Hacking Growth グロースハック完全読本

【最新 グロースハックについて学ぶためのおすすめ本 – 基本知識から成功事例まで】も確認する

基本から実践まで

近年、「グロースハック」という手法を用いて急成長している企業がシリコンバレーを中心に続々と生まれています。技術とデータを活用して製品の価値を見定め、それをマーケティング施策として埋め込むというグロースハックについて、基本から実践まで網羅的にまとめられた決定版です。成功事例が多数扱われているので、成長させるためにどうすればいいのか具体的なイメージを持つことができます。

ショーン・エリス (著), モーガン・ブラウン (著), 金山 裕樹 (監修),   (その他), 門脇 弘典 (翻訳)
出版社 : 日経BP (2018/9/28)、出典:出版社HP

はじめに

私(ショーン・エリス)が、ドロップボックス創業者のドリュー・ハウストンから電話を受けたのは、2008年の ことだった。創業から1年がたって苦しい状況にあるという話を聞いて、強く興味を引かれた。
クラウドベースのファイル保管・共有サービスである「ドロップボックス」は、シリコンバレーのIT関係者を中心に着実にユーザー数を増やしていた。ハウストンはプロダクトが完成しないうちにサービスの仕組みを説明する動画をWeb上で公開し、有力インキュベーターのYコンビネーターから出資を受けるとともに大勢のアーリーアダプターを獲得していた。
ニュースアグリゲーターサイトの「ディグ」に動画の第2弾を投稿したところ、またたく間に拡散してベータ版 の利用希望者が5000人から7万5000人に跳ね上がり、ハウストンは成功への確信を深めていった(※原注
いよいよサービスを一般公開するとユーザー数がさらに伸び、評判も良かった。しかし、IT関係者以外にも ユーザー層を広げようというところで壁に突き当たっていた。しかも競争が激化していて、対策を早く打たなければならない。同業のスタートアップ企業であるモジーは3年も先行し、カーボナイトは4800万ドルもの資金を調達していた(ドロップボックスがシード期に調達した資金は120万ドルだった)。業界の巨人であるマイクロソフトとグーグルも、クラウドストレージ・サービスへの参入に向けて準備を進めていた。手強い競合を抑えてドロップボックスのユーザー層を広げるには、どうすればいいのか?
このように、「アーリーアダブターの支持は厚いが絶対数が少ない状況を打開するために力を貸してほしい」と いうのが、ハウストンからの依頼だった。彼の友人であるアダム・スミスが経営するスタートアップ企業、ゾブニのマーケティング担当暫定バイスプレジデントをちょうど辞めようとしていた私に、ハウストンはドロップボックスの課題を相談したいと言ってきた。
ドロップボックスのように激しい競争と少ない予算に頭を悩ませている企業を躍進へと導く手腕の持ち主だという評判を、私はシリコンバレーで築いていた。初めて成長を促進させる経験をしたのは、オンラインゲームの先駆者であるアップロアに勤めていた時だった。ソニーやマイクロソフト、ヤフーがゲーム業界で攻勢に出ていた頃に ユーザー数を増やし、1999年 2月の上場時点で520万人以上が登録するトップ10のWebサイトに育て上げたのだ(※原注2)。
私が社会に出たのは1994年。世の中のビジネスはWebに移行しつつあったが、ビジネス専門誌の広告営業をしていた私はソフトウェア工学について全くの素人だった。しかし、Webビジネスに将来性を感じていたので、 創業者と知り合ったのをきっかけに、コツコツ貯めていた給料を投資してアップロアで働くことにした。引き続き広告営業を手掛けたが、伝統的なマーケティング手法(バナー広告なども、インターネット時代に現れたというだけで、本質的には旧来の手法と変わらない)だけに頼って成長を目指すのは危険だと気付くのに時間はかからなかった。
初めて危機感を持ったのは、大手広告代理店のサーチやオグルヴィに営業をかけた時だったと思う。アップロアのバナー広告枠をクライアントに勧めることはないと突き放されたのだ。ユーザー基盤が小さいという理由だった。 資金が不足し、もう販売機会を逃すわけにはいかない状況で、私はユーザーを急増させる方策を求められた。
最初に試したのは、ヤフーなどポータルサイトへの有料広告だった。悪くない成長を実現できたものの、コストはかさむし、のちにドリュー・ハウストンもドロップボックスで経験するように、費用に見合う効果は得られな かった。そうしている間にも、ソニーやマイクロソフト、ヤフーはゲームのWeb広告を猛烈にプッシュしていた。まともに対抗するだけの資金が若いスタートアップ企業のアップロアにあるわけもなく、私は別の方法を探らざる を得なかった。
そうして思い付いたのが、ゲームをWebサイトに無償で提供するという、前例のないタイプの広告だった。W ebサイト側は訪問者にゲームを楽しんでもらい、アップロアは訪問者の目に触れることになる。このアイデアの 承認を取ってエンジニアを巻き込み、わずかなコードでどんなWebサイトにも追加できる1人用ゲームを数週間で完成させた。世界で最初の「埋め込みウィジェット」のひとつである。
サイト運営者はアフィリエイト(協力者)になり、アップロアはサイトを通じて獲得した顧客1人につき3セントを支払うこととした。この低コストのおかげで広告費は安くて済み、ゲームの集客効果を見込んでアフィリエイト は積極的に打ち出してくれた。私たちは新規ユーザーを獲得することに加えて、別のサイトの運営者が簡単にゲー ムを使えるように「このゲームを自分のサイトに追加する」というリンクを貼ることも試した。
ゲームの人気が高まってきたところで、キャッチコピーとコールトゥアクション (CTAユーザーの「行動喚起」を 促す施策)、ゲーム内容をさまざまに変え、どの組み合わせが最適かをテストした。その結果、爆発的な成長が実現 した。無料ゲームは4万のサイトに掲載され、アップロアは大々的なキャンペーンを仕掛けている大手競合を抑えてオンラインゲーム業界のトップに躍り出たのだ。
それ以来、この成長戦略は多くの企業で使われている。最も有名な例は、埋め込み動画プレーヤーを開発して急成長を遂げたユーチューブ。Webのいたるところにユーチューブの動画が現れ、オンライン動画は一大現象となった。
この成功があって、私はアップロアの創業者が次に立ち上げたベンチャー企業、ログミーインの成長も手伝って ほしいと頼まれた。「ログミーイン」は、インターネットに接続されているどんなパソコンからでも、自宅や職場 のデスクトップパソコンに入っているファイルやメール、ソフトウェアにアクセスできるという独創的なプロダクトだった。検索エンジンマーケティング(SEM)のキャンペーンを積極的に行い、利用登録の初速は上々だったが、 すぐ頭打ちになってしまう。主要競合のゴートゥーマイPCとの差別化のために、私の提案で有償からフリーミアムにビジネスモデルを転換してからは特に、広告の割高感が際立つことになった。毎月1万ドル以上の広告費をかけても、その投資に見合う顧客獲得効果が得られなくなってしまったのだ。
キャッチコピーのテストを何度も繰り返し、キーワードや広告プラットフォームをいろいろと変えてみたが、コンバージョン率は恐ろしく低いままだった。すばらしく役に立つことが明らかで、基本機能は無料で使えるサービ スなのに、である。この問題の解決策を見つけるため、ここでもテクノロジーに頼ることにした。
手始めに、一度サービスに登録したのに解約してしまったユーザーからフィードバックをもらおうと、登録時に記入されたアドレス宛てにメールを送り、「なぜログミーインを使わないのか?」と尋ねた。今なら珍しくもない ことだが、当時としては斬新なアイデアだった。
そうして回答を集め始めてわずか数日で、問題の原因がありありと見えてきた。彼らはログミーインが無料のサービスだという私たちの言葉を信じていなかったのだ。まだフリーミアム形式のソフトウェアが出始めた頃で、 多くの人の目にはうま過ぎる話と映ったのも無理はなかった。そこで、マーケティングチームとエンジニアリング チームを集め、どうすれば「落とし穴」などなく、本当に完全無料のバージョンを提供していることが伝わるラン ディングページにできるかを検討した。
