【最新】有機化学を学ぶためのおすすめ本 – 基本から大学院入試の演習まで

身に付けておきたい有機化学の基本と応用

有機化学は、有機化合物を対象とした化学の分野で、化学はもちろん、医学、薬学、農学、工学など様々な分野にまたがります。有機化学を学ぶ際には、ただ知識を暗記するだけでなく、基本を理解することが重要です。今回は、有機化学の基礎から大学院入試レベルの演習まで学ぶことのできる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

マンガでわかる有機化学

有機化学の基本的な考え方をマンガで学ぶ

本書は、有機化学を学ぶ際の基本的な考え方を解説している本です。高校の化学を理解している方向けの内容となっています。化学の基礎から有機化学の基礎、有機化合物の構造、性質、反応についてまとめられています。有機化学を学ぶ入り口として利用できるでしょう。

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP

まえがき

有機化学の対象となる有機化合物は、主に炭素、水素、酸素、窒素の4つの元素から作られています。構成元素の種類は少ないのですが、他の元素とは異なった特徴的な種々の結合をすることにより、多様な性質の数限りない有機化合物が生み出されています。生物の重要な構成物質や、栄養となる物質、薬などの多くも有機化合物です。これらにかかわる方にとって有機化学はベースとなる学問です。

生物は、炭素原子を結びつけて、そこに水素原子、酸素原子や窒素原子などのわずかな種類の原子を取り込んで、生命活動に必要なさまざまな有機化合物を作り出しています。原子には炭素以外にも100以上の多くの種類の原子があります。こんなに多くの種類の原子の中で、生命は炭素原子を選んでいるのです。なぜなのか、その答えを学ぶのが有機化学なのです。

このような有機化学を学ぶには、原子・分子についての基本的な理解が必要になります。有機化合物は、どのような原子がどのようにして結びついて作られているか、その理由を知ることによって、有機分子の溶解性、沸点の違いなど性質の違いを理解することができます。さらに、分子をどのような条件で反応させることによって、望む分子を作ることができるかも予想することができます。つまり、原子・分子の性質から考えることで、有機化学が言葉や反応を単に覚えるだけの暗記の学問ではなくなるはずです。

本書では、高校までの化学の知識を想定しています。つまり、高校までの化学の理解があれば、本書を読み進めることによって、単なる知識を知るということではなく、今までにはなかった有機化学の世界に触れることができるはずです。本書は、マンガの部分で登場人物の大学生に対する講義形式で、有機化学を理解するうえでの基本的な考え方を丁寧に説明してあります。どのようにして、炭素原子から有機分子が作られてくるのか、また、有機分子にはどのような性質、たとえば水に溶けやすいとか油に溶けやすいなどの性質が生まれるのはなぜなのか、このような基本的な考えの説明に重点を置いています。そのため、通常の基礎有機化学で取り扱っている有機化学反応の大半を取り上げていません。有機化学を本当に理解するには、たくさんの知識ではなく、なぜそうなるかの理由を理解することです。さらに、コラムでは、私の専門である香料化学の観点から、有機化学的ものの捉え方について説明してあります。この本を読み終わった時に、皆さんにとって新たな有機化学の世界が広がっていることを願っています。

最後に、この本の執筆を続けてこられたことに対して、オーム社開発部の皆様に感謝を申しあげたいと思います。そして、私の原稿をもとに素晴らしいマンガにしていただきましたトレンド・プロの皆様、作画を担当された牧野博幸氏、シナリオを担当された青木健生氏および大竹康師氏にも、心よりお礼申しあげます。また、原稿の査読を快くお引き受けいただきました埼玉大学大学院教授の石井昭彦先生にも、この場をかりてお礼申しあげます。

2014年3月
長谷川登志夫

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP

目次

プロローグ 異星からの伝道師

第1章 化学の基礎
1.1 化学って何?
1.2 有機化合物の分子の骨格は炭素原子である
1.3 原子の構造と化学結合(原子の構造)
フォローアップ
●原子の構造
●軌道と電子配置
●sp3混成軌道と単結合
コラム 料理は有機化学の実験

第2章 有機化学の基礎
2.1 有機化合物の性質の源(官能基)
2.2 有機化合物の名前のつけ方
フォローアップ
●二重結合と三重結合
●共役と共鳴 コラム 目に見える巨大分子

第3章 有機化合物の構造
3.1 異性体って何?
3.2 分子の二次元構造と性質(立体配置)
3.3 分子の三次元構造、分子の鏡の世界(鏡像異性体)
フォローアップ
●分子式、構造式の見方と書き方
●E,Z命名法
●立体異性体のさまざまな表示の仕方
●R,S命名法
●立体配座
コラム 物質の匂いが立体構造で変わる

第4章 有機化合物の性質
4.1 水に溶けるものと油に溶けるもの(親水性・親油性)
4.2 沸点の違いを生む原因(分子間相互作用・分極した結合)
4.3 酸と塩基
4.4 正六角形の構造を持つベンゼンという芳香族化合物
フォローアップ
●酸と塩基
●ベンゼンの構造
●ケトーエノール互変異性って何
コラム 香りの物質は脂溶性

第5章 有機化合物の反応
5.1 有機化合物はさまざまな反応で別の分子に変わる
5.2 炭化水素の反応
5.3 アルコールの反応
フォローアップ
●エステル化反応
●二重結合への付加反応
●ハロゲン化炭化水素の求核置換反応
●ハロゲン化炭化水素の脱離反応
●ベンゼンの反応 (芳香族求電子置換反応)
コラム 物質の性質を操る力:有機化学反応

付録 生体を作っている有機化合物
●生体を構成する主な有機化合物の概観
●タンパク質
●脂質
●糖質
●合成高分子化合物

参考文献
索引

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP

有機化学(第2版) (ベーシック薬学教科書シリーズ)

薬学のための有機化学が学べる

本書は、薬学部の学生向けの有機化学の教科書です。一般的な有機化学の教科書と異なり、医薬品を理解するための有機化学に重点を置いています。基礎的な内容から始まり、有機化学の中でも、薬学に関係する項目について、わかりやすく解説されています。

夏苅 英昭 (編集), 高橋 秀依 (編集)
出版社 : 化学同人; 第2版 (2016/4/15)、出典:出版社HP

ベーシック薬学教科書シリーズ刊行にあたって

平成18年4月から,薬剤師養成を目的とする薬学教育課程を6年制とする新制度がスタートしました。6年制の薬学教育の誕生とともに,大学においては薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した独自のカリキュラムに基づいた講義が始められています。この薬学コアカリキュラムに沿った教科書もすでに刊行されていますが、ベーシック薬学教科書シリーズは、それとは若干趣を異にした,今後の薬学教育に一石を投じる新しいかたちの教科書であります。薬学教育モデル・コアカリキュラムの内容を十分視野に入れながらも,各科目についてのこれまでの学問としての体系を踏まえたうえで,各大学で共通して学ぶ「基礎科目」や「専門科目」に対応しています.また,ほとんどの大学で採用されているセメスター制に対応するべく,春学期・秋学期各13~15 回の講義で教えられるように配慮されています.

本ベーシック薬学教科書シリーズは、薬学としての基礎をとくに重要視しています.したがって、薬学部学生向けの「基本的な教科書」であることを念頭に入れ、すべての薬学生が身につけておかなければならない基本的な知識や主要な問題を理解できるように,内容を十分に吟味・厳選しています。

高度化・多様化した医療の世界で活躍するために、薬学生は非常に多くのことを学ばねばなりません。一つ一つのテーマが互いに関連し合っていることが理解できるよう、また薬学生が論理的な思考力を身につけられるように,科学的な論理に基づいた記述に徹して執筆されています。薬学生および薬剤師として相応しい基礎知識が習得できるよう,また薬学生の勉学意欲を高め、自学自習にも努められるように工夫された教科書です。さらに、実務実習に必要な薬学生の基本的な能力を評価する薬学共用試験(CBT・OSCE)への対応にも有用です。

このベーシック薬学教科書シリーズが,医療の担い手として活躍が期待される薬剤師や問題解決能力をもった科学的に質の高い薬剤師の養成,さらに薬剤師の新しい職能の開花・発展に少しでも寄与できることを願っています。

2007年9月
ベーシック薬学教科書シリーズ
編集委員一同

シリーズ編集委員
杉浦 幸雄 (京都大学名誉教授)
野村 靖幸 (久留米大学医学部 客員教授)
夏苅 英昭 (新潟薬科大学薬学部 客員教授)
井出 利憲 (広島大学名誉教授)
平井 みどり (神戶大学医学部教授)

夏苅 英昭 (編集), 高橋 秀依 (編集)
出版社 : 化学同人; 第2版 (2016/4/15)、出典:出版社HP

第2版の刊行にあたって

薬学部6年制が始まってから10年が経った。私たち教員は、学生とともに激動の10年を過ごし、多くの変化にもしぶとく適応してきた、薬学教育は常に変わり続けている。たとえば,2013年度には薬学教育モデル・コアカリキュラムが改訂され,2015年4月からはこれに準拠した新コアカリキュラムが施行されるようになった。新コアカリキュラムでは,有機化学の分野がややスリム化されたと感じているかたも多いかもしれない。しかし、新コアカリキュラムの特徴は,コアの部分を少なくし,各大学の独自性を組み込める,自由度の高いカリキュラム編成を可能にしたととらえるべきである.

第2版では,この新しいコアカリキュラムで提示された到達目標(SBO)をマージンに記載し、巻末の「SBO 対応頁」をすべて見直した。ただし上述のように,コアカリキュラムは最低限のカリキュラムであるとの認識に基づき、旧版と同様に,薬剤師にとってこれだけは必要と考えられる、医薬品を理解する能力を養うための教科書としての立ち位置は変わらない。

本書は、これまでに多くの先生がたから支持され、教科書として採用をしていただいている。ここに改めて感謝申し上げる。薬剤師に求められている,基本的な有機化学が学べる教科書として、今後もご愛読いただければ幸いである。

2016年3月
編者

執筆者
赤井周司 (大阪大学大学院薬学研究科 教授) 1,3,4章
東屋功 (東邦大学薬学部 教授) 2,5章
岩渕好治(東北大学薬学部 教授) 12,13,14章
忍足鉄太(帝京大学薬学部 教授) 17章
白井隆一 (同志社女子大学薬学部 教授) 7,8章
杉原多公通 (新潟薬科大学薬学部 教授) 9,10, 11章
◎高橋秀依(東京理科大学薬学部教授) 6,18章,付錄
田村修 (昭和薬科大学薬学部 教授) 15, 16 章
◎夏対英昭 (新潟薬科大学薬学部 客員教授) 6,18章,付錄
(五十音順,印丈編者)

序にかえて

薬学部の6年制がはじまり, 病院での実務実習など、医療の現場を意識した医療薬学教育の充実が求められている.しかし,薬学の礎は化学,とくに有機化学であることを忘れてはならない.薬剤師には、医師や看護師と異なり、医療現場で医薬品の構造を理解できる唯一の存在として活躍することが期待されている。最近,学士力”(大学卒業までに学生が身につけなければならない最低限の能力)という言葉が登場したが,有機化学を基礎として医薬品を理解する能力はまさに“薬学士力”である.

本書は,薬学部学生向けの「わかりやすい有機化学の教科書」を目指して編集された. 現在,多くの薬系大学において有機化学の教科書には、欧米の教科書の翻訳本が用いられている。それらは非常に優れた内容ではあるが、純粋に「有機化学を学ぶこと」を目的とした理学部的な観点から書かれており,とくにこれからの薬学教育にふさわしいか疑問である. その点を考慮し,本書は「医薬品を理解するための有機化学」という観点から編集した.編集作業では、大学に入学したばかりの学生の目線に立ち,有機化学に親しみを感じてもらえるよう、できるかぎりわかりやすい表現を心がけた。

本書は三部の構成からなり,有機化学に関する薬学教育モデル・コアカリキュラムの内容を網羅している.第I部の導入編では、薬学でなぜ有機化学を学ぶか? からはじまり、有機化学の基本についてひと通りを学ぶ、第1部の基礎編では医薬品を形づくるさまざまな官能基の化学を学ぶ、第II部は応用編として、第1部,第I部で学んだ知識を活用した実践的な有機化学(医薬品への展開)を学ぶ。また,命名法については,最後に付録として学生が自習できるよう体系的にまとめた。
本書にはコラムと Advancedが設けられている。コラムは肩の力を抜いて読める興味深い内容ばかりである。一方の Advancedは少し難度の高い内容であるが,有機化学をより深く学びたい学生にはぜひ読んでいただきたい。また,現役の学生たちが考えたイラストを随所に組み込んだのも特長の一つである。これらは覚えておいてほしい事柄の直観的な理解を助けてくれると思う。本書を通して多くの学生が有機化学に親しみ理解を深め ること、そして、将来さまざまな場面で有機化学を活用できることを願っている。

最後に、表現の大幅な変更など,編者の厳しい注文に快く応じていただいた執筆者の先生がた。中心になってイラストを考えていただいた西山和沙氏(東京理科大学大学院薬学研究科博士課程) 丁寧な編集を行っていただいた化学同人の怖井文子氏に深く感謝する。

2008年10月
編者 夏苅英昭
高橋 秀依

夏苅 英昭 (編集), 高橋 秀依 (編集)
出版社 : 化学同人; 第2版 (2016/4/15)、出典:出版社HP

CONTENTS

シリーズ刊行にあたって
編集委員一覧
まえがき
執筆者一覧

Part I 導入編――有機化合物の構造と性質
1章 有機化合物の構造
1.1 有機化合物とは
1.1.1 有機化合物とは何か
1.1.2 なぜ薬学で有機化学が必須か
1.2 医薬品の化学構造
11.2.1 代表的な医薬品の化学構造
1.2.2 医薬品に含まれる化学構造
章末問題
COLUMN 年々増え続ける新規有機化合物の数

