【最新】ロケットを理解するためのおすすめ本 – 入門からロケット工学まで

ロケットはどのような構造?エンジンの仕組みは?

ロケットはどうやって飛ぶのか、ロケットはどのような構造になっているのか、エンジンはどのようなものか…近年注目されている宇宙ビジネスですが、そこに欠かせないロケットについてあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は、ロケットについて全く詳しくない入門者から大学で学ぶ方までを対象に、ロケットの構造や歴史、設計などについて学べる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

トコトンやさしい宇宙ロケットの本(第3版) (今日からモノ知りシリーズ)

マンガで理解するロケットの入門書

宇宙ロケットの開発の歴史、燃料やエンジンの仕組み、打上げや軌道投入の基本を専門家がわかりやすく解説しています。コラムには著者ならではの裏話を書きおろし、イプシロン、H3、「はやぶさ2」などの最新の話題を盛り込んであります。

的川 泰宣 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社; 第3版 (2019/4/20) 、出典:出版社HP

はじめに

ある雑誌に「ロケットは大きなおなら」と書いたら、読者の一人から「品がない」とお叱りを受けた。だれもが経験する事柄をもとにしてロケット推進の原理を説明しようと試みたつもりだったが、「品」を問題にされるとは思わなかった。「作用反作用の法則」で説明すると、ほとんどの人は誤解をする。何が作用なのかはっきりしないのである。
今後人類の未来と宇宙への進出は、切っても切れない縁で結ばれ続けるだろう。その際の主役である宇宙ロケットについて、できるだけ平易に語ってみたいと思ってワープロを叩いた結果が本書である。方程式の分かる人ならば、巻末に掲げた参考書をお薦めする。恩師の糸川英夫先生は「初めて学ぶ事柄の場合は、私はまずマンガから入ります。概念的につかんでおけば、専門書に一気に入っても戸惑うことがないのです」と語っておられた。その「入門のマンガ」的な使い方をしていただければと思っている。

〈改訂にあたって〉
宇宙へ飛び立った衛星の数が五千機を越えたが、宇宙輸送の主役がロケットであることは、当分変わりそうにない。宇宙へのアクセスが多様になり、民間も本格的に乗り出してきた宇宙新時代にふさわしい内容に改めて、現代の要求に応えることにした。

2019年4月
的川 泰宣

的川 泰宣 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社; 第3版 (2019/4/20) 、出典:出版社HP

目次 CONTENTS

第1章 宇宙ロケットのあゆみ
1 初期のロケット「火薬ロケットは13世紀に中国からヨーロッパへ」
2 パイオニアたち「ジュール・ベルヌのSFに刺激される」
3 ロケット・ブームとV2「近代ロケットの元祖はドイツのV-2」
4 米ソの宇宙開発競争のはじまり「先行したソ連」
5 月面への先陣争い「月に立った最初の人、アームストロング」
6 宇宙ステーションの時代「長期の宇宙滞在をめざす」
7 日本も宇宙時代へ「東大のペンシル・ロケットが最初」
8 イプシロンとH3の新時代「新しい二つのロケット」

第2章 ロケットはなぜ飛ぶか
9 ロケットの推進原理「「反動」による力」
10 化学ロケット「化学反応でガスを発生、噴射する」
11 ロケットと運動量「「運動量保存の法則」でスピードを増す」
12 質量比と比推力「ロケットは推進剤のお化け」
13 ツィオルコフスキーの公式「質量比が小さいほど、比推力が大きいほどスピードが出る」
14 ロケットのスピードを上げる工夫「ガスの噴出速度を速く、質量比を小さく」
15 多段式ロケット「質量比と比推力の限界を越える工夫」

第3章 ロケットの推進剤
16 推進剤の役目「酸素は燃料の何倍も必要」
17 固体推進剤とグレイン「コンポジット系が主流」
18 液体推進剤「密度や取り扱いやすさ、貯蔵性が決め手」
19 液体推進剤のタンク「容れておき供給する」
20 固体ロケットと液体ロケットの違い「高性能な液体、シンプルな固体」
21 庶民の味方ハイブリッド・ロケット「環境にやさしく安全で扱いやすい」

第4章 ロケット・エンジン
22 ノズルの役割「高速で噴射、大きな推進力を生む」
23 固体ロケット・モーターのしくみ「モーターケース、推進薬、ノズル、点火器からなる」
24 液体ロケット・エンジンのしくみ「燃焼室で推進剤が燃え、できた高温ガスが吹き出す」
25 液体ロケット・エンジンの冷却「高温の燃焼に耐えて推力を生み出す」
26 液体ロケットのエンジン・サイクル「「開サイクル」と「閉サイクル」」
27 液体ロケット・エンジンの作動「たくみなエンジン作動のしくみ」

第5章 ロケットの構造
28 軽く、薄く「打上げ時の重量の80%以上が推進剤」
29 ロケットのいろいろな構造「設計荷重に耐える構造」
30 ロケットの材料に求められること「構造材料と機能材料」
31 固体ロケットのモーター・ケースに使われる材料「燃料が燃える時の高圧高温に耐える」
32 固体ロケットのノズルのつくり「特別の熱対策が必要」
33 液体ロケットのタンクの様子「推進剤の振動に対処」

第6章 ロケットを正確に飛ばすには
34 ロケットの誘導制御って何?「「航法」「誘導」「姿勢制御」」
35 ロケットの航法「慣性航法が多く使われる」
36 回転するジャイロと回転しないジャイロ「姿勢と角速度を測る」
37 二つの慣性航法「センサの付け方が異なる」
38 「こま」式ジャイロスコープ「ジャイロのいろいろ」
39 「こま」のないジャイロスコープ「振動ジャイロと光ジャイロ」
40 ロケットの誘導「目標の軌道に所定の精度で投入」
41 姿勢制御「飛翔中のロケットの姿勢を目標姿勢に向ける」

第7章 ロケットの打上げ
42 世界のロケット発射場「低緯度ほど燃料が得」
43 日本のロケット発射場「各地の射場と歴史」
44 ロケットをどっち向きに飛ばすか「目標とする衛星の軌道傾斜角で決まる」
45 ロケットの下段は海に落ちる「落下予想区域では事故防止を徹底」
46 中国とインドの台頭「宇宙強国をめざして」

第8章 惑星への旅
47 人工衛星と惑星探査機の違い「地球の重力圏を脱出して探査する」
48 ホーマン軌道と会合周期「最も燃料消費を小さくする」
49 惑星探査機の打上げと地球脱出「秒速二・二キロメートルを越える」
50 地球脱出のやり方「第二宇宙速度に余裕を残す」
51 省エネルギーの航法スウィングバイ「惑星の引力を利用」
52 軟着陸と再突入「無事に着陸する工夫」

第9章 宇宙往還の時代
53 スペースシャトルによる往還「ロケット・ブースターと外部燃料タンクは上昇中に切り離す」
54 ソユーズによる帰還「ソユーズは三人乗りの有人宇宙船」
55 ISSへの物資輸送と「こうのとり」「ISSへの物資輸送を支える補給機」
56 民間ロケットと普通の人の宇宙旅行「海外旅行気分で宇宙へも」
57 「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ「太陽系往還時代が始まった」

