【最新】地球科学について学ぶためのおすすめ本 – 中高の基礎科目から大学レベルまで

ページコンテンツ

地球科学とは?何を学べる?

地球科学とは地球そのものを研究する学問で、その略称としてよく耳にするのが地学です。地球科学を学ぶことで、科学的教養だけでなく歴史的および世界的な幅広い視野が身につきます。ここでは、地球科学について学ぶのに学生から社会人にまでおすすめの本をご紹介します。

ランキングも確認する
出典:出版社HP

カラー図解 地球科学入門 地球の観察――地質・地形・地球史を読み解く

ビジュアルで楽しみながら学ぶ

地球科学のこれまでの知見や資料を網羅した決定版です。そもそも地球とはどんな惑星か、そんな地球の歴史から順に徹底的に解説されています。さらに、フルカラーで写真や図が多いため、視覚的に理解しやすいです。初学者から基本を復習し直したい中級者まで幅広い方におすすめの1冊です。

平 朝彦 (著), 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (著)
出版社 : 講談社 (2020/11/19)、出典:出版社HP

はじめに 観察の重要性

私たちは、科学技術を用いて、宇宙の果てから太陽系、分子、原子、そして物質の最小単位まで、広大な時空と生命の謎を解き明かしてきた。近年、コンピュータとそれをつなぐネットワークの発達によって莫大なデータを処理できるようになり、これまでの帰納、演繹という伝統的な手法から、データサイエンス、予測科学、そして人工知能という未知の領域開拓を可能とする手法も使えるようになった。それらを用いての経済発展、社会改革、そして人間の進化に繋がるあたらしいイノベーションが起こってきた。
一方、私たちは今、地球史における最大の規模の変化をこの惑星に引き起こしている。地球創成期に、惑星どうしの衝突による月の形成、原始生命の誕生、光合成生物の発達による酸素大気の発生、隕石の衝突による恐竜の絶滅など、地球史では劇的なイベントが幾つも起こった。しかし、人間(ホモサピエンス)の発展がここ100年ほどの間に地球に与えてきたインパクトは、質的に全く異なるものであり、新しい地質時代の到来(これを人新世という)として理解されつつある。これから、地球と私たちの未来に何が起こるのか、新たな俯瞰的な科学の視点で見直す必要が生じている。そして、私たちの住処である地球とは一体どういう星なのか、深く理解することが今、強く求められている。

本書は、科学の原点である「観察」という最も基本的な手法を基軸に、主に固体地球と呼ばれる部分、特に地殻の地形、地質、地球物理的な特徴、そして地球史の解読について、豊富な映像資料と写真、地形図などを用いて、学生諸君、教育現場の方々、そして自然に興味のある人々に向けて解説したものである。地球で起こる現象は複雑であり、現在起こっていることは、過去を解く鍵でもあり、また時には、全く通用しない偏った知識でもある。地球で起こる現象の本質に迫るには、深い洞察が求められる。深い洞察は、注意深い、また、時に発想の転換を背景とした、鋭い観察から得られる。私は、推理小説などで見かける“現場百度”(事件の現場は百回訪れて、見逃しがないか、また、仮説は立証できるのか、粘り強く推理を組み立てる)という言葉が好きである。特に、地層の露頭における観察は、さまざまな見方ができるので、何度も現場に足を運び、また人に説明することによって、考えをまとめたり、問題点を洗い出したりすることができる。観察という手法は、データを解釈したり、画像を読み取ったりする際にも基本となる。例えばGoogleEarthは、全地球の観察を可能とするツールであり、実に興味深い情報がそこに存在している。太陽系の他の天体においては、探査機による画像の観察が最も重要な科学の基礎となっている。

本書の構想は、15年以上前から私のなかに芽生えており、特に地層の観察をビデオで撮影し、電子媒体を利用して、できるだけ多くの学生諸君や学校の先生方の役に立つものにしたいと考えていた。2001年から2007年にかけて執筆した3冊の大学生向け教科書、『地質学1地球のダイナミックス』、『地質学2地層の解読』そして『地質学3地球史の探求』の副読本として、映像や写真で書籍の記述と現場のフィールド体験とを合体させる、という構想でもあった。したがって、本書と上記3冊は今でも相補的な関係にあることに変わりない。
本書の制作の道のりは簡単ではなかった。まず、同時進行的に起こったデジタル撮影技術の進歩があり、インターネットの急速な普及、そしてパソコン、タブレット、スマートフォンなど利用する電子機器の大きな変化である。一方、本書の内容も、海陸の境界を無くして、地球全体を眺めるという目的を達するために、カバーする領域も増え、だんだんと膨大なデータ量となっていった。全体を簡潔に俯瞰できるという紙媒体の特徴と、動画や多数の写真データを有機的に組み合わせるために、紙冊子体(カラー図解と用語解説)、特設サイトにアップロードした補足部分(図の補足説明、参考文献、写真)、YouTubeにアップロードしたビデオ動画と、異なる媒体を使うこととなった。本書の使い方の手引きは、P8にまとめてあるので、それを参照しながら活用して頂きたい。

私の高校の先輩である電子通信工学の碩学西澤潤一先生は、「真実は、机上にあらずして、実験室にあり」と教えたという。私もこの言葉を借りて、本書の目標を次のようにまとめたい。「真実は、机上にあらずして、フィールドにあり」。本書が、読者自らの地球観察の旅の良きガイドとなれば、それ以上の喜びはない。

2020年11月
平朝彦

平 朝彦 (著), 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (著)
出版社 : 講談社 (2020/11/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに 観察の重要性
1章 地球を眺める海洋底と大陸の大地形
1.1 大地形の概観
1.2 プレートテクトニクス
1.3 中央海嶺とトランスフォーム断層
1.4 海溝、島弧、背弧海盆
1.5 海山と海台
1.6 海洋地殻の誕生と消滅
1.7 海洋プレートの行方とマントル対流
1.8 ヒマラヤ山脈、チベット高原、タリム盆地
1.9 北米の山脈とベースン・アンド・レンジ
1.10 アフリカ大地溝帯

2章 海底の世界
2.1 東北日本太平洋沖の海底
2, 2駿河トラフから南海トラフにかけての海底
2.3 相模トラフと東京海底谷
2.4 沖縄トラフの海底
2.5 フィリピン海プレートと太平洋プレート
2.6 熱水活動の驚異
2.7 深海の生態系

3章 地層のでき方
3.1 地層のできる場所
3.2 地層の形を見る
3.3 堆積構造のでき方
3.4砂丘の観察
3.5 崖錐、扇状地、三角州の堆積環境
3.6 河川で堆積構造を観察する
3.7 海岸、干潟、浅海の堆積環境
3.8 乱泥流とタービダイト

4章 火山の驚異
4.1 マグマと火山活動
4.2 さまざまな火山活動
4.3 ハワイ島 一火山の世界遺産一
4.4 伊豆大島にて
4.5雲仙火山の歴史
4.6 阿蘇火山および九州のカルデラ群

5章 プレートの沈み込みと付加体の形成
5.1南海トラフの地形
5.2 反射法地震波探査からみた南海トラフの構造
5.3南海トラフの地質一深海掘削の成果
5.4 地震発生帯を調べる
5.5付加体のモデル実験
5.6 四万十帯 一謎の地層の解明
5.7四万十帯の起源
5.8 メランジュの成因

6章 地質学的に見た東北地方太平洋沖地震・津波
6.1 海底の大変動
6.2 「ちきゅう」による掘削
6.3 巨大津波による浸食と堆積
6.4 地盤の液状化
6.5 日本列島の地震テクトニクス

7章 地球史と日本列島の誕生
7.1 地球史の概観
7.2 最古の岩石と地層の記録
7.3 酸素大気の蓄積
7.4 真核生物の進化
7.5大陸移動、陸上生物の発展、人類の時代
7.6 日本列島の地質
7.7 日本列島誕生のシナリオ

8章 海洋・地球を調べる
8.1 地球の観測と探査
8.2 「ちきゅう」の船上にて
8.3海底下の地震波探査
8.4 海洋の探査と観測
8.5試料の採取と分析
8.6 地下生命圏に挑む
8.7 計算地球科学について

おわりに
さくいん
別冊) 用語解説

column
column1 Google Earth 地球・火星・月を観察する 平朝彦
column2 海底地形を“表現”する 木戸ゆかり
column3 大陸移動の復元と原動力 柳澤孝寿
column4 有人潜水船「ノチール」 日仏海溝計画 平朝彦
column5 世界の熱水活動を語る 川口慎介
column6 海底表面で起こっていること 小栗一将
column7 化学合成生物群集 豊福高志吉田尊雄 土田真二 長井裕季子
column8 鯨骨生物群集 藤原義弘河戸勝宮本教生
column9 日本海溝の地層を調べる 金松敏也
column10 有孔虫の世界 木元克典
column11 南海トラフ付加体の 3次元断面と深海掘削 倉本真一
column12 付加体モデル実験 山田泰広
column13 Nan TroSEIZE 木下正高
column14 JFAST物語 江口暢久
column15 東北地方太平洋沖大震災 津波シミュレーション 馬場俊孝
column16 鉱床と地球史 野崎達生
column17 真核生物の進化 灑下清貴
column18 チョークと黒色頁岩 黒田潤一郎
column19 1000年スケール気候変動: 大気-海洋循環 原田尚美
column20 マントル対流、 プレートテクトニクス、 大陸集合・分裂 吉田晶樹
column21 LWD(掘削同時検層)について 真田佳典
column22 JFAST長期孔内観測システム 許正憲
column23 DONET:深海底の リアルタイム観測技術 川口勝義
column24 AUV/ROV技術について 吉田弘
column25 人類のマントルへの到達: マントルと生命との関わり、 そして地球の未来とは何か 稲垣史生 阿部なつ江
columnn26 粒子・流体シミュレーション 西浦泰介
column27 シミュレーションと可視化 松岡大祐

平 朝彦 (著), 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (著)
出版社 : 講談社 (2020/11/19)、出典:出版社HP

本書の使い方

QRコード・URLでの動画リンクについて

「カラー図解」の写真や図には、QRコードが付されたものがあります。
これは著者が、その地に赴き、また実験を行った映像を詳細に解説した動画が収録されています。
QRコードを読み込むと「YouTube」のリンクへと移動することができます。またPCから見たい方は、下記の〈特設サイト>に「動画URL一覧」をアップロードしました。URLをコピーして、PCに入力してください。本書を読み進めるとともに、より詳しく知りたい項目は、動画での解説を見ることで、内容についてより理解が深まることを目指しています。

「用語解説」について

後半に収録されている「用語解説」は、小冊子として取り外すことができます。
本書の骨子となる「カラー図解」は写真や図、映像を中心にして内容がまとめられており、その際、テキストをできるだけ簡素化しました。そのため本文中には、専門用語が直接的に用いられています。この「用語解説」は、専門用語や図版をより詳細に解説するもので、「カラー図解」を読み進めながら、サブテキストとして使用できるようになっています。また、解説を付した用語は、「カラー図解」の文中に水色の文字で書かれています。

コラムについて

より丁寧な解説が必要だと思われる節には、それぞれの分野の専門家による「コラム」を配置しています。本書に掲載されているコラムは簡略化しています。より詳しく知りたい方のためにコラム全体を、本書の〈特設サイトに、PDFでアップロードしました。

補足写真について

本書には多くの写真が掲載されていますが、それは調査などで撮影した写真の一部です。
そこで、内容をより深く、詳しく理解したいという読者に向けて、その項目に関連した写真を、下記の《特設サイト)に収録しました。
また、図版や本文中に補足の写真を用意した項目には、それが分かるように(補足写真)というように記述しています。*補足写真は、節ごとに分類し、それぞれの章ごとにまとめて掲載しています。こちらも、ぜひ活用してください。

図引用一覧 参考文献一覧について
本書で引用使用した図版や、参考文献の一覧は、下記の特設サイトに収録しています。

〈特設サイトURL〉https://bluebacks.kodansha.co.jp/books/9784065216903/appendix/

chapter1 地球を眺める海洋底と大陸の大地形

人間が初めて別の天体から地球を眺めたのは、アホロ11号による月面着陸の時である。荒涼とした月面から見えた美しい青い星、それが地球である。舎や海を取り除くと、地球の別の姿が現れる。地球の表面大地形である。大地形は、大きく大陸と海洋底に区分できる。両者の平均的な高度の違いは明瞭であり、また、地形の様相も大きく異なる。日本列島は、最大の大陸と最大の海洋底の境界域に存在している。このような大地形は、大陸と海洋底の根本的な成り立ちの違いを表しており、プレートテクトニクスによって説明できる。

平 朝彦 (著), 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (著)
出版社 : 講談社 (2020/11/19)、出典:出版社HP

地球惑星システム科学入門

今後の環境問題までわかる

地球システム科学の考え方を取り入れられた教科書として好評を博した『地球システム科学入門』の改訂版です。広い視点から地球システムについて学び、これからの地球環境問題を考える上で重要な基本的かつ専門的な知識が身につきます。

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP

地球惑星システム科学入門

An Introduction to Earth and Planetary System Science
Naotatsu SHIKAZONO
University of Tokyo Press, 2009
ISBN 978-4-13-062714-6

はしがき

21世紀となりすでに10年が経過したが,この間にさまざまなグローバルな問題が顕在化した.特に温暖化問題をはじめとする地球環境問題,資源・エネルギー問題,アメリカに端を発する世界的な経済危機の問題が深刻である.そこで,これらの問題を解決し,安心・安全で持続的な社会を構築していくことが強く望まれている.それではこのような構築をしていくためにはどうしたらよいのだろうか。社会を変革することにより、安心・安全で持続的な社会を作り上げていくことは、はたして可能であろうか。人間社会は,自然環境に影響を与え,そのことで変化をした自然環境が人間社会に多大な影響を与えているのである。したがって、この自然環境という人間社会にとっての外的条件の科学的理解なしには、安心・安全で安定的な人間社会は成立し得ないと考える。そこで第一に大事なことは、自然環境の物質科学的理解を深めるとともに,人間と自然環境の相互作用の科学的理解が人間社会のあり方を考えるための基本であると考えたい。