2章 原子・分子のなりたち
2.1 原子の構造
2.1.1 原子とは、
2.1.2 イオンとは
2.1.3 原子の電子配置
2.1.4 周期表
2.2 化学結合および分子のなりたち
2.2.1 共有結合
2.2.2 イオン結合
2.2.3 ルイス構造式
2.2.4 形式電荷
Advanced イオン化エネルギーの比較/原子軌道と分子軌道
2.2.5 分子の三次元的なかたち
2.3 結合のできかた――軌道の混成
2.3.1 原子軌道のかたち
2.3.2 軌道の混成
2.4 分子の性質
2.4.1 電気陰性度と結合
2.4.2 分子の極性と双極子モーメント
2.4.3 共役
2.4.4 共鳴
章末問題

3章
有機化合物の基本骨格―アルカンの化学
3.1 アルカンの構造
3.1.1 アルカンとは
3.1.2 構造異性体
3.1.3 アルカンの基本的な物性
3.1.4 アルカンの立体配座
3.2 シクロアルカン
3.2.1 シクロアルカンとは
3.2.2 シクロアルカンとひずみ
3.2.3 シクロヘキサンのいす形配座と舟形配座
3.2.4 アキシアルとエクアトリアル
3.2.5 置換基をもつシクロヘキサンの安定な立体配座
3.2.6 その他のシクロアルカン
章末問題
COLUMN
さまざまな異性体/有機化学者は省略がお好き?/美しいシクロヘキサンを書こう/多環状分子の立体的なかたち

4章 立体化学
4.1 立体配座異性体と立体配置異性体
4.2 旋光度と光学純度
4.3 絶対配置の表示法-R/S表示法
4.4 ジアステレオマーとメソ形
4.5 Fischer 投影式
章末問題
COLUMN 不斉原子をもたない鏡像異性体/D/L表示法とdl表示法/セレンディピティとパ スツール/長井長義とエフェドリン

5章 酸性度および塩基性度
5.1 酸および塩基の定義.
5.1.1 ブレンステッドーローリーの酸および塩基
5.1.2 酸性度を決める要因
5.2 有機化合物の構造と酸性度
5.2.1 誘起効果の影響
5.2.2 共鳴効果の影響
5.3 アミンの塩基性
5.3.1 塩基性度
5.3.2 アミンの塩基性を決める要因――窒素原子の非共有電子対の電子密度
5.4 ルイスの酸および塩基
章末問題
Advancedメチル基の電子供与性/混成軌道のかたちとs性 /窒素原子の軌道の混成状態と塩基性度
COLUMN pHとpK

6章 有機化合物の反応
6.1 有機化学反応と電子の動き
6.1.1 「反応する」とはどういうことか
6.1.2 結合が切れる
6.1.3 電子の動きを表す矢印
6.1.4 結合ができる
6.2 有機化学反応とエネルギー
6.2.1 発熱反応と吸熱反応
6.2.2 触媒の働き
6.3 いろいろな有機化学反応
6.3.1 置換反応
6.3.2 付加反応
6.3.3 脱離反応
6.3.4 転位反応
6.3.5 ペリ環状反応
6.4 電子の流れ矢印の書き方
6.4.1 共鳴寄与構造式を書く
6.4.2 化学反応式の電子の流れを書く
章末問題
COLUMN 化学における矢印の意味と使い方/有機化学の反応は人間社会と同じ/電子の気持ちになって考えよう

7章 アルケンおよびアルキンの性質と反応
7.1 不飽和炭化水素 アルケンおよびアルキン
7.1.1 アルケンとは
7.1.2 アルケンの構造
7.1.3 炭化水素の不飽和度
7.2 アルケンの異性体
7.2.1 アルケンの幾何異性体――シス-トランス異性体
7.2.2 アルケンの幾何異性による物理化学的な性質の違い
7.2.3 アルケンの幾何異性体の命名――E/Z異性体
7.3 アルケンの付加反応
7.3.1 カルボカチオン中間体の安定性
7.3.2 ハロゲン化水素のアルケンへの付加
7.3.3 Markovnikov付加
7.3.4 酸触媒の存在下における水およびアルコールのアルケンへの Markovnikov付加
7.3.5 水素のアルケンへの付加―接触水素化による水素のシン付加
7.3.6 アルケンのヒドロホウ素化とアルコールへの酸化
7.3.7 アルケンへのハロゲンの付加――アンチ付加
7.4 アルケンの酸化
7.4.1 アルケンのジオールへの変換
7.4.2 アルケンの開裂
7. 5共役ジエンへのハロゲンの付加
7.5.1 1,3-ブタジエンへの臭化水素の付加
7.6 アルキンとは
7.6.1 アルキンへのハロゲン化水素の付加
7.6.2 末端アルキンのケトンおよびアルデヒドへの変換
7.7 アルケンの合成
7.7.1 Lindlar 触媒によるアルキンの接触水素化
7.7.2 アルキンの Birch 還元
7.8 アルキンの合成
Advanced 多置換アルケンの安定性と水素化熱 /酢酸水銀による水のアルケンへの Markovnikov 付加/ヒドロホウ素化の位置選択性/イオンでもなく、ラジカルでもないカルベン
章末問題

8章 芳香族化合物の性質と反応
8.1 ベンゼンの構造
8.2 Hückel則
8.3 芳香族化合物の求電子置換反応
8.3.1 芳香族のハロゲン化
8.3.2 芳香族の Friedel-Crafts アルキル化
8.3.3 芳香族のFriedel-Crafts アシル化
8.3.4 芳香族のニトロ化
8.3.5 芳香族のスルホン化
8.4 芳香環上の置換基効果
8.4.1 アルキル基の効果
8.4.2 アルコキシ基,ヒドロキシ基、アミノ基の効果
8.4.3 ハロゲン置換基の効果
8.4.4 ニトロ基,ホルミル基,アシル基,シアノ基,カルボキシ基などの効果
8.4.5 アンモニウム基の効果
8.4.6 芳香族求電子置換反応の置換基効果のまとめ
8.5 芳香族化合物の求核置換反応
8.5.1 付加-脱離型で進行する芳香族求核置換反応
8.5.2 アレーンジアゾニウム塩を経由する芳香族求核置換反応
章末問題
Advanced 熱力学的支配と速度論的支配 /ベンザインを経由する求核置換反応/ジアゾニウムカップリング反応
COLUMN ベンゼンの共鳴エネルギーはどれほどの大きさか考えてみよう

9章 ハロゲン化合物
9.1 ハロゲン化合物とは
9.2 ハロゲン-炭素結合の性質
9.3 ハロゲン化アルキルで起こる反応
9.4 求核置換反応
9.4.1 SN2反応
9.4.2 SN2反応が起こりやすくなる条件
9.4.3 SN1反応
9.4.4 SN1反応が起こりやすくなる条件
9.4.5 SN1反応とSN2反応のまとめ
9.5 脱離反応
9.5.1 E2反応
9.5.2 Zaitsev 則
9.5.3 E1反応
9.6 ハロゲン化アルキルに起こる求核置換反応および脱離反応のまとめ
9.7 ハロゲン化アルキルの合成
9.7.1 ラジカル置換反応
9.7.2 アリル位の臭素化
9.7.3 求核置換反応によるアルコールからハロゲン化アルキルの合成
章末問題
Advanced E2反応で生成するアルケンの立体化学/S1反応か,SM2反応か,EI反応か, それともE2反応か? /酸化と還元の意味
COLUMN 生体内で起こっている SN2 反応

10章アルコール,フェノール,チオール
10.1 アルコール,フェノール,チオールとは
10.1.1 アルコールおよびフェノールの性質
10.1.2 アルコールの酸性度および塩基性度
10.1.3 フェノール類の酸性度
10.2 アルコールの反応
10.2.1 アルコールの酸化反応
10.2.2 アルコールの脱水によるアルケンの合成
10.2.3 アルコールのハロゲン化アルキルへの変換
10.3 フェノールの反応
10.4 アルコールの合成
10.5 フェノールの合成
10.6 チオールの性質と反応
章末問題
Advanged フェノールの抗酸化能212/チオールの抗酸化就
COLUMN CoQ10 はユビキノン/生体内に存在するアルコールやチオール

11章 エーテル
11.1 エーテル、オキシラン、スルフィドとは
11.2 エーテルの性質
11.3 エーテルの合成
11.3.1 Williamson のエーテル合成
11.3.2 オキシランの合成
11.4 エーテルの反応
11.4.1 エーテルの酸による開裂
11.4.2 エーテルの酸化
11.5 オキシランの反応
11.5.1 酸によるオキシランの開環反応
11.5.2 塩基によるオキシランの開環反応
11.6 スルフィドの合成と反応
11.6.1 スルフィドの合成
11.6.2 スルフィドの反応
章末問題
COLUMN クラウンエーテルは魔法の王冠/ベンゾピレンオキシランと発がん

12章 アルデヒドおよびケトンの性質と反応
12.1 カルボニル化合物とは
12.2 アルデヒドおよびケトンの構造と性質
12.3 アルデヒドおよびケトンの反応性
12.3.1 アルデヒドおよびケトンの求電子的性質に基づくカルボニル基への求核付加反応
12.3.2 カルボニル基に隣接する炭素での反応
12.4 カルボニル基への求核付加反応
12.4.1 ヒドリドイオンの付加一還元反応
12.4.2 炭素求核剤の付加―炭素-炭素結合形成を伴うアルコールの合成
12.4.3 酸素求核剤の付加
12.4.4 窒素求核剤の付加
12.5 カルボニル基の2位が関与する反応
12.5.1 ケトーエノール互変異性の促進
12.5.2 H-D交換反応
12.5.3 ラセミ化反応
12.5.4 アルデヒドおよびケトンのaハロゲン化
12.5.5 ハロホルム反応
12.5.6 アルドール反応
12.5.7 α, β-不飽和カルボニル化合物へ加反応 Michael 付加 250
12.6 アルデヒドおよびケトンが関与するそのほかの重要反応
12.6.1 アルデヒドおよびケトンの還元反応
12.6.2 酸化反応
12.7 アルデヒドおよびケトンの代表的な合成法
章末問題
Advanced ケトンとアルデヒドの反応性の比較/Wittig 反応
COLUMN イミン形成が関与する生体反応―視覚の化学/Michael 付加反応はなぜ1,4付加とよばれるのか

13章 カルボン酸およびカルボン酸誘導体の性質と反応
13.1 カルボン酸およびその誘導体
13.2 カルボン酸の構造と物理的性質
13.3 カルボン酸の性質一酸性と塩基性
13.3.1 カルボン酸の酸性
13.3.2 カルボン酸の塩基性
13.4 カルボン酸の反応
13.4.1 カルボン酸のヒドロキシ基で起こる反応
13.4.2 カルボン酸およびカルボン酸誘導体のカルボニル基で起こる反応
13.5 カルボン酸を原料とするカルボン酸誘導体の合成
13.5.1 酸ハロゲン化物の合成
13.5.2 カルボン酸無水物の合成
13.5.3 アルコールとの反応エステルの合成
13.5.4 アミンとの反応アミドの合成
13.6 カルボン酸塩化物を原料とするカルボン酸誘導体の合成
13.6.1 酸無水物の合成
13.6.2 アルコールとの反応――エステルの合成
13.6.3 アミンとの反応――アミドの合成
13.6.4 加水分解反応
13.7 カルボン酸無水物の反応
13.7.1 アルコールとの反応――エステルの合成
13.7.2 アミンとの反応――アミドの合成
13.8 エステルの反応
13.8.1 アミンとの反応――アミドの合成
13.8.2 加水分解
13.8.3 アルコールとの反応――エステル交換反応
13.8.4 ヒドリド還元剤との反応
13.8.5 Grignard反応剤との反応――第三級アルコールの合成
13.9 アミドの性質と反応
13.9.1 アミドの加水分解
13.9.2 ヒドリド還元剤との反応――アミンの合成
13.9.3 アミド結合が関与する反応
13.10 カルボン酸およびカルボン酸誘導体のα位での反応
13.10.1 エステルのカルボニル基のa水素が関与する反応
13.10.2 アミドのカルボニル基のa 水素の酸性
13.11 ニトリルの反応
13.11.1 加水分解
13.11.2 Grignard反応剤との反応――ケトンの合成
13.11.3 ニトリルの還元反応
13.12 カルボン酸の合成
章末問題
Advanced いろいろな酸の酸性度/カルボン酸のアシル基が受ける共鳴効果/カルボン酸およびカルボン酸塩化物のヒドリド還元剤との反応
COLUMN ペニシリンとDCC /プロドラッグとしてのエステル/アシル炭素上での付加-脱離反応が関与する生体内反応

14章 アミンの性質と反応
14.1 アミンとは
14.2 アミンの構造と性質
14.2.1 sp混成した窒素をもつアミンの構造
14.2.2 sp混成した窒素をもつアミン
14.3 アミンの塩基性と酸性
14.3.1 アミンの塩基性――プロトンとの親和性
14.3.2 アミンの酸性度
14.4 アミンの求核性と反応
14.4.1 求電子的な炭素との親和性
14.4.2 求電子的な窒素との反応――亜硝酸との反応
14.4.3 求電子的酸素との反応――アミンの酸化
14.5 アミンの脱離反応
14.5.1 Hofmann 脱離
14.6 アミンの合成法
14.6.1 アジドの還元
14.6.2 ニトロ基の還元
14.6.3 アミドの還元
14.6.4 ニトリルの還元
14.6.5 直接的アルキル化によるアミンの合成
14.6.6 Gabriel 合成
14.6.7 還元的アミノ化によるアミンの合成
14.6.8 Hofmann 転位
14. 7生体内アミン
14.7.1 アミノ酸が脱炭酸して生成するアミン
14.7.2 核酸塩基
14.7.3 ビタミン類
章末問題
Advanced アミンはキラルか/pKとpK。――酸と共役塩基,塩基と共役酸の関係
COLUMN 医薬品とアミンの酸化/モノアミンオキシダーゼ /ビタミン B.とアミノ酸の合成および代謝

