【最新】世界史を学ぶためのおすすめ本 – 高校から大人の学び直しまで

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世界史はつまらない?視点を変えて理解を深める

世界のグローバル化が進む現在、世界の情勢やその背景を知るため、世界史を学ぶ意義が高まっています。そのため、世界史への関心も高まり、大人になってから世界史を学び直す人も増えています。しかし、世界史は暗記量が多くつまらないと感じる人も多いです。ここで紹介する本は、各地域や1人の人物に焦点を当てて掘り下げたり、マンガや図解、ストーリー仕立てで解説するなど、世界史を理解しやすいものばかりです。高校で世界史を勉強する方だけでなく、大人になってもう一度学び直したいという方にもおすすめです。

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出典:出版社HP

大学入試 ストーリーでわかる世界史B(近代・現代)

世界史の「つながり」を知る

世界史を学ぶ上で、「人の動き」と「歴史の流れ」を掴むことが大切です。本書では教科書を読むだけではイメージしにくい世界史を、ストーリー性を意識しながら楽しく学ぶことができます。出来事の背景や因果関係が丁寧に解説されているため、記憶に残りやすいです。

鵜飼 恵太 (著)
出版社 : KADOKAWA (2015/10/21)、出典:出版社HP

はじめに

受験勉強だって、楽しまないと伸びない!

これから受験勉強を始めようとしているみなさんの中には、世界史をつまらないただの暗記科目だと思っている人もいると思います。教科書は正確ですが、淡々としていて「人が動く」という感覚がありませんし、用語集はただの「辞書」です。英語や古文だって、辞書だけ読んでもあんまり面白くないですよね。世界史だって、用語集が面白いわけがありません。どうせ勉強するなら、楽しくやりましょう!

「ソ連崩壊」の衝撃が、世界史講師の原点

1991年12月25日、高3で受験生だった私は予備校から帰宅し、テレビのニュースを見て仰天しました。「えっ(;°∀°)、ソ連がなくなったの??受験はどうなる?」
ソ連が崩壊したせいではないですが(笑)、浪人した私は「今の世界がどうやってできたのか、ちゃんと知りたい!」と思い、現役のときに一度は諦めた史学科を受験しました。あのときの衝撃がなかったらたぶん経済学部を受けていたので、駿台の世界史講師として、教壇に立つこともなかったかもしれません。
歴史とは「人の動きの連続」です。ときに感情がぶつかりあうこともあります。映画やドラマのストーリーが覚えられるのは、人の動きがイメージできるからです。本書は、教科書や用語集では見えない「人の動き」と「つながり」がわかるように書きました。まずは、一つ一つのストーリーを楽しんでください!
さらに、どうせ受験勉強をするなら、現代の世界がわかったほうがいい!と思い、冷戦終結後の世界もしっかり解説しました。もちろん、最近の入試では出題されています。私がソ連崩壊で感じたような動きを感じてもらえたらうれしいです。

インプットしたら、「アウトプット」を忘れずに!

入試では試験会場で「問題を解く」ことになります。本書で知識を「インプット」したら、必ず「アウトプット」、つまり問題を解くようにしましょう。問題演習は、入試という「本番」のための「練習試合」です。問題集、過去問などで間違えた部分は本書を読み直して、その部分をノートなどにまとめておくと、後で見直ししやすいですよ!

本書は、ふだん授業に出ている生徒のみなさんの反応や質問を思い出しながら執筆しました。これまで私の授業を受講してくれたすべての受講生のみなさんに、心から感謝します!

最後に、私に初めての執筆の機会をくださったKADOKAWAの山川徹さん、執筆を根気よくお待ちいただいた佐藤良裕さん、編集の高橋洋子さん、この場を借りて心より御礼申し上げます。

鵜飼 恵太

鵜飼 恵太 (著)
出版社 : KADOKAWA (2015/10/21)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに
この本の特長と使い方

第1章 国民国家の形成
第1回 ウィーン体制とその崩壊
1 ウィーン体制の成立
2 ウィーン体制の動揺
3 ラテンアメリカの独立
4 七月革命とその影響
5 1848年革命(二月革命とその影響)
第2回 イギリスの自由主義とフランス第二帝政
1 イギリスの自由主義改革
2 アイルランド問題
3 フランスの第二帝政
第3回 アメリカ合衆国の発展
1 建国初期のアメリカ
2 アメリカ合衆国の領土拡大
3 南北戦争
4 南北戦争後のアメリカ
第4回 イタリア・ドイツの統一
1 統一以前のイタリア
2 サルデーニャ王国の統一運動
3 イタリア王国の成立
4 統一以前のドイツ
5 普墺戦争と普仏戦争
6 統一後のドイツ
第5回 ロシアと東方問題
1 ロシアのツァーリズム
2 東方問題の発生クリミ
3 クリミア戦争とロシアの改革
4 露土戦争
第6回 19世紀のヨーロッパ文化
1 古典主義
2 ロマン主義
3 写実主義・自然主義
4 印象派・後期印象派
5 社会科学・哲学
6 自然科学・科学技術

第2章 列強の侵略とアジアの変革
第7回 近代の西アジア
1 オスマン帝国の衰退
2 オスマン帝国の近代化
3 カージャール朝の衰退と混乱
第8回 近代のインド・東南アジア
1 イギリスのインド侵略
2 インド民族運動の始まり
3 列強の東南アジア侵略
第9回 近代の東アジア①
1 アヘン戦争とアロー戦争
2 太平天国の乱と洋務運動
3 琉球問題と朝鮮問題
4 日清戦争
第10回 近代の東アジア②
1 変法運動と中国分割
2 義和団事件と日露戦争
3 朝鮮の植民地化
4 辛亥革命

第3章 帝国主義と第一次世界大戦
第11回 帝国主義とアフリカ分割
1 第2次産業革命と帝国主義
2 アフリカ分割① (北部・東部・西部)
3 アフリカ分割② (南アフリカ)
4 ドイツの「世界政策」とモロッコ事件
第12回 帝国主義時代の欧米諸国
1 イギリス~自由党の改革と労働党の出現~
2 フランス~第三共和政の諸問題~
3 ドイツ~ドイツの発展と社会主義~
4 ロシア~ロシアの社会主義と第1次ロシア革命~
5 アメリカ合衆国〜アメリカの帝国主義~
第13回 第一次世界大戦とロシア革命
1 第一次世界大戦にいたる国際関係
2 「ヨーロッパの火薬庫」
3 第一次世界大戦
4 ロシア革命

第4章 戦間期と第二次世界大戦
第14回 ヴェルサイユ体制とワシントン体制
1 ヴェルサイユ体制
2 国際連盟の成立
3 ワシントン体制
4 ドイツの賠償問題と協調外交
第15回 戦間期の欧米諸国~世界恐慌以前~
1 アメリカ合衆国の繁栄~黄金の20年代~
2 大英帝国の再編とフランス
3 ドイツ~ヴァイマル共和国の混乱と復興~
4 イタリア〜ファシズム政権の出現~
5 ソ連~社会主義国家の建設~
6 戦間期の東欧諸国
第16回 戦間期の西アジア・南アジア・東南アジア
1 トルコ革命
2 戦間期の西アジア・アラブ諸国
3 インドの民族運動
4 東南アジアの民族運動
第17回 戦間期の東アジア
1 新文化運動と五・四運動
2 孫文の国民革命と北伐
3 日本の侵略と国共内戦
4 日中戦争
第18回 世界恐慌とその影響
1 世界恐慌の発生
2 アメリカの恐慌対策~ニューディール~
3 英仏の恐慌対策~ブロック経済の形成~
4 世界恐慌後のドイツ~ナチス政権の成立~
第19回 第二次世界大戦
1 ドイツの侵略と第二次世界大戦の勃発
2 第二次世界大戦

第5章 戦後の世界
第20回 冷戦の展開①(1945~1955)
1 国際連合の成立と戦後処理
2 冷戦の始まり
3 ベルリン問題と冷戦体制の形成
4 アジアでの対立激化
5 「雪どけ」と「巻き返し政策」
第21回 冷戦の展開②(1956~1969)
1 スターリン批判と平和共存政策
2 冷戦の再燃とキューバ危機
3 ECの成立と西欧諸国
4 東西両陣営の動揺
第22回 冷戦の展開③(1970~1991)
1 アメリカ合衆国の地位低下
2 デタント(緊張緩和)の進行と世界の多極化
3 米ソの行き詰まりと「新冷戦」
4 冷戦の終結とソ連の崩壊
第23回 戦後の東アジア
1 戦後の中華人民共和国
2 戦後の台湾
3 戦後の韓国
第24回 戦後のインド・東南アジア
1 戦後のインドと第三世界の形成
2 インドシナ戦争とベトナム戦争
3 戦後の東南アジア
第25回 戦後の西アジア・アフリカ
1 パレスチナ問題と中東戦争
2 戦後の西アジア(イラン・イラク)
3 戦後のアフリカ
第26回 冷戦終結後の世界(1990~)
1 冷戦終結後の欧米諸国
2 現代の諸問題
3 地域紛争・民族紛争の激化

さくいん

本文著者イラスト:たはらひとえ
本文イラスト:いとうみつる

*この本に掲載している情報は、2015年7月現在のデータが最新です。

鵜飼 恵太 (著)
出版社 : KADOKAWA (2015/10/21)、出典:出版社HP

大学入試 マンガで世界史が面白いほどわかる本

マンガでわかる楽しい世界史

本書は、まずその地域その時代の重要な人物に関するストーリーのマンガ、解説を記した後に歴史の解説という構成になっています。マンガで興味をもち、人物解説で理解を深めた人物に関わる歴史を学ぶことができるので、歴史に関する解説も頭に入りやすくなっていると思います。

佐藤幸夫 (著), 沖元 友佳 (著, 編集)
出版社 : KADOKAWA (2018/10/15)、出典:出版社HP

はじめに

最近、”大人”の社会で流行していること、それが「学び直し」です。その中で、最も注目されている科目が「世界史」なのです。しかし、必修科目になって約20年が経ったにもかかわらず、「世界史」で受験する人は減る一方で、とうとう必修科目から外れることになりました。日本の教育システムにおいては由々しき事態です。

さて、どうして「世界史」はこれまで敬遠されてきたのか。その原因は、教科書のカリキュラムにあると筆者は思っています。オリエント(西アジア)から始まって、ギリシア・ローマへ飛び、次にインド・中国、再びヨーロッパへ。ヨーロッパでも各国がバラバラに登場し、また数十ページ後に再びヨーロッパ各国の説明がバラバラに出てきます。「世界の歴史」の全体的な流れを知るためには仕方ないことですが、「世界史」を勉強する人の頭を混乱させるきっかけにもなっています。カタカナに慣れていない日本人にとって、どこの国?いつの時代?の人なのかが混乱して、覚えられないのです。特に、「世界地理」を中学校でしっかりと勉強してこなかった人にとっては、ただの地獄でしょう。
そこで本書の出番です。なんといっても、国別に読めるということ。また、歴史を動かす「主人公」を中心に歴史が展開されているので、わかりやすいわけです。さらに、フルカラーのマンガです。興味をかき立てる人物とその事件を、ビジュアルで理解できることが本書最大の「特別さ」でしょう。今までにない、「国別」「主人公」「カラーマンガ一の3点セットで、「世界史」の勉強に新風を巻き起こします!もちろん、教科書のカリキュラムに合わせているわけではないので、単元別の学習はできません。しかし、「主人公」がその時代の流れを教えてくれます。初学者でも受験生でも社会人でも、楽しく感動しながら読める一冊に仕上げました。
ぜひ手に取って、好きなところからお読みください。必ず、お好みの国ができることは間違いありません。

最後に、本書を作成するにあたり、多くのマンガ家さんに大変なご苦労・ご迷惑をおかけしたことを、心からお詫び申し上げる一方で、無事にこのような素晴らしい一冊を完成させられたことを、心から感謝しております。

佐藤幸夫

佐藤幸夫 (著), 沖元 友佳 (著, 編集)
出版社 : KADOKAWA (2018/10/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに
世界地図

Chapter01 フランス史
フランス史の主な出来事
ジャンヌ=ダルク
フランスの建国と発展、百年戦争まで
ルイ14世
ブルボン朝の絶対王政時代からフランス革命へ
ナポレオン=ボナパルト
ナポレオン帝政から共和政、そして世界大戦

Chapter02 朝鮮半島史
朝鮮半島史の主な出来事
太宗
中国による支配から朝鮮の建国へ
閔妃
朝鮮の衰退から日本の植民地時代
朴正熙
朝鮮戦争による南北分離、そして現代へ

Chapter03 ロシア史
ロシア史の主な出来事
イヴァン3世
ロシア人の定着、モスクワ大公国の支配体制
エカチェリーナ2世
ロマノフ朝の発展、エカチェリーナ女帝の時代
ウラジーミル=レーニン
ロシア革命からのソ連建国、そして現代のロシア

Chapter04 インド史
インド史の主な出来事
アショーカ王
インダス文明からの発展
シャー=ジャハーン
ムガル帝国の興亡
ガンディー
イギリス支配からの独立

Chapter05 アメリカ史
アメリカ史の主な出来事
トマス=ジェファソン
大航海時代と植民地建設、イギリスからの独立
エイブラハム=リンカン
ゴールドラッシュと南北戦争、アメリカの繁栄
フランクリン=ローズヴェルト
世界恐慌から太平洋戦争、戦後の冷戦へ

Chapter06 中国史
中国史の主な出来事
高祖(劉邦)
黄河文明から秦の統一、漢の時代へ
則天武后(武則天)
三国時代から、隋・唐による支配
チンギス=ハン
モンゴル帝国の成立、元による中国統一
康熙帝の明王朝から清王朝の栄枯盛衰
孫文
辛亥革命と中華民国の成立、そして現代中国へ

Chapter07 イギリス史
イギリス史の主な出来事
ジョン王
イギリスの成り立ちと発展
エリザベス1世
絶対王政とイギリス革命
ディズレーリ×グラッドストン
二度の世界大戦と現代のイギリス

Chapter08 エジプト史
エジプトの主な出来事
アメンホテプ4世
古代エジプトの盛衰
サラディン
イスラームの広がり、オスマン帝国の支配
ムハンマド=アリー
エジプトの独立からアラブの春まで

Chapter09 ドイツ史
ドイツ史の主な出来事
オットー1世
ドイツ地域の興りと神聖ローマ帝国
マリア=テレジア×フリードリヒ2世
プロイセンの台頭とドイツ連邦
オットー=フォン=ビスマルク
ドイツ帝国の誕生、ナチス独裁から現代のドイツへ

Chapter10 トルコ史
トルコ史の主な出来事
コンスタンティヌス帝
西アジアの興りとペルシア時代、中世トルコの発展
メフメト2世
オスマン帝国の盛衰
ムスタファ=ケマル
近代トルコの統一、戦後の民族主義

Chapter11 イタリア史
イタリア史の主な出来事
オクタウィアヌス
古代ローマ帝国の発展
インノケンティウス3世
ローマ帝国の滅亡とローマ教皇の権威
ヴィットーリオ=エマヌエーレ2世
イタリア統一からファシズムへ

Chapter12 イラン史
イラン史の主な出来事
ダレイオス1世
文明の興りとペルシア帝国の盛衰
イスラムの広がりとティムール帝国
サファヴィー朝の発展
ホメイニ
イラン=イスラーム革命、イラクとの対立

Chapter13 スペイン史
スペイン史の主な流派
イベリア半島の発展とイスラームの支配、レコンキスタ
フェリペ2世
「太陽の沈まぬ国」と呼ばれた
絶対王政、ブルボン家の支配へ
フランシスコ=フランコ
20世紀のスペイン、独裁から王政復古まで

偉人たちの名言集
イラストレーター紹介

佐藤幸夫 (著), 沖元 友佳 (著, 編集)
出版社 : KADOKAWA (2018/10/15)、出典:出版社HP

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた

新感覚の教科書

本書は特徴の一つとして「年号を使わない」ことを掲げています。世界史の勉強といえば年号の暗記がネックになるイメージがありますが、それを撤廃することで歴史を一つのストーリーとして学ぶことができます。また、一般的な教科書と違い地域や年代を行ったり来たりしないので、歴史を順序立てて学びやすい構成になっています。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

はじめに 世界史には”1つ”のストーリーがある!

「先生、YouTubeで授業を公開してよ!先生が異動しても先生の聴きたいんです!」
かつての私の生徒からこのような要望をもらい、2013年、YouTubeLa世界史の授業動画『世界史20話プロジェクト』を始めました。

高校生だけでなく、大学生やビジネスパーソン、主婦、教育関係者から幅広い層の方々に視聴いただいており、今では日本史や地理の動画を合わせて総再生回数が850万回を数えるようになりました。
私は公立高校の社会科の教員なので、世界史だけでなく、日本史や地理も教えています。
YouTubeでは、世界史とともに日本史と地理の授業動画も公開していますが、世界史の動画だけに「プロジェクト」という名称を付けています。
これは、けっして気まぐれではありません。
私の中で、世界史の授業動画をアップするのは、日本史や地理と違って、まさに一大プロジェクトという想いがあったからです。そして、最も反響が大きかったのも世界史でした。
なぜ、世界史の授業動画が一大プロジェクトだったかというと、本編でもあらためて詳しくお話ししますが、じつは、一般的な教科書には「わかりにくさ」という大きな“問題”があるからです。

その問題により、世界史が苦手な人をたくさん生み出している原因になっている可能性があると考えたからです。
日本史は小学校から高校まで繰り返し学び、「あらすじ」ぐらいは多くの人が知っているのに対して、世界史の「あらすじ」を知っている人は少ないのではないでしょうか?世界史はグローバル時代に必須の教養なのに、非常に残念なことだと思います。
20年近く社会科の教員を務める中で、私は数多くの生徒を見てきました。
社会科に苦手意識を持っている生徒をなんとかしたい、歴史に興味を持ち、教養の幅を広げてほしい。
そんな想いから、世界史の教え方について試行錯誤を重ねた結果、1つのストーリーに基づき、世界史を解説するという本書の形にたどり着きました。
本書で解説する世界史の特徴を具体的に申し上げると、以下の3つになります。

① 一般的な教科書とは違い、すべてを数珠つなぎにして「1つのストーリー」にしている
② 「主語」が変わるのを最小限におさえている
③ 年号を使わない。

「年号を使っていない歴史の本なんて……」と思う方がいるかもしれませんが、この3つの工夫により、高校で学ぶ世界史のあらすじを一度読むだけで理解できるようになると思います。
本書が、世界史の教養をこれから身につけたいという方々のお役にたてれば幸いです。特に、学生時代に世界史が苦手で、学びなおしをしたいと思っている社会人の方や「なかなか点数が上がらず、まずは平均点を目指したい」という大学受験生には最適な一冊になるかと思います。
世界史を学ぶ「はじめの一歩」を本書で踏み出し、映画、小説、旅行、音楽、美術など、様々な世界史のコンテンツにアクセスして、人生をより豊かにしていただけることを願っています。

山﨑圭一

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに
世界史には、“1つ”のストーリーがある!

ホームルーム①
「わかりにくい」という世界史の教科書の“弊害”
ホームルーム②
世界史は“数珠つなぎ”にして学べ!
ホームルーム③
世界史は「年号」を使わずに学べ!
ホームルーム④
本書の構成について

序章
人類の出現・文明の誕生
人類の出現
化石の発見が語った人類誕生の歴史
文明の誕生
文明はいつ、どこで、どのように生まれたのか?

