科学はどこまで進歩した!?「知らないと恥をかく最新科学の話」

科学の進歩は止まるところを知らず、年々新たな発見があります。今や大きな発見が年に数十件とある時代。そんな時代に生きる私たちの知識は、もはや古いものとなってしまっているかもしれません。そこで、今回書評する「知らないと恥をかく最新科学の話」を読んで、最新科学について知識を更新していきたいと思います。

中村 幸司 (著)
出版社: KADOKAWA / 角川書店 (2019/3/9)、出典:amazon.co.jp

科学の進歩は止まる所を知らない

科学の進歩のスピードには驚かされるばかりです。日々新しい知識や情報が飛び交っています。しかし、その情報や知識を表面的に理解してはいないでしょうか。頭で理解したつもりでも、科学的知識がないのでは本質を理解し生活に役立てることはできません。
今回は、角川新書から発行されている中村幸司氏著の「知らないと恥をかく最新科学の話」を読んで科学の本質に近づいていきたいと思います。

本書はNHK解説委員の中村幸司氏による著書です。まずは中村氏のプロフィールを見ていきましょう。1962年生まれ、東京都出身。東京工業大学を卒業後、同大学院に進学し修了後はNHKに記者として入局します。入局後は京都放送局、報道局科学文化部で取材を重ね、臓器移植や薬害エイズなど医療を中心に担当しました。その後、ニュースデスクや長野放送局、ラジオのニュース担当を経て2013年にNHK解説委員に就任します。経歴からも分かる通り、科学分野にかなり明るい方です。

本書では、中村氏の選んだ「生物」「生化学」「物理」「宇宙」「交通」「工学」の分野に関するニュースを、それぞれ「基礎知識編」「現代社会・応用編」と称して二段階構成で解説されています。「基礎知識編」では理解に必要な科学を示し、「現代社会・応用編」で今の社会でどう使われ、応用され、そして将来どうなるかが説明されています。

まず最初に1章では感染症について取り上げられ、インフルエンザウイルスに関する解説が丁寧になされています。

続く2章ではヒトの再生はどこまで可能かという内容です。ここでは日本の誇るべき研究と研究者山中伸弥氏についての記述から始まっています。iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞し、注目を集めた山中氏。再生医療への臨床応用が始まり、また新たに期待が高まっています。再生医療とは薬や手術とは大きく異なる医療技術です。損傷した臓器や組織を再生させ元の状態に近づける事で治療につなげます。「基礎知識編」には、細胞が役割を分担している、とあります。ここがiPS細胞の基本的な知識の部分となっています。

元は受精卵という細胞一つから細胞分裂を繰り返し、いろいろな器官になっていきます。これを樹形図を模して説明しており、受精卵は根元の太い幹だと言います。一度枝分かれし役割が決まった細胞は、元の受精卵には戻れないとされていました。しかし、それが可能となったのです。正確には皮膚の細胞に特殊な操作を加える事で枝分かれする前の受精卵に近い状態まで戻すことができました。これがiPS細胞です。そのあとの項では細胞に働きかけた特殊な操作、ヤマナカファクターの説明もなされています。遺伝子情報が限定されてしまった枝分かれ後の細胞に遺伝子的操作を加える事で、再び様々な細胞になりうる遺伝子情報の限定解除ができたのだとあります。

この後、「現代社会・応用編」にてiPS細胞の使われ方や、現在どこまで使われているのか、将来どのような可能性を秘めているのかが解説されています。

続く3章では「ゲノムを医療に生かす新時代」4章では「GPSが可能にする便利社会」5章では「地震国・日本はどう備えるべきか」6章「リニアが拓く日本の高速鉄道」7章「渋滞がない未来がやってくる?」8章「絶滅危惧の生物をどう守るか」9章「宇宙誕生の謎がわかると何が見えてくるのか」と大ボリュームな内容になっています。普段何気なく聞き流していたTVのニュースのさらに先を詳しく解説しています。科学に興味のある方はもちろん、今まであまり関心のなかった方でも、これさえ読めば教養が膨らむような本だと感じました。気になった方は是非書店にて手に取ってみてはいかがでしょうか。

中村 幸司 (著)
出版社: KADOKAWA / 角川書店 (2019/3/9)、出典:amazon.co.jp