PartⅢ 応用編 医薬品への展開
15章 生体内分子タンパク質・糖質・脂質
15.1 アミノ酸,ペプチドタンパク質
15.1.1 アミノ酸
15.1.2 ペプチド
15.1.3 ペプチドアナログの医薬品
15.1.4 タンパク質
15.1.5 分子間相互作用
15.2 糖質
15.2.1 単糖類
15.2.2 二糖類
15.2.3 多糖類
15.2.4 配糖体
15.2.5 生体内の糖質
15.3 脂質
15.3.1 単純脂質
15.3.2 複合脂質
15.3.3 加水分解されない脂質――ステロイド
章末問題
Advanced グリセロリン脂質の命名/生体膜の基本構造脂質二重層
COLUMN ペプチド医薬品と DDS/Amadori 転位と糖尿病/スクロースからスクラロース/糖の構造の表し方

16章 ヘテロ環化合物
16.1 ヘテロ環化合物とは
16.2 脂肪族ヘテロ環
16.3 五員環芳香族ヘテロ環化合物――ピロール,フランチオフェン
16.3.1 五員環芳香族ヘテロ環化合物の性質
16.3.2 五員環芳香族ヘテロ環化合物の芳香族求電子置換反応
16.3.3 五員環芳香族ヘテロ環化合物のリチオ化
16.4 インドール、ベンゾフラン,ベンゾチオフェン
16.4.1 インドール,ベンゾフラン,ベンゾチオフェンの求電子置換反応
16.5 アゾール類
16.5.1 アゾール類の塩基性
16.6 ピリジン
16.6.1 ピリジンの塩基性
16.6.2 ピリジンの芳香族求電子置換反応
16.6.3 ピリジンの芳香族求核置換反応
16.7 キノリンとイソキノリン
16.8 二つの窒素をもつ六員環芳香族ヘテロ環化合物
16.9 核酸
Advanced ピロールおよびフランに起こる反応/ピリジン N-オキシドの化学とオメプラゾール/2-ヒドロキシピリジンと 2-アミノ ピリジンの互変異性/ヘテロ環化合物 の合成法
16.9.1 核酸塩基
16.9.2 ヌクレオシド
16.9.3 ヌクレオチド
16.9.4 核酸
16.9.5 核酸アナログの医薬品
16.10 ヘテロ環化合物の合成
16.10.1 フラン, ピロール,チオフェンの合成
16.10.2 Fischer のインドール合成法
16.10.3 Hantzsch ピリジン合成法
章末問題

17章 炭素骨格を構築する合成反応と官能基変換
17.1 有機合成化学——標的化合物の合成法
17.2 炭素骨格を構築する合成反応
17.2.1 Diels-Alder反応
17.2.2 Claisen転位と Cope 転位
17.2.3 ピナコールピナコロン転位とWagner-Meerwein 転位
17.2.4 炭素酸のpK。とマロン酸エステル合成およびアセト酢酸エステル合成
17.2.5 アルドール反応
17.2.6 Mannich反応
17.2.7 Wittig 反応
17.2.8 そのほかの炭素-炭素結合形成反応
17.3 官能基の導入および変換法
17.3.1 酸素官能基の導入および変換法
17.3.2 窒素官能基の導入および変換法
17.4 保護基
17.4.1 ヒドロキシ基の保護基
17.4.2 アミノ基の保護基
17.4.3 カルボニル基の保護基
17.4.4 カルボキシ基の保護基
17.5 “何を”, “なぜ”, “どのように”つくるかが問われる有機合成化学
章末問題
Advanced Claisen 転位の改良法376/炭素酸のpK。値と脱プロトン化に用いる塩基の選択
COLUMEN 見逃された大発見 von Euler のニアミス /生体内でのペリ環状反応―ビミンDの生合成

18章 医薬品の合成
18.1 医薬品合成のための有機合成化学
18.2 ジアゼパムをつくる
18.3 オフロキサシンおよびレボフロキサシンをつくる
18.3.1 オフロキサシンの合成
18.3.2 レボフロキサシンの合成——光学活性化合物の取得法
18.4 ニフェジピンをつくる
18.5 アムロジピンをつくる
18.5.1 アムロジピンの合成
18.5.2 アムロジピンのエナンチオマーを得る——ジアステレオマー法
18.6 有機化学を医療現場に活かすには
18.6.1 医薬品の構造の重要性を理解する
18.6.2 官能基の性質を理解する
18.6.3 医薬品の吸収・作用・代謝は有機化学の反応
章末問題
COLUMN サリドマイドと医薬品のキラリティー/天然にないものをつくる

付録:化合物の命名法
A.1 IUPAC命名法のなりたち
A.2 IUPAC置換命名法
A.3 官能基の命名法,優先順位
B.1 アルカンの命名
B2 アルケンおよびアルキンの命名
B.3 芳香族化合物の命名
B.4 ハロゲン化アルキルの命名
B.5 アルコールおよびエーテルの命名
B.6アルデヒドおよびケトンの命名
B.7 カルボン酸および
カルボン酸誘導体の命名
B.8 アミンの命名
B.9 ヘテロ環の命名
B.10 官能基を複数もつ化合物の命名
章末問題
COLUMN アルカンの名称は数詞で/薬の顔を見ればその心がわかる? /医薬品の三つの名称
SBO対応 (薬学教育モデル・コアカリキュラム平成25年度改訂版に対応)
索引
★本書の章末問題の解答については,化学同人 HP からダウンロードできます。
http://www.kagakudojin.co.jp/book/b219944.html

夏苅 英昭 (編集), 高橋 秀依 (編集)
出版社 : 化学同人; 第2版 (2016/4/15)、出典:出版社HP

マクマリー有機化学(上)第9版

有機化学を基礎から学ぶ

本書は、有機化学の基礎知識を幅広く学べる教科書です。構造と結合から始まり、共有結合、有機化合物といった基礎的な内容がしっかりと解説されています。後半では、アルケン、アルキン、有機ハロゲン化物、構造決定などがまとめられています。

John McMurry (著), 伊東 〓 (翻訳), 児玉 三明 (翻訳), 荻野 敏夫 (翻訳), 深澤 義正 (翻訳), 通 元夫 (翻訳)
出版社 : 東京化学同人; 第9版 (2017/1/23)、出典:出版社HP

私は書くことが好きである. 有機化学について解説することが好きである。この教科書はこのたび第9版を出版することとなったが,今回もまたあらゆる用語や説明に検討を加え,何千もの細かな項目を更新し、あらゆる事柄について向上させる試みを行った。私のねらいは,これまでの版を成功に導いた特徴を改良するとともに,新しい内容を付け加えることである.

第9版における変更と追加
より正確なものにするために、読者の意見を参考にして,本文の内容が更新されている. この第9版では、NMR分光法の議論や反応機構の問題 を解く機会が大幅に拡充されている.

変更点は:
・質量スペクトルの解説が,教科書全般にわたって出されている新しい分光法の問題とともに拡充されている。
・核磁気共鳴の理論とNMRデータの解釈の議論が再編成され,新しいNMRの問題とともに拡充されている
・期待するものが何であるかすぐにわかるように,今回は“この章の目的”を各章の序論の前にもってきた。
・章末の反応機構の問題を見つけやすくするためにひとまとめにした.
・新しい反応機構を書く練習問題 108題と新しい分光法やNMRの問題を含め、多くの新しい問題が章末に追加されている。
・“科学的な解析と推理力の訓練”と題する七つの挿話と,それに関連した「MCAT(医学部入学試験)のような専門的な試験をモデルにした設問. これらの話題は,有機化学の医学,薬学,生物学への応用における最近の進歩に焦点を当てている。その話題は:キラルな薬サリドマイド, マスタードガスからアルキル化抗がん剤,光線力学的治療(PDP), 選択的 セロトニン再取込み阻害薬(SSRI), DNA中のチミン, メラトニンとセ ロトニン, エンジアンドル酸Cの強力な抗菌特性,である。
七つの新規“科学的な解析と推理力の訓練”に加えて,各章における目立った変更点:
・2章 極性共有結合: 酸と塩基より正確さを高めるために, 形式電荷の図を追加した。新しい反応機構の問題を章末に追加した.
・3章 有機化合物: アルカンとその立体化学 読者の意見に基づいて,アルカンの命名のための図と各段階を改良したから。
・6章 有機反応の概観 新しい反応機構の問題を含め, 章末に新しい問題を追加した。
・7章 アルケン: 構造と反応性 アルケンの立体化学を, E, Z配置の練習のため例を増やして更新した。反応機構の練習問題を章末に追加した.
・8章 アルケン: 反応と合成新しい反応機構の練習問題を章末に追加した。
・9章 アルキン: 有機合成序論アルキンの命名法とアルキンの反応の節を,より正確なものにするために更新した。新しい反応機構の問題を 章末に追加した。
・10章 有機ハロゲン化物 鈴木-宮浦反応,曲がった矢印の書き方,電子を動かす反応機構を,章末の新しい問題の中で強調した。
・11章 ハロゲン化アルキルの反応:求核置換と脱離 脱離反応の機構に特に注目した章末問題を追加した。
・12章 構造決定:質量分析法と赤外分光法質量スペクの解説に関する拡張した議論,実例,新しい問題を追加した.
・13章 構造決定:核磁気共鳴分銘酒、核磁気共鳴の理論に関する議論と NMRデータの解釈を拡充して再編成し、新しいNMRの問題を追加した。
・14章 共役化合物と紫外分光法反応機種の副題を含め、新しい問題を章末に追加した。
・15章 ベンゼンと芳香族性 ベンゼン系化合物の分光学的な特性に関する議論を拡充した。新しい反応機構と分光法の問題を章末に追加した。
・16章 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換反応機簿の練習問題を含め、新しい問題を章末に追加した。
・17 章 アルコールとフェノール 章末の新しい反応機構の問題に加えて,新しい分光法の実例と問題を追加した.
・18 章 エーテルとエポキシド; チオールとスルフィド 章末の新しい反応機構の問題に加えて,新しい分光法の実例と問題を追加した.
・19章 アルデヒドとケトン: 求核付加反応 アルデヒド/ケトンの赤外 および NMR分光法に関する議論を拡充した。新しいNMRの問題と反応機構の練習問題を追加した.
・20章 カルボン酸とニトリルカルボン酸の赤外およびNMR分光法に関する議論を更新した。反応機構および分光法の問題を含め、新しい問題を章末に追加した.
・21 章 カルボン酸誘導体:求核アシル置換反応 カルボン酸誘導体の赤外およびNMR分光法における電子的効果の議論を,新しい反応機構の問題に加えて章末の二つの新しい赤外分光法問題とともに拡充した.
・22章, 23章 カルボニル a 置換反応,カルボニル縮合反応追加の反応機構の練習問題を含め、新しい問題を章末に追加した。
・24章 アミンと複素環 アミンの赤外および NMR分光法の議論を更新し,章末に分光法と反応機構の新しい練習問題を追加した。
・ 25 章 生体分子:糖質 インフルエンザウイルスに関する内容を充実させ,Fischer投影式の描き方と関連した例題を改訂した。
・26章 生体分子:アミノ酸,ペプチド,タンパク質プロテインデータバンクに関する化学余話の記述を書き改め、より最新のものにするために更新した。
・ 28 章 生体分子: 核酸DNAの配列決定とDNA合成の内容を更新して書き改めた。

特徴

・“この章の目的”は,各章の序論の最初に出てくる短いパラグラフであり,この後で述べる内容がなぜ重要なのかを学生に伝えている
・各例題は問題の解き方と詳細な解答から成り、続いて学生が自分自身で解く試みをするための問題がある.本書には本文中と章末で1800問以上の問題が出題されている.
・概説の章,“カルボニル化合物の予習”が18章の後に続いている.これは有機化学を学ぶにはときどき要点をまとめ,後の章に備えることが必要であるという考えの現れである.
・各章の末尾で練習問題の最初に出てくる“目で学ぶ化学”は,学生が単に構造式の説明をするのではなく,分子を視覚化することにより別な視点から化学を見る機会を与えてくれる.
・ほとんどの章の章末問題に,新たに“反応機構”の節を追加した. 反応機構型の問題は、この題名のもとにひとまとめにされたことになる.
・“科学的な解析と推理力の訓練”は有機化学の医学, 薬学, 生物学への応用と関連した特殊な話題について, 2~3 ページ分の挿話とそれらに対応した専門的な試験問題形式の設問を提供している.これらはこの教科書のところどころに挿入されている. 挿話と設問はその章で述べた有機化学の内容と関連している.選択肢の中から正解を選ばせる質問形式はMCAT(医学部入学試験)のような専門的な試験を模したものである. 意図するところは、実用的な応用と現実の社会における例を通して有機化学の基礎を補強することにある.
・“化学余話”と名付けた短文は本文を補足し、化学の応用例を提供している。この化学余話は、“薬はどこから来るのか”(6章)や“分子力学”(4 章)などを含んでいる。
・“まとめと重要語句”は、学生がその意の露要な概念を大まかにつかむ手助けとなる。
・一部の章の末尾にある“反応のまとめは、その章にある重要な反応をすべて一つのリストにまとめたものである。

John McMurry (著), 伊東 〓 (翻訳), 児玉 三明 (翻訳), 荻野 敏夫 (翻訳), 深澤 義正 (翻訳), 通 元夫 (翻訳)
出版社 : 東京化学同人; 第9版 (2017/1/23)、出典:出版社HP

謝辞

この改訂は、多くの重要な貢献者の協力なしには成し得なかったであろう.特に,この教科書を完成させる過程で、この歳で追加された多くの新しい反応機構の問題を作製して下さったKC Russel氏(Northern Kentucky University), この本全般にわたってNIMEおよび分光法の議論と対応する問題を改訂して下さったJames S. Vyvyan 氏(Western Washington Iniversity), 新たに“科学的な解析と推理力の訓練”の節を創作して下さったAndrew Frazer IE (University of Central Florida) $302N SOMにご助力頂いた Gordon W. Gribble 氏(Dartmouth College), および新しい題材について注意深く検討し,再三にわたりその原稿に手を加えて下さったJordan L. Fantini 氏 (Denison University)に感謝します. この本の原稿を校閲して下さった下記の方々に感謝いたします.