第1章
ヨーロッパの歴史
第1章 ヨーロッパの歴史あらすじ
エーゲ文明
神話や伝説に包まれたヨーロッパのルーツ
ポリスの形成
「オリンピック」はポリスたちの祭典だった
アテネ
民主主義に“目覚めた”アテネの人々
スパルタ
「スパルタ教育」の秘密は人口構成にあった
ペルシア戦争とペロポネソス戦争
ペルシアに勝利後、内部から崩れたギリシア
アレクサンドロスの帝国
英雄アレクサンドロスが世界を駆け抜ける!
共和政ローマ
ヨーロッパを1つにした巨大国家の誕生
帝政ローマ
名君たちによって「ローマの平和」が訪れる
キリスト教の成立
ローマ帝国時代にキリスト教が生まれた理由
ゲルマン人の移動
民族移動と混乱から「中世」が始まる
ノルマン人スラヴ人の移動
第2、第3の民族移動はヨーロッパの北と東から
ビザンツ帝国
1000年続いたローマ帝国の正式な継承国家
キリスト教の分裂
教会同士の対立から2つの宗派が生まれた
カトリック教会の発展
神の権威を背景に教皇が最高権力者へ
封建社会の成立
モザイク状の国家たちがヨーロッパの多様性を生んだ
十字軍
聖地奪還のため、大遠征軍が派遣された
十字軍の影響
十字軍が中世ヨーロッパにもたらした2つのこと
中世のイギリス
議会政治の始まりはイギリス王の失政から
中世のフランスと百年戦争
フランスの危機にジャンヌ=ダルクが立ち向かう!
中世のスペイン
イスラーム勢力を追い出し、大西洋に進出した
中世のドイツ・イタリア
“メンツ”にこだわって、国内が空中分解

第2章
中東の歴史
第2章 中東の歴史あらすじ
メソポタミア文明
最古の文字を生み出した民族とは?
エジプト文明
ピラミッドを生んだ文明は2千年にわたって栄えた
シリア・パレスチナの民族
鉄・アルファベット・一神教はここから始まった
オリエントの統一
寛容な統治で巨大化したペルシア人の帝国
イランの諸王朝
ローマの“ライバル”となったイラン人の王朝たち
イスラームの成立
「神の前の絶対平等」を合い言葉に急成長
イスラームとは
イスラームが世界の4分の1の人をひきつける理由
7世紀のイスラーム世界
アラブ人の国家が「巨大帝国」に成長
8世紀のイスラーム世界
“平安の円形都市”バグダードが繁栄を謳歌した
10世紀のイスラーム世界
イスラームが分裂し、「戦国時代」がやってきた
11世紀のイスラーム世界
トルコ人がついにイスラームの主役に
12世紀のイスラーム世界
十字軍と死闘を演じた“英雄の中の英雄”サラディン
13世紀のイスラーム世界
トルコ人奴隷が建国した2つの王朝
14~16世紀のイスラーム世界①
軍事の天才「鬼武者」ティムールの登場
14~16世紀のイスラーム世界②
トルコ人王朝の“決定版”オスマン帝国の成立と拡大

第3章
インドの歴史
第3章 インドの歴史あらすじ
インダス文明
高度な都市計画をもつ「インドの源流」
アーリヤ人の流入とヴェーダ時代
インドに根強く残るカーストがここから始まる
小国分立の時代
ブッダの“悟り”が新宗教を生み出す
マウリヤ朝とクシャーナ
初めてインドを“1つ”にした巨大王朝
グプタ朝とヴァルダナ朝
ヒンドゥー教が確立し、インドの古典文化が花開く
イスラーム化とムガル帝国」
ヒンドゥー教とイスラーム教の融和と分裂

第4章
中国の歴史
第4章 中国の歴史あらすじ
中国の古代文明
2つの大河が高度な文明をはぐくんだ
設と周
「美女に溺れて滅んだ!?」2つの王朝
春秋・戦国時代
500年間続いた中国史上最大の戦乱時代
諸子百家
君主たちの“コーチ”を務めた思想家たち
秦王朝
初めて中国を“1つ”にした始皇帝
前漢王朝
「漢字」「漢文」「漢民族」に名を残す中国の代表的王朝
後漢王朝
西のローマ帝国と並ぶ東の大帝国に成長
三国時代
劉備・曹操・孫権が天下を争った三国時代
南北朝時代
異民族の侵入が続き、王朝が南北に分裂
隋王朝
“嫌われ者”だが優秀だった隋の皇帝たち
唐王朝
隋の後継国家として空前の繁栄を迎えた唐
宋王朝
「平和をお金で買った」現実主義の宋王朝
モンゴル帝国と元王朝
アジアをまたにかけ広がったチンギス=ハン旋風
明王朝
秘密警察と宦官が暗躍した「暗黒時代」

第5章
一体化する世界の時代
第5章 一体化する世界の時代あらすじ
大航海時代
アジアの香辛料を求め、欧州諸国が大西洋へ
大航海時代の影響
欧州と新大陸がつながり、「欧米世界」が形成
ルネサンス
美術作品が「神の目線」から「人の目線」へ
宗教改革
カトリックへの批判から新しい宗派が次々登場
主権国家体制の成立
戦争の大規模化により、「国のあり方」が変わる
近世のスペインとオランダ
「小国」オランダに足元をすくわれたスペイン
近世のイギリス
混乱を乗り越え、イギリスに議会政治が確立
近世のフランス
フランスの栄光、ルイ14世とヴェルサイユ宮殿
近世のドイツ
ドイツ全土の荒廃を招いた三十年戦争
近世のロシア
ロシアの絶対君主となったドイツ人女王
ヨーロッパの世界進出
世界の一体化で、ヨーロッパの支配が加速

第6章
革命の時代
第6章 革命の時代あらすじ
產業革命
「失業した農民」が「都市の労働者」へ
アメリカ独立革命
“理不尽”な英国に反旗を翻した13の植民地
フランス革命
国王をギロチンで処刑!
ヨーロッパ中に動揺が走る!
ウィーン体制
王政に逆戻りしたウィーン体制に民衆は反発
19世紀のフランス
王政に戻ったフランスに再び革命の嵐が吹き荒れる!
19世紀のイギリス
イギリス史上空前の繁栄・ヴィクトリア時代
ドイツ・イタリアの統一
軍事・外交の天才ビスマルクが「ドイツ」をつくる
ロシアの南下と東方問題暖かい地へ!
ロシア南下の野望と挫折
アメリカ南北戦争
経済政策と奴隷制で真っ二つになったアメリカ

第7章
帝国主義と世界大戦の時代
第7章 帝国主義と世界大戦の時代あらすじ
帝国主義の始まり
資本主義の発展が植民地の拡大をあと押し
英仏の帝国主義
「世界の半分」を支配したイギリスとフランス
アフリカ分割
「早い者勝ち」で次々と植民地化する列強たち
アメリカの帝国主義
南北戦争で出遅れた米国が太平洋に進出
日露戦争と第一次ロシア革命
ついに、ロシアの矛先が日本に向けられる
第一次世界大戦
世界に挑戦状を叩きつけたドイツの“青年”皇帝
ロシア革命
2度の革命で“世界初”の社会主義国が誕生
ヴェルサイユ体制
新体制は次の戦争への「つかの間の平和」に終わる
大戦後のヨーロッパ
“お金持ち”アメリカが荒廃したヨーロッパを救う
アメリカの繁栄と世界恐慌
「永遠の繁栄」といわれたアメリカ経済のまさかの転落
ブロック経済とファシズム
第二次世界大戦の構図は「持てる国」と「持たざる国」
第二次世界大戦」
破竹の勢いのナチス、及び腰の英仏

第8章
近代の中東・インド
第8章 近代の中東・インドあらすじ
オスマン帝国の衰退
「内から」「外から」衰退したオスマン帝国
トルコ革命
「トルコの父」がトルコ共和国をつくった
インド帝国の成立
女王が統治するイギリスの最重要植民地
第一次大戦後のインド
約束を守らないイギリスに不服従運動が始まる

第9章
近代の中国
第9章 近代の中国あらすじ
アヘン戦争
「お茶」を求めてイギリスが中国に進出
アロー戦争と太平天国の乱
国内外で起こる戦争にお手上げになった清
中国分割
弱体化が全世界にバレた清が半植民地化の道へ
辛亥革命
近代化の道を自ら閉ざした清がついに滅亡
国共合作と分離
国民党と共産党、二大勢力の誕生
満州事変と第二次国共合作
日本の大陸進出がライバル同士を結び付けた

第10章
現代の世界
第10章 現代の世界あらすじ
国際連合の成立
新たな国際秩序の中心は戦勝国たちだった
ベルリン封鎖
アメリカの物量が冷戦の第1ラウンドを制す
冷戦の第2ラウンドはアジアでの“熱い戦争”
雪どけ
世界の構造を変えたスターリンの死
スプートニク=ショックとキューバ危機
「雪どけ」から一転、世界中が核戦争の危機に
ベトナム戦争とプラハの春
「テレビのカ」が冷戦を終結に導く
冷戦の終結
チェルノブイリの事故がソ連を崩壊に追い込む
戦後のヨーロッパ
戦後の荒廃の中から復興し、統一を模索
パレスチナ問題
宗教対立から始まった未だ解決しない「世界の宿題」
インドの独立
ガンディーの思いもむなしく、インドは分裂した
戦後の中国
共産党と国民党の対立が中国を2つに分けた

おわりに

巻末付録
教養としておさえておきたい文化史
年号も覚えておきたい人のための世界史年表

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

ホームルーム①
「わかりにくい」という世界史の教科書の”弊害”

世界史が苦手な人が多い理由

世界のグローバル化に伴い、世界の歴史、文化を学ぶ意義は非常に高まっています。私も世界の歴史という、スケールが大きく、様々なエピソードが詰まった素晴らしい科目を教えることは非常にやり甲斐を感じてします。この本を手にとった皆さんも、そんな世界史を学びたいという方々だと思います。
その反面、社会人も高校生も世界史の勉強を苦手に感じている人が多くいます。理由は、多くの人が、英語の単語帳を覚えるように、「何の脈絡もなくひたすら用語や年代を暗記する科目だと思っている」ことにあると思います。
こうした“誤解”を生む1つの要因が、学校で使われている一般的な世界史の教科書の構成にあるのではないかと私は考えています。

右の図をみてください。高校で使われる、一般的な『世界史B」の教科書を前から順に読んだときの項目の流れです。
縦に年代・横に地域を並べ、「学ぶ順番」を矢印で表しています。図から明らかなとおり、矢印があっちこっちに飛んでいるため、教科書をはじめから読んでも“全体像”がいっこうに頭に浮かびません。
もちろん、教科書を制作している側も、意地悪をするためにこのような構成にしているわけではありません。ちゃんと狙いはあるのですが、現状では何を学んでいるのかさっぱりわからなくなって、その結果、「覚える」ことが学習の中心となり、「世界史はつまらない暗記科目だ」という印象が身についてしまうことになっているのです。

ホームルーム②
世界史は“数珠つなぎ”にして学べ!

11のブロックを1つに串刺しに

じつは、このような世界史の教科書の“構造”について問題意識を持ち、試行錯誤を重ねている学校の教員は数多くいます。
ありがたいことに、多くの教員の方たちが、2016年からYouTube上で私が公開している世界史の授業動画『世界史20話プロジェクト』を視聴して高い評価をくださいました。
その評価の一番の理由は、私がこの教科書の問題に1つの解決策を提示したからです。
右の図の矢印を見てください。
17ページの図と違って、矢印が、ヨーロッパから始まり、中東、インド、中国、大航海時代、近代、現代まで、“数珠つなぎ”になっているのがおわかりいただけると思います。
つまり、11個に分かれたブロック(かたまり)を串刺しにして1つにしてしまうのです。
「串刺し」の内容を簡潔に説明するとすれば、「最初にヨーロッパ、中東、インド、中国の4つの地域の歴史を個別に学んだあとに、大航海時代を通じて4つの地域が1つに合流。次に近代、現代を通じて、ヨーロッパ世界がアジアを中心とした世界に影響力を強めていく過程を学ぶ」ということになります。
右の図は、世界史を学ぶ前に、自分の頭に入れておく「器」になります。フレームワーク(枠組み)と言い換えてもよいでしょう。要は、世界道案内の地図です。
これまで、世界史がさっぱり理解できなかったり、用語の暗記作業を苦行のように繰り返したりしていた方は、本書を1度読んでいた。これまでとは違って、内容が自分の頭の中に驚くほど残っているはずです。

「主語」をできるだけ固定して解説

世界史のすべてを数珠つなぎにして解説するために、本書では1つの工夫をしています。
それは、地域、または王朝、国家などの「主役」の変化を最小限に話を進めていくということです。
一般的な世界史の教科書を一度でも読んだことがある人ならおわかり、ただけると思いますが、文中で、めまぐるしく主語が変わります。あるページではヨーロッパの国々が「主語」になって語られ、数ページ進むと、今度は主語が中国になり、さらに数ページ進むと、いつのまにか中東の王朝が主語になっていたりします。
世界の各地域は相互に関連していますので、もちろん、さまざまな視点から歴史を眺めることは大切です。
ただ、17ページの図からもおわかりのとおり、地域や王朝などの「主語」があまりにも頻繁に変わってしまうと、「主語」を把握するだけで大きな負担がかかり、内容に集中しづらくなってしまいます。そのため、教科書をいくら読んでも、内容が頭に残らないのです。
そこで本書では、「主役」の変化を最小限に留めるため、その他の地域は脇役として登場させています。
主役が別の地域に変わるときは、それまで主役だった地域が今度は脇役にまわります。
そうやって、できるだけ一直線”に読むほうが、結果的に、地域間、家間の「横のつながり」がより理解できることを実感していただけるはずです。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

ホームルーム③
世界史は「年号」を使わずに学べ!

「年号がない」ほうがストーリーは際立つ

本書には、もう1つ大きなしかけがあります。それは、年号を一切用いないということです。
年号を用いずに解説している世界史の教科書や学習参考書は、私が知る限りでは、ほとんどないと思います。
なぜ、私が年号を使わないかというと、“数珠つなぎ”にするときに、年号は“ノイズ(雑音)”になってしまうからです。
私の授業では、学生たちによく昔ばなしの「桃太郎」を例に出して説明します。
「桃太郎」は、「おじいさん」「おばあさん」「柴刈り」「洗濯」「桃」「きび団子」「キジ」など、50ぐらいの用語で構成されています。日時や年号は出てきません。それでも、多くの人が、子供のときに読んだ桃太郎の話を大人になっても覚えていますよね。昔ばなしのように、数珠つなぎにされたシンプルなストーリーは、頭に残りやすいのです。

しかも、年号がないほうが、かえって事件や人物の「関係性」「つながり」「因果関係」もより際立ってくることを実感してもらえるはずです。
ただし、大学受験生の場合は、年号の知識もある程度必要になります。社会人の中にも、年号をおさえたいという方がいると思います。私が学校で受け持つ生徒たちには、まずは年号なしで世界史を学ばせたあと、大学受験の2か月前くらいに、本書の巻末付録に掲載しているセンター試験に必要な84の年号を覚えさせています。
ほとんどの生徒は、4~5日程度で年号を完璧に覚えてしまいます。
すべての知識を数珠つなぎに身に付けたあとであれば、年号も簡単に頭に入れることができるようになるのです。

「世紀」は、中東世界を軸に

年号は不要であるものの、ある程度のタテの時間軸をおさえておいたほうが、知識がより頭に残りやすくなります。
ただし、すべての用語を年代とセットで覚える必要はまったくありません。じつは、年代を簡単に頭に入れられるコツがあるのです。本書の第2章にあたる「中東」の年代を軸にして整理すればよいのです。
中東世界は、地理的に、西のヨーロッパと東の中国のちょうど中間点にあります。そのため、中東世界は、他の地域の歴史に「脇役」として頻繁に登場します。したがって、中東世界の知識を数珠つなぎで身に付けるときに、合わせて、年代もセットで頭に入れれば、他の地域の年代もまとめて把握できてしまうということなのです。

ホームルーム④
本書の構成について

第5章を境に、大きく前半と後半に分けられる

本書の構成は、5章を境に、前半と後半に大きく分けられます。
まず、序章では、人類の出現や文明の誕生から話を始めます。
次に、1章から4章までで、「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」しいう4つの地域を取り上げ、それぞれ古代から大航海時代までの歴史を配説していきます。5章以降から、いよいよ4つの地域が一体化する世界中に入ります。5章では大航海時代をメインに、6章、7章で近代のヨーロッパ世界が、様々な革命を通じて世界中に影響力を強めていく過程を解説します。
8章、9章で、近代のヨーロッパ世界に大きな影響を受けた中東・インド・中国などのアジア世界の変遷を解説します。
そして最後に、10章において第二次世界大戦後から現代につながる世界の歴史を解説する、という流れになります。

大航海時代以降、4つの地域が1つに合流する

私がかつて遊んでいたテレビゲームに、「前半は、複数の主人公がバラバラにストーリーを展開し、後半でそれらの主人公が集まって1つの物語をつくっていく」というロールプレイングゲームがありましたが、本書の構成も、同じようなイメージです。
まず、1章から4章までで取り上げる「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」が、「大航海時代」に出会うまで、それぞれどのような歴史を歩か、また、どのような特徴を持つ地域になったのかを皆さんの頭にできるだけ鮮明に描けるように解説していきたいと思います。
各地域には、気候風土に裏付けられた「個性」のようなものがあります。
たとえば、ヨーロッパは温暖な気候と生産力の高さをバックグラウンドに、有力な国が多く出現し、世界に大きな影響を及ぼしていきますうなものがあります。
中東は、砂漠に点在する多くの部族をまとめるイスラームの存在が欠かせないものとなります。
インドは宗教・民族・言語など、1つにまとまらない「多様性」が特徴となります。中国では、独裁的ともいえる強力な指導者が次々と登場します
各地域の「個性」をつかむことで、5章以降の内容が、より立体的に理解できるようになります。
そして各章の主人公が1つになった5章から、いよいよ世界が一体化して展開される「世界史」のお話になります。地域史だった1章から4章までと異なり、5章以降では、各地域のつながりがより密接に、複雑に絡み合うようになります。
本書では、そうしたストーリーもできるだけ一直線に把握できるように工夫をしています。

取り上げていない地域について

ホームルームの最後に、もう1つ、みなさんにお伝えしておきたいことがあります。本書では、できる限り平易に記述するために割愛した用語が多く、アフリカと東南アジア、朝鮮半島、日本など、取り上げていない地域もあります。また、各国の文化史についても割愛しています。
けっして、これらを世界史において学ぶ必要がないと私が考えているわけではありません。できるだけコンパクトな本にしたいという意図があり、紙面に限りがある中で、みなさんに、「数珠つなぎにした世界史」をよりわかりやすい形で解説することを重視した結果、本書の構成になりました。
今回取り上げなかった地域の歴史や文化史については、改めて別の機会でご紹介したいと考えています。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書【経済編】 公立高校教師YouTuberが書いた

お金の流れで学ぶ

本書は、世界史を数珠つなぎのように一つのストーリーにして解説した『一度読んだら絶対に忘れない世界史』の続編である経済編です。経済に焦点を当てて世界史を学ぶことで歴史の“ヨコ”のつながりを学ぶことができるので、前書で学んだ“タテ”のつながりと絡めることで世界史への理解を一層深めることができます。

山﨑圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/10/17)、出典:出版社HP

はじめに お金の流れから読む世界史のストーリー

2018年の春、私はYouTubeチャンネル「Historia Mundi」で配信している動画授業「世界史20話プロジェクト」のエッセンスを詰め込んだ「一彦読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』を出版しました。
内容は、ヨーロッパ、中東、インド、中国という4つの地域を「主役」にして、年号を用いずに古代から現代までを「1つのストーリー」で読み解いた歴史入門書です。

年代や地域がめまぐるしく変わる一般的な教科書と比べて、「とてもわかりやすい!」という評価をいただき、おかげさまでベストセラーになりました。

そして、今回、『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』の続編として、「経済編」を出版することになりました。
文化史、宗教史など、世界史には数多くのテーマがありますが、その中から、なぜ最初に「経済」を取り上げたのかといえば、それは、「お金」や「モノ」の流れを知ることによって、“ヨコ”の視点を持つことができるからです。
世界史は「地域ごとにどのような歴史をたどったのか」という“タテ”のつながりという視点と、「同じ時代の東西に、どのような歴史的なかかわりがあったのか」という“ヨコ”のつながりという視点、その双方の視点
で眺めることによって、理解をより深めることができるのです。
“タテ”の視点とは、古代から現代までをできるだけ一直線にして読み野いた第1弾の世界史本のことです。
一方の“ヨコ”の視点とは、「同時代の各地域の“つながり”に着目した世界史」ということになります。