それではこの人間と自然環境の相互作用とはどのようなものなのだろうか。この答えを出すための基礎的な学問が「地球システム科学」である.この地球システム科学では,地球システムを大気,水,岩石,生物,人間といったサブシステムから構成されているとして、それらの間での相互作用について明らかにする.これらの相互作用により,物質・エネルギーは循環し,各サブシステム,トータルな地球システムは時間的に非可逆的な変化をしている.地球システム科学によって,この変化を明らかにすることがはじめて可能となる。
この地球システムの概要については,前書『地球システム科学入門」(1992)で述べた。1992年以降,地球システム科学は急速に進歩した。たとえば、太陽系惑星やさらには系外惑星等に関する知識が飛躍的に増大し、太陽系外惑星等宇宙における地球の位置づけ(起源,進化等)が明らかにラフィーなどにより,なりつつある.また,高温高圧実験,地震波トモグラフィーカ]球深部の構成物質,温度分布,プルームの存在なども明らかる.さらに,コンピュータシミュレーション,同位体分析より,過去の気候変動やCO2などのグローバル物質循環に人の存在なども明らかになってきている。

体分析,化学分析などに丘循環についての研究の「地球惑星システム科学」へと大きく変貌しつつある.そこで,本書では,前書に比べて、退からこの地球或星システム科学の基礎を与えるために,『地球惑星システム科学入門』としてまとめることを試みた.本書では前書では述べていた固体地球を扱うプレートテクトニクスとプルームテクトニクスについて、簡単ではあるが述べられている(3章).それは,これらのテクトニクスの働きにより、人間と生物の生存している地球表層環境が多大な影響を受けるである。本書ではこのほかに,1992年以降飛躍的に知識が増大した生と地球との関係(生命の起源,進化,絶滅,地下生物圏)についても取り上げられている(6章).人間と地球との関係については,最後の章(7章)で述べられている。この章では、これまでの地球観,自然観についてまとめ本書で述べられている地球惑星システム科学による自然観とこれまでの自然観との相違点について述べ、人間社会のあり方に関する著者なりの考え方(地球惑星共存型社会)が提示されている。

本書を,専門家のみならず,一般の方々が、地球や惑星さらには自然と人間との関係についてより理解を深めるための一助としていただければ幸いである。
本書は、慶應義塾大学理工学部・文系学部、学習院大学理学部,東京大学教養学部,筑波大学地球科学系,千葉大学理学部静岡大学理学部,秋田大
学工学資源学部,山形大学理学部,日本大学文理学部,東京学芸大学教]部,東北大学理学部において行ってきた教養課程総合教育課程,専門での授業内容を基礎にして書き下ろした。授業を通して多くの学生部の質問、意見は大変有益であった。東京大学出版会の小松美加さんに変丁寧な原稿校閲をしていただいた、相澤素子さん、片山典子さん,片山典子さん,菅京子さんには文章入力の手伝いをしていただいた。以上の方々に深く感謝いたします。

2009年初春
鹿園直建

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP

目次

はしがき
1 序論
はじめに 1
1-1 地球惑星システムとは 2
1-1-1 地球惑星システムの階層性 2
1-1-2 サブシステムの相互作用 5
1-1-3 システムとは5
1-2 地球環境とは
1-3 地球惑星を対象とする学問の進展と地球惑星システム科学 9
1-3-1 地質学・地球化学・地球物理学9
1-3-2 新しい地球・惑星・人間観一地球惑星システム科学の成立 12

2 地球システムの構成要素
2-1 流体地球 17
2-1-1 大気圏17
2-1-2 水圏 20
2-2 固体地球(地圏) 27
2-2-1 地球内部構造の推定法27
2-2-2 地殻の組成30
2-2-3 マントルの組成31
2-2-4 コアの組成33
2-2-5 リソスフェアとアセノスフェア 34
2-2-6 地球の平均組成35
2-2-7 宇宙存在度 37
2-2-8 隕石 39
2-2-9 地球固体構成物質 41
2-3 生物圏 53

3 地球における物質循環
3-1 流体の循環と相互作用58
3-1-1 多圏間相互作用60
3-1-2 水の循環 61
3-1-3 炭素の循環 63
3-1-4 グローバル物質循環とボックスモデル65
3-1-5 海水組成の支配要因74
3-2 固体の循環と相互作用76
3-2-1 プレートテクトニクス76
3-2-2 プルームテクトニクス 94

4 自然-人間相互作用
4-1 自然-人間相互作用 98
4-2 自然災害 99
4-2-1 自然災害の分類100
4-2-2 地震災害101
4-2-3 火山災害103
4-3 資源 104
4-3-1資源問題105
4-3-2 資源の開発と環境問題108
4-3-3 鉱物資源 110
4-3-4 水資源 116
4-3-5 エネルギー資源 117
4-4 地球環境問題 122
4-4-1 地球温暖化問題 124
4-4-2 オゾン層破壊 129
4-4-3 酸性雨131
4-4-4 土壌問題134
4-4-5 水質汚染 136
4-4-6 廃棄物問題136
4-4-7 地球資源環境問題対策 138

5 宇宙・太陽系・惑星
5-1 宇宙の起源と進化 142
5-1-1 ビッグバン宇宙142
5-1-2 恒星の進化 144
5-2 原始太陽系の生成147
5-3 太陽系の惑星 152
5-3-1 比較惑星学 152
5-3-2 月 153
5-3-3 地球型惑星 154
5-3-4 木星型惑星とその衛星 159
5-3-5 小惑星, カイパーベルト天体,彗星 162
5-3-6 地球,月,惑星の相違点 163
5-4 系外惑星

6 地球システムの進化
6-1 地球年代学 167
6-1-1 相対年代法167
6-1-2 放射(絶対)年代法170
6-2 地球の起源と進化 172
6-2-1 原始地球の生成:46-30億年前 172
6-2-2 30-20億年前182
6-2-3 20億年前~現在186
6-2-4 生命の起源190
6-2-5 地球外生命194
6-2-6 地下生物圏195
6-2-7 生物の進化196
6-2-8 生物大量絶滅200
6-2-9 第三紀,第四紀の気候変動 202
6-2-10 地球表層環境変動に対する内的作用,外的作用の影響 205
6-2-11 地球未来環境の予測205

7 現代の自然・人間観
7-1 人間中心主義的考え 209
7-2 自然中心主義的考え 210
7-3 新しい自然・人間観213
7-3-1 地球惑星環境共存型社会213
7-3-2 地球惑星システム科学214.

参考文献217
あとがき225
索引 226

鹿園 直建 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2009/4/1)、出典:出版社HP

四季の地球科学――日本列島の時空を歩く (岩波新書)

幅広い視点から地球を科学する

日本列島は地震と噴火によって生み出され、その相貌は今現在も変わり続けています。気候変動の中での地球の成り立ちから始まり、日本の四季やそれを基にした風土・俳句等の文化まで語られています。また、自然を楽しむことのできる日本と世界のジオパークも紹介されています。

尾池 和夫 (著)
出版社 : 岩波書店 (2012/7/21)、出典:出版社HP

四季の地球科学-日本列島の時空を歩く (岩波新書)

はじめに

二〇一一年三月九日、宮城県沖の深さ八キロメートルから割れ始めたプレート境界は、一一日の午後、さらに一挙に大きく割れ進んで、北は三陸沖、南は関東の沖まで、そして東は日本海溝、西は東北の海岸の下まで破壊面が達しました。東北地方に最大震度七の強い地震動が記録され、大津波が広い範囲の海岸地域を襲いました。三陸海岸の南の端にあたる牡鹿半島のGPS観測点は、島根県の三隅を基準点として、東へ五メートル三〇センチ移動すると同時に、一メートル二○センチ沈降しました。このマグニチュード九・○という巨大地震によって、太平洋プレートが押していた力が抜け、東北日本は全域にわたって東西に伸びてしまいました。
巨大地震の直後の一週間、日本列島の地震活動は、本震の震源断層の周りと、その周辺の地域に集中しました。同時に伊豆半島などでも群発地震が活発化し、関東の東の沖などでは規模の大きな余震が起こる可能性が残り、日本列島はいつになく緊張感に覆われています。

松島の月

牡鹿半島から、石巻湾を左手に見ながら石巻市をすぎ、東松島市、塩竈市を経て仙台市にいたる途中に名勝の松島があります。松島は松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅に出発するとき、「松島の月まづ心にかかりて」と書いた日本三景の一つとして知られています。三陸海岸は山地の浸食と沈降によってできた、入り組んだリアス式海岸として有名ですが、水深一○メートルに満たない松島は、リアス式海岸がさらに進行した沈降地形に海が入り込んでできた多島海と言われています(海中にすべり込んだ地形という可能性もあります)。「芭蕉に随行した河合曾良の日記によれば、元禄二年五月九日(西暦では一六八九年六月二五日)に着船して翌日出発するという、たった一泊の慌ただしい滞在でしたが、磯づたいに松島の景色を船から眺め、「造化の天工、いづれの人か筆をふるひ、詞を尽さむ」(誰が筆をふるいことばを尽くして描けるだろうか)と芭蕉は表現したということです。しかし、『おくのほそ道』には松島を詠んだ句を載せていません。
松島にあこがれて行った割には慌ただしく通過したので、芭蕉たちの旅は実は幕府による仙台藩の視察だったという説があるほどですが、それはさておき、牡鹿観測点の大きな地殼変動でわかるように、松島湾の沈降地形はまた一段と進行したかもしれません。
そこから芭蕉たちは、二〇一一年東北地方太平洋沖地震によって被災した地域を歩いています。その地域では、たびたび地震や津波による被害を受け、そのたびに大地が変動しています。このように、地震によって長い時間にさまざまに変動しているのが日本列島の特徴です。松島をはじめとする日本の名所は、たびたび大規模な自然災害を受けながらも、そのたびに復興してきた経験を持っています。松島も二〇一一年の巨大地震で岩の崩落など大きな被害を受けましたが、また美しい景色を見せてくれることでしょう。

日本列島の紀行文

『おくのほそ道』の旅は、元禄二(一六八九)年三月二七日に江戸深川の採荼庵を引き払って始まりました。東北地方、北陸地方を約六○○里(約二四○○キロメートル)巡り、元禄四年に江戸に帰りました。『おくのほそ道』に代表される芭蕉の紀行文は、旅の先々に挨拶としての句を残すという、吟行の始まりでした。また、大地の風景を発句に詠んだ、初めての日本列島の紀行文ということができます。例えば、

荒海や佐渡によこたふ天の河芭蕉

有名なこの句は、世界でいちばん若い海とも言える日本海を詠み、そこにある佐渡島を詠み、そして銀河系をとり込んで宇宙をも詠み込んだ、壮大な俳句といえるでしょう。
この句が詠まれた出雲崎(新潟県)は、北アメリカ・プレートの縁にあって、東北日本と西南日本のつなぎ目にあたります。つなぎ目の大地には波打つような檜曲構造ができていて、
最近では二〇〇四年の新潟県中越地震や二〇〇七年の新潟県中越沖地震、二〇一一年三月一二日の長野県北部の地震などがここで起こりました。芭蕉はそこから西へ歩き、姫川(糸魚川市)で東北日本から西南日本へ渡りました。姫川を渡ったところが、ユーラシア・プレートの縁にあたります。ここは高い品質の翡翠で知られているので、姫川の河口には翡翠の原石がごろごろころがっていたことでしょう。

数億年の時空

日本列島の大地は、たいへんこまかい構造を持っているのも大きな特徴です。数億年前の古い地質から、比較的最近生み出されたさまざまな地質までが、小さな国土に分布しているのです。少し歩くだけで異なる地質や地形を眺めたり、異なる植物や動物に出会うことができます。わたしはこの性質を「ジオ多様性」と呼ぶことにしました。「ジオ(geo-)」とは大地を表す英語の接頭語です。
こまかい地質分布や地形は、日本に生まれ育った人びとには当たり前と思われていますが、世界的には実はたいへん珍しいのです。同じ島でも台湾では、一時間以上歩いても同じような玄武岩台地が続くので、すっかり歩き疲れてしまったことがあります。大陸の大部分は安定大陸と呼ばれるように、古い地塊が大きな変化を受けずに現在に至っています。そのような土地では地震はほとんど起こりません。
日本列島を少し歩くだけで、数億年の歴史をたどることになります。芭蕉ははからずも、大地が生まれ育った数億年の時空を歩いていたのです。
出雲崎からの九日間、芭蕉は俳句を一句も詠んでいません。次に記録されている句は、親不知の切り立った断崖を無事に越えて、市振の宿に泊まったときに詠まれました。

一家に遊女もねたり萩と月芭蕉

この句についてはさまざまな憶測と解釈がありますが、わたしは、最大の難所である親不知を無事に越えることができた人たちの、ほっとした状況と、この場所の地形の険しさを感じとるのです。芭蕉は北アメリカ・プレートからユーラシア・プレートへと本州の繋ぎ目を越えて渡り、宇宙の中での大地の旅を二つの句に詠んだことになります。芭蕉はさらに、長崎を目指して旅に出ました。「古人も多く旅に死せるあり」と『おくのほそ道』の出だしに書いた芭蕉自身が、この旅の途中、大坂御堂筋の宿で亡くなりました。一六九四(元禄七)年でした。芭蕉がもう少し長生きして長崎まで往復していたら、西南日本の大地をどのように詠んだでしょうか。

四季のことば

変動する日本列島には、四季折々の、めりはりのある季節の変化があります。日本列島に住みついた人びとは、太古から季節変化と大地の変動を生活の要素としてきました。その歴史の中で和歌の歌枕や俳句の季語が生まれ、やがて歳時記が編纂されました。
歌枕は、和歌に詠まれてよく知られるようになった名所や旧跡のことです。大和朝廷のころから親しまれている大和や山城の地名、神仏にゆかりの土地、歴史に登場する場所、古い歌に詠み込まれた地名などが、繰り返し歌人に用いられています。
また季語は、時間や空間が変化しても変わらない季節感を表します。その基準は、京都ないし畿內地方です。春の季語であるさまざまな花は、北海道では夏になってから咲くのですが、約束ですから、それらを春の景として作句するということになりました。
京都には長い間、経度の基準が置かれていて、地図や時刻の基準とされていましたが、江戸時代には緯度の基準も京都に置かれ、日本の季節感の表現の基準とされてきたのです。
古代の日本では農業が中心で、夏と冬という二季の生活が基本でした。やがて四季の概念が中国から伝わってきて、平安時代になって定着しました。例えば、『万葉集』では四季という考え方が見られないのに対して、『古今和歌集』では歌を四季に分類しています。「日本に定着した季語と例句を収めているのが歳時記です。俳句を詠む人のための大切なハンドブックですが、それだけでなく、板前が料理の名前を付けるとき、和菓子職人が考案した季節ごとの和菓子の呼び名を付けるとき、何かのデザインの呼び名を考えるときなどに、歳時記をひもといてヒントを得ていることがよくあります。
しかし、四季の変化がなぜ現れるのかという説明は歳時記にはありません。もちろん、誰もが知っているように、地球が傾いて太陽の周りを一年で公転するから四季の変化が見られるのです。本書ではそのことをもう少し深く、太陽系のこと、地球のこと、月のことなどの知識を整理して説明してみたいと思います。

