デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?

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成果の出ない施策に終止符を

デジタル活用の目的を整理し、成果を出すための施策パターンである定石を徹底的に解説しています。“顧客”を中心としたマーケティングをしているか、身近な行動に落とし込んで問いかけられているため様々な気付きを得られます。マーケティングに関わる全ての人におすすめの1冊です。

デジタルマーケティングには「定石」がある―はじめに

はじめまして、著者の垣内勇威と申します。
本書を手に取ってくださった方は、デジタルを活用して「売上を増やしたい」「ビジネスモデルを変革したい」「目まぐるしい変化に適応したい」などの期待をお持ちでしょう。
本書は、経営者・事業責任者・マーケター・デジタル担当者に向けて、時代の変化にのみこまれず、マーケティングでデジタルを使いこなすためのシンプルな手法を解説します。細かいテクニックやツールに惑わされず、デジタル活用の全体像がつかめるようになるでしょう。

デジタルで成果を出すための施策はパターン化できる
まずお伝えしたいのは、企業がデジタルをマーケティングに活用するなら、必ず知っておかなければならない「定石」が存在するということです。
ここでいうデジタルとは、インターネットを用いて顧客と接触可能な媒体を指します。Webサイト、アプリ、ネット広告、SNS、メール、などすべてが対象になります。
また本書で解説する「定石」とは、従来の顧客接点をデジタルに置換することで、大幅なコスト削減を実現する施策パターンです。デジタルに「できること」と「できないこと」を明確に線引きしたうえで、顧客の購買ステップ別にデジタルの活用方法を明らかにします。

「私が「定石」に気づくにいたった出発点は、コンサルティングを続ける中で「いつも同じ提案をしているな・・・・」と飽き飽きしてきたことがきっかけでした。
私は2005年から今日にいたるまで、デジタルを用いて売上増加やフフト削減を実現するコンサルティング活動を続けています。しかし、この域のコンサルティングは、ひどく単調で変化の少ない「淀んだ水たまり」のような仕事だと言わざるをえません。
なぜなら、2005年当時と2020年現在とで、市場環境や技術水準が大きく変化しているにもかかわらず、クライアントに提案している内容が本質的には何1つ変わらないためです。内心「また同じ提案か」と思いつつ、まったく同じ提案をすると、クライアントは決まって「目からウロコです」と感嘆してくれます。さらに、その施策の実現によって売上も伸びてしまうのです。

私がコンサルティングを始めた2005年といえば、Facebook、Twitter、YouTube、Wikipediaなどが次々に登場した時代です。検索エンジンでは、Yahoo!がそれまで使っていた人力のディレクトリ型検索エンジンを諦め、現在主流のロボット型検索エンジンに切り替えた年でもあります。「Web2.0」という言葉が流行したのもこの時期です。
もちろん実務レベルでは様々な変化がありました。検索エンジンで上位に表示するための方法、SNSでフォロワーを増やす方法、ネット広告の費用対効果を高める方法、格好良いとされるWebデザインの方法など、絶「えず変化してきました。
しかし私が「定石」と呼ぶ、売上やコストにインパクトを及ぼすビジネスにおけるデジタルの活用目的は、この15年間何1つ変わっていないのです。このように「定石」が存在するにもかかわらず、企業は知見をゼロクリアし続けており、我々のようなコンサルタントに頼る羽目になっています。

現在、私は自分のこの「停滞した仕事」に終止符を打っために活動しています。
一見属人的に見えるこのコンサルティングという業務は、実は再現性のあるパターンを蓄積し、何度も繰り返し提供して稼ぐビジネスにはかなりません。私は最初に過去100社以上コンサルティングした経験から、成果の出た施策をパターン化していきました。
予想通り明らかになったのは、本当に成果の出る施策は、企業規模や業種による差がほとんどないということです。コンサルティングをしていると、クライアントから「うちの会社は特殊だからほかの会社の知見は参考になりません」と言われることは日常茶飯事ですが、この言葉は視野狭窄だと言わざるをえません。もちろん具体的た実務作業レベルでの違いはあるでしょうが、成果を出すための方針はパターン化できるものであり、これこそが本書でお伝えする「定石」です。

