いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略 (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

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豊富な図解でよくわかる

いちばんやさしい教本シリーズのグロースハックの体系的な解説書です。近年注目されている成長戦略であるグロースハックを基本から実践まで学ぶことができます。具体的事例に触れながら、グロースハックを進めるためのフレームワークまで説明されています。

著者プロフィール

金山裕樹(かなやまゆうき)
株式会社 VASILY 代表取締役 CEO
ヤフー株式会社にてX BRAND などのライフスタイルメディアの立ち上げを行った後、 2008 年に株式会社 VASILY を設立。VASILY のアプリ「iQON」(アイコン)はファッ ションアプリとして世界で唯一 Apple と Google、両社のベストアプリに選出。会員数 は 200 万人を超え、日本最大級の女性ファッションアプリとしてファッション感度の 高い女性ユーザーに支持されている。
○ iQON : http://www.icon.jp

梶谷健人(かじたにけんと)
グロースハッカー
元 VASILY グロースハッカー。2013 年に VASILY に参加、「iQON」で早くからグロー スハックの実践を行い、そのノウハウをカンファレンスやセミナー、ブログなどで発信してきた。2016年1月現在は、今後最も成長が見込まれるインドにて現地スタートアップのグロースメンターをしている。下記のブログにてグロースに関する詳細な記事 を発信している。
○ Growiz.us : http://growiz.us/
○ VASILY グロースハックブログ:http://growthhack.vasily.jp/

株式会社 VASILY (ヴァシリー)
2008 年に設立。ファションコーディネートアプリ「iQON」を運営するテクノロジー企業。「人類の進化に貢献する」という企業理念のもと、インターネットの力で進化のスピードを速め、「世界中の女性が今よりもっとファッションを楽しんで毎日を生き生きと輝いて生活している未来」を創り出すために全力で挑み続ける。2015 年6月に Google Play チームよりその高い技術力が評価を受け、Google Play ストアの「トップデベロッパー」に認定された。
○ VASILY : http://vasily.jp/

本書は、2015年 12月時点での情報を掲載しています。
本文内の製品名およびサービス名は、一般に各開発メーカーおよびサービス提供元の登録商標または商標です。
なお、本文中には TM および ® マークは明記していません。

Introduction

実践から学び取ったグロースハックの急成長効果

金山裕樹

グロースハック。この言葉は、2012年前後にアメリカ西海岸に拠点を置くハイテク・スタートアップで誕生した、新しいマーケティング手法を指します。FacebookやTwitter、Dropboxなどの会社が、この手法を使ってほんの数年で何億というユーザーを獲得したことから注目され、定着してきました。
私が代表を務めるVASILY(ヴァシリー)では、女性向けファッションアプリ「iQON」(アイコン)の開発運営において、国内でいち早くグロースハックを実践し、ユーザー数の拡大、サービスの成長を実現してきました。西海岸のスタートアップたちと時を同じくしてグロースハックに注目し、「グロースハッカー」と呼ばれる人々との交流を重ねてきたのです。
本書ではそこで得られたノウハウを、実際にグロースハックを行いたいと考えている起業家や、企業の新規事業担当者が実行に移せるようにまとめました。グロースハックに必要な心構えと具体的手法を、事例紹介を交えつつ、できるだけ本質的な成長を可能にするフレームワークの紹介に重きを置いて解説しています。

女性向けファッションアプリ「iQON」

ユーザーがアプリ上でコーディネートを作成して投稿したり、ほかのユーザーの投稿を眺めたりしてトレンドを見つけられる。コーディネートに使われた商品は、タップをすれば購入サイトにアクセスして購入できる。アプリ内の雑誌や、ユーザー同士のQ&A機能などからもトレンド情報を得られる。

成長を創意工夫する「ハッカー精神」

私とグロースハックの出会いは2012年の冬までさかのぼります。
「ユウキ、グロースハックって知ってる?」……そう言ったのは、私が起業した直後からの友人であり、同じスタートアップ仲間であるAppSocially代表の高橋雄介氏です。
最初はなんのことかさっぱりでした。「グロース」(成長)という言葉も英語の単語としては意味がわかるものの、日本で生活しているとめったに使わない言葉ですし、「ハック」というと一般には怪しげなイメージもあります。
一方でわれわれスタートアップ業界の人間にとって、「ハック」とはエンジニアリングなどによって創意工夫していくことを指しています。
例えばFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、自社のモットーを「ハッカー・ウェイ」(ハッカー精神)と呼んでいます。これは2012年2月にFacebookが上場申請をした際に、彼が投資家に宛てた手紙の中で書いていた言葉です。「ハッカー」という言葉はコンピューターに不法侵入するといった悪い意味で使われることもありますが、本来は技術に精通する人、エンジニアリングで問題解決をする人、といった意味を持っています。そしてFacebookでは、「完璧にやるよりまず終わらせろ」(Done is better than perfect)というモットーのもとで、素早く行動して改善を繰り返す実践をしているというのです。
つまりグロースハックとは、成長を目指して「ハック」を行う精神を指す言葉だったのです。