第10章 これからの宇宙ロケット
58 世界のロケットの比較「国家・民間・国際協力」
59 未来の宇宙輸送「電気、原子力、レーザーから光子まで」
60 イオンエンジンとソーラーセイル「「はやぶさ」と「イカロス」」
61 完全再使用のスペースプレーン「夢の宇宙輸送システム」
62 核エネルギー推進「核分裂で発生する熱で高温にする」
63 光子ロケット「光子を放出して推力を得る」
64 レーザー推進「地上や宇宙ステーションからレーザーを照射」
65 宇宙エレベーター「ロケットに代わる宇宙輸送の手段」

【コラム】
●轟音と煙とともに消えた男
●打上げ成功確率
●「かぐや」搭載のハイビジョン
●JAXAという名前
●オッタッタ?
●悪魔の「ハイフン」
●性能計算書
●「はやぶさ」の陰に糖尿あり
●適度な貧乏
●二台のパソコンで打上げ管制

参考文献
索引

的川 泰宣 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社; 第3版 (2019/4/20) 、出典:出版社HP

宇宙探査機・ロケット (最先端ビジュアル百科「モノ」の仕組み図鑑)

ロケット・探査機をイラストや写真で見る

世界初のロケットから最新の探査機まで、15種類の宇宙探査機・ロケットの内部のつくりを精緻なイラストで説明し、活動中の宇宙機の様子を写真とともに紹介しています。これまでの宇宙機の歴史から民間宇宙機の未来までがわかります。

スティーブ パーカー (著), 上原 昌子 (翻訳)
出版社 : ゆまに書房 (2010/5/1) 、出典:出版社HP

もくじ

はじめに
V-2ロケット
スプートニク1号
エクスプローラー1号
ボストーク1号
サターン5型ロケット
パイオニア11号
ボイジャー2号
スペースシャトル
マゼラン
ハッブル宇宙望遠鏡
カッシーニ・ホイヘンス
スピリットとオポチュニティー
ビーナス・エクスプレス
スペースシップワン
国際宇宙ステーション
用語解説

スティーブ パーカー (著), 上原 昌子 (翻訳)
出版社 : ゆまに書房 (2010/5/1) 、出典:出版社HP

はじめに

大昔は、街灯も電灯も、ロウソクさえもなく、ただ赤々と燃えるたき火があるだけだった。古代の人々には、夜空にうかぶ月や惑星や恒星を、そしてそのほかのきらきらと光るたくさんのごく小さな点を見上げる時間があったんだ。そうして、はるか遠くのなぞめいた暗い世界の中に神話が生まれていった。1610年ごろから、望遠鏡を使って夜空の小さな点をもっと大きくして見るようになった。おかげで天文学者たちは、この小さな点が遠くはなれた天体で、「宇宙」というとてつもなく広い空間を動いている、と気がついたんだ。

地球の軌道にのるゆめ
1900年代初め、当時、学校の先生だったロシア人のコンスタンチン・ツィオルコフスキーは、「ロケット」という機械を使うことで、地球の重力からのがれ、地球の軌道にのれると考えついた。この軌道とは、地球の周りをぐるぐると回り続ける「終りのない落下」の道すじなんだ。1920年代になると、アメリカ人のエンジニア、ロバート・ゴダードが、姿勢や方向を調節できるロケットを初めてつくり、「ロケット」は現実のものとなった。そして、第2次世界大戦(1939~1945年)には、世界初の大型長距離ロケット、V-2が現れた。もともとミサイル兵器として設計されたものだったが、人間がつくったものとして、世界で初めて「宇宙」という、地上から高さ100キロメートルより上の空間にとどいたんだ。

宇宙開発競争
1950年代の「冷戦」は、2つの世界超大国、アメリカとソ連(現在のロシアとその近くの国々)の力くらべだった。2つの国がくり広げた「宇宙開発競争」で、ソ連は3つの大きな「世界初」を成しとげた。人工衛星、人間、そして宇宙ステーションを、それぞれ初めて地球の軌道にのせたんだ。アメリカはもっと長い期間をかけた目標に向かって進み、これまでで最も力のあるロケット、サターン5型ロケットを開発した。このロケットは、世界で初めて人類を別の天体に送りとどけた——1969年、アポロ11号の月面着陸だ。

土星着陸
2004年、打ち上げから7年たって、宇宙探査機カッシーニ・ホイヘンスが土星にたどりついた。着陸機ホイヘンスは土星を回る周回機カッシーニから分かれ、土星の巨大な月、タイタンヘパラシュートを使っておりていった。この着陸までの動きは自動でおこなわれたが、何も問題なくうまくいったんだ。

宇宙は大にぎわい
今の時代、国際宇宙ステーションへ行くことがニュースになる。でも、宇宙探査機はもっとずっと遠くまで出かけているんだ。太陽を回るすべての惑星や、その惑星を回る衛星、または小惑星やすい星など、もっと小さな天体にも行っている。探査機が発見したことは、宇宙がいつどのように始まったかを知る手がかりになっているんだ。そして、わたしたちの毎日の生活にずっと身近でもっと役に立っているのが、地球を回っている何百もの人工衛星だ。テレビ中継や、電話やコンピューターの通信ができるようにしているのも人工衛星だし、天気の予想や地球温暖化の見はり、またスパイ活動にも使われているんだ。

スティーブ パーカー (著), 上原 昌子 (翻訳)
出版社 : ゆまに書房 (2010/5/1) 、出典:出版社HP

ロケットの科学 改訂版 創成期の仕組みから最新の民間技術まで、宇宙と人類の60年史 (サイエンス・アイ新書)

世界のロケットを解説

開発の歴史と最前線を追いながら、写真やイラストをふんだんに使い、世界と日本のロケット50種超を解説しています。読むだけでも面白いが、辞典のように引く本としても重宝します。初学者にもおすすめの一冊です。

はじめに

本書は2013年4月に出版されたサイエンス・アイ新書『ロケットの科学』を改訂し、大幅に加筆修正したものです。『ロケットの科学』ではロケットを生産国別に分類しましたが、今回は開発された年の古い順に並べてみました。このように並べてみると、ロケット開発国が激しく競い合う様子がよくわかります。

また、当時と現在で大きく異なるのは、ロケット開発という膨大な費用を必要とする事業に民間企業が参加し始めていることです。インターネットで現金決済を行うサービス「PayPal」を開発したイーロン・マスク氏を筆頭に、IT事業で巨万の富を得た事業家たちが宇宙開発に強い関心を示し、これまでは国家的な事業であったロケット打ち上げや人工衛星による宇宙開発で、大きな役割を果たそうとしています。

