先輩がやさしく書いた「経理」がわかる引き継ぎノート

【最新 経理について学ぶためのおすすめ本 – 基本から実務のスキルアップまで】も確認する

経理の実務がよくわかる

実際の現場の実務でのコツや疑問点について、先輩からの引継ぎノートをコンセプトとしてまとめられた経理の入門書です。1日、1ヶ月、1年に分けて仕事の流れを徹底的にフォローしています。経理職の仕事内容について詳しく書かれているので、初心者の方におすすめの1冊です。

加藤 幸人(編著) (その他)
出版社 : KADOKAWA/中経出版; 改定版 (2010/3/23)、出典:出版社HP

プロローグ

経理の仕事を引き継ぎます!

新入社員として、また人事異動などで初めて経理部へ配属された人にとって、経理の仕事は未知の世界ではないでしょうか。
経理の仕事にスムーズに入っていけるように、忙しい先輩に代わって、経理の世界を紹介します。

この1冊で経理の実務がよくわかる

「簿記の資格をとったから経理の仕事に就いてみたい!でも経験がない……」
「突然、経理への異動話。担当者から引き継いで1人でやってくれと言われたけれど、右も左もわからない……」
経理の仕事に限らず、初めてのことに取り組むときには、誰でも多かれ少なかれ不安を抱えるものです。
でも、大丈夫。実際にやってみて、しくみややり方がわかってくると、不安に思っていたことが嘘のように、経理のおもしろさにハマっていくことでしょう。

とはいえ、いざ現場に入って先輩からの引き継ぎを受けるとなると、やっぱり大変です。
引き継ぎとして先輩の指導を受けられる期間は、一般的に1カ月程度。短期間で会社のしくみから処理方法まで、たくさんのことをいっぺんに教えられるので、経理初心者の中にはパニックになってしまう人もいるでしょう。未経験者ならなおさらです。
そこで、そんな経理入門者の方が現場に入ったときに、スムーズに業務が進められるように、1冊読めば経理の実務がわかる「引き継ぎノート」をつくりました。これから、じっくりと一つひとつ、引き継ぎを行っていきますので、安心して読み進めてください。

経理の仕事を始める前に

経理の仕事をしたことがない方は、なかなか現場のイメージがわかないのではないでしょうか。まずは経理の現場について、よくある疑問を紹介していきましょう。

Q1
経理というと「暗い」イメージがありますが、実際どうですか?
A
経理の仕事は、会社のお金の管理や帳簿の作成などですから、電卓をたたいて計算したり、パソコンに向かってもくもくとデータ入力したりするような地味な仕事が多いのは事実です。それが「暗い」というイメージにつながってしまうのかもしれません。
でも実際は、経営者から部長、社員まで、社内でのコミュニケーションはたくさん発生しますし、会社の窓口として、銀行や得意先、業者さんなど社外の方とやりとりする機会もあります。
「社内でいちばん顔が広くて、会社のことをいろいろ知っていて、専門知識もあって、一目置かれる存在」というのが、経理の実際の姿です!

Q2
未経験で経理職に就きました。どれくらいで慣れますか?
A
経理の仕事は、「1日の経理」「1カ月の経理」を繰り返していくことになります。きちんと引き継ぎを受けるか、または本書を読めば、仕事は2~3カ月で慣れてくることでしょう。心配はいりません。
最初は上司や先輩の指導のもと、現金・預金の管理からスタートし、少し慣れてくると、売上や仕入の管理も行っていくことになります。
最初は「わからないことだらけ」だと思いますが、やっているうちに、だんだんしくみや意味がわかってきます。

Q3
パソコンのスキルはどれくらい必要ですか?
A
経理の仕事でおもに使うのは、会計ソフトのほか、エクセルやワード、Eメールですが、文字入力、ファイルの保存方法、表示方法など、基本的なことさえ知っていれば、あとは実務を通して覚えていけば大丈夫です。
なかには、計算などを効率化するため、エクセルの関数をよく使用する会社もあります。関数について少しでも勉強しておくと、いざというときに役に立ちます。

Q4
「決算時は毎日終電……」という話を聞きますが、残業は多いですか?
A
たしかに決算の時期は、日常の業務に加えて決算業務が加わってくるので、そのぶん忙しくなります。
経理の仕事は、1日、1カ月、1年の仕事の流れが決まっていて、忙しい時期とそうでない時期はありますが、年間をとおしてみれば、つねに残業が多いわけではありません。
スケジュールの前倒しなど、自分の仕事の進め方によって、残業時間はコントロールできます。
ただし、経理の仕事に限らず、業務量に対して人が少ない会社、また急成長中の会社では、どうしても残業は多くなります。