国内外のグロースハッカーと交流

国内外のスタートアップや開発者たちとの交流も活発で、日々グロースハック情報のアップデートを続けている。写真は東京・恵比寿O VASILY + 71715 Z. Google Developer Console開発チームと。

グロースハックがVASILYを変えた

高橋氏とのディスカッションを通じて理解を深めていくにつれて、グロースハックという手法はまさにわれわれのようなベンチャー企業にとって最適な成長戦略だという結論に至りました。
第一にはその発想です。グロースハックを一言で言えば、製品自体に手を加え、製品の中に「成長する仕組み」を組み込んでビジネスの拡大を行っていく手法です。そのため、VASILYのように社員の半数以上がエンジニアかデザイナーで、テクノロジーと製品開発に強みがある環境は、グロースハックの力が最大限に発揮できる場だと考えました。
創業者でありCEOである私は、エンジニアではありませんが、VASILY設立前にはヤフー株式会社で新規サービスの立ち上げ責任者として、いくつかの製品開発をゼロから行い、数百万人のユーザーを獲得してきた、製品開発のスキルがキャリアのバックグラウンドにあります。
第二の理由は、われわれのようなベンチャーのほとんどが「いい製品」を開発しているのにもかかわらず、多くのユーザーを獲得することなく消えてしまう現実を何度も見てきたことにあります。
その中で、「いい製品」という抽象的な考え方ではなく、「成長」というもっと具体的な方向に製品開発のリソースを投入すれば、「多くのユーザーに使われる製品」の開発が達成され、市場で生き残っていく確率が高まるのではないか、と考えました。
自社製品を開発してもマーケティングに使えるお金がない、逆にアプリやWebサイトの企画と開発企画だけには自信がある、といった企業にとって、グロースハックは救いの手であるように思えたのです。

社内勉強会で最新情報を共有

iQONではグロースハックの手法で素早い改善・開発を行っている。またグロースハッカーが社内勉強会を通じて最新の知見を共有している。

日本初の「グロースハッカー」誕生!?

グロースハックで会社を成長させていくと決めたとき、最初に私がやったことは、当時の製品企画担当者をグロースハッカーに任命したことでした。当初彼は一過性のバズワードになるかもしれないこの言葉に難色を示しましたが、経営判断として彼の役職をグロースハッカーに変更、すぐに名刺にも「グロースハッカー」と入れさせました。もしかしたら彼が日本で一番はじめにグロースハッカーと名刺に書いた人間かもしれません。
次に海外のグロースハック事例を調査しました。当時日本にはほとんど情報がありませんでしたが、海外ではグロースハックはすでにベンチャーの中でポピュラーになりつつあり、事例が豊富でした。
グロースハックの事例の数々はいわば知恵の結晶です。例えば私が最初に衝撃を受けたのは、オンラインの空き部屋マッチングサービス、Airbnbの事例でした。Airbnbは当時、空き部屋情報を提供してくれるユーザーのために、先行して空き部屋情報を掲載していた大手の地域情報サイト、Craigslistにも空き部屋情報を同時投稿できるようにしていました。
この事例で驚いたのは、AirbnbとCraigslistが事業提携など正式な手続きを行って同時投稿のシステムを開発したのではなく、AirbnbのエンジニアがCraigslistの投稿の仕組みを解析して、同時投稿の仕組みを組み込んでしまったという点です。
このように既存の考え方にとらわれずに、ビジネスの成功だけを目指して知恵を絞り、エンジニアリングの力で推進していくグロースハックという考え方に私は魅せられました。

AppStoreベストアプリ選出が転機に
iQONのスマートフォンアプリ版をリリースした2012年、「App Store BEST of 2012今年のベスト」に選出される。サービスの成長が加速する一大転機となった。

広告費ゼロで100万ユーザーを獲得

グロースハックに関する体制が整うのと同時期に、本書の共同著者である梶谷と出会いました。梶谷はVASILYの株主でもあるGMOインターネットグループからの紹介で当社のインターン採用に応募してきました。当時彼はGMOで検索マーケティングの業務を行っていて、定量的なデータによる施策の判断や実行に強みを持っていました。
梶谷の入社後、2013年初頭からiQONは本格的にグロースハックによるビジネスの拡大を行いました。梶谷はグロースハックに関するブログを開設し、情報収集と発信を行いました。海外の情報をかき集めて、そのエッセンスをiQONのグロースハックに応用していくことで、iQONは飛躍的成長をとげました。
例えばグロースハックを行う前のiQONでは会員登録後の継続率について伸び悩んでおり、せっかくアプリをダウンロードしてもすぐに使わなくなってしまうユーザーがたくさんいました。しかしiQONをグロースハックの代表的なフレームワークである「AARRR」(アー)モデルで分析した結果、「アクティベーション」のファネルで改善の余地が大きい箇所が見つかり、そこを改善したところ継続利用率が格段に上がりました。
このようなグロースハックを重ねていくことで、iQONは広告費を一切使うことなく、最初の100万ユーザーを獲得することができました。そして2015年現在、ユーザー数は200万人を超えています。さらに光栄なことに2014年、2015年と連続してGoogleの選ぶベストアプリに選出されました。2012年に受賞していたAppleのベストアプリも合わせて、iQONは2つのプラットフォーマーからベストアプリを受賞した世界で唯一のファッションアプリになりました。