世界全体を人間の身体に置き換えると、「お金」というのは血液にあたります。血液が様々な器官をめぐり、結びつけているように、お金も世界の様々な地域をめぐり、結びつけていきます。また、血液の流れが滞ると病気になるように、お金の流れが滞ることによって、大規模な戦争がおこることもあるのです。
そのため、“血液の循環”である経済活動(お金の流れ)にスポットをあてると、各地域の“つながり”をより鮮明に浮かび上がらせることができます。

本書で解説する「ヨコの世界史」の特徴を具体的に申し上げると、以下の3つになります。

① 古代から現代までを10の時代で区切り、各地域の同時代の“つながり”をストーリーで読み解く
② ストーリーの「主役」は、「お金の流れ」
③ 年号を使わない

本書は、第1弾を読んでくださった方々にとっては、「ヨコの視点で読む世界史」ですが、この本から読む方にとっても、「お金の流れで読み解く世界史」として、十分楽しんでいただくことができる内容になっています。|第1弾と同じく、「年号を使っていない歴史の本なんて……」と思う方がいるかもしれませんが、本書を一読すると、経済を背景とした事件や国家の「つながり」や「因果関係」が際立ち、より、ストーリーに集中できることがご理解していただけると思います。
本書が、さらに歴史を楽しく学びたい、教養をさらに深めたいという方々の少しでもお役に立てば幸いです。

山﨑圭一

山﨑圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/10/17)、出典:出版社HP

目次

はじめに
お金の流れから読む世界史のストーリー

ホームルーム①
世界史の視点には「タテ」と「ヨコ」がある!
ホームルーム②
世界史は「お金の流れ」で学べ!
ホームルーム③
本書の構成について

第1章 貨幣の誕生 古代オリエント・ギリシア・殷王朝(先史~紀元前4世紀)
第1章 古代オリエント・ギリシア・殷王朝あらすじ
古代オリエントの経済
農耕・牧畜が始まり、「経済の歴史」が始まる
硬貨の誕生
オリエントから始まった「貨幣」の長い歴史
ギリシアの経済
貨幣経済を大きく発展させたギリシア世界
アレクサンドロスの帝国
アレクサンドロスが広めたギリシアの貨幣
中国の貨幣の起源貝をお金として使っていた殷王朝

第2章 結ばれる古代帝国 ローマ帝国・秦・漢王朝(紀元前3世紀~3世紀)
第2章 ローマ帝国・秦・漢王朝あらすじ
ローマの成長と経済
ギリシアの貨幣経済を取り込み成長するローマ
地中海の覇権を握ったローマ
次第に「帝国」へと姿を変えたローマ
ローマの衰退
ローマの拡大が止まり、衰退が始まる
パルティアとササン朝
交易ルートを押さえたイランの王朝
クシャーナ朝とサータヴァーハナ朝
陸上交易・海上交易で栄えた2つの王朝
古代の東南アジア
海の道の「交差点」となった東南アジア
春秋戦国時代・秦漢王朝の経済
中国でも硬貨の歴史が始まった

第3章 イスラームとインド洋 イスラームの誕生と隋・唐王朝(4世紀~10世紀)
第3章 イスラームの誕生と隋・唐王朝あらすじ
中世ヨーロッパの経済
西ヨーロッパの混乱とビザンツ帝国の繁栄
イスラームの成立
巨大宗教は経済的な理由から成立した
アッバース朝時代のイスラーム
世界経済の中心となったイスラーム世界
アッバース朝・唐の時代の東南アジアト
ムスリム商人と中国商人が出会った東南アジア
隋・唐時代の経済
その後の中国経済に大きな影響を与えた隋・唐
草原の道とソグド商人
草原を結ぶもうひとつの「東西の道」
古代日本の経済
日本でも貨幣の歴史が始まった

第4章 進む貨幣経済 商業ルネサンスとモンゴル帝国(11世紀~14世紀)
第4章 商業ルネサンスとモンゴル帝国あらすじ
十字軍とその後のヨーロッパ
貨幣経済が復活し都市が発展した中世盛期
中世後期の農村
貨幣経済の浸透により変わる領主と農奴の関係
アイユーブ朝・マムルーク朝の経済
カイロがイスラーム経済の中心へ
宋王朝の経済
世界最古の紙幣が誕生した宋王朝
元王朝の経済
世界を結びつけるチンギス=ハンの子孫たち
平安後期から鎌倉時代の日本経済
日本の最大の輸入品は「銅銭」だった

第5章 世界をかけめぐる銀 大航海時代と明王朝(15世紀~16世紀)
第5章 大航海時代と明王朝あらすじ
イタリア商人とルネサンス
ルネサンスの「スポンサー」になった大富豪
大航海時代①ポルトガル
香辛料を求めてアジアに向かうポルトガル
大航海時代②スペイン
新大陸に到達し、スペインの飛躍が始まる
大航海時代③商業革命と生活革命
大航海時代で変わる人々の暮らし
宗教改革と経済
宗教改革が「経済の変化」も生んだ
中東・イラン・イントの王朝
繁栄を迎えたアジアの3王朝
明王朝の経済
大航海時代よりも前に起きていた明の「大航海」
鎌倉後期・室町時代の日本経済
鎌倉・室町と進む貨幣経済
世界をかけめぐる銀①ヨーロッパの「価格革命」
「カネ」と「モノ」の関係が大きく変化した
世界をかけめぐる銀②封建制の崩壊
変わる支配者たちの「立ち位置」
世界をかけめぐる銀③東ヨーロッパの農場領主制
銀をほしがる東ヨーロッパ世界の動き
世界をかけめぐる銀④マニラ=アカプルコ貿易
マニラを「結び目」にして世界がつながる
世界をかけめぐる銀⑤「海賊」たちの世紀
大航海時代は「大海賊の時代」だった
世界をかけめぐる銀⑥明の社会と銀
南から北へ、明王朝を流れる銀
世界をかけめぐる銀⑦日本の銀生産
経済史上に名を残す「銀の島」日本
世界をかけめぐる銀⑧スペインの覇権
世界の銀を手にした「太陽の沈まぬ帝国」

第6章 覇権国家の交代 オランダ・イギリスの繁栄と大西洋革命(17・18世紀)
第6章 オランダ・イギリスの繁栄と大西洋革命あらすじ
重商主義のはじまり
国をあげてお金を「稼ぐ」時代が始まった
オランダの商業覇権
世界の貿易を支配した「商売人国家」オランダ
イギリスの商業覇権
商業覇権国家イギリスの誕生
国債、保険、証券取引所
イギリスで発達した「お金」の様々な技術や制度
フランス・ドイツ・ロシアなどの経済政策
イギリスに追随したヨーロッパ各国の「事情」
奴隷貿易・三角貿易
大西洋を行き交う「黒い積荷」「白い積荷」
斜陽のオスマン帝国
銀の流入とともに始まったオスマン帝国の「斜陽」
斜陽のムガル帝国
様々な勢力が交錯し、弱体化したムガル帝国
清王朝の経済
安定した清王朝前半の統治と経済
江戸時代の日本
貿易相手を絞り込んだ江戸初期の日本
産業革命
世界の構造を変えた技術革新
アメリカ独立革命
イギリスの「重商主義」に植民地が団結した
フランス革命
「所有権の不可侵」をうたった革命の理念

第7章 拡大する「帝国」 産業の発展と帝国主義(19世紀)
第7章 産業の発展と帝国主義あらすじ
産業革命の広がり
次々と帝国主義に名乗りを上げた国々
ラテンアメリカの独立
次々に起きたもうひとつの「アメリカ」の独立
鉄道網の発展
「鉄の時代」の到来を告げた「鉄道の時代」
国際金本位制の形成
切断され、結びつけられる金と紙幣の関係
イギリスの自由主義改革
「規制緩和」を要求した資本家たち
ヴィクトリア時代
大英帝国は「世界の工場」から「世界の銀行」へ
帝国主義のフランス
イギリスを追った帝国主義のフランス
ドイツとロシア
独自の政策で力をつけるドイツとロシア
アメリカ南北戦争
アメリカが乗り越えた大きな課題
帝国主義の構造
絶え間ない「販路の拡大」を求めた資本主義国
労働問題と社会主義
経済発展の裏で発生した社会の矛盾
オスマン帝国の衰退
決定的となったオスマン帝国の衰退
インド帝国の成立
イギリスが直接支配した「最重要植民地」
清の衰退
アヘン戦争から始まった清の没落
明治維新
帝国主義時代の世界に漕ぎ出した日本
アフリカ分割
瞬く間にアフリカは列強に分割された
東南アジアの植民地化
東南アジアはタイを除いて列強の植民地に
ラテンアメリカと太平洋
経済的な従属が深まるラテンアメリカと太平洋
移民の時代
カネ・モノだけでなくヒトも大きく移動した
ベル・エポック
国カのショールームとなった列強各国の首都

第8章 恐慌から分断へ 2つの大戦と世界恐慌(20世紀の始まり~第二次世界大戦)
第8章 2つの大戦と世界恐慌あらすじ
清の半植民地化
列強により分割された「眠れる獅子」
第一次世界大戦前のヨーロッパ
経済的思惑も絡む「ヨーロッパの火薬庫」
第一次世界大戦
世界中を巻き込んだヨーロッパの戦争
新兵器とグローバリズム
戦争により技術が発展し、世界が一体化した
ロシア革命
世界初の社会主義国家の多難な幕開け
第一次大戦後のドイツ
大戦後のドイツを苦しめた莫大な賠償金
大戦後のアメリカ
「永遠の繁栄」と豪語されたアメリカの姿
大戦の影響を受けたアジア諸国の「変化」
崩壊した借金まみれの「砂上の楼閣」
各国の恐慌対策
恐慌対策の中で分断される各国の関係
ドイツの「生存圏」拡大と第二次世界大戦
恐慌がドイツを襲い、ヒトラーが登場した
日本の経済と大平洋戦争
日本を戦争に向かわせた「恐慌の連鎖」

第9章 超大国の綱引き 冷戦下の経済(第二次世界大戦~1980年代)
第9章 冷戦下の経済あらすじ
ブレトン=ウッズ体制
「盟主」アメリカを中心とした新しい経済体制
ソ連と東側の経済
ソ連がおろした「鉄のカーテン」
合戦の展開
ヨーロッパで展開された米ソの「綱引き」
ベルリン封鎖とベルリン空輸
ベルリンで起きた東西の「意地の張り合い」
戦後の中国
内戦によってできた「2つの中国」
戦後の日本
終戦を迎え冷戦構造に組み込まれた日本
「平和共存」と「再緊張」
刻々と変わる冷戦のステージ
第三世界の動き
独自の路線を模索したアジア・アフリカ諸国
アメリカの政策転換
世界に激震が走った2つの「ニクソンショック」
アジア経済
躍進するアジア経済と「プラザ合意」
社会主義国の変化
行き詰まりを迎えた社会主義の「理念」

第10章 一体化する世界 グローバリゼーションと経済危機(1990年代~現代)
第10章 グローバリゼーションと経済危機あらすじ
ソ連の崩壊
社会主義国の「盟主」ソ連が崩壊した
EUの成立
ECからEUへ、一体化が進むヨーロッパ
進む地域統合
並行する「グローバル化」と「地域統合」
現代の日本
日本をとりまく産業構造の変化と停滞
アジア通貨危機
アジアの通貨がマネーゲームの餌食となった
ユーロの発行
「小異を捨てて大同についた」ユーロの発行
リーマン・ショック
世界に広がったアメリカ発の経済危機
ギリシア経済危機
経済の一体化は財政悪化の「連帯責任」も生んだ
伸びる中国経済
市場経済を導入して伸びた中国経済
アメリカの現在
変化していくアメリカの「存在感」
経済のグローバル化
同時に進行する「格差拡大」と「平均化」
お金の歴史と仮想通貨
「データ」になりゆく新しいお金の姿

おわりに

山﨑圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/10/17)、出典:出版社HP

ホームルーム①
世界史の視点には、「タテ」と「ヨコ」がある!

前作で明らかにした「タテ」の世界史

「はじめに」でお話ししたとおり、2018年の夏に出版した『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』は、古代から現代まで、世界史を「タテ」に読み解いています。
地域や年代が目まぐるしく変わる一般的な教科書と違い、右図のように、「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」と、世界史の舞台を大きく4つに分け、できるだけ地域別に、視点を動かさずに世界史を“タテ”に見ていけるようにしたのです。
ヨーロッパから中東、インド、中国、世界の一体化、近代、現代までを“数珠つなぎ”にし、地域や王朝、国家などの「主役」の変化を最小限にとどめ、主語をできるだけ変えずに「1つのストーリー」で世界史を表現しました。
じつは、世界史には、この「タテ」の他に、「ヨコ」のつながりというのもあります。
「ヨコ」のつながりとは、具体的には、「同時期の東西の国の間で、何が起きていて、そして、どんなかかわりがあったのか」ということです。
世界史は「タテ」のつながりと「ヨコ」のつながりの両方を知ること、つまり、「タテ」「ヨコ」双方の視点をもつことが大切なのです。
では、「ヨコ」のつながりを知るためには、どうすればよいかというと、「お金の流れ(経済)」を「主役」にしたストーリーを読み解くことが17の手がかりになるのです。

ホームルーム②
世界史は「お金の流れ」で学べ!

第2弾は「ヨコ」の歴史

「カネは天下の回り物」というように、お金は世界を回りながら、各地域を結びつけていきます。
シリーズ第1弾の世界史では、ヨーロッパ、中東、インド、中国というように4つの舞台に分けましたが、それぞれが別々に存在している、というわけではなく、地域間には絶えず人々が行き来しており、お金やモノが移動していたのです。
高校の「政治・経済」の教科書には、「経済とは物資の生産から消費までの全過程や、その中で営まれる社会的な様々な関係をさす」とあります。
つまり、モノを含めた人間のすべての活動が「経済活動」というわけですが、その中心にあるのが「お金」であることは間違いありません。お金が誕生して以来、お金を得ること、豊かになりたいということは、人々や国家の最大の関心事でした。時に、より多くの富を得るために戦争を起こしたり、植民地を広げたりすることもありました。
したがって、「お金の流れ(経済活動)」にスポットライトをあてることで、世界史のヨコの“つながり”が見えやすくなるのです。
右の図を見てください。本書では「ヨコ」の歴史を説明するために、第1弾の「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」でお話ししたタテの流れを10の年代のまとまりで「輪切り」にし、そのまとまりごとに、お金やモノの流れを「主役」にしてストーリー化しています。
そのストーリーを数珠つなぎにつむいでいくことで、それぞれの地域の「ヨコ」の関係が理解できる、というわけです。

ホームルーム③
本書の構成について

世界史を「輪切り」にし、西から東へと視点を移動する

本書の構成は、世界史を大きく10のブロックに分け、そのブロックごみに西から東へと視点を動かしながら、ブロック内に位置する歴史的事件の「経済的背景」を説明します。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』と同じく、ストーリーを頭に残りやすくするために、年号はほとんど使用していませんが、本書では各時代を輪切りにする必要上から、「世紀」ごとに分けています(1つの事件が世紀をまたぐこともあるので、この分け方は厳密というわけではありません)。
第1章から第4章まではヨーロッパ、中東、インド、中国など、地域ごとに発展していく経済の状況と、その間をつなぐ商人のはたらきを中心に見ていきます。
第1章では貨幣経済が各地域で誕生したこと、第2章ではローマ帝国と中国の漢王朝という大国が登場し、ユーラシア大陸の国々の経済的な交流が深まったこと、第3章ではイスラームが誕生し、インド洋でイスラーム商人が活発な経済活動を行ったこと、第4章では中世後半のヨーロッパ世界と中国の宋・元王朝で貨幣経済が進んだことなどを紹介していきます。東南アジアや日本への経済的な影響にも触れています。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』では、ヨーロッパ、中東、インド、中国という4つの地域が一体化する大航海時代を迎える第5章がカギになりましたが、本書でも5章がカギになります。スペインやポルトガルなどの航海者が世界を結びつけ、メキシコやペルーの銀山で採掘された銀が世界をかけめぐります。銀は世界をまわり、世界の様々な物価や社会構造に大きな影響を与えました。
第6章以降は経済的な「覇権」を握る国家が登場し、世界の経済の中心的な役割を果たすようになります。
第6章では、「覇権」がスペインからオランダ、イギリスと交代していく様子と、アメリカ独立革命やフランス革命などの「大西洋革命」について扱います。この動きの中で株式会社や損害保険の仕組み、財産権の保暗さど、近代以降の経済の仕組みも次第に形づくられました。第7章は帝国主義の時代です。産業の発展は世界の植民地化を招きました。第8章は2つの世界大戦とその間の世界恐慌の様子を説明します。第9章は第二次世界大戦後からソ連の崩壊までを、アメリカとソ連による超大国間の「綱引き」で揺れる国々の様子がご理解いただけると思います。
そして、最終章の第10章では1990年代から現在までを取り上げ、グローバリゼーションの進行と世界に広がる経済危機の様子を解説します。
この本を通して、物々交換、硬貨から紙幣、キャッシュレスや仮想通貨に至るまで、刻一刻と変わる「お金」そのものの姿の変化ももう1つの「ストーリー」としてお楽しみいただけると思います。

「ヨコ」を知ると「タテの歴史」も楽しめる

本書は、高等学校の「世界史」の授業で学ぶ事件の背景を経済の面から説明した「歴史」の本です。
したがって、政治・経済の授業で学ぶような「経済学説」の説明や「仕組み」そのものの説明を省略した部分が多くあります。
しかし、本書で経済的な背景を知ることにより、政治・経済の授業で学ぶ内容の理解が進むようにもなるでしょうし、皆さんがこれまで学んできた世界史の知識の「背景はこうなっていたのか」という、新たな発見があり、「タテの歴史」の楽しみもより一層増えると思います。

山﨑圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/10/17)、出典:出版社HP

新版 一冊でわかるイラストでわかる図解世界史

歴史のドラマを再現

全110テーマをそれぞれ見開き1ページで解説しています。A4サイズの利を生かし、大きな図やグラフが用いられているので、詳細に書き込まれているのにすっきりしていて見やすくなっています。

成美堂出版編集部 (編集)
出版社 : 成美堂出版; 新版 (2020/8/5)、出典:出版社HP

さがしやすい わかりやすい 地域別 世界略年表

ここでは、世界のおもな国と地域についてどのような国家・勢力が変遷してきたかをまとめています。

世界勢力変遷図

目次

地域別世界略年表
世界勢力変遷図

第1篇
文明の誕生
文明の誕生「農業革命」と都市の出現で誕生した文明
第1章 オリエント「世界」の誕生
メソポタミア文明
シュメール人の都市国家建設から始まった文明
エジプト文明
2500年も繁栄し続けた古代エジプト王国
オリエントの統一
オリエントを統一した「世界帝国」の誕生
ユダヤ教の誕生2つの「世界宗教」を生んだユダヤ教
パルティアとササン朝ペルシア
東西交易で栄えたペルシアの帝国

第2章 地中海「世界」の誕生
ギリシア世界の誕生
ポリス社会の誕生で確立したギリシア世界
ペルシア戦争とペロポネソス戦争
対ペルシアの結束からポリス間の対立へ
アレクサンドロスの東方遠征
ギリシアからインドまで征服したアレクサンドロス大王
共和政ローマ
一都市国家ローマが地中海の支配者に
帝政ローマの誕生
三頭政治をへて誕生した帝政ローマ
ローマ帝国の繁栄パックス=ロマーナ、「ローマの平和」とよばれた時代
キリスト教の誕生
ローマ帝国中に広まり、ついにキリスト教を公認

第3章 南アジア「世界」の誕生
インダス文明インド古代文明を生んだ2つの大河
仏教の誕生
インドで生まれ、アジアに広まった仏教
ヒンドゥー教の誕生
インドの民族宗教ヒンドゥー教の誕生

第4章 東アジア「世界」の誕生
田中国初期王朝の誕生
黄河流域で生まれた中国古代王朝、股と期
春秋・戦国時代春秋五覇、戦国の七雄が争った戦乱の時代
秦・漢の中華統一
秦が統一し、漢が確立した中華世界の秩序
四秦の中国支配システム家の中国統一を可能にした始皇帝の中央集権システム
シルクロード
後漢とローマ帝国を結んだシルクロード