名所はなぜ名所になったか

人は旅行すると、旅先の名物の中から家人や知人のために土産物を探します。お土産をもらった人は、包みを解きながら土産話を聞きます。土産にはその土地の香りがあるのです。土産話のもとになる名所は、なぜ名所になったのでしょうか。その土地の名物は、なぜ名物なのでしょうか。
大地の由来とそこに育まれている生態系を知ることは、そのような由来を考える手がかりになるでしょう。
日本列島と大陸の間にある日本海はたいへん若い海で、およそ一六○○万年前に開き始めました。一方、東北日本の東にある太平洋の海底は、世界でいちばん古い海底で、生まれてからおよそ一億八○○○万年以上たっています。日本列島をとり囲む海には、世界でもっとも生物多様性の豊かな生態系があります。
もともと人類の祖先は海から生まれた生物です。ですから、海の恵みである魚や海草を基本とする日本食での生活は、人の体と暮らしにもっともよく適合しています。山や森をきれいにして、里で水を汚さないように暮らせば、日本の周りの海は、美味しい食材を、いつまでもわたしたちに供給してくれることでしょう。

ジオパーク

ジオパークとは、一言でいうと大地の公園です。ここでは景観を愉しむだけでなく、その場所が生まれた時空を理解し、育まれている生態系の恵みを愉しむことができます。ユネスコの支援によって、世界ジオパークネットワークが二〇〇四年にできました。二〇○八年に日本ジオパーク委員会が発足し、わたしが委員長に就任し、地理学者で火山学者でもある町田洋さんが副委員長に就任しました。同時に、日本のジオパークを認定する仕組みをつくりました。二〇一〇年にはNPO法人の日本ジオパークネットワークが発足しました。二〇一二年六月現在、日本には五ヶ所の世界ジオパークと一五ヶ所の日本ジオパークがあります。世界ジオパークネットワークには、二〇一二年三月現在二七ヶ国から八八のジオパークが加盟しています。ジオパークについては、終章でもう少し詳しく説明することにしましょう。各章の終わりで、世界ジオパークに認定された日本のジオパークを紹介しました。
この本の章立ては、一見すると春夏秋冬になっています。それをわざわざ仕組んだのではありません。日本列島のことをさまざまな観点から紹介しようとして、その特性を整理していくうちに、自然に四季折々の風物が現れてきて、またそれを詠んだ歌や句が思い起こされた結果なのです。
この本には、多くの科学者たちの研究成果をとり入れています。本来なら引用した文献を掲載しておくことが必要でしょうが、この本の性質からそれらのすべては掲載しませんでした。研究論文には科学者たちの努力の成果がまとめられています。また、さまざまな出版物に、その分野の集大成があります。本来なら、その一つひとつの出版物を紹介し、その著者に謝辞を述べることが礼儀ですが、ここでは、省略することをお許しいただきたいと思います。
執筆にあたって、わたしの所属する氷室俳句会の句会での、金久美智子主宰の指導、会員との日ごろの議論がたいへん参考になりました。俳句の先輩である妻葉子の遠慮のない意見が、いつものように文章の全般を仕上げるのに役立ちました。原稿の作成には宮崎紗矢香さんと田中恵美さんに協力していただきました。岩波書店編集部の千葉克彦さんには企画から編集にわたって貴重なご意見をいただき、一冊を完成することができました。皆さんに深く感謝します。
また、この本には索引を付けてありません。おせっかいですが、わたしは本を読むとき、自分で索引をつくりながら読みます。その索引をパソコンに記録しておくと、検索して容易にその記載にたどり着くことができます。後日、何かのためにもう一度ご覧になりたいという方には、そのような方法をおすすめして本題に入ります。

尾池 和夫 (著)
出版社 : 岩波書店 (2012/7/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第一章 太陽と地球と月と
四季のある国
宇宙の中の地球
月の贈り物
天・地・人を結ぶ暦
コラム 日本のジオパーク その1 火山活動

第二章 地震と噴火の日本列島
地震がもたらす山と川
変動帯に暮らす
風景と記憶
地震と津波に備える
将軍塚鳴動
コラム 日本のジオパーク その2 大構造線

第三章 森と里と海の国:
紅葉と名月
森と里と海のつながり
自然と文化
大地と生き物の豊かさ
コラム 日本のジオパーク その3 日本海の拡大と付加体

第四章 日本海と日本列島
日本海と雪
日本列島の成り立ち
変動する気候
地球温暖化と天気
コラム 日本のジオパーク その4――付加体

終章 ジオパークの愉しみ 見る・食べる・学ぶ

参考文献

第一章 太陽と地球と月と
菜の花や月は東に日は西に 養村

尾池 和夫 (著)
出版社 : 岩波書店 (2012/7/21)、出典:出版社HP

地球惑星科学入門 第2版

地球惑星科学の基本が全てわかる

基礎地球惑星科学の教科書です。最新の知見に基づいて、地球科学について網羅的にまとめられています。基礎だけでなく深いところまで触れていますが数式がたくさん出てくるわけではないので、高校生でも読める難易度となっています。地球科学に少しでも興味のある方にはおすすめの1冊です。

在田 一則 (著, 編集), 竹下 徹 (著, 編集), 見延 庄士郎 (著, 編集), 渡部 重十 (著, 編集)
出版社 : 一般社団法人 北海道大学出版会; 第2版 (2015/3/25)、出典:出版社HP

地球惑星科学入門 第2版

いろいろな時代の化石(北海道大学総合博物館所蔵)。(A) カンブリア紀の示準化石である三葉虫 Redlichia chinensis。中国四川省産。長さ約3.5cm。(B)ジュラ紀の示準化石であるアンモナイトDactylioceras sp.英国ウィットビー産。径約10cm。(C)第四紀の示準化石であるマンモスMammuthus primigeniusの臼歯。北海道襟裳岬産。約13cm。(D)白亜紀後期の恐竜ニッポノサウルス(日本竜) Nipponosaurus sachalinensis。サハリン(旧樺太豊栄郡川上村)産。体長約4.1m(E)新第三紀中新世の哺乳類デスモスチルスDesmostylus hespernus。サハリン(旧樺太敷香町)産。体長約2.8m。

北海道の特徴的な鉱物(北海道大学総合博物館所蔵)。(A)自然金(A)。千歳市,千歳鉱山産。(B)自然硫黄(3)斜里町,知床硫黄山産。(C)加納輝石(MgMn’tSi,O)。淡紅褐色。熊石町産。(D)手稲石(CuTeOp.21,0)。監1色、緑青色は変質部。札幌市手稲鉱山産。

口絵12011年3月11日15時55分宮城県名取市海岸を襲った東北地方太平洋沖地震による大津波は防潮林をなぎ倒し家屋をのみ込んだ(提供:共同通信社)。東北地方太平洋沖地震(余震を含む)による死亡者は15,889名、行方不明者は2,597名に達した(2014年11月10日現在)。
口絵2東北地方太平洋沖地震による津波の観測地点(左)と津波高(右:浸水高および遡上
高)の分布(東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ,2011による)赤丸:浸水高(津波が内陸を遡上した途中に残された津波痕跡の高さ),青三角:遡上高(津波が内陸を遡上した限界の高さ),☆印:震央の位置。東北地域を中心に,津波痕跡高が10mを超える地域が南北に約530km,20mを超える地域も約200kmと、非常に大きな津波が広範囲に襲った。大船渡市綾里湾では40.1mの津波遡上高が観測され,これは明治三陸津波の記録を上回る。

口絵7海洋底地形図(American Geographical Society, 1974 より。原図はB.C. Heezen and M. Tharp)。地球全体に連なる中央海嶺は総延長8万km を超える(図4.4 参照)。

口絵8 全地球の地殻熱流量分布(Davies and Davies, 2010より)

口絵9 地震波トモグラフィーによる東北地方(左)と九州の南(右)を通る東西断面でのマン トルのP波速度分布(Fukao et al. 1992 より)。平均的速度からの偏差(%) を表す。// ア大陸下の 670 km 不連続面付近に広がる高速度領域(青色系)は沈み込む海洋プレート (スラブ)につながる。

口絵10 東北地方の震源分布(白丸)とP波速度分布(長谷川・趙,1991より)。平均的速度 からの偏差(%)を表す。火山直下に向かって地震波低速度(高温)部(赤色系)が深部から続くことに注意。また、沈み込む海洋プレート(スラブ)内には二重の深発地震面がある。

図11 日本周辺の地殻熱流量分布(田中ほか,2004による)。単位はmWm2。日本海は全体的に高熱流量であるが、中央部の大和堆や北大和堆付近は比較的低いことに注意。

口絵12 日本周辺のテクトニクスと地震分布(地震活動解析システム(鶴岡,1998)により,高波鐵夫作成)。震源は海溝から大陸側へ深くなる。地震分布は国際地震センター・カタログ(1964年1月1日~2006年12月31日,M>3.5)にもとづく。

口絵13 プレート収束境界のアンデス山脈東縁(アルゼンチン)に見られる圧縮運動による地質構造(撮影:竹下徹)。(A)中新世の砂岩(赤茶色)が衝上断層により第四紀の段丘礫層(灰色)に押し上がる。(B)中新世の砂岩の裸曲構造。

口絵14 (A)爆発的な火山噴火(有珠火山1977年噴火。提供:国際航業株式会社)。(B)静かな火山噴火(伊豆大島1986年噴火。撮影:白尾元理)。

口絵15 オマーンオフィオライト(アラビア半島)に見られる地殻ーマントル境界(撮影:宮下純夫)。下部のマントルのかんらん岩は斑れい岩に比べて塊状で優黒質。斑れい岩は層状構造が明瞭。

口絵16 スペースシャトルから見たヒマラヤとチベット(CNASA)。左(南)はインドのガンジス平原。右(北)はチベット高原。約5,000万年前のインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突の現場。インダスーツァンポ縫合帯(赤線)は両大陸の衝突帯で,かつて両大陸の間にあったテチス海の海洋地殻岩石が点在している。

口絵21 各種環境要因の変動により生じた放射強制(Wm-2)の見積り(IPCC,2013より)。基準年は1750年。右側の数字は環境要因(放出成分)ごとに評価した値で、赤字が正,字が負。括弧内は誤差を考慮したときに真の値が取り得る値の範囲(信頼区間)を表し,人、為起源の放出成分については、それにより影響を受ける成分が色分けされている。横線は誤差の見積り。右端欄は確実性の高さを表し,VH:非常に高い,H:高い,M:中程度,L:低いを意味する。下部の赤色棒グラフは,人為起源の全環境要因を総合した放射強制を,1750年を基準として,1950年,1980年,2011年について示す。本文339頁参照。

口絵22 代表的な温室効果ガス排出シナリオRCP2.6(左)とRCP8.5(右)にもとづいて予測される(A)地球表面温度(°C)と(B)降水量(%)の変動の全球分布(IPCC,2013より)。それぞれ,1986年から2005年の平均値を基準とした2081年から2100年の平均値の増減で表す。RCP2.6とRCP8.5は、それぞれ,2012年から2100年までの積算CO,排出量(GtC:ギガトンを単位とする炭素換算質量)の平均値が270と1,685,変動幅が140~410と1,415~1,910と設定された排出シナリオ。なお,RCPはRepresentative Concentration Pathwaysの略で,RCPに続く数字は,1750年に対する2100年の放射強制をWmで表した値。

在田 一則 (著, 編集), 竹下 徹 (著, 編集), 見延 庄士郎 (著, 編集), 渡部 重十 (著, 編集)
出版社 : 一般社団法人 北海道大学出版会; 第2版 (2015/3/25)、出典:出版社HP

第2版刊行にあたって

『地球惑星科学入門』初版は2010年11月に発行されました。その年6月には,2003年5月にS型小惑星イトカワ目指して打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還して,地球重力圏外の天体の表面のサンプルを持ち帰ることに世界で初めて成功しました。そして,2014年の11月12日には,10年間の宇宙の旅を終えた欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」から切り離された着陸機「フィラエ」がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸しました。送られてきた鮮明な画像に世界は感動しました。さらに、同年12月3日には「はやぶさ」の後継機である小惑星探査機「はやぶさ2」がC型小惑星1999JUを目指して飛び立ちました。
これらの探査機は、惑星の起源物質である小惑星や彗星を調べることにより,太陽系の起源や進化過程を解明するとともに、地球を作る鉱物や海水,生命の原材料物質を探ることを目的にしています。
一方,2011年3月11日には、マグニチュード9の巨大地震(東北地方太平洋沖地震)が東北地方から関東地方を襲い、死者15,889名,行方不明者2,598名に達する大災害(東北大震災)となり,また,それに伴って福島第一原子力発電所による放射能汚染というわが国にとっては未曾有の大惨事が生じました。さらに,2014年8月20日には集中豪雨による広島土砂災害(死者・行方不明者74名),同年9月27日には御嶽山噴火災害(死者・行方不明者57名),海外では2013年8月11日フィリピンを襲った観測史上例を見ない猛烈な台風により,死者約6,200名,行方不明者約1,800名の犠牲者が出ました。ともに現在もまだ復興には至っていません。
これらは,本書『地球惑星科学入門』の二つの目的に関わる出来事です。大学の基礎教育・教養教育における地球惑星科学の教科書として編纂された本書の目的の一つは、私たちの地球・太陽系・宇宙の物質や構造,その変遷過程や成り立ちを理解する基礎を提供することです。「ロゼッタ」や「はやぶさ2」により、地球の起源物質が明らかになれば,それは地球の起源,大気・海洋の起源,大陸の起源,さらには生命の起源の理解に結びつきます。
本書のもう一つの目的は,上記のような自然災害問題とともに,環境問題資源問題など21世紀の人類的課題に深く関わっている地球惑星科学的背景を正しく理解することにより,それらによる被害をできるだけ少なくすることにあります。
本書初版の出版当時は数年後には改訂版をと考えていましたが,4年で第2版を重ねることができたのは,多くの著者の方々や今回新しく加わっていただいた著者の皆さまのご協力の賜物です。
本書第2版では,第4部に新たな章「銀河と恒星」を加え,各章にも適宜修正や新しい知見などを加えました。また,Box記事の内容を更新するとともに,新たなBoxを加えました。その結果,初版より24ページ増え,また内容的にもより充実したものになったと自負いたしております。
大学初学年における全学教育や一般教育の教科書としてだけでなく,地球惑星科学分野や地球環境科学分野の学部学生の入門書,文系学生の教養書,さらに中学・高校教師の参考書として本書をご活用いただければ幸いです。「北海道大学出版会の成田和男氏には第2版刊行の提案をいただき,全般にわたって多大なご協力をいただきました。ここに心からお礼を申し上げます。