校閱者

第9版の原稿校閲者

Peter Bell, Tarleton State University
Andrew Frazer, University of Central Florida
Stephen Godleski, State University of New York, Brockport
Susan Klein, Manchester College
Barbara Mayer, California State University, Fresno
James Miranda, Sacramento State University
Pauline Schwartz, University of New Haven
Gabriela Smeureanu, Hunter College
Douglas C. Smith, California State University, San Bernardino
Linfeng Xie, University of Wisconsin, Oshkosh
Yan Zhao, Iowa State University

第8版の原稿校閲者

Andrew Bolig, San Francisco State University
Indraneel Ghosh, University of Arizona
Stephen Godleski, State University of New York, Brockport
Gordon Gribble, Dartmouth College
Matthew E. Hart, Grand Valley State University
Darren Johnson, University of Oregon
Ernest G. Nolen, Colgate University
Douglas C. Smith, California State University, San Bernadino
Gary Sulikowski, Vanderbilt University
Richard Weiss, Georgetown University
Yan Zhao, Iowa State University

第7版の原稿校閲者

Arthur W. Bull, Oakland University
Robert Coleman, Ohio State University
Nicholas Drapela, Oregon State University
Christopher Hadad, Ohio State University
Eric J. Kantorowski, California Polytechnic State University
James J. Kiddle, Western Michigan University
Joseph B. Lambert, Northwestern University
Dominic McGrath, University of Arizona
Thomas A. Newton, University of Southern Maine
Michael Rathke, Michigan State University
Laren M. Tolbert, Georgia Institute of Technology

訳者序

J. McMurry 著 “Organic Chemistry” の日本語版は,初版を出してからすでに 30 年という長い年月が経過した. この間,常に好評を維持し,多くの大学で教科書として採用していただいているが,広範囲にわたる有機化学の基礎知識を万遍なく学べるよう編集されていること,生化学的な内 容についても化学的な面からわかりやすく解説していること,さらに原著者が内容を魅力的なものにする努力を常に怠らず,しばしば改版を重ねていることなどがその要因であると思われる。
ここに第9版を出版する運びとなった.この版では,これまでの版の形式を踏襲しつつ新しい試みがいくつか加わって,ますます充実した内容となっている.まず,“科学的な解析と推理力の訓練”という表題で,ところどころの章末に合計七つの挿話とそれに関連した設問が設けられ,これまでこの種の教科書にはみられなかった斬新な試みがなされている.これは有機化学が我々の生活にどのように役立っているかの一端を紹介しているもので,たとえば,もともとは人類を殺傷する目的の化学兵器として開発されたマスタードガスが,現在では強力な抗がん剤として人類を守るために役立っているというような話題を有機化学の立場から解説しており,有機化学の基礎を詳細に解説している本文とは一味違って,興味をもって読んでいただけるのではないかと思われる.一方,多くの章の章末問題の中に反応機構を問う問題がひとまとめにして多数掲載されている。有機化学においては,覚えなければならない内容が非常に多いが,それらの知識を総合的に活用することが求められる反応機構を正確に書けるかどうかが理解度を測るバロメーターともなることから,この点を強く意識した結果ではないかと思われる。

動植物や微生物など生物が生産する有機物質は天然有機化合物(天然物) とよばれる.このような天然物を単離して構造を決め,生物(薬理)活性を調べ、さらには化学的にそれらを合成するという天然物化学は,わが国で非常に活発に行われてきた研究分野の一つである.特に,天然物は医薬品開発のリード化合物としても重要な位置を占めており、その探索研究は日本のお家芸ともいわれている。寄生虫病の治療薬“イベルメクチン”を開発して 2015 年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士の研究も,新しい天然物の探索から生まれた成果であり,失明をはじめ種々の疾病から多くの人々を救うこととなった。

本書の翻訳は下に示す同士の手になった。深澤(1~4, 6, 15, 16, 30 章),児玉(5, 7~11,17,18, 31 章,付録),通(12~14, 25 ~ 29章), 荻野(カルボニル化合物の予習.19~24章). 翻訳に当たっては,平易な文章で化学的な内容を正確に伝えるように努力した。しかし,訳者の努力にもかかわらず,不備な点があるのではないかと懸念している. 読者諸兄からご指摘,ご教示をいただければ幸いである。

第8版に対しても、不適切な訳語や間違いの指摘を含めて、読者の方々から多くのご意見をいただいた。この場を借りて厚く御礼申し上げる.
なお、第9版においても引続き、東京化学同人編集部の高木千織氏に細部にわたる点検をしていただいた。ここに御礼申し上げる。

訳者

John McMurry (著), 伊東 〓 (翻訳), 児玉 三明 (翻訳), 荻野 敏夫 (翻訳), 深澤 義正 (翻訳), 通 元夫 (翻訳)
出版社 : 東京化学同人; 第9版 (2017/1/23)、出典:出版社HP

主要目次

上巻
1 構造と結合
2 極性共有結合;酸と塩基
3 有機化合物: アルカンとその立体化学
4 有機化合物: シクロアルカンとその立体化学
5 四面体中心における立体化学
6 有機反応の概観
科学的な解析と推理力の訓練 I
キラルな薬サリドマイド
7 アルケン: 構造と反応性
8 アルケン: 反応と合成
9 アルキン: 有機合成序論
10 有機ハロゲン化物
11 ハロゲン化アルキルの反応: 求核置換と脱離
科学的な解析と推理力の訓練II
マスタードガスからアルキル化抗がん剤
12 構造決定: 質量分析法と赤外分光法
13 構造決定: 核磁気共鳴分光法
14 共役化合物と紫外分光法
科学的な解析と推理力の訓練III
光線力学的治療(PDT)

中巻
15 ベンゼンと芳香族性
16 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換
17 アルコールとフェノール
18 エーテルとエポキシド: チオールとスルフィド
●カルボニル化合物の予習
19 アルデヒドとケトン: 求核付加反応
科学的な解析と推理力の訓練V
選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)
20 カルボン酸とニトリル
21 カルボン酸誘導体:求核アシル置換反応
22 カルボニルa置換反応
23 カルボニル縮合反応
科学的な解析と推理力の訓練V
DNA中のチミン

下巻
24 アミンと複素環
25 生体分子:糖質
26 生体分子: アミノ酸,ペプチド,タンパク質
27 生体分子:脂質
科学的な解析と推理力の訓練VI
メラトニンとセロトニン
28 生体分子:核酸
29 代謝経路の有機化学
30 軌道と有機化学: ペリ環状反応
科学的な解析と推理力の訓練VI
エンジアンドル酸Cの強力な抗菌特性
31 合成ポリマー
付録

目次
1. 構造と結合
1.1 原子の構造: 原子核
1.2 原子の構造: 軌道
1.3 原子の構造:電子配置
1.4 化学結合論の発展
1.5 化学結合の表記:原子価結合法
1.6 sp混成軌道とメタンの構造
1.7 sp混成軌道とエタンの構造
1.8 sp混成軌道とエチレンの構造
1.9 sp混成軌道とアセチレンの構造
1.10 窒素,酸素, リン, 硫黄の混成
1.11 化学結合の表記: 分子軌道法
1.12 化学構造を書く
化学余話 有機食品: リスク対便益
まとめと重要語句
練習問題

2. 極性共有結合: 酸と塩基
2.1 極性共有結合: 電気陰性度
2.2 極性共有結合: 双極子モーメント
2.3 形式電荷
2.4 共鳴
2.5 共鳴構造の規則
2.6 共鳴構造を書く
2.7 酸と塩基: Brønsted-Lowry の定義
2.8 酸と塩基の強さ
2.9 pK値を用いる
酸塩基反応の予測
2.10 有機酸と有機塩基
2.11 酸と塩基:Lewis の定義
2.12 非共有結合性相互作用
化学余話 アルカロイド: コカインから歯科用麻酔薬まで
まとめと重要語句
練習問題

3. 有機化合物: アルカンとその立体化学
3.1 官能基
3.2 アルカンとその異性体
3.3 アルキル基
3.4 アルカンの命名法
3.5 アルカンの性質
3.6 エタンの立体配座
3.7 他のアルカンの立体配座
化学会話 ガソリン
まとめと重要語句
練習問題

4. 有機化合物: シクロアルカンとその立体化学
4.1 シクロアルカンの命名法
4.2 シクロアルカンの立体配座・ シス-トランス異性
4.3 シクロアルカンの安定性: 環のひずみ
4.4 シクロアルカンの立体配座
4.5 シクロヘキサンの立体配座
4.6 シクロヘキサンのアキシアル結合とエクアトリアル結合
4.7 一置換シクロヘキサンの立体配座
4.8 二置換シクロヘキサンの立体配座
4.9 多環式分子の立体配座
化学余話 分子力学
まとめと重要語句
練習問題

5.四面体中心における立体化学
5.1 鏡像異性体と四面体炭素
5.2 分子の対掌性の原因: キラリティー
5.3 光学活性
5.4 Pasteurの鏡像異性体の発見
5.5 立体配置表示のための順位則
5.6 ジアステレオマー
5.7 メソ化合物
5.8 ラセミ体と鏡像異性体の分割
5.9 異性現象のまとめ
5.10 窒素,リン,硫黄におけるキラリティー
5.11 プロキラリティー
5.12 自然におけるキラリティーとキラルな環境.
化学会話 キラルな薬
まとめと重要語句・
練習問題

6. 有機反応の概観
6.1 有機反応の種類
6.2 有機反応はどのようにして起こるか:反応機構
6.3 ラジカル反応
6.4 極性反応
6.5 極性反応の例:エチレンへの HBr の付加
6.6 極性反応機構での曲がった矢印の使用
6.7 反応の記述:平衡, 反応速度,エネルギー変化
6.8 反応の記述: 結合解離エネルギー
6.9 反応の記述に反応エネルギー図と遷移状態
6.10 反応の記述:中間体
6.11 生体内反応と笑験室での反応との比較
化学余話 薬はどこから来るのか?
まとめと重要語句
練習問題

科学的な解析と推理力の訓練I キラルな薬サリドマイド

7. アルケン: 構造と反応性
7.1アルケンの工業的製法と用途
7.2 不飽和度の計算
7.3 アルケンの命名法
7.4 アルケンのシス-トランス異性
7.5 アルケンの立体化学とE,Z表示法.
7.6 アルケンの安定性
7.7 アルケンの求電子付加反応
7.8 求電子付加の配向性:
7.9 カルボカチオンの構造と安定性
7.10 Hammond の仮説
7.11 求電子付加の機構に対する証拠:カルボカチオンの転位
化学余話 バイオプロスペクティング: 生物資源探査
まとめと重要語句
練習問題

8. アルケン: 反応と合成
8.1 アルケンの製法: 脱離反応概説
8.2 アルケンのハロゲン化: Xの付加
8.3 アルケンからのハロヒドリン: HOXの付加
8.4 アルケンの水和:オキシ水銀化による H2Oの付加
8.5 アルケンの水和:ヒドロホウ素化によるH2Oの付加
8.6 アルケンの還元: 水素化
8.7 アルケンの酸化: エポキシ化とヒドロキシ化
8.8 アルケンの酸化:カルボニル化合物への開裂
8.9 アルケンへのカルベンの付加:シクロプロパン合成
8.10 アルケンへのラジカルの付加: 連鎖成長ポリマー
8.11 生体内におけるアルケンへのラジカルの付加
8.12 反応の立体化学: アキラルなアルケンへのH2Oの付加
8.13 反応の立体化学: キラルなアルケンへの H2Oの付加
化学余話 テルペン: 天然に存在するアルケン
まとめと重要語句/反応のまとめ
練習問題

9. アルキン:有機合成序論
9.1 アルキンの命名法
9.2 アルキンの製法:ジハロゲン化物の脱離反応
9.3 アルキンの反応: HXおよびX2の付加
9.4 アルキンの水和
9.5 アルキンの還元
9.6 アルキンの酸化的開裂
9.7 アルキンの酸性度: アセチリドアニオンの生成
9.8 アセチリドアニオンのアルキル化
9.9 有機合成序説
化学余話 有機合成の芸術性
まとめと重要語句/反応のまとめ
練習問題

10. 有機ハロゲン化物
10.1 ハロゲン化アルキルの命名法と性質
10.2 アルカンからのハロゲン化アルキルの合成:ラジカルハロゲン化
10.3 アルケンからのハロゲン化アルキルの合成:アリル位臭素化
10.4 アリルラジカルの安定性:共鳴の復習
10.5 アルコールからのハロゲン化アルキルの合成
10.6 ハロゲン化アルキルの反応:Grignard試薬
10.7 有機金属カップリング反応
10.8 有機化学における酸化と還元
化学余話 天然に存在する有機ハロゲン化物
まとめと重要語句/反応のまとめ
練習問題