キャッチコピーとページデザインのイテレーション (訳注 : 短期間に反復しながら行う開発プロセス)を何度も試したが、 意味のある改善効果はほとんど見られなかった。次に、有料バージョンの購入ページに簡単なリンクを追加してみ たところ、これが当たりだった。デザイン、メッセージ、オファーによる勝利の方程式が見つかり、コンバージョン率は3倍に伸びた。
しかし、それはほんの始まりに過ぎなかった。データを深掘りしていくと、ソフトウェアをダウンロードしても 利用にいたらなかったドロップオフのほうがずっと多いことが分かり、実験はさらに続いた。インストールや登録 の手順などを変えていき、最終的には検索広告のコスト効率が回復しただけでなく、利益を出しながら検索広告が 700%以上もスケールするほどコンバージョン率が高まった。こうして会社の規模は拡大し、すぐに軌道に乗ったのだった。
解決策はこの時もわずか数週間で見つかったわけだが、そのカギは適度に型破りな考え方をし、組織横断的に問 題解決にあたり、市場テストと実験をリアルタイムで(しかもほとんどコストをかけずに)行い、その結果を受けてすばやく行動することだった。これこそが、私が本書にまとめた「グロースハックの方法論」の真髄である。
もちろん、プログラミングとマーケティングの知見をインターネットの特性と組み合わせて成長を加速させたス タートアップ企業は、アップロアとログミーイン以外にもあった。例えばホットメールは、ユーザーが送信するすべてのメールの下に「PS ホットメールで無料の電子メールを入手しよう」というシンプルな文言とアカウント 登録ページへのリンクを挿入し、Webプロダクトのバイラル性(およびサービス自体の「売り込む」力)を活用した先 駆者であった(※原注3)。
同時期に、プロダクトと人気プラットフォームとの間で相乗効果を生むことが大きな成長につながると示したの は、ペイパルだった。オークションサイトの「イーベイ」で手軽な決済手段として薦められていることを知り、開 催中のすべてのオークションにロゴと登録ページへのリンクを表示させる「オートリンク」というツールを開発し たところ、ペイパルを利用する出品数が3倍になり、このWebプラットフォームでの急成長が実現した(※原注 4)。
リンクトインは、2003年5月にサービスを開始して数カ月は伸び悩んでいたが、マイクロソフトのメールソ フト「アウトルック」のアドレス帳をアップロードするだけで連絡先に追加できる便利な機能を導入すると、ネッ トワーク効果が高まって急成長した(※原注5)。
これらの事例で成長を支えたのは伝統的な広告ではなく、少々のプログラミングとわずかな予算だった。顧客基 盤を構築・拡大・維持するためのアプローチとして、伝統的なマーケティング戦略や多額の広告費に頼らず、ホットメールやペイパル、リンクトインのようにソフトウェア開発を通じてプロダクトそのものにマーケティング施策 を組み込むようにすれば、効果とコスト効率が抜群に高まるということが認識されつつあった。そして、おそらく こちらのほうが重要だが、大量のユーザーデータを収集・保管・解析し、リアルタイムで分析する能力の高まりを受けて、小さなスタートアップ企業でも新機能や新たな広告・ブランド活動などのマーケティングができるようになっていた。それも、かつてないほどの低コスト、高速度、高精度で。
このような状況の中で生まれたのが、高速かつ部門横断的な実験を通じて急成長を促すアプローチ、つまり私が のちに「グロースハック」と名付けた手法だ。
ログミーインで成長戦略を成功させたあと、私はアーリーステージの企業を相手に、実験によって成長を加速さ せる助言者となることを決意した。だから、ドリュー・ハウストンからドロップボックスへの助力を頼まれた時は、 自分が組み立ててきた手法を早く使いたくてウズウズした。
成長プロセスの第一段階として、プロダクトの「マストハブ(必須)スコア」を算出するために登録済みユー ザーに簡単なアンケート調査を行った(マストハブについては、あとの章で詳しく述べる)。「もしこのサービスを利用でき なくなったら、どう感じると思いますか?」という質問に「すごくがっかりする」「少しがっかりする」「がっかり しない」「すでに利用していない」のいずれかで回答するものだ。
このような質問にしたのは、プロダクトに満足しているかを尋ねても有意義な洞察を得られないからだ。プロダ クトへの愛着を測る指標としては落胆度合のほうが適している。同じ調査を多くのスタートアップ企業で実施した経験から、「すごくがっかりする」が回答の4割以上なら成長のポテンシャルが非常に高く、それ以下だとビジネスを成長させるのは簡単ではない(ユーザーが無関心なため)ということが分かっていた。しかし、この時の調査結果には、さすがの私も驚いた。ドロップボックスのマストハブ・スコアは、特にすべての機能を使っているユーザー の間で、並外れて高かったのだ。
成長のポテンシャルが申し分ないことは明らかだった。次の問題は、それをどう活かすかだ。有料広告の強化で はない別の起爆剤を見つけようと提案すると、ハウストンは同意し、私を半年間の暫定マーケティング責任者に任命した。MIT(マサチューセッツ工科大学)の大学院で情報工学を学んでいたハウストンは、そのスキルを製品開発 に注ぎ込んでいた。そこから一歩進んで、ドロップボックスに触れる顧客を増やし、確実に魅力を伝えることにも スキルを使う時が来ていた。
成長プロセスの第二段階はユーザーデータの精査で、ドロップボックス利用者の実に3人に1人は既存ユーザー から薦められて使い始めていることが分かった。口コミは好意的なのに、成長がうまく加速していなかった。言い 換えれば、プロダクトはユーザーから強く支持され、知人や友人に薦められているにもかかわらず、新規ユーザー の登録数はポテンシャルを大きく下回っていたのだ。まさに、スタートアップ界隈でいまだに信じられている 「フィールド・オブ・ドリームスの誤謬」そのままの状況だった。これは、映画『フィールド・オブ・ドリームス』 の主人公が「それを造れば彼はやって来る」という不思議な声を信じたように、優れたプロダクトを開発すれば ユーザーのほうから集まってくると誤解することを指す。
そこで私は考えた。この好意的な口コミを活用・増幅することはできないだろうか? 初期ユーザーがさらに多 くの知人や友人にドロップボックスを進んで紹介したくなるよう仕向ける方法はないだろうか? ハウストンと、 彼がこの取り組みに引き込んだインターンのアルバート・ナイと3人で話し合い、紹介1件につき 10ドルをユーザーのアカウントに付与して大成功を収めたペイパルを参考にすることに決めた。
ただし、ひとつだけ問題があった。ペイパルの紹介プログラムの費用総額は不明だったが、私たちが目指すレベ ルの成長を達成するには「ユーザー買収」の予算がとても足りなかったのだ(のちに同社の共同創業者のイーロン・マスク が明かしたところでは、6000万~7000万ドルほどかかったという(※原注6))。しかし、三人寄れば文殊の知恵。紹介料として別の価値あるもの、つまりストレージ容量を追加でプレゼントしてはどうかとひらめいたのだ。
当時、ドロップボックスはAWS(アマゾン ウェブ サービス)の「アマゾンS3」というクラウドストレージを使っていた。そのため、ストレージの総量は簡単に(しかも安く)増やすことが可能だった。こうしてペイパルを手本に、 紹介した側もされた側も250メガバイトずつの追加容量をもらえる紹介プログラムが一気にできあがった。この頃、250メガバイトといえばハードドライブ1台分に相当したので、無料でもらえるのはとても強い動機付けに なるはずだと私たちは考えた。
そしていざプログラムを公開すると、あっという間にメールやソーシャルメディアで招待状が飛び交うようになり、紹介を通じた新規登録は6割も増加した。
目論見通りにいったわけだが、そこで手を休めはしなかった。このチャンスを最大限利用するため、文言から特 典の詳細、メールの招待状、ユーザーエクスペリエンス(UX)とユーザーインターフェース(UI)の要素にいた るまで、あらゆる角度からプログラムの最適化を試みる怒涛のような作業が待っていた。
