増補改訂 財務3表一体理解法 (朝日新書)

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会計の全体像を理解する

会計は難解で特殊な分野のように思えますが、その仕組み自体は極めてシンプルです。本書では、会計の全体像をわかりやすく解説しているので、簿記・仕訳の勉強の効率を高めることが出来るようになります。会計を学んでいるすべての人におすすめの一冊です。

國貞克則 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2016/10/13)、出典:出版社HP

はじめに


本書は2007年5月に出版された『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』(以下『財務3表一体理解法』)の増補改訂版です。今回書名に追加した「増補改訂」が示すように、これまで気になっていたことを本書で書き尽くしました。それは、BSの「純資産の部」の詳細説明、株主資本等変動計算書とPL・BSの関係、2007年以降に改正された減価償却の仕組みや国際会計基準(IFRS)に関連する包括利益計算書の解説などです。さらに、グローバル化する時代に対応するために、英文会計についても加筆しました。

また、改訂における一番の特徴は、本書の肝である第2章・第3章で使う、財務3表を一体にした図表を見開き2ページに収まるようにしたことです。2ページに収めながらも表の中の文字は以前より大きくなっており、読みやすさが格段に向上しています。

お陰様で、2007年5月に出版した『財務3表一体理解法』は、この書籍だけで45万部を超えるベストセラーになり、その後に出版したコミック本などの関連書籍を加えれば、私の著作は累計で100万部を超えました。

「財務3表一体理解法」という会計勉強法が世に出てから約10年になりますが、色あせることなく、じわじわと全国に拡がっているようです。独自に考案した勉強法である「財務3表一体理解法」が一定の評価をいただけたこと、また多くのみなさんの会計理解の一助になっていることを嬉しく思います。

「財務3表一体理解法」は、これまでになかった全く新しい会計勉強法です。これまでの会計勉強法は仕訳のルールを一つひとつ覚えていくというものでした。一方で、「財務3表一体理解法」という会計勉強法は、会計の全体像と基本的な仕組みをまずザックリと理解するという勉強法です。

これを歴史の勉強に例えれば、歴史上の出来事とその年号を一つひとつ覚えることによって、最終的に歴史の全体像が理解できるといった勉強法と、歴史の中の大きな出来事の流れとつながりを押さえて、まずザックリと歴史の全体像を理解するという勉強法の違いだと思っていただければわかりやすいと思います。

これまでは、会計を完全に理解するにはかなりの時間がかかるというイメージがありましたし、現実的にもそうでした。まずは仕訳の勉強から始めて、そのうえで何年もの実務経験を経なければ、完全に理解することができないのが会計でした。これまで、会計を理解するにはそういう勉強法しかなかったのです。

しかし、会計が理解できるかどうかは勉強時間に比例するわけではありません。「財務3表一体理解法」を使えば、会計の仕組みが理解できるようになるまでの時間を飛躍的に短縮できます。その理由については本文に説明を譲ります。

本書は5章立てになっています。すでに改訂前の『財務3表一体理解法』をお読みいただいている方は、今回大幅に増補改訂した箇所である、第4章(2)の国際会計基準や第4章(3)の「純資産の部」の説明、さらには第2章(2)-17の減価償却や第2章(3)の株主資本等変動計算書の説明を中心にお読みください。第5章の英文会計は今回新しく追加したものです。

第2章・第3章の財務3表の数字はほとんど変更していません。ただ、前述したように財務3表の図が見開き2ページになりましたし、解説にもかなりの手を入れましたので、格段にわかりやすくなっていると思います。

また、第1章の「財務3表の基礎知識」は、今回の増補改訂版のために新しく書き下ろしましたので、前作よりかなり要点がわかりやすくなっていると思います。

会計は難解で特殊な分野のように思えますが、その仕組み自体は極めてシンプルです。本書を読んで会計の仕組みが理解できれば、これまでのように会社で会計の話になると口をつぐんだり、質問に躊躇したりといった、みじめな状態から解放されるでしょう。さらに、会計の専門家になろうと思っている人にとっては、最初に本書を読むことで会計の全体像がわかり、簿記・仕訳の勉強の効率を高めることができると思います。

さあ、「財務3表一体理解法」を使って、会計の全体像と基本的な仕組みを理解してください。あなたの会計に対するイメージがガラリと変わると思います。

國貞克則

國貞克則 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2016/10/13)、出典:出版社HP

増補改訂 財務3表一体理解法 目次

はじめに

第1章 財務3表の基礎知識
(1)なぜ会計が簡単に理解できるのか
①財務諸表が作られていく手順/②財務3表を一体にして「つながり」を理解する
(2)会計の全体像
①会計をシンプルに勉強していく/②すべての会社に共通する3つの活動と財務3表の関係/③PLとBSの数字は必ずしも現金の動きを表すものではない
(3)損益計算書(PL)で5つの正しい利益を計算する
①PLの構造/②PLの目的
(4)貸借対照表(BS)は財産残高一覧表
①BSの構造/②資本金は返さなくてもよいお金/③会社がお金を集めてくる方法は3つある/④BSの目的
(5)複式簿記とは何か
①単式簿記と複式簿記の違い/②試算表及びPLとBSの関係/③PLとBSの時系列的なつながり
(6)キャッシュフロー計算書(CS)は会社の家計簿
①CSの構造/②「小計」の意味/③CSの2つの作成方法:「直接法」と「間接法」