11. ハロゲン化アルキルの反応:求核置換と認識
11.1 求核置換反応の発見
11.2 SN2反応
11.3 SN2反応の特性
11.4 S1反応
11.5 Shi反応の特性
11.6 生体内置換反応
11.7 脱離反応:Zaitsev則
11.8 E2反応と重水素同位体効果
11.9 E2反応とシクはヘキサンの立体配座
11.10 EL反応を図る反応
11.11 生体内線離反応
11.12 反応性のまとめ:
SN1, SN2, E1, ElcB, E2
化学会話グリーンケミストリー1
まとめと重要語句/反応のまとめ
練習問題
科学的な解析と推理力の訓練マスタードガスからアルキル化抗がん剤

12. 構造決定:質量分析法と赤外分光法
12.1 低分子の質量分析法: 磁場型分析計
12.2 質量スペクトルの解釈
12.3 一般的な官能基の質量分析法
12.4 生物化学における質量分析法: 飛行時間型質量分析計
12.5 分光法と電磁スペクトル
12.6 赤外分光法
12.7 赤外スペクトルの解釈
12.8 一般的な官能基の赤外スペクトル
化学余話 X線結晶解析
まとめと重要語句
練習問題

13. 構造決定:核磁気共鳴分光法
13.1 核磁気共鳴分光法
13.2 NMR吸収の性質
13.3 化学シフト
13.4 1H NMR分光法の化学シフト
13.5 1H NMR吸収の積分: プロトン数
13.6 1H NMRスペクトルにおけるスピン-スピン分裂
13.7 1HNMR分光法とプロトンの等価性
13.8 より複雑なスピン-スピン分裂パターン
13.9 NMR分光法の利用
13.10 13C NMR分光法: シグナルの平均化と FT NMR
13.11 18C NMR分光法の特徴
13.12 13C NMR分光法におけるDEPT法
13.13 18CNMR分光法の利用
化学余話 磁気共鳴 イメージング(MR)
まとめと重要語句
練習問題

14. 共役化合物と紫外分光法
14.1 共役ジエンの安定性:分子軌道法
14.2 共役ジエンへの求電子付加: アリル型カルボカチオン
14.3 反応における速度支配と熱力学支配
14.4 Diels-Alder 付加環化反応
14.5 Diels-Alder 反応の特徴
14.6 ジエンポリマー: 天然ゴムと合成ゴム
14.7 紫外分光法
14.8 紫外スペクトルの解釈: 共役の効果
14.9 共役,色,および視覚の化学
化学余話 光リソグラフィー
まとめと重要語句/反応のまとめ
練習問題

科学的な解析と推理力の訓練Ⅲ 光線力学的治療(PDT)
和文索引/欧文索引

John McMurry (著), 伊東 〓 (翻訳), 児玉 三明 (翻訳), 荻野 敏夫 (翻訳), 深澤 義正 (翻訳), 通 元夫 (翻訳)
出版社 : 東京化学同人; 第9版 (2017/1/23)、出典:出版社HP

スミス有機化学(第5版)(上)

有機化学を楽しく理解する

本書は、有機化学の美しさや論理性を伝えることを目指して書かれた教科書です。有機化学は難解な印象を持たれやすいですが、著者は、興味深い応用例を多く引用したり、図解を多くしたり、理解しやすいような整理を行なっています。また、覚える項目を最小限にすることを目指しており、有機化学をより理解しやすい本に仕上げています。

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

日本の読者のみなさまへ

ようこそ有機化学へ!
みなさんは今,有機化学という心躍る新しい学問に乗りだそうとしています. 有機化学は,これまでに学んだ構造や結合に関する諸原理にもとづいており,複雑で難解ななかにも興味をかき立て,多くの研究領域やその他の学問分野の基礎となっています。

有機化学は炭素を含む分子の化学であり,かつそれらの化学変化を扱う学問といえます.また,生命とも深くかかわりをもっており,生物の遺伝情報を保存する DNA,細胞の適切な働きにとって欠くことのできないビタミンなど、すべて有機分子から構成されています。何百万という有機分子が現在知られており,毎年何万もの有機分子が合成され発見されています。それらの性質や化学反応は,一つの論理的原理によって理解することができます。これらの本質的な原理を学ぶことによって,われわれは既知の物質の構造や反応を理解できるばかりでなく,新しい分子の性質や反応性を予測し,これらの分子が一連の化学反応によって既知の化合物からどのようにして合成されるかを示すことが可能になります.

また有機化学は、 せっけんが汚れを落とすしくみや, アスピリンは消炎剤としてどのように機能するか, といった日常生活でよく目にする現象を理解するための考え方や道筋を教えてくれます。また有機化学 を使うことによって,自然界に存在しない新しい分子や反応を設計することも可能です。ジゴキシンはジギタリスの葉から単離されたうっ血性心不全の治療に使用される天然の薬ですが,フルオキセチン(抗 うつ薬), アテノロール(高血圧治療薬), ドネペジル(アルツハイマー病治療薬)は実験室で合成され広く使用されている合成医薬品です。さまざまな抗生物質, プラスチック,麻酔薬,心臓病の薬などは,現代人の暮らしと命を守る有機化学からの贈り物です.

有機化学を一生の研究課題にと決めている人であれ,医学,農学,工学,理学あるいは薬理学に有機化学の原理をこれから使っていこうとする人であれ,本書で学ぶ一つひとつの考え方はみなさんを取り巻く自然界の現象をより深く理解できるようにしてくれることでしょう。各章では,その章で取り扱われた基本テーマに関連した,容易に理解できるさまざまな化学的,ならびに生物学的な応用を積極的に取りあげています。

今回,山本尚先生と大嶌幸一郎先生のご尽力により,自ら著した本書”Organic Chemistry”の新しい版(5th ed.)が第3版に続いて日本で出版されることになり,このようなかたちで日本語版を読者のみなさまへお届けできることはたいへん光栄に思います。化学分野での長年にわたる研究活動を通して、幸運にも私は多くの高名な日本人の有機化学者たちと知り合うことができました。たとえば,柴崎正勝博士(現,微生物化学研究所所長)と福山透博士(東京大学名誉教授)です。お二人とはハーバード大学でともに学び,研究をしました.その後,お二方は生物学的に興味深い分子の合成や,有機化合物を構築するための新たな手法の開発などで,数々の貢献をされております.

読者一人ひとりの新しい化学の発見への旅立ちにあたり,本書が有機化学という素晴らしい学問への優れた道案内となるとともに,次世代を担う研究者への方向を示してくれることを心より祈っています.そして、本書が有機化学に対するみなさんの好奇心をかき立て、人類の発展に欠かせない物質や反応の多くを探求し,創造するための一助になればと願っています。

(山本 尚訳)
2017年9月
ジャニス・グジュイニスキ・スミス
Janice Gorzynski Smith

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

まえがき

本書を書くにあたり,この本を手に取ったときに有機化学がいかに美しく,論理的であるかが伝わるような教科書に仕上げることを目標にした.本書は,私の30年を超える講義経験とその授業のなかで使ってきた講義ノートと配布資料にもとづいている.私は二つの大きな指針のもとに本書を執筆した. 一つは,化学現象を説明するために興味深い応用例を多く引用すること.もう一つは,箇条書きのリストや解法のついている例題,豊富な図解やまとめなど学生が理解しやすい形で学習内容を説明することである.本書は,多くの学生が難しいと心配している有機化学を,簡単でかつ明解な科目となるように意図してつくられている。それは、化学を主専攻とする学生だけでなく,将来は生物学,医学あるいはその他の分野に進みたいと思っている学生にも,苦労することなく有機化学に興味をもち,楽しみながら理解してもらいたい、と願っているからである。

基本的な特徴

・スタイル
本書はデザインにおいて,他の教科書とは異なる特徴がある. 最近の学生は,勉強する際,これまで以上に視覚的な図に頼る傾向がある.そこで本書では,有機化学の主要な概念や基本テーマを紹介し強調するにあたって文章をできるだけ少なくし,図や式,表,そして箇条書きによるまとめを多く用いた.
・内容
本書では覚える項目を最小限にとどめることを基本テーマとした.日常生活のなかから適切な例を選んで概念を説明し,学習内容を詰め込んで説明するのではなく,章全体を通してまとめるようにした、それぞれの話題は小さな情報に切り分けて、より扱いやすく,学びやすいように配慮した.例題では、段階を追って問題を解いていく方法で説明している.規則に対する例外や,古くてあまり有用でない反応は除外して、基本事項に焦点を絞った.
・構成
本書では,化学反応を議論する枠組みとして「官能基」を利用している.したがって官能基を生成する反応ではなく,それぞれの官能基が起こす反応に力点を置いた.さらに,類似の反応をまとめてグループ化し,それらの類似点を強調した. グループ化した反応として、酸-塩基反応(2章), 酸化と還元(12章と20章), ラジカル反応(15章), そして有機金属反応剤による反応(20章)がある.
基本事項に焦点を絞りながら,一つずつ新しい概念を紹介し,そして複雑な問題は切り分けて段階的に説明することによって,有機化学は難しいながらも十分に習得できる科目だと思ってもらえるだろう。長い講 義の後で、想像よりも多くの学生が有機化学の勉強を楽しみ,有機化学を理解してくれたことに私はいつも驚いている。

構成と体裁

本書で扱っているトピックスの掲載順は,多くの先生がたが有機化学を教える順序に沿ったものである. しかしながら他の教科書と異なる重要な点は,論理的かつより身近なものを話題に選んだことである.とくに以下の項目については注意を払った.
・基礎的な学習項目
1章ではルイス構造式,分子の幾何学的構造と混成,結合の極性,そして結合の種類などを概観するために多くの話題を取り上げた.これらの話題の多くは一般化学の授業でも取り扱われるが,ここでは有機化学の視点から記述した.これらの基礎的な概念をしっかりと把握できれば,その後にでてくる学習項目を理解するのに大いに役立つと確信している.
・酸と塩基
酸と塩基について取りあげた2章では、二つのことを学んでほしい. 一つは、プロトン移動反応をもとにして曲がった矢印を用いる反応の表記法を習得すること.もう一つは,有機構造の基礎的な概念がいかに反応,ここでは酸・塩基反応に影響を及ぼすか,である。反応機構の多くは一つあるいは二つ以上の酸-塩基反応を含むので,早い段階でこのプロトン移動反応に重点を置いて解説し,いつでもこの話題にもどれるようにした。
・官能基
3章では,有機化学の重要な特性を紹介するために官能基を取り上げた. PCB, ビタミン, せっけん,そして細胞膜などの関連する例を使って基本的な溶解度の概念について説明している. 一般の有機化学の教科書では最後のほうの章で扱われがちな(時間がなくなって省略されることが しばしば起こる)実用的な話題を早い段階で取り上げているので,どうして有機化学を学ぶことが 重要なのかをしっかりと理解できるだろう.
・立体化学
立体化学(分子の三次元構造)についても早い段階(5章)で取りあげ、その後も折にふれて繰り返し説明した.そうすることで現代化学の研究,ドラッグデザイン, そして合成における重要な概念を学び理解する機会をその都度もつことができる。
・最新の反応
有機化学の教科書に記述すべき新しい化学反応にはこと欠かないが,分子に特異な三次元配列を導入する新しい方法,いわゆる不斉反応やエナンチオ選択的反応に焦点を絞った. シャープレスのエポキシ化反応(12 章),CBS 還元(20章), アミノ酸のエナンチオ選択的合成(28章)などがその例である.
・種類別に分けた反応
いくつかの反応には基礎的な有機反応とは異なる特異な形態や専門用語があるので,これらの反応を独立した章にまとめた. 酸-塩基反応(2章),酸化と還元(12章および20章), ラジカル反応(15 章),そして有機金属反応剤による反応(20 章)などである。共通の話題をもつ反応をひとまとめにして考えると,それらの類似性がより明確に理解できるようになる.
・合成
有機化学を学びはじめた学生にとって,理解するのが最も難しい学習項目の一つとして,合成がある。これについては7章から少しずつ紹介しはじめ, 11章の逆合成についての詳細な議論へと展開させた.さらにその後の章で,炭素-炭素結合生成反応(たとえば下巻の20.11節および21.10.3項)を用いて合成される化合物の逆合成について詳しく紹介している。
・分光法
分光法は構造決定のための有効な手法なので,四種類の方法について二つの章(13 章および14章)にわたり詳しく解説した.
・キーコンセプト
章末のまとめとして,その章の主要な概念および学習内容を簡潔にまとめ,章末問題を解いたり,あるいは試験勉強をする際に参照しやすいようにした.

第5版で改訂した点

・教科書の全体にわたって化学構造式を刷新し、より現代的な書き方に統一した.
・三次元モデルや立体化学,化学反応に関する学生の理解を助けるよう,さまざまな箇所で配色を効果的に用いた
・反応機構の詳細を表す「機構」の囲み記事をほぼすべて改訂し,反応中間体がどのように変換されていくか追跡しやすくした.
・査読して頂いた方からの助言に従って,いくつかの章に新しい要素を追加した。生体内で起こるリン酸脱離基の求核置換反応(7.16節)と,チオールとスルフィド(9.15 節) を新しく追加した.12.14 節の生体内での酸化の項目中に酸化剤 NAD+の内容を追加し, アルコール酸化の反応機構の説明を,より生物学的な立場から説明した。 下巻の16.2 節に,アリル二リン酸がかかわる生体反応の項と、アリル二リン酸が起こす反応の機構を加筆した.同じく下巻の 20.6節では生体内での還元反応の新しい話題と, 16.15節には UV 分光法の議論を加えた.
・炭素・水素・アルコール・ハロゲン化アルキル・ アミン・アミドの「分類」に関する解説を前方(3.2 節)に移動し,官能基の機能とあわせて学べるよ うにした。
・350問以上の新しい問題を追加した.
・トピックスを整理し,また学習効果を高めるために,教科書の全体にわたって「HOW TO(課題の解き方)」,「例題」, 「ミクロからマクロまで表現した図解」を追加した.

