新現代観光総論-第3版

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観光の本質がわかる

観光とは何であり、いかなる構造をもち、どのような事柄とかかわりをもっているのか。現代観光の全領域について解説するとともに、観光と情報、環境、教育、福祉など新たな視点からの考察も試みた一冊です。

前田 勇 (著, 編集), 東 徹 (著), 麻生 憲一 (著), 井上 晶子 (著), 内田 彩 (著), 大久保 あかね (著), 太田 実 (著), 大橋 健一 (著), 海津 ゆりえ (著), 鈴木 涼太郎 (著), 関口 伸一 (著), 中村 哲 (著), 橋本 俊哉 (著), 橋本 佳恵 (著), 正木 聡 (著), 安村 克己 (著), 権代 美重子 (著, その他), 辻 のぞみ (著, その他), 羽生 敦子 (著, その他)
出版社 : 学文社; 第3版 (2019/8/20) 、出典:出版社HP

(編著者)
前田勇(立教大学名誉教授)

(執筆者)
東 徹 (立教大学觀光学部教授)
麻生 憲一 (立教大学観光学部教授)
井上 晶子(立教大学観光研究所)
内田彩 (東洋大学国際観光学部専任講師)
大久保 あかね(日本大学短期大学部教授)
太田 実 (拓殖大学商学部教授)
大橋 健一 (立教大学観光学部教授)
海津ゆりえ (文教大学国際学部教授)
鈴木 涼太郎 (獨協大学外国語学部准教授)
周口伸一(元和光大学兼任講師)
中村哲(玉川大学観光学部教授)
橋本 俊哉(立教大学観光学部教授)
橋本 佳惠(共榮大学国際經營学部教授)
正木聡(常磐大学総合政策学部教授)
安村克己(追手門学院大学地域創造学部教授) 〈五十音順〉

(コラム協力者)
権代美重子 (高崎経済大学)
比如入(名古屋短期大学)
羽生敦子 (立教大学観光研究所) 〈五十音順〉

『新現代観光総論』出版によせて

1995年に初版を出版させていただいた『現代観光総論』が,今日までに多くの方々の支持を得られたことは望外の喜びであります。
観光を取り巻く社会的環境は日々変化し続けているため、その状況変化を的に反映させるために,出版して3年目の1998年に最初の改訂を加え,その後適時修正を加えてまいりましたが,2006年には,4つの章を全文改訂,また約半数のコラムのテーマ・内容を時代にマッチしたものに改めました。
さらに2010年,観光と地域社会および開発にかかわる第9章,第10章の2つの章全体と,第IV部観光を支える社会システムを構成する各章について,新規の執筆あるいは大幅な修正を加え,本書が“現代観光総論”という書名にふさわしい内容に改め、以後は〈改訂新版〉と称することといたしました。
そして今回の修正は,第5章:観光の影響と第14章:観光行動対象(2)一暮らしと交流一の2つの章については、それぞれに新しい執筆者に参加していただき、異なる視点からの考察を加えた内容とすることを試み,また,観光に影響を与える社会的状況の変化がとくに著しい「観光と環境」(第8章),「観光と教育・福祉」(第15章)をはじめ複数の章について検討を加え、さらに,第IV部(観光を支える社会システム)を構成している各章については、動向と課題に関する記述に修正を加えたものです。
今回の改訂によって、初版以来,現在までに大規模・中規模の改訂を合わせて10数回の改訂を加えたことになり、そして、初版から継続している内容記述はほとんど残ってはいないことから、『現代観光総論』『~改訂新版』といった名称を用い続けるのは、不適当であると思われました。そこで、出版社と協議の結果として、今回の改訂版については、“新現代観光総論”と称するのが適当であろうとの結論に達したのです。
このように,今日まで改訂に次ぐ改訂を続けてきたのは,本書が対象とする「観光」という事象・行動,そして観光を支えている事業活動が絶えず変化と発展を続けてきているからにほかなりません。
本書が長きにわたって、全国の大学で“観光論テキスト”として使用され,多くの学生の皆さんと教員の方々から支持されてきた理由は,観光を理解するために必要な知識を,正しく提供するために必要な改訂を絶えず続けてきてい
ることにあると考えております。
その意味では,『現代観光総論(改訂新版)』から『新現代観光総論』への改訂もまた,よりよいテキストを編纂するための,ステップであろうと考えています。
出版以来の,そして今回の改訂にかかわられた執筆者,学文社編集部の方々に心よりお礼を申し上げたいと思います。
2015年3月
編者記