2014年12月1日
編集委員一同

はじめに

“奇跡の惑星・地球”,“宇宙船地球号”,“かけがえのない地球(Only One Earth)”というキーワードがあるが,これらは地球のみならず現在の私たちがおかれた立場をも如実に表している。21世紀は地球環境の時代であるといわれて久しいが,その傾向はますます明らかになりつつある。
温暖化・乾燥化・酸性雨・地下水汚染・鉱害などの環境問題のみならず,自然災害問題(火山・地震・津波・地すべり),地下資源問題(エネルギー資源・金属資源),あるいは水資源問題など現在の人類的課題といわれるものの多くは地球に関わっている。約69億人の私たち宇宙船地球号の乗組員のそれぞれが,宇宙のなかのちっぽけな存在である地球で平和で満足した生活を続けていくためには地球の歴史と現状を知ることがきわめて重要なことは容易に理解できよう。
たとえば,環境問題とくに地球温暖化問題では毎年観測史上初めてという温暖化傾向が報道されている。温室効果ガスである二酸化炭素の増加は,もともとは地球の長い営みのなかで生まれてきた生物の遺骸が石炭・石油など化石燃料として地中に眠っていたものを、私たち人間が産業革命以降の急速な工業化によって大量消費している結果である。また,4つのプレートがせめぎあうプレート沈み込み帯に位置するわが国では,地震災害や地震にともなう津波災害,火山噴火,さらに地すべり災害はいわば宿命的ともいえる。しかし,他方では火山はさまざまな地下資源を産み出し,日本はかつて黄金の国ジパングとヨーロッパに伝えられ、江戸時代には世界の銀産出の1/3を占めていたといわれる。マグマ活動の恵みであるいろいろな金属資源は近代社会を支えているが,化石燃料とともにそれらの将来の枯渇問題が危惧されている。いっぽう、日本列島はアジアモンスーン地域に位置するとともに、台風の通路ともなっている。梅雨や冬の豪雪は豊葦原の瑞穂の国の稲作文化を育んできたが,水害や地すべりなどの災害をももたらしてきた。地球がどのような歴史をたどってきたか,また現在の活動がどのようにして起こっているかを理解することは,災害を完全には予知できないまでも。被害を少なくする(減災)には有効といえる。各種の自然災害を予知しようとする研究は盛んに行われているが,複雑な自然現象の予知は現状では困難といわざるをえない。災害国日本に生きる私たちとしては、自然が引き起こす現象(脅威)を正しく理解し,被害をより効果的に軽減することが必要である。
地球科学は地球に関する科学であり,地球の内部から表層部までの岩石圏,そこに接する水圏,そして両者をおおう大気圏と宇宙空間の物質の性質と運動過程,さらに形成過程を研究する自然科学の一分野である。しかし,地球を知るためには地球がその一員である太陽惑星系について知ることも必須である。7年間60億kmの旅を終えて2010年6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」は日本中に感動を与えたが,小惑星イトカワで採集したかもしれない回収カプセルの内容物が注目されている。それはその物質が地球あるいは太陽系の起源を探る鍵となるかもしれないからである。このように,今や地球を知るためには太陽系のほかの天体との比較研究は必要不可欠となっている。本書を「地球惑星科学入門」とする所以である。_33章からなる本書は,第1部「固体地球の構造と変動」,第II部「地球の歴史と環境の変遷」,第II部「大気・海洋・陸水」,第IV部「宇宙と惑星」と地球惑星科学の広い分野を網羅しており,北海道大学の関連分野の教員43名が執筆にあたっている。本書は地球惑星科学を初めて学習する大学初年時における全学教育あるいは一般教育の教科書としてだけではなく,地球惑星科学分野や地球環境科学分野の学部学生の入門書,あるいは文系学生の教養書ともなりうるように企画された。本書によって地球惑星科学の基礎を学び,上にのべた21世紀の諸課題を理解し,それらを解決する道を模索する手がかりとしていただければ望外の喜びである。「本書の上梓にあたっては、北海道大学出版会の成田和男氏には企画から編集まで多くのご教示と献身的なご協力をいただいた。また校正にあたっては添田之美氏と田中恭子氏にお世話になった。ここに明記して感謝申し上げる。

2010年9月1日
編集委員一同

在田 一則 (著, 編集), 竹下 徹 (著, 編集), 見延 庄士郎 (著, 編集), 渡部 重十 (著, 編集)
出版社 : 一般社団法人 北海道大学出版会; 第2版 (2015/3/25)、出典:出版社HP

目次

口絵i
第2版刊行にあたって xi
はじめにxiii
第I部 固体地球の構造と変動
第1章 地球の形と重力,地磁気,地殻熱流量
1. 地球の形3
2. 地球の重力
3. 地磁気11
4. 地殻熱流量13

第2章 地球の内部構造と構成物質15
1. 物理状態と物質 15
2. どうやって調べるか17
3. 地球内部の構造と構成物質の概観20
4. 地球内部での物質の動的な挙動とその進化23

第3章 地球を作る鉱物と岩石25
1. 鉱物とは何か 25
2. 珪酸塩鉱物の分類26
3. 鉱物の多形27
4. 固溶体 29
5. リソスフェアを作る岩石30
成因の異なる3種類の岩石タイプ30/火成岩・堆積岩・変成岩の特徴 32
Box 3.1 生物が作る鉱物

第4章 大陸移動とプレートテクトニクス 35
1. 大陸移動説の誕生と終焉 35
2. 海洋学および古地磁気学と海洋底拡大説一大陸移動説の復活 37
3. プレートテクトニクスープレート境界の3つの型40
発散境界 40/収束境界 43/トランスフォーム断層境界 44
4. 日本周辺のプレートの分布 45
Box 4.1 プルームテクトニクスとホットスポット 47
Box 4.2 日本海の成立 48

第5章 海洋地殻と大陸地殻49
1. 海洋地殻と大陸地殻49
2. 海洋地殻の地震学的構造と地質学的構造 50
3. オフィオライトモデルと海洋地殻の形成 52
4. 大陸地殻の形成一玄武岩質地殻の再溶融と島弧・大陸の衝突・合体
5. 反射法・屈折法による地殻構造探査56

第6章 地震はどこで,なぜ起こるか?
1. 地震とは「断層が急に動く」こと 59
2. 地震から出る波61
3. 地震発生の原因,大きさと場所 63
4. 断層運動,そして地球のエネルギーとしての地震 66
Box 6.1 地震学の始まりーミルンとユーイング、そして大森
Box 6.2 緊急地震速報170

第7章 日本列島付近で生じる地震と地震津波災害・地震予知 71
1. 海溝型地震と地震予知 71
2. 活断層および内陸型地震と地殻変動の観測275
3. 地震津波災害 79
Box 7.1 2011年3月 11 日東北地方太平洋沖地震 83
Box7.2 異常震域と宇津モデル 84

第8章 火山活動はどこで,なぜ起こるか? 85
1. マグマとは 85
2. 火山活動が起こる場 86
3. 日本列島の火山活動とその特徴 88
4. マグマの発生と上昇 90
マントルかんらん岩の部分溶融とマグマの発生90/マグマの発生メカニズム 92/マグマの上昇 92
5. マグマの組成変化と火山深部の構造93
マグマの分化 93/火山深部の構造 95
Box 8.1 地球深部の化石 マントル捕獲岩96

第9章 火山噴火と火山災害・噴火予知 97
1. 火山噴火の機構と様式97
火山噴火のメカニズム 97/爆発的噴火と噴出物98/非爆発的噴火と噴出物 100/マグマ水蒸気噴火 101
2. 火山とその構造101
火山の種類と構造 101/日本の活火山102
3. 火山災害102
火山災害の種類と特徴 102/火山活動の恵みと火山との共存 105
4. 火山噴火予知と減災106
噴火予知の手法と課題 106/ハザードマップ107

第II部 地球の歴史と環境の変遷
第10章 河川の働きと地形形成111
1. 河川の下刻作用と地形形成111
2. 河川地形 112
3. 河川による侵食・運搬・堆積115
4. 河川洪水117
5. 風化と土壌の形成118
6. 海洋への土砂流出 119

第11章 堆積作用と堆積岩および変成岩
1. 堆積岩の形成一堆積作用と続成作用
風化作用 122/侵食作用 123/運搬作用 124/堆積作用(狭義) 124/続成作用 125
2. 堆積岩の種類125
3. いろいろな堆積環境とその岩石127
4. 地層と層序学一地史の編年128
層序区分と地層の対比 128/地層や岩石の相互関係 129/化石年代(相対年代) 130
5. 変成作用132
Box 11.1 付加体134

第12章 ランドスライド135
1. ランドスライドと人間社会135
2. ランドスライドとは 137
3. ランドスライドの分類 138
運動様式による区分 138/移動体の規模と移動速度139/斜面を作る物質 139/発生場所
4. ランドスライドの原因140
5. ランドスライドの例 141
内陸地震による地すべり 141/岩盤崩壊 142/土石流 142/山体 崩壊 144
Box 12.1 間隙水圧146

第13章 地球エネルギー資源
1. 堆積岩中の有機物の熟成作用 147
堆積物有機物 147/ケロジェン 148
2. 石 油 150
石油の組成 150/石油の起源と成因 150
3. 天然ガス 152
天然ガスの起源 152/天然ガスの産状 152
4. 新しい石油資源―非在来型石油資源 153
5. 石炭 154
石炭の起源と堆積環境 154/石炭化作用155
6. 核エネルギー156
7. 地熱エネルギー157
8. エネルギー資源の将来158

第14章 金属鉱物資源と社会161
1. 鉱物資源161
天然資源 161/地殻における元素存在度 162
2. 金属鉱床はどこでどのようにしてできるか164
金属鉱床のできる場所 164/金属鉱床の種類とそのでき方166
3. 限りある資源171
4. 鉱山と環境問題 173

第15章 地球の誕生と大気・海洋の起源175
1. 冥王代の地球 175
2. 地球の形成過程 178
3. 大気・海洋の起源180
4. 生命の起源182
Box 15.1 大気酸素の形成184

第16章 地球環境の変遷と生物進化 185
1. 現在は過去を解く鍵である185
2. 化石の研究法186
3. 地球環境の激変と生物の大量絶滅187
4. 古生代188
無脊椎動物の海 188/陸上植物の出現と進化 189/魚類と両生類の進化 190/古生代の気候
5. 中生代 191
爬虫類の時代192/中生代の海生生物 193/ジュラ紀・白亜紀の温室世界 194
6. 新生代194
哺乳類の時代194/新生代における寒冷化 194
7. 大陸移動と造山運動195
Box 16.1 統合国際深海掘削計画(IODP) 197
Box 16.2 化石鉱脈198

第17章 人類進化と第四紀の環境, 199
1. 第四紀の区分199
2. 人類の出現と進化200
人類の誕生 200/現代人の祖先、202
3. 気候変化と環境204
気候変動を示す指標 205/氷期・間氷期サイクル205/気候変動の メカニズム 207/そのほかの気候変動 209
4. 環境の変化と人類のインパクト209
Box 17.1 安定同位体と地球科学 212
Box 17.2 放射年代測定法 213

第Ⅲ部 大気・海洋・陸水
第18章 大気の構造と地球の熱収支
1. 大気とは 217
2. 地球大気の鉛直構造 218
3. 大気の組成 220
4. 太陽放射と地球放射 221
5. 大気と地球表面の熱収支 224
6. 温室効果 226
Box 18.1 全球凍結状態と暴走温室状態

第19章 地球大気の循環
1. 大気・海洋が担う南北熱輸送の役割229
2. 低緯度と中高緯度で実体を異にする大気の子午面循環230
3. 対流圏と成層圏にみられるジェット気流233
4. 高層天気図の定常と異常234
5. 地上天気図にみられる温帯低気圧の役割236
Box 19.1 世界の気候の特色 238

第20章 大気の運動の基礎239
1. 気圧(静水圧平衡) 239
2. 地球の自転とコリオリカ242
3. 地衡風バランス244
4. 数値予報246

第21章 大気の熱力学と雲・降水形成過程 249
1. 雲の定義と種類249
2.空気中に含まれる水蒸気量250
3. 気温の高度変化252
4. 気層の安定性と断熱変化 252
5. 雲粒の成長過程 253
純粋水滴の飽和水蒸気圧 253/雲凝結核の役割 254
6. 雨粒の形成 255
衝突・併合過程 255/雨粒の形と粒径分布 256
7. 雪結晶と雪粒子 257
Box 21.1 雲内の気温 259
Box 21.2 雪のレプリカ作り(雪結晶の永久保存法) 260

第22章 天気を支配する諸現象
1. 高気圧と気団 261
シベリア気団262/小笠原気団262/オホーツク海気団262
2. 温帯低気圧262
3.前線263
4. 台風267
5. 寒気吹き出し268
6. 気象観測手法269

第23章 海洋の組成と構造 271
1. 海洋の区分 271
2. 海水の構成要素273
3. 水温・塩分と密度275
4. 海洋コンベヤーベルト277
Box 23.1 「燃える氷」メタンハイドレート一未来のエネルギー資源?