Q5
簿記の資格は必要ですか?
A
経理の仕事に就きたいと考えている人には、まず「簿記3級はとったほうがいい!」とおすすめするくらい、簿記は経理において基本となる知識です。
簿記の資格がなくても、実務で経験を積むことで業務を進めていくことはできますが、これから経理の仕事を始める方は、経理の基本的な知識を身に付けるために、簿記3級の資格は持っておくとよいでしょう。
3級は1~3カ月の勉強で合格することも可能です。簿記の資格は、経理以外の仕事に就くときにも「数字に強い」という印象につながるので、勉強して絶対に損はありません。

Q6経理のどこがおもしろい?先輩経理に聞きました!
A
①簿記の勉強がそのまま実務に活かせるところ
②伝票内容の確認など、他部署の人と話すことも多く、仲良くなれるところ
③業務が1カ月ごとに完結するので、毎月「終わった!」という達成感が得られるところ。④経営のしくみや法律などのことがわかるようになるところ
⑤だんだんと業務改善の提案ができるようになり、会社の経営の中枢を担っている実感がもてるところ

経理に向いている人は、こんな人!

経理の仕事にはどんなタイプの人が向いているのでしょうか。
まず、経理に必要な資質として、仕事で得た秘密を守ること、正確でスピーディーな処理ができることが挙げられます。
経理には、重要な経営情報や個人情報が集まります。部外秘の取引先情報を漏らしてしまったり、誰がいくら給料をもらっているか簡単に話してしまうような人は経理には向いていません。また、仕事を進めるときに確認をあまりしない人もちょっと心配です。

どの職種でも共通して必要といわれるのが、社会人としての資質ですが、それは経理においても当然、必要です。いくら会計の専門スキルがあっても、約束を守らない、あいさつができない、助けてもらったのにお礼を言わないなど、マナーや礼儀、一般常識を知らない人は、やっぱり経理には向きません。
経理は経営者との関わりや、他部署との交流、取引先との確認などがある仕事ですから、自覚をもって取り組むことが必要です。

それからもうひとつ、経理を好きになる姿勢も大切です。経理が好きになれば、責任感も出てくるでしょう。スキルアップもできるでしょう。それにより信頼も高まっていくことでしょう。みなさん、どんどん経理を好きになってくださいね。

経理で活躍するためのポイント

専門職といわれる経理は、経験を積めば積むほどスキルが高まっていく職種です。とはいえ、ただ単に経験年数を増やすだけでは、本当のキャリアとは呼べません。
これから経理で活躍していきたいという人は、心構えとして次のことを覚えておいてください。

Point1
考えながら仕事をしよう
経理は、「毎日の業務」「毎月の業務」「毎年の業務」とやるべきことの大枠は決まっています。
スキルアップしていく人は、目の前の業務を単なるルーティンワークとしてこなすのではなく、「どうしてこうなんだろう?」「こうじゃいけないの?」などと自分で一つずつ考え、しっかり理解していきます。
Point2
過去だけではなく未来を意識する
「過去の取引を記録する」のが経理の仕事のひとつではありますが、過去と向き合うだけが経理の仕事ではありません。
経理が作成する資料を見て、経営者は「自分の会社が次に何をしたらよいか」「どんな点を改善していかなければならないか」を考えます。過去だけでなく、経営者と同じ未来を向いた視点に立つと、日ごろの業務でもまったく違う気づきが得られます。

ようこそ!楽しい経理の世界へ
会社によって経理処理は異なるので、本書では、従業員が10~30名くらいの商品を仕入れて販売する会社で、1名の経理担当者が営業事務や給与計算から経理までこなしていくことを想定しました。ただ、大きな会社でも小さな会社でも経理の基本は変わらないので、経理に関わるすべてのみなさんの参考になると思います。

1章以降では、必ずやらなくてはならない経理の仕事と具体的な手順、注意点を一つひとつ説明します。「そもそも、どうしてそんなことをするの?」「この書類はどうやって回ってくるの?」といった引き継ぎ時の素朴な疑問が解消できるように、会社の業務の流れと経理業務の基本をできるだけ詳しく、そしてわかりやすく説明しました。
また、先輩の経理スタッフが失敗から学んだことを多く取り入れ、未経験者の方でも現場のイメージがわくように心がけました。

世間には多くの経理や会計に関する書籍が出版されていますが、簿記の知識を教えているものがほとんどです。経理の初心者にとって教えてほしいのは「経理実務」の知識です。
みなさんが経理実務の世界にすんなりと入っていけるように、経理の先輩がやさしく指導する目線で本書を執筆しました。巻末には「経理の基本用語集」もつけましたので、わからない用語に出会ったら、確認して読み進めてください。
本書が楽しい経理ライフの一助になれば幸いです。

加藤 幸人(編著) (その他)
出版社 : KADOKAWA/中経出版; 改定版 (2010/3/23)、出典:出版社HP

CONTENTS

「経理」がわかる引き継ぎノート

プロローグ
経理の仕事を引き継ぎます!