第3版刊行にあたって

2015年3月末,1995年以来続いた「現代観光総論』を『新・現代観光総論』に改めた経緯は前記したとおりですが,“新”を付してからも毎年版が替わり第3版を編纂いたしました。今回の大きな特徴は、「第IV部観光を支える社会システム」の内4つの章を全面改訂し、新しい観光の動きをより的確に反映し,解説したとことです。
また、これらの改訂に連動させて、「第4章観光の諸制度」の内容を全面的に改訂しました。観光とくに国際観光がかってないほど活発に行われている現代社会には観光をめぐる“新たな問題”もさまざまあることを解説しています。
本書最新版が、現代社会における観光理解のための最新・最良の入門書となり、ガイドブックとしての役割を果たすことを願っています。
2019年5月

前田 勇 (著, 編集), 東 徹 (著), 麻生 憲一 (著), 井上 晶子 (著), 内田 彩 (著), 大久保 あかね (著), 太田 実 (著), 大橋 健一 (著), 海津 ゆりえ (著), 鈴木 涼太郎 (著), 関口 伸一 (著), 中村 哲 (著), 橋本 俊哉 (著), 橋本 佳恵 (著), 正木 聡 (著), 安村 克己 (著), 権代 美重子 (著, その他), 辻 のぞみ (著, その他), 羽生 敦子 (著, その他)
出版社 : 学文社; 第3版 (2019/8/20) 、出典:出版社HP

目次

『現代観光総論』の構成について
1 基本構成
2 各部の内容

第I部観光とは
第1章 「観光」の概念
1 「観光」とは
1)基本的理解
2)「観光」と主な類語との関係
2 現代観光の構造と構成要素
3 現代観光の特色
コラム「観光」の意味の変遷

第2章 観光の世界史
1 “観光の歴史”の考えかた
2 大衆化以前の観光
1) 古代の観光 2) 中世の観光 3) 近代の観光
3近代観光史
1) 旅行業の成立… 2) 観光の大衆化 3) 観光の量的拡大
コラム2「八十日間世界一周」を生んだ19世紀の交通事情

第3章 観光の日本史
1 庶民の旅のひろがり
1) 中世までの旅・・ 2) 江戸時代の旅
2 わが国における近代観光史
3 わが国の旅行にみられる特徴
コラム3 「お伊勢参り」のコースにみる庶民の旅の遊楽性

第4章 観光の諸制度
1 観光振興を図るための観光政策・行政
1) 観光政策のはじまり 2) 国際観光政策の地域開発への応用
3) 総合政策としての観光政策
2 国民生活と観光政策
1)生活の豊かさと観光政策 2) 観光・レクリエーションの促進と質の向上
3) 観光者の学習と教育機会
3 国際観光における新しい活動目標と課題
1)持続可能な観光 2) 世界観光倫理憲章3) 責任ある“旅行者”について
コラム4 観光基本法の精神

第5章 観光の効果と影響
1 観光が個人の生活にもたらす影響
1) 心身の充足 2) 教育的効果
2 観光者の来訪による観光地における効果や影響
1) 経済効果2)社会・文化的効果 3) 地域の活性化
3 観光の社会への効果や影響
1)日常生活への影響 2) 他産業への波及
4 観光地へのマイナスの影響
1) マイナスの影響と対応 2) 文化の変容
5 観光の現代的意義
コラム5 異文化理解機会としての観光

第II部観光と社会とのかかわり
第6章 観光と経済
1 観光と経済とのかかわり
1)国際観光の動向 2) 観光のミクロ的視点 3)観光のマクロ的視点
2 観光の需要と供給 1)観光需要 2)需要の価格弾力性 3) 観光供給
3 観光市場 1) 市場と調整機能 2)市場の不完全性 3)余剰概念
4 観光の経済効果
1)観光消費と経済波及効果
2) 観光と地域経済
3) 観光統計の整備
コラム6観光産業の経済波及効果

第7章観光と情報
1 観光情報の概要
1) 観光における情報の重要性 2) 観光情報の送り手 3) 情報の媒体(メディア) 4) 情報の内容
2 観光宣伝 1) 観光宣伝の担い手と目的 2) 観光宣伝の対象と方法 3)タイアップによる観光宣伝
3 観光における情報通信技術の活用と影響
1) 観光における情報通信技術の発展過程 2) インターネットの普及とその影響
コラム7 「旅行案内書」の歴史