そのような大きな潮流の変化のなかで、これまでの世界のロケット開発の歴史を概観し、未来を展望することは有意義なことだと思います。

ロケットの歴史は大変古いものです。歴史に初めてロケットが登場したのは、10世紀ごろであろうと思われます。そのころ中国で火薬が発明され、爆発的な燃焼をする火薬を筒に詰め、弓矢に取りつけて使用したのです。それがロケットの始まりで、火箭と呼ばれました。それを兵器として積極的に使用したのがモンゴルでした。12世紀に中国を征服したモンゴルは、火箭をもってユーラシア大陸を西へと版図を広げていきました。モンゴルは、13世紀に日本に攻めかけた元寇のときにも火箭を使用したようですが、火薬の威力に驚き、それを積極的に取り入れようとしたのは欧州の人々でした。

欧州では、兵器への火薬の使用にさまざまな工夫を凝らして大型化が図られました。また、容器を金属製にするなど、堅固化も進んでいったため、積極的に使われる兵器になりましたが、そのころのロケットには決定的な弱点がありました。ロケットの軌道を制御できないため、目標に向かって正確に飛ばすことができないのです。そのため、その飛翔音や爆発音で敵を威嚇するだけの兵器にすぎず、大砲の性能が向上して命中精度が高まると、やがてロケットは忘れられていきました。

そのロケットを、現在私たちがイメージするようなものにしたのは、ロシアの科学者コンスタンチン・ツィオルコフスキー(1857~1935年)です。「宇宙開発の父」と呼ばれるツィオルコフスキーは、ロケットで宇宙に行けることを計算で示しました。また、多段式ロケットや人工衛星についても卓越したアイデアを提案し、それに刺激されるように、欧州やアメリカでもロケット研究が始まりました。

宇宙を目指すロケットたち(写真:ESA/D.Ducros)

なかでも積極的に活動を始めたのが「ドイツ宇宙旅行協会」でした。たんに民間のロケット愛好家の集まりでしかありませんでしたが、ロケット開発費を捻出するためドイツ軍と接触し、さまざまな便宜を受けるのと引き換えに、兵器開発に協力する道へ進んでいくことになります。その是非をめぐって協会は解散することになりますが、軍人となり積極的にロケット開発に関わっていったのが、第二次世界大戦後アメリカに渡って、ロケット開発におおいにその手腕を発揮したヴェルナー・フォン・ブラウン(1912~1977年)です。フォン・ブラウンがドイツで開発したV2ロケットこそ、現代ロケットの礎となったロケットでした。

その後の成果は本書をお読みいただくとして、世界の宇宙開発の現状はどうなっているのかを簡単に見ておきましょう。

現在、世界の宇宙開発の勢力図は大きく描き換えられようとしているように見受けられます。アメリカよりも早く宇宙開発に成功したロシアは、絶対的な信頼を勝ち得ていたソユーズが打ち上げに失敗するなど、最近その勢いが揺らいでいるように見えます。経済的な苦境が原因なのかもしれませんが、ロシアに代わって台頭著しいのが中国とインドです。完全に独自路線を歩む中国は、月へ人間を送り込むことさえも射程にとらえたといえるかもしれません。

なお、本書で取り上げたロケット以外にも、宇宙へ行ったロケットがあります。中東で激しく覇を競うイスラエルとイラン両国はロケットの打ち上げに成功しています。しかし、どちらもその目的が軍事的なものであることがはっきりしているので、本書では紹介していません。

また、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)も、ロケットの打ち上げに成功していますが、その真の目的は、核兵器と合わせてミサイル兵器として国際社会を恫喝しようとするものと考えられ、とても平和目的でのロケット開発とは思えないので対象から外しました。また、韓国もエンジン試験用ロケットを打ち上げて成功しましたが、国産化を進めている途中の段階だと見られるため、言及を避けました。

使いようによってはきわめて危険なものとなるロケットですが、私たちの生活の向上に役立つものであってほしいと切に願うものです。

2019年1月 谷合 稔

CONTENTS

はじめに

序章 ロケットの飛ぶ仕組み
ロケットの飛ぶ原理
2種類のロケット
ロケットの性能を決める4つの指標
ロケットの構造と設計
ロケットの制御と誘導

第1章 戦中や戦後のロケット
V2ロケット(ナチス・ドイツ・1942年)
レッドストーン(アメリカ・1952年)
R-7(ソ連(現ロシア)・1956年)
ジュノーI/II(アメリカ・1958年)
ディアマン(フランス・1965年)
ブラック・アロー(イギリス・1969年)

第2章 日本の草創期
ペンシルロケット(日本・1955年)
ベビーロケット(日本・1955年)
カッパロケット(日本・1958年)
ラムダロケット(日本・1963年)
ミューロケット(日本・1974年)
M-V(日本・1997年)
N-I/II(日本・1975年/1981年)
H-I(日本・1986年)
人工衛星の主な軌道

第3章 成熟期のロケット
アトラス(アメリカ・1959年)
タイタンI/ⅡGLV(アメリカ・1959/1964年)
デルタ(アメリカ・1960年)
モルニヤ(ソ連およびロシア・1960年)
コスモス(ソ連およびロシア・1961年)
タイタンⅢ(アメリカ・1964年)
プロトン(ソ連およびロシア・1965年)
ソユーズ(ソ連およびロシア・1966年)
N-1(ソ連(現ロシア)・1969年)
長征1~4号(中国・1970年)
アリアン1~4(欧州・1979年)
SLV/ASLV(インド・1980年)
ゼニット(ウクライナおよびロシア・1985年)
タイタン23G(アメリカ・1986年)
エネルギア(ソ連(現ロシア)・1987年)
タイタンⅣ(アメリカ・1989年)
デルタⅡ/Ⅲ(アメリカ・1989年)
アトラスI/Ⅱ/Ⅲ(アメリカ・1990年)
ロコット(ロシア・1990年)
PSLV/GSLV(インド・1993年/2001年)
H-Ⅱ/ⅡA(日本・1994年/2001年)
アリアン5(欧州・1998年)
アトラスV(アメリカ・2002年)
デルタⅣ(アメリカ・2002年)
H-ⅡB(日本・2009年)
ヴェガ(欧州・2012年)
イプシロン(日本・2013年)
アンタレス(アメリカ・2013年)
アンガラ(ロシア・2014年)
長征5~7号(中国・2015年)

第4章 時代をつくったロケット
サターンI/IB(アメリカ・1964年/1966年)
サターンV(アメリカ・1967年)
スペースシャトル(アメリカ・1981年)

第5章 民間のロケット
ペガサス(アメリカ・1990年)
CAMUI(日本・2002年)
スペースシップワン/ツー(アメリカ・2004年)
ファルコン1(アメリカ・2006年)
ファルコン9(アメリカ・2010年)
ニューシェパード(アメリカ・2015年)
MOMO(日本・2017年)
ファルコンヘビー(アメリカ・2018年)
ニューグレン(アメリカ・2020年予定)