第2篇
融合する文明
四海のシルクロード
海上でも展開した東西世界の交流
第5章 東アジアの変容
教壇の英高
三国時代・五胡十六国
長い戦乱に苦しんだ国志の時代
南北朝時代
北の異民族王朝と南の漢民族王朝が並立
40年足らずで終わった隋の中国再統一
四唐「世界帝国」大唐帝国の誕生
四宋官僚が支配した帝国
北方民族の圧力に屈した
新羅の朝鮮半島統一
唐と結んで朝鮮を統一した新羅

第6章 イスラーム世界の誕生と拡大
イスラーム教の誕生
アラブ世界で生まれたイスラーム教
アラブ帝国
急激に拡大したアラブ帝国
イスラーム帝国
イスラーム教に則った「世界帝国」の繁栄
トルコ人のイスラーム化
イスラーム世界を支配したトルコ系王朝
オスマン帝国の誕生
ヨーロッパにも進出したオスマン帝国
ムガル帝国
インドにも誕生したイスラーム帝国
タージマハル

第7章 ユーラシア世界の再編
ビジュアル
モンゴル帝国
遊牧民がつくった史上最大の「世界帝国」
モンゴルを追い払い、中華帝国を回復した明
明時代の東アジア
明の東アジア支配に挑んだ豊臣秀吉
北方民族の帝国・清による中国支配

第8章 ヨーロッパの誕生
ゲルマン人の大移動
ゲルマン人の大移動で終焉した西ローマ帝国
フランク王国
フランク王国の誕生で成立した西欧世界
ビザンツ(東ローマ)帝国
1000年続いた東のローマ帝国
カノッサの屈辱
ローマ教皇の権威に対抗した王権
十字軍の遠征
十字軍の遠征で拡大した西欧社会
西ヨーロッパ封建社会
荘園制の解体で崩壊する封建社会
身分制議会の誕生
議会政治の源流となった身分制議会
百年戦争
百年戦争で強化された英仏の王権
モスクワ大公国
ロシアの基礎を築いたモスクワ大公国

第3篇
ヨーロッパ「世界」の時代
大航海時代以前のアメリカ大陸
高度な科学知識と技術のアメリカ大陸の文明
第9章 大航海時代
大航海時代
ヨーロッパ中心の世界を生んだ大航海時代
ポルトガルの繁栄インド航路の開拓で繁栄したポルトガル
スペインの繁栄
中南米を征服して繁栄したスペイン
三角貿易
大西洋を舞台に三角貿易が成立

第10章 近世ヨーロッパ
ルネサンス
西欧の文化を発展させたルネサンス
宗教改革
宗教改革で生まれた新しいキリスト教
スペインの没落
続かなかったスペインの栄華
オランダの繁栄
世界へ進出した商人国家オランダ
絶対主義の台頭
国王権力の強化で生まれた絶対王政
プロイセン・ロシアの台頭
台頭する新興国プロイセンとロシア
ピューリタン革命と名誉革命
2つの革命で生まれたイギリス議会政治

第11章 国民国家の出現
イギリスの産業革命
世界経済を変えたイギリス産業革命
アメリカ独立戦争
革命でもあったアメリカ独立戦争
フランス革命「国民国家」を生んだフランス革命
中南米の独立
フランス革命の影響でラテンアメリカが独立
ナポレオン戦争
フランス革命の理念をヨーロッパに広めたナポレオン
ウィーン体制
フランス革命前に逆戻りしたヨーロッパ
フランス七月革命・二月革命
2度の革命でウィーン体制が崩壊
ヴィクトリア時代
絶頂期を迎えた大英帝国の繁栄
イタリアとドイツの統一
ようやく統一を達成したイタリアとドイツ
ロシアの南下
凍らない海を求め南下するロシア

第12章 帝国主義の台頭
オスマン帝国の衰退
衰退し、解体へ向かうオスマン帝国
イギリス領インドの成立
イギリスに収奪される植民地インド
アヘン戦争
アヘンの密輸で侵される中国
太平天国とアロー戦争
列強の進出で弱体化する清朝
因主権国家「日本」の誕生
明治維新と国境・領土の画定
日清戦争
朝鮮半島をめぐり日本と中国が衝突
帝国主義の成立
世界を分割した帝国主義列強
日露戦争
列強の代理戦争だった日露戦争
辛亥革命
辛亥革命で中華民国が成立

第4篇
地球世界の形成
南北戦争
南北戦争をへて発展したアメリカ
第13章 世界戦争の時代
バルカン戦争とサライェヴォ事件「ヨーロッパの火薬庫」から始まった第一次世界大戦
第一次世界大戦
ヨーロッパ中を巻き込んだ史上初の世界大戦
ロシア革命
ロシアで世界初の社会主義革命成功
ソヴィエト連邦の成立
対ソ干渉戦争に「世界革命」で対抗
ヴェルサイユ体制
禍根を残した戦後国際体制
ワシントン体制
日本を牽制するアメリカの思惑
西南アジアの独立運動
トルコの近代化とインドの独立運動
中国の民族運動
国民党が軍閥を打倒し、中国を統一
世界恐慌とファシズム
世界恐慌で崩壊した戦後の国際協調体制
日中戦争
満州事変をきっかけに日中全面戦争へ
第二次世界大戦
史上最大の犠牲者を出した第二次世界大戦
国際連合の設立
戦勝国による戦後処理と国際連合の設立

第14章 東西冷戦の時代
東西冷戦時代米ソを中心とした東西対立の時代
第三世界の台頭
植民地の独立ラッシュで登場した第三の世界
中東戦争
ユダヤ人の国が生まれアラブとの対立が激化
ドル=ショックとオイル=ショック
世界経済をかえた2つの危機
イラン革命
世界に衝撃を与えたイスラーム教による革命
冷戦終結とソ連崩壊
東西対立が終わり超大国ソ連が消えた
中国の改革開放政策
共産主義から転換し急成長した中国

第15章 ポスト冷戦体制とグローバル化
ポスト冷戦のはじまり
超大国の「冷たい戦争」から世界各地で噴出する紛争の時代へ
地域統合
地域ごとに集まって安定と発展を目ざす
インターネットの拡大
世界を大きく変えたインターネットの力
アメリカの一極支配
冷戦後に最強国家となり世界を振り回したアメリカ
核問題
エスカレートする核兵器の開発競争

第16章 不安定化する21世紀
アメリカ同時多発テロ
アメリカを襲ったテロという新たな敵
経済大国中国の誕生
世界の覇権に挑む大国・中国
宗教の再登場対立が融和か再び存在感を増す宗教
多極化する世界
揺らぐ最強国アメリカと混迷化する世界
グローバル=リスク
地球規模で急速に広がる少世紀の危機
気候変動
全人類が向き合う課題
地球温暖化

用語索引

成美堂出版編集部 (編集)
出版社 : 成美堂出版; 新版 (2020/8/5)、出典:出版社HP

詳説世界史研究

『詳説世界史』に準拠した最も詳しい1冊

本書は世界史を500ページ以上にもわたり詳細に解説しており、内容的にも出来事を羅列するだけでなく、背景等も解説されているため一層世界史に関する理解を深めることができます。また、全編フルカラーで資料の写真も多々掲載されているため、これ一つで学習が可能な一冊です。

木村 靖二 (編集), 岸本 美緒 (編集), 小松 久男 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/12/3)、出典:出版社HP

まえがき

今を生きる私たちは、どこにいるのだろうか。時間軸でいえば,長きにわたる人類の歴史の最先端にいる。言い換えれば,私たちはときの流れが歴史に変わる瞬間を生きているのである。私たちはみな歴史と繋がっている。これはあたりまえのことだが,日々の生活のなかでは、ともすれば忘れがちになることである。空間的には多くの場合,日本のどこかにいるということになるだろう。しかし、そのどこかにしても,そこだけで完結する限られた空間ではない。例えばインターネットをみればわかるように、意識しているかどうかは別として,私たちはもはや世界大の空間と結びついている。現代世界に生起しているさまざまなことが,直接あるいは間接に私たちの生活に影響を与えているといってよいだろう。同じ世界の空気を吸っているのである。

グローバル化した現代世界の課題
それでは、現代の世界とは,どのような世界なのだろうか。これはもちろん人によって見方は異なるだろう。ただ,かなり広く共有されている見方というものはある。一例をあげてみよう。2015年9月,国連は「我々の世界を変革する――持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。世界が直面する深刻な課題を解決するために,2030年までに実現すべき目標とその方法とを定めたものである。これを踏まえて2016年1月には、17項目の持続可能な開発目標が発効した。これは、その英語表現Sustainable Development Goalsを略してSDGsとよばれる。この壮大なプロジェクトが前提としている問題、つまり現状認識はつぎのように記されている。

我々は,持続可能な開発に対する大きな課題に直面している。依然として数十億人の人々が貧困のうちに生活し、尊厳のある生活を送れずにいる。国内的,国際的な不平等は増加している。機会,富及び権力の不均衡は甚だしい。ジェンダー平等は依然として鍵となる課題である。失業,とりわけ若年層の失業は主たる懸念である。地球規模の健康の脅威,より頻繁かつ甚大な自然災害,悪化する紛争、暴力的過激主義,テロリズムと関連する人道危機及び人々の強制的な移動は、過去数十年の開発の進展の多くを後戻りさせる恐れがある。天然資源の減少並びに、砂漠化,干ばつ、土壌悪化,淡水の欠乏及び生物多様性の喪失を含む環境の悪化による影響は,人類が直面する課題を増加し,悪化させる。我々の時代において、気候変動は最大の課題の一つであり、すべての国の持続可能な開発を達成するための能力に悪影響を及ぼす。(外務省の仮訳を引用)

このように問題は多岐にわたり、かつ深刻である。これらの問題の解決には各国の利害を超えた協力と叡知の結集が必要であることはいうまでもない。

世界の今とこれからを考えるための世界史
ここで少し立ち止まって考えてみると,これらの問題の要因や淵源,あるいはその規模やことの成否は別として、同じような問題に直面した社会の経験や経験知は,これまでの世界史のなかに求められることがわかる。このことの意味は大きい。現代世界の課題を解決するにあたって、世界史は十分な参照に値するからである。
いくつかの例をみてみよう。貧困と不平等は、人類史を貫くテーマであるといってよい。それは古来の思想家が論じたテーマであり、また多くの歴史家が取り組んできたテーマでもある。その知見は,現代を考えるうえでも欠かすことはできない。ジェンダー平等は,歴史学でもこれまで実現されることがなく,そこに空白があったことは明らかである。近年ようやく,歴史の全体像を描くにはジェンダー視点が欠かせないことが主張されるようになった。ここは今後に期待するところが大きい。現代の紛争や集団的な暴力は,資源や権力をめぐる闘争や大国の策動だけで説明することはできない。その背景には多くの場合,アジア・アフリカ地域における,かつての植民地支配のような歴史的な構造が存在している。それを理解しなければ解決にいたることは難しい。

地球規模の健康の脅威といえば,14世紀にはいってユーラシア大陸の東西に蔓延したペスト(黒死病)が,各地の国家や社会に大きな打撃を与えたことも世界史は教えている。
気候変動は、それと知っていたかどうかは別として,人類が絶えず対応を迫られてきた課題にほかならない。それはある地域に社会・経済的な停滞をもたらすこともあれば集団の移動を促すことによって,それ自体が歴史的な事象の要因になることもあった。ただし、現代の気候変動は近代以降の大規模な工業化という人為的な要因が大きくかかわっているところに特徴がある。
自然災害もまた人々が絶えまなく各地で経験してきたものであり,必ずしも自然に起こったわけではなく、しばしば人為的な要因が絡んでいたことがわかっている。そして人々はそこからどのように立ち直り,あるいは復興できなかったのか,それも重要な知見である。3.11(2011年東日本大震災)以後,歴史研究者の目が,それまであまり顧みられることのなかった災害史に向けられるようになったのは心強いことである。

環境の悪化についていえば、私たちは現に世界第4位の内陸満であったアラル海の見る影もない縮小とその一帯の乾燥化を,この目でみているところである。それはソ連時代の度を越した開発,とりわけ綿花栽培の拡大が,パミール高山地帯の?お水を源とする2つの河川の水量を奪い、アラル海にそそぐ水が枯渇したところに原版があった。ソ連は,今年(2017年)でちょうど100周年を迎えるロシア革命で成立した国家である。初はまさに世界を変革することを意図していたが,このユートピア的な構想は結果として上最大ともいえる環境破壊を招いてしまったのである。このように,私たちは世界史からのことを学ぶことができる。

世界の一体化からグローバルへ
SDGsのもう1つの特徴は、地球規模の問題をともに考え、行動することをよびかけた点にある。その前提となるのは世界の一体化グローバル化という認識である。それでは、この世界の一体化とはいつ、どのようにして起こったのだろうか。これも世界史の問題である。一般に,世界の一体化は、ユーラシア大陸とアメリカ大陸との間の交流が始まった16世紀を起点に考えられているが,最近はそれに先立つ時代における動きにも関心がはらわれるようになった。例えば、13~14世紀にアフリカを含むアフロ・ユーラシア規模での政治、経済、文化にわたる父親。もたらしたモンゴル帝国の時代である。例えば、アデン港を拠点に多角的な交易をおこなていたイエメンでは、トルコ系の起源をもつ一地方王朝の君主が、14世紀後半にアラビペルシア語・トルコ語・ギリシア語・アルメニア語・モンゴル語からなる多言語辞音と、らせていた。その必要があったのだろう。また、この時代に集積された地理情報はアプリ大陸の存在も認識していたことがわかっている。世界の一体化は、このような過程を経てしだいに進展した。もっぱらヨーロッパのヘゲモニー(主導権)によって進んだわけではない。そして、世界の一体化とは行したことも事実である。それはグローバル化した現代においても変わるところはない。

長い歴史をとおして世界の一体化が進行したとすれば,そこには当然のことながら日本も含まれるはずである。日本は世界史の流れのなかでどのような位置にあり、外の世界とどのような関係を結び、そしてどのような役割をはたしてきたのだろうか。少しでも考えてみるつることがない。日本では長く,世界史と日本史とを別の科目として教え.まですか。大陸とは離れ,海に囲まれた日本列島という地理的な条件もあって,世界史日本中という二分法を自然に受け入れてきたのかもしれない。しかし,日本列島の人々も,世界の同じ時代の空気を吸って生きてきたのである。世界史と日本史とを分けて考えることはできない。日本史を世界史の流れのなかにおいてみれば,これまでみえなかったこトがみえてくるに違いない。これは,ともすれば自己完結しているかにみえる日本史をより客観的に考えるうえでも有効だろう。とりわけ19世紀後半以降の近代は,これまでの日本史世界史の枠を超えて考えることが大切である。これは現代の日本がどのようにしてできたのかを考えるうえで、欠かすことのできない姿勢だからである。

文化としての世界史
このように世界史の理解は,日本を含めた現代世界の直面する課題を考えるうえで有効である。あるいは、グローバル化した現代世界を生きていくためには欠かすことができないともいえる。これは,歴史学を含む人文学がいったい何の役に立つのかと問われることの多い現在,答えるべきことの1つかもしれない。しかし、すべての人がこのような問題意識をもって世界史を学ぶわけではない。冒頭に記したように、私たちはみな歴史と繋がっているとすれば、それこそ文字はもたずとも自分たちの集団の過去や記憶を語り継いでいた時代以来,歴史への関心は人間の存在に深く根ざすものともいえるだろう。ユネスコの主導する世界文化遺産は、その一例であり、登録された遺産はいまや世界大に広がっている。そこには現代の国家による歴史の資産化という面もあるが,訪問する人々の歴史的な想像力をかきたてていることは疑いない。一例をあげれば、アフガニスタンにあるバーミヤンの大仏像は、2001年にターリバーン勢力によって爆破されたが、東京藝術大学の研究チームは、そのみごとな天井壁画を復元することに成功した。これをみると、人はかつてこの地域で展開されていた壮大な文化交流の姿を実感することだろう。また今日、世界史に取材したアニメや漫画は広く受け入れられている。文化としての世界史は、人々の関心や興味を引かずにはおかないのである。

本書は,世界史に関心をもたれる幅広い読者を想定して編集されている。構成は、基本的に現行の高等学校教科書『詳説世界史』に準拠しており、最新の研究成果を取り入れながら、教科書の内容を深掘りするかたちで書かれている。対象が膨大である世界史の叙述はもとより多様であるはずであり本書はその一例にすぎない。また、読者にはどこからでも,関心でもたれたところから読んでいただきたい。本書が世界史理解の一助となれば幸いである。

2017年10月 編者

木村 靖二 (編集), 岸本 美緒 (編集), 小松 久男 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/12/3)、出典:出版社HP

目次

序章 先史の世界

第Ⅰ部
第1章 オリエントと地中海世界
①古代オリエント世界
②ギリシア世界
③ローマ世界
第2章 アジア・アメリカの古代文明
①インドの古典文明
②東南アジアの諸文明
③中国の古典文明
④南北アメリカ文明
第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の形成
①草原の遊牧民とオアシスの定住民
②北方民族の活動と中国の分裂
③東アジア文化圏の形成

第Ⅱ部
第4章 イスラーム世界の形成と発展
①イスラーム世界の形成
②イスラーム世界の発展
③インド・東南アジア・アフリカのイスラーム化
④イスラーム文明の発展
第5章 ヨーロッパ世界の形成と発展
①西ヨーロッパ世界の成立
②東ヨーロッパ世界の成立
③西ヨーロッパ中世世界の変容
④西ヨーロッパの中世文化
第6章 内陸アジア世界・東アジア世界の展開
①トルコ化とイスラーム化の進展
②東アジア諸地域の自立化
③モンゴルの大帝国
④東西の交流

第Ⅲ部
第7章 アジア諸地域の繁栄
①東アジア世界の動向
②清代の中国と隣接諸地域
③トルコ・イラン世界の展開
④ムガル帝国の興隆と東南アジアの交易の発展
第8章 近世ヨーロッパ世界の形成
①ヨーロッパ世界の拡大
②ルネサンス
③宗教改革
④ヨーロッパ諸国の抗争と主権国家体制の形成
第9章 近世ヨーロッパ世界の展開
①重商主義と啓蒙専制主義
②ヨーロッパ諸国の海外進出
③17~18世紀ヨーロッパの文化と社会
第10章 近代ヨーロッパ・アメリカ世界
①産業革命
②アメリカ独立革命
③フランス革命とナポレオン
第11章 欧米における近代国民国家の発展
①ウィーン体制の成立
②ヨーロッパの再編と新統一国家の誕生
③南北アメリカの発展
④19世紀欧米の文化
第12章 アジア諸地域の動揺
①オスマン帝国支配の動揺と西アジア地域の変容
②南アジア・東南アジアの植民地化
③東アジアの激動

第Ⅳ部
第13章 帝国主義とアジアの民族運動
①帝国主義と列強の展開
②世界分割と列強の展開
③アジア諸国の改革と民族運動
第14章 二つの世界大戦
①第一次世界大戦とロシア革命
②ヴェルサイユ体制下の欧米諸国
③アジア・アフリカ地域の民族運動
④世界恐慌とファシズム諸国の侵略
⑤第二次世界大戦
第15章 冷戦と第三世界の独立
①戦後世界秩序の形成とアジア諸地域の独立
②米ソ冷戦の激化と西欧・日本の経済復興
③第三世界の台頭と米ソの歩み寄り
④石油危機と世界経済の再編
第16章 現在の世界
①社会主義世界の変容とグローバリゼーションの発展
②途上国の発展と独裁政権の動揺
③地域紛争の激化

読書案内
索引

木村 靖二 (編集), 岸本 美緒 (編集), 小松 久男 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/12/3)、出典:出版社HP

新 もういちど読む 山川世界史

世界史の学び直しができる

本書は、高校の世界史で最もメジャーな山川出版社の教科書の内容を、一般向けにまとめ直した本です。国際政治が大きく変動する現代において、世界の歴史を知っていることは、現状を理解するために重要な要素となっています。改めて世界史に興味を持った方や学び直したい場合には、かなり参考になります。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