第8章観光と環境
1 自然環境保護の系譜
1)自然公園制度の治革 2)地球規模での自然環境保護運動のひろがり
2 観光と自然環境の保護・保全
1)「環境と調和した観光」の考えかた 2) 観光が自然環境の保護・保全に果たしうる役割
コラム8 観光地における「ゴミ対策」

第9章観光と地域社会
1 観光と地域社会
2 地域社会をとりまく状況の変化と観光
1) 高度経済成長時代の大衆観光の発達と地域 2) 過疎化が進む地域と「リゾート法」 3) 観光者と地域社会を結ぶ新しい動 4) 地域における文化価値の伝承と観光一宝探しと新しい地域主体観光
3 地域主導型観光の現状と課題
1) 地域主導型観光の現状2) 地域社会の課題
コラム9 日本のエコツーリズムと地域振興

第10章 観光における開発と保護
1 観光地の形成と発展
1) 観光地とは 2) 観光地の開発 3) 観光地ライフサイクルー観光地の栄枯盛衰
2 観光と地域開発
1) 外来型観光開発 2)内発的観光地づくり
3 持続可能な観光地づくり
1) 地域の観光受容力 2) 持続可能な観光資源利用
コラム10 地域ブランド戦略

第Ⅲ部 人間生活における観光
第11章 余暇活動としての観光
1 余暇の意味
1)「余暇」の概念 2) 余暇と労働の歴史的変遷
2 余暇社会の到来
1) 産業社会から脱産業社会へ 2)脱産業社会としての余暇社会
3 余暇と観光
コラム11 少子高齢社会における余暇の役割

第12章 観光行動を成立させるもの 1 観光行動成立のしくみ
1) 観光にかかわる欲求 2) 観光行動成立の基本的条件と具体化のプロセス 3) 観光行動と情報, イメージ 4)観光目的による観光行動の分類
2 観光者の心理
1) 観光者心理の一般的特徴 2) 観光者心理と旅行形態
コラム 12 観光の基本型としての回遊行動

第13章 観光行動の対象(1) ——自然と文化――
1 観光対象の基本的性格
2 観光対象の種類と評価
1) 観光対象の種類 2) 観光対象と文化財 3) 観光対象の評価
3 観光対象の現代的特色
コラム 13 世界遺産と観光

第14章 観光行動の対象(2) ——暮らしと交流――
1 観光と人間の暮らし
1) 観光対象としての暮らし 2) 観光と伝統文化 3) 観光と新たな文化創造
2 文化交流の場としての観光
1) 文化の交流と観光事業 2)交流がつくりだす文化
コラム14 観光と文学作品

第15章 観光と教育・福祉
1 教育のための観光
1)観光の教育的意味 2) 教育観光の特徴
2 観光のための教育
1)持続可能な観光を支える教育 2) 観光教育の理論と実務
3 福祉のための観光
1) 福祉とノーマライゼーション
2)福祉における観光の意義
4 観光のための福祉
1) 福祉としてのソーシャル・ツーリズム 2)観光のための福祉における新たな動向
コラム15ユニバーサル・デザインと観光

第IV部 観光を支える社会システム
第16章 観光と交通
1 日本における観光と交通の歴史
1) 近世までの旅と交通手段一交通手段には変化が少なかった時代 2) 近代の観光と鉄道一移動を早く容易なものとした鉄道
2 現代の観光と交通
1) 鉄道会社によるディスティネーション・キャンペーン(観光客誘致活動) 2) モータリゼーションと観光 3) 航空機の発展と マスツーリズム 4) クルーズにみる、交通の移動手段から観 光目的への変化 5) 交通事業と観光
3 これからの観光と交通
1) 観光客の増加と交通事業 2)今後の交通の役割と観光という視点
コラム16 “観光県宮崎”の基をつくった岩切章太郎-交通業を基盤とした観光事業の展開-

第17章 観光と宿泊
1 宿泊業の歴史
1) 宿泊施設の登場 2)欧米の宿泊業の成立-近代ホテルの誕生- 3) チェーンホテルの誕生とホテルオペレーターの成立 4) わが国における宿泊業の成立 5)近代旅館の成立とホテルの発展 6) 旅館の大型化とホテルの大衆化
2 現代の宿泊業
1)データでみる日本の宿泊業 2)日本の宿泊業を取り巻く現状-宿泊関連業法の改正- 3) 宿泊営業にかかわる法と行政の多岐性 4) ホテルの経営形態の変化一世界に広がるホテルチェーン
3 宿泊業の動向
1) 旅館経営の動向 2)ホテル経営の動向 3) 宿泊業の課題-インバウンド対応-
コラム17 旅館および各国の伝統的宿泊施設