索引
参考文献/参考Webサイト

*( )内の年代は初回打ち上げの年です。

ロケットを理解するための10のポイント

ロケットの構造、設計を体系的に学ぶ

ロケットの構造や,開発するまでの流れを体系的に学べます。長年開発に携わった第一人者だからこそ語れる開発現場のリアルも満載です。また,JAXAのエンジニアとしての知見も盛りだくさんで、宇宙やロケットに興味のあるエンジニアや学生、将来ロケット開発の道を目指したいと思っている方は必見です。

青木 宏 (著)
出版社 : 森北出版 (2017/5/20) 、出典:出版社HP

まえがき

なぜいま,ロケットなのか?
この原稿に取り組みながら,折しもH-ⅡAロケット30号機打上げ成功のニュースが伝わってきました.連続成功で性能も安定し,新聞紙面に大きく取り上げられることも少なくなりました.しかし,何回成功しても開発に携わった多くの当事者に安堵はありません.つぎの1機がうまくいくとは,だれも約束できないからです.
そんな危うげで,はかなげで,健気で,同時におそろしく高価ではあるものの,もとをただせばただの機械「ロケット」がどんな宿命のもとに生まれつき,たった1回はたらいた挙句にどうして海の藻屑となる運命なのか,振り返ってみたいと思います.実際,製品として完成したはずのロケットがなぜいまだに失敗するのか,その素性・因縁をうまく説明しきれず,苛まれる場面も少なくなかったのです.
できるだけ専門知識や数式に頼らずに,どうしたらその本質を直感として伝えられるか,本書はこんな課題・動機から生まれました.

でも,なぜそこまで遡らねばならないのか?
製品の生い立ちまで知らずとも,世の中の機械は,どこかの工場で完成し,マニュアルさえあればなにげに動かすことができます.実際,自動車もコンピュータも精緻化・高性能化の一途をたどり,同時にブラックボックス化が進んでいます.教習所で始業点検などと習いはしても,ボンネットを自分で開けたことのあるユーザは少数派かもしれません.むしろ,変に触ると保証が受けられなくなるおそれさえあります.
実は,わが国の打上げロケットにもそんな時代がありました.技術導入路線に方向転換して,アメリカのデルタロケットから派生したNロケットを打ち上げていた当時,国際契約上,分解の許されない装置・部品がたくさんありました.故障が起こっても,自前で調べて手を打つことはできなかったのです.推進薬注入バルブが動かず,打上げを断念して,原因を調べようとバルブのボルトを緩めたところで制止され,手つかずのまま製造国に送り返さねばならなかった苦い記憶が蘇ってきます.いまとなっては笑い話ですが,破壊工作ではないかと疑い,本気で犯人捜しまでしました.
そんな状態に飽き足らず,その後,海外導入技術を応用しつつも,自主開発・国産化を押し進め,世界水準に肩を並べるところまでたどり着きました.しかし,自前で究極のロケットを完成させたというおごりもあり,その後の発展は遅々として足踏み状態が続いてきたようにも思えます.
振り返って,H-Ⅰロケット,H-Ⅱロケットの完成には,それぞれ10年間近くを要しました.当時駆け出し気鋭のエンジニアの多くも引退の時期を迎えようとしています.またその間,航空宇宙の先端システムも巨大化の一途をたどってきました.その結果,システムの全貌を見通し,掌握することが難しくなっています.細かく分野別に専門化し,それぞれに最高性能の要素部品を組み上げたとしても,理にかなった最適なシステムが完成するわけではありません.とくに,ロケットエンジンに注目すると,一部の過剰設計はどこかに限界設計を強いる原因にもなりがちで,個々の部品に目を配りつつも,全システムを見通して余裕とリスクをきわどく配分することが必須となっています.当然ながら,木も森も,あるいは山までも,すべてに目が行き届かねば,ほころびや弱点ができてしまい,いつか手痛い失敗の原因となるのです.そこで本書では,ロケットの個別技術ではなく,全体を俯瞰的にとらえて説明を試みます.
ロケットばかりではありませんが,現在の形に到達したその生い立ちや素性,因縁を思い起こせば,その過程には,累々と試行錯誤や葛藤が埋もれています.その判断の当否,また時代の制約や限界などを見抜き,超越して初めて,次世代に向かう進化・飛躍も生まれるはず,と思えるのです.

本書では,開発当事者が躓きながらも歩んできた葛藤と試行錯誤の顛末を反芻し,ロケットの基本原理や設計開発のあらましを10章に整理を試みました.
第1部では,ロケットのどこが身の回りの機械類と異なるのかを知ってもらうために,基本となるロケットの力学,ロケット本体の構造や打上げの仕組み,ロケット開発プロジェクトの概要の3点について記述しています.
第2部では,将来宇宙輸送分野を志すかもしれない若手読者向けに,とくに液体ロケットエンジンの設計について,深く踏み込んでいます.これは,筆者の専門であることに負う部分も大きいのですが,それ以上に,エンジンや推進系の出来不出来がロケットの運命を左右するからにほかなりません.ここで,わが国の主力ロケットの断面図を示します(図0).

全備質量285トン(衛星含まず)のロケットも,液体推進薬充填前には167トン,さらに固体ロケットブースタ2本を取り外すと,わずか32トンしかありません.その容積の大部分は,アルミ飲料缶にも例えられる推進薬タンクですが,図のとおり,向こうが透けて見えるほどほとんど「空洞」で,中身の詰まった部分はエンジンや搭載電子機器などの一部に過ぎません.実際,打上げに失敗して大損害を発生する.その原因の6~7割は,エンジンや推進系のトラブルによるものです.そのため,本書の第2部ではエンジン設計について正面からの説明を試みています.少々難しい話題も含みますが,ロケットの抱える危うさを理解するためには避けて通れなかったのです.

さて,わが国の主力ロケットは,すでに地球低軌道,静止軌道,月軌道に到達し,その気になれば,太陽系内に人間の五感に替わる探査機を送り込むことも可能です.しかし,その先に目を転ずれば,目前の夜空にさざめく恒星の一つにさえ,とても手の届かないのが実情です.新規ロケットの開発,たった1サイクルにさえ,ただならぬ出費と10年近くもの年月がかかることを考えると,世代を超えてたゆまぬ意志を継承できなければ,宇宙へ向かう新しいチケットを得られないことは明白です.いつか,11章から先の展開が追記されることを期待しつつ,最初の章に取り掛かります.

本書は,わが国の打上げロケット・エンジンの開発実務に携わった経験をもとに,10年にわたって担当した東京大学工学部航空宇宙工学科「ロケットエンジンの構造と設計」講義録に基づき,そのエッセンスを抜粋したものです.