1章 経理への第1歩
~仕事の全体像をつかもう~
▶︎1章ではこんなことがわかる!
1 組織図を見れば会社の全体像がつかめる
2 社外の関係者と上手に付き合う
3 経営者や従業員との関係づくりが大事
4 経理の役割は会社の規模で異なる
5 「仕入」から「販売」までの流れを理解する
6 正確な在庫管理は資金繰りにも貢献する
7 「承認」のない書類は担当者に戻す
8 経理の1年で年次決算はいちばん大きな仕事
9 1日・1カ月の仕事の流れをつかむ
10 「証ひょう」の保管は基本中の基本
11 帳簿は会社の取引を記録する重要な書類
12 印鑑は悪用されないようにしっかり管理
13 領収書は関係者とのトラブルを防いでくれる
14 帳簿は保存期間が決まっている
15 会社のすべての取引は「勘定科目」で分類される
16 「仕訳」は3つのパターンから覚えよう
17 守秘義務と情報管理は経理担当者の鉄則
18 経営者をサポートするのも経理の大切な役目
Column
文字の書き方にも注意しよう

2章 経理の1日
~現預金の管理が経理の出発点~
▶︎2章ではこんなことがわかる!
1 会社の現金は厳重に管理する
2 現金の出金は証拠を残すのがポイント
3 現金出納帳に入金と出金を記録する
4 1日の業務終了後に必ず現金実査をする
5 預金口座の種類と特徴を理解する
6 普通預金の出金はカードを使わず厳重に
7 銀行窓口での振込は「五十日」を避けて効率的に
8 ネットによる振込で経理業務が大幅に縮減
9 1日の業務終了後に必ず預金残高を確認する
10 小切手を受け取ったらすぐに銀行で手続きをする
11 手形を振り出したあとは当座預金残高に注意
12 手形を受け取ったら支払期日に注意
13 会計ソフトを活用すれば業務が効率的になる
14 上手なファイリングは正確な仕事の基礎となる
Column
会計ソフト以外にもこんな管理ソフトを使うと便利
電卓のメモリーキーを使いこなそう

3章 経理の1日
~売上・仕入の管理が重要な仕事~
▶︎3章ではこんなことがわかる!
1 仕入管理の流れをしっかり把握する
2 適切な買掛金管理で原価を抑えて利益を出す
3 買掛金の支払は会社の信用にかかわる
4 支払管理はミスを防ぐのがいちばん重要
5 業者への未払金は管理簿でしっかり確認
6 立替経費の精算は期限を守るのがポイント
7 仮払いはすみやかな精算を心がける
8 売上管理の流れをしっかりと把握する
9 売上計上と売掛金管理は会社の利益を左右する
10 請求書を発行して確実に代金を回収する
11 売掛金は管理簿を使って日々入金を確認
12 売掛金回収の遅れは資金繰りに影響する
13 固定資産の3つの種類を理解する
14 固定資産管理は現物のチェックが不可欠
15 固定資産を購入したら種類、価額、耐用年数を確認
16 減価償却には定額法と定率法がある
17 少額の固定資産の処理方法を把握する
18 固定資産を処分したら固定資産台帳から除外
19 リースした資産は自社の資産と区別して管理
Column
こんな得意先には注意!

4章 経理の1カ月
~月次決算と給与計算をマスターする~
▶︎4章ではこんなことがわかる!
1スケジュールを組み立てて月次決算に臨む
2 経営の意思決定に役立つ月次資料を作成する
3 資金繰りは会社経営の命綱
4 給与計算はひとつのミスも許されない
5 給与計算のポイントは毎月のスケジュール設定
6 給与支給額は「変更」を確認して計算する
7給与控除額を決定するポイントを押さえる
8 社会保険料の計算には「標準報酬月額」を用いる
9 社会保険料は会社と従業員が半分ずつ負担する
10 源泉所得税は家族構成や社会保険料により異なる
11 「源泉所得税、住民税、社会保険料」を納める
Column
年俸制のメリット・デメリット

5章 経理の1年
~決算書を作成できれば一人前~
► 5章ではこんなことがわかる!
1 年次決算は経理の一大イベント
2 月次決算の積み重ねが年次決算の負担を軽くする
3 決算整理は正しい残高の確認が肝心
4 在庫の数を確認すれば売上原価を算定できる
5 「経過勘定」を処理して正しい損益計算を行う
6 有価証券や引当金も年次決算の大事な項目
7 決算整理後の最終チェックは不可欠
8 未払いの税金も決算整理での計上が必要
9 決算整理が終わったら決算書を作成する
10 貸借対照表は会社の財政状態を示す
11 損益計算書は会社の経営成績を示す
12 株主総会の承認を得て納税すれば決算は完了
13 勘定明細書は決算書の補足資料
Column
経理の仕事に役立つ資格
覚えておくと便利なショートカットキー

► [巻末付録] これだけは覚えておきたい! 経理の基本用語集
おわりに

本文デザイン/ムーブ
イラスト/ムーブ(川野有佐)

加藤 幸人(編著) (その他)
出版社 : KADOKAWA/中経出版; 改定版 (2010/3/23)、出典:出版社HP