「3万3000サイト以上の分析」を元に定石を開発
コンサルティング経験をパターン化しただけでは、まだ「定石」と呼べるほどの根拠はありません。そこで次は根拠となるデータ収集に奔走しました。
2015年にはデータ分析の知見を広く提供するため、「AIアナリスト」というプロダクトを作りました。このプロダクトは、ユーザがWebサイトの閲覧履歴データを登録すれば、それを自動で分析し、デジタルマーケティングの打ち手を教えてくれるソフトウェアです。私が培ったコンサルティングの知見をソフトウェアで提供する代わりに、Webサイトの閲覧履歴データをいただくというビジネスモデルです。
2020年現在、3万3000以上のWebサイト閲覧履歴データを保有しています。この3万3000サイトの中には、広告宣伝費上位100社の50%を含み、主要な業界はすべて網羅できています。
言い換えると、私は日本にある主要なWebサイトの閲覧履歴データをほとんど把握できます。この「資産」を元に、デジタルマーケティングの定石を開発しているのです。開発した定石は、弊社の主要プロダクトである「AIアナリスト」にフィードバックし、成果創出の確率を高めています。
本書で解説する定石の根拠となるのも、この国内3万3000以上のWebサイト閲覧履歴データを分析した結果です。

「ユーザ行動観察調査」で「成果の出る理由」が明らかに
もう1つ「定石」の根拠になるのは、「データ」の意味を解釈するため、に行なってきた定性的な「ユーザ理解」です。「データ」を見れば成果の出る施策はわかりますが、なぜその施策の成果が出るのかまではわかりません。「なぜ」がわからなければ、再現性を高めることも、さらに大きな成果を出すこともできません。「なぜ」を理解するためには、生のユーザと対峙し、データの裏側にあるユーザ行動を明らかにする必要があります。
私はそのために「ユーザ行動観察調査」と呼ばれる調査を累計500名以上実施しています。この調査は、ターゲットユーザの横に座って、Webサイトなどを普段通り使っているところを観察する手法です。
本書の主テーマの1つにもなりますが、デジタルは「顧客主導」であり、デジタルで成功するには生の「ユーザ行動観察」が欠かせません。

本書の「定石」に則って、デジタル活用を推進すれば、100点満点中80点までは誰でも到達可能です。成果の出るデジタル活用手法の多くは再現性が高く、それだけやっていても十分大きな成果(80点)を期待できます。
一方で100点満点を目指すとなると、最新トレンドの追求や、才能に依存するアイディア出しなど、再現性の低い手法にも取り組まなければなりません。世の中のマーケターは、80点に達していないにもかかわらず、始めから100点を取ろうとして高度なことにチャレンジしすぎています。
まずは歴史が証明した再現性の高い「定石」から着手すべきでしょう。
Introductionからその「定石」を一緒に見ていきましょう。

2020年8月 垣内勇威

目次

デジタルマーケティングには「定石」がある――はじめに

-Introduction-
デジタルマーケティングには「定石」がある

「定石」とはどのようなものか?
デジタルに「できること」「できないこと」を理解する
人材紹介会社のページ、登録率が高いのはどっち?
「会員登録型」のほうが倍以上の求職者に登録してもらえる理由
「定石を無視した「車輪の再発明」が繰り返される理由
デジタルの特性を十分に理解していないから
デジタルの限界「人間のようなおもてなしはできない」
デジタルの限界2「ユーザが目の前にいない」
デジタルへの理解が不十分で他部署に反論できないから
「車輪の再発明」を止める
デジタル人材はどこにいるのか?
「ジョブローテーション」が専門性を奪ってしまう
自社ビジネスを深く理解している人材が流出してしまう
デジタル初心者は「バズワードの流行」に翻弄される
「経営者」と「事業責任者」こそ定石を理解すべき
経営者や事業責任者は実務を理解する必要はない
本書の構成
CHECK Introduction まとめ