有機化学を学びやすくする工夫

詳細で洗練されたイラスト
本書は,よく洗練されたわかりやすいイラストを用いて解説している。伝統的に使われる骨格(直線)構造や 簡略化した分子式の他に,立体化学を含めた分子の三次元構造を認識しやすいようにしたり,電荷の分布を より理解できるようにするため,多くのボール&スティックモデルや静電ポテンシャル図を利用している。

ミクロからマクロまで表現した図解
本書の特徴として、ミクロからマクロまで表現した図解がある. イラストや写真を化学構造と組み合わせて用いることで,一般的な現象の巨視的な特性を決める基本的な分子構造を明らかにしている.デンプンとセルロース (5章), アドレナリン(7 章),植物油の部分水素化(12章)やドーパミン(25 章(下巻)]などがその例である.

スペクトル
有機化学に特有の 100 を超えるスペクトルが本書全体を通して掲載されている.種類ごとに色分けされ、ていねいに分類されている. 質量スペクトルは緑で,赤外スペクトルは赤で,そしてプロトンと炭素のNMRスペクトルは青で示されている.

反応機構
反応における電子の動きを追跡しやすくするため、曲がった矢印による表記を用いた.

問題の解き方

例題
例題は,いかに論理的に段階を踏んで有機化学の問題を解いていくかを示している.例題に含まれる概念を理解したかどうか確認するため,全章を通して800 問以上の(復習の)問題を準備している。

HOW TO
HOW TO の項目では,キーとなるステップを通してどのように勉強すればよいか詳細な手引きを示している。

応用とまとめ
キーコンセプト
重要な原理と概念をまとめた簡潔な一覧を各章の最後に配した。

欄外の解説
欄外の解説が各章にわたって挿入されており,本書で述べられた話題に関連する興味深い情報を提供してい る.そのうちいくつかの解説は,化学をより身近に感じてもらうために写真を用いて説明した.

教員ならびに学生のための補助教材

本書には,いくつかの補助教材が用意されている。学生が効果的に学習できるだけでなく,彼らを教える教員にとっても講義で役立つ教材となるであろう.
本書の原書出版社である McGraw-Hill は, 有機化学を学ぶうえで役に立つさまざまな教材(英語)を用意している。教員用の教材については,本書を教科書に採用いた だいた方に限り閲覧用IDとパスワードをお知らせします。化学同人営業部(eigyou@ kagakudojin.co.jp)までお問合わせください.

図版データを収録した教員用 CD-ROM(日本語版)
本書(日本語版)に掲載の図,写真,表の画像データを収録,本書を教科書に採用いただいた方には, こちらのCD-ROM を送付させていただきます. 化学同人営業部(eigyou@ kagakudojin.co.jp)までお問合わせください。

『スミス有機化学 問題の解き方(第5版)英語版』
Janice Gorzynski Smith と Erin R. Smith によって書かれた本書の“Student Study Guide / Solutions Manual”には、章内と章末問題すべてについて詳しい解き方が収められている.各章はキーコンセプトの復習で始まり,ポイントとなる規則がまとめられている.化学同人より刊行予定

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

謝辞

1999年の秋に本書の第1版の出版に着手したとき, どれくらいの仕事量となるか,また完成までにどれだ け多くの方がたのお世話になるのか,まったく想像もできなかった。幸いにも、献身的な McGraw-Hill の 出版専門チームのしっかりしたサポートを受けることができた。
本書の第5版の改訂作業を手際よく効率的にサポートしてくれた, Mary Hurley(Senior Product Developer) に特にお礼を伝えたい. Mary は何カ月もかけて化学構造式の書き直しと「機構」欄のデザイ ン改訂に取り組んでくれた。また私は, Peggy Selle (Lead Content Project Manager) と再び働けたことも嬉しかった。彼女はこの教科書の改訂全般を統括してくれた。そして本書は,Matthew Garcia(Marketing Manager) のサポートによって、より読者のニーズに合った教科書へと改善された.
それから,改訂の期間ずっと日々の編集作業を手伝ってくれた Andrea Pellerito(Brand Manager) にも特別の感謝を伝えたい. Thomas Timp(Managing Director) も,この改訂にあたり編集チームを効率的に運営した功労者である.本版を視覚的に楽しいものにしてくれた Matt Backhaus (Designer) と Carrie Burger (Photo Researcher) の努力に感謝したいまたフリーの Developmental Editor である John Murdzek には本書に対する細やかな編集ならびにユーモラスな識見に感謝したい.
私のすぐそばにいる家族は、日々忙しい私との生活を余儀なくされた. 私の夫である Dan, そして私の子どもたちの Erin, Jenna, Matthew, Zachary,そして孫の Max, Koa, Alijah みんなに感謝したい.教科書を書き,出版するという時間を要する過程を,みんなは静かに見守ってくれた.
名前を一人ひとりあげられないが本書に深くかかわってくれた方がたとして、30年以上の間に私が講義をさせてもらった数千人の学生たちにも感謝したい。彼らとの日々の親交から私は非常に多くのことを学んだ。そして広範囲にわたる化学社会が、本書で述べたことから何か得るものがあれば幸いである.
この第5版は,第4版を査読していただいた方, クラスの試験に利用していただいた方,フォーカスグループやシンポジウムに参加していただいた多くの方がたからの有益なフィードバックをもとにして改良された.これら多くの方がたとともに積極的な改良を行ってきた.以下にその方がたの名前をあげる.
第4版の査読者:
Steven Castle, Brigham Young University
Ihsan Erden, San Francisco State University
Andrew Frazer, University of Central Florida, Orlando
Tiffany Gierasch, University of Maryland, Baltimore County
Anne Gorden, Auburn University
Michael Lewis, Saint Louis University
Eugene A. Mash, Jr., University of Arizona
Mark McMills, Ohio University
Joan Mutanyatta-Comar, Georgia State University
Felix Ngassa, Grand Valley State University
Michael Rathke, Michigan State University
Jacob Schroeder, Clemson University
Keith Schwartz. Portland State University
John Selegue, University of Kentucky
Paul J. Toscano, University at Albany, SUNY
Jane E. Wissinger, University of Minnesota
MCATと有機化学の講義実態の調査に参加して,第5版の編集に協力してくださった方がた: Chris Abelt, College of William and Mary
Orlando Acevedo, Auburn University
Kim Albizati, University of California, San Diego
Merritt Andrus, Brigham Young University
Ardeshir Azadnia, Michigan State University
Susan Bane, Binghamton University
Russell Barrows, Metropolitan State University of Denver
Peter Beak, University of Illinois, Urbana Champaign
Phil Beauchamp, Cal Poly, Pomona
Michael Berg, Virginia Tech
K. Darrell Berlin, Oklahoma State University
Thomas Bertolini, University of South Carolina
Ned Bowden, University of Iowa
David W. Brown, Florida Gulf Coast University
Rebecca Broyer, University of Southern California
Arthur Bull, Oakland University
K. Nolan Carter, University of Central Arkansas
Steven Castle, Brigham Young University
Victor Cesare, St. John’s University
Manashi Chatterjee, University of Nebraska, Lincoln
Melissa Cichowicz, West Chester University
Jeff Corkill, Eastern Washington University, Cheney
Sulekha Coticone, Florida Gulf Coast University
Michael Crimmins, University of North Carolina at Chapel Hill
Eric Crumpler, Valencia College
David Dalton, Temple University
Rick Danheiser, Massachusetts Institute of Technology
Tammy Davidson, University of Florida
Brenton De Boef. University of Rhode Island
Amy Deveau, University of New England
Kenneth M. Doxsee, University of Oregon
Larissa D’Souza, Johns Hopkins University
Philip Egan, Texas A&M University, Corpus Christi
Seth Elsheimer, University of Central Florida
John Esteb, Butler University
Steve Fleming, Temple University
Marion Franks, North Carolina A&T State University
Andy Frazer, University of Central Florida
Brian Ganley, University of Missouri, Columbia
Robert Giuliano, Villanova University
Anne Gorden, Auburn University
Carlos G. Gutierrez, California State University, Los Angeles
Scott Handy, Middle Tennessee State University
Rick Heldrich, College of Charleston
James Herndon, New Mexico State University
Kathleen Hess, Brown University
Sean Hickey, University of New Orleans
Carl Hoeger, University of California, San Diego
Javier Horta, University of Massachusetts, Lowell
Bob A. Howell, Central Michigan University
Jennifer Irvin, Texas State University
Phil Janowicz, Cal State, Fullerton
Mohamad Karim, Tennessee State University
Mark L. Kearley, Florida State University
Amy Keirstead, University of New England
Margaret Kerr, Worcester State University
James Kiddle, Western Michigan University
Jisook Kim, University of Tennessee at Chattanooga
Angela King, Wake Forest University
Margaret Kline, Santa Monica College
Dalila G. Kovacs, Grand Valley State University
Deborah Lieberman, University of Cincinnati
Carl Lovely, University of Texas, Arlington
Kristina Mack, Grand Valley State University
Daniel Macks, Towson University
Vivian Mativo, Georgia Perimeter College, Clarkston
Mark McMills, Ohio University
Stephen Mills, Xavier University
Robert Minto, Indiana University-Purdue University, Indianapolis
Debbie Mohler, James Madison University
Kathleen Morgan, Xavier University of Louisiana
Paul Morgan, Butler University
James C. Morris, Georgia Institute of Technology
Linda Munchausen, Southeastern Louisiana University
Toby Nelson, Oklahoma State University
Felix Ngassa, Grand Valley State University
George A. O’Doherty, Northeastern University
Anne Padias, University of Arizona
Dan Paschal, Georgia Perimeter College
Richard Pennington, Georgia Gwinnett College
John Pollard, University of Arizona
Gloria Proni, John Jay College
Khalilah Reddie, University of Massachusetts, Lowell
Joel M. Ressner, West Chester University of Pennsylvania
Christine Rich, University of Louisville
Carmelo Rizzo, Vanderbilt University
Harold R. Rogers, California State University, Fullerton
Paul B. Savage, Brigham Young University
Deborah Schwyter, Santa Monica College
Holly Sebahar, University of Utah
Laura Serbulea, University of Virginia
Abid Shaikh, Georgia Southern University
Kevin Shaughnessy, The University of Alabama
Joel Shulman, University of Cincinnati
Joseph M. Simard, University of New England
Rhett Smith, Clemson University
Priyantha Sugathapala, University at Albany, SUNY
Claudia Taenzler, University of Texas at Dallas
Robin Tanke, University of Wisconsin, Stevens Point
Richard T. Taylor, Miami University, Oxford
Edward Turos, University of South Florida
Ted Wood, Pierce College
Kana Yamamoto, University of Toledo
David G. Jones (Vistamar School), Adam I. Keller (Columbus State Community College), Parul D. Root (Henry Ford Community College)の3名には, 目標志向型コンテンツ「LearnSmart for Organic Chemistry」の制作と査読に尽力いただいた.Florida State College at Jacskonville Harpreet Malhotra はウェブコンテンツのチェックをしていただいた.また,同所属のUjwal Chakrabortyには,第5版のTest BankとPower Point教材の改訂を担当していただいた.
本書と“Student Study Guide/Solutions Manual”をできるだけ誤りのないようにつくるためにあらゆる努力をしたが,おそらくまだいくつかの誤植が残っている.それらについてはすべて私一人の責任である. どんな誤りでもよいのでメールで知らせていただきたい. 次の版の改良に役立てたいと思う.
アロハ
Janice Gorzynski Smith
igsmith@hawaii.edu

著者紹介

Janice Gorzynski Smith はニューヨーク州のスケネクタディで生まれた. 高校時代に化学に興味をもち, コーネル大学で化学を主専攻として学び, A.B. 学位を首席で取得した彼女はハーバード大学でノーベル化学賞の受賞者である E. J. Corey 教授のもとで有機化学の Ph.D を取得し,その後1年間をハーバード大学で NSF(全米科学財団)の博士研究員として過ごした. Corey 研での研究において,彼女は植物の成長促進ホルモンであるジベレリン酸の全合成を完成させた.

博士研究員の後,彼女はマウントホリヨーク大学で職を得て,ここに 21 年間勤務した.この間に有機化学の授業ならびに実験科目を担当し,有機合成の研究を指導して,さらに部門長としても活躍した。彼女の有機化学の講義は, マウントホリヨーク大学の「受講しないと損をする」授業の一つとして、雑誌 “Boston”で取りあげられた. 1990 年代に2回のサバティカルをハワイの美しく多様な自然のなかで過ごした後, 2000 年にハワイへ永住するため家族とともに転居した. 現在,マノアにあるハワイ大学の教員として二学期にわたる有機化学の講義と実験科目を担当している.2003 年に彼女は,教育に対する功績をたたえる学長表彰を受けた.
彼女は現在,救急内科医である夫の Dan とハワイに住んでいる。写真は2015年にニュージーランドでハイキングを愉しんだときのものである.彼女には4人の子どもと3人の孫がいる. 授業や執筆の仕事,そして家族といっしょに過ごすとき以外は,彼女は日差しのここちよいハワイで自転車に乗り, ハイキングやスノーケリング, スキューバダイビングを楽しみ,時間が許せば旅行やハワイアンキルトづくりを楽しんでいる。

訳者序文

現在アメリカで急速に広まっているこの有機化学のテキストは,これまでの有機化学の入門書とはひと味 違っている。

第一の特色は,きわめて明快に,しかも詳しく丁寧に有機化学の概念が書かれていることである.これまで の教科書ではうまく勉強がはかどらず、途中で挫折した人にぜひお薦めしたい. 有機化学ではさまざまな概念を学ぶ。 しかし,従来の教科書では,それぞれの章で散発的にさまざまな概念が解説されているため,その章が終わり次の章に進むと,あらかた忘れてしまう人が多い. この教科書では,それぞれの概念が明快に説明されているばかりでなく,学んだ概念が後の章でも繰り返し説明されており,さらに進む前に,復習してしっかりと身につけることができるように配慮されている。例をあげてみよう。たとえば,8章(8.11 節)ではそれまでに学んだ反応論が系列よく説明され、理解しやすいようなかたちでまとめられている。あらためて反応のメカニズムを考える面白さを感じるであろう.たいへんユニークな章である.さまざまな質問がでることを予想しながら説明を進めているため、非常にわかりやすく細かい配慮の行き届いた記述になっている.