2017年1月
著者

青木 宏 (著)
出版社 : 森北出版 (2017/5/20) 、出典:出版社HP

目次

第1部 なぜ,ロケットだけが宇宙に届くのか?―その原理と条件―

【宇宙を天翔けるための基本―ロケット力学入門―】
第1章 宇宙空間で推進力を得るには? ―自分の一部をちぎって投げる―
1.1 高速噴射が命―身を削るにもほどがある―
1.2 なにを噴射すればよいか? ―実は,なんでもよい―
1.3 宇宙エンジンの公称燃費―比推力Isp―
コラム1 母機を放出して減速する:旧ソ連ルナ9号

第2章 宇宙軌道に到達するには? ―極限までの軽量化―
2.1 地球低軌道(LEO)にたどり着くには? ―どうにもならぬ地球のご都合―
2.2 ロケットはどこまで増速できるか? ―推進薬以外は積まないのが一番―
2.3 エネルギー最小の軌道をたどる―ホーマン軌道―
2.4 地球静止軌道(GEO)を越えて―ゴールは地球軌道とは限らない―
2.5 輸送エネルギーマップから見えること―井戸の底の人類―
コラム2 手塚治虫「火の鳥」の暗示

【ロケットの基本―構造と打上げ―】
第3章 ロケットの仕組み―鍵を握るのはロケットエンジン―
3.1 ロケットの全体構造
3.2 エンジンの構造と原理
3.3 水素の特徴―もっていくには液化が必須―
3.4 水素エンジンの技術課題―結局,自分(水素)で冷やすしかない―
3.5 世界初の水素エンジンRL10―夢の多芸エンジン―
3.6 水素エンジンの発展―蒸気エンジン全盛に至る―
3.7 わが国の水素エンジンの創始―なぜ,水素を選んだか―

第4章 ロケットを打ち上げる―ロケットは水平線に沈む―
4.1 打上げ軌道の設計―東に打つと,465m/s(@赤道)得をする―
4.2 打上げロケットの構成―GFはロケットの総合効率―
4.3 航法・誘導・制御―自動車ナビでも活躍―
4.4 打上げの実際―時速28,000kmまで15分で加速―
4.5 ロケットはどのように進化するか? ―いつまでも使い捨てのはずはない―

【ロケットおよびロケットエンジンを完成させるには? ―プロジェクト推進入門―】
第5章 ロケットエンジン開発計画とその実際―ぶれることは許されない―
5.1 プロジェクトとはなにか? ―新しい価値を創造する―
5.2 開発の手順・ステップ―近道・定型はないけれど…―
5.3 開発体制―体制・組織も開発対象―
5.4 LE-5エンジン開発の事例―液体水素ことはじめ―
5.5 LE-7エンジン開発の事例―世界の第一線をめざして―

第6章 どんなトラブルが待っていたか? ―予想したトラブルは起こらない―
6.1 故障・トラブルにどう取り組むか? ―必ず原因がある―
6.2 二重三重の安全対策―実験設備の屋根は吹き飛ぶようにつくる―
6.3 故障・事故事例―液体水素温度では,酸素も窒素も凍りつく―
6.4 H-Ⅱ5号機打上げ失敗―燃焼ガスが壁隙間を貫通―
6.5 H-Ⅱ8号機打上げ失敗―LE-7の心不全が原因―

第2部 新しいロケットエンジンを設計する―ロケットエンジン設計入門―

第7章 ロケットのどこが壊れるのか?
7.1 事故の洗礼―新入職員の驚愕―
7.2 エンジン全損に至る―日米,同じ苦難をたどる―
7.3 エンジンの技術相場―エンジン質量と発生馬力の関係―
コラム3 ロケットエンジンのパワーの換算方法

第8章 液体ロケットエンジンのシステムを組み上げる―目標は10年先の新製品―
8.1 mission・機体全体からの設計要求―成否を握るエンジン性能―
8.2 推力と比推力―規模と質の関係―
8.3 推進薬および混合比の選定―骨格は,とどのつまり酸素と水素―
8.4 エンジンサイクルの選定―タービン駆動パワーをどこからひねり出すか?―
コラム4 あらかじめ推進薬を混合しておく,その試みに彼は殉じた
8.5 燃焼圧力の選定―欲張ると,ターボポンプが追いつかない―
8.6 ノズル膨張比と剥離限界―性能を欲張ると,本当に潰される―
8.7 ターボポンプ吸込み性能―文字どおり,ロケットの軽重を左右する―
8.8 統合化・最適設計―こちらを立てると,あちらが立たず―

第9章 燃焼器を設計する―推進力の源泉―
9.1 噴射器―酸素と水素がご対面―
9.2 燃焼室―過大応力で,裂けるのは時間の問題―
9.3 膨張ノズル―別名ノズルスカート,まさに芸術品―
9.4 理論燃焼特性―いまや,理論解析ツールはWEB上に公開されている―
コラム5 目に見えるノズルの性能

第10章 ターボポンプを設計する―ロケットエンジンの心臓―
10.1 ポンプ(昇圧装置)―回転流れを圧力に変える変換器―
10.2 タービン―高さ数cmの翼1枚が,数百馬力を発生する―
10.3 燃料(水素)ターボポンプ―室温で回すと,遠心破壊する―
10.4 酸素ターボポンプ―発火すると,設備まで燃え尽きる―
10.5 旧ソ連製ターボポンプの特徴―軽量よりも簡潔さ?―
コラム6 ロケットエンジンサイクルの見分け方

終の章 宇宙輸送の将来―大航海時代に向かって―
コラム7 ボイジャー探査機の行方

あとがき
参考文献
索引

青木 宏 (著)
出版社 : 森北出版 (2017/5/20) 、出典:出版社HP

ロケットエンジン

ロケット推進の教科書

ロケットエンジン初学者にとって、とても分かりやすく書かれています。液体推進薬によるもの、固体推進剤によるもの、電気エネルギーによるもののすべてを記述してあります。宇宙推進の原理とエンジン設計の基本を学びたい方、初学者にとって良書です。

鈴木 弘一 (著) , 中村 佳朗 (監修)
出版社 : 森北出版 (2004/4/1) 、出典:出版社HP

監修者序

本書は,鈴木弘一先生が永年勤務され活躍された石川島播磨重工(株)での仕事を通じて経験修得された技術的な事柄の集大成であり,ロケットの特徴が大変詳細にかつ要点を押さえたかたちで書かれている.その結果,大変読みやすく,学部学生や大学院学生が勉強するのには最適な教科書といえる.また,航空機ではライト兄弟の初飛行から,ロケットではツィオルコフスキーの多段式ロケット理論からほぼ100年が経過した今日,本書が出版されたことは喜ばしいかぎりである.

ロケットの打上げには失敗がつきまとうが,2003年10月の中国有人宇宙飛行の成功,2004年1月の米国探査機の火星表面への着陸成功,また月開発計画に関する米国ブッシュ大統領のNASAでの演説など,宇宙への関心が最近とみに高まっており,われわれが近々どこかで一気に宇宙へ進出する時代が到来する可能性を示唆している.宇宙に行くためにはそのための乗り物が必要で,それがロケットである.

本書では,ロケットエンジンに焦点を絞り,化学ロケット(液体ロケット,固体ロケット)と電気推進ロケットが詳細にかつ要領よく述べられている.化学ロケットは伝統的なロケットで,大型の荷物(ペイロード)を打上げるのには必須であり,一方,電気推進に関しては,2003年5月に打上げられた宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機ミューゼスC(はやぶさ)は,宇宙推進として画期的なイオンエンジンを使用している.今後,電気推進の開発研究はますます活発化するものと思われる.