Part1 デジタルの特性を理解する

Chapter1 デジタルの限界を理解する
デジタルは万能ではない
アイディア一発勝負で大きな成果が出るわけではない
デジタルは既存ビジネスの機能を代替する「手段」の1つ
AIもデジタルを万能にするわけではない
限界①
3秒以上の営業トークは無視される
ユーザーは自分の好きなもの以外、一切見ない
デジタルでは「見込み客の質」を高められない
企業に「カスタマージャーニー」は操作できない
「デジタルでブランディング」は勘違い
限界②
ユーザの顔がまったく見えない
データで「行動履歴」は見えても「理由」はわからない
「ユーザのことを知っている」とはどういう状態か?
ユーザを理解すれば「無価値な仕事」を判別できる
「ユーザと対面している=理解できている」ではない
最も有効なユーザ理解手法は今もなお「アンケート」
ユーザの普段の行動と心理変化を知る「行動観察」
限界③
爆発力がなく、少しずつしか伸びない
デジタルの集客方法は5つ
なぜITベンチャー企業がマス広告を打つのか?
マス広告が弱体化し「ファネル」の概念も変化している
限界④
大量データを集めただけでは何もわからない
AIが「最適な説得パターン」を用意できない
理由AIは答えの理由を人間に説明できないデータ活用のカギは「ユーザ行動の仮説」にあり
CHECK Chapter1 まとめ

Chapter2 デジタル活用の目的はコストカットである
デジタルは「コストカット」で真価を発揮する
デジタルは「コスパ」が圧倒的に高い
DXとは既存のマーケティング手段をデジタルに置換すること
強み①
無料で無限に情報発信できる
もし、ビールメーカーの営業担当だったら?
TVCMよりデジタルのほうが効率良く説得できる
「顔の見えないお客さん」が「買いたくなるストーリー」を考える
強み②
ストックになり半永久的に集客できる
デジタルは「ストック」の効果が大きいマーケティング手段
Webページの「ストック」効果
Web広告の「ストック」効果
メール、SNS、アプリのストック効果
地道に継続できれば低コストで集客できる
強み③
大量のリアルタイムデータが無料で集まる
デジタルの強みは「データが取れること」ではない
「大量データ」でアンケートのコストカットを実現する
「リアルタイム」のデータで早めの変化対応ができるようにデータはデジタル施策の改善だけでなくオフライン施策にも活用できる
CHECK Chapter2 まとめ

Chapter3 なぜ、デジタルは無駄な仕事が増えやすいのか?
デジタル関連部署の局所最適化が「無駄な仕事」を生み出す
デジタルという手段にとらわれた「局所最適」
「細かい仕事」が増える3つの理
なぜ成果を期待できない「細かい仕事」が増えるのか?
今すぐやめるべき「重箱の隅をつつく」仕事
ABテストの「仕事した感」に酔う
SEOに一喜一憂する
印刷してチェックしないと気が済まない
アトリビューションを言い訳に使う
ユーザ不在の「自己満足」の仕事は捨てる
企業視点の「自己満足」は百害あって一利なし
Webサイトリニューアルで「変わった感」を求める
「全ページデザイン統一」も無駄
「Webサイトでブランディング」も無駄
「ポエムに命をかける」のも無駄
「データから宝物を見つける」は手段が目的化している悪例
CHECK Chapter3 まとめ

Part2 デジタルの定石を理解する

Chapter4 あなたは顧客に毎年会っているか?
「顧客重視」では生き残れない「顧客主導」の時代
「顧客重視」から一歩進んだ「顧客主導」を
デジタル活用すれば必然的に「顧客主導」になる
「顧客が買うまでの流れ」を知らないマーケターは失格?
マーケターの9割は「顧客が買うまでの流れ」を説明できない
顧客は「通える雑貨屋」のECサイトを何のために使うのか?
1000万円するBtoB商品でも担当者はWebサイトを細かく見ない
たった5名の行動観察でほぼすべてがわかる
「顧客が買うまでの流れ」を把握する3つのステップ
データ分析は「添えるだけ」
顧客の行動を一気通貫で見られるデータは作れない
仮説を補強するためにデータを用いる
「顧客が買うまでの流れ」は3つに分ける
コンサルティングの現場で生まれたフレームワーク
CHECK Chapter4 まとめ