新たな実験を始めたら、結果の良しあしを週に2回見て、そのたびに次はどこを変えて実験するかを決める「ハイテンポ検証法」で、実験の効果をほぼリアルタイムで評価していった。試行錯誤を重ねるうちに結果は徐々に良くなり、2010年の初めには毎月280万件以上の招待状が送られ、ユーザー数はサービス公開直後の1万人から400万人を超えるまでになっていた。これはわずか1カ月間の出来事だった。古典的なやり方で広告費を追加 投入することなく、バナー広告や有料プロモーション、名簿販売業者にも頼らず、私が2009年の春に辞めたあとも、常勤のマーケターを雇わずに成し遂げられたのだ(※原注7)。
その頃には、市場での成長と顧客獲得のために多額のマーケティング費用を投じて非科学的で測定不能な作戦を 取らず、コスト効率が良く首尾一貫しているデータ駆動型の新手法は、シリコンバレー全体に広まろうとしていた。 成長への独創的なアイデアを矢継ぎ早に考案・試行するという同じようなアプローチを、他社も編み出し始めたのだ。
2007年後半にはフェイスブックが、プロダクトマネジメント、インターネットマーケティング、データアナリティクス、エンジニアリングに精通した5人を集め、「グロースサークル」というチームを正式に結成した(そのうちの1人は、最古参のプロダクトマネジャーであるナオミ・グレイトだ)。チームを率いたチャマス・パリハピティヤ (プラットフォームと広告に関するプロダクトマーケティングの元責任者で、パワフルな経営幹部)は、CEOのマーク・ザッカーバーグに、 ユーザー数を伸ばすことに注力するべきだと訴えた。この時、フェイスブックには約7000万人のユーザーがおり、すでに目覚ましい成長を遂げていたが、そろそろ曲がり角に差しかかろうとしていた。そこでザッカーバーグは、頭打ちの状況を打開するためにさまざまな方法をひたすら実験するように指示した。グロースサークルが成功 に次ぐ成功を収め、投資に見合う成果を上げると、チームメンバーが増員されて実験体制が充実し、成長はさらに 加速していった(※原注8)。
彼らの重要なブレークスルーのひとつに、グローバルな成長を推進するための翻訳エンジンの開発がある。これを見ると、グロースハックの手法が伝統的なマーケティングの方法論と一線を画していることがよく分かる。当時、 フェイスブックの7000万人のユーザーは大多数が北アメリカの居住者で、世界中からユーザーを引き込めば大きく成長できることは明らかだった。しかし、そのためにはプロダクトをありとあらゆる言語に翻訳するという途方もない作業が求められた。こういう場合、話者の多い0言語に絞って国ごとに現地の翻訳チームを雇うのが定石 だったが、グロースサークルのエンジニア陣はハヴィエル・オリヴァンを中心に、クラウドソーシング・モデルを 通じてユーザーがフェイスブックのサイトをどんな言語にも翻訳できる翻訳エンジンを構築した。
グロースハックの第一人者でフェイスブックのグロースサークルで働いたこともあるアンディ・ジョーンズは、 この取り組みについて次のように説明している。「成長を支えたのは、1カ国につき 10人を雇って最重要の3カ国 に配置し、成長が起きるよう祈ることではなかった。大規模なシステムを作ってユーザーにプロダクトを育ててもらうことが、成長を支えたんだ」。これこそ、フェイスブックが現在の巨大なユーザー基盤を築けた決め手のひとつだったという(※原注9)。
フェイスブックのユーザー数が伸びるにつれて、グロースハックの手法も広まっていった(規模は比べものにならなかったが)。これはフェイスブックでノウハウを身に付けたあと、ツイッターやウーバー、クオラ、アサナなどの新 興スタートアップ企業に転職した大勢の社員の存在が大きかった。私もイベントブライトとルックアウトという2 社でグロースハックを実践して、成功を収めていた。そしてこの頃、エアビーアンドビーやリンクトイン、イェル プをはじめとした多くの企業が、同じように実験駆動型のアプローチを採るようになっていた。
エアビーアンドビーの例を見てみよう。3人の創業者はサービスが軌道に乗るまでにサイトを3回もローンチするなど、はじめは顧客を引き付けるのにとても苦労した。資金不足は深刻で、2008年には大統領選挙に便乗し て「オバマ・オー」と「キャプテン・マケイン」という立候補者の絵入りシリアルを売ることまでして何とか生計 を立てていた(追加の資金が調達できるまでの間、共同創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアは売れ残ったシリアルで食いつないだこともあったという)。
彼らはユーザーを増やすためにあらゆるアイデアを試したが、どれもうまくいかなかった。しかし、ついに秀逸なグロースハックにより、手つかずだった成長の鉱脈を掘り当てた。少しばかり高度なプログラミングと膨大な数 の実験によって修正を繰り返して完成し、今もシリコンバレーで語り継がれているこの手法は、エアビーアンドビーの掲載情報を有名なクラシファイド広告サイト(主に個人が利用する、売り買いしたい物や居住地域によって分類された広告掲載サイト)の「クレイグズリスト」にも無料で同時投稿するというものだった。これにより、休暇を過ごすための貸し家をクレイグズリストで検索したユーザーに対して、エアビーアンドビーの物件を薦められるようになった。
このやり方の巧みさは賞賛するに値する。そもそもクレイグズリストは、他サービスから同時投稿する方法を公開していなかった。そのためエアビーアンドビーのチームは、まずクレイグズリストが新規の投稿をどのように処理しているのかを解析し、それから処理プロセスを自前のプログラムで模倣しなければならなかった。つまり、投稿システムの仕組みを読み解き、休暇用の貸し家がどのカテゴリーに分類されるかを地域ごとに把握し、画像表示 や書式設定のルールといった投稿の制限を解き明かすということだ。
このグロースハックについて、ウーバーで乗客数の成長戦略を指揮しているアンドリュー・チェンは次のように 驚嘆している。「かいつまんで言うと、こういったインテグレーションは小手先でできることじゃない。目配りすべき詳細事項はたくさんあり、最初のインテグレーションを仕上げるのに優秀な人材がとても長い時間を費やした のもうなずける」。そしてこう結論付けている。「正直に言おう、伝統的なマーケターだったら、このインテグレーションを検討することさえないだろう実現するには技術的な課題が多過ぎるからね。クレイグズリストからユーザーを獲得するという任務を負ったエンジニアにだけ思い付くことができたのは、そういうわけだ(※原注1)」
この精巧なインテグレーションによって、エアビーアンドビーの掲載情報はクレイグズリストに流れ込み、宿泊予約は急増した。広告費を1セントも投じることなく、である。
インテグレーションが済んだあとは、クレイグズリストでの見映えやヘッドラインを含めた掲載情報全体への反 応を測定・最適化し、競合のいないブルーオーシャンから利益を得るための取り組みが始まった(※原注1)。クレイグズリストの承認を得ていなかった投稿はやがてブロックされてしまうが、その頃にはすでにエアビーアンド ビーの勢いはついており、成長をさらに促すために新たな方策が次々と試されていた。継続的な実験は今も続いていて、より最近の成功事例をあとの章でいくつか紹介しよう。
グロースハックには伝統的な縦割りビジネスを解体し、アナリティクスやエンジニアリング、プロダクトマネジメント、マーケティングの専門家による組織横断的な協働チームを結成する力がある。これを用いれば、企業は強力なデータ解析と技術的ノウハウをマーケティングの知識と効率的に結び付け、より成長の見込みが高いやり方をすばやく編み出せる。有望なアイデアの検証と客観的な測定基準での評価を高速で回すグロースハックは、アイデアの取捨選択を大きく早めてくれるだろう。
時代遅れで無駄が多く、実証されていないアプローチに代わって、市場で検証されたデータ駆動型のアプローチ をもたらし、成果を上げていない機能やマーケティング手法への間違ったこだわりを取り除く解決策が、グロースハックなのだ。