ふたたび世界史を学ぶ読者へ

テレビや新聞などのマスメディアでは世界各地の政治・経済・社会・文化のニュースが毎日報道されています。ソ連・東欧の社会主義圏が消滅したあと,市場経済が世界を席巻しましたが,21世紀初頭にはアメリカに端を発する世界的金融危機が発生して,アメリカ一極主義は破綻をみせ,民族や宗教にかかわる紛争もたえまなく続いています。大量生産・大量消費の生活が,環境に対する負荷を増大させています。発展途上国の人口は爆発的に増加し,飢餓の問題が進行している一方で,先進国では少子化対策が急務となっています。芸術や学問分野でも新しい才能がつぎつぎとあらわれ、新しい技術や学説が登場しています。世界は動いているのです。これからもまちがいなく動いていくでしょう。しかし、いったいどこに向かっているのかは不明瞭です。

毎日の仕事に忙殺されている生活のなかでは、ゆっくり時間をかけて世界のみちすじを考えることはなかなかできません。ほんらい初等教育から高等教育までの学校教育が、これらを学び,思索する時期にあたっているのですが、現実の仕事を含めたさまざまな状況や問題を経験していない生徒・学生たちの学ぶ視点にはおのずから限界があり、受け身の場合が多いのではないでしょうか。むしろ、仕事に全力を尽くした日々が一段落した人。いま現実の社会に立ち向かっている人、これから新しい道を歩もうとする人のほうが,問題意識をもち,鋭い思索の切り口をもっているはずです。いったん立ち止まって過去を振り返り,その成果や問題点を整理し,将来の見取り図を描いてみることは決して無駄な作業ではないと思われます。

本書は以前教科書として使われていた『世界の歴史(改訂版)』をベースにしていますが,一般の読者を対象として記述を見直し,時代に即応した簡潔かつ明確なかたちに改めました。さらに,現代の理解の手助けになるようなテーマを選択してコラムとし,解説を加えています。誰にでも読みやすく、1冊で世界史の全体像を把握できる書物です。日々のニュースの背景がよくわかるようになるはずです。本書が歴史のみちすじの理解と,将来像の構築の一助となることを願っています。

改訂版にあたって

今回の改訂では、本文を新しい学説にそって修正し、コラムの数を増やしたうえで、テーマの内容を一新しました。新しいコラムでは新しい歴史・人物像を提示し、グローバリズム・ポピュリズム・領土問題などの時事問題を理解するための基礎的背景を解説しています。この改訂版が、読者の現代理解の手助けになることを願っています。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

目次

序章 文明の起源

第Ⅰ部 古代
第1章 古代の世界
1 古代オリエント世界
2 古代ギリシアとヘレニズム
3 古代ローマ帝国
4 イランの古代国家
5 インド・東南アジアの古代国家
6 中国古代統一国家の成立
7 内陸アジア
8 南北アメリカ文明

第Ⅱ部 中世
第2章 東アジア世界
1 中国貴族社会の成立
2 律令国家の成立
3 中国社会の新展開
4 北方諸民族の活動
5 中華帝国の繁栄
第3章 イスラーム世界
1 イスラーム世界の成立
2 イスラーム世界の変容と拡大
3 イスラーム文化の発展
4 インド・東南アジアのイスラーム国家
第4章 ヨーロッパ世界
1 西ヨーロッパ世界の成立
2 中世の東ヨーロッパ
3 中世後期のヨーロッパ

第III部 近代
第5章 近世ヨーロッパの形成
1 ヨーロッパ世界の膨張
2 近代文化の誕生
3 近世の国際政治
4 主権国家体制の確立
5 大革命前夜のヨーロッパ
第6章 欧米近代社会の確立
1 アメリカの独立革命
2 フランス革命とナポレオン
3 産業革命
4 ウィーン体制とその崩壊
5 ナショナリズムの発展
第7章 アジアの変動
1 アジア社会の変容
2 西アジア諸国の変動
3インド・東南アジアの変容
4 東アジアの動揺

第IV部 現代
第8章 帝国主義時代の始まりと第一次世界大戦
1 帝国主義の成立と列強の国内情勢
2 植民地支配の拡大
3 アジアの民族運動
4 列強の対立激化と三国協商の成立
5 第一次世界大戦
第9章 ヴェルサイユ体制と第二次世界大戦
1 ロシア革命とヴェルサイユ体制
2 大戦後のヨーロッパとアメリカ
3 アジアの情勢
4 世界恐慌とファシズムの台頭
5 第二次世界大戦
第10章 現代の世界
1 二大陣営の対立とアジア・アフリカ諸国の登場
2 米ソの動揺と多元化する世界
3 20世紀末から21世紀へ

世界史年表
ヨーロッパ人名対照表
索引

コラム
洞窟絵画
農耕の起源

第I部 古代
ハンムラビ法典
ギリシアの民主政
奴隷制度
ローマの平和(パクス・ロマーナ Pax Romana)
インダス文明とその衰退原因
仏像の成立
ヒンドゥー教
インド洋ネットワーク
東西交渉Ⅰ
草原の民の生活と文化

第Ⅱ部 中世
書芸術の新展開 王羲之と顔真卿
さまざまな復元船
科挙の功罪
飲茶(喫茶)風習
唐と宋の時代の都市のちがい
「世界の記述』(『東方見聞録』)と日本
銀による世界の結びつき
イスラーム教の特質
スンナ派(スンニー)とシーア派
多民族・多宗教国家オスマン帝国
イスラーム教と男女の平等
バイユーのタペストリ
修道会のはたした役割
黒死病
ロマネスクとゴシック
東西交渉II

第Ⅲ部近代
近世とは
生物交換と「伝統文化」
伝染病の流行(黒死病・天然痘・結核・コレラ)
宗教改革とメディア
中世から現代までの戦争
移動宮廷
啓蒙思想と社会
北アメリカの先住民 ネイティヴ・アメリカン
パリの歴史
リンカンの奴隷解放宣言
民族主義と伝統文化
カースト制度の弊害
華夷思想にもとづく政治経済
中国の半植民地化

第Ⅳ部 現代
移民の流れ
やり直されたハワイ併合
東アジアのナショナリズムの一つの進路
ジャポニスムの背景
パレスチナ問題の淵源
日本の植民地統治
民族資本家の役割
北方領土問題
現代戦争とその破壊力
文化大革命
ドル・ショック
ソ連と中国の社会主義
南シナ海・東シナ海問題
EUの現状と将来

ひと
少年王 ツタンカーメン
大帝国を創設 アレクサンドロス大王
教父アウグスティヌス
儒家を批判 墨子
中国の礎を構築 始皇帝
張霧と絹の道
女性皇帝 則天武后
清朝の名君 康熙帝
尊厳で残酷 カール大帝
ローマ帝国の復興 ユスティニアヌス帝
ミケランジェロと女性
エリザベス1世と肖像画
広がる革命運動の群像
ルイ16世の知られざる素顔
人民を優先 ロベスピエール
協同組合運動の父ロバート・オーウェン
カール・マルクスとイギリス
ヨーロッパの祖母 ヴィクトリア女王
西太后の真価
孫文の関連史跡
巧妙な大衆操作 ムッソリーニ
病魔を克服 フランクリン・ローズヴェルト
ヒトラーの二面性
鋼鉄の人 スターリン
田舎のおじさん ホー・チ・ミン

新常識
黄河文明から中国文明へ
倭寇
華僑・華人・華裔
琉球王国
近代世界システム
三つのルネサンス
気候変動と「経済的旧体制」
二重革命・複合前
近代の小道具 ウィーン会議の再評価さ
イスラーム主義
西洋のアジア観 オリエンタリズム
20世紀とは何か
ポピュリズム(populism 人民王験・大衆主義・大衆迎合主義・民衆主義)
「アンネの日記」と「私は証言する」
地域主義(リージョナリズム Regionalism)
クリミヤ半島の歴史

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

序章 文明の起源

人類の出現

人類が他の動物ともっとも大きくちがう点は,道具を使って労働し,生産活動をいとなむことである。人類は両足で直立し、自由になった手で道具を使って自然に働きかけ、長年月のあいだに高度で複雑な文明をきずきあげた。
歴史の研究は、この文明の発展のあとを,おもに文字の記録によりながらたどる学問であるが,人類が記録を残すようになる以前には,数百万年におよぶ長い先史時代が続いた。
最古の人類(猿人)がはじめて出現したのは、今から約700万年前のアフリカであった。約240万年前には原人とよばれるかなり進んだ人類があらわれ,さらに約60万年前,より進化した旧人が出現した。この長期のあいだに、寒冷な氷期と比較的温暖な間氷期とが数回くりかえされ,きわめてゆるやかではあったが,人類の脳容積はしだいに大きくなり,生活も着実に進歩した。この時期の人類は、洞穴や岩かげに住み,採集や狩猟によって生活し,打製石器(旧石器)を使用した。また長い経験をとおして、動物の骨や角でつくった骨角器や火の使用もおぼえ,死者の埋葬などの宗教的な風習もめばえてきた。これらの人類は,現在の人類(現生人類)と異なる種に属し,化石人類と総称されている。
現生人類(新人)は約20万年前に出現した。彼らは石刃や鉄などのするどい石器をつくり、投槍や弓矢を使用した。骨角器も銛や釣針に利用され、狩猟や漁労の獲物が増大した。彼らが獲物の多いことをねがって洞穴の壁などに描いた動物や狩猟の絵画は、人類最古の芸術品でもある。このように打製石器を使って採集・狩猟をおこなった時期を旧石器時代とよぶ。
1万年前頃から気候が温暖にむかい、海陸や動植物の分布が現在に近い状態にかわってきた。人類はこの新しい環境に適応しようと努力し,その結果磨製石器(新石器)の使用や犬の家畜化がはじまり,生活はさらに進歩した。

洞窟絵画

フランス西南部のラスコー洞窟絵画やショーヴェ洞窟絵画,スペインのアルタミラ洞窟絵画,アルジェリアのタッシリ・ナジェール洞窟絵画などには、旧石器時代の人類が描いた岩絵が残されている。これらの岩絵を描いた人びとは狩猟採集民で、野生動物を追いかけたり、植物を採集したりと,自然の恵みをもらって生きていた。その彼らがなぜ岩絵を描いたのか,その理由は明確ではない。現代人が考えるような芸術行為ではないにしても、人間が初めて他の動物とは異なった行動をとった点に大きな意
義をもっている。
スペインのアルタミラ洞窟絵画の場合、迷い犬を探していた猟師が地下に通じる狭い入口を発見したことが、岩絵の発見につながった。20頭以上の野生生,馬,鹿,イノシシなどの動物が描かれ、場所によっては人間や記号,線のようなものもみられる。
フランスのラスコー洞窟絵画の場合は、4人の少年が渓谷で迷子になった犬を探していて、小さな穴をみつけ、その穴を広げて洞窟内部の動物の壁画を発見した。このあと専門家が調査して旧石器時代のものであることが明らかになった。その数は600点余の絵,1500点余の彫刻からなり,野生牛、家畜牛,鹿などが,色をかえて描かれている。
フランス南部のショーヴェ洞窟(ショーヴェは発見した学者の名前)では,260点の動物画がみつかっており、その総数は300点をこえるとみられている。描かれている動物は、野生牛,馬,サイ,ライオンなど13種類あり,そのなかにはフクロウやハイエナやヒョウやマンモスなど、珍しい動物が描かれている。
アルジェリアのタッシリ・ナジェールの場合は、偵察していたフランス軍のラクダ部隊が岩絵の存在を報告したのがきっかけで、その後専門家が調査にはいって分析が進み、主題によって四つの時期に分類され、それぞれがサハラの気候変動を反映していることが明らかにされた。すなわち,初期の岩絵(前8000~4000年頃)は緑が豊かな環境であったことを示し、紀元前後以降の岩絵からは、馬での往来が不可能なほど乾燥化が進行したことが示されている。

農耕・牧畜の開始

人類が農耕や牧畜生活にはいったことは、自然を積極的に利用して,自力で食糧生産をはじめたことを意味し,人類の進歩にとって画期的なことであった。
最初の農耕・牧畜生活は、西アジアからはじまった。地中海東岸から北イラク・イラン西部にかけての地域には、野生の麦類や、家畜として飼うのに適した野生のヤギ・羊・豚などが存在した。そのため西アジアの人びとは、この有利な条件を利用して,前9000年頃から他にさきがけて、麦の栽培と食肉用の家畜の飼育をはじめるようになった。また磨製石器とともに土器や織物をつくり,土や日干し煉瓦の小屋をたて、集落を形成した。こうした農耕・牧畜とともにはじまる新しい時代を新石器時代といい,この大きな変化を新石器革命ともよぶ。以来今日まで,人類の生存は基本的に農耕・牧畜にささえられてきたのである。

農耕の起源

西アジアでは約1万1500年前頃から,住居が洞窟ではなく地上にもつくられるようになり、約9000年前から麦の栽培とヤギ・羊・牛などの飼育がはじまった。少し時代はくだるが、西アジアのほかにも世界の各地で農耕と牧畜がはじまった。遅くとも8000年前までには、中国の黄河流域ではアワとキビ,長江流域ではイネが栽培されるようになった。中央アメリカでは9000年前にカボチャやヘチマが栽培され、さらにトウモロコシもつくられるようになった。このほか、東南アジアや西アフリカなどでも独自にその地に適した植物の栽培がはじまった。
その最初のきっかけは、約1万4000年前頃に地球の寒冷期がおわり、温暖化がはじまったことであった。この気候変動により動植物の生息域が大きく変動した結果、繁茂する植物がある一方で、大型の動物のように移動を余儀なくされるなかで絶滅にしかし、1万2000年前頃にもう一度急激な寒冷期が到来すると,野生の有用植物の分布域が縮小し、人びとは食料不足に陥ったようである。そしてその際,西南アジアでは定住化傾向を強めていた人びとが、利用していた野生の植物をみずから植えて栽培をはじめたとされる。つまり、農耕を主とした食料生産のはじまりは、後氷期の変化する環様への対応の結果としてうまれたのである。新しい環境への適応として,野生の食材糖を節的に集が利用する生業形態を認したところで農耕の道が開かれた。
農耕の起源については乾燥によって人間・動物のオアシスへの集中が進み、人間と動植物との関係ができあがったとするオアシス起源説,流域でくらすうちに植生に詳しくなって総語がはじまったとする河川流域起源説。人口増加によって中央から周縁に流出した人びとが、野生資源の少ない土地で同レベルの生活を保つために栽培をはじめ、それがやがて中央へ帰るという周縁起源説などがある。

社会の発達

初期の農耕は,自然の雨にたよるだけで、肥料をほどこさない略奪農法であったから,人びとはひんぱんに移動する必要があり,集落も小規模であった。しかし大河を利用する灌漑農法に進むにつれて,生産は増加し人口も増大した。また大河の治水・灌漑には多数の人びとの協力が必要なため、集落の規模は大きくなり,やがて都市が形成されていった。
こうした過程とともに社会はしだいに複雑になった。もともと集落は,同じ血縁であるという意識で結ばれた氏族を単位としていたが,生産がふえ,分業が進むと,その内部に貧富や強弱の差がうまれた。
この変化は,金属器の使用の開始によってさらにうながされた。前3500年頃以後,オリエント(「東方」の意,現在の西アジア)で青銅器がつくられ,道具や武器などに使用されはじめた。そして神殿を中心に,城壁をめぐらした都市国家が成立した。生産にたずさわらない神官や戦士は貴族階級となり、そのなかから王がでて一般の平民を支配し,征服された人びとは奴隷とされて階級と国家がうまれた。また都市国家では,神殿や王への貢納や交易の記録に用いた記号から文字が発達した。このような文明の進歩は、前1500年頃はじまった鉄器の使用により,ますます急速に進むのである。

文明の諸中心

前3000~前2700年頃,農耕文化は,ティグリス川・ユーフラテス川流域に多くの都市国家をうみだし、ナイル川流域でも前3000年頃統一国家がうまれた。このオリエントの文明は東西に伝わり,西方ではエーゲ文明の発生をうながし,東方インドでも前2600年頃インダス川流域に青銅器をもつ都市国家が成立した。
また前6000年頃までに,黄河の流域ではアワなどの雑穀を中心としまた長江の流域では稲を中心として、粗放な農耕がはじまっていた。中国大陸北部の黄河流域の黄土地帯では,前5千年紀(前5000~前4001年)に磨製石斧と彩文土器(彩陶)を特色とする農耕文化がおこった。前3千年紀には大集落の都市()が形成され,黒色の三足土器(黒陶)や灰色の土器(灰陶)がさかんに使用された。
なお、アメリカ大陸では、ベーリング海峡をわたって移動したアジア系の人びとが,前1000年頃からオリエントに似た古代文明をつくった。

人種と民族・語族

人類は新石器時代にはいるころから,その居住環境によって身体の特徴のちがいがはっきりあらわれてきた。人類を身体の特徴によって分類する場合に,それを人種という。現代の人種はほぼ3種(モンゴロイド,コーカソイド,ネグロイド)にわけようとする考え方がある。しかしこれらは、現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)という同一の種に属し,根本的になんらの相違もない。
人類を分類する場合に,民族という言葉を用いることもある。これは主として言語や,また社会・経済生活や習俗,すなわち広い意味での文化で分類するときに使う。一方で共通の言語からうまれた同系統の言語グループを語族とよぶ。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

教養としての「世界史」の読み方

歴史に学ぶ

本書では、著者が考えるグローバルスタンダードとしての世界史の教養を身につけるための「7つの視点」に沿って解説されています。著者がローマ史を専門としているので、ローマ史との比較も多く見られ、新しい視点で歴史を学ぶことができる一冊です。

本村 凌二 (著)
出版社 : PHP研究所 (2016/12/17)、出典:出版社HP

はじめに

しばしば「日本史は好きだが、世界史はどうも……」と耳にします。とはいえ、昨今では、外国を訪れる機会もあるし、来日する外国人も増えてきました。イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙がわが国の出来事のように報道され、過激派によるテロ活動も刻々と伝わってきます。

もはや海外の出来事に無関心ではいられなくなったせいか、ここ十年ほどの間に世界史に対する関心が高まっている気がします。「世界史」と銘打つ本も数多く出されており、それなりに読まれていると聞いています。
しかしながら、私の印象では、これらの語り手の多くが歴史家ではないという点は気になるところです。これが医学や物理学の話になると、まずは専門家が出てくるはずです。ところが、歴史となると、広く理解しやすいせいか、専門の歴史家が前面から退いているように見えます。

ここでいう歴史家とは、実証史学の訓練を受けた狭義の研究者という意味です。これらの歴史家の多くは自分の狭い領域に閉じこもって、専門を異にする他の時代や地域について口を挟みたくないという気持ちがあるようです。間違ったことを言うのを憚るという良心のささやきはよく理解できます。

しかしながら、狭義の歴史家だからこそよく見える出来事もあるはずです。筆者は狭義の歴史家としてはローマ史の研究者ですが、ときには現代に生きる日本人として狭義の専門をこえて語るのも恥じるべきではないと思っています。専門研究と人生の経験を積み重ねた自分だからこそ視界にはいる歴史もあるはずです。それについて世界史という文脈で考えることも大切だと思います。

異国の過去の出来事も、自分の生まれ育った国と比較すればわかりやすいところがあります。たとえば、ローマ帝国の社会は江戸時代後期の社会と並べてみると理解しやすくなります。ローマも江戸も人口一○○万人ほど。清潔な浄水も配慮され、公衆浴場や銭湯がさかんであり、ローマでは風刺詩、江戸では川柳・狂歌がもてはやされ、識字率も高かったといいます。そういう目で見れば、現代の日本人にもローマ社会が身近に感じられてくるのではないでしょうか。
このような比較に気づくのも、ローマ史を専門とする日本人だからこそだと言えます。広く世界史を見渡すことも大切ですが、歴史上の出来事をどのように読み解いていくかはさらに重要な姿勢になります。

文字が開発され、人類の文明史が始まって五千年が経ちました。しかし、その期間の四千年は古代だったのです。とくにローマ帝国に流れこむ地中海世界の歴史は人類にとって計り知れない意味をもっています。この地中海世界の文明史を基軸にしながら世界史を見渡せば、たんなる鳥瞰図とは異なる「世界史の読み方」ができるはずです。
もちろん誰であれ興味をいだき、歴史の意義を感じる人が発言することは悪いことではありません。本書では古代史を専門とする歴史家が解読する世界史の一例を示したつもりです。この試みが「専門外の領域には口を挟まず」という現在の傾向に一石を投じることになれば幸いです。