以上述べたように,本書を読めばロケットに関する大筋が把握できるので,学生や技術者のみならずロケットに興味のある人はぜひ一読されることをお勧めする.

2004年3月
名古屋大学大学院工学研究科
教授 中村佳朗

鈴木 弘一 (著) , 中村 佳朗 (監修)
出版社 : 森北出版 (2004/4/1) 、出典:出版社HP

はしがき

本書は,「宇宙推進工学」を大学で学ぶための教科書あるいは参考書として記述した.大学のどの学年で学ぶかによりいつも問題になるのは,専門基礎科目との兼ね合いである.圧縮性流体力学と熱力学の理解なしに,ロケットのノズル内の流れを理解するのは困難であるが,多くの大学では圧縮性流体力学にたどりつくまえにロケット工学関係の講義がはじまってしまう.このロケットのノズル内の流れはロケット推進原理の基本であるため,講義の初期の段階で行うのが普通である.したがって,ここでは,推進原理に入るまえに簡単な圧縮性流体力学の議論を行っているが,詳しくは流体力学の講義で学んでいたがきたい.

本書はいわゆる「ロケット」そのものの教科書ではない.ロケット推進の教科書として記述している.したがって,ロケット機体の構造やシステムに関しては,別途学んでもらうこととして,ここではロケットを推進させる機構いわゆるロケットエンジンについて詳しく述べている.そのロケットエンジンも液体推進薬によるもの,固体推進剤によるもの,電気エネルギーによるものとすべて記述している.読者はこれにより宇宙推進の原理を把握できるとともに,エンジン設計の基本を学ぶことができるものと信じる.

宇宙推進の周辺領域は,本学では以下のような講義内容になっている.ロケット本体の機構および世界のロケットの現状や人工衛星の軌道などについては「宇宙工学概論」で与えており,ロケットエンジンや機体の伝熱問題は「熱工学」で履修することができる.

宇宙時代を迎えて,いままでと異なる学問は何かと考えてみる.宇宙に行ってからの超真空,極低温,無重力のうち前の2項目は,いままでの地上における学問分野でカバーすることが可能である.無重力と宇宙に到達する手段,すなわちロケット推進のみがいままでにない学問分野ということができる.

本書でとりあげるとくに地表からの打ち上げに使用されるロケットエンジンは極限の容積,重さにより大推力を発生させる原動機であり,その単位容積当たりの熱負荷,燃焼壁の熱流束,タービンおよびポンプの周速は,現在の技術の最高レベルであり,それゆえに学生にとっては学問的に大変面白い分野であると考える.たとえ卒業後,ロケットエンジン関係の職業に就くことができなくても,知的訓練としては大変効果的な学問分野である.しっかりと勉強すれば,将来必ず読者の血肉となるものと信じる.

第1章で,近代ロケットの始まりとなったV2ロケットとその後の歴史的発展を述べたのち,第2章では,各種ロケットの概説を行いつつその分類について述べる.第3章では,ロケット推進の原理を述べ,あわせて基本パラメータである比推力,質量比などに触れている.第4章では,推力発生のノズル理論について詳説した.なお本章の前段では,理解を助けるため圧縮性流体力学について概説を与えている.以上の準備の後,第5章で液体推進剤の性能,第6章で液体ロケットエンジンシステム,第7章で液体ロケットエンジンの設計について述べる.ここまでで液体ロケットについては一応終了であるが,液体ロケットのみの履修を行う場合には,これに第10章の飛行性能を加えれば十分と考える.

第8章,第9章は固体ロケット関連で,第8章では,固体ロケットの燃焼速度およびロケットモータの構造について,第9章では,固体ロケット推進剤について述べる.固体ロケットのみ履修する場合には,第1章~4章までと第8章~10章を学ぶことを勧める.第10章では,ロケットの飛行解析について概要を述べた.概要ながらエクセルなどのソフトの助けを借りると相当な計算ができることを学んでいただきたい,第11章では,電気推進について触れている.電気推進はこの一項目で一冊の教科書があってもよいくらい発展中の学問であるが,ここではその基本原理を与えている.内容もDCアークジェット,イオンロケット,MPDスラスタと少し欲張っている.とくに本学で実験装置をもっているDCアークジェットについては多少詳しく述べている.

本書の執筆にあたり,名古屋大学中村佳朗先生の数々の助言と懇切なる監修を得ることができた,わが国航空宇宙工業の中心地で長く教鞭をとられている先生のご指導をいただいたことは,著者の望外の喜びであり,深く感謝申しあげます.

浅学非才を省みず,必要に迫られてこのような教科書をつくったが,内容に誤解や筆不足があるかもしれない,読者諸兄からご一報いただければ幸いである.

2004年 早春
鈴木弘一

鈴木 弘一 (著) , 中村 佳朗 (監修)
出版社 : 森北出版 (2004/4/1) 、出典:出版社HP

目次

第1章 ロケットの歴史
1.1 世界のロケット
1.2 日本のロケット
参考文献

第2章 ロケットの分類

第3章 ロケット推進の原理
3.1 ロケットの推力
3.2 推力
3.3 特性排気速度c*
3.4 質量比

第4章 ノズル理論
4.1 圧縮性流体力学
(1) 熱と仕事
(2) 内部エネルギー
(3) 全熱エネルギー(エンタルビー)
(4) 比熱
(5) 状態方程式
(6) 等温変化
(7) 断熱変化
(8) エネルギー方程式
(9) 全温,静温
(10) 音速
(11) マッハ数
(12) 非粘性ガスの管内の流れ
(13) ファノ(Fanno)方程式(単位面積当たりの流量)
(14) 縮小管
(15) 縮小拡大管(ラバールノズル)
4.2 ノズルを通る流れ
(1) 断面積とマッハ数
(2) ノズル流出速度
(3) 推力および推力係数
(4) 特性排気速度(c*)
4.3 高度補償型ノズル

第5章 液体ロケット推進薬
5.1 液体推進薬の特性
(1) 経済性
(2) 性能
(3) 腐食性
(4) 爆発
(5) 自然発火
(6) 比重
(7) 蒸気圧
5.2 液体推進薬各論
(1) 液体酸素(O2)
(2) 過酸化水素(H2O2)
(3) 硝酸(HNO3)
(4) 四酸化窒素(N2O3)
(5) 液体水素
(6) 炭化水素
(7) ヒドラジン(N2H4)
5.3 推進薬性能
参考文献

第6章 液体ロケットシステム
6.1 ガス加圧供給サイクル
6.2 ターボポンプ供給サイクル
(1) ガス発生器サイクル(Gas Generator Cycle)
(2) タップオフ・サイクル(tap-off cycle)
(3) クーラント・ブリード・サイクル(coolant bleed cycle)
(4) エキスパンダ・サイクル(expander cycle)
(5) 二段燃焼サイクル(staged combustion cycle)