第24章 海洋の循環 283
1. 海流の分布と地衡流283
2. 海洋風成循環の力学 287
エクマン吹送流287/B効果と海洋風成循環288
3. 深層の循環(熱塩循環) 291

第25章 海洋の観測と潮汐293
1. 海洋の観測 293
海洋観測の歴史293/水温・塩分の観測294/流速の観測295
2. 海洋の潮汐298

第26章 地球と陸域の水循環
1. 地球の水循環と河川流出の役割 303
2. 降水の地形効果と流域の水循環 305
3. 降雨に対する河川流出 309
4. 地下水の動き 311
Box 26.1 世界の水資源314

第27章 氷河と氷河時代315
1. 氷河とは315
2. 氷河の質量収支317
3. 氷河の流動318
4. 氷河の変動319
5. 氷河時代の発見319
6. 氷期・間氷期における氷河変動321
7. 氷期・間氷期サイクルの原因323

第28章 大気海洋相互作用とエルニーニョ、モンスーン 325
1. 熱帯太平洋における大気と海洋ーウォーカー循環と熱帯海面水温325
2. エル・ニーニョ 328
3. エルニーニョと全地球規模の気候環境の変動との関わり 3331
4. モンスーン333
Box28.1 大気海洋変動の時間スケールでの概観一とくに10年スケール変動336

第29章 地球環境変動と水圏・気圏の変化 337
1. 地球温暖化のメカニズムと将来予測 337
2. 炭素循環 341
3. 地球温暖化の影響 342
4. Geo-engineering 344
5. 成層圏オゾン破壊345
6. 対流圏汚染 348
Box 29.1 地球温暖化懐疑論に対する考え方350

第V部 宇宙と惑星
第30章 宇宙とその進化353
1. はじめに3531
2. 宇宙論の理論的展開354
3. 宇宙論の観測的展開とビッグバン宇宙モデル
4. 宇宙の動力学と宇宙を構成する物質-357
5. 現在の宇宙論359
6. まとめと今後の課題361
Box 30.1 宇宙の距離梯子と Ia型超新星362

第31章 銀河・恒星363
1. 銀河とは363
銀河の特徴 365
2. 我々の銀河(銀河系) 365
3. 星(恒星)の性質 367
星の構造と進化 367/星間ガスと星形成369
4. 銀河の形成 369
5. 銀河の進化372
6. 銀河・星研究の課題

第32章 太陽系の成り立ちと運動 375
1. 惑星の視運動 375
2. ケプラーの法則 376
3. 太陽系の家族 378
惑星 378/太陽系小天体 379
4. 太陽系の起源 382
Box 32.1 ケプラーの法則 384
Box 32.2 日本の惑星探査「はやぶさ」と「はやぶさ2」

第33章 惑星と衛星
1. 惑星の大気と表層環境387
惑星大気の組成387/惑星表面の熱収支389/惑星大気の循環 389
2. 惑星の内部構造とテクトニクス393
内部構造の手がかり 393/地球型惑星と月394/木星型惑星と天王 星型惑星 398/月以外の衛星と冥王星399

第34章 太陽と宇宙空間
1. 太陽の電磁放射403
2. 太陽面現象405
粒状斑(白斑) 405/黒点 406/プロミネンス(紅炎) 407/フレア
3. 太陽風 409
4. 磁気圏の形成 410
5. オーロラ412
引用文献 415
索引423
執筆者一覧 445

在田 一則 (著, 編集), 竹下 徹 (著, 編集), 見延 庄士郎 (著, 編集), 渡部 重十 (著, 編集)
出版社 : 一般社団法人 北海道大学出版会; 第2版 (2015/3/25)、出典:出版社HP

地球学入門 第2版: 惑星地球と大気・海洋のシステム

地球科学の総合テキスト

地球全体を総合的に概説し、最新の地学知見をもとにした地球科学テキストの改訂版となっています。私たちの住む地球について、地球科学の基本や歴史、地球規模の現象における考え方まで丁寧に解説されています。中高生から大学生の教養レベルに役立つ参考書です。

酒井 治孝 (著)
出版社 : 東海大学出版部; 第2版 (2016/3/29)、出典:出版社HP

地球学入門 第2版: 惑星地球と大気・海洋のシステム

Introduction to Studies on the Earth
Second Edition
Harutaka SAKAI Tokai University Press, 2016 ISBN978-4-486-02099-8

地球学のすすめ

21世紀,私たちの前に立ちはだかっている人類の存続に関わる大きな問題が3つある.それは,(1)地球環境問題,(2)人口(食糧)問題,(3)エネルギー問題である.この三者は独立して解決できる問題ではなく,相互に深く関係しあっている.現在の人口増加率が続くと,2050年には世界の人口は85億人に達し,食糧生産は開発途上国における人口爆発に追いつけなくなることが予測されている.また人口が増加し,生活が豊かになることにより,石油・天然ガスの生産量は需要に追いつかなくなると予測されている.そして化石燃料の使用がこのまま続くと,2050年には大気中の二酸化炭素濃度が産業革命前の280ppmの2倍,560ppmになり,地球温暖化が加速することが推定されている.つまり人間活動は地球規模で環境に変化をおよぼす最大の要因となり,21世紀前半には食糧,エネルギー,地球環境の危機を迎えることになる.

これらの問題に人類が立ち向かう時,不可欠なことが2つある。1つは私たちの住む地球,「宇宙船地球号」とそのシステムについての地球科学的な理解と基礎知識である.もう1つは人間と地球をミクロにみると同時に,マクロにグローバルにとらえる広い視点と総合的な判断力である.コンピュータやインターネットが急速に普及した現代社会では、日常生活の中に地球科学的情報があふれている.気象衛星やアメダスによる気象予報や農作物・漁業情報,地震・火山観測網に基づく噴火予知情報,活断層分布や土砂災害危険地帯の情報など数限りない.これらを的確にとらえ判断することは,個人生活にとっても,国土開発や防災のためにも重要であり,現代人のリテラシー(基礎教養)として,地球科学の基礎を理解し,その知識をもっておく必要性は増している。
このように21世紀に生きる私たちにとって必修ともいえる地球科学であるが,日本の高校理科教育で「地学」を履修する機会はきわめて限られている。平成13年度の全国の高校での「地学」履修率は1%,私の大学の地球惑星科学科に入学してきた学生のうち,高校で「地学」を履修したものは0%であった.つまり中学校の理科で石ころや天気の話を習ったら,それ以降,高校で地学を学ぶ機会はほとんどないのが現状である.したがって大学の一般教養教育のカリキュラムにおける地球科学は、一生に一度の地学を学ぶチャンスだということになる.私の「一般地球科学」の講義を履修した文系の学生のひとりから,私はこんなことをいわれたことがある.

「私は朝一時間目の先生の講義を聴くために,朝5時すぎに起きて大学に来ています.私の高校では地学という科目がなかったんで,地学は習っていません.私は将来,法律関係の仕事につきたいと思っていますので,大学を卒業して社会人になったら,一生地学の講義を聴くことはないでしょう。だから,先生の講義は私にとって一生に一度だけまとまって聴く“一生ものの地学”なんですと。
一方,多くの学生から毎年繰り返しいわれてきたことがある.それは,「地球科学のまとまった教科書,あるいは参考書を教えて下さい」ということである.ところが地球科学の基礎知識が過不足なく網羅され,1冊にまとまっている教科書は見当たらない.地球科学は物理学や化学と違って体系だっておらず,発展途上にある地球物理学,地質学,気象学,海洋学など様々な学問分野の総合科学である.したがって多分野にまたがって分担執筆された日本語のテキストはあるが,各分野の有機的つながりが明確でない。各分野の良い参考書やテキストを推薦することはできるが,これこそお奨めといえる1冊にまとまった一般地球科学のテキストがない.
そこで「一生ものの地学」を学ぶ学生のために,地球を総合的にとらえた1冊にまとまった教科書を目指して執筆したのが本書である。もとより地質学の一介の研究者にすぎない私が,大気・海洋を含む地球全体を総合的に概説したテキストを執筆することは無謀であることは承知しているが,現状を考えあえて筆をとった次第である。
高校の「地学」の教科書を見ればわかるように,「地学」は地球に関する様々な現象から宇宙に至るまで、実に多岐にわたる学問分野をカバーしている.しかし本書ではそれらをすべて網羅することはせず,地球とそのシステムの基本的な事柄を扱うことにした.本書は,将来社会にでても役に立つ地球科学の基礎知識と,地球規模の現象のとらえ方や考え方を概説することを目指した.そこで本書の題名は、『地球学入門」とした。
もちろん,地球科学の学問としてのおもしろさもわかってもらいたいと願って執筆した。地球科学は科学の諸分野の知識と方法を駆使して,私たちの住む地球の謎を解く学問である。地球と生命の起源や進化を探ろうとすると,必然的に物理学や化学,生物学などの知識が必要になってくる、地質学,地球物理学,地球化学,古生物学などの知識と油田開発や海洋開発の技術が結集して,プレートテクトニクスという新しいパラダイムが生まれ,今再びCTスキャンの原理を使って地球深部の三次元立体構造が明らかになりつつある.また,従来ほとんど相互に関係がないかのように取り扱われていた固体地球と水圏・大気圏および生物圏が,密接に関係し合っていることがわかってきた.エルニーニョやモンスーンなどの気候システムの成立と変動には、大陸の位置や海陸分布,巨大山脈や深海底の深層水の誕生など様々な要素が複雑に絡み合っているのである.一見何の脈絡もないように見える個々の自然現象が,どこかで相互に関係し合って地球という1つのシステムをつくっているのである.その謎解きのおもしろさを読者と共有することができれば幸いである.

酒井 治孝 (著)
出版社 : 東海大学出版部; 第2版 (2016/3/29)、出典:出版社HP

第2版の発刊に際し

本書は2003年の初版発刊以来印刷を重ね,2015年で第15刷となった.その間に読者の皆さんから頂いたご意見や誤りの指摘を踏まえて,新たに印刷するたびに改訂を行なってきた。また2004年のスマトラ沖巨大地震とインド洋の大津波,および2011年の東北地方太平洋沖地震と津波という、未曾有の巨大自然災害については,新たなコラムを書き加えることで対応してきた.しかし最近の人類の営為による地球環境の変化は激しく,それに伴う自然災害も発生するようになってきた.またエネルギーや人口の問題についても、技術開発や国際情勢の変化により新たな局面を迎えつつある。
そこで本書の内容と構成を修正し,第2版を出版した。まず従来から要望の多かった「堆積作用と堆積環境」についての第10章を新たに書き加えた.また「第3章水と二酸化炭素の循環」と「第16章人類による地球環境の変化」の一部を、最新の資料に基づき修正した.さらにカラー口絵「V堆積作用と堆積環境」,「VI地震・津波・土砂災害」を新たに付け加えた.
2015年3月には世界中のCO,平均濃度が観測史上初めて400ppmを超え,同年6~7月は1880年以来最も暑い月となった。世界の平均気温は,過去15年の内13年までもが記録を更新し,上昇を続けている。日本国内でも、毎年夏には40°Cに近い気温を記録するようになった。本書がこのような地球規模の変動と自然災害の理解に,少しでも役に立つことを願っている。

2016年1月31日著者

酒井 治孝 (著)
出版社 : 東海大学出版部; 第2版 (2016/3/29)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第I部 惑星地球の環境
第1章 人類と地球の環境
1. 水はなぜ必要か?/ 2. 大気はなぜ必要か?/3.適当な温度はなぜ必要か? /・地球・火星の環境比較/5.地球表層の特徴

第2章 地球表層の温度
全星,地球, 火星の表面温度/2. 地球が金星のようにならなかった理由/3. 地球が火星のようにならなかった理由/ 4. 地球表層の温度と液体の水
コラム 太陽の質量を求める19
コラム 科学の進歩の道筋:観察・観測,実験→解析→普遍化 21

第3章 水と二酸化炭素の循環
1. 水の分布と循環/2.二酸化炭素の循環と温度調節機構
コラム干上がった地中海31

第II部 生きている固体地球
第4章 地球表層の構成と組成
1. 地球の成層構造/ 2.地殻の構成と化学組成 / 3.造岩鉱物の組成と構造/4. 火成岩の組成と組織・構造
コラム 地球内部の物質と圧力54

第5章 プレートテクトニクス
1. プレートテクトニクス/2. 大陸移動説と海洋底拡大説/3.海洋のライフサ イクル/4. プリュームテクトニクス
コラム 地磁気は生きている71
コラム 岩石の年齢と人骨の年代 81

第6章 火山と噴火
1. マグマと火山噴火/2.火山噴出物と運搬・堆積プロセス/3.火山噴火と マグマ溜まり/4.日本列島の火山/5. 地球上の火山/6.月の岩石
コラム 南九州の大規模火砕流101

第7章 地震と断層
岩石の破壊と流動/2.地殻の歪みと地震の発生/3.地震の発震機構と断層 14.地震の震度と規模/5.日本とその周辺の地震と活断層/6.地震と災害 トムトンネル工事中に動いた断層一丹那断層と北伊豆地震118
コラム スマトラ沖大地震とインド洋の大津波124
コラム 東北地方太平洋沖地震と津波130

第8章 日本列島の成り立ち
1. 島弧としての日本列島/ 2. 付加体の形成プロセス/3.日本列島の地質構 造/4.日本列島の大陸からの分離/ 5. 第四紀海水準変動と海岸平野
コラム 地滑りと土石流 162

第9章 岩石の風化と土壌の形成
1.堆積岩/2.土壌の形成
コラム 粘土とその利用

第10章 堆積作用と堆積環境
1. 陸から海へ/ 2. 河川と湖の堆積作用と堆積物/3.氷河による堆積作用と 堆積物/4.風による堆積作用と堆積物/ 5. 海洋の堆積作用と堆積物/6.堆 積物の付加と沈み込み

第III部 大気・海洋の循環と気候変動
第11章 地球の熱収支と大気の大循環
1.太陽放射と太陽定数 / 2. 地球大気の熱収支 / 3. 熱エネルギーの輸送/4. 大気の流れを起こすカ/5. 気圧配置と風系/6. 大陸・海洋の分布と気圧配置 17.偏西風波動とジェット気流/8. ハードレー循環とロスビー循環(フルッ の実験)
コラム 太陽の核融合とその寿命 214

第12章 海洋の構造と循環
1. 海水の化学的性質/2.海洋の物理的性質と構造/3.海洋の循環
コラム 潮の満ち干230

第13章 エルニーニョとモンスーン
1. エルニーニョ/2. モンスーン/3. エルニーニョとモンスーン
コラム 人類の発生と東アフリカ地溝帯 248

第14章 気候変動
1. 気候変動の原因/2. ミランコヴィッチサイクルと気候変動
コラム 南極大陸の分裂と氷河期256
コラム 古環境を解く鍵,安定同位体264