グロースハックは誰にでも役立つ

ここからの段落は、私(モーガン・ブラウン)が担当する。
最初に伝えたいのは、グロースハックは「マーケター専用」のツールではないということだ。活用できる業務は 新製品の開発からプロダクトの継続的な改善、既存の顧客基盤の拡大にまで及ぶ。製品開発担当者からエンジニア、 デザイナー、営業担当者、マネジャーまで、誰でも使えるツールなのだ。
もうひとつ、勘違いしないでほしいのは、これが「起業家専用」のツールでもないということである。少人数の スタートアップ企業と同じく、老舗の大企業でも効果を発揮する。実際、大企業に勤めている読者でも、グロースハックを実践するのにそれほど大きな権限は必要ない。全社的な取り組みから個別のキャンペーンやプロジェクトまで、規模の大小にかかわらず使えるようになっている。つまり、あらゆる部門やプロジェクトチームが、本書で 解説するプロセスに従ってグロースハックの戦略集を実践できるということだ。
この手法こそ、ここまで紹介してきた企業をはじめ、ウーバーやリンクトイン、ピンタレスト、ビットトレント など、シリコンバレーで急速に台頭している多くの「ユニコーン」(企業の評価額が1億ドル以上で非上場のスタートアップ 企業を指す言葉)を並外れた成功に導いてきたエンジンなのである。
これらの企業が急成長できたのは、「市場を席巻するほどの画期的なビジネスアイデアを思い付いたからだ」などとまことしやかに言われるが、それは明らかな誤りだ。大勢のユーザーに受け入れられるまでの道のりは、短く もなければ平坦でもなかった。世界を変えるプロダクトの完成形を思い付き、たったひとつの洞察や幸運なめぐり合わせ、天才的なひらめきから一気に成功を手に入れた例はない。どの企業も、製品開発とマーケティングの新た なアイデアを綿密かつ迅速に生成・検証し、成長につながる名案をユーザーの行動データから探したことで、成功 にたどり着けたのだ。
この反復プロセスに聞き覚えのある方は、きっとソフトウェアの「アジャイル開発」や「リーン・スタートアッ プ」の方法論で似たようなアプローチに出合ったことがあるのだろう。このふたつはそれぞれ製品開発と事業開発 のために用いられ、グロースハックは顧客の獲得・維持、収益拡大のために用いられる。ショーン・エリスが助言 した企業や他のスタートアップ企業が、これらの手法を使ったのは自然なことだった。その方面に明るい優秀なエンジニアがそろっていたし、エンジニアがソフトウェアや製品の開発に使うのと同じアプローチを顧客の獲得に使 おうという創業者がいたからだ。
アジャイル開発は開発スピードの高速化、短いスプリント(時間枠)でのプログラミング、製品の定期的なテスト のみっつが柱になっている。リーン・スタートアップは迅速な開発と定期的なテストを行う点で共通しているが、 それに加えて「実用最小限の製品」をできるだけ早く市場に出し、ユーザーから本音のフィードバックを得てビジ ネスを確立することを目指す。これらの手法の継続的な改善サイクルと迅速な反復アプローチを、顧客獲得と収益拡大に応用したのがグロースハックだ。
そこにいたる過程で、豊富な技術的ノウハウが必要な新しいマーケティング施策をプロダクト自体に組み込むために、グロースハックの手法はマーケティングとエンジニアリングの間にある壁を打ち破った。
こうして生まれたグロースハックは、ビジネスの方法論として磨かれていき、いまや世界中で何千何万という 人々が実践する一大ムーブメントとなっている。グロースハッカーのコミュニティは起業家やマーケター、エンジニア、プロダクトマネジャー、データサイエンティストなどで活気にあふれており、彼らの活動分野は技術系ス タートアップ業界をはじめ、ITから小売、B OB、専門サービス、娯楽、政治まで幅広い。
企業によって実践方法に細かな違いはあるものの、グロースハックのコア要素は次のみっつにまとめられる。
・マーケティングと製品開発の分業体制を打ち破り、組織横断型チームを結成する。
・定性調査と定量のデータ解析を併用し、ユーザーの行動と嗜好に関する深い洞察を得る。
・アイデアを迅速に生成・検証し、その結果を厳しい基準で評価して対応する。
ほとんどあらゆる分野で応用が利き、有効性が証明されて広く使われるようになってきたグロースハックだが、 そのプロセスをどんな規模・形態の企業でも実践できるように段階を追って書かれた、権威と信頼のある戦略書は
これまでなかった。本書はそんな位置付けを目指している。