本村凌二

本村 凌二 (著)
出版社 : PHP研究所 (2016/12/17)、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章 「歴史に学ぶ」とは何か?――愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
グローバルスタンダードの「教養」とは何か
なぜ人は「歴史に学ぶ」ことができないのか
トルストイの痛烈な歴史家批判
「教養」を身につけるための七つの視点
なぜ、今「世界史」がブームなのか

第1章 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか――文明の発達から都市国家と民主政の誕生まで
「文明は都市」「文化は農業」と密接に結びつく
「四大文明」が通用するのは日本人だけ
文明発祥に必須な条件とは?
恵まれた環境に文明は生じない
ローマ人と日本人が持つ特異で稀な能力とは?
ソフィスティケートの真髄は「誠実さ」にある
都市国家はどのように誕生したのか
古代ギリシアの民主政は、戦争を機に生まれた

第2章 ローマとの比較で見えてくる世界――ローマはなぜ興隆し、そして滅びたのか
オバマ大統領と皇帝セプティミウス・セウェルスの共通点
ハード・パワーの衰退とソフト・パワーの繁栄
ローマは、なぜ帝国になりえたのか――ギリシアとローマの違い
ローマ史を考察する価値
世界を席巻した大英帝国もローマに学んだ
自らを演出したローマ皇帝、神秘性を重んじるアジアの皇帝
文明度はローマを基準に考える――古代ローマと江戸の上下水道
「名誉心」が国家を支えた――「武士道」と「父祖の遺風」
ローマ帝国はどうして偉大になったのか――「ローマの寛容について」
「寛容」で成長したローマは「傲慢」で滅ぶ
「知識」のギリシア、「お金儲け」のカルタゴ、「勝利」のローマ

第3章 世界では同じことが「同時」に起こる――漢帝国とローマ帝国、孔子と釈迦
「ザマの戦い」と「垓下の戦い」は、同じ前二〇二年に起きた
ローマ帝国と漢帝国を襲った「三世紀の危機」
なぜ教養として「歴史の同時代性」を考えるのか
「アルファベット、一神教、貨幣」が同時代に誕生した
ソクラテス、ゾロアスター、ウパニシャッド、釈迦、孔子の枢軸時代
マルコ・ポーロを超える、東西発見の功績を成し遂げた人物とは?
「産業革命」はなぜイギリスで起き、アジアで起きなかったのか

第4章 なぜ人は大移動するのか――ゲルマン民族、モンゴル帝国、大航海時代から難民問題まで
人類史は民族移動とともにある
民族移動にはパターンがある
古代の地中海世界は「近代的」だった
大航海時代による大規模移民
奴隷制度は人為的な民族移動となった
ユグノーの弾圧がオランダの興隆に繋がった――宗教弾圧による民族移動
「ゲルマン民族の大移動」はヨーロッパ世界を一変させた
日本人の常識からではわからない騎馬遊牧民の行動
今、欧米人は異民族が多数派になる恐怖を感じている
民族移動がもたらす価値観の対立が国家を揺るがす
ウクライナ問題はなぜ解決できないのか

第5章 宗教を抜きに歴史は語れない――一神教はなぜ生まれたのか
日本人にはわかりづらい宗教の力
かつて人は神々の声に従って行動していた
占いは「神々の声」の代用品
二分心は科学的にあり得るのか
初めての近代人オデュッセウス
人はなぜ唯一神を必要としたのか
古代世界の分岐点
一神教の誕生――古代エジプトのアテン神信仰
ユダヤ教はなぜ普及しなかったのか
宗教対立は一神教の宿命
イスラム教対キリスト教という構図の嘘
ローマは欧米人の自負心の源である
戦争は今のままの宗教ではなくならない

第6章 共和政から日本と西洋の違いがわかる――なぜローマは「共和政」を目指したのか
プラトンは独裁政、アリストテレスは貴族政を推奨した
ギリシアで民主政が評価されなかった理由
ギリシアは内紛が多かったので大国になれなかった
古代ローマの共和政は「王者の集まりの如く」だった
ローマ人はなぜ「権威」を大切にしたのか
なぜアテネ・スパルタではなく、ローマのみが強国になれたのか
ローマとヴェネツィアから見る共和政のメリットとデメリット
日本に共和政が根づかない理由
社会主義国が「共和国」を名乗る理由

第7章 すべての歴史は「現代史」である――「今」を知るために歴史を学ぶ
人に読まれない「歴史」は何の意味もない
歴史に学ぶと未来が見えてくる
中国が推し進める中華民族という虚像
なぜ中国では民主主義が根づかないのか
世界初!国内植民地政策
中世はなぜ暗黒時代と言われたのか
世界史における二つの暗黒時代
すでに第三次世界大戦は始まっている
イギリスのEU離脱の背景にあるのはドイツへの不信感
なぜEUはギリシアを見限れないのか
民族の繋がりを無視した国境が招いた悲劇
平和と繁栄が続くとなぜ人は退廃するのか

おわりに

本村 凌二 (著)
出版社 : PHP研究所 (2016/12/17)、出典:出版社HP

ビジュアル版 経済・戦争・宗教から見る教養の世界史

3つの視点で読み解く

各時代を「経済」、「戦争」、「宗教」の3つのトピックに分けて見開き1ページずつで解説した一冊です。ページの半分ほどは地図や写真に割かれているので視覚的にもわかりやすくなっています。表題の通り「教養」が身につけられるほか、世界史の入門書としてもおすすめです。

飯田育浩 (著)
出版社 : 西東社 (2019/11/11)、出典:出版社HP

目次

1章 古代
古代のさくいんmap
前26世紀
クフ王のピラミッド建造
前1750年頃
ハンムラビ法典
前1286年頃
カデシュの戦い
前1000年頃
イスラエル王国の誕生
ビジュアル特集
『旧約聖書』とは
前7世紀
貨幣の誕生
前6世紀頃
仏教の誕生
前5世紀
儒教の誕生
前431年
ペロポネソス戦争
ビジュアル特集
世界の貨幣の歴史
前333年
イッソスの戦い
前221年
秦の中国統一
前3世紀
ポエニ戦争
前49年
ローマ内戦
30年頃
キリスト教の誕生
ビジュアル特集
『新約聖書』とは
1世紀後半
仏像の誕生
135年
ユダヤ人の離散
208年
赤壁の戦い
313年
ミラノ勅令
4世紀
ヒンドゥー教の定着
476年
西ローマ帝国の滅亡

2章 中世
中世のさくいんmap
555年
東ゴート王国の滅亡
589年
隋の中国統一
610年頃
イスラム教の誕生
ビジュアル特集
聖地・エルサレム
645年
玄奘の帰国
661年
ウマイヤ朝の成立
755年
安史の乱
800年
カールの戴冠
9世紀
アラビア数字の普及
9~11世紀
ノルマン人の移動
10世紀後半
開封の発展
1023年
紙幣の誕生
1054年
教会の東西分裂
1077年
カノッサの屈辱
11~13世紀
十字軍の派遣
ビジュアル特集
教会堂の建築様式
1215年
『マグナ・カルタ』
1241年
ワールシュタットの戦い
1260年
交鈔の発行
13~17世紀
ハンザ同盟
14~16世紀
百年戦争
1370年
ティムール帝国の建国
1402年
靖難の役
1404年
日明貿易の開始
1429年
オルレアンの解放
1453年
ビザンツ帝国の滅亡
ビジュアル特集
騎士と西洋甲冑

3章
近世
近世のさくいんMAP
1488年
喜望峰到達
1492年
グラナダ陥落
1492年
新大陸の発見
1494年
イタリア戦争
1517年
宗教改革
1518年
ターラー銀貨の発行
1521年
アステカ王国の滅亡
ビジュアル特集
スペイン・ドイツの歴史
ビジュアル特集
1529年
第1次ウィーン包囲
1533年
インカ帝国の滅亡
1534年
イギリス国教会の成立
1541年
「最後の審判」の完成
ビジュアル特集
イギリス・フランスの歴史
1545年
ポトシ銀山の発見
1549年
キリスト教の伝来
1562年
ユグノー戦争
1568年
オランダ独立戦争
1570年
ドレークの海賊活動
1571年
レパントの海戦
6世紀後半
スペインの衰退
1592年
朝鮮出兵
1602年
東インド会社設立
1618年
三十年戦争
1633年
ガリレイの宗教裁判
1637年
島原の乱
1642年
ピューリタン革命
1653年
タージ・マハルの完成
1685年
ナントの王令の廃止
17世紀
三角貿易
17~18世紀
保険の誕生
1694年
イングランド銀行の設立
1700年
北方戦争

4章 近代
近代のさくいんMAP
1711年
地丁銀制
1756年
七年戦争
18~19世紀
露土戦争
1775年
アメリカ独立戦争
1789年
フランス革命
1795年
アッシニアの暴落
1798年
フランスの徴兵制
1805年
トラファルガーの海戦
1815年
ワーテルローの戦い
19世紀
ロスチャイルド家の興隆
1816年
金本位制復活
1830年
鉄道の開通
ビジュアル特集
江戸~明治時代の日本の貨幣制度
19世紀
産業革命
1830年
七月革命
1840年
アヘン戦争
1848年
『共産党宣言』の出版
1848年
メキシコ割譲
1853年
クリミア戦争
1861年
南北戦争
1866年
普墺戦争
1870年
普仏戦争
1894年
日清戦争
19世紀末
ドイツの「世界政策」
1898年
米西戦争
1899年
南アフリカ戦争
1900年
義和団事件
1904年
日露戦争
1908年
T型フォード発売
1913年
FRBの設立
1914年
第一次世界大戦勃発
1917年
ロシア革命
1918年
第一次世界大戦終結
1923年
ドイツのインフレ
1923年
パレスチナの委任統治

5章 現代
現代のさくいんMAP
1929年
世界恐慌
1930年代
ブロック経済
1935年
法幣の発行
1937年
フォルクスワーゲンの設立
1939年
第二次世界大戦
1941年
独ソ戦
1941年
太平洋戦争
1944年
ブレトン・ウッズ協定
1945年
ヤルタ会談
1946年
東西冷戦
1947年
印パ分離
1949年
中華人民共和国の成立
1950年
朝鮮戦争
1962年
キューバ危機
1962年
第2バチカン公会議
1969年
人類初の月面着陸
1971年
ニクソン・ショック
1985年
プラザ合意
1991年
ソ連解体
2008年
リーマン・ショック

現在の世界
地域別世界史年表
さくいん

◆本書は特に明記しない限り、2020年2月1日現在の情報に基づいています。
◆歴史的なできごとに関しては諸説あるものもあります。

飯田育浩 (著)
出版社 : 西東社 (2019/11/11)、出典:出版社HP

東大名誉教授がおしえる やばい世界史

「すごい」と「やばい」で世界史を学ぶ

世界の偉人の「すごい」エピソードと「やばい」エピソードがまとめられています。それぞれ見開き1ページ程度でまとめられているのでテンポよく読めます。子どもでも読みやすい内容なので、歴史に興味を持つきっかけ作りにもおすすめです。

滝乃 みわこ (著), 本村 凌二 (監修), 和田ラヂヲ (その他), 亀 (その他)
出版社 : ダイヤモンド社 (2019/7/18)、出典:出版社HP

はじめに

犬や猫に心はあるのでしょうか。少しはあるかもしれないが、人間ほどではないだろうというくらいで話題は終わります。
しかし、人間は心身ともにすこやかであることを願っています。それほどに、身体とともに「心」や「精神」が大きな意味をもっています。そのために、近代になると、「身体の医学」ばかりでなく、「心の医学」も注目されてきました。

人間の心を研究する学者のなかでも、20世紀を代表する大家にユングというスイス人がいます。あるとき、かれは「精神が狂っていない人がいるなら見せてもらいたい。わたしがその人を治してあげよう」と忠告しました。

ユング先生の言いたいことは、心や精神が完全に正常である人間などいるわけがないということです。人間はだれもがどこかに異常であったり、正気ではなかったりする部分をもっているのではないでしょうか。
そう思えば、偉人であっても「やばい」ところがあるのは当たり前のことです。このような目で世界史をふりかえれば、本書は「すごい」本になるかもしれません。

東京大学名誉教授
本村凌ニ

世界がどんなに広くても歴史は人できている

日本の歴史だってよく知らないのに、まして世界史なんて、ぜんぜんわからない!そんなふうに思う人がいても、この本は読むことができるので安心してください。世界史は、じつはぜんぜん難しくありません。時代も国もちがう人がつぎつぎ登場するのでややこしい感じはしますが、かれらはみんな、ただの「人」。いろんな時代の、いろんな国の、数えきれないほどたくさんの人が考え、行動した結果が積み重なってできたのが「世界史」です。

世界は広くて、その歴史は長いですが、ひとりひとりの「人」にせまることで、きっと、見えてくるものがあるはずです。

人はすごい人とやばい人でできている。

なにか「すごい」ことを成しとげた人は、歴史に名前が残ります。でも「すごい」だけの人なんて、この世にひとりもいません。生まれた場所や時代によって、人の評価はガラリと変わる。

たとえば、ある国から見れば「すごい」人も、べつの国から見るととたんに「やばい」人になることもあります。けれど、歴史に名を残した人に共通しているのはそれぞれみんな、一生懸命生きていること。ときに失敗し、そこから学び、たまに成功する。カッコいい一面もあれば、ダサい弱点もある。

だからこそ人はおもしろいのです!

滝乃 みわこ (著), 本村 凌二 (監修), 和田ラヂヲ (その他), 亀 (その他)
出版社 : ダイヤモンド社 (2019/7/18)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに
世界がどんなに広くても歴史は人でできている
人はすごいとやばいでできている

古代 第1章 あっちこっちで リーダー誕生の時代
この時代のざっくりマンガ解説
この時代にあったことざっくりまとめ
メソポタミアを統一し法律を作った ハンムラビ ハンムラビ法典はやたら子どもに厳しい
平和な外交でエジプトを発展させた男装の女王 ハトシェプスト 教育ママとしてがんばりすぎ歯周病で死ぬ
無知の知を唱えた哲学者 ソクラテス おしゃべりばかりで働かず妻から水をぶっかけられる
「万物は流転する」と唱えた哲学者 ヘラクレイトス 牛のうんこにまみれて死亡
巨大な世界帝国を築いた天才イケメン アレクサンドロス大王 親友の太ももに夢中で怒られる
やさしい教えでインドを統一する アショーカ 王になるため兄弟を99人殺した
12才で王になり中国全土を統一する 始皇帝 スピリチュアルにハマって強毒の水銀を飲む
人気者パワーで農民から漢王朝の皇帝に成り上がる 劉邦 敵からにげるために子どもを馬車からつき落とす
英雄ふたりを手玉にとったエジプト最後の女王 クレオパトラ じつは美人でも若くもなかった
病弱だが頭脳でローマ皇帝になる アウグストゥス 人の浮気に厳しいけど自分は平気で浮気する
魏王となった三国時代の切れ者の英雄 曹操 「妻を踏んだら殺す!」と部下をおどしたのに自分が真っ先に踏む

中世 第2章 ドンパチを始めた 宗教と戦争の時代
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この時代にあったことざっくりまとめ
寝ずに働きローマを奪還 ユスティニアヌス アイドルに恋して法律を変えて結婚する
クールに仕事をした中国史上ゆいいつの女帝 則天武后 呪いを信じて猫を飼うのを禁止する
ムキムキパワーで西ヨーロッパを手に入れる カール大帝 娘を溺愛しすぎて絶対に結婚させる
十字軍から聖地をうばい返し敵も尊敬された英雄 サラディン じつは泣き虫で戦いに行きたくなさすぎてダダをこねる
東アジアを征服しグローバル国家・元を築く フビライ・ハン 日本のうそ情報を教えられてその気になった
叙事詩『神曲』を書きルネサンスの先駆けとなった ダンテ フラれた初恋相手への執着心がすごすぎる
500年以上続いた朝鮮王朝の初代国王 李成桂 息子たちがモメすぎて引きこもりになる
ジャンヌ・ダルクを支えてフランスのために戦う ジル・ド・レ 破産して黒魔術にハマる

近世 第3章 世界を変えた 大航海の時代
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この時代にあったことざっくりまとめ
大航海でアメリカに到達した探検家 コロンブス アメリカをインドと思いこんだまま死ぬ
ルネサンス最高の彫刻家であり画家 ミケランジェロ 全裸の壁画を描いて怒られ逆ギレする
インドにムガル帝国を築いた初代君主 バーブル 極度のグルメでメロンが好きすぎて泣く
ヨーロッパ征服にチャレンジし地中海を支配 スレイマン大帝 奴隷に夢中になって女と子を追い出す
ドロ沼の家庭で苦労しながらイギリスを大国する エリザベス1世 1.3cmも盛る厚化粧で表情が固まる
絶対王政で権力をふるい華麗なヴェルサイユ宮殿を作る ルイ14世 おまるにまたがりうんこをしながら命令を出す

近代 第4章 はじけた庶民と 革命の時代
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この時代にあったことざっくりまとめ
するどい啓蒙思想でフランス革命に影響を与える ルソー 道ばたで下半身を出してつかまる
国民にやさしく他国に厳しくして、ドイツ帝国の影を作る フリードリヒ2世 女ぎらい、人ぎらいで犬だけを愛する
16人出産しなから国を守った「国母」 シマリア・テレジア お気に入りの子どもだけひいきする
夫を倒して皇帝となり、ロシアを拡大する エカデリーナ大帝 イケメンが好きすぎて彼氏にイケメンを探させる
5才で作曲を始めた天才作曲家 モーツァルト うんことおしりが好きすぎる
国民に支持されて皇帝になりヨーロッパ統一を目指す ナポレオン 妻の浮気を悲しむ手紙が新聞にのる
南北戦争に勝利し黒人奴隷を解放した大統領 リンカン 「奴隷解放の父」だけど先住民には冷たい
外国と戦い、中国を47年間支配したゴッドマザー 西太后 庭にお金をかけすぎて戦争に負ける
共産主義を主張してカリスマになる マルクス 金に困ると家族ネタ親父にたかりまくる
「発明王」として電灯や映写機などをつぎつぎ事業化 エジソン 部下の才能をつぶすために大人気ない電流バトルをする

現代 第5章 世界のリーダー 争奪戦の時代
この時代のざっくりマンガ解説
この時代にあったことざっくりまとめ
イギリス人だけどアラブ反乱の英雄になる ロレンス ムチで拷問されすぎて気持ちよくなる
インドを非暴力で独立させたハイパー指導者 ガンジー 禁欲主義なのに若い女性と添い寝する
ヒトラーと戦い世界大戦に勝ったイギリス首相 チャーチル セレブすぎて貧しい人の気持ちがわからない
ファッションで女性を自由にする ココ・シャネル お金のためにナチスを手伝う
大統領の妻となり女性と貧しい人々を助ける エビータ 逆らう新聞社をつぶしまくり自分を教科書に登場させる
人種差別と戦いノーベル平和賞にかがやく キング牧師 パリピすぎてFBIにおどされる
ロックで世界を熱狂させ妻と平和活動を行う ジョン・レノン ソロ曲で元メンバーをめちゃくちゃディスる
きらわれても厳しい政治をつらぬいた「鉄の女」 サッチャー 国民には厳しいけど息子には激甘の親バカ
俳優から大統領になり冷戦終結に力を尽くす レーガン 悪ふざけで核戦争を起こしかける
コンピュータをみんなのものにした スティーブ・ジョブズ ストレスがたまると便器で足を洗う

参考文献

本書でご紹介するエピソードには、諸説あるものがあります。
歴史人物に親でもらうために、おもしろく演出をしてお届けしていますが、
本書の内容はかれらを批判するものではありません。
偉大な功績をのこした人物への敬意をもって編集しています。
引用については、読みやすさを考慮して一部表記を調整している箇所があります。