GoogleとAppleの両方でベストアプリを受賞

2014年、2015年と2年連続でGooglePlayストアのベストアプリを受賞。iOSとAndroidの両方で評価され、名実共にNo.1ファッションアプリに。

本書で学べること

本書はiQONで培ってきたグロースハックのエッセンスや、海外の一線で活躍するグロースハッカーたちとのディスカッションの成果を1冊にまとめた、グロースハックについて日本語で読める初の体系的な教科書です。
グロースハックに関する事例は、海外はもちろん、いまでは国内でもいろいろな方が情報発信されていますが、本書では私たちが実際の製品開発の現場で利用している俯瞰的で本質的なノウハウを詰め込むことを目指しました。すぐに使えて効果が期待できる1冊となっていますので、皆さまの仕事のお役に立てたらと思っています。
本書によって1アプリでも、1サービスでも、多くの人に使われる製品がリリースされて、人類の進化に貢献できたら幸いです。

目次

著者プロフィール
イントロダクション 実践から学び取ったグロースハックの急成長効果

Chapter1
グロースハックとは何かを理解しよう
Lesson
01 グロースハックとは?
02 グロースハックに成功した代表的な事例
03 グロースハックが重要になった背景
04 グロースハッカーとは?
05 グロースハッカーに必要なスキル
06 グロースハッカーに必要なマインドセット
07 グロースハックによくある勘違い
08 グロースハックのためにキーパーソンを巻き込む
09 グロース担当のチームは3人で構成する
10 グロースチームは選任を置く

Chapter2
基本のフレームワークを理解しよう
Lesson
11 やるべきことをフレームワークで整理する
12 「ARRRA」モデルを理解する
13 「ARRRA」の順番で手を付ける
14 「ARRRA」をスタートアップやリーンの概念と比較して理解する
15 いまいる成長のステージをチェックシートで確認する
COLUMN ユーザー獲得が最後で本当にいいのか?

Chapter3
まずは価値提供から手を付けよう
Lesson
16 アクティベーションとは何かを理解する
17 まずは PSF の検証から始める
18 PSF をスマートに達成するためのフレームワーク
19 ジャベリンボードでアイデアの精度を高める
20 ディスカッションの生産性を上げるには
21 ユーザーオンボーディングとは何かを理解する
22 価値提案を設計する 23 チュートリアルで利用方法を分かりやすく伝える
24 iQON のユーザーオンボーディングを確認する

Chapter4
グロースサイクルで施策を実行しよう
Lesson
25 グロースサイクルで施策を回す
26 ステージごとのゴールを最初に設定する
27 ファネル分析/パターン分析で改善箇所を見つける
28 ゴールに沿って KPI を設定する
29 KPIを上げる施策を選んでハックする
30 KPI と KGI の両方が改善しているか確認する
31 グロースサイクルで再訪率をハックする
32 ユーザーインタビューをハックする

Chapter5
継続率を着実に高めよう
Lesson
33 リテンションの重要性を理解する
34 リテンションの計測にコホート分析を利用する
35 リテンションカーブに着目して成長させる
36 iQON におけるリテンション施策の例
37 フックモデルでリテンションを効果的にハックする
38 フックモデルの4つのステップでサービス利用を習慣化させる
39 ユーザー参加型イベントでリテンションを促す

Chapter6
紹介をハックして成長を加速させよう
Lesson
40 ユーザー間の紹介をハックする
41 4種類のリファラルを理解する
42 リファラルを定量的な指標で評価する
43 自社サービスにリファラルの仕組みを組み込む
44 グロースサイクルでリファラルをハックする

Chapter 7
レベニューを理解して収益化しよう
Lesson
45 レベニューの考え方を理解する
46 レベニューモデルを整理して理解する
47 広告モデルをハックする
48 コマースモデルをハックする
49 シェアリングエコノミーの手数料モデルをハックする
50 課金モデルをハックする

Chapter 8
ユーザー獲得策でさらに成長させよう
Lesson
51 2種類のアクイジションを理解しよう
52 オーガニックなユーザー獲得をハックする
53 有料の広告媒体で効率的にユーザー獲得する
54 テレビ CM をハックする
COLUMN アイデアを形にしやすくする工夫

付録対談 グロースハックのツールと情報源