戦略書の決定版

私たちが本書を執筆したのは、グロースハックがあらゆるビジネスで大いに役立つのに、そのプロセスへの理解 と実践にあたってのベストプラクティスが十分に広がっていないと感じたからだ。グロースハックは市場で飛躍するための重要な新戦略だが、どう運用すれば効果を最大限に引き出せるかを本当に理解している人はまだ少ない。
グロースハックの第一人者であるショーン・エリスが立ち上げたWebサイト「グロースハッカーズ・ドットコム」(https://growthhackers.com/)は、グロースハック関連の最新情報を発信して世界中から何百万人もの参加者が集 まる一大コミュニティになっており、今もベストプラクティスについて毎日たくさんの質問が寄せられる。このことからも、グロースハックの効果と正しい実践法がきちんと理解されていないのは明らかだ。そこで、あらゆる企業のマーケターやマネジャー、エンジニア、創業者、イノベーターがグロースハックを使いこなせるように、戦略 書の決定版を執筆することにしたわけだ。
ドロップボックスやアップロア、ログミーインなどの企業を成功に導き、グロースハッカーズ・ドットコムのコ ミュニティを育て、ユーザー調査会社のクアラルーを急成長させてきたショーンの経験から、グロースハックのプ ロセスへの洞察を皆さんとシェアしたいと思う。
また、成長著しいフェイスブックやエバーノート、リンクトイン、イェルプ、ピンタレスト、ハブスポット、ス トライプ、エッツィー、ビットトレント、アップワーシーなどの企業でグロースチームを率いているイノベーター たちの洞察を盛り込み、ウォルマートやIBM、マイクロソフトなどの大手企業でグロースハックを採用したリーダーたちへのインタビューも引用している。私たちの経験と、多くのエキスパートの知恵と実践例をまとめた本書 を読めば、自分のビジネスの目標達成に役立つ気付きが得られるはずだ。
これは、グロースハックという手法の生みの親であるショーンと、その実践者として経験を積んできた私が著した著書である。これほど、あらゆるチームや部門、企業で使えるよう順序立った分かりやすい実用的な戦略書は初めてだと信じている。

成長の永久機関
どんな業界、どんな規模の企業でも、差し迫った課題のひとつに「成長の壁」があることは間違いない。著名な経営誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事によれば、8%の企業が成長の頭打ちを経験したことがあり、 「成長の壁の前後10年間に、平均して時価総額の1%を失う」という。しかも、「既存のビジネスモデルの寿命が縮 まって」いるせいで「成長の壁のリスクが近い将来に高まる」と警告している。成長の壁の原因としては、「既存成長機会を徹底的に追求しないこと」が挙げられている(※原注2)。客基盤を広げる必要がある。しかし、グロースハックが目指すのは新規顧客の獲得だけではない。顧客を引き付け、 利用を促し、魅力を伝えてリピーターにすることが重視される。変化し続けるニーズと願望に柔軟に対応して顧客 を収益源に変え、さらにはブランドやプロダクトの口コミを積極的に広めることが重要だ。
グロースチームの任務は何よりもまず、プロダクトの機能、ユーザーへのメッセージ、顧客の獲得・維持・収益 化プロセスを繰り返し微修正して成長のチャンスを余すところなく見つけ出すことである。その過程で、顧客の行 動やフィードバックを評価したり、機械学習やAI(人工知能)といった新技術の活用法を探ったりして、製品開発 の新たなチャンスを追求することも必須になる。
グロースハックをいち早く取り入れている企業には、その有用性が認められ、グロースチームが100人をゆうに超える大所帯になっているところも多い。そのような企業では通常、グロースチームをいくつかのサブチームに 分割し、顧客の維持やモバイルユーザー層の確立といった具体的な任務を与えている。
人数の違うサブチームを編成し、特定の事業ニーズに応じて人員配置や責任分担を調整している企業もある。例えばリンクトインのグロースチームは、5人のメンバーで始まったが今では120人以上に増えており、ネット ワーク成長、SEO(検索エンジン最適化)/SEM(検索エンジンマーケティング)、オンボーディング(ユーザーを定着させること)、国際的な成長、ユーザーのエンゲージメントとレザレクション (再獲得)という5つの業務ユニットに分割 されている(※原注2)。ウーバーのグロースチームは対照的に、登録ドライバーの増加、乗客予備軍の拡大、海外 事業の拡張などを担うグループに振り分けられているそうだ(※原注1)。
今の時代、あらゆる企業がグロースチームを作るべきだが、それで必ずしも伝統的な組織体系やマーケティング戦略を捨てなければならないわけではない。むしろグロースチームの補助により、アプローチの最適化が図れる。 これらの部門を分割するのは、起業してまもない時期には避けたほうがよいが、スタートアップ企業も規模が拡大 すれば、専任のグロースチームと密接に連携するような従来型のマーケティンググループを作ってもよいだろう。 大企業でグロースチームを結成すれば、プロダクトやマーケティング、エンジニアリング、ビジネスインテリジェ ンスのグループと連携させ、風通しを良くすることができる。
ドロップボックスでのショーンの経験から分かるように、グロースハックはごく少人数のチームでもできる。ス タートアップ企業、とりわけ成長の初期段階にある企業では、創業者が旗振り役になって全社員をメンバーにするのが望ましい。変化を嫌う組織や文化と折り合いを付けなければならない大企業では、小さなチームを他の部署から独立させるとか、プロダクトやマーケティングチャネルの追加といった限定的なプロジェクトのために結成することが考えられる。
チームはメンバーを新たに雇った専任ユニットをはじめ、各部署から社員を集めた混成グループや、必要な時に だけ結成するアドホックグループまでさまざまだが、事業のニーズにいつでも応えられるようにするために、人数 も活動範囲も責任も段階的に拡大していくことがほとんどだ。
グロースハックは規模や成長段階にかかわらず、どんなチームや企業のニーズにも適応させやすい手法であり、 その利点は多い。いくつかの利点を挙げ、それが今なぜ重要なのかを説明しよう。

破壊の波を乗り切る

スタートアップ企業から大手企業まで、あらゆる企業はグロースハックの手法を取り入れなければ、すでに実践 している競合によって破壊される恐れがある。IBMやウォルマートなどの老舗企業でさえ、グロースハックを生き残りに欠かせないツールだと考え始めているほどだ。
考えてみれば、製品自体がインターネットに関連していなくてもWeb上でマーケティングと販売を行うのが当 たり前になっている今、あらゆる企業がインターネットテクノロジー企業と言える。しかも、業界トップクラスの企業でもあっという間に駆逐されかねないビジネス環境にあって、最新ツールを取り入れ、製品開発とマーケティ ングで実験をし続けることは、デジタル製品の業界だけでなくあらゆるビジネスで必要性が増している。IoT (モノのインターネット)が急速に発展し、あらゆる製品がインターネットにつながって「スマート化」すれば、この傾向はさらに加速するだろう。モノとソフトウェアの融合が進む世の中では、プロダクトをリアルタイムで監視・更新し続けることが可能になり、それどころかいずれは競争力を保つために必要不可欠となる。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の元CEOジェフリー・イメルトは「工業製品を扱うすべての企業は、いずれソフトウェア会社になる」と指摘しているが、これは消費財やメディア、金融サービスなどの企業にもそのまま 当てはまる(※原注6)。事業戦略アナリストのマイケル・ポーターと、ソフトウェア会社のPTCでCEOを務めるジェームズ・ヘプルマンによる『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事では、販売したあとも製品とつながっていられるようになれば「企業は顧客関係の重点を、販売という1回きりのやり取りから、製品のもたらす継続的な価値の最大化へとシフトする」と指摘されている。このシフトにより「製品デザインとクラウドオペレーション、サービス改善、顧客エンゲージメントを協調させる必要」が生じるという。私たちの経験から言うと、そ のためには組織横断型のグロースチームを結成するのが最適で、しかもコスト効率が最高である(※原注6)。
テクノロジーを巧みに使ってプロダクトを継続的に更新・改善し、その過程で新規参入企業からの追い上げをかわしているのが、電気自動車のパイオニアであるテスラだ。テスラは他社のように年式を定めず、車載ソフトウェアを定期的にアップデートすることで、新モデルのリリースを待たずにリアルタイムで機能を更新している(自動 運転技術を追加するなど)。また、車体の性能をモニタリングし、補修が必要になったらオーナーにメッセージを送っている。今後数年で販売台数の大幅増を目指す計画を立てているテスラは、「スケーラブルな普及促進策を設計・ 実装・最適化するために、グロースチームをゼロから立ち上げる」と発表し、フェイスブックとウーバーからグ ロースハッカーの引き抜きを行っているという(※原注7)。

スピードを上げる

グロースハックは、すべての企業が直面している「スピードアップ」という緊急課題への答えにもなる。かつてなく激しい競争と目まぐるしい変化にさらされるビジネス環境では、成長の糸口を矢継ぎ早に見つけることが極めて重要だ。
グロースハックを使えば、製品開発や公開に関する昔ながらの事業プロセスを革新し、継続的なテストを仕組み化し、市場の要望にすばやくシステマティックに反応するようになるため、企業のフットワークは見違えるように 軽くなる。新たなチャンスをつかみ、問題点を修正するスピードも高まる。このように、グロースハックの手法を組織に浸透させることは強力な競争優位性となり、ビジネスのペースが今後も加速し続ければ、その価値はさらに高まっていくだろう。
新技術や新プラットフォームに迅速に適応することも非常に重要だ。いまだにほとんどの企業がとらわれている伝統的なビジネスモデルでは、プロダクトマネジメントやマーケティング、セールス、エンジニアリングなどの機能は別々の事業部門に縦割りされ、風通しが悪く優先事項がバラバラになってしまう。プロダクトチームが市場調 査を行い、仕様を検討し、市場規模を試算して製品の詳細を詰めてからようやく生産・技術部門にバトンが渡り、 そこから市場向けの完成品が作られる。これと並行して、マーケティング部門はプロダクトチームから調査結果と仕様を受け取ると、マーケティング計画を立て始める。広告とプロモーションには、社内のキーパーソンとの関係 がさらに薄い外部の代理店を使うことも多い。製品が発売されると販売の最大化に向けた施策が打たれ、現場からの報告書がプロダクトチームとマーケティング部門に上げられて次の製品に活かされる。この非効率的過ぎるサイクルは1回転するのに数カ月から数年もかかり、消費者ニーズの変化やテクノロジーの進歩についていけなくなる。 製品改良は間に合わず、新たな強みやマーケティングチャネルを開拓する暇もなく企業は弱体化していく。
つまり、スタートアップ企業も大企業も、縦割り組織に足を引っ張られるわけにはいかないということだ。グロースハックなら組織の壁を壊すことができる。新製品や新機能の開発スピードが上がり、顧客の獲得・活性化・収益化に必要なマーケティング戦略と営業戦略の立案・実施がテンポアップすることで、変化し続ける市場の要望 に敏感に反応するチームができあがる。すばやい検証作業がグロースハックの肝になっているのも、このようにスピードが欠かせないからだ。
フェイスブックでグロースマーケティングの責任者を務めるアレックス・シュルツは次のように言っている。 「あなたが 2週間に1回コードをテストし、競合は毎週コードをテストしているとしましょう。すると、たった2 カ月後には競合のテスト回数はあなたの10倍になり、プロダクトの学習に0倍の開きができています。まさに桁違いです(※原注2)」

データを活用する

グロースハックから企業が得られる競争優位性には、顧客データの活用もある。ITツールの進歩によって顧客データは簡単に集められるようになったが、大企業も中小企業も情報の山から成長の鉱脈を掘り当てることには苦 労している。その最大の原因は、顧客データを統合的に集める手法が確立できていないことだ。プロダクト部門とマーケティング部門がそれぞれ独自にテストやデータ収集を行って結果を共有しないとか、キャンペーン運営のた めに広告代理店を雇っても他部門が欲しがるデータまでは集めさせないというふうに。そんな組織のエンジニアリ ングチームが指定される開発要件は、えてして過去のデータをもとにしていて現在の顧客ニーズに合っていないものだ。
その結果、ページビューのような表面的で無価値な指標に基づいて判断したり、縦割り組織のせいで点と点がつながらずに成長のアイデアが埋もれたりといった事態に陥ってしまう。
グロースハックは、データを今よりも有効活用できる手法だ。データからユーザー行動についての明確で適切な 洞察をリアルタイムで析出し、戦略に役立てたり取り組みの効果と精度を高めたりすることができる。
良い事例として、ウォルマートのモバイルアプリ「セービング・キャッチャー」を見てみよう。このアプリは、 買い物客に好評なプライスマッチング(最低価格保証)施策を強化するため、グロースチームがエンジニアリング チームと協力して開発したものだ。ユーザーはレシートを携帯電話のカメラで撮ってアップロードすると、他店の 広告価格との差額がキャッシュバックされる。エンジニアリングチームは、プライスマッチング施策のために会社が収集しているデータのさらなる活用策も生み出した。価格データをペイドサーチ広告チームに提供し、ウォル マートが明らかなプライスリーダーとなっている商品に重点的に入札するようにしたのだ。こうして広告費は大幅に削減されたという。
元マーケティング担当バイスプレジデントのブライアン・モナハンは、ウォルマートの最大の資産はデータであると確信し、データプラットフォームの統合を推進した。それにより、エンジニアリングからマーケティング、 マーチャンダイジング、さらには社外の代理店やサプライヤーまで、あらゆるチームが同社で生成・収集されたデータを利用できるようになった。グロースハックには、協働と情報共有を通じてビッグデータの活用を促す力が あるわけだ。
このアプローチによって解決できる事業ニーズを、モナハンは次のように説明してくれた。「ソフトウェアをきちんと書くために何が必要かを理解できるマーケター、そして消費者インサイトと事業課題をしっかりと理解できるデータサイエンティストが求められるのです(※原注2)」