滝乃 みわこ (著), 本村 凌二 (監修), 和田ラヂヲ (その他), 亀 (その他)
出版社 : ダイヤモンド社 (2019/7/18)、出典:出版社HP

世界全史

世界史の基礎教養

本書を、「サクサク読める、映画フィルムを早送りしながら見ているような感覚で歴史を読める」一冊と著者はしています。そのため、歴史の細かい話には言及されていませんが、著者が設定した「35の鍵」を道標に簡潔に解説されており、世界史の全体の流れを学ぶことができます。

宮崎 正勝 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/3/19)、出典:出版社HP

はじめに

最近の新聞やテレビニュースは、世界が混迷の時代にあることを伝えています。ヨーロッパの景気の低迷、EU内部の北欧と南欧の対立、二〇一〇年末に起こった「アラブの春」以来、混乱が強まる中東とアフリカ、石油価格の低迷とウクライナ紛争に悩むロシア、中国の経済成長と格差の拡大、さらには強引な海洋進出……。
こうした現代の世界は、どのような道筋をたどって出来上がってきたのでしょうか。

戦後しばらくの間、日本は歴史ブームで、古めかしい中国史(東洋史)やヨーロッパの自己主張が強い西洋史、発展段階説に基づく世界史などがさかんに読まれていました。
その後、各国史や地域史、時代史などに重点が移り、膨大な量の細かい歴史事実が集められるようになり、世界史への興味を弱めていく結果となりました。
本当は部分を集めれば集めるほど、全体が見えなくなってしまうのですが、部分史を寄せ集めたものが世界史である、というような傾向が強まったのです。

私は、大学教官を辞した後、カルチャーセンター等で、社会経験が豊富な優れた聞き手の方々に世界史について話しながら、普通の市民やビジネスパーソンに世界史を伝えるにはどうしたらいいのか、試行錯誤を繰り返してきました。
その経験から、従来の歴史の本とは違ってサクサク読める、映画フィルムを早送りしながら見ているような感覚で歴史を読めればいいと考えるようになり、書いたのが本書です。

まず、「5の鍵」(キーポイント)を歴史の道筋をたどる道標として設定、それに基づいて簡潔な本文を書き、適宜「トピック」と「歴史の読み方」を組み入れました。「歴史の読み方」では、歴史事実の意義、現代から見た着眼点などを示しています。
史実の配列に配慮をしつつも、簡単な文章を読んでいくことでスーッと読めるように組み立てられています。「覚える」のではなく、「わかる」、「考える」を重視した手引書というような趣になります。巻頭の簡単な図版も、適宜本文中に入れた図版も主に地理面の補助として役立つと思います。

本書が描く世界史の道筋は、巻頭の一九ページに「世界史の道筋―本書の歴史のとらえ方」として図式化されています。簡単に本書の構成を紹介すると、以下のようになります。
まず、「第1章 世界史の始まり」「第2章 四つの河川文明の出現」「第3章 地域ごとに並び立つ帝国の時代」「第4章 ユーラシアが一体化して起きた文明の大交流」までは、モンゴル帝国の時代に至るひとつながりのユーラシアの世界史ですので、歴史の筋道はたどりやすいと思います。次いで、「第5章 再編されていくユーラシア」「第6章 世界史の舞台を大きく拡張した大航海時代」「第7章 大西洋が育てた資本主義と国民国家」は、時期的に並行するユーラシアの「陸の世界史」(小さな世界史)と地球規模の「海の世界史」(大きな世界史)を対比しながら概観することになります。
「第8章 イギリスがリードした『ヨーロッパの世紀』」は、イギリスを中心とする「海の世界史」が変化をしながら「陸の世界史」を飲み込んでいく時代になります。
そして、「第9章 地球規模の時代へ」は、ヨーロッパが二つの世界大戦で没落し、アメリカの主導下に地球の一体化が進む、二〇世紀、二一世紀の世界史です。

「世界史の道筋はそんなに簡単なの?」と思われるかもしれませんが、大筋は簡単であればあるほどよいわけで、無理に繁雑にする必要はありません。
もちろん、他にもくくり方があるのは当然ですが、長期にわたって様々な形で世界史にかかわってきた私の経験では、これが世界史の担い手の推移と次々に姿を変える世界史のポイントをわかりやすくとらえることができる簡潔な枠組みだと考えます。
一般の人々が知っておくべき歴史は、別に専門家を育成するための内容ではありませんし、受験にも関係ありません。歴史の道筋と、ダイナミックな変化、それらが現代の世界に及ぼしている影響、そしてこうした事実を知った上でこれから世界がどう動いていくかを予測する力をつけることだと思います。

今から二〇〇年前の歴史地図を見てみましょう。
ユーラシアでは、ロシア帝国、オスマン帝国(トルコ)、清帝国(中国)、そしてあまり馴染みのないムガル帝国(インド)が大部分の土地を支配していました。大西洋の周辺ではヨーロッパが主導する資本主義経済と国民国家体制からなる「大きな世界」が台頭しつつありました。アメリカは独立したばかりの国であり、オーストラリア、カナダはイギリスの植民地でした。

ところが、二〇〇年が経過する中で、ユーラシアでは先の四帝国の崩壊を受けて各地に混乱が訪れ、近代を牽引してきたヨーロッパは「没落」の色合いが濃くなってきています。
アメリカ、様々な矛盾を内包する中国、そして日本、アジアの新興国などを周辺に持つ「太平洋」が世界史を主導する地域になりつつあるのです。
本書で、このように世界史が常に姿を変えながら、一貫した道筋として現代につながっていることを実感していただければ幸いです。

二〇一五年三月
宮崎正勝

宮崎 正勝 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/3/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに

図で見る世界の歴史と地理
世界の地域区分の呼び方
世界史の道筋—本書の歴史のとらえ方
大地溝帯から四大文明へ
資本主義経済は大西洋から生まれた
国民国家(近代政治システム)の普及
二つの世界大戦でヨーロッパの時代が終焉
グローバル経済への転換
世界史対照略年表
古代に生まれた四大帝国
騎馬遊牧民によるユーラシアの一体化
大転換する海の世界
世界の地理と気候

第1章
世界史の始まり
1 「大地溝帯」からの旅立ち
2 世界史の次の舞台は「大乾燥地帯」に
KEY POINT 1 農業と牧畜の出現

第2章
四つの河川文明の出現
1 灌漑が生み出した都市と国家
KEY POINT 2 灌漑インフラの整備
KEY POINT 3 都市と国家の出現
2 ズバ抜けて富裕だったナイル川流域(エジプト)
3 部族の対立が激しいメソポタミア
4 インド半島と東アジアの文明
KEY POINT 4 中華世界は天子がすべてを支配
5 ユーラシアの主要な宗教と学問のルーツ
KEY POINT 5 宗教・学問が前五、四世紀に出現

第3章
地域ごとに並び立つ帝国の時代
1 ウマと戦車により「帝国」が生まれる
KEY POINT 6 ウマが帝国形成の後押しをした?
KEY POINT 7 ユーラシアの一体化
2 最初に大帝国が出現した西アジア(イラン)
3 東地中海の成長と初の海洋帝国ローマ
KEY POINT 8 地中海の大帝国ローマの誕生
4 世界初の湿潤地帯の帝国
KEY POINT 9 世界史から離れていったインドの帝国
5 独自の内陸帝国を形成した中華帝国
KEY POINT 10 遊牧民が中華世界に浸透

第4章
ユーラシアが一体化して起きた文明の大交流
1 騎馬遊牧民が生み出すユーラシアの時代
KEY POINT 11 ユーラシア帝国の誕生
2 世界史をリードしたイスラームの大征服運動
KEY POINT 12 大征服運動の後に大商圏が誕生
3 ユーラシア規模の大商圏が成立
4 イスラーム帝国を乗っ取ったトルコ人
KEY POINT 13 11世紀に革新を果たした西欧
5 烈風のモンゴル高原から始まるユーラシア統合の動き
KEY POINT 14 中華世界の弱体化で世界帝国が出現

第5章
再編されていくユーラシア
1 挫折に終わったユーラシア帝国の再統一
KEY POINT 15 世界帝国の時代から並立時代へ
2 大きく二つに分裂したイスラーム世界
3 史上最大の中華帝国、清の誕生
4 「大きな世界」の準備に向かうヨーロッパ
5 毛皮大国ロシアのシベリア征服とヨーロッパ化

第6章
世界史の舞台を大きく拡張した大航海時代
1 資本主義を誕生させた大西洋海域
KEY POINT 16 「大きな世界史」への移行
2 海の時代を主導したポルトガル
3 大西洋世界を拓いたコロンブス
KEY POINT 17 一四九〇年代は世界史の大転機
4 スペイン人に改造されていくアメリカ大陸
KEY POINT 18 16世紀、「第二ヨーロッパ」の形成
5 「海の時代」を本格化させた海運大国オランダ
KEY POINT 19 宗教戦争でできた「主権国家」
6 大西洋の覇権を海軍力で奪ったイギリス
KEY POINT 20 蘭・英が世界のルールをつくった

第7章
大西洋が育てた資本主義と国民国家
1 サトウの生産から資本主義が生まれた
KEY POINT 21 資本主義と国民国家の成立
2 産業革命と産業都市が世界史を主導する
KEY POINT 22 石油の時代へ
3 都市の成長を支えた地球規模の高速交通網
KEY POINT 23 鉄道・蒸気船の高速ネットワーク登場
4 「国民国家」はアメリカの独立戦争から広まった
KEY POINT 24 19世紀はヨーロッパの世紀

第8章
イギリスがリードした「ヨーロッパの世紀」
1 大英帝国を支えたポンドの時代
2 蒸気船の登場で小さくなる世界
3 解体を迫られたユーラシアの諸帝国
KEY POINT 25 欧州のアジア進出が加速
4 イギリス、ドイツの覇権争いで変わっていく世界
5 新大陸で巨大になっていくアメリカ
KEY POINT 26 アメリカは西部開拓と鉄道で大国に
KEY POINT 27 海の支配権が世界を制す
6 従属的に世界史に組み込まれたアフリカ・太平洋

第9章
地球規模の時代へ
1 二つの世界大戦とヨーロッパの没落
KEY POINT 28 二つの大戦でヨーロッパが没落する
2 新たな破局に向かう戦間期の世界
3 世界恐慌が引き金になった第二次世界大戦
KEY POINT 29 世界恐慌が第二次大戦を誘発
KEY POINT 30 第二次大戦は複雑な要因で起きていた
4 世界通貨となったドルと冷戦の影響
KEY POINT 31 米ソ冷戦で第三勢力が台頭
KEY POINT 32 世界経済が激変した一九七〇年代
5 グローバル化と見えてこない地球新時代
KEY POINT 33 グローバル経済がもたらす経済の不安定化
KEY POINT 34 オーヴァーチャル空間が世界経済を動かす
KEY POINT 35 世界史の中心となり得る「太平洋」

索引

装丁/中村勝紀(TOKYOLAND)
本文組版/-企画

宮崎 正勝 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/3/19)、出典:出版社HP

ヨコで読む大人の世界史

世界の歴史をヨコ読み

本書は、「今起きていることは、かつて世界で、しかも同時に起きていた」という点に着目し、「世界の歴史を、つながり=ヨコで見てみる」をテーマにしています。歴史を学ぶことでそれを乗り越えてきた人類の知恵を学ぶ、という新しい視点から学べる本となっています。

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP

はじめに

「本当に大変な時代になってしまった……」
今、こう思われている方々は多いのではないでしょうか。
昭和から平成にかけては米ソ冷戦の時代でした。両国による核開発競争と軍拡の時代、それに伴う核戦争への恐怖。でも今思えば~節度ある時代、でもありました。これ以上やったら大変なことになってしまう、という気持ちが米ソにブレーキをかけ、結局は平和な時代だったのです。

ところが、2001年にアメリカ同時多発テロが発生してから、世界の景色は一変しました。東日本大震災による福島原発事故の発生、イスラーム国の台頭、異常気象、感染症の大流行……ついに世界は混沌の時代に突入してしまったのです。
しかし、今世界で起きている大変なこと、つまり人類が直面している試練は、実は過去に何度も起きているのです。いやむしろ、人類は今以上の試練に直面し、私たちの先祖は苦心しながらも、その都度その都度解決策を見出してきました。
たとえば、

「感染症の流行」―過去に何度も世界で同時多発したが、人類は克服した
「情報化時代」―情報の重要性には3000年も前から人類はすでに気づいていた
「インフラ整備」―今の高速道路以上の道を、秦の始皇帝やローマが建設していた
「気候変動」―今以上の異常気象に直面しても、人類は新しい時代を迎えた

そして面白いことに、これらの事態は世界でほぼ同時に発生していたのです。
本書は「今起きていることは、かつて世界で、しかも同時に起きていた」という点に着目し、「世界の歴史を、つながり=ヨコで見てみる」というコンセプトのもと、まとめられました。世の東西で起きた出来事をドローンのように俯瞰することで、世界史をエンタメ、として味わおうというものです。
現代は不安すぎる時代です。でも、本書から「大変な時代を生きる人類の知恵」を感じていただき、読者の皆さまが、その知恵を豊かな人生を送るための一つの糧としてくださることを願っています。

斎藤 整

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1講
四大文明の幕開け(紀元前3000年頃~紀元前1000年頃)
時代の流れを一気読み
「シュメール人」の大きな謎/日本の起源はオリエントなのか?/三種の神器を確認したがった三笠宮崇仁親王/人類史上最初の環境破壊は「砂漠化」だった?/インドも有力な「日本の起源」候補?/なぜ中国黄河文明だけが滅亡を免れたのか?
ここで深掘り!
シュメール人と千葉県の意外な関係
インダス文字は解読すればノーベル賞クラス?
「四大文明の幕開け」のまとめ

第2講
技術革新と宗教誕生(紀元前7世紀頃~紀元前5世紀頃)
時代の流れを一気読み
中国やインドで科学部門のノーベル賞受賞者が少ないワケ/星を見たら、その運行を利用せよ―中国/星の動きに疑問を持つよりも、解脱せよ―インド/星はなぜ動き、なぜ光るのか、直視せよ―西欧/日本は一体、どのタイプ?
ここで深掘り!
湯川秀樹とスティーブン・キングの未来観
「技術革新と宗教誕生」のまとめ

第3講
インフラの整備と法の成立(紀元前5世紀頃~紀元前3世紀頃)
時代の流れを一気読み
「兵馬俑」をしのぐ大発見/始皇帝、商業国家建設の野望/「2000年後の未来にも通用する法をつくれ!」/イランの巨大帝国を支えた「王の道」/「忍者」の原点はイランにあり?/戦車も通れるローマの道
ここで深掘り!
人命を救った「兵馬俑」
日本は「ジャパン」ではなく「ワクワク」?
「インフラの整備と法の成立」のまとめ

第4講
流通ネットワークの誕生(紀元前2世紀頃~1世紀頃)
時代の流れを一気読み
「一帯一路」構想は2000年前に誕生していた?/始皇帝の見果てぬ夢/ローマ帝国繁栄の証し「公衆浴場」/体は弱かったがリーダーシップにすぐれたローマ皇帝/0倍の兵力差を克服した中国皇帝/戦争を減らした「安定」優先の政治
ここで深掘り!
中国の王朝・新をぶっ潰した”肝っ玉かあさん”
ローマの「オシッコ税」と「空中税」
「流通ネットワークの誕生」のまとめ

第5講
流通ネットワークの終焉(2~3世紀)
時代の流れを一気読み
同時期に訪れた東西大国の終焉/後漢を滅ぼした新興宗教教団/感染症と不作で終焉を迎えた「ローマの平和」
ここで深掘り!
「天下三分の計」は諸葛孔明一族が企てた和平策?
「流通ネットワークの終焉」のまとめ

第6講
気候変動が生んだ遊牧騎馬民族の時代(3~4世紀)
時代の流れを一気読み金田一京助も解けなかった壁画の謎/日本人のルーツは遊牧騎馬民族?/「ゲルマン民族の大移動」を引き起こした匈奴/劉邦の血を引く匈奴の最強君主
ここで深掘り!
「オタ芸」と北米インディアンとの関係とは?:
フン族の王アッティラと悲しみの使徒
「気候変動が生んだ遊牧騎馬民族の時代」のまとめ

第7講
「中国の源氏」の時代(5~6世紀)
時代の流れを一気読み
源義経とチンギス・ハーンは同一人物?目覚ましい活躍を見せた「中国の源氏」/驚くほど日本人的な「北魏」/孝文帝にそっくりなクローヴィス
ここで深掘り!
フランク王国が恐れた「狼王クルトー」
「『中国の源氏』の時代」のまとめ

第8講
世界ネットワークと移民国家日本の誕生(7~8世紀)
時代の流れを一気読み
「移民国家・日本」がすでに誕生していた?/知られざる海上ルートが存在していた/8世紀にキリスト教が日本に伝わっていた?/唐でも一目置かれた空海と阿倍仲麻呂/イスラーム教の誕生は「唐の繁栄」がきっかけ?/世界最高レベルの都市だったバグダッド/カール大帝なくしてEUなし/8世紀の「一帯一路」が空前の繁栄をもたらした
ここで深掘り!
フレディ・マーキュリーと安史の乱
「シンドバッド」も「アラジン」も贋作だった?
「世界ネットワークと移民国家日本の誕生」のまとめ

第9講
世紀末と世界交易の衰退(9~10世紀)
時代の流れを一気読み
世界がパニックに陥った「世紀末」の祟り/日本の地形を変えるほどの大災害が続発/富士山噴火以降、世界はカオスに陥った
ここで深掘り!
災害時、神社に逃げれば助かる?
「世紀末と世界交易の衰退」のまとめ

第10講
東西で起きたマネー革命(11~12世紀)
時代の流れを一気読み儲かるビジネスのヒントは「10世紀の開封」にあり/世界初の紙幣が巻き起こした中国の「マネー革命」/「中世のドル」が失墜したワケ
ここで深掘り!
『水滸伝』に登場する梁山泊 36人のツワモノ
世にも奇妙な中国の元号
「東西で起きたマネー革命」のまとめ

第11講
情報国家モンゴルの誕生(13世紀)
時代の流れを一気読み
「情報戦略」に長けていたモンゴル人/モンゴルより巧みだった「マムルーク朝」の情報操作/モンゴルが「2つの都」を置いたワケ/安全で速やかな移動を可能にした道路網/8人の不死身の日本人/教科書では教えない「元寇の真実」/「アジア版EU」の完成
ここで深掘り!
マルコ・ポーロは、本当は中国に行っていなかった?-
「情報国家モンゴルの誕生」のまとめ

第12講
環境破壊とペスト大流行(13~14世紀)
ママ時代の流れを一気読み-「ハーメルンの笛吹き男」は実話だった/130人の少年少女はどこに消えたのか?/「笛吹き男」と「環境破壊」と「ウイルス」/3000万人近くを死に追いやった「ペスト」/ヨーロッパと中国で同時に起きた「農民反乱」
ここで深掘り!
ハーメルンの子供たちが消えた?「悪魔の台所」
「環境破壊とペスト大流行」のまとめ

第13講
3つの大航海時代(15~16世紀)
時代の流れを一気読み
新大陸を発見したのはコロンブスではなかった?/西欧をはるかにしのいでいた「鄭和」の大船団/168人と馬、頭に滅ぼされたインカ帝国/新大陸発見が招いた「Xの悲劇」
ここで深掘り!
6世紀、中国の僧侶が新大陸を発見していた?
「3つの大航海時代」のまとめ

第14講
世界を席巻した日本銀(16~17世紀)
時代の流れを一気読み
「黄金の国ジパング」は嘘ではなかった/スペインが西欧の主役になれた本当の理由/「銀」で失敗したスペイン、成功した日本/牧師の金儲けは「善」である/世界同時、銀山発見の偶然
ここで深掘り!
「恐山」に眠る金が日本を救う?
仏教国の日本で、なぜ資本主義が発達したのか?
「世界を席巻した日本銀」のまとめ

第15講
異常気象と人類の試練(17世紀)
時代の流れを一気読み
同時期に発生した世界の「三大大火」/7世紀は「人類史上最大の危機」/タイで知らない人はいない「山田長政」/アメリカへの移民と奴隷貿易
ここで深掘り!
好景気、不景気は太陽の黒点で分かる?
「異常気象と人類の試練」のまとめ