第IV部 地球環境の変化と生物の進化
第15章 酸素の起源と生物の進化
1.酸素の起源/2. 酸素の増加と生物の進化/3. 陸上植物の出現/ 4. P-T 境界とスーパープリューム/5. K-T境界と隕石の衝突
コラム ストロマトライトの栄枯盛衰

第16章 人類による地球環境の変化
1. 人類と地球環境/ 2. フロンガスによるオゾン層の破壊 / 3. 砂漠化/4. 合成化学物質による汚染と環境ホルモン/5.地球環境問題への取り組み

あとがき
参考図書・地球科学関係のホームページアドレス
索引

酒井 治孝 (著)
出版社 : 東海大学出版部; 第2版 (2016/3/29)、出典:出版社HP

地球・惑星・生命

地球惑星化学のフロンティア

地球惑星科学とは何か、何が面白いのかが丁寧に解説されています。著者は日本地球惑星科学連合の第一線の研究者であり、本書からは地球科学への情熱が伝わってきます。その研究をもとに、地球惑星科学の課題と今後の展望まで語られています。これからの地球とともに生きるための入門書として最適の1冊です。

日本地球惑星科学連合 (編集)
出版社 : 東京大学出版会 (2020/6/10)、出典:出版社HP

地球・惑星・生命

The Earth, Planets, and Life
Japan Geoscience Union, editor
University of Tokyo Press, 2020
ISBN 978-4-13-063715-2

はじめに

公益社団法人日本地球惑星科学連合会長 川幡穂高
「私たちはどこから来たのか?」「私たち人類が変え始めた環境は、持続可能なのか?」という素朴な疑問を皆様もお持ちのことと思います。もう少し具体的には、「私たちが生存する地球はどのように形成されたのか?」「地球で生命はどのように誕生したのか?」「地球のような惑星は他にもあるのか?」「私たち以外にも、高度な知力を有する生命体はいるのか?」など、人類が抱くこのような質問にひとつひとつ答えていくのが、「地球惑星科学」です。

地球や惑星は複雑で、そこで起こる現象は多様です。そこで、多面的な研究が必要とされます。しかし、地球の現在の姿を理解し、過去の歴史を解明し、未来の変動を予測するには、専門分野で展開されている詳細な研究を、分野横断的に拡大し、より高い次元の理解へと発展させることが要請されます。「地球惑星科学」は、とても広い範囲を対象とするので、伝統的にたくさんの専門分野に細分化されてきましたが、それらは「宇宙惑星科学」「地球生命科学」「固体地球科学」「大気水圏科学」「地球人間圏科学」および「関連の学際分野」に大きく分類できます。
「宇宙惑星科学」は、小惑星探査機の「はやぶさ」で知られるように、地球外の惑星・小惑星・衛星・惑星間空間などを対象に、太陽系外惑星の発見も契機となって、「ハビタブル(生命が存在し得る)」というキーワードで、地球を取り巻く宇宙環境や生命の存在する星の条件、太陽系および太陽系外惑星系の成立などを探求しています。

「地球生命科学」は、「生命誕生以前にどのように生命材料有機物が生成し、そこからどこでどのようにして生命が誕生したのか?」「単細胞生物から、どのように複雑な生命体に進化していったのか?」「地球環境の変化と生命の進化にはどのような関係があったのか?」「生命は、圧力、塩分などに関し、どのような極限環境まで生存できるのか?」などの課題を有し、地球や惑星というキーワードとの関連から、生物学とは一味異なるアプローチで、生命の本質に迫っています。「固体地球科学」では、火山噴火や東日本大震災で体験した地震や津波といった課題が、純粋な科学的見地から関心を集めるとともに、その研究の進展は自然災害の観点で社会からも期待されています。地球の質量はほとんど地殻・マントル・核という岩石や金属で占められ、その動態は、本書でも紹介されているプレートテクトニクス、プリュームテクトニクス、コアダイナミクスなどにより支配されます。地球内部は高圧の領域です。実験室で創り出される超高圧の世界と理論解析により、直接見ることができない地球深部の深い理解が進行しています。「大気水圏科学」では、地球という星を特徴づける海洋と大気を対象に、その循環の仕組みと相互作用に関心がもたれています。これらのプロセスは、台風や集中豪雨、地球温暖化など、将来の異常気象や気候変化と密接に結びついているので、社会のニーズも高くなっています。近年、現在のみならず過去の環境も定量的に復元できるようになりました。「地球惑星科学」は、物理学・化学と異なり、室内で実験が簡単にできない、ということが悩みとされてきましたが、近年ではモデリング研究により、コンピューターの中で地球の営みの精密な再現と深いプロセス解析が行えるようになりました。
最後になりますが、「地球」の最大の特徴は、人間が存在し、生活していることです。「地球人間圏科学」では、災害と減災、地球環境問題、水問題など、純粋な学問とともに人類にとって喫緊の課題が目白押しで、日々新しい知見が得られています。地球表層環境を駆動する太陽からのエネルギーが多量にふりそそぐ赤道域は気候駆動のエンジンに、そのスイッチは高緯度域というように、地球は全体としてひとつのシステムになっています。一見無関係に見える熱帯のサンゴ礁と南極の氷床も、地球表層システムとして密接に結びついていますし、氷床の融解と海面上昇は緊急の課題となっています。

本書は、公益社団法人日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union、以下、JPGUと省略します)の30周年を記念し、刊行が企画されました。JpGUは、「地球惑星科学」を、さまざまな専門の手法を活かしながらも、分野横断的に研究を行い、最終的に統一的な概念を生み出すべく設立されました。2020年4月現在、地球惑星科学関連]学協会が参加し、個人会員1万3000人を有し、年会は毎年5月に開催され8000人以上の参加者があります。年会では、初日(休日)に、中高生や大学学部生を含む一般の方々を対象とした「パブリックセッション」が入場無料で組まれてきました。ここでは、どなたでも、地球惑星科学の最先端の話題や、社会にも役立つ研究成果にふれることができます。大学生以下の方々は、大会の参加自体が無料となっています。インターネットで「日本地球惑星科学連合大会」と検索すると、大会のプログラムなどの情報が入手できます。しかしながら残念なことに、本年度(2020年度)の年会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、インターネット上での開催となりました。来年以降は、お近くの方もお誘い合わせの上、ぜひご来場いただければと思います。本書は、このような地球惑星科学の最先端と今後の展望がわかりやすくまとめられている、地球惑星科学への最適な入門書となっています。本書や大会パブリックセッションを通じて、「地球惑星科学」の課題を、皆様とともに考えられれば嬉しく思います。

日本地球惑星科学連合 (編集)
出版社 : 東京大学出版会 (2020/6/10)、出典:出版社HP

目次

はじめに
川幡穂高
序章 地球・惑星・生命の成り立ちを理解すること
田近英橘 省吾・東宮昭彦
I 宇宙のなかの地球
1 銀河のなかの惑星たち 井田茂
系外惑星研究の急進展 / 1995年の衝撃的なホットジュピターの発見 ゴールドラッシュ / 太陽系中心主義からの解放 / 遍在する地球型惑星 ハビタブルゾーンの地球型惑星 / 赤色矮星のハビタブルゾーンの地球型惑星 私たちは地球外生命を認識できるのか? / 生命が住んでいる兆候とは? 系外惑星の発見が切り拓いたもの、そしてこれから

2 太陽系小天体探査と「はやぶさ2」 渡邊誠一郎
小天体が握る太陽系形成の鍵 / 小天体探査と日本 「はやぶさ2」のリュウグウ到着 / 見えてきたリュウグウの特徴 ローバーと着陸機による表面その場観測 / タッチダウンに向けた取り組み 2回のタッチダウンと人工クレーター生成 /「はやぶさ2」の初期科学成果

3 地球型惑星からの大気流出とハビタブル環境 開華奈子
金星、地球、火星はどこで道を違えたのか / ハビタブル惑星と大気進化 地球型惑星からの大気流出メカニズム / 太古火星の気候変動――2つの謎 ハビタブル惑星の普遍性と多様性の理解に向けて

4 宇宙天気予報とは何か 草野完也
太陽フレアの発見とオーロラ / 宇宙天気とその社会影響 長期的な宇宙天気変動 / 宇宙天気予報の現状 より正確な宇宙天気予報のために / 宇宙天気予報研究のための国際協力
column-01 地球の超高層大気で起こっていること 坂野井健
column-02 アストロバイオロジー―地球人として未来を解くための鍵 薮田ひかる

I 生命を生んだ惑星地球
5 なぜ地球に生命が生まれたのか 小林憲正
生命の起源研究の始まり / 原始大気からの生体関連分子の生成 地球外の生体関連有機物 / 有機物から生命へのシナリオ(1)RNAワールド 有機物から生命へのシナリオ(2)がらくたワールド 太陽系天体に化学進化の化石と第2の生命を探る / アストロバイオロジーの役割

6 深海の極限環境に生命の起源を探る 高井研
生命の起源に関する最新シナリオ / 2つの深海熱水起源説 LUCAはどのような代謝で生きていたのか? LUCA誕生の場から生命誕生の場へ

7 最古の生命の痕跡を探る 小宮剛
冥王代という時代 / 冥王代の生命の証拠? / 原太古代のストロマトライト 最古の生物構造化石の発見 / 炭質物の同位体から見る最古の生命 地質試料に基づく初期生命研究の展望

8 恐竜研究の今、そして未来
恐竜研究の意義 / 日本で発見された恐竜化石 恐竜研究を飛躍的に進歩させた発見と技術 / 恐竜研究新時代
column-03 微化石から探る天体衝突と大量絶滅 尾上哲治

3 岩石惑星地球の営み
9 大きい地震と小さい地震、速い地震と遅い地震 井出哲
地震の大きさと発生頻度の関係 / 繰り返し地震 / 地震断層の階層構造 スロー地震の発見 / スロー地震と潮汐の関係 / GR則の直線の傾きb値 進化する観測システムと将来の地震発生確率予測

10 破局噴火 高橋正樹
日本埋没 / 破局噴火がもたらす「火山の冬」 / 量の問題 時間の問題 / マグマ溜りはひとつか / 人類社会に突きつけられた課題

11 まだ謎だらけのプレートテクトニクス 是永淳
プレートテクトニクスの「歴史」 / いまだに謎だらけ 表層環境とのつながり / 今後の課題

12 地球の中心はどこまでわかったか 廣瀬敬
地球の深部を再現する / ポストペロフスカイトの発見と最下部マントル コアから地球の起源を語る

13 「ちきゅう」で地球を掘る南海トラフ地震発生帯掘削 木下正高
南海トラフ地震発生帯―なぜ掘るのか?
「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削 / 南海掘削の成果と達成 地層に働く応力 / 浅部断層の特性 / 浅部スロースリップの発見 ライザー掘削 / 南海掘削と「ちきゅう」の今後
column-04 計算機で地球や惑星の内部を探る 土屋久

Ⅳ 地球環境の現在、過去、そして未来
14地球温暖化を正しく理解するには 江守正多
地球温暖化とは / 本当に人間活動が主な原因か 二酸化炭素の収支と濃度増加 / 異常気象の増加は地球温暖化のせいか 将来の気候の変化とリスクの見通し / 地球温暖化に適応する 地球温暖化を止める / 社会の大転換が必要とされている

15 気候変化が海洋生態系にもたらすもの 原田尚美
円石藻と珪藻――その大きな違い / 海洋地球研究船「みらい」による観測
石藻ブルーム出現の原因 / 珪藻から円石藻の海へ 変わりゆく北極圏の海と海洋生態系 / 私たちに求められていること

16 過去の気候変動を解明する 横山祐典
古気候研究 / プロキシと古気候アーカイブ / 年代測定 古気候研究のターゲットとなる時代と今後の研究

17 激しく変化してきた地球環境の進化史 田近英一
大気中の二酸化炭素と酸素 / 暗い太陽のパラドックスと初期地球環境 酸素環境の変動史 / 全球凍結イベントがもたらしたもの 地球環境変動史という視点
column-05 気象・気候・地球システムの数値シミュレーション 渡部雅浩
column-06 日本初の地質時代名称「チバニアン」 岡田誠

V 人間が住む地球 佐竹健治
18 「想定外」の巨大地震・津波とその災害
巨大地震と津波 / 2004年スマトラ・アンダマン地震とインド洋津波
2011年東日本大震災 / 古地震調査による地震発生履歴 津波の観測と予報 / 今後の展望

19 環境汚染と地球人間圏科学―福島の原発事故を通して 近藤昭彦
なぜ研究者が福島に向かったのか / 何がわかっていたか、何を知るべきか 空間線量率の分布の意味するもの / なぜ人は山村に戻ったか 文明社会のなかの地球惑星科学

20 防災社会をデザインする地球科学の伝え方 大木聖子
4枚カード問題 / 地球科学と人間科学 / 防災教育するほど防災意識が下がる? 文脈をもたせて情報を届ける / 地球科学の研究成果の伝え方の研究

21 地球をめぐる水と水をめぐる人々 沖大幹
忘れられた地球科学水文学 / 気候システムと陸域水循環 地球上の水循環の実態は? / 人間活動を考慮した水循環研究 人間活動がグローバルな水循環に及ぼす影響 バーチャルウォーター貿易 / 水文学のこれから
column-07 深層崩壊と防災 千木良雅弘
column-08 地球惑星科学とブラタモリ 尾方隆幸
シームレスなストーリー/一般化されたストーリー

あとがき これからの地球惑星科学に向けて 田近英橘 省吾・東宮昭彦
編集委員紹介 *執筆者紹介は各部の末尾に掲載した。
索引
部中扉解説・出典

日本地球惑星科学連合 (編集)
出版社 : 東京大学出版会 (2020/6/10)、出典:出版社HP

イラストで学ぶ 地理と地球科学の図鑑

ビジュアルでよくわかる

地理の基礎から応用まで、イラストを用いて丁寧に解説された学習図鑑です。自然地理・人文地理の基礎が網羅されており、直感的な理解がしやすい構成になっています。また、フィールドワークや調査の仕方など、実践的な学習を促しています。学生から大人の学び直しにまでおすすめの、非常に有益な1冊です。

柴山 元彦 (監修), 中川 昭男 (監修), 東辻 千枝子 (翻訳)
出版社 : 創元社 (2020/6/18)、出典:出版社HP

イラストで学ぶ 地理と地球科学の図鑑

DK Random
| Penguin Random House
Original Title: Help Your Kids with Geography Copyright © 2019 Dorling Kindersley Limited A Penguin Random House Company
Japanese translation rights arranged with Dorling Kindersley Limited, London through Fortuna Co., Ltd. Tokyo.
For sale in Japanese territory only. Printed and bound in Malaysia A WORLD OF IDEAS: SEE ALL THERE IS TO KNOW www.dk.com