これまで私は永年有機化学の講義に携わってきたが, 学生諸君にとって一番大切なことは,分子のダイナミックな動きや,その変化に魅了されることであった.本書は有機分子のダイナミックな性質や生き物といかにかかわっているかを、随所でさまざまな分子を使って具体的に例示している。それぞれの章には数多くのこうした余話が散りばめられており,これを拾い読みするだけでもいつの間にか有機化学を身近に感じるようになるであろう。これが第二の特色である。願わくは,これをきっかけに有機化学のファンになってほしいものだ.

また,これまでの有機化学のテキストは内容的にどれも似たり寄ったりで,新しい知見を取り入れることに 必ずしも積極的ではなかった. 本書では 26章に, 2010 年度のノーベル化学賞の受賞テーマとなった「クロスカップリング反応」を盛り込むなど、積極的に新しい有機化学を紹介する努力が払われている.これが第三の特色である. こうした章はこれまでは大学院で学ぶ内容であるが,学部学生のときから親しむことで,大学院に進学してもすぐに最前線の有機化学に溶け込むことができるようにと望んでのことであろう.

最後に加えるべき特色は, それぞれの章末には膨大な数の練られた問題が添付されていることである. ぜひ, これを解くことによって有機化学を本当に身につける勉強をしてほしい.たとえば英会話の勉強と同じで,どんな場面においても分子の形を思い浮かべることができ、必要な概念が即座に引きだせるようになってはじめて,有機化学が一生の宝になると信じる.化学の他の分野とは異なり,有機化学を本当に身につけた人は一生忘れることがなく,いつでも使えるようになる.本書はそのための近道となり,座右の書になると確信する.

著者のスミス教授は有機化学で大きな業績をあげた学者というよりは,いくつかの大学において,そのわかりやすい講義の手法が評判になり有名になった学者であり,教育者である.現場に詳しい人だからこそ,このようなユニークで優れたテキストを書くことができたのであろう。 本書のなかでも述べられているが,ぜひ分子模型を購入して、有機分子を自分で組み立ててみて,その形の面白さを存分に楽しんでほしい。それによって、一層理解が深まると思う.

2017年9月
山本尚
(シカゴ大学名誉教授,中部大学教授)

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

本書の構成

【上巻】
序章
1章 構造と結合
2章 酸と塩基
3章 有機分子と官能基
4章 アルカン
5章 立体化学
6章 有機反応の理解
7章 ハロゲン化アルキルと求核置換反応
8章 ハロゲン化アルキルと脱離反応
9章 アルコール, エーテルとその関連化合物
10章 アルケン
11章 アルキン
12章 酸化と還元
13章 質量分析法と赤外分光法
14章 NMR分光法
15章 ラジカル反応
付録

【下巻】
16章 共役,共鳴,ジエン
17章 ベンゼンと芳香族化合物
18章 芳香族化合物の反応
19章 カルボン酸と O-H 結合の酸性度
20章 カルボニル化合物の化学:有機金属反応剤,酸化と還元
21章 アルデヒドとケトン:求核付加反応
22章 カルボン酸とその誘導体:求核アシル置換反応
23章 カルボニル化合物のQ炭素での置換反応
24章 カルボニル縮合反応
25章 アミン
26章 有機合成における炭素-炭素結合生成反応
27章 ペリ環状反応
28章 炭水化物
29章 アミノ酸とタンパク質
30章 脂質
31章 合成ポリマー
用語解説

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

目次

日本の読者のみなさまへ
まえがき
謝辞
著者紹介
訳者序文
本書の構成
目次
HOW TO の一覧
反応機構の一覧

序章
有機化学とは
代表的な有機分子
有機化学とマラリア

1章 構造と結合
1.1 周期表
1.2 結合
1.3 ルイス構造式
1.4 異性体
1.5 八電子則の例外
1.6 共鳴
1.7 分子の形の決定
1.8 有機分子の構造の書き方
1.9 混成
1.10 エタン,エチレン, アセチレン
1.11 結合の長さと結合の強さ
1.12 電気陰性度と結合の極性
1.13 分子の極性
1.14 L-ドーパ― 代表的な有機分子
キーコンセプト
章末問題

2章 酸と塩基
2.1 ブレンステッド- ローリーの酸と塩基
2.2 ブレンステッド – ローリーの酸と塩基の反応
2.3 酸の強さとpKa
2.4 酸-塩基反応の結果の予測
2.5 酸の強さを決定する因子
2.6 一般的な酸と塩基
2.7 アスピリン
2.8 ルイス酸とルイス塩基
キーコンセプト
章末問題

3章 有機分子と官能基
3.1 官能基
3.2 官能基の概要
3.3 分子間力
3.4 物理的性質
3.5 応用:ビタミン
3.6 溶解性の利用:せっけん
3.7 応用:細胞膜
3.8 官能基と反応性
3.9 生体分子
キーコンセプト
章末問題

4章 アルカン
4.1 アルカン
4.2 シクロアルカン
4.3 命名法
4.4 アルカンの命名法
4.5 シクロアルカンの命名法
4.6 慣用名
4.7 化石燃料
4.8 アルカンの物理的性質
4.9 非環状アルカンの立体配座―エタン
4.10 ブタンの立体配座
4.11 シクロアルカンの立体配座
4.12 シクロヘキサンの立体配座
4.13 置換シクロアルカンの立体配座
4.14 アルカンの酸化
4.15 脂質パート
キーコンセプト
章末問題

5章 立体化学
5.1 デンプンとセルロース
5.2 二種類の異性体
5.3 鏡のなかの化学―キラル分子とアキラル分子
5.4 立体中心
5.5 環状化合物の立体中心
5.6 立体中心の R, S表示
5.7 ジアステレオマー
5.8 メソ化合物
5.9 二つ以上の立体中心をもつ化合物のR, S表示
5.10 二置換シクロアルカン
5.11 異性体のまとめ
5.12 立体異性体の物理的性質
5.13 エナンチオマーの化学的性質
キーコンセプト
章末問題

6章 有機反応の理解
6.1 有機反応における反応式の書き方
6.2 有機反応の種類
6.3 結合の切断と生成
6.4 結合解離エネルギー
6.5 熱力学
6.6 エンタルピーとエントロピー
6.7 エネルギー図
6.8 2段階反応機構のエネルギー図
6.9 速度論
6.10 触媒
6.11 酵素
キーコンセプト
章末問題

7章 ハロゲン化アルキルと求核置換反応
7.1 ハロゲン化アルキル
7.2 命名法
7.3 物理的性質
7.4 興味深いハロゲン化アルキル
7.5 極性をもつ炭素-ハロゲン結合
7.6 求核置換反応の一般的な特徴
7.7 脱離基
7.8 求核剤
7.9 求核置換反応の反応機構
7.10 求核置換反応における二つの反応機構
7.11 SN2 反応機構
7.12 SN1 反応機構
7.13 カルボカチオンの安定性
7.14 ハモンドの仮説
7.15 SN1 反応か SN2 反応かを決める因子
7.16 生体内で見られる求核置換反応
7.17 ハロゲン化ビニルとハロゲン化アリール
7.18 求核置換反応を利用した有機合成
キーコンセプト
章末問題

8章 ハロゲン化アルキルと脱離反応
8.1 脱離反応の一般的な特徴
8.2 アルケン― 脱離反応の生成物
8.3 脱離反応の機構
8.4 E2 反応機構
8.5 ザイツェフ則
8.6 E1 反応機構
8.7 SN1反応と E1 反応
8.8 E2 反応の立体化学
8.9 El反応か E2 反応かを決める因子
8.10 E2反応とアルキンの合成
8.11 SN1, SN2, E1, E2 反応機構を決める因子
キーコンセプト
章末問題

9章 アルコール, エーテルとその関連化合物
9.1 はじめに
9.2 構造と結合
9.3 命名法
9.4 物理的性質
9.5 興味深いアルコール,エーテル,エポキシド
9.6 アルコール,エーテル,エポキシドの合成
9.7 アルコール,エーテル,エポキシドの反応の一般的な特徴
9.8 アルコールのアルケンへの脱水反応
9.9 カルボカチオンの転位反応
9.10 POCI3とピリジンを用いる脱水反応
9.11 HX を用いるアルコールからハロゲン化アルキルへの変換
9.12 SOCl2 および PBr3によるアルコールのハロゲン化アルキルへの変換
9.13 トシラート―もう一つの優れた脱離基
9.14 エーテルと強酸の反応
9.15 チオールとスルフィド
9.16 エポキシドの反応
9.17 応用:エポキシド,ロイコトリエン,ぜんそく
9.18 ベンゾ[a]ピレン, エポキシド,がん
キーコンセプト
章末問題

10章 アルケン
10.1 はじめに
10.2 不飽和度の計算
10.3 命名法
10.4 物理的性質
10.5 興味深いアルケン
10.6 脂質―パート2
10.7 アルケンの合成
10.8 付加反応
10.9 ハロゲン化水素化反応―HXの求電子付加反応
10.10 マルコウニコフ則
10.11 HX の求電子付加反応の立体化学
10.12 水和反応 ― 水の求電子付加反応
10.13 ハロゲン化反応 ―ハロゲンの付加
10.14 ハロゲン化反応の立体化学
10.15 ハロヒドリンの生成
10.16 ヒドロホウ素化反応 -酸化反応
10.17 これまでの反応の確認
10.18 有機合成へのアルケンの利用
キーコンセプト
章末問題

11章 アルキン
11.1 はじめに
11.2 命名法
11.3 物理的性質
11.4 興味深いアルキン
11.5 アルキンの合成
11.6 アルキンの反応の概略
11.7 ハロゲン化水素の付加
11.8 ハロゲンの付加
11.9 水の付加
11.10 ヒドロホウ素化反応 – 酸化反応
11.11 アセチリドアニオンの反応
11.12 合 成
キーコンセプト
章末問題

12章 酸化と還元
12.1 はじめに
12.2 還元剤
12.3 アルケンの還元
12.4 応 用:油脂の水素化
12.5 アルキンの還元
12.6 極性をもつC-Xo結合の還元
12.7 酸化剤
12.8 エポキシ化反応
12.9 ジヒドロキシ化反応
12.10 アルケンの酸化的開裂
12.11 アルキンの酸化的開裂
12.12 アルコールの酸化
12.13 グリーンケミストリー
12.14 生体内での酸化反応
12.15 シャープレスエポキシ化反応
キーコンセプト
章末問題

13章 質量分析法と赤外分光法
13.1 質量分析法
13.2 ハロゲン化アルキルとM+2ピーク
13.3 フラグメント化
13.4 他の質量分析法
13.5 電磁波照射
13.6 赤外分光法
13.7 赤外吸収
13.8 赤外スペクトルと構造決定
キーコンセプト
章末問題

14章 NMR 分光法
14.1 NMR分光法
14.2 1H NMR:シグナルの数
14.3 1H NMR:シグナルの位置
14.4 sp2 および sp 混成炭素上のプロトンの化学シフト
14.5 1H NMR:シグナルの強度
14.6 1H NMR:スピン-スピン分裂
14.7 さらに複雑な分裂の例
14.8 アルケンにおけるスピン – スピン分裂
14.9 1H NMR分光法に関するその他の特徴
14.10 1H NMRを用いた未知化合物の同定
14.11 13C NMR分光法
14.12 核磁気共鳴画像法(MRI)
キーコンセプト
章末問題

15章 ラジカル反応
15.1 はじめに
15.2 ラジカル反応の一般的な特徴
15.3 アルカンのハロゲン化反応
15.4 ハロゲン化反応の機構
15.5 その他のアルカンの塩素化反応
15.6 塩素化反応と臭素化反応の比較
15.7 有機合成へのハロゲン化反応の応用
15.8 ハロゲン化反応の立体化学
15.9 応 用:オゾン層とCFCs
15.10 アリル炭素上でのラジカルによるハロゲン化反応
15.11 応用:不飽和脂質の酸化
15.12 応 用:酸化防止剤
15.13 二重結合へのラジカル付加
15.14 ポリマーと重合
キーコンセプト
章末問題

写真版権の一覧

付録A 代表的な化合物のpKa値
付録B 命名法
付録C 一般的な結合の結合解離エネルギー
付録D 炭素-炭素結合生成反応
付録E 特徴的な赤外吸収
付録F 特徴的な NMR吸収
付録G 重要な有機反応
付録H 官能基の合成法

索引

HOW TO の一覧 (上巻掲載分)
HOW TO の項目では、学生のみなさんが習得すべき重要な手順を詳細に解説している.それぞれの HOW TO のタイトルとその掲載ページを以下に示す.
1章 構造と結合
ルイス構造式の書き方
骨格構造式の解釈
2章 酸と塩基
プロトンの相対的な酸性度の決定法
4章 アルカン
IUPAC 規則によるアルカンの命名法
IUPAC 規則によるシクロアルカンの命名法
ニューマン投影式の書き方
シクロヘキサンのいす形配座の書き方
置換シクロヘキサンの二つの立体配座の書き方
二置換シクロヘキサンの二つの立体配座の書き方
5章 立体化学
立体中心の R, S の決定法
二つの立体中心をもつ化合物の立体異性体を見つけだす方法
7章 ハロゲン化アルキルと求核置換反応
IUPAC 規則によるハロゲン化アルキルの命名法
9章 アルコール, エーテルとその関連化合物
IUPAC 規則によるアルコールの命名法
10章 アルケン
アルケンの命名法
アルケンの接頭語 E, Zの決定法
11章 アルキン
逆合成解析の進め方
13章 質量分析法と赤外分光法
質量分析法および赤外分光法を用いた構造決定
14章 NMR 分光法
1H NMRスペクトルデータによる構造決定