コストを抑え、効果を示す

市場の細分化と短命化がどんどん進む中、印刷広告やテレビ広告、いまやすっかり定着したそれらのオンライン版などの伝統的なマーケティング手法は、コストは上がり効果は下がるというダブルパンチに見舞われている。その原因は、主要市場でインターネット利用者数が頭打ちになっていることが大きい。欧米ではその傾向が特に強く、 アメリカは人口の3%、イギリスは8%がインターネットを利用しており、その増加率は人口の伸びをわずかに上 回っているに過ぎない(※原注久)。成長著しいモバイル分野でも、インターネット接続機能付き携帯端末の保有者 はすでにアメリカの人口のg%に上っている(※原注3)。これはつまり、インターネット広告にシフトされる資金が増加すれば、オーディエンスの争奪戦が激化するということだ。それに伴い、広告の掲載料はうなぎ上りになっている。
その一方で、消費者はITリテラシーを高めて、雑音を消すようになってきた。広告ブロックソフトを使っているアメリカのインターネット利用者は2016年に前年比%増の6980万人で、ミレニアル世代ではほぼ3人に2人となっている(※原注2)。
また、ティーボをはじめとしたDVR(デジタルビデオレコーダー)技術が普及し、さらに「ネットフリックス」や 「フールー」、「アマゾン・プライム・ビデオ」などの動画配信サービスがアメリカの家庭の半数に浸透した現在で は、テレビを観るという行為そのものが廃れつつあり、必然的にコマーシャルに触れることが少なくなっている (※原注3)。つまり、広告はよくても無視され、最悪の場合はそもそも排除されているのだ。
伝統的なマーケティングの危機はどれほど深刻なのだろうか? 上場しているソフトウェア会社の成長率とマーケティング予算額の相関関係を調べたマッキンゼーの調査があるが、結果はなんとゼロだった(※原注1)。フルネーズ・マーケティング・グループがCEOを対象に実施した別の調査によれば、「C%のCEOは、マーケターが事業上の信頼性に欠け、有効性に十分フォーカスしていないと考えており」、マーケターは「予算を欲しがるばかりで、その予算がどれほどのビジネスを生むのかはほとんど誰も説明できない」という意見が2%に上ったという(※原注)。
グロースハックなら、コストがかさむ割にビジネス的価値が判然としないような、昔ながらのマーケティング施策に資金を投じることなく、急成長を成し遂げられる。燃費の悪いマーケティングや広告プランをやめ、消費者が口コミを広げたくなるほどの特長と、顧客に刺さる独創的で計測可能な方策の源泉となるグロースハックに乗り換 える利点は大きい。

新技術に飛び移る

消費者が新しいコンテンツやプロダクトを見つけるプロセスは、目まぐるしく入れ替わっている。グロースハックの専門家でベンチャーキャピタリストのジェームズ・カリアーによる、バイラルチャネルの栄枯盛衰を示した次図を見てほしい。各チャネルの有効性が激しく浮き沈みしてきたことがよく分かるだろう。オンラインプラットフォームが次々と消えては現れる現代、成長の起爆剤を探している企業にとっては新技術と新興プラットフォーム をいち早く活用することが重要だ。

これらのチャンスをつかむためには、エンジニアリングチームとマーケティングチームが緊密に連携する必要がある。しかし、ほとんどの企業は従来の経営計画や予算編成、社内規則にとらわれているせいで、将来性のあるプラットフォームに手を出すのが遅く、ようやく対応を考え始めた頃には先発優位がとっくになくなっているというのが実情だ。しかも、変化のスピードは上がり続けているのである。

グロースハックへの迷信を捨てる

これからの各章でグロースチームの詳しい特徴と作り方を説明するにあたって、グロースハックにまつわる数々の誤解を解いておきたい。
第一に、グロースハックは「特効薬」を探すプロセスではないということだ。紹介プログラムを実施したドロップボックスや、クレイグズリストを利用したエアビーアンドビーなどの華々しい事例がメディアにあふれているせいで、優れたハックがひとつあれば成長に火がつくというイメージが広がっている。こうした必殺のアイデアはグ ロースハックの理想ではあるものの、実際には小さい勝利を積み重ねてグロースすることがほとんどだ。預金が複 利で増えていくように、地道な歩みが飛躍につながる。
しかも最強のグロースチームは、一度飛躍したあとも改善点の探求をやめない。フェイスブック、リンクトイン、 ウーバー、ピンタレスト、ドロップボックスなどの優秀なグロースチームが、来る日も来る日も新たな仮説を考 案・検証・改善し続ける熱心な姿をのちほど紹介しよう。
第二の誤解は、グロースハッカーを1人雇えば魔法のように成長をもたらしてくれるというものだ。本書で示していくように、グロースハックはチームとして取り組む必要がある。成功はプログラミングのノウハウ、データ解 析の知識、マーケティングの経験を融合させることで実現するが、これらのスキルを1人で兼ね備えるのはほぼ不 可能だからだ。
第三に、グロースハックは既存のWebサイトやソーシャルプラットフォームの仕組みの裏をかくような秘策を 編み出すことが重要だと思われがちだ。これはエアビーアンドビーがクレイグズリストをうまく利用した話が有名 なせいもあるのだろうが、ルールを破ることは必要条件でも何でもないし、それで大成功した事例はほとんどない。 エアビーアンドビーの手法は確かに天才的だったが、裏をかいたことは本質ではなく、グロースハックの専門家は そこばかりが注目されるのを不本意に思っている。エアビーアンドビーのチームは、クレイグズリストに行き着くまでに幾度となく実験を繰り返し、そのほとんどが失敗した。ルールを守った戦略についても実験とテストをコッ コツと進め、今でもビジネスの成長のために継続している。これが彼らの成功譚の真実なのだ。
私(ショーン・エリス)が最初に使った「グロースハック」という言葉は、いわゆる「ハッキング」よりも広くてポジティブな意味だった。それは最近の「ハックスペース」(エンジニアやデザイナーが集うシェアオフィス)や「ハッカソ ン」(短期集中的なソフトウェア開発イベント)、あるいはフェイスブック本社の所在地「ハッカーウェイ1番地」に込められたニュアンスに近く、協力しながらクリエイティブに難題へのアイデア出しと問題解決をするというグロース ハックに不可欠な要素である。
第四の誤解は、グロースハックが新規ユーザーや顧客の獲得だけを目指しているというものだ。実際のグロース
チームの使命は、ずっと広範囲に及ぶ。まず顧客の活性化。これは顧客による利用や購買を刺激し、熱烈なファンになってもらう活動を指す。さらに、長期的に成長し続けるため、リピーターを生んで儲けを増やす活動、すなわち顧客の維持と収益化にも取り組む。
このうち「獲得」の部分に偏り過ぎているケースが非常に多いが、それではせっかくの新規顧客もすぐに離れていってしまう。こうして無駄に消えている投資があまりに多い。例えば、イーコンサルタンシーによる2012年 のレポートによれば、サイト訪問者を呼び込むための投資は、訪問者に消費を促す投資の災倍に上るという(※原注)。
顧客が離れることを、サイト訪問者では「バウンス」、実際の利用者では「チャーン」と呼ぶが、これらはス タートアップ企業でも大企業でも最大級の課題である。逆に言えば、対策を打てば即効性が期待できる、成長の大きなチャンスでもある。
最後に、グロースハックはマーケティングの一種だと説明されることがあるが、これも誤解だ。すでに述べたように、グロースチームはマーケティングだけでなく、プロダクトがターゲット市場に最適化されているかを分析して新製品開発にもかかわらなければならない。プロダクトが「マストハブ体験」を提供しているか、マストハブ体験が適切な顧客に届き、いわゆる「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」が実現しているかを評価するのだ。
また、プロダクトを継続的に改善するために膨大なアイデアを出し、優先順位の高いものからテストして成長と収益に結び付くかを検証するのもグロースチームの仕事だ。
さらに、ビジネスの舵取りに重要な役割を果たすこともあり得る。例えばフェイスブックのグロースチームは、成長に向けた戦略的買収の立役者となっている。どんなメールを使っているユーザーでも連絡先をインポートできるというサービスを開発したオクタゼンを買収した時も、友達の招待をしやすくするのに役立つと最初に見抜いた のはグロースチームだった(※原注分)。
まとめると、グロースチームはPMFの実現から、顧客の獲得・活性化・維持・収益化まで、成長のあらゆる段 階と施策にかかわる必要がある。その具体的な方策を、各章で紹介していこう。