イラストで学ぶ
地理と地球科学の図鑑 2020年6月20日 第1版第1刷発行
日本語版監修者 柴山元彦、中川昭男 訳者 東千枝子 発行者 矢部敬一 発行所
株式会社 創元社 https://www.sogensha.co.jp/
(本社)〒541-0047 大阪市中央区淡路町4-3-6
Tel.06-6231-9010 Fax.06-6233-3111
東京支店〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-2田辺ビル
Tel.03-6811-0662 翻訳協力東辻賢治郎 装丁・組版寺村隆史
Japanese translation © 2020 TOTSUJI Chieko, Printed in Malaysia ISBN978-4-422-45004-
9 C0044

《検廃止〉落丁、乱丁のときはお取り替えいたします。
[1copy《出版者著作権管理機構委託出版物>本書の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。複製される場合は、そのつど事前に、出版者著作権管理機構(電話03-5244-5088、FAX03-5244-5089、e-mail:info@jcopy.or.jp)の許諾を得てください。
[本書の感想をお寄せください)投稿フォームはこちらから

【日本語版監修者】
柴山元彦(しばやま・もとひこ)自然環境研究オフィス代表、理学博士。NPO法人「地盤・地下水環境NET」理事。1945年大阪市生まれ。大阪市立大学大学院博士課程修了。38年間高校で地学を教え、大阪教育大学附属高等学校副校長も務める。定年後、地学の普及のため「自然環境研究オフィス(NPO)」を開設。近年は、NHK文化センター、毎日文化センター、産経学園などで地学講座を開講。著書に『ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑』1・2、『宮沢賢治の地学教室』『宮沢賢治の地学実習』(いずれも創元社)などがある。

中川昭男(なかがわ・あきお)
1945年、広島県三原市生まれ。大阪教育大学社会科学科地理専攻卒業後、地理教員として大阪教育大学附属平野中学校に20年、大阪教育大学附属高等学校平野校舎に18年勤務し、同校では副校長も務めた。その後、大阪私立興國高等学校でも教鞭をとり、2019年退職。地理教育研究会、大阪教育大学地理学会地理教育部会会員。

【訳者】東辻千枝子(とうつじ・ちえこ)お茶の水女子大学大学院修士課程、岡山理科大学大学院博士課程修了、博士(理学)。専門は物性物理学。東京大学海洋研究所、岡山大学大学院自然科学研究科、工学院大学学習支援センター勤務を経て、現在は理系分野の翻訳を行う。訳書に『タイム・イン・パワーズ・オブ・テン』(講談社、2015年)、『プラネットアース』(創元社、2019年)など。

【原書監修者】
デイビッド・ランバートDr.David Lambertユニバーシティカレッジ・ロンドン教育学部地理教育学名誉教授。ニューキャッスル大学卒業後、ケンブリッジ大学で教育学修士課程を修了、ロンドン大学で博士号取得。12年間中学校の教師を務め、執筆した教科書は賞を受け広く出版されている。2002年からイギリス地理学会会長。

スーザン・ギャラガー・ヘフロンDr. Susan Gallagher Heffronネブラスカ大学で教育課程および教授法の博士号を取得した教育コンサルタント。地理学教育に特に造詣が深く、地理学教育に関する国内外のプロジェクトに参加している。地理教育雑誌『The Geography Teacher』編集委員を務めたほか、20年にわたり学校、大学で教鞭をとった。

【原書執筆者】
ジョン・ウッドワード John Woodwardイングランド南部の自然保護区で常勤ボランティアとして環境保護活動を支援しつつ、自然に関する多数の著書・論文を執筆。

ジョン・ファーンドンJohn Farndonケンブリッジ大学地理学修士。自然に関する多数の書籍を執筆。

フェリシティ・マックスウェルFelicity Maxwellニュージーランド・ビクトリア大学の地理学・植物学修士、・ギリス・オックスフォードブルックス大学の環境管理工学修士長年政府機関で生態系・自然環境保護コンサルタントを務める

スーザン・ウィーラーSarah Wheelerロンドン経済大学人文地理学科卒業後、イギリス南部のタマースクールで地理を教えている。30年以上も上級審査定務め、教科書や復習書の執筆にも携わった。

アーサー・モルガンArthur Morganマンチェスター大学地理学部卒業。ジョージアとアルメニ結ぶハイキングトレイル建設など国際プロジェクトのボランティアとして活発に活動している。

柴山 元彦 (監修), 中川 昭男 (監修), 東辻 千枝子 (翻訳)
出版社 : 創元社 (2020/6/18)、出典:出版社HP

はじめに

地理学ほど壮大な分野はありません――世界全体がその対象なのですから
地理学は世界の多くの国で教育課程の中の主要な科目のひとつになっています。世界の様子やしくみを知り、理解することは誰にとっても大切なことだと考えられているからです。
地理学に関心を持つことは私たちの住む素晴らしい惑星の働きに対して真の好奇心を持つことであり、それは目まぐるしい現代を生きるのに大いに役に立つでしょう。
もうら
この本は地理学の基礎を多くのイラストを用いてわかりやすく説明することをめざしています。学校で教えられる重要なことがらを網羅し、日本では地球科学として扱われている内容も多く含んでいます。学生はもちろん、卒業以来地理学や地学に触れていない大人の方々も、記憶をリフレッシュできるでしょう。
地理学は単に正確な事実を積み上げたものというのだ。これはまりません。地理学ではいろいろなものの見方を学びます。複雑な概念もあり、ブレート、風化と侵食、それに生態系、さらに常に進展するグローバリゼーションのサビリティ、そして気候変動。これらはいずれも、自然界や、人間が互いにどうあいのり合っているか、人々とその環境がどうかかわり合うか、に関係しています。
この本は他のどんな地理学の本とも違っています。世界を理解するために必要なことがたくさん書いてあります。好奇心を刺激するとともに、私たちが直面する重要な問題を指摘しています。この本を通して、世界を地理学的に考え、意見を持ち、さらに議論をしてほしいと願っています。それは口論することや、単に意見が違うということではなく、考え方の異なる人の言葉に耳を傾け、地理学の多くの問題は単純なひとつのお話ではなくていろいろな見え方があるのだということを受け入れるという意味です。
私は学校で教えていましたし、子どもたちの親でもありました。私はこの本が、大人の方々や若い人々が世界について読み、教え合い、語り合う多くの機会を提供すると期待しています。あなた方が世界と向き合うときにはきっと役に立つことでしょう。それが地理学の力なのです。

David Lambert
デイビッド・ランバート ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ教育学部地理教育学名誉教授

柴山 元彦 (監修), 中川 昭男 (監修), 東辻 千枝子 (翻訳)
出版社 : 創元社 (2020/6/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに
地理学とは何か
地理学的に考えること
行動する地理学

1自然地理学
自然地理学とは何か
地球の歴史と地質年代
地球の構造
プレートとプレート境界の運動
動く大陸
地震と津波
造山活動
火山と温泉
世界の自然地図
岩石と鉱物
火成岩
風化と浸食
堆積岩と化石
変成岩
岩石の循環
山地での川の流れ
河川
氷河時代
氷河の侵食作用
氷河の堆積作用
海岸の侵食作用
海岸での堆積作用
砂漠での侵食作用
大気
季節
気候帯
水の循環
地球に吹く風
海流
気象システム
天気予報
雲と霧
降水現象
ハリケーンとトルネード
バイオーム
種の分布
生態系
熱帯草原と熱帯雨林
砂漠
温帯林と温帯草原
亜寒帯林とツンドラ
世界の海洋
大洋、海

2人文地理学
人文地理学とは何か
人の住むところ
人口統計学
移住
人口の変化
人の集落
都市の構造
メガシティ
農村地帯の集落
都市化
文化の広がり
健康
経済活動
食料と農業
化石燃料の採掘
製造業
サービス産業
観光旅行
輸送と流通
科学技術
不平等な開発
グローバリゼーション
都市の住宅
人間の影響
汚染
景観の変化
森林破壊
气候变動
保存と保全
自然災害への備え
エネルギー源
持続可能性
プラスティック汚染
地理に関係したたくさんの問題
広域相互依存と地域の相互依存
食料の安全保障
水の安全保障
紛争と解決

3実用地理学
実用地理学とは何か
大陸と海洋
国と国民
世界の政治地図
首都と大都市
南北半球と緯度
経度、標準時間帯、座標
どれだけ離れているか
地政学
地図のいろいろ
地図の機能
地球儀
地形图
地図帳
地理情報システム(GIS)
野外調查
定量的なデータ
定性的なデータ
グラフの作成
写真の利用
地理学の調査

用語集
索引
謝辞

柴山 元彦 (監修), 中川 昭男 (監修), 東辻 千枝子 (翻訳)
出版社 : 創元社 (2020/6/18)、出典:出版社HP

地理学とは何か

地理学とは、私たちの住んでいる世界を学ぶことである。
地理学者は、地球の地形や大気、自然環境、そしてそこに住む人々について研究している。地理学では、とりわけ、それらがどこにあるか、どのように変わってゆくのか、なぜ変化するのかといったことに注目する。地理学の起源英語の「地理学(geography)」ということばは古代ギリシア語に由来し、geoは地球、graphは記述することを意味する。古代ギリシアの学者たちは世界の中で自分たちがどのような場所にいるのか、他のところはどうなっているのかに興味を持っていた。彼らは自分たちの周りの世界を表すさまざまな地図を作った。

自然地理学
自然地理学では、地球のうち人間活動以外の部分、つまり地形や岩石、大気、川や湖、海洋、そしてそこに住む動物や植物を対象にする。自然地理学にはいろいろな分野があり、地球科学の領域と重なる範囲も多い。

生物地理学
生物地理学者は植物や動物の生活する場所を観察し、特にバイオーム、すなわち特定の動物や植物の集団が生息する領域に注目する。

地質学と地形学
地質学者は岩石や鉱物、地球の地殻部分や内部の構造を調べる。地形学者は地勢や景観のなりたちを調べる。

人文地理学
人文地理学の対象は人々がどこでどのような生活をしているかということ。人々が作り上げた都市や農村の環境に関心を持ち、人間が他の人やさまざまな環境とどのようにかかわっているかを研究する。

都市地理学
都市地理学者の研究の対象は都市で、彼らは都市環境の変化やその背景、また都市が世界の中でどのようにつながっているかを理解しようとしている。

経済地理学と社会地理学
経済地理学者は工業や農業などの経済活動が行われている場所に、社会地理学者は人間のいろいろな集団の分布に注目している。

入口地理学
人口地理学者は人々がどこで生まれてどこで死ぬか、どのように「移動しているかなどに関心がある。人口の変化についても研究する。

地理学のための技術
地理学者の研究範囲はとても広いので、いろいろな技術を身につける必要がある。各種の地図の使い方を理解することはもちろん、観察や計測の方法も知らなければならない。情報を数値として処理するための統計学の知識も重要である。

フィールドワーク
地理学者が地形や人間環境の研究のために屋外へでかけることをフィールドワーク(野外調査)という。高い山や美しい森のような自然の中に出かけられるので、地理学を学び研究する多くの人にとってこれは楽しい活動でもある。

場所と方位
地理学者は対象がどこにあるかを知らなければならない。場所と方角を正確に知るために、地図や人工衛星による測位システム(GPS)、コンパスを使用する。

調査と測量
人文地理学ではさまざまな質問を通じて人間に関するデータを調査する。自然地理学の研究には地形の測量が必要である。

地理学的に考えること
地理学者は地理学の方法によって周りの世界を調べ、それについて考える。
地理学者の課題は、ものごとが世界のどこにあり、それらはどのように機能していて、そしてそれらが全体の中でどのような位置を占めるのかを明らかにすることである。地理学的な考え方の特徴は具体的な事実をいろいろなアイデアや老テ方と結びつけるところにあり、とりわけものごとのつながり方や分布の法則性互いの関係を見つけることを大事にしている。

基盤となる知識
地理学的に考えるための土台は基本的な知識である。それは世界に関する基本的で正確な車実、つまり大陸の名前や大きさ、主要な河川や山岳地帯の位置、あるいは大気の基本的な構造、主な大都市の名前や場所などで、以下のような単純な質問の答えになることがらである。

ベルギーにはどんな人々が住んでいるか?
ペルーはどこにある?
この湖の深さは?
氷河って何?
メキシコ湾流はどこを流れているか?