第18章観光に関連する諸事業
1 観光事業の意味と目的
2 観光を支える諸事業
1)観光の基本的行為と関連する事業 2)日常型サービス事業の観光への広がり 3) 機能の分化と専門化 4) 観 光地を支える諸事業 5) ICT技術の進歩により変化する観光事業
3 観光事業における課題と展望
コラム 18 滞在型観光
第19章 観光と旅行業——システムオーガナイザーとしての役割
1 旅行業略史
1)欧米諸国における旅行業の成立・ 2) 日本の旅行業略史
2 旅行業の業務
1)「旅行業法」にみる旅行業 2) 旅行業者の取扱額と旅行商品の流通
3 現代観光における旅行業の役割
1)従来の旅行業の役割 2) 旅行業の課題・今後求められる役割
コラム19 わが国の「旅行業務」のめばえ-先達・御師の果たした役割-

第20章 観光事業の労働と人材
1 持続可能な観光事業の担い手
1)持続可能な観光を支える観光関係者 2) 観光の持続可能な開発を担う観光事業
2 観光事業の労働
1) 観光労働の基本的特徴 2) 観光労働の実態と課題
3 観光事業の人材と人的資源管理
1) 観光事業が求める人材 2) 観光事業の人的資源管理 3)専門職としての観光労働
コラム20 ホスピタリティの教育と訓練

索引

前田 勇 (著, 編集), 東 徹 (著), 麻生 憲一 (著), 井上 晶子 (著), 内田 彩 (著), 大久保 あかね (著), 太田 実 (著), 大橋 健一 (著), 海津 ゆりえ (著), 鈴木 涼太郎 (著), 関口 伸一 (著), 中村 哲 (著), 橋本 俊哉 (著), 橋本 佳恵 (著), 正木 聡 (著), 安村 克己 (著), 権代 美重子 (著, その他), 辻 のぞみ (著, その他), 羽生 敦子 (著, その他)
出版社 : 学文社; 第3版 (2019/8/20) 、出典:出版社HP

『現代観光総論』の構成について

1. 基本構成

本書は、下図に示したように大きく4つの部分から構成されており,各部はそれぞれ5つの章からなりたっている。
各章は、最初に全体の要旨が述べられ,学習課題が2~4項目にまとめられており、その章に関係する重要な用語および人名が「キーワード」として記載されている。章の内容や用語等が,他の章と密接なかかわりをもっている場合には、→ 第0章)の形で示している。なお、各章の参考文献は,入手が容易なものに限っており,邦文(一部邦訳書を含む)を原則としている。
また、章の最後には、密接なかかわりをもち、理解を深めるために有効な参考資料・調査事例などが「コラム」として付されているので、併せて活用してほしい。

2. 各部の内容

1) 第I部(観光とは)
現代観光の仕組み・役割・影響と特徴を,社会とのかかわりや人間生活における位置づけなどの面から詳細に考察する前提として,「観光」とは何であるか という基本的事柄について学習するのが第I部である。
まず最初に,観光・ツーリズムなどの関連したことばの意味を学び,それらを通して,観光の基本的構造と構成要素を理解する。 <第1章>
現代観光の最大の特徴は,観光に参加する人びとが飛躍的に増大し,国民各層に広がってきたことである。そして,観光需要の増大とともに交通・宿泊をはじめとする観光にかかわるビシネスが活発に展開され,現代では、観光は社 会事象としても大きな地位を占めるようになっている。しかし,観光が広く社会一般に認識されるようになったのは、ごく最近のことなのであり,観光発展 の過程を知ることは現代観光の性格を理解するために不可欠なことといってよ いのである。そこで、観光の歴史を「世界史」と「日本史」とに大別し,現代 観光にいたる発展の過程を理解する。 <第2章・第3章>
また、観光の果たす社会的・経済的役割が大きくなることによって,観光に 直接・間接に関係する諸制度が国内的にはもとより,国際的にも整備されてきている。政府が観光に対してどのような政策をとるかは、国内外から高い関心 を集めるものとなっており,現代観光は,政策・行政とのかかわりの面からも 理解することが必要となっている。 <第4章>
さらに、近年とくに国内・国際両面において、地域振興・経済発展への貢献を中心とする経済的効果,地域文化の発展・相互理解の増進などの社会・文化 的効果に対する関心が強まっており、観光の及ぼす影響について多面的に理解 することは、現代観光の役割を考えるための重要な課題となっている。 <第5章>