ショーン・エリス (著), モーガン・ブラウン (著), 金山 裕樹 (監修),   (その他), 門脇 弘典 (翻訳)
出版社 : 日経BP (2018/9/28)、出典:出版社HP

本書の構成

本書は大きく2部構成になっている。
前半は「グロースハックの基本」として、一般的な説明をする。グロースチームの作り方、チームに必要な人材 とスキル、チームの管理法、大きな成果を迅速に生み出すようなアイデアの生成・検証を可能にする高速プロセス といった内容だ。私(ショーン・エリス)を含むグロースチームのリーダーたちが、部門間でスムーズな連携を取って 成長するために編み出した効果的なプロセスを教えよう。
複雑だと思われがちだが、実はどんなビジネスの個別ニーズにも簡単に適用できるということが分かるはずだ。 ひと言で言えば、グロースハックの手法を解き明かし、得られる効果を示したのが第1部である。
続く後半部分では、「グロースハックの実践」と題して、理論を各種施策に落とし込むための戦術を伝授する。 顧客を獲得・活性化・維持・収益化する方法と、成長が実現したあと勢いを落とさず加速する方法を章ごとに説明していく。
ピンタレストやツイッターのようなユニコーン企業から、「スポティファイ」や「エバーノート」などの消費者向けアプリ、ハブスポットやセールスフォース・ドットコムなどの事業用ソフトウェア企業、「ホテルズ・ドット コム」や「ジロー」などのWebポータル、「アマゾン」や「エッツィー」などのインターネット通販サイト、 ウォルマートなどの実店舗主体の小売業者まで、幅広い業界のグロースチームが駆使したさまざまな成長戦略を見てみよう。
また、有用なオンラインツールの数々を紹介する。第1部で述べるグロースプロセスを管理しやすくするグロースハッカーズ・プロジェクツのほか、顧客調査ツール、施策の優先順位付けと結果の追跡に役立つテンプレート、 グロースハッカーズ・ドットコムのコミュニティで継続的に更新されている、重点分野ごとの検証可能な実験などだ。
規模や形態、業種、地域にかかわらず、あらゆる企業が成長のきっかけをつかもうと努力している。グロースハックは、部門をまたいだ協力を通じて矢継ぎ早にチャンスを見つけるための緻密な方法論である。多額の投資をして蓄積してきた大量のデータをどうシステマティックに活用するかという疑問に、データ駆動型の分析と実験で 答えを示してくれる。
本書を読み通せば分かるが、小さく始めても全社的に採用してもいいこの戦略は、どんなビジネスでも実践可能だ。高いハードルを越え、有意義な結果を残し、限られた予算から最大限の成果を引き出して事業目標を達成したいと考えている、すべての企業や創業者、チームリーダー、部門責任者、CEOに必須の新たなビジネス理論――― それがグロースハックである。いよいよその真髄を見ていこう。

ショーン・エリス (著), モーガン・ブラウン (著), 金山 裕樹 (監修),   (その他), 門脇 弘典 (翻訳)
出版社 : 日経BP (2018/9/28)、出典:出版社HP

目次

はじめに
グロースハックは誰にでも役立つ
戦略書の決定版
成長の永久機関
破壊の波を乗り切る
スピードを上げる
データを活用する
コストを抑え、効果を示す
新技術に飛び移る
グロースハックへの迷信を捨てる
本書の構成

[第1部 グロースハックの基本] 第1章 グロースチームを結成する
壁を突き崩した組織
グロースチームに必要なメンバー構成
チームの規模と業務範囲
業務プロセス
チーム内の役割分担
経営陣の支援
組織体系
チーム発足時の注意点~不文律には成果で対抗する
チームは変わる
グロースハック「はじめの一歩」

第2章 プロダクトの渇望度を測る
ブランチアウトの失敗に学ぶ
「アハ・モーメント」を見つける
マストハブ・サーベイ
調査対象
維持率測定
マストハブにいたる道
アナログ空間へ出よう
調査対象のコミュニティを探す
効率的な実験
徹底的なデータ分析
アクティブユーザーの行動を追え
予想の斜め上に舵を切る
「アハ体験」に引き込む

第3章 成長のレバーをつかむ
成長戦略を練る。
意味のある指標
北極星を選ぶ
北極星の代替わり
最善策への道を照らし出す データの条件
数字がすべてではない
レポートを見やすくする ひとつにまとめる

第4章 高速で実験を繰り返す
時間とともにテンポを上げる
グロースハックにおける「4段階のサイクル」
発進準備を整える
ステップ1 分析
ステップ2 アイデア生成
ステップ3 優先順位付け
ステップ4 実験
ステップ1(再) 分析と学習
グロースミーティング
数週間のうちに始まる成長

[第2部 グロースハックの実践] 第5章 獲得をハックする
「刺さるメッセージ」を作る
小さく始める
ブランディングからプロダクトまで
チャネルに分散投資は適さない
チャネルを把握する
チャネルを絞り込む
チャネル・プロダクト・フィットの実験
実験の最適化
新しいことを試し続ける
バイラル・ループを設計する
ネットワーク効果の活用
プロダクトのコアバリューに合ったインセンティブ
「招待」をユーザー体験に一体化させる
招待される側の体験も最適化しよう
ひたすら実験

第6章 活性化をハックする
アル・モーメントへの道のりを描く
「ファネルレポート」を作成する
ユーザー調査の注意点
耐えてこそ報われる
フリクションをなくす
新規ユーザー体験を最適化する
フリクションはバランスが肝心
ポジティブフリクション
ラーンフロー
トリガーのすべて

第7章 維持をハックする
顧客維持の価値は時間とともに高まる
最善策をすばやく見つける
顧客をつなぎ止めるもの
顧客維持の3ステージ
リテンションの実態を計測する
「コホート」を定義する
顧客維持の初期ステージ
習慣化する
体験も報酬になる
価値向上を予告する
長期ステージ
オンゴーイング・オンボーディング
ゾンビ顧客”を蘇らせる

第8章 収益化をハックする
収益ファネルを把握する
コホートごとの収益把握
顧客を知る
求めるベネフィットを顧客に尋ねる
データとアルゴリズムによるカスタマイズ
押し付けは禁物
価格の最適化
価格の相対性
値下げは売上に直結しない
慎重に進める。
ペニーギャップ
消費者心理を理解する

第9章 成長の好循環
成長の壁を打ち破る
サメの泳ぐがごとく
再投資による「成長のレバー」のフル活用
データをさらに深掘りする
新たなチャネルを開拓する
アイデア生成のオープン化
ムーンショットに挑む

謝辞

[日本語版解説]金山裕樹
ショーンへの恩返しと、日本のグロースハッカーたちへ

原注

ショーン・エリス (著), モーガン・ブラウン (著), 金山 裕樹 (監修),   (その他), 門脇 弘典 (翻訳)
出版社 : 日経BP (2018/9/28)、出典:出版社HP