第2章 財務3表一体理解法~基礎編
(1)財務3表のつながりを理解する
①財務3表の5つの「つながり」/②日本の漆器をインターネットで海外に販売する事業を想定/③一つひとつの取引ごとに財務3表を見る手法
(2)一つひとつの取引が財務3表にどう反映されるかを理解する
1 資本金300万円で会社を設立する
2 事務用品を現金5万円で購入
3 パソコンを現金50万円で購入
4 ホームページ作成を発注、外注費20万円を現金で支払う
5 創立費30万円を「資産」に計上する
6 販売する商品を現金150万円で仕入れる
7 商品が現金300万円で売れる
7-2 商品をまず在庫として計上する方法
8 ビジネス拡大へ運転資金500万円を借りる
9 商品750万円分を「買掛」で仕入れる
10 「売掛」で1500万円を販売
11 買掛金750万円を支払う(「勘定合って銭足らず」に)
12 売掛金1500万円のうち1000万円を回収する
13 給料50万円を支払う(うち源泉所得税2万円は会社が一時預かる)
14 商品の発送費用100万円を一括支払い
15 短期借入金500万円を返済し、利息50万円を支払う
16 「在庫100万円」を認識する
17 「減価償却費10万円」と「繰延資産償却費6万円」を計上する
18 法人税200万円を計上する
(3)配当の仕組みと「株主資本等変動計算書」を理解する
①会社はだれのものか/②利益と配当とBSの関係/③「純資産の部」の構造/④「株主資本等変動計算書」とは何か/⑤「株主資本等変動計算書」がPLとBSをつないでいる/⑥配当金の支払いと任意積立金の積み立て/⑦PLの当期純利益とBSの利益剰余金が一致するわけではない

第3章 財務3表一体理解法~発展編(2000年以降に出てきた新しい会計基準)
(1) 2000年以降に出てきた5つの新しい会計基準とは
(2) 一つひとつの取引が財務3表にどう反映されるかを理解する
1 退職給付会計を適用し、「退職給付費用」 5万円を計上する
2 「貸倒引当金」を10万円計上する
3 金融商品の時価会計1 「売買目的有価証券」10万円、「投資有価証券」の20万円、「関係会社株式」 30万円を現金で取得する
4 金融商品の時価会計2 期末に評価損発生、それぞれの計上価額を引き下げる
5 減損会計を適用、「固定資産」40万円を20万円に評価替え
6 自社の株式50万円を会社が現金で買い取る
7 税法に基づいて法人税を計上する
8 税効果会計を適用、会計上の「あるべき姿」で税額を表示する

第4章 さらに理解を深めたい人のために
(1)「連結」がわかれば「非支配株主持分」の意味もわかる
①連結対象の会社と連結のプロセス/②全部連結と持分法連結
(2)国際会計基準(IFRS)における「包括利益」という考え方
①日本の会計基準と国際会計基準の違い/②「包括利益」とは何か/③日本の連結財務諸表が国際会計基準に近寄ってきている
(3)いつもモヤモヤする「純資産の部」の徹底理解
①株主資本の分類の基本的な考え方/②準備金はなぜ必要なのか/③資本金と資本準備金への割り振りはどう考えればよいのか/④その他資本剰余金/⑤その他利益剰余金/⑥欠損てん補のための資本から利益への振替え
(4)組織再編会計の仕組みをポンチ絵で理解する
①合併と買収/②「のれん」の処理/③会社分割/④株式交換・株式移転/⑤新株予約権/⑥債権放棄と債務免除益/⑦DES(デット・エクイティ・スワップ)/⑧有償減資と無償減資

第5章 英文会計の基礎知識
(1)英文会計も基本は同じ
(2)損益計算書(Income statement)の構造
(3)貸借対照表(Balance sheet)の構造
(4)キャッシュフロー計算書(Cash flow statement)の構造
(5)株主資本等変動計算書(Statement of stockholders’ equity)の構造

Coffee Break 1 経営感覚を高めるPLの見方
Coffee Break 2 左右がバランスするからバランスシートというのではない
Coffee Break 3 会計のロジックは美しい
Coffee Break 4 財務会計と管理会計
Coffee Break 5 「人間」は財務諸表に出てこない
Coffee Break 6 勘定合って銭足らず
Coffee Break 7 商法と会社法、そして旺盛なる起業家精神
Coffee Break 8 資本金と資本準備金の取り崩しの手続き
Coffee Break 9 資本金と株式の関係
Coffee Break 10 「総(Gross)」と「純(Net)」
Coffee Break 11 「借方(Debit)」「貸方(Credit)」

おわりに

カバーデザイン
アンスガー・フォルマー
田嶋佳子

チャート作成
谷口 正孝
フロッグキングスタジオ(第2章・第3章のドリル部分)

國貞克則 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2016/10/13)、出典:出版社HP