つながりを見つけること
地理学が与えてくれる大きな視野によって、私たちは世の中のものごとが互いにどのように関係しているかを知ることができる。

地理学は身近なものごとを世界全体に、結びつける。
地理学は自然界と人間との関係を示す。
地理学は人々に環境とのつながりを発見させる。
地理学者は、事実と理論を関係づける。

理論的な知識
優れた地理学者になるためには、世界についての豊かな知識の他に、それらを理解する手がかりとなる考え方が必要である。都市化(アーバニゼーション)、国際化(グローバリゼーション)、気候、水の循環といったことがらはいずれも、場所、空間、そして環境という地理学的な3つの大きな枠組みで考えることができる。地理学の知識はだいたいこの3つの枠組みで整理でき、これらの枠組みがさらに詳しく何かを考えるときのよい出発点となる。

場所
「場所」とは、ふつうはそこに住んでいる人々によって認識され名づけられている領域や地点のことである。小さな通りのこともあれば、大陸全体のこともある。
それぞれの場所はいろいろな方法で詳しく調べたり説明したりできる。たとえば地理学者はその場所の気候や地質、土壌、住んでいる人々などを研究する。2つの場所がまったく同じということはない。1つの場所の特徴が世界全体の理解に役立つこともある。

場所について考える課題の例
●この国の経済について説明し、それと自然資源との関係を考える。
●この特定の地域を農地にすることの利点は何だろうか。ここはどんな土壌や気候なのだろうか。

空間
「空間」とは地球の表面を具体的な広がりとして考えるものであり、「空間的な」というときの空間も同じ意味である。空間にはさまざまな現象や場所の間のつながり方や分布の法則性も含まれる。
地理学者は人口密度などの空間的な変化や規則性を調べ、その原因を理解しようとする。地震の被害や工場による汚染のような現象の広がり方にも関心を持つ。経済的な活動地点の間の隔たりのような空間の影響も重要である。

空間について考える課題の例
●生産活動を世界規模で考えてみる。地球全体では、物はどのように生産者から消費者へ移動しているのだろうか。
●富の分布がかたよっていると何が起きるだろうか。

環境
私たちをとりまく生物や生物以外のものをまとめて「環境」という。自然環境、人の手が入った環境(農地など)、人が建設した環境(都市など)などがある。
地理学者は、人が周囲の世界とどのようにかかわり、どのような影響を与え、環境とどう共存できるか、といったことを研究することもある。生態系、すなわち自然界で生物が互いにかかわり合っているしくみに注目すると環境をずっと深く理解できる。

環境について考える課題の例
●砂漠やサンゴ礁のような環境はなぜ壊れやすいのだろうか。そういう環境を保存することはできるのだろう
●何を再生可能エネルギーとして利用するべきだろうか。

行動する地理学
地理学は単に学校での勉強であるだけではなく、いろいろな場面で役に立っている。
自然地理学地理学は生物(動植物)と生物以外のもの(岩石や大気)の両方を含む地球の自然環境についての幅広い知識を提供する。このような知識があれば、さまざまな仕事や興味を追求することができる。
地理学は、世界を理解するためのわかりやすい指針と、大切に扱うための手がかりを与えてくれる。自然地理学にも人文地理学にも幅広い研究対象や魅力的な仕事、やりがいのある活動がある。

地質学者
岩石を研究するのは地質学者、役に立つ鉱物資源が見つかる。かもしれない。

火山学者
火山学者は火山を研究して、噴火の予知を目指している。

気候学者
気候変動について警鐘を鳴らす気候学者は私たちの将来になくてはならない存在。

活躍の現場
地理学やその関連分野で培われた専門的な知識は、自然環境や人間環境と私たちの関係の中でとても重要な役割を果たしている。地理学が大局的な理解を与えてくれるのに対して、専門家の優れた技能はいろいろな分野の詳細で実務的な知識として役に立つ。地理学を学んだ人が取り組んでいるいろいろな仕事や活動の一部を紹介しよう。

土壌学者
土壌学者は土を分析し、それがどんな植物の成長に適しているかを調べる。

気象学者
気象学者や気象予報士は天候に注目し、正確な天気予報に挑戦している。

パークレンジャー
野生動物の重要なすみかである自然公園。レンジャーは公園の動物たちの保護活動に励んでいる。

生物地理学者
生物地理学者は生物の生息環境を調べて、自然を保護する最善の方法を探っている。

水理学者
水資源を管理し、地域を水害から守るのは水理学者の仕事。

人文地理学
都市でもそれ以外の場所でも人間をとりまく環境はどんどん拡大し複雑になっている。優れた都市計画のためにはそのしくみを理解する必要があり、人文地理学の知識はますます重要になっている。

地理学の楽しみ
地理学を学んで外の世界が深く理解できるようになれば、お出かけももっとずっと楽しくなる!

都市計画
街の景観づくりや土地利用の計画を立案するのは都市計画者の仕事。

測量技師
世界は正確な地図を根拠に動いている。そのもとになる測量はとても大切な仕事。

政治家
政治家がよりよい政策を決定するためには人間とその環境に関する地理学の知識が必要。

オリエンテーリング
オリエンテーリングは地図とコンパスだけを使って道を探して進むアウトドア活動。

ルートづくり
地図の正しい使い方を理解して、最短コースや絶景ルートを大いに楽しもう!

ツアーガイド
土地や人々についての豊富な知識を身につけて、訪問者に喜ばれるツアーガイドになろう!

ビジネス
どこで事業をするか、という決断には地理学の知識が欠かせな

探検
世界の地理学に貢献するために、誰も知らない未開の地を訪ねる探検家になろう!

セーリング
ヨットに乗ることになったら、天候や潮汐、海流について勉強しておこう。

綠化推進
地球とそのしくみをよく理解して、地球を大切にしながらもっと緑の多い生活を楽しもう!

交通計画
道路や鉄道の経路を決めるには物流や地形に関する知識が何よりも必要。

人道支援
援助を待つ人々への支援活動は、世界の富の分布を学ぶこと。

自分専用の地図
本当に自分の周りの世界に詳しくなりたいなら、自分だけの地図を作ってみては、いかが?

世界旅行
見たことのない景色を見たり異文化に触れたりしたければ、外国旅行がおすすめ!

ガーデニング
自分の庭の土壌や水はけなどに詳しくなれば、ガーデニングの達人にもなれる!

教師
みんなの住む世界を教えるという大事な役割を担当しているのが地理の先生。

柴山 元彦 (監修), 中川 昭男 (監修), 東辻 千枝子 (翻訳)
出版社 : 創元社 (2020/6/18)、出典:出版社HP

基礎地球科学(第3版)

地球科学の基礎が身につく

地球科学の基礎が平易かつ包括的に解説されている、地球科学の教科書の最新改訂版です。地球の構造から地球環境の変遷まで幅広く内容を扱っています。地球科学の基本をしっかりと理解し、応用に活用するために必携の1冊です。

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP

基礎地球科学(第3版)

執筆者

西村祐二郎
山口大学名誉教授
給木盛久
広島大学名誉教授
山口大学名誉教授
早稻田大学教育・総合科学学院教授
司前山口大学大学院理工学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科教授
(執筆順)

まえがき

地球科学(earth science, geoscience)とは,地球の表層部から地球の内部真下を含めた地球全体を研究の対象にする総合的な科学であり,自然科学の1つの分野である.高等学校の「地学」の一部にあたる.具体的には,現在の地球の構造や運動を解明するだけでなく,地球の生成から現在までの歴史の解明をも目的にしている.20世紀後半になって,地球上でおこるいろいろな事象がお互いに密接に関連しあっていることが明らかになり,地質学,古生物学,火山学,地球物理学など18世紀後半以降に生まれてきた学問分野の多くを統合した名称として「地球科学」が使われるようになってきた。
本書は地球科学を初めて学習する教養教育あるいは共通教育の2単位用の教科書として、また将来,地球環境問題に携わる各学部生,理科教育に携わる教育系学部生,そして土木・建築業などに携わる工学系学部生の入門書にもなりうるよう企画された。内容的には,地球科学の基礎を平易に解説するとともに,地球環境問題を理解しその解決に向かって模索できるよう配慮した.また,高校教育ではややもすると軽視されている「地学」を広く普及させるため,「地学」を履修していない学生にも理解できるよう工夫した.
地球は宇宙的視点からみると,極めて小さな天体にすぎない.しかし,私たち人間だけでなくあらゆる生命にとっては,とても大きな物体であり,また偶然とは思えないほどの恵まれた環境にあり,絶好なすみかを提供してくれている.地球上でおこっている諸現象やその生い立ちを探ってゆくと,地球がまさに「生きもの」であり「奇跡の星」であるようにも感じられてくる。地球は46億年前に太陽系の「第三惑星」として誕生し、長い時間をかけて「水惑星」として成長・発展してきた。その過程では、さまざまな要素や事象が微妙に関連しつつ,より安定な状態へと次第に分化してきたことも理解できる、地球の過去と現状を学ぶことは、未来の予測を可能にするだけでなく、いろいろな示唆を与えてくれるであろう。

20世紀は人類の人口が飛躍的に増加し,その生活様式が大きく変化しただけ学もその例外ではない。
それとともに科学・技術も急速に進展した.地球科学もそのい。人類人口の急増,生活様式の変化,そして科学・技術の発展は,地球白誕生以来46億年という長い年月をかけて営々と築いてきた地球環境にいるな影響を与え,新たな地球環境問題をひきおこしている.このことが“今世21世紀はまさに地球環境の時代”といわれる大きな理由の1つである.
この「基礎地球科学」の受講あるいは利用によって,新しい自然観への確立の道が開かれ,今世紀最大の課題である地球環境問題に積極的に取り組んでいたがける契機になることを、私たち執筆者は強く期待している.本書の初版は2002年10月に刊行された。それ以来,地球科学の各分野は目覚ましく進展し,またいくつかの定義や基準も改定されてきた。たとえば,日本の活火山の定義が2003年に,太陽系の惑星の定義が2006年に,新生代の区分が2009年になど,それぞれ変更された。一方2004年度以降には、国公立大学は独立行政法人化をうけ制度や運営面などが大きく変化するとともに,教養教育あるいは共通教育の重要性があらためて問われている。

本書は初版を2002年10月に刊行し,第2版を2010年11月に出版した。その後も多くの方々に利用され8年以上が経過したので,さらに改訂を重ね第3版を発刊することにした.改訂に際して,最新の知見とデータを取り入れ,本文を見直し図表を更新するだけでなく,新たに図の一部を巻頭部にカラー口絵として移し刷新を図るとともに,表紙の世界地図をフルカラー化して講義などに活用していただけるよう、地図の配置も工夫した。また,より使いやすい教科書として,本書をスリム化することにも努めた。第3版が旧版に劣らず,地球科学の理解と活用に役立てば、この上ない慶びである。
終わりに、本書を使用される先生方および読者の忌憚のないご意見やご叱正をいただければ幸いである。これまでに貴重なご意見をたまわった方々,および編集・改訂の労をとっていただいた朝倉書店編集部にお礼を申しあげる.

2019年7月
編著者,西村祐二

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP

目次

1. 地球の概観
1.1 天体としての地球
a. 宇宙における地球
b. 太陽系の形成とその性質
c. かけがえのない地球——水惑星
1.2 地球の形と大きさ
a. 地球の形
b. 地球の大きさ
1.3 地球にかかる力
a. 重 力
b. 地磁気
1.4 地球のエネルギー
a 太陽放射のエネルギー
b. 地球内部のエネルギー
c. 地球システム

2. 地球の構造
2.1 地球表面の姿
a 大陸と海洋
b. 大陸地域の地形
c. 海洋地域の特徴
2.2 地球内部の姿
a 地球内部を探る
b. 地球内部の構造
c. 地球内部の諸量の分布
2.3 地殻の構成と構造
a. 大陸地殻の特徴と構造
b. 海洋地殻の特徴と構造
2.4 マントルと核の構成と構造
a. マントル
b. 核
2.5 地球表面をおおうプレート
a プレートとは
b. 海洋プレートと大陸プレート
c. プレートの境界と大地形
2.6 地球内部の働き
a. 地球内部トモグラフィー
b. プルームとは
c. 地球内部の大循環
2.7 地球表層の凹凸と地下でのバランス
a. 大陸地域と海洋地域の相違点
b. アイソスタシー

3. 地殻の物質
3.1 地殻の化学組成
a 地殻の構成単元
b. 地殻の元素組成
3.2 鉱物とその形成条件
a. 鉱物とは
b. 鉱物の性質
c. 鉱物の分類
d. 鉱物の形成条件
3.3 岩石の分類とそのサイクル
a. 岩石の性質と分類
b. 岩石のサイクル
3.4 火成岩と火成作用
a 火成岩の分類と産状
b. 玄武岩質マグマの発生と分化
c. 花崗岩の起源
3.5 堆積岩と堆積作用
a 堆積物と続成作用
b. 堆積岩の分類と命名法
c. 堆積岩の二大原理
d. 付加体の形成
3.6 変成岩と変成作用
a. 変成作用の2つの要素
b. 変成岩の分類と命名法
c. 変成作用の種類と特徴
d. 変成岩の温度と圧力による分類

4. 地殻の変動と進化
4.1 大陸移動説からプレートテクトニクスへ
a. 大陸移動説とマントル対流説
b. 古地磁気学による大陸移動説の復活
c. 海底研究の成果
4.2 プレートテクトニクス
a プレートテクトニクス理論の確立
b. プレートとプレート境界
c. プレートを動かす原動力
d プルームテクトニクス
4-3 火山活動
a 火山の分布
b. 火山の形と構造
c. 火山噴火のメカニズム
d. 火山噴火の様式
e. 火山の成因
4.4 地震現象
a 地震発生のメカニズム
b. 震央の決定
c. 震度とマグニチュード
d. 地震の分布
4.5 造山運動
a 沈み込み型造山運動(帯)
b. 大陸衝突型造山運動(帯)
c. 古い時代におこった造山運動
4.6 地質構造とその記載
a. 地殻変動と変形様式
b. 曲
c. 断層とせん断帯
4.7 地球表層の変化
a. 風化作用
b. 侵食作用
c. 運搬と堆積
d. 整合と不整合
e. 海水準の変動

5. 地球の歴史
5.1 地質年代と地質年代尺度
a. 層序区分と対比
b. 地質年代の区分体系:相対年代
c. 絶対年代:放射年代
d. 地質年代尺度
5.2 地球46億年史の概観:先カンブリア時代
a 冥王代
b. 太古代
c. 原生代
5.3 地球環境と現代型生物の進化:顕生代
a. 生物の多様化・陸上への進出:古生代
b. 現代型環境・生物の進化:中生代
c. 新しい気候と哺乳類時代の成立:新生代
5.4 人類紀:第四紀
a. 氷河時代
b. 第四紀の動植物
c 人類の進化
5.5 日本列島の地質と構造
a 日本列島の基本構成
b. 日本列島の帯状構造
c. 日本列島の新しい構造
5.6 日本列島の形成と進化
a誕生(受動的大陸縁)の時代
b. 成長(活動的大陸縁)の時代
c. 島弧の時代
d. 日本列島の未来

6. 地球と人類の共生
6.1 地球環境の変遷
a. 原始大気と原始海洋
b. 酸素の発生とオゾン層の形成
c. 寒冷-温暖の大サイクル
d. 氷期-間氷期
e. 海洋酸素同位体ステージ
6.2 天然資源
a 岩石・鉱物資源
b. 金属資源
c. 化石エネルギー資源
d. 地熱資源
e. 新エネルギー
6.3 火山との共生
a 火山災害の種類と規模
b. 火山噴火の予知と防災
c. 火山の恩恵
6.4 地震災害
a. 被害地震の発生場所
b. 地震被害のタイプ
c. 地震の予知
d. 地震防災
6.5 その他の災害
a. 土砂災害
b. 人為災害
6.6 最近の地球環境問題
a. オゾンホール
b. 酸性雨
c. 地球の温暖化
d. 放射性廃棄物
6.7 開発と自然との調和

文索
索引

西村 祐二郎 (著), 鈴木 盛久 (著), 今岡 照喜 (著), 高木 秀雄 (著), 金折 裕司 (著), 磯崎 行雄 (著)
出版社 : 朝倉書店; 第3版 (2019/8/7)、出典:出版社HP