反応機構の一覧下巻掲載分)(上巻掲載分)
有機化学反応を理解するためには,反応機構を知ることが重要である.そのため、反応機構については細心の 注意を払い,1段階ずつ詳細に解説した.本書でそれぞれの反応機構が最初に紹介されるページを以下に示す.
7章 ハロゲン化アルキルと求核置換反応
7.1 S N2 反応機構
7.2 SN1 反応機構
8章 ハロゲン化アルキルと脱離反応
8.1 E2反応機構
8.2 El反応機構
9章 アルコール, エーテルとその関連化合物
9.1 第二級および第三級アルコールの脱水反応 ― E1 反応機構
9.2 第一級アルコールの脱水反応 ― E2反応機構
9.3 1,2-メチル移動 —— 脱水反応で起こるカルボカチオン転位
9.4 POCl3 + ピリジンを用いる脱水反応 ― E2反応機構
9.5 第一級アルコールと HX の反応 ― SN2 反応機構
9.6 第二級および第三級アルコールと HX の反応 ― SN1 反応機構
9.7 ROH と SOCl2 + ピリジンの反応 ― SN2 反応機構
9.8 ROH と PBr3の反応 ― S2反応機構
9.9 強酸によるエーテル結合の切断
10章 アルケン
10.1 アルケンへの HX の求電子付加反応
10.2 アルケンへの水の求電子付加反応 – 水和反応
10.3 アルケンへの X2 の付加 – ハロゲン化反応
10.4 X と OH の付加 – ハロヒドリンの生成
10.5 H と BH2 の付加 – ヒドロホウ素化反応
11章 アルキン
11.1 アルキンへの HXの求電子付加
11.2 アルキンへの X2 の付加 ―― ハロゲン化反応
11.3 酸による互変異性化
11.4 アルキンの水和反応
12章 酸化と還元
12.1 アルケンへの H2 の付加 —— 水素化反応
12.2 溶解金属によるアルキンからトランス-アルケンへの還元反応
12.3 RX の LiAlH4による還元
12.4 過酸によるアルケンのエポキシ化反応
12.5 CrO3によるアルコールの酸化
12.6 第一級アルコールのカルボン酸への酸化
15章 ラジカル反応
15.1 ラジカルによるアルカンのハロゲン化反応
15.2 NBS によるアリル位臭素化反応
15.3 アルケンへの HBr のラジカル付加反応
15.4 CH2=CHZ のラジカル重合反応

Janice Gorzynski Smith (著), 山本 尚 (監修), 髙井 和彦 (翻訳), 忍久保 洋 (翻訳), 依光 英樹 (翻訳)
出版社 : 化学同人; 第5版 (2017/10/31)、出典:出版社HP

有機化学演習―基本から大学院入試まで

有機化学の基礎から大学院入試レベルまで

本書は、有機化学のテキストで、演習問題も幅広いレベルが掲載されています。章立てなどの構成は、一般的な有機化学の教科書と同じです。演習を多く行いたい方などにおすすめできる本です。

山本 学 (著), 豊田 真司 (著), 伊与田 正彦 (著)
出版社 : 東京化学同人 (2008/4/1)、出典:出版社HP

有機化学は科学技術の発展を支える重要な分野であると同時に、非常に面白く楽しい学問である。しかし大学で有機化学を教えていて感じるのは、覚えなければならない事項があまりにも多いという印象を受けていると学生が多いことである。もちろん基本的な事項は覚えなければならないが、それが身につけば後は理詰めで解くことができる問題がほとんどである、その基本事項をしっかり身につけるには、学生諸君が自分で納得するまで繰返し構造式や反応式を書き、あるいは電子の移動を表すと矢印を追って反応機構を理解するといったことが不可欠である、それを促す一助となることを希望して本書を編集した、大学での講義と並行して、あるいは一通りの講義を受けた後で、自習書として使うもよし、友人と相談し議論しながら解き進むもよし、大いに活用して欲しい。

本書は一般的な有機化学の教科書に準じた章立てになっている、演習問題は、有機化学の初歩的な問題から大学院入試問題レベルのものまで広範囲にわたっている。各章の初めにその章の内容をまとめた解説と例題をおいた。解説を通読し例題を解いてみよう。また教科書や参考書の関連部分を、必要に応じて読み直すことが望ましい、演習問題にはすべて解答をつけて巻末にまとめ、できる限り詳しい解説をし理解を助けるように配慮した。比較的高度な問題には*印を付けてある。最後に総合問題の章を設けたので自分の到達レベルに合わせて挑戦して欲しい。

本書では用語は原則として文部省“学術用語集 化学編(増訂2版)”に従った。また化合物の命名法を有機化学の重要な柱の一つに位置づけた。命名法では、国際純正および応用化学連合(IUPAC)の1979年命名規則に基づく英語名と、それを日本化学会が定めた“化合物名日本語表記の原則に従って変換した日本語名とを併記した。それが命名法を系統的に理解する最善の方法と考えたからである。

本書の編集に当たって、東京化学同人編集部の橋本純子氏、内藤みどり氏、木村直子氏に大変お世話になった。ここで厚く御礼申し上げる。

2008年3月
著者一同

山本 学 (著), 豊田 真司 (著), 伊与田 正彦 (著)
出版社 : 東京化学同人 (2008/4/1)、出典:出版社HP

目次

1章 有機化学の基礎
結合と構造
酸と塩基
有機化学反応
例題1.1~1.8
演習問題1.1~1.12

2章 アルカンとシクロアルカン
命名法
アルカンの反応
立体配座(コンホメーション)
シクロアルカンにおけるシストランス異性
例題2.1~2.7
演習問題2.1~2.13

3章 アルケンとアルキン
命名法
アルケンのシス-トランス異性
EZ表示法
Cahn-Ingold-Prelogの順位則(CIP則)
アルケンの反応
共役ジエンの反応
アルキンの反応
例題3.1~3.6
演習問題3.1~3.10

4章 芳香族化合物
命名法
ベンゼンの構造
ベンゼンの反応
多環芳香族化合物
Hückel則
芳香族複素環化合物
例題4.1~4.9
演習問題4.1~4.12

5章 立体化学
例題5.1~5.9
演習問題5.1~5.6

6章 ハロゲン化アルキル
命名法
ハロゲン化アルキルの性質
ハロゲン化アルキルの合成
ハロゲン化アルキルの反応
求核置換反応の機構:S_N1反応とS_N2反応
脱離反応の機構
例題6.1~6.12
演習問題6.1~6.11

7章 アルコール、フェノール、エーテルおよびその硫黄類縁体
命名法
アルコール、フェノールの性質
アルコールの合成
アルコールの反応
フェノールの合成と反応
エーテルの合成と反応
エポキシドの合成と反応
チオールとスルフィドの合成
例題7.1~7.10
演習問題7.1~7.11.

8章 アルデヒドとケトン
命名法
アルデヒド、ケトンの合成
アルデヒド、ケトンの反応
例題8.1~8.5
演習問題8.1~8.13

9章 カルボン酸とその誘導体
命名法
カルボン酸の合成
酸塩化物の合成
酸無水物の合成
エステルの合成
アミドの合成
ニトリルの合成
カルボン酸の反応
カルボン酸誘導体の反応
例題9.1~9.6
演習問題9.1~9.10

10章 カルボニル化合物のα置換と縮合
ケト-エノール互変異性
α水素の酸性度
カルボニル基のα位での置換反応
縮合反応
合成への応用
例題10.1~10.5
演習問題10.1~10-10

11章 アミン
命名法
合成
反応
例題11.1~11.4
演習問題11.1~11.9

12章 ペリ環状反応
例題12.1~12.4
演習問題12.1~12.6

13章 スペクトルによる構造解析
赤外分光法(IR)
紫外可視分光法(UV-Vis)
核磁気共鳴分光法(NMR)
質量分析法(MS)
例題13.1~13.6
演習問題13.1~13.10

14章 総合問題(問題14.1~14.15)

演習問題解答
1章(199)
2章(201)
3章(205)
4章(208)
5章(215)
6章(221)
7章(226)
8章(232)
9章(240)
10章(246)
11章(253)
12章(260)
13章(264)
14章(268)
索引

略号表

Ac acetyl アセチル
Ar aryl アリール
Bu butyl ブチル
i-Bu isobutyl イソブチル
s-Bu n-butyl n-ブチル
n-Bu s-butyl s-ブチル
t-Bu t-butyl t-ブチル
DCC dicyclohexylcarbodiimide ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIBAL(DIBAH) diisobutylaluminium hydride 水素化ジイソブチルアルミニウム
DMF N,N-dimethylformamide N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO dimethyl sulfoxide ジメチルスルホキシド
Et ethyl エチル
LDA lithium diisopropylamide リチウムジイソプロピルアミド
mCPBA m-chloroperbenzoic acid m-クロロ過安息香酸
Me methyl メチル
NBS N-bromosuccinimide N-ブロモスクシンイミド
PCC pyridinium chlorochromate クロロクロム酸ピリジニウム
Ph phenyl フェニル
Pr propyl プロピル
i-Pr isopropyl イソプロピル
n-Pr n-propyl n-プロピル
Py pyridine ピリジン
THF tetrahydrofuran テトラヒドロフラン
Ts p-toluenesulfonyl(tosyl) p-トルエンスルホニル(トシル)

山本 学 (著), 豊田 真司 (著), 伊与田 正彦 (著)
出版社 : 東京化学同人 (2008/4/1)、出典:出版社HP

大学院をめざす人のための 有機化学演習 基本問題と院試問題で実戦トレーニング!

有機化学の演習問題をとことん解ける

本書は、有機化学の演習ができる本です。基本から応用まで幅広い問題を扱っており、内容としても有機化学全般を網羅しています。各章には、最新の大学院入試問題と解答例も掲載しており、大学院入試で、有機化学が必要な方に参考となる本の一つです。

※大学院入試問題は、各大学院のご厚意により、許諾を得て転載させていただきましたた だし、解答は本書の著者が独自に作成したものであり,各大学院が公表したものではありません。
※本書に関する追加の情報,資料がある場合は,化学同人ウェブサイトの本書ページに掲載。 いたします。https://www.kagakudojin.co.jp/book/b458012.html

はじめに

有機化学は,化学工業や,医薬・農薬,および機能材料の研究開発における基幹学問であり,私たちの生活にも深く関わっている,きわめて重要な学問である. 有機化学を基本とした有機合成反応を効率的に展開するには、電子的効果,立体的効果,溶媒効果などに加えて,どの試薬を用い, どの合成プロセスをとるべきかなどを的確に判断していく必要がある.これを遂行するには日頃から有機化学演習を通じて,有機構造論,有機電子論,有機反応論,および有機合成論などを整理して,理解しておく必要がある.

この演習書は,有機化学の基本から応用まで幅広く学習できるようにまとめてあり, 有機構造論,有機電子論,有機反応論,有機構造解析論,および有機合成論など,有機化学全般を網羅した総合演習書である。各章に,主要大学の最新の大学院入試問題と解答例も掲載している。大学院受験に向けて自分で問題を解く力をつけたい方,教科書の練習問題にとどまらず,もっと多く問題を解いて理解を深めたい方などに,ぜひご活用いただきたい。

また,学習のために用いるだけでなく、有機合成の現場でも役立つようにしてある. 反応機構や,重要な有機人名反応,および主要な有機合成を広く取り上げるとともに, 全合成では最近の論文からも多くの反応例を掲載した。
本書を通じて、将来の有機化学を担う若い諸君が,有機化学の理解をいっそう深め, 卓越した有機化学の研究者として、社会で大いに活躍していただければ幸いである。

最後に、本書を作成するにあたり、多くの助言やアイデアをいただき,出版に導いてくださった化学同人編集部の後藤 南氏に心からお礼を申し上げます。

2019年7月
東鄉秀雄

目次

略語表

第I部 有機化学の基礎——基本事項の確認
1. 有機化合物の構造と結合
2. 極性,水素結合
3. 電子的効果,酸・塩基
4. アルカン,アルケン,アルキン
5. アルコール,ハロゲン化アルキル, エーテル
6. アルデヒド,ケトン
7. カルボン酸,エステル, アミド, ニトリル
8. 芳香族化合物
9. 異性体

第II部 有機反応様式をマスターしよう
10. 置換反応(脂肪族化合物)
11. 付加反応
12. 脱離反応
13. 酸化反応
14. 還元反応
15. カルボニル化合物の反応
16. 芳香環の反応
17. 転位反応
18. ラジカル反応
19. ペリ位環状反応
20. 応用問題

第Ⅲ部 構造解析のトレーニング
21. スペクトルチャートからの構造解析
22. スペクトル値からの構造解析

第IV部 反応・合成のトレーニング
23. 有機反応機構
24. 有機合成反応(3~6工程)

第V部 最新の論文から
25. 先端の天然物有機合成(標的化合物の合成法)

索引

本書の構成と使い方
●各章とも「問題を解くためのキーポイント」「演習問題」「大学院入試問題に挑戦」の順に構成し,段階を踏んで学べるようにした(20章,23~25章は応用のため「キーポイント」なし). ●問題にはチェック欄■問6.1があるので、解いた問題に印をつけるなど,学習の進捗確認 等に利用してほしい。
●演習問題には「ヒント」を掲載し,問題を解く手掛かりにできるようにした。
●問題の難易度を★印で示したので、目安としてほしい。
★基本★★:標準 ★★★:やや難★★★★:難
●「問題の解答」は巻末に掲載,ポイントとなる部分は赤色で示した。