第16講
海賊の時代(17~18世紀)
時代の流れを一気読み
伝説の海賊王「キッド」の財宝は日本にある?/茶とコーヒーが世界を動かした/厳罰をものともせず普及していったたばこ/産業革命のきっかけとなった「キャラコ」/0世紀の生活スタイルの原点は、この時代にあった」
ここで深掘り!
“赤ひげ”の海賊・バルバロッサの財宝
中国でペスト被害が少なかった意外な理由
「海賊の時代」のまとめ

第17講
情報の時代(19世紀)
時代の流れを一気読み
通信社の伝達手段は「ハト」だった?/電報の登場と「情報の時代」の到来/「金鉱発見」の噂、世界を駆け巡る/世界の一体化を加速させた「交通革命」/交通の発達が招いた「パンデミック」/日露戦争の勝利はまたたく間に世界に伝わった
ここで深掘り!
一攫千金の成功率は7万7000分の2
「情報の時代」のまとめ

第18講
地球環境と日本の「和」(20~21世紀)
時代の流れを一気読み
標高4600メートルのヒョウの死骸が意味するもの/4000万人以上が犠牲になった感染症/ニューギニアの先住民に学ぶ「ゼロの戦闘」/「復讐と憎悪の連鎖」が招いた世界大戦/EUの原点に息づく「和」の精神/カレルギーが残した「日本人へのメッセージ」
ここで深掘り!
ネコになろうとした文化人類学者
EU崩壊を予見していたカレルギー
「地球環境と日本の『和』」のまとめ

本文デザイン 戸塚みゆき(Isshiki)
本文図版 島崎哲雄
本文写真 フォトライブラリー他
校正 石井三夫
編集協力 高橋一喜

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP

世界一おもしろい 世界史の授業 (中経の文庫)

歴史の本質をわかりやすく捉える

学生時代に世界史をあまり勉強してこなかった方や世界史がうまく理解できなかった方は多いかもしれません。しかし、時が流れ、世界史を勉強しておけばよかったと感じる機会が訪れる場合も少なくないようです。本書では、そのような世界史がよくわからない方や苦手な方に向けて、歴史の本質をわかりやすく解説しようとしています。

宇山 卓栄 (著)
出版社 : KADOKAWA/中経出版 (2014/2/27)、出典:出版社HP

はじめに

「世界史をもっと勉強しておけばよかった」
海外旅行へ行き、多くの人がこう思います。世界史は何歳からでも勉強できます。定年退職した人も、現役の人も。

「学生時代、世界史を勉強しなかったから、世界史の本を読んでもよくわからない」
こんなふうに考えている人もおられるでしょう。たしかに、世界史の一般的な概說書を見ると、歴史用語や年号がビッシリと並んで、初心者にとって、負担が大きいだろうと思います。「入門書」と書いていながら、初心者にはなじみのない歴史用語が盛りだくさん。
「今さら、歴史用語を勉強させられるのはイヤだ。しかし、歴史の本質を勉強したい」
こんな思いをもっておられる読者のために、本書は企画されました。通常、歴史の本質を勉強しようとするならば、難解で重厚な学術書か専門書をひも解かなければなりません。一般の人にとってはハードルが高すぎます。

歴史の本質を一般の読者にもわかりやすく、しかし、表面的で簡単になりすぎず。また、やわらかすぎず、かたすぎず。短すぎず、長すぎず。そんなバランスのとれた世界史の概説書、あるようでなかった稀少な概説書、それが本書です。

宇山卓栄

宇山 卓栄 (著)
出版社 : KADOKAWA/中経出版 (2014/2/27)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに

CHAPTER1 世界史の基本ルール
1 世界史を学び直すまえに
歴史を買いかぶるな
歴史とはエンターテインメントである
2 歴史の構造
階級闘争
人間の欲望の累積
富をめぐる争い――右派と左派
3 変化の構造
ヨーロッパの時代変遷
中国の諸王朝

CHAPTER2 古代
1 オリエントとギリシア
白人はアジアにいた
アラブ人と白人
ペルシア戦争――貧民のチャンス到来
軍事主義への歩み
2 ローマ①
地中海のビジネスチャンス
格差社会
「カエサル」という現象
政治バランス
3 ローマ②
ギリギリの帝国経営
皇帝たちの苦悩
キリスト教―政治に利用される宗教
4 中国①――秦・漢時代
中国の原型
法家思想――人間の本性は悪
秦から漢へ
経済音痴の武帝
5 中国②――三国時代〜隋唐時代
本当の三国志
中国のハイブリッド化
隋の場帝――作られた暴君のイメージ
唐時代――精緻な官僚制

CHAPTER3 中世
1 ヨーロッパ中世①
教皇とゲルマン人の癒着
ドイツ・フランス・イタリアの誕生
ヨーロッパの皇帝家
教皇とは何か
2 ヨーロッパ中世②
ノルマン人の海運ネットワークビジネス
南北のアウトレット
空前の好景気とそのひずみ
ロジスティクス(生産工程)のワンストップ化
3 ヨーロッパ中世③
イギリスのイノベーション
オランダのリテール(小売)商社
フランス・イタリア・ドイツの保守性
4 イスラーム
イスラーム教の発展の背景
後継者の時代
軍事拡大への道
略奪の限界、分裂の時代
5 中国①――宋・元時代
経済成長と成り上がり者たち
カネの切れ目が縁の切れ目
モンゴルの時代――シルクロードで大もうけ
モンゴルの拡大――インドにまで到達出
6 中国②――明時代
農業主義への回帰
天下人の暗い過去――明王朝
台湾の歴史

CHAPTER4 近世
1 イスラーム圏、オスマン帝国
地中海圏としてのイスラーム
オスマン帝国の進出
オスマン帝国、寛大なる共存政策
2 清王朝
なぜ辺境の満州人が中国の覇者となったのか
モンゴル人の王となる
満州人の中国支配
「存在しない」人口と地丁銀
3 大航海時代
マーケットの拡大
ポルトガル――バブルの熱狂
スペインの進出――金銀財宝の発見
4 宗教改革、ハプスブルク家
信仰よりもカネ
経営者カルヴァン
ハプスブルク家の幸運
5 イギリス・フランスの絶対王政
イギリス王権の拡大
メアリ1世・エリザベス1世のバランス感覚
フランスの絶対王政
絶対王政の経済構造
6 イギリス市民革命的
興勢力のヒステリック状態
議会政治と宗教
マネー流入と市場開拓
7 18世紀のヨーロッパ諸国
海への出口
プロイセンの台頭
イギリスの優位

CHAPTER5 近代
1 フランス革命
デフォルトの回避――貸しつけ金の回収
インフレとの戦い
ナポレオン
2 フランス・イギリス
震源地フランス
ブルジョワ=ラインへの収束例
戦艦テメレールの最期
イギリス、ビジネスモデルの転換
3 ドイツ・イタリア
誰がリーダーか
「平和主義者」ビスマルク
「敵にまわしたくない男」
4 アメリカ
人口急拡大という爆弾
アメリカの独立
南北戦争は市民革命的
5 ロシア
大国でありながら後進国
新たなる海へ
全面戦争の危機
6 第一次世界大戦までの国際関係
勝者の既得権益
ドイツ優位の構造
イギリスの選択

CHAPTER6 現代
1 第一次世界大戦後の世界
理想主義者の失態
たたきやすい存在
アメリカ資本に支えられたドイツ
ロシア革命とその後
2 世界恐慌
バブルの崩壊
再評価されるべきフーヴァー
「小さい政府」VS「大きい政府」
3 ニューディール政策と世界経済
「バラまき」政策
自国優先の閉鎖経済
第二次世界大戦はブロック経済から起こった
4 第二次世界大戦
ファシズム――ゆがんだ資本主義
ヒトラーに開戦意志なし
ルーズヴェルトが招いた冷戦

おわりに
さくいん
本文イラスト: 沢音千尋
本書は文庫置き下ろしです。

宇山 卓栄 (著)
出版社 : KADOKAWA/中経出版 (2014/2/27)、出典:出版社HP

人に話したくなる世界史 (文春新書)

事実を生き生きと語らせる

本書は、人に聞かせておもしろい歴史を伝えることを目指して書かれた、歴史の解説本です。歴史は面白くないという認識は、かなり広がっているとされています。この課題を克服するために、本書では、ストーリー性を持たせたり、叙述的な方法で、世界史におけるいくつかのポイントを解説しています。

玉木 俊明 (著)
出版社 : 文藝春秋 (2018/5/18)、出典:出版社HP

はじめに

「いいか、歴史っていうのはな、居酒屋で人に聴かせて、ああなるほどって思わせるような話をしないといけないんだ」と、文春新書の編集長が言った言葉がきっかけとなって、本書の執筆ははじまりました。
本書の担当者である前島篤志さんが是非そのような本を書いて欲しいと、私にメールを送ってくれたのです。二〇一七年の一〇月のことでした。

これは正直言って、大変な難題だと感じました。しかしその一方で、もし私がそのような本を書くことができたらとても幸せだと感じ、その申し出を引き受けることにしたのです。
歴史のストーリーは、本来、とても面白いものであるはずです。それを面白くなくしているのは、むしろ歴史家の責任です。歴史家は、歴史的事実に忠実であろうとします。できるだけ正確な歴史を書かなければならないと思っています。それが、歴史学者として認められる最良の道だからです。

歴史家にとって、事実の探究=ファクトファインディングが、もっとも重要な仕事であることはいうまでもありません。それはいいのですが、専門の歴史家は、ストーリー性を犠牲にすることをあまり気にしていません。どうすれば説得力があり、しかも面白い歴史が書けるかということを、ほとんどの歴史家は考えません。歴史をつまらなくしている原因の一端には、専門の歴史家のそのような態度があると思われます。
本来の歴史家は、歴史的な事実に解釈を加えます。それにより、事実に生命を与えるのです。事実を、生き生きと語らせるのが叙述なのです。私たち歴史家は、それを歴史叙述と呼びます。面白い歴史とは、すぐれた歴史叙述によって彩られた歴史のことなのです。
私はそのようなことを意識しながら、本書を執筆しました。

本書は、全部で一三章から成り立っています。古代から現代まで、アレクサンドロス大王の時代から一帯一路まで、さまざまな時代が取り扱われています。ヴァイキングに対する叙述は、おそらく読者の予想とは大きく違うものではないかと期待しています。保険に関する章では、われわれが日常的にかけている保険が、どのようにして発展してきたのかがわかるものと思います。イギリスが大きな借金をかかえていたことを書いた章では、現代の日本との類似点もみえてくるでしょう。
「すべての歴史は現代史である」といったのは、イタリア人のクローチェという歴史家でした。私たちが手にいれられる史料は、じつは大昔から変わっていないことも多いのです。したがって単に史料を収集するだけでは、歴史学者が手に入れられる新史料はなくなってしまい、たちまちのうちに歴史家は失業してしまいます。

歴史家が失業しなくてすむのは、史料に対して新しい解釈を加えるからです。時代が変われば、新しい視点からの解釈が可能になります。それがクローチェのいう、「すべての歴史は現代史である」という言葉の意味なのです。逆にいうなら、歴史学とは不完全な学問であり、たえず新しい問いを出し、その問いにどう答えるのかを考えなければならない学問なのです。歴史家は、それを生業とする人々だといえるでしょう。

現在の歴史学では、国家の歴史ではなく、人々のネットワークや情報を重視する傾向にあります。いわば、ハードウェアではなくソフトウェアを重視する傾向があるのです。本書は、そのような歴史学研究の成果をできるだけ利用し、これまでとは異なる歴史像を読者に提供しようという試みです。

それが成功しているかどうかは、もちろん私ではなく一人一人の読者が判断することです。どのような書物も、著者の手を離れたなら、独自の生命をもつようになり、その成果の判断は、読者の手にゆだねられます。本書も例外ではありません。
ある面、書物は著者にとって子どものようなものですが、明らかに異なるのは、一度親の手を離れたなら、完全に一人立ちしてしまい、親のことは忘れ、読者のものになってしまうことでしょう。著者は、子どもである書物の将来のすべてを、他人である読者に任せることになります。そして著者は、そのことをよく認識しなければなりません。
冒頭に書きましたように、本書は、「人に聴かせて面白い歴史」を目指して書かれました。読者のみなさんには、是非、本書の内容を身近な人に伝えていただきたいと思っています。

本書執筆の機会を与えてくださった文春新書の編集長、さらに、本書の編集担当である前島さんに心から感謝します。とくに前島さんは、本書を「人に聴かせて面白いもの」にするために、実に熱心に働いてくれました。本書が面白い読み物になったとすれば、前島さんのおかげです。
ただひとつ不安な点があるとすれば、私は酒を飲まないので、居酒屋には行かないことです。ですので、居酒屋で蘊蓄を傾けるのがどういうことなのか、想像するしかなかったのです。

二〇一八年三月大阪のインターネットカフェにて
玉木俊明

玉木 俊明 (著)
出版社 : 文藝春秋 (2018/5/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに

1 アレクサンドロス大王はなぜインダス川を越えられなかったのか
「バルバロイ」だったマケドニア
ペルシア遠征は父子二代の悲願
メソポタミアーインダス間で交易が
ファラオのマスクにラピスラズリは輝く
「鉄」のアッシリアがオリエントを統一した
アケメネス朝ペルシアの「王の道」
アレクサンドロスの遺したもの

2 ヴァイキングはイスラーム商人と商売していた
掠奪か交易か?
ヨーロッパの覇者となった可能性は?
「地中海中心史観」を覆す
交易の中心はアッバース朝だった
ハンザ同盟はヴァイキングの継承者

3 大航海時代のはじまりはアフリカの黄金目当て?
「大航海時代」は日本独自の用語
サハラ砂漠とハンニバルの象軍団
マリ帝国の黄金伝説
船酔いで船に乗れなかったエンリケ航海王子
イスラーム商人に先導されたヴァスコ・ダ・ガマ
仮説:「西アフリカから新大陸へ」
大航海時代最大の成果は?

4 織田信長「天下取り」を支えたアジア交易圏
戦国時代を世界史のなかに置いてみると
ムスリム商人が席巻したアジアの海
「死の商人」としてのイエズス会
信長はイエズス会を切り捨てた?

5 グーテンベルクのもうひとつの「革命」
グーテンベルク革命とは
経済成長したのはプロテスタントだけだったか?
一五世紀の情報革命
商人たちが「国語」をつくった
「マニュアル革命」の果たした役割
ヨーロッパの商慣行がグローバル・スタンダードに

6 本当はしぶとかったポルトガルとスペイン
いまでは「EUのお荷物」だけど
世界を二分した条約商人の帝国ポルトガル
フェリペ二世の時代
太平洋貿易の開拓者
世界商品としてのアヘンと奴隷

7 大数学者フェルマーが保険の基礎をつくった
確率論と現代社会
歴史を変えた手紙
古代の保険、中世の保険
ハンザ同盟の合理的なリスク・ヘッジ
「近代的企業」の誕生
ハレー彗星と生命保険
コーヒー・ハウスから世界一の保険組織へ

8 大英帝国は借金上手?
国の借金は「少ないほどいい」のか?
戦争と財政難に苦しんだヨーロッパ
消費税のイギリス、土地税のフランス
明暗を分けたバブル事件
勝利の秘密は戦費調達力

9 綿が語る「アジアのヨーロッパ」の大逆転
歴史を変えた商品
進んだインドの綿市場
ヨーロッパが欲しがったキャラコ
なかなかインドに勝てなかった
世界を股にかけた生産システム

10 「中立」がアメリカを大国にした
「戦争」と「貿易」が両立した不思議
中立都市ハンブルクの栄光
ナポレオン戦争下の商人たち
「中立国」としてのアメリカ合衆国
モンロー主義を貿易から見ると
戦争で儲ける「中立国」

11 蒸気船の世界史――マルコはなぜブエノスアイレスへ?
「わしたち移民がついてるぞ!」
帆船から蒸気船への大転換
巨大化する港
蒸気船が世界を一つにした
縮まりゆく世界
「非公式帝国」に組み込まれたラテンアメリカ

12 手数料を制する者、世界を制す
「ヘゲモニー国家」の決め手とは?
それほど儲からなかった産業革命
人よりもモノよりも速く
なぜ手数料ビジネスは儲かるのか
世界史のなかの電信網

13 中国がヘゲモニー国家になれない理由
ヘゲモニー国家アメリカの後退
一帯一路と鄭和の大遠征
中国がやるべきことは他にある
「自国ファースト」の限界

玉木 俊明 (著)
出版社 : 文藝春秋 (2018/5/18)、出典:出版社HP

世界史の新常識 (文春新書)

不確実性の時代に世界史を学び直す

本書は、世界史の大まかな流れに沿って、様々な著者が各時代、それぞれのテーマについて解説している本です。当時の時代背景や重要人物を含めた、世界史の重要な出来事に関する論説がまとめられています。歴史の教科書とは違った、様々な著者の歴史に対する解釈、見方が学べます。

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP

はじめに

私たちはいま激動する世界史のただなかにあるのではないか。そう感じている人は少なくないでしょう。中国の台頭、トランプ大統領の登場、ヨーロッパの混乱、深刻化する移民問題、広がる格差、世界中で繰り広げられるテロ行為――指折り数えていけばきりがありません。それらの大きなうねりが意味するものは、新時代の到来なのか、世界のねじが外れてしまうようなパニックの連鎖なのか。その答えは、まだ誰にもわかりません。

おそらくかつて世界史の動乱期に身を置いた人たちは、いまの私たちのような、いや、それ以上の不安のなかにあったことでしょう。船はあてどなく彷徨い、昨日は見えていた島影もどんどん小さくなり、見えなくなっていく。前に広がるのは何の標もない、誰も行ったことのない茫洋とした大海です。気象も刻々と変わり、時には濃霧も立ち込めて、視界をさえぎってしまう。
それでも人類は航海を続け、「歴史」という海図と日誌を残しました。もちろん、歴史の個別的な事柄はそのまま繰り返されることはなく、二度と同じ航海はありません。「歴史」という古ぼけた海図が、どれほど役に立つのか、心もとなく思えます。しかし、そこには人類が幾多の苦難をくぐり抜けてきた知恵、もしくは苦い失敗の教訓が書き込まれて、います。天候が荒れ、方向を見失ったときほど、先人の遺した記録と思考に向かい合う必要があるのではないか。

私たちは、多くの選択や試行錯誤の結果、いま現在の地点に立っています。何かをやろうとするたびに無数の問題が発生し、それを必死で解決したり、力及ばず失敗したりを繰り返してきた、そのややこしい累積が「現在」なのでしょう。そのあまりの複雑さに、呆然とすることもしばしばです。そんなときに「そもそも」に遡り、問題のありかを改めて見つめること。それが「歴史に学ぶ」ということでしょう。

新しい時代を生き抜くには、新しい視点で歴史を学び直す必要があります。今の世界をリアルに理解するための世界史。本書がその入口への案内板になれば幸いです。

編集部

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章 古代
古代ギリシアはペルシア帝国に操られていた
どうして釈迦は仏教を開いたか
カエサルはなぜ殺された?
「キリスト教」はイエスの死後につくられた
ローマ帝国を滅ぼした難民と格差

第二章 中世・近世
預言者ムハンマドのリーダーシップ
中世グローバル経済をつくったのは遊牧民とムスリム商人
異民族を活用したチンギス・カン
ルネサンスは魔術の最盛期
明を揺るがした日本の火縄銃
戦争と疫病がニュートン、ライプニッツを生んだ

第三章 近現代
産業革命がイギリス料理をまずくした
保護貿易が生み出した産業資本主義
アヘン戦争 大清帝国四大英帝国
ィンド グローバルな亜大陸
世界大戦の負債が起こした大恐慌
独裁の秘術ヒトラー、スターリン、毛沢東
共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史

第四章 ブックガイド
グローバル・ヒストリーとは何か
評伝・自伝で人物の内面に迫る
共産中国の深層には今も伝統的な中国社会が息づいている

第五章 歴史の教訓
史上「最も幸せな国」はどこだ?
世界史から何を学ぶか

イラスト:長場雄

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP