【最新】ロボット工学について学ぶおすすめ本 – 基本から応用まで

ロボットを作るのに必要な知識は?

ロボティクス業界が急成長を続けている現在、ロボット工学の需要は高まっています。一見難しそうな学問分野ですが、基礎や理論をしっかり身に付けることで本格的なロボットを作ることができます。ここでは、基本から実践的な知識まで身に付くロボット工学を学ぶためにおすすめの本をご紹介します。

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出典:出版社HP

はじめてのロボット工学(第2版) 製作を通じて学ぶ基礎と応用

製作を通じて基本がわかる

ヒューマノイドロボットをベースにして、数式に頼らず図でわかりやすくロボット工学について解説されています。ロボットの歴史や構造から、モータやセンサ、機構や制御まで体系的に学ぶことができます。ロボット工学を志す方にお勧めの入門書です。

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

本書に掲載されている会社名・製品名は、一般に各社の登録商標または商標です。
本電子書籍は、奥付に表記した紙版を底本として制作したものです。電子書に不要な文言が含まれている場合があります。また、内容を更新する場合があります。

本書を発行するにあたって、内容に誤りのないようできる限りの注意を払いましたが、本書の内容を適用した結果生じたこと、また、適用できなかった結果について、著者。出版社とも一切の責任を負いませんのでご了承ください。

本書は、「著作権法によって、著作権等の権利が保護されている著作物です。本書の複製権・翻訳権・上映権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)は著作権者が保有しています。本書の全部または一部につき、断で転載、複写複製、電子的装置への入力等をされると、著作権等の権利侵害となる場合があります。また、代行業者等の三者によるスキャンやデジタル化は、たとえ個人や家内での利用であっても著作権法上認められておりませんので、ご注意ください。
本書の無断複写は、著作権法上の制限事項を除き、禁じられています。本書の複写を希望される場合は、そのつど事前に下記へ連絡して許諾を得てください。
出版者著作権機構
(電話:03-5244-5088.FAX03-5244-5089.e-mail:info@jcopy.or.jp)
《出版者著作権管理機構委託出版物》

第2版はしがき

本書は、2007年に発行した「はじめてのロボット工学制作を通じて学ぶ基礎と応用」の改訂版として執筆されました。
初版発行から2019年までの12年間における世の中の変化は、かつてないほど大きく、早いものでした。とくに、コンピュータネットワークやデバイスの発達はいよいよ著しく、世の中の変化や発展は、今後いっそう加速していくものと考えられます。
ロボットの開発においては、本書でも触れている深層学習などの技術によって、知能部分の発展がめざましいものになっています。人工知能技術をはじめとした新しい情報処理技術は、これまでのロボットでは実現できなかった高度な画像処理や音声処理を可能とし、人間の社会に必要不可欠な存在になりつつあります。また、インターネットをはじめとしたネットワークの技術向上もあり、ロボット単体での解決が難しいため、かつては困難であった問題を、複数のロボットや機器を協調させることで、効率よく片付けることができるようになってきました。
第2版では、上記のような著しく変化した分野への言及を追加するとともに、学習に使用する口ボットも新しいものに変更しました。
2足歩行ロボットの構成や機構の具体例については、ロボカップ世界大会のヒューマノイドリーグで優勝を果たした「VisiON4G」を用いて解説しています。実際のロボット製作実習においては、比較的かんたんに2足歩行ロボットを作ることができる入門キット「Robovic-iVer.2」を題材としています。また、パーツの作成はアルミ加工だけでなく、近年普及している3Dプリンタによる方法も解説しています。専用のWebサイトにて、3Dプリンタ用の造形データをダウンロードできるので、ロボットの製作実習を迅速に進めることができます。
本書では、最新の情報処理技術やネットワーク技術に関する言及のほか、実際のロボットを用いた実習、ロボットの基礎となる電気、物理的な知識に至るまで、ロボットについて網羅的に理解できるよう配慮しています。すぐれたロボットを実現するためには、ハードウェアとソフトウェアがうまく連携されていることが不可欠で、ロボットを正しく理解するためにも、さまざまな分野の知識や経験を、幅広くもつことが必要です。すなわち、ロボットを学ぶことは、多くの知識や専門分野への絶好の入り口であるといえます。
本書をきっかけに、さまざまな学習を進めていくことができるでしょう。みなさんの学習に役立つことを願っています。
2019年2月
著者らしるす。
本書で使用するモーション作成ソフト(RobovieMaker2)や、3Dプリンタ用の造形データは、ヴイストン株式会社の以下のWebページからダウンロードできます。
https://www.vstone.co.jp/products/robovie_12/download.html

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

初版はしがき

ご存じのように、日本は、ロボット王国といわれるくらい、世界中で最も多くのロボットを生産し、稼動させています。これらの多くは、産業用ロボットと呼ばれる工場の中での自動化や省力化をめざしたものです。ところが、皆さんの目に触れるのは、動物や人間の形をしたロボットで、これらは工場からわれわれの日常生活に入ってきて、さまざまな仕事をしたり、われわれを助けてくれることが期待されています。工場ではたらくロボットも、われわれの日常生活に入ってくる口ボットも、ロボットには変わりなく、ロボットテクノロジーと呼ばれるいろいろな技術を共有しています。
では、実際のロボットは何からできており、どのようなしくみで動作するのでしょうか?これらの疑問に対する答えは、普段、皆さんが学校などで勉強している、もしくはしてきた教科とどのように関係しているのでしょうか?本書は、このような疑問に応えるロボットの入門書です。
われわれ人間と同じように、ロボットは感じて、判断して、行動します。そのためには、まず、数学や理科、そしてコンピュータの知識が必要になります。また、将来的には国語や社会の科目とも関係し、ロボットは、さまざまな科目の知識を総合的に利用する新しい学問分野です。ですから、ロボットを通じて学ぶことで、いままで科目ごとにばらばらだった知識が、統合された形で生きてきます。
そこで本書では、必要に応じて、随所に既存の科目との関係を示し、皆さんが普段学んでいる科日が、どのようにロボット開発に役立つか実感できるように工夫しています。さらに、実際に市販されているロボットを例にして、自習ができるように、それらのロボットの使い方なども最後に解説しています。
本書の特徴は、以下の三つにまとめられます。
1.ロボットの歴史からしくみまで順番に学習できる.
2.既存の教科とロボットの技術の関係が学習できる.
3.RobovieMakerとRoboviciの説明を読むことで、ロボットを使った自習ができる。
この本を読むことで、ロボットについて正しい知識を得るとともに、そのおもしろさを発見してもらいたいと思っています。そして、世界をリードしている日本のロボット技術の将来を担う人材へと、成長してもらえればと願っています。
2006年12月
ロボット実技学習企画委員会

◆本書について

・本書の特徴

本書は、ロボットに関する事前知識のないかたでも、ロボットに関する基本的知識を獲得し、自分でロボットを作成できるようになることを目的として執筆しています。ロボティクスに関連するさまざまな分野の基本を理解したのち、2足歩行ロボットの製作実習を通じてロボティクスの全体像を理解する、という流れです。授業や講義で実際に使用していただける構成になっています。
さて、ロボティクスは幅広い知識と技術が要求される分野です。本書の内容も多岐にわたりますが、初学者が取り組みやすいように、個々の知識や技術に対する詳細な説明を省いている箇所があります(逆運動学やプログラム言語など)、それぞれの技術に興味をもったかたは、専門書を参照してください。もちろん、専門書を参照しなくても、本書を通読することは可能です。

・必要な前提知識

本書を読むために必要な前提知識は、中学校の数学・理科程度です.高等学校の生徒であれば、問題なく読了できるでしょう。また、各Chapterのはじめに、当該Chapterで説明する内容と対応する高等学校の教科書を紹介しているので、予習や復習に役立ててください。

・読者対象

本書は、おもに以下の学校に通う生徒および学生向けに執筆されています。
・高等学校(とくに工業高等学校)
・専門学校
・高等専門学校
・理工系の大学
また、ロボットに興味のある一般のかたにも、入門書として読んでいただけます。ただし、「Chapter.10 ロボット製作実習」における板金加工など、個人では実行が難しいところがあります。その場合、同Chapterで紹介している3Dプリンタで代用するなど、工夫してみてください。
なお、Appendixとして、高等学校で実際にロボットの製作実習を行った際のレポートを掲載しています。授業における注意点や課題、生徒や指導教諭の感想などが記されているため、本書を授業や講義で使用する教員のかたはAppendixをご一読ください。高等学校の教員を目指すかたにも有用でしょう。

・第2版における改訂の内容

本書は、2007年に発行された「はじめてのロボット工学制作を通じて学ぶ基礎と応用」の第2版です。初版から10年以上が経過し、CPUなどの性能向上やAI処理などの新しい技術の発展を受けて、改訂を行いました。基本的な構成は初版のままに、製品スペックなどの情報を最新のものに差し替え、また、実習で使用する部品も2018年現在容易に入手できるものに変更し、板金だけでなく3Dプリンタによる制作方法も追加しました。さらに、深層学習などにより飛躍的に進歩した分野について、「ネットワークによる連携と発展」というChapterを新設しています。
また、後述するように、初版はおもに高等学校向けの書籍として作成されましたが、第2版はその他の教育機関での使用も視野に入れました。そのため第2版は、高等学校以外でも使用しやすいように、表現と構成の一部変更を行っています。

・初版について

2007年に発行された初版は、石黒浩・浅田稔・大和信夫共著、ロボット実技学習企画委員会監修で制作されました。ロボット実技学習企画委員会は、(独)科学技術振興機構の平成17年度地域科学館連携支援事業「ヒューマノイド(人型)ロボットを動かす科学技術の実技学習」(工業高校と科学館が連係して行うロボット学習)を実施するために組織した実行委員会を母体に、(工業)高校生を対象としたロボット入門書の出版を目指した、大学・工業高校教論・ロボットベンチャーなどで構成する委員会です。

ロボット実技学習企画委員会 委員
浅田 稔(大阪大学大学院工学研究科知能・創成工学専攻教授)
石黒 浩(大阪大学大学院工学研究科知能・創成工学専攻教授)
大和 信夫(ヴイストン株式会社代表取締役)
戸谷 裕明(大阪府立淀川工科高等学校電子機械科教諭)
岡野 一也(大阪府立城東工科高等学校機械科教諭)
吉野 卓(大阪府立藤井寺工科高等学校メカトロニクス系教論)
高田 好男(大阪市立都島工業高等学校機械電気科科長教論)
谷口 邦彦(文部科学省産学官連携コーディネーター)
亀田 詠二(株式会社ベンチャーラボ関西支社アソシエイツ)
駒田 伊知朗(財団法人大阪科学技術センター普及事業部副部長)

事務局
財団法人大阪科学技術センター
(所属・肩書は初版執筆当時のものです)

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

目次

Chapter1 はじめに
1.1ロボットとは?
1.2ロボットの三つの構成要素
①知覚・認識系
②判断・立案系
③機構・制御系

Chapter2 ロボットの歴史
2.1古代のロボットから現在のロボットに至るまで
①自動人形
②19世紀の芸術と技術
③日本のあやつり・からくり人形
④20世紀のSFに登場するロボット・
⑤現代のロボット
2.2産業用ロボット
①マニピュレータと産業用ロボット
②産業用ロボットに関する標準化
2.3知能ロボット

Chapter3 ロボットのしくみ
3.1人間型ロボットの構成
①行動のための運動機能
②環境認識のためのセンサ
③認識から運動へ
3.2人間に近づくロボット・
①人間に近い情報処理の流れ
②人間に近づくセンサ
③人に近づく腕

Chapter4 モータ
4.1モータの基礎
①磁石と磁界
②電流による磁界
③磁界内の電流
・高校教科書で学ぶロボット①モータの基礎
4.2さまざまなモータ
①直流モータ
②ステッピングモータ
③交流モータ
・高校教科書で学ぶロボット②さまざまなモータ
4.3サーボシステム
①サーボシステムの基本構成
②R/Cサーボモータ.
・高校教科書で学ぶロボット③サーボシステム
4.4運動とカ
①回転運動と往復運動
②カ、トルク、出力
③リンク機構
・高校教科書で学ぶロボットの運動とカ
4.5その他のアクチュエータ
①直動アクチュエータ
②振動アクチュエータ
・高校教科書で学ぶロボット⑤その他のアクチュエータ

Chapter5センサ
5.1センサの概要
5.2外界センサ
①CCDカメラ(視覚センサ、全方位センサ)
②マイクロフォン(聴覚センサ)
③タッチセンサ(触覚センサ)
④超音波センサ(距離センサ)
5.3内界センサ
①ポテンショメータ(接触式角度センサ)
②光学式ロータリエンコーダ(非接触式角度センサ)
③タコメータ(角速度センサ)
④ジャイロセンサ(方位角センサ)
・高校教科書で学ぶロボット⑥センサ

Chapter6機構と運動
6.1ロボットを動作させるための関節機構・
①直交座標ロボット
②円筒座標ロボット
③極座標ロボット
④多関節ロボット
・高校教科書で学ぶロボット⑦ロボットの構成と機構
6.2動作の生成
6.3移動機構
①車輪移動の基本構造
②ロボット用移動機構
③脚による移動機構

Chapter7情報処理
7.1コンピュータの基本構成
①コンピュータ処理の流れ
②コンピュータの基本構成
・高校教科書で学ぶロボット⑧コンピュータの構成
7.2コンピュータの基本動作
①命令実行の流れ
②コンピュータの限界
7.3CPU
①CPUの発達
②コンピュータの選びかた
・高校教科書で学ぶロボット⑨CPUの構成と発展
7.4プログラム開発
・高校教科書で学ぶロボット⑩プログラム言語とアルゴリズム
7.5コンピュータによる制御
1制御システムの構成
②モータの制御のプログラミング
・高校教科書で学ぶロボット⑪制御の基本
7.6人間型ロボットのプログラミング

Chapter8行動の計画と実行
8.1古典的アーキテクチャ
8.2反射行動に基づくアーキテクチャ
8.3反射行動に基づくアーキテクチャの具体例
8.4計画行動
①計測や移動の誤差
②観測時間
③人間による誘導

Chapter9ネットワークによる連携と発展
9.1ネットワーク技術の発展
①コンピュータ通信発展の歴史的経緯
②有線ネットワークと無線ネットワーク
9.2ロボットへのネットワークの搭載
9.3クラウドサーバと連携したロボット
9.4ネットワークでつながった世界「IoT」

Chapter10ロボット製作実習
10.1ロボットを動かすためのソフトウェアRobovieMa
①動作環境
②RobovieMaker2のインストール
③PCへのCPUボードの接続
④ロボットプロジェクトの作成
⑤基本操作
⑥CPUボードとサーボモータ1個を接続して動かす
10.2モーション作成実習
①サーボモータの位置補正について
②基準ポーズについて
③サーボモータの位置補正を行う
Columnモータロックについて
④歩行モーションの作成
⑤歩行モーションにおけるポーズの実行順序
10.3アルミ加工
①材料
②工具
③アルミ板金の作業工程
④各板金の寸法データ
10.4ロボットの組立て(アルミ加工版)
①必要な部品
②ロボットの組立て
10.53Dプリンタ
①材料
②工具
③3Dプリンタでの作業工程
10.6ロボットの組立て(3Dプリンタ版)
①必要な部品
②ロボットの組立て

Chapter11おわりに
11.1結局,ロボットってなに?
11.2ロボットへの期待
11.3現在のロボット
11.4家庭用ロボット
11.5ロボットが必要な未来の世界

Appendix高校の授業でロボットを作る
A.1ロボット産業を支える技能人材の育成
A.2工業高校におけるロボット学習の概要
A.32足歩行の克服
A.4足の改良
A.5成果発表会(デモンストレーション)
A.6成果発表会(ロボット操作体験の指導)
A.7ロボット学習の評価
A.8用語の理解について
A.9総括

参考文献
索引
著者略歴

Chapter1はじめに
1.1ロボットとは?
1.2ロボットの三つの構成要素
おもな内容
・ロボットと呼ばれる機械装置にはどのようなものがあるか?
・ヒューマノイドのコミュニケーション機能の重要性
・ロボットの「知覚・認識」「判断・立案」「機・制御」という三つの機能における、センサや構成部品およびはたらきを制御するための理論

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

イラストで学ぶ ロボット工学 (KS情報科学専門書)

ロボット工学の基礎が身に付く

ストーリー仕立てで進んでいくため、ロボット工学の基本を難なく理解することができます。マニピュレータ制御における数学的・物理的なイメージを掴むこともでき、章末問題を通して計算力が身に付きます。初学者には最初に手に取ってほしい1冊です。

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP

本作品は、横書き表示での閲覧を推奨いたします。縦書き表示にした際には、表示が一部くずれる恐れがあります。
ご利用になるブラウザまたはビューワにより、表示が異なることがございます。

イラストで学ぶ
ロボット工学
木野仁 著
谷口忠大監修

ご注意

①本書を発行するにあたって、内容について万全を期して制作しましたが、万一、ご不審な点や誤り、記載漏れなどお気づきの点がありましたら、出版元まで書面にてご連絡ください。
②本書の内容に関して適用した結果生じたこと、また、適用できなかった結果について、著者および出版社とも一切の責任を負えませんので、あらかじめご了承ください。
③本書に記載されている情報は、2017年7月時点のものです。
④本書に記載されているWEBサイトなどは、予告なく変更されることがあります。
⑤本書に記載されている会社名、製品名、サービス名などは、一般に各社の商標または登録商標です。

イラスト:峰岸桃
図版:TSスタジオ
デザイン:達由則(達デザイン事務所)

監修にあたって

ロボット産業が再び注目されています。人工知能技術の発展は画像認識や音声認識、自然言語処理といった領域に大きなインパクトを与えて、実世界情報処理の可能性を大きく広げました、ディープラーニングに代表される2010年代に入ってからの人工知能ブームは機械学習技術をその本質にしながらも、「人工知能」という一括りの言葉で、多くの人を惹き付け、また、多くの企業や学者、政府、そして一般の人々の未来展望を揺さぶっています。アニメやゲームを通してロボット好きの日本人は特に人工知能の発展と聞くと、万能な家庭用ロボットや産業用、オフィス用のロボットの実現を連想します。「人工知能×ロボティクス」への注目は2010年代後半以降の学問や産業の発展を間違いなく後押ししていくでしょう。
さて、2010年代の人工知能ブームはほぼ「パターン認識ブーム」だと括ることができます。パターン認識とは口ボットが世界を「認識」するための技術です。しかし、ロボットが私達の暮らす世界の中で活動し、私達の仕事を手伝おうとするならば、ロボットは実世界の中で「行動」する必要があります。身体を動かすことは物理学でいえば力学の延長線上に存在し、それは、多くの人工知能研究やIT技術で扱われるような、コンピュータの中に閉じた情報処理とはまた異なった学問と知識と感性を要求します。人工知能×ロボティクスの時代にあっては、そのような実世界でロボットが動くための学問を感覚的に理解し、動かし、語れる人材がより多く求められるでしょう。
本書はこれまでに出版されてきたロボット工学の教科書よりも、より広い層に学んでいただき、できるだけ平易にご理解いただくために、ストーリーを交えながら魅力的な一冊を作ろうと努めました。ストーリーを形作るために、拙著「イラストで学ぶ人工知能概論』で活躍したホイールダック2号くんにホイールダック2号@ホームとして装いも新たに再登場してもらいました。「このホイールダック2号@ホームを家庭用ロボットとしてチューンナップして行く」というストーリーのうえで、皆さんには少しずつロボット工学の知識を学んでいただければと思います。
筆者の木野仁先生は終始エネルギッシュに執筆してくださいました。初めてお会いしたときからガンオタ(ガンダムオタク)教授の称号にふさわしいコテコテのノリで、企画が始まったときから「個性的な一冊」ができ上がることは約束されていたかと思います。編集の横山真吾さんには前作『イラストで学ぶ人工知能概論』に引き続きテンポの良いマネジメントで企画を出版まで導いていただきました。イラストの降岸桃さんには子育ての忙しい中、ホイールダック2号のバージョンアップや新キャラのデザインにも活躍していただきました四人のチームで作ったこの一冊が、皆さんのロボット工学への心の壁を取り除く秘密兵器になれば幸いです。
2017年8月
京都の自宅にて 谷口忠大

はじめに

本書ではロボット工学の中でも、特にロボットのマニピュレータの制御について学んでいく。しかし、対象をマニピュレータ制御に限定したとしても、多くの知識を必要とする。マニピュレータ制御に関して数多くの良書が存在するが、これらは非常に専門性が高く、内容の理解には高度な工学知識を必要とすることが多い。そして、それらの工学知識の根底にあるものは数学と物理である。一方、最近の細分化された大学の学部・学科では、カリキュラム上の問題から、専門性の高い数学・物理の教育に十分な時間を割くことができず、結果として、マニピュレータ制御の良書を理解できるだけの知識を習得できない学生が多い。
そこで本書では、マニピュレータの運動を平面内に限定することで、できるだけ高校や大学初等レベルの基礎的な数学・物理の知識を利用し、マニピュレータ制御を解説していくそれでも、可能な限り重要な数学的記述を省略することなく、ロボット工学における数学的・物理的なイメージを大切にする。本書で基礎的なことを学び、より高度な知識が必要となった際には、本書巻末のブックガイドに紹介するような高度な専門書にチャレンジしてほしい。
また、読者のイメージをできるだけ助けるために、姉妹書である『イラストで学ぶ人工知能概論』に登場するホイールダック2号に再登場してもらうことにしたホイールダック2号にマニピュレータを新設することで、要求されるさまざまな仕事に対し、どのようにマニピュレータを制御するのかを解説していく。
なお、本書の内容の一部は、著者の電子書籍「高校の知識で挑む!本格的なロボット工学(Kindle版)」を大幅に加筆・修正したものであることをお断りしておく。
2017年7月
著者 木野仁

本書の登場人物


ホイールダック2号@ホーム
アヒルに見た目が似ていることから「ホイールダック2号」と名付けられたペンギン型ロボットの改造版シリアルリンク構造をもつマニピュレータ(ロボットアーム)を1基取り付けられることで物体把持など家庭用ロボットとして必要なタスクを実行できるようになった。

ホノカ
未来都市ハカタに住む女子中学生、ひょんなことからホイールダック2号@ホームのモニターに選ばれる。ホイールダック2号のことが大好きで、ホイールダック2号の失敗でひどい目にあっても、いつも笑顔、好きな花はアジサイ。

おじいちゃん
ホノカの祖父ホノカの自宅から徒歩圏内に住んでいる。孫のことを大変可愛がっており、ホノカも毎週のようにおじいちゃんの家に顔を出している。ホノカが連れてきたホイールダック2号を笑顔で招き入れる。実は地元の有力者。

助手
博士の研究所で研究の補助を行う助手、アメリカの一流大学で学位を取得するが、帰国し博士の研究所に参加する。趣味は乗馬、眼鏡は伊達メガネ少女時代の将来の夢は幼稚園の先生学位はPhD。

博士
ホイールダック2号@ホームの生みの親、人工知能やロボット工学を始めとした多岐にわたる分野に精通している。いつの日か、ホイールダック2号が全世界で活躍する日のことを夢見ている。趣味は紅茶と読書学位は博士(工学)。

工場長
博士の研究所に併設される機械工作センターの技術スタッフ。通称、工場長。切削や溶接といった機械工作のみならず、センサ、アクチュエータ、電子回路、さらには計算機のオペレーティングシステムにも精通するスーパーマン、発明家でもあり特許収入は手取りを超える。

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP

目次

監修にあたって
はじめに
第1章 マニピュレータを制御しよう
1.1ロボットとは何か?
1.1.1アニメ・SFの中のロボット
1.1.2学問としてのロボット工学
1.2ロボットの要素技術とマニピュレータ制御
1.2.1ロボットの要素技術
1.2.2マニピュレータ制御
1.3ロボット工学の基礎知識
1.3.1システム
1.3.2マニピュレータの構成要素
1.3.3フィードフォワード制御とフィードバック制御
1.4ホイールダック2号@ホームと学ぼう!
1.4.1ホイールダック2号@ホームのストーリー
1.4.2ホイールダック2号@ホームのスペック

第2章 基本的な制御(並進系)
2.1並進系の力学
2.1.1物理と微分・積分
2.1.2微分と速度・加速度
2.1.3積分と速度・加速度
2.1.4自由落下の公式と微分・積分
2.2並進運動におけるP制御
2.2.1P制御の考え方
2.2.2P制御の動作
2.3並進運動におけるPD制御
2.3.1ダンパ(減衰器)とは
2.3.2並進運動のPD制御

第3章 基本的な制御(回転系)
3.1回転系の力学
3.1.1角速度と角加速度の関係
3.1.2トルクとは、
3.1.3慣性モーメントとは
3.1.4並進系と回転系の類似性
3.2回転運動におけるPD制御

第4章 自由度と座標系
4.1自由度の概念
4.1.1並進系の自由度
4.1.2回転系の自由度
4.1.3並進+回転系の自由度
4.1.4関節の簡易的な表記
4.2手先自由度と関節自由度
4.2.11自由度と2自由度の例
4.2.2目的の運動と手先自由度
4.3非冗長と冗長
4.4関節と手先の座標系

第5章 順運動学と逆運動学
5.1運動学の概念
5.1.1順運動学と逆運動学
5.1.2関節角度センサにおける角度計測
5.2順運動学
5.3逆運動学
5.3.1逆運動学の計算
5.3.2逆運動学の特徴
5.4冗長マニピュレータの運動学

第6章 ロボット用アクチュエータ
6.1ロボット用アクチュエータの種類
6.2電磁駆動アクチュエータ
6.2.1直流モータの仕組み
6.2.2直流モータのトルク制御(モータドライバ)
6.3油圧駆動アクチュエータ
6.4空気圧駆動アクチュエータ
6.5その他のアクチュエータ
6.5.1超音波アクチュエータ
6.6DA変換器(DAコンバータ)

第7章ロボット用センサ
7.1ロボット用センサの種類
7.2角度センサ
7.2.1ポテンショメータの仕組み
7.2.2エンコーダの仕組み
7.3角速度センサ
7.3.1角速度センサの仕組み
7.3.2角度センサを用いた問接的な角速度計測
7.4カセンサ
7.4.1歪ゲージを使った力センサ
7.4.2ホイートストンブリッジ回路を用いた電圧計測
7.5AD変換器(ADコンバータ)
7.5.1AD変換器の仕組み
7.5.2DA/AD変換器を用いたロボットのシステム構築

第8章 関節座標系の位置制御
8.1PTP制御と軌道制御
8.2関節座標系PD制御
8.2.1PD制御を用いた1リンク1関節システムのPTP制御
8.2.2PD制御を用いた2リンク2関節システムのPTP制御
8.3重力補償
8.3.1重力の影響による誤差
8.3.21リンク1関節システムの場合の重力補償
8.3.32リンク2関節システムへの重力補償の拡張
8.4PTP制御を用いた簡易的な軌道制御

第9章 速度制御
9.1ベクトル・行列の基礎
9.1.1ベクトル・行列の定義と基礎的な計算
9.1.2逆行列
9.1.3転置と微分
9.2速度関係とヤコビ行列
9.2.1手先速度と関節角速度の関係
9.2.2手先速度と関節角速度の逆関係
9.3分解速度法による軌道制御
9.4特異姿勢

第10章 力制御と作業座標系PD制御
10.1ロボットの力制御
10.1.1フィードフォワードによる力制御
10.1.2フィードバック型の力制御
10.2作業座標系PD制御法

第11章 人工ポテンシャル法と移動ロボットへの応用
11.1人工ポテンシャル法
11.1.1はじめに
11.1.2ポテンシャルによるPD制御の解説
11.1.3人工ポテンシャル法
11.2作業座標系制御における障害物回避
11.2.1マニピュレータの障害物回避
11.2.2移動ロボットの位置制御への応用

第12章 解析力学の基礎
12.1静力学と動力学
12.1.1バネ問題
12.1.2運動方程式とは
12.1.31リンク1関節マニピュレータの運動方程式
12.2ラグランジュ法による運動方程式の導出
12.2.1ニュートン・オイラー法とラグランジュ法
12.2.2一般化座標・一般化速度・一般化力
12.2.3ラグランジュの運動方程式
12.3運動方程式の計算例
12.3.1【計算例1】斜面を滑る物体の運動
12.3.2【計算例2】1リンク1関節システム
12.3.3【計算例3】並進と回転の複合したシステム

第13章 ロボットの動力学
13.12リンク2関節マニピュレータの運動方程式
13.2順動力学と逆動力学
13.2.1動力学の分類
13.2.2順動力学
13.2.3逆動力学
13.3計算トルク法による軌道制御
13.3.1並進1自由度システムの例
13.3.2マニピュレータにおける計算トルク法
13.3.3アクチュエータの運動方程式

第14章 インピーダンス制御
14.1ドアノブ問題
14.1.1はじめに
14.1.2ドアノブ問題の整理
14.2電気インピーダンスと機械インピーダンス
14.3インピーダンス制御のイメージ
14.4インピーダンス制御の方法
14.4.1はじめに
14.4.2力制御ベースのインピーダンス制御
14.4.3位置制御ベースのインピーダンス制御
14.5コンプライアンス制御

第15章 まとめ
15.1ホイールダック2号@ホームの開発物語:総集編
15.2マニピュレータの構造
15.2.1シリアルリンク構造とパラレルリンク構造
15.2.2パラレルワイヤ駆動システム
15.2.3腱駆動ロボット
15.3受動歩行ロボット
15.4ロボットの知能化

巻末付録
A.1PID制御を用いたより高精度な位置制御
A.1.1PD制御における摩擦の影響
A.1.2PID制御を使った摩擦補償

ブックガイド
おわりに
章末問題の解答例

第1章 マニピュレータを制御しよう

STORY
スフィンクスを倒して研究所に帰ってきたホイールダック2号.しかし、想像以上に損傷は激しく、博士は思い切ってホイールダック2号の修復とパワーアップをすることにした。博士がホイールダック2号の修復を終えると、なんとホイールダック2号にはマニピュレータ(ロボットアーム)が付いていた。博士は言う「これからは家庭用ロボットの時代だよ、人を助けるためには腕1本くらいないとね」家庭用ロボットとして進化したホイールダック2号@ホームの誕生である!

図1.1改造によりマニピュレータ(ロボットアーム)が付き、ホイールダック2号@ホームとして生まれ変わったホイールダック2号

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP

わかりやすい ロボットシステム入門 ―メカニズムから制御,システムまで― (改訂3版)

ロボットシステムを包括的に理解

ここ数年で大きく変化しているロボットやその技術について、包括的に理解できるロボット工学定番の教科書です。旧版の内容を見直して、ロボットシステムの基礎から応用技術まで丁寧に解説されています。改訂によって、技術的・社会的な変化がよくわかるようになっています。

松日楽 信人 (著), 大明 準治 (著)
出版社 : オーム社; 改訂3版 (2020/2/27)、出典:出版社HP

本電子書籍は、奥付に表記した紙版書籍を底本として制作したものです。電子書籍に不要な文言が含まれている場合があります。また、内容を更新する場合があります。

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(電話03-5244-5088.FAX03-5244-5089,e-mail:info@jcopy.or.jp)
《出版者著作権管理機構委託出版物》

はじめに

ロボットは創造力を高めるのに優れた題材だと思う。…をするロボットを考えることから始まり、その設計、機構、制御、実験まですべての要素が含まれている。特に最初の…をするロボットの定義、あるいは仕様を決めることが最も重要である。それに対する解答はもちろん一つではない。そして動くものを作る楽しさが、ロボットの魅力といってよいだろう。まだまだ鉄腕アトムのような知能ロボットは実現できないが、着実に少しずつ進歩している。
このような背景から本書では、ロボットを動かすにはどうすればよいのか、口ボットの構成から制御方法までを具体的に解説する。制御するためには制御対象がどのような構造で、どのような部品からなり、どのように使われるのか、知らなければならない。本書ではロボットに対する素朴な疑問に答えるように次のような構成で書かれている。専門書ではなく入門書としてロボット技術について、ロボットを設計して動かすまでを一貫した構成でわかりやすく解説した。ロボットはシステムであり、非常に多くの知識から成り立っている。しかし、それらはロボットを構成するために一つのシナリオにより、個々の知識には位置づけがあり、多くの技術が組み込まれているのである。本書によりロボットの設計・機構・制御のシナリオが理解できれば、読者は必要に応じて専門書で知識を補って欲しい。
●ロボットはどのような目的で使われているのだろうか?
●ロボットにはどのような形のものがあるのだろうか?
●ロボットの関節はどのような構造で、どのような部品からなっているのだろうか?
●ロボットにはたくさんの関節やモータがある、どのように制御すれば動くのだろうか?
●ロボットに仕事をさせるには、どのように指令すればよいのだろうか?
●ロボットはこれからどんなことに応用されるのだろうか?
今まで、ロボットについて勉強する本はいくつかあったと思うが、ロボットをシステムシナリオという視点から解説した本はなかったように感じている。本書がその一助となれば幸いである。
なお、本書は松日楽が湘南工科大学電気工学科3年生を対象に1998年後期から「メカトロニクス」(ロボット工学入門)の授業として講義した内容をまとめ直し、制御系については大明が書き直したものである。本書を執筆しながら、口ボティクスは本当に広い範囲に及んでいることを改めて実感した。
最後に、本書をまとめるに当たり(株)東芝小向工場主幹飯倉者一氏には本書を書くきっかけを与えていただいた。また、本書には(株)東芝研究開発センターで開発された多くのロボットを写真で紹介してある。諸先輩・同僚達の貴重な研究成果である。さらに、東京工業大学教授広瀬茂男氏、早稲田大学教授菅野重樹氏、本田技研工業(株)、ソニー株からは興味深いロボットの写真を提供していただいた。これらにより内容が充実したことは言うまでもない。このほかに、(株)オーム社出版部の方々には大変お世話になった。ここに心より感謝する次第である。
1999年10月
松日楽信人
大明準治

松日楽 信人 (著), 大明 準治 (著)
出版社 : オーム社; 改訂3版 (2020/2/27)、出典:出版社HP

第2版にあたり

第1版最終稿を仕上げている最中に、原子力施設事故が発生した。翌年はミレニアムということで忘れられない時期であった。元々、筆者の覚書として書いたつもりの拙本であったが、意外にも大学の先生方が教科書に使って下さった。10年も継続していることが、全くの想定外である。当初から、皆様のご指摘を受けたくさんの修正を加えてきた。研究論文と違って、本当に気をつかう作業が多く、感謝に絶えることがない。もちろん、今でも覚書の位置付けであるので、その点はご理解頂きたい。
さて、第2版では、執筆後10年経ったことから、技術動向や市場について見直した。新しいロボットが次々と研究開発されていること、市場も変化が激しいことに、改めて気付かされた、個々の技術は進歩していくが、何をするためのロボット/機械か、そのための仕様は何か、は変わることのない基本である。10章に追加した経済産業省のロボット開発ロードマップを見ると、万博、共通基盤、要素技術、知能化、生活支援と、開発フェーズに従い施策が進められていることが良くわかる。こういった施策がこれまで説明してきた技術開発の大きな支えとなっていることは明白である。また、この本が、この発展の時期に少しでも貢献できていれば、大変な幸いである。第1版では1ページしかなかった10章では、これから重要となる技術などを著者の判断で書かせて頂いた、まさに、ここを書けたのが自分の10年に相当する部分であった。次々の10年の度にロボット技術が広がっていくことを信じてやまない。
最後に、総合科学技術会議科学技術連携施策群にて次世代ロボットを考える貴重な機会を与えて頂いた故首都大学東京谷江和雄教授に第2版を捧げたい。
平成22年6月
松日楽人

この10年で、次世代ロボットのコンセプトやプラットフォーム作りが前進し、ロボットに使える要素技術は大きく進歩した。また、ロボットコンテストが多く行われ、ロボット教材も増えて、人材育成の面からも、ロボットの研究開発の厚みがかなり増してきた。しかしながら、外野から見ている方々には、身の回りで役に立つロボットがいっこうに出てこない、という印象が強いだろう。現在のロボット研究開発は、人間と同じことをやらせようとするのが主流であるが、単純な作業や動作しかできないのが実情である。それが、長い目で見て必要な研究開発であることは間違いないが、今一番求められているのは、現在使える要素技術で作れて、かつ、役に立つロボットをいかに定義するか?ということであろう。それには、1にアイディア、2にアイディア、3、4がなくて、5にシステムインテグレーションのセンスである。例えば、現在、実用化が進みつつあるロボットは、自律ではなくて、人間をアシストするものであったり、人間型とは全く別のロボットであったりする。
さて、システムとしてのロボットは、要素技術の研究開発のプラットフォームに非常に適している。若い方々には、まず、要素技術の研究開発を徹底的に深耕してもらいたい。ロボットコンテストは趣味程度にして、本業は数学(数理)や物理(力学)など、新しい理論や数式モデルを作れるようになるための基礎を固めてもらいたい。最初のうちは、昼は数式の方のモデル作り、夜はロボットの方のモデル作りというのが望ましい姿である。そして、専門性を高め、要素技術を極めてから、思いっきりアイディアを出してロボットシステムの研究開発に邁進して欲しい。その際、ロボットの形にこだわる必要は全くないのである。
20世紀から21世紀にかけてハードウェアは、ものすごく進歩した。もちろん、ソフトウェア(アルゴリズム)も進歩したのだが、それは、昔、リアルタイムでは不可能と考えられていたアルゴリズムが昨今のCPUパワーやメモリ容量によって実現可能になったケースが多いのではないかと思われる。すなわち、新しいアルゴリズムの実現には、故きを温ねることにもヒントがありそうである。分野を問わず、様々な文献やWebの情報にあたって頂きたい。
平成22年6月
大明治

松日楽 信人 (著), 大明 準治 (著)
出版社 : オーム社; 改訂3版 (2020/2/27)、出典:出版社HP

第3版にあたり

初版から20年、第2版から10年、と予想外の早さで時間が過ぎた。とくにこの10年では、ROS(Robot Operating System)の普及、ドローン、自動運転自動車、ディープラーニング、AIが急速に進歩し、実用化も一気に進んだ。しかし、いまだ身近なところで動いているのは家庭用クリーナロボットぐらいであろうか?アシスト系も着実に広がりつつあるが、すぐ周りには見当たらない人手不足に向けたロボット化の適用や、2020年のオリンピック、パラリンビックに向けて、空港での応用やビルなどでのショーケース化が進んでいる。2018年はWorld Robot Summit(WRS)が2020年のプレ大会として大々的に実施された、現時点ではロボットへの期待はピークに達しているかのようである。
幸いにも筆者らは、いまだロボット研究開発の中にいる。産業用ロボットの国内市場も以前からの目標であった1兆円を目前にしているドローンや自動運転車がロボットだとしたら、大変大きな市場になったともいえる、世の中はさらに、IoT、Industry4.0、Society5.0、SDGsなどと、相変わらず数多くのキーワードが展開されている。システム化では第5世代移動通信システム(5G)の普及で、さらに進むと考えられる。明らかに、ロボットも大きなシステムの中での要素としての進歩、システムの中への組み込みがより進むと予想される。次の10年の際には、どこまで進んでいるか、大変興味深い。
自分の経験をまとめたこの本を書いて、予想外に教科書として使われていることに驚いたが、大変ありがたいことである。とくにこの本は、普通の部分と、進歩の部分、市場変化の部分があり、その都度、改訂版で修正されつつ進歩している。あまりこのような成長する本とも言えるものは聞いたことがない。できれば、今後も継続できたらと願いたい。さて、第3版では、市場変化、普及した測域センサ、IoT、AIなどについても追記した。必ずしも筆者らが実施した内容ではないので、私見的な記述もあることをご容赦願いたい。また、ロボットの状況変化の記述などはあえて比較のために残した。この第3版が旧版に続き若いロボット研究者、教育者の参考になることを期待したい。
令和元年12月
松日楽信人

第2版から、さらに10年が経過した。基本は変えていないが、第6、8章で、少しアドバンストな制御を追加した。著者が考案し検証した内容も含んでいる。
さて、世はAIブームであり、ロボットも同じ文脈で語られることが多くなった。技術的には、人間が逐一教示点を与えるのではない、深層学習による自律的な動作の獲得が進みつつある。第2版で「新しいアルゴリズムの実現には故きを温ねよ」と書いたが、多層ニューラルネットの見直しと近年のCPUパワーやメモリ容量の進歩でもたらされた深層学習は温故知新の好例ではないだろうか。
また、ロボットコンテストの方も、ますます盛んになり、その代表格である高専ロボコンでは、あっと驚く戦略や技術の応酬がなされている。特に上位に入るチームは、見た目に器用なもの作りだけではなく、計算機上に構築したモデルに基づくシミュレーションによって再現性のある戦略を練っているように見受けられる。これも第2版でふれたことだが、数理や力学を駆使して、新しい理論や数式モデルを作れるようになるための基礎ができているとの印象を持った。
AIの時代になっても、AIがロボットシステムを作ってくれるわけではない。サイバーフィジカルシステム(CPS)という概念も流行り出したが、フィジカルの部分は人間が作り出すことに変わりはないのである。これから、ますます計算機パワーの援用が多くはなろうが、ロボットの機構・制御・情報に関する要素やシステム構築に関する技術を身につける重要性は変わらない。ただし、PythonやROS(Robot Operating System)のようなオープンソースの時代になり、他の人が作ったオブジェクト指向のライブラリを解釈・流用してロボットシステムを構築する素養が求められるようになった。これは、高度な機能を持つシステム構築への近道であると同時に、自分で好き勝手に考えるシステム構築とは別な苦労を生むことを覚悟する必要がある。それを乗り越えて、技術力に自信がついたら、是非、その成果をオープンソースのコミュニティへ還元してもらいたい。
従来、ハードでもソフトでもクローズドな戦略をとってきた産業用ロボットメーカもオープン化の波を無視できなくなってきている。各メーカの技術の動向を知るには、特許を読むのが一番であり、特許庁のWebサイトを折に触れ参照することをお勧めする。
今和元年12月
大明準治

松日楽 信人 (著), 大明 準治 (著)
出版社 : オーム社; 改訂3版 (2020/2/27)、出典:出版社HP

目次

1章 ロボットとメカトロニクス
1-1ロボットとメカトロニクスの関係は
1-2ロボットの定義
1-3ロボットはシステム技術である
1-4ロボットはどこに適用されているのか
1-5ロボットの現状は
トライアル1

2章 ロボットの形
2-1ロボットはどんな形をしているのか
2-2ロボットに必要な関節数は
2-3ロボットと専用機械の違いは何か
トライアル2

3章 ロボットのメカニズム
3-1ロボットの関節はどうなっているのか
3-2関節はどのように構成するのか
3-3動力はどうやって関節へ伝えるのか
3-4減速機の役割とは何か
3-5ロボット用の減速機にはどのようなものがあるのか
1遊星歯車減速機
2ハーモニックドライブ減速機
3内接式遊星歯車
4ウォームギア
5ボールねじ
3-6減速機に求められる性能とは何か
1小形高効率
2バックドライブ
3高剛性
4バックラッシとヒステリシス
5無負荷ランニングトルク
3-7減速機を使わないロボットとは
トライアル3

4章 ロボットのセンサ
4-1位置・速度センサはロボット制御の基本
1エンコーダ
2ポテンショメータ
3レゾルバ
4タコジェネレータ
4-2カセンサはどうなっているのか
1RCCデバイス
2力検出の原理
36軸力センサ
4-3近くのものを検出するには
1うず電流式近接センサ
2静電容量式近接センサ
3光学式近接センサ
4機械式リミットスイッチ
4-4どうやって距離を測るのか
1超音波式距離センサ
2レンジファインダ
33次元形状計測法
4能動カメラ法
4-5環境計測に必須な測域センサ
4-6そのほかにどんなセンサがあるのか
4-7センサと制御の関係はどうなっているのか
トライアル4

5章 ロボットのアクチュエータ
5-1アクチュエータにはどんな種類があるのか
1アクチュエータの分類
2油圧アクチュエータ
3空気圧アクチュエータ
4超音波モータ
5SMA
6FMA
5-2電磁力モータをモデル化してみよう
5-3サーボモータの特徴とは
5-4モータ駆動部を設計してみよう
5-5モータはどのように制御されているのか
1モータのトルク(電流)制御
2モータの速度制御
3モータの位置制御
トライアル5

6章 ロボット関節のフィードバック制御
6-1関節のモデル化とダイナミクスを知ろう
6-2運動方程式のパラメータを同定しよう
6-3位置・速度制御系を設計しよう
1速度制御系の検討
2位置制御系の設計
6-4機械共振を考慮したモデル化と制御ゲインの関係
6-5目標軌道生成とフィードフォワードの効果
1台形加減速軌道とS字加減速軌道
2フィードフォワードの効果
6-6外乱オブザーバとは何か
6-7振動抑制制御って、どうやるのか
トライアル6

7章 ロボットの運動学
7-1位置と姿勢の表現方法を知ろう
1同次変換行列とは
2オイラー角による変換
3ロール・ピッチ・ヨー角による変換
4単位クォータニオン(オイラーパラメータ)による変換
7-2関節リンクパラメータはどこを表すのか
7-3ピューマ形ロボットの順運動学を解こう
7-4逆運動学一先端の位置から関節角を求めるには
7-5ロボットのヤコビ行列とは何か
1ヤコビ行列
2静力学とヤコビ行列
3ロボットアームの特異姿勢
トライアル7

8章 ロボットの運動制御
8-1ロボットの位置制御はどうするのか
1PTP制御
2CP制御
3多項式による逐次的軌道生成
8-2ヤコビ行列を用いた逆運動学の解法とは
1J(逆ヤコビ行列)による逆運動学の解法
2J(転置ヤコビ行列)による逆運動学の解法
8-3ロボットの動的な位置制御を学ぼう
1ロボット(多リンク系)の運動方程式
22自由度アームのダイナミクス
8-4位置制御系に振動抑制制御を追加してみよう
8-5これから重要となるロボットの力制御とは
1インピーダンス制御の考え方
2力制御
3カセンサを用いないスティフネス制御
4動力学モデルに基づくセンサレスカ・インピーダンス制御
トライアル8

9章 ロボットの知能化一自律制御と遠隔操作
9-1自律制御ロボットとは何か
9-2ロボット言語で知能化を考えてみよう
9-3遠隔操作形マニピュレータとは
9-4マスタスレーブマニピュレータの制御とは
9-5バーチャルリアリティとテレロボティクスの共通性は
9-6遠隔操作か自律制御か
トライアル9

10章 ロボットの課題と将来
10-1ますます重要になるシステムインテグレーション
10-2次世代ロボットとは
10-3次世代ロボットの市場創出
10-4要素技術の進歩
10-5ネットワーク技術との融合は欠かせない
10-6サービスロボットの標準化
トライアル10

トライアルの解答
参考文献
次に読むべき本
索引

リフレッシュ
1メカトロニクスの語源
2ロボットの語源とロボット工学の3原則
3マニピュレータ
4スカラ形ロボット
5ユニークな減速機
6不思議な車
7機械剛性と制御の関係
8ロボットの性能を表すには
9初期化動作
10ロボットでつかむ
11動作範囲の管理
12モーションキャプチャ
13手と腕
14FMAの開発
15フラシレスDCサーボモータとACサーボモータ
16JとGD^2
17PI制御とI-P制御
18PD制御について
19制御理論は産業用ロボットにあまり貢献していない?
20残留振動と強制振動について
21仮想仕事の原理
22腕の姿勢とヤコビ行列
23冗長自由度とは
24動力学と逆動力学
25振動抑制制御と慣性比
26サーボ制御の実装経験
27ヤコビ行列の大活躍
28ソフトリアルタイムとハードリアルタイム
29ビジュアルフィードバックとビジュアルサーボイング
30マスタスレープマニピュレータの研究動向
31ロボット鉗子
32宇宙ロボットの遠隔操作実験
33ロボコン
34ROSやAIの普及
35一人で産官学?

1章 ロボットとメカトロニクス

ロボットという言葉は新聞、雑誌、テレビなどからよく耳にする。しかし、口ボットとは何を指しているのだろうか?ロボットとメカトロニクスとは何が違うのだろうか?また、ロボットといっても身の回りのどこにいるのだろうか?本章ではロボットの現状について紹介したい。

1-1ロボットとメカトロニクスの関係は
現在、ほとんどの電気製品にマイコンが使われているように、最近の機械は図1.1に示すようにコンピュータ制御され、以前と比べるときめ細かな制御が可能となっている。扇風機ですら風の強弱から首の振り方まで自由自在に制御できるようになっており、人が快適と感じる運転パターンをプログラムすることができる。また、CPUを含め計算機の周辺装置も普及し、簡単に制御系が構成できるようになった。このような機器はメカトロニクス機器といわれ、図1・2に示すように多くの機器が開発されている。その基本となるのが、フィードバック制御

◆図1.1メカトロニクスの基本◆
リフレッシュ1 メカトロニクスの語源
メカトロニクス(Mechatronics)はメカニクス(Mechanics)とエレクトロニクス(Electronics)を組み合わせた日本で生まれた造語であり、現在世界中で使われている。その意味するところは、「メカトロニクスとは、機械と電子の一体化技術のことであり、単に結合するだけでなく、互いに融合し、互いの長所を生かし、影響し合いながら最適化を図ること」である。

松日楽 信人 (著), 大明 準治 (著)
出版社 : オーム社; 改訂3版 (2020/2/27)、出典:出版社HP

ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか 工学に立ちはだかる「究極の力学構造」

ロボットの仕組みがよくわかる

お掃除ロボットが“生きた化石”に見える、ワイヤ駆動のヒューマノイドが“馬”に見えるなど、多くの先端ロボットはなぜか生き物の身体構造に近づいていくという不思議があります。本書では工学の視点から初めて見えてくる「生体」の精巧な力学構造を解明し、生き物の限界を超えるロボット機構学について語られています。

本作品は、縦書き表示での閲覧を推奨いたします。横書き表示にした際には、表示が一部くずれる恐れがあります。
また、画面が小さい端末の場合、文字サイズの拡大等により稀に体裁に違和感が生じることがあります。その際は、通常の文字サイズにお戻しのうえお読みください。

ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか
工学に立ちはだかる「究極の力学構造」
鈴森康一

扉デザイン/二ノ宮E(TYPEFACE)
図版/さくら工芸社

はじめに

私はこれまで、さまざまなロボットの設計に携わってきた。ロボットを設計するにあたって、どうしても気にせざるを得ない存在の一つが「生き物」である。生き物は、自然界で長い進化の歴史を経て生まれたもの、いわば「神様が設計したロボット」だからである。
ロボット設計者としての生き物への関心は、たとえば次のようなものだ。
どのような関節やモータ(動力)を使って動いているのか?どのような強度設計がなされているのか?―好むと好まざるとにかかわらず、私たちロボット設計者は、ロボットのお手本とも言える生き物の設計に興味を抱いてしまう。
ロボット工学は、人工知能や画像認識、制御工学にセンサ……等々、さまざまな専門分野に分かれているが、その中で私は、特にロボットのメカニズムを主な専門としている。
ロボットのメカニズム設計という立場からロボットとヒトを含めた生き物とを見比べると、数多くの共通点や類似点があることに気づく。外観だけではない。内部構造や動くしくみを比較しても、両者にはたくさんの共通点があるのだ。
なかでも興味深いのは、「意図せざる」共通点がいくつも見つかることだ。ロボット作りはもともと、ヒトをはじめとする生き物を模倣するところからスタートした。したがって、生き物をまねて作られたロボットが生き物に似るのは当然のことだ。ところが、本来は生き物をまねる必要のないロボットや、設計者自身は生き物を意識せずに設計したであろうロボットたちもまた、どういうわけか生き物に「似てしまう」のである。
8年前に私は、『ロボット機構学』(コロナ社)という、ロボットのメカニズムの設計や解析に関する専門書を書いた。同書をまとめる過程で、ロボット機構学の理論や知見には、そのまま生き物のからだに適用できる部分がたくさんあることに気づいた。ロボットにおける理論がうまく生き物に適用できるとき、そこには「神様が施した設計の意図」が透かし見えてくる。
たとえば、ウマという生き物を「走るロボット」という観点から見つめ直すと、その工夫された構造やメカニズムに感嘆し、大いなる自然の中に設計ポリシー”の存在を感じてしまうのだ。
20代の頃の私にも、こんな実体験がある。FMA(フレキシブルマイクロアクチュエータ)という柔らかいからだを持ったロボットを開発したときのことだ。工学の知識やコンピュータを使って考えに考えぬいて作りだしたFMAを学会やマスコミに発表した際、ヒトのからだの「ある部分」とまったく同じ構造であるという指摘を受けた。それがどこなのかは本文を楽しみにしていただくとして、あまりに意外で予想もしていなかった部位だけに本当に驚かされた。
駆け出しの設計者であった私が知恵をふり絞って一生懸命考えて行き着いた場所に、実は生き物が先着していた――。私と同じことを神様がすでに考えていたのである。感慨深く、ショッキングな体験であった。
本書では、これら私自身の経験を例にとり、ロボット設計者が一生懸命に考えて作製したロボットと、自然が築き上げた(あるいは神様が設計したと言うべきか)生き物の構造とが、どうしても「似てきてしまう」事実を紹介していく。そして、その背景に力学的かつ幾何学的な理由が明確に存在することもお伝えしたい。
一方で、ロボットと生き物との間に横たわる大きな違いを感じる場面についても、お話ししていくつもりだ。「自然は素晴らしい。長い進化の中で工学的にも納得のいく究極の設計が実現されている」というのは本書の主要なテーマの一つではあるが、私は自然が作り上げた生き物の設計を絶対視しているわけではない。ロボットにはロボットの、生き物とは違った設計思想や可能性があると考えているからだ。
本書の後半では、「神様の設計を超える」挑戦とも言えるロボット設計独自の発想や試みについて語ってみたい。たとえば、車輪やプロペラ、スクリューといった回転機構は、ロボット設計者が最も好んで使うものだが、生き物のからだにはクルクル回る回転機構はほぼ皆無である。
神様はなぜ、回転機構を使わないのか?あるいは、ロボット設計者が好んで使う金属材料を使わないのはなぜか?強い骨や歯、爪、外敵から身を守る硬い皮膚が作れるのに……。「なぜ似てしまうのか」という問いかけのさらにその先に、ロボット工学者ならではの、生き物に対する新たな視点が生まれうることも、あわせて紹介していこうと思う。
自然界で長い進化と淘汰の歴史を経て生まれた生き物と、エンジニアが知恵をしぼって工学の知識を駆使して設計したロボットー対極にある両者の構造や動くしくみを、ロボット設計者の視点から眺めてみる旅に、しばしお付き合いいただきたい。
そこに広がる風景からは、ロボットや生き物に対する視野の広がり、神様の設計の意図を工学の知見で理解してゆく面白さ、自然の素晴らしさへの感銘と畏敬の念、動物の体構造から得られる新しいロボット設計のヒント、そしてロボットだけに許される「神様の設計」を超える可能性……、さまざまなものが見えてくるはずだ。

目次

はじめに
I部 「まねる」と「似てしまう」のあいだ
第1章 それは「似せる」ことから始まった
疑似人間を作りたい!/「似せる」意味を考えてみる/生き物に「似てしまう」ロボットたち

Ⅱ部 ロボットはなぜ、生き物に似てしまうのか?
第2章 巨大ショベルカーとゾウがそっくり!?―ロボットも生き物も、力学法則から逃げられない
ゾウとアリとショベルカー/横着者の設計者が見落としたもの/力学法則は空中も支配する/飛行姿勢も似てしまう?/ティラノサウルスの姿を変えた力学法則

第3章 「足を動かす順序」まで似てしまう!?―生き物はいつも先手を打っている
脚の運びが「似てしまう」/4脚歩行と「倒れないテーブル」の共通点は?/四つん這いで歩いてみよう!/ウマの肘はどこにある?/脚が増えたらどうなる?―6脚歩行の場合/支持多角形は必要不可欠なのか?/大腸内を自走するロボットが似てしまう相手は?/波を使ってからだを動かす/謎を解いたその先に……/カメラの中に尺取虫?/もう一つの移動方式――そして
謎は残された

第4章 2足歩行ロボットはテニスプレーヤー!?―なぜ彼らは「中腰」なのか?
ヒトの腕は何方向に動く?/マジックナンバー6/マジックナンバーより多いアーム、少ないアーム/UFOキャッチャーの自由度はいくつ?/「生きる戦略」で自由度を変える生き物たち/なぜ3つのパーツでできているのか/2足歩行ロボットはなぜ”中腰”なのか?―消えた自由度の謎/クルム伊達公子のレシーブ姿勢

第5章 柔らかいからだと柔らかい動き―なぜ、ロボットにも生き物にも“いい加減さ”が必要なのか?
“いい加減さ“を求めはじめたロボットたち/コンプライアンスを重視せよ/ピーカを摘むのはなぜ難しいか?/まさか自分のからだに似ているとは……/硬いからだを柔らかく動かす/ロボットに正座させる?/ヒトの膝関節の驚異/「ロボットが背中をかく」ためにはどうすればいいか?

Ⅲ部 ロボットを誘惑する生き物たち―工学から見た生き物のからだの機能美
第6章 ロボット設計者が憧れる究極のモーターロボットはなぜ、握手が苦手なのか?
減速機の役割―なぜ速度を落とす必要があるのか?筋肉とは「似て非なる」人工筋肉/筋肉とアクチュエータの共通点/ワニの顎に見る筋肉の弱点/筋肉に隠された魅惑のメカニズム/握手と死後硬直の奇妙な関係/動物の筋肉はムダに多い?/ロボットではあり得ない筋構成/ロボットはなぜキャッチボールができないか?

第7章 神は細部に宿る―思わずまねたくなる生き物たちの微細構造
サメ肌とアメンボの足に魅せられて/まだまだあるロボット設計者のアイディアの源泉/「神の製造技術」を求めて/「自己組織化」の応用/自ら故障を修理するロボット、子孫を残すロボット/「異方性」に注目せよ垂直壁を歩く足に求められる条件/「摘む」より「手放す」が難しい

第8章 ロボットと生き物の境界線――自然治癒するロボットはなぜ難しいか?
「生き物に見える」ロボットの特徴を考える/自己複製はなぜ難しいか?/「形を最適化する」エンジニアの設計手法/神様はまったく異なる設計手法を持っている/現地生産か、工場生産か

Ⅳ部 神に挑む―「生き物を超える」ロボット作りを目指して
第9章 神様に素朴な質問を投げかけてみる―人間にはなぜ、2本しか腕がないのか?
なぜ金属を使わないのか?/重くなるから?―ではない!/磁石に引き寄せられる生き物たち――彼らは「例外」なのか?/現地生産方式の限界生産方式が材料を選ぶ/では、回転機構を使わない理由は?/「車輪機構は凸凹道に不向き」に反論する/身長差の段上に上る方法/大きな段差を乗り越える車輪機構は実現可能!/チューブと電線、血管と神経/難題を解決する“裏技”/生き物の形は「洗練された設計」なのか?/マイナーチェンジを重ねる生き物、フルモデルチェンジを行うロボット

エピローグ 「カンブリア紀」に向かうロボットたち―ロボットはなぜ、急速に“進化“できたのか?
お手本を乗り越えてこそ/ロボット版「カンブリア大爆発」を!

あとがき
参考文献

Ⅰ部 「まねる」と、「似てしまう」のあいだ