2) 第II部(観光と社会とのかかわり)
第1部を通しての基礎的理解をふまえて,現代観光の社会とのかかわりを多面的に学ぶのが第II部の課題である。
まず、観光事象のもたらす経済効果を,さまざまな角度からの分析によって <国内観光ならびに国際観光が,なぜ注目されるかを理解する。<第6章>
次に観光と情報とのかかわりを学び,情報ネットワークの整備が観光に及ぼす影響などについて理解を深める。<第7章>
現代観光と社会とのかかわりにおいて忘れることができない問題が,環境と のかかわりである。ここではとくに,自然環境保護の系譜や環境を大切にする 観光の考えかたなどに重点をおいて学ぶ。 <第8章>
もうひとつ,現代観光と社会とのかかわりに関して重要な意味をもっているのが地域社会である。ここでは、観光による地域振興と地域社会に与える影響 についての考えかたを中心として学ぶ。<第9章>
前章と密接な関係をもつものとして、観光における開発と保護がある。この領域は、観光資源や観光地の開発・計画などに関する知識を必要とするものであるが、ここでは基礎的理解を意図して,基本的な考えかたや用語の説明を中 心としている。 <第10章>

3) 第II部(人間生活における観光) 第1部が社会・経済的事象としての観光を理解することに重点がおかれているのに対して、観光を社会的な人間行動として学ぶことを中心としているのが 第II部の各章である。
まず、観光が各人の自由に使うことのできる時間(=余暇時間)での行動でめることから,「余暇」の概念や歴史的変遷を知ることが必要であり,さらに余収活動としての観光の役割などについて理解が求められる。 <第11章>
観光が余暇社会の到来によって一般化するようになった事象であることはいつまでもないが、自由な意志に基づく個人的な人間行動の集合であることを忘れてはならないのであり,行動成立のしくみや観光者の心理を理解することを 観光成立の条件や特徴を理解するために不可欠なことである。 <第12章>
次に,具体的な観光行動の対象となる対象について,自然と文化,暮らし、 交流とに分けて説明を加えている。<第13章><第14章>
第Ⅲ部の最後の章は、観光と教育および福祉とのかかわりを説明しており, 現代観光がもっている社会的課題や役割について,理解を深めることを意図している。<第15章>

4) 第IV部(観光を支える社会システムと活動)
観光事象が実際に成立するためには,交通・宿泊をはじめとするさまざまな事業活動が必要不可欠である。これらをそれぞれ事業論としてではなく,現代 の観光を支える社会システムとしてとらえ,説明しているのが第IV部の各章である。
まず,観光に密接な関係をもつ交通・宿泊について歴史を中心に説明し, さらに現代観光とのかかわりを考察している。 <第16章><第17章>
次に観光関連の諸事業の内,現代観光においてとくに大きな役割を果たして いるいくつかの事業を取り上げ,課題等について説明している。 <第18章>
観光事業の中でも、観光の大衆化に果たした役割がとくに大きい旅行業については,現代観光の“システム・オーガナイザー”として位置づけ,発展経緯 と基本業務全般,当面する課題について説明を加えている。 <第19章>
最後の章では、観光事業を担っている人材と労働問題に関して,さまざまな 角度から分析し、観光ならびに観光事業を“人間の問題”として改めて理解することを求めている。<第20章>

環境との調和,文化理解の促進をはじめ現代観光はさまざまな課題をもって おり,“新しい観光のありかた”を求める論議も盛んである。それらについての 糸口となるものは,本書の随所でふれられている。
(前田勇)

前田 勇 (著, 編集), 東 徹 (著), 麻生 憲一 (著), 井上 晶子 (著), 内田 彩 (著), 大久保 あかね (著), 太田 実 (著), 大橋 健一 (著), 海津 ゆりえ (著), 鈴木 涼太郎 (著), 関口 伸一 (著), 中村 哲 (著), 橋本 俊哉 (著), 橋本 佳恵 (著), 正木 聡 (著), 安村 克己 (著), 権代 美重子 (著, その他), 辻 のぞみ (著, その他), 羽生 敦子 (著, その他)
出版社 : 学文社; 第3版 (2019/8/20) 、出典:出版社HP