Chapter5 「日常生活フェーズ」の定石
デジタルだけでニーズの火は起こせない
ニーズがない人に「買いたい」と思わせるのは難しい
日常生活フェーズで潜在ニーズを自覚させる方法
日常生活フェーズの目的は「純粋想起の獲得」「ニーズの最速検知」
TVCMを代替するデジタルの使い方
「ネット広告で認知を取る」は大きな間違い
「ターゲットユーザ」以外の純粋想起を捨てる
いつでも接触可能な「見込み顧客リスト」をつくる
「自社のターゲットがどこにいるか」を考え尽くす
営業の定期訪問を代替するデジタルの使い方
「定期訪問」はデジタルで代替できる
ターゲットリストに定期的に通知を出しニーズ発生を検知する
シグナル検知の仕組みを複雑にしすぎない
「純粋想起」「ニーズ検知」で費用対効果は向上する
CHECK Chapter5 まとめ

Chapter6 「初回購入フェーズ」の定石
火の点いたニーズは曲げられない
回りくどい説得は一切必要ない
初回購入フェーズでは「目的の情報」以外見てくれない
最速で的確にユーザのニーズを満たす
「ゴール直行」の仕掛けを作る
webサイトは入口ページの集合体になる
「入口ページの集合体」こそWebサイトの理想形
「ピラミッド型」Webサイトはゴールへの誘導力が弱い
ランディングページの「縦の長さ」と「ゴール到達率」に相関はない
ゴール設計による伸び幅が一番大きい
ゴールをどこに設計するか?
「ライフタイムバリュー(LTV)」を最大化するポイントを見極める
ゴールを変更するためには別部署との連携が不可欠
ゴールの障壁を少し下げれば集客施策の幅が広がる
3段階で変化する検索キーワードから集客する
Googleを起点に集客を検討する
検索には3つの段階がある
最も競争が激しいのは「候補洗い出し」検索
SEOだけの検索集客は視野が狭い?
SEOだけで集客しようとすると視野が狭くなる
「候補絞り込み」段階のキーワード
「候補洗い出し」段階のキーワード
「選び方の勉強」段階のキーワード
CHECK Chapter6 まとめ

Chapter7 「継続購入フェーズ」の定石
売り切り型のビジネスは終焉する
「売り切り型」から「継続購入型」へ
ほぼすべてのビジネスが「継続購入型」に移行する
「人的労働力」を「デジタル」に置換する
どのビジネスでも「定期課金」を狙うべき
LTV=D購入者数×購入単価×購入期間
「買う」行動を極力減らしてLTVを最大化する
「都度課金」を「定期的都度課金」に置き換える
「定期的に買う商品」+「ついで買い」を誘発する
購入後も情報発信し続ける
全業種でユーザの生活時間を奪い合う
ユーザの「生活時間」に入り込めないと解約・離反されてしまう
顧客との接触頻度を上げるほうが購入期間は伸びる
「コンテンツ」と「ルーティン」で生活時間に入り込む
「磨き抜かれたコンテンツを量産する
シンプルなルーティン導線の設計
「利用開始直後に「正しい使い方」を伝える
継続購入とは究極的には「愛」の世界
CHECK Chapter7 まとめ

Part3 定石を使って実践する

Chapter8 定石を様々なビジネスモデルに適用する
定石活用のため「DXアクセラレータ」に入力する
マーケティングにおけるデジタル活用の型は18種類ある

Chapter9 【Webto営業担当型】BtoBで営業につなぐビジネスの型
一般ビジネスパーソン向けのBtoB商材(ソリューションサービスなど)
専門的な技術者向けのBtoB商材(部品・素材、医薬品、建材など)

Chapter10 【Webto営業担当型】BtoCで営業につなぐビジネスの型
単価の高いBtoC商材(サービス業)
早価の低いBtoC商材(飲食店、サロン、宿泊など)

Chapter11 【Web完結型】ECの型
一般的なEC(複数商品を取り扱う)
実店舗への送客を狙うEC(百貨店・量販店・メーカーなど)
単品で定期購入を促すEC(健康食品・コスメなど)

Chapter12 【Web完結型】その他の型
ブランドサイト
記事メディア
商品紹介ポータル・契約申込サイト

本当に大切な仕事は何か?――おわりに