第7章 液体ロケットエンジン設計
7.1 全体システム
(1) エンジン流量
(2) 圧力のバランス
(3) 動力のバランス
7.2 推力室の設計
(1) 燃焼室およびノズルの設計
7.3 冷却
(1) 再生冷却
(2) フィルム冷却
(3) アブレーション冷却
(4) 放射冷却
7.4 噴射器の設計
7.5 ターボポンプの設計
参考文献

第8章 固体ロケット
8.1 固体推進剤の燃焼速度
(1) 燃焼速度と圧力の関係
(2) 燃焼速度と温度の関係
(3) 侵食による燃焼速度の増加
(4) その他の原因による燃焼速度の増大
8.2 基本性能関係式
8.3 推進剤グレイン形状
8.4 ロケットモータの構造
8.5 ノズルの構造
8.6 ノズル・ジンバリング機構
参考文献

第9章 固体推進剤
9.1 固体推進剤が備えるべき特性
9.2 固体推進剤の構成
9.3 ダブルベース推進剤
9.4 コンポジット推進剤
9.5 固体推進剤の組成と性能
9.6 機械的特性
9.7 固体推進剤の製造法
参考文献

第10章 飛行性能
10.1 重力および空気抵抗のない場合の基礎式
10.2 重力および空気抵抗の影響
10.3 運動の基礎式
10.4 基礎式の積分
10.5 多段ロケット
参考文献

第11章 電気推進
11.1 電気推進の分類
(1) 電気推進のミッション
11.2 電気推進の基本的パラメータ
11.3 DCアークジェット
(1) 推力の測定
(2) DCアークジェットの性能
11.4 イオンロケット
(1) 一次元の基本式
(2) イオンスラスタの分類
(3) 電子衝撃型スラスタ
(4) 接触電離型
(5) イオンビームの中性化
(6) 加速・減速のコンセプト
(7) イオンロケットの性能
(8) わが国の研究の現状
11.5 MPDスラスター
(1) MPD加速器内の電磁ガスダイナミクス・モデル
(2) わが国の研究例
(3) 軌道上での推力測定
参考文献

索引

鈴木 弘一 (著) , 中村 佳朗 (監修)
出版社 : 森北出版 (2004/4/1) 、出典:出版社HP

宇宙ロケット工学入門

ロケット工学の入門書

高校卒業程度の数学と物理の知識を有している読者を念頭に、大学の1~2年向けの教科書向けとして書かれています。実話に基づく挿話も多く興味深く、重さと質量を正しく書き分けていることも好ましいです。これからのロケット開発者は必ずこの本に目を通すことになるだろうと言える本です。

宮澤 政文 (著)
出版社 : 朝倉書店 (2016/11/30) 、出典:出版社HP

はじめに

気球に乗って地上からゆっくりと高空に上昇していくときの様子を想像してみよう,空気はしだいに薄くなり,気圧が低くなり,やがて8,000m級のヒマラヤ山脈を超える高度になると,人は酸素吸入器のお世話にならなければ生きることができない.現在,国際線の大型旅客機は高度1万m前後の高空を飛んでいるが,さらに上昇すると空気は一層薄くなり,飛行機は飛ぶことができなくなる.気球も上昇できない,さらに,気象現象も見られなくなる.

天空あるいは空は我々の頭上に無限に広がっているが,そのうち,どこから「宇宙空間」が始まるのであろうか?その境界については,半世紀を超える長い間,国連において科学および国際法の双方の側面から議論されてきたが,未だに決着はついていない,天文学でいう何万光年先の宇宙のことはさておき,地球大気圏外の宇宙空間(Outer Space)のことを略してスペース(Space)と呼んでいるが,この地球周辺の宇宙空間だって相当に広大である.

たとえば,光の速さで静止衛星(注1.2,p.19参照)まで0.1秒強,月まで1秒余り,太陽までは500秒かかる.太陽系惑星の最も外側にある海王星の軌道直径を光の速さで飛行するのに8時間余りかかる.アメリカ航空宇宙局(NASA)のアポロ計画により,人類が初めて月に降り立ったのは1969年7月のことである.その後1972年までの間に合計27名の宇宙飛行士が月の近くまで到達し,うち12名が月面着陸を果たして無事生還している.その後は誰一人として月面に着陸した者はいない.日本では最近,月周回衛星「かぐや」を送って月表面の観測を続けたことは我々の記憶に新しい,光の速さで1秒強のところにある月にしてこのような状態であり,宇宙空間はとてつもなく大きいのである.

我々はほぼ半世紀にわたって,この広大な宇宙空間に人工衛星・探査機・飛行士を送り,多彩な宇宙活動を行ってきたが,それは「宇宙ロケット」の出現によって可能になった.その進化と成熟は未知の領域への道をさらに切り拓いていくことになろう.

ロケットは,広大な宇宙空間への唯一の輸送手段であり,宇宙活動の出発点である.宇宙への乗り物といってもよい.しかし,自動車,電車,船舶,飛行機など,我々の日常生活に欠くことのできない輸送機関と比べてみると,乗り物としては変り種であることがわかる.

アトラス,アリアン,デルタ,H-2A,ソユーズ,長征,それに最近退役したスペースシャトルなどの宇宙ロケットを打ち上げるとき,第1段ロケットのエンジンは地上で点火されるが,このとき周囲の空気はまったく使われない.ロケットは動力源である酸化剤と燃料(合わせて推進薬と呼ぶ)を自ら携行し,その燃焼ガスを後方に噴出して推進力を得るので,空気のない宇宙空間をも飛行することができる.一方,ジェット旅客機は空気を取り入れて推進力を得ているため,月世界旅行をしようと考えても,それはできない相談である.

このような宇宙ロケットに興味をもち,将来,ロケット工学や広く宇宙科学を学びたいと希望する若者は多い.一方,宇宙ロケットは,ソフトウェアおよびハードウェアを含めて,多岐にわたる分野の科学技術を有機的に組み立てることによって成り立つシステムである.このような高度で複雑なシステムを正確に理解するためには,高等数学をはじめ多くの専門分野の知識と訓練が必要になる.当然,大学1,2年レベルの素養だけでは不十分である.

ロケット工学をその基礎から学びたいと希求する学生・初心者にとって,何よりもまず,ロケットのシステムおよびその運動の物理現象を正しく理解することが必須であり,その上に立ってさらに数理解析に進むことが求められる.現在,この分野ではそれぞれ特色のあるテキストが数多く出版され,学生に利用されているが,総じて,数理解析に主眼を置いたもの,あるいは,特定分野に限られた専門書が多く,宇宙ロケットの全体像をわかりやすく解説した入門書は少ないのが現状である.

筆者は過去,わが国の宇宙開発の揺籃期から成長期にわたり実用ロケットの開発・運用や国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)計画初期の実務に携わってきた.ロケットでいえば,技術導入型ロケットから大型国産H-2ロケットの開発までである.その過程で,ロケット発射時のエンジン点火失敗,開発試験におけるエンジン爆発事故(複数回),基礎試験中の水素爆発事故など,多くのトラブルを経験してきた.こうした不具合に関する記者発表で冷や汗をかいたこともある.後に,大学教育にも携わることになったが,当然のことながら,「ロケットの科学と技術」のすべてに精通している訳ではない.それにもかかわらず,経験を通して得た宇宙ロケットの実像を,不完全ではあっても1つの視点から俯瞰し,独断と偏見を含めて整理し直すことも意義あることであろう,同時にそれは,ロケット工学入門書の1つとしていささかなりとも将来有望な若者達の役に立つのではないか,と考えた.

宇宙ロケットとは何か,それはどのように飛行し,何をすることができるのか.機体はどのように構成され,各システムはどのような役割を果たすのか.ロケット工学の基礎となる原理原則(科学の側面)と主要システムの作動メカニズム(技術の側面)について,難しい数学に頼らずに,その基本的な物理現象をできる限りていねいに記述することによって近代宇宙ロケットの全体像を描き出そうと思いついたしだいである.

本書は入門書である.上記の趣旨に沿って,高校の数学と物理の基礎を習得した人を対象にしており,したがって,大学1,2年生の講義用テキストまたは参考書として妥当なレベルであると考えている.また,(科学に興味をもつ)高等学校高学年生には理解できる内容であろう.同時に,一般の方でも,宇宙開発や宇宙技術に興味をもたれる方であれば,理論の詳細は別にして,基本は理解できるものと考えている.ロケット全般のことから,さらに特定の専門分野に興味をもつ方は,巻末に記した文献を参考にして,数理解析を含め,より高度な内容の学習に進んでいただきたい,

最後に,本書の内容や構成に関して若干の注意事項を記しておきたい.
1) 本書の第4章,第6章,第8章,第10章には,やや高度な専門的内容を扱う項目があり,はじめてロケット工学に触れる方には少し難しいものと思われる.そのような場合,その部分を飛ばして先に読み進んでいただいて構わない.後に省略せずに読み直していただければ,はじめは難しく感じた内容も自然に理解できるようになるであろう.
2) 第10章は,自然の法則を体系化した古典力学(ニュートン力学)の基礎について整理したものである.そもそも,宇宙ロケットはただ強力なエンジンをつけて空高く,遠くに飛び立っていけばよいというものではなく,衛星や探査機を宇宙空間の予定軌道に正確に運搬するという役割をもっている.したがって,ロケットの科学技術を深く理解するには,ニュートン力学を正しく理解することが欠かせないのである.
3) ロケット技術からはやや離れるが,宇宙政策関係のことに言及した部分がある.筆者は過去欧米の宇宙政策の専門家とたびたび接触してきた経験から,常々,わが国の宇宙科学技術の正常な発展のためには,科学者・技術者自身,この方面の理解が必要であると同時に,宇宙政策・宇宙法の分野を充実させることが急務であると考えてきた.その考えは今も変わらない,この分野について,もう少し掘り下げたいところではあるが,それは別の機会に譲り,ここではその一端に触れたに留まる.

本書は,ロケット工学の入門書を目指したもので,その趣旨に沿って高度な科学技術分野については正確さを若干犠牲にした面もある.専門家諸氏には異論もあろうかと予想されるが,この点はご容赦願いたい.本書を通して多くの若い人達がロケットだけでなく宇宙科学および宇宙技術の基礎を理解し,さらに広く科学技術探求の道に入る手がかりをつかんでいただければ幸いである.

今回,多くの方のお世話になった.(株)ビオシード代表取締役・加藤敏彦氏からは全体の構成についての貴重な考え方を示唆していただいた.筆者の不得意分野については,かつての同僚や友人の支援を仰いだ.なかでも,旧宇宙開発事業団の同僚であった只川嗣朗,長崎守高,池田茂の諸氏から,それぞれの専門分野について非常に多くの支援とコメントをいただいた.宇宙航空研究開発機構の小林悌宇氏ほか数名の方に様々なご助言をいただいた.本書の図表作成については,筆者の静岡大学時代の教え子達,なかでも,永田靖典君(現在岡山大学工学部助教)から全面的な協力を得た.最後に,本書の実現に格段のご尽力をいただいた朝倉書店の編集部に心から御礼申し上げたい.

2016年10月
宮澤政文

参考文献および出典について
本書執筆に際して参考にした文献は巻末にまとめて示した.各章全般の参考にした文献は,章末に[1],[2],[3]のように示した.また,本文テキストの中の具体的事項や表現を参考にした文献については,該当する部分を[15-3第3章]のように記した.図表の参考・引用文献については,それぞれのタイトルの末尾に記し,また,写真については出典・提供先の組織,団体名または個人名を記した.関係者および関係機関に深甚の謝意を表します.

宮澤 政文 (著)
出版社 : 朝倉書店 (2016/11/30) 、出典:出版社HP

目次

1. ロケットの歴史概説
1.1 花火から近代ロケットの登場まで
前史/近代ロケットの黎明/近代ロケット第1号―V-2号の登場―
1.2 月への先陣争い,そしてその後
人工衛星から月へ/第2次世界大戦後の時代背景/宇宙活動の多様化とスペースシャトルの登場
1.3 各国の宇宙活動
ロシアのロケットと有人宇宙活動/ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の活躍/中国の台頭/わが国のロケット開発
1.4 宇宙ロケットの近未来―再使用ロケットの可能性―
コラム:宇宙の眼1. 宇宙空間はどこから始まるのか?

2. 宇宙ロケットの誕生
2.1 ロケットとは何か
ロケット飛翔体とロケットエンジン/ロケットの推進原理/化学ロケットの種類と用途/非化学ロケットの現状
2.2 飛行機とロケット
飛行機に作用する力/飛行機を支える揚力/ロケットに作用する力
2.3 宇宙空間への足がかり
ニュートンの人工衛星/宇宙輸送システムとしてのロケット
2.4 ミッション要求
人工衛星および宇宙探査機の軌道
2.5 宇宙ロケットに要求される機能・性能
ロケットの打上げ方位/重力と大気による速度損失/多段式構成/飛行フェーズの考え方/ロケットの道案内

3. ロケットの推進理論
3.1 ロケットの推進システム
液体ロケットと固体ロケット/ロケット推進力の発生
3.2 ロケットの推進性能
推進力と総推力/速度増加(増速度)―獲得速度―/比推力―エンジン性能―/質量比―構造性能―/打上げ性能(打上げ能力)/推進性能の比較
3.3 ノズルの働き
超音速ノズルの効用/伸び縮みする気体の性質―超音速流れの実現―/ノズルの形状/ノズル流れの実相/外気圧の影響
3.4 飛行フェーズと推進システムの選択
ブーストフェーズの推進システム/水平加速フェーズの推進システム/近未来の第1段ロケットの推進薬

4. 液体ロケットエンジン
4.1 液体ロケットとは?
再着火の機能/ロケット飛行方向の変更/ジンバルによる推力方向制御
4.2 推進薬の移送・供給
4.3 推進力の発生
噴射器/燃焼ガスの流れ―燃焼室からノズル出口までの化学反