考え1―南京錠のかかった地下室という迷信
間違った考え2―なぜか「なぜ」を考える
間違った考え3―日記をつける
間違った考え4―内省の双子の悪魔
第6章 本当に活用可能な内的自己認識ツール
瞑想抜きのマインドフルネス
人生の物語――星を眺めるだけではなく、星座表を作る
ソリューション・マイニング問題から成長へ

第3部 外的自己認識――迷信と真実
第7章 めったに耳にしない真実
――鏡からプリズムへ
マム効果(あるいはグレン・レスターに何も知らせない理由)
現実逃避の三本柱
360度評価
適切なフィードバック真実のディナー
第8章 予想外の厳しいフィードバックを受け止め、向き合い、行動に移す
自己肯定―スチュアート・スモーリーを越えて
人の一部としての欠陥―変化が必要でないとき

第4部 より広い視点
第9章 リーダーがチームと組織の自己認識を高める方法
要素1――手本を示すリーダー
手本を示す――リーダー・フィードバック・プロセス
要素2――真実を告げる安全性(および期待)
要素3――継続的な努力と自己認識を持ち続けるプロセス
継続的なチームの自己認識に向けた取り組み――率直チャレンジ
自己認識を持つチームから、自己認識を持つ組織へ
第10章 思い込みにとらわれた世界で生き抜き成長する
変えられない部分を受け入れ、変えられる部分を変える(あるいはマリアのような問題を解決する方法)
少しの自己認識では足りないとき
思い込みにとらわれた人間がハイビームの合図を読み取るサポートをする
生涯をかけての旅と、所々しか光っていない斧

巻末資料
謝辞
原注
監訳者あとがき(中竹竜二)

ターシャ・ユーリック (著), 中竹竜二 (監修), 樋口武志 (翻訳)
英治出版 (2019/6/26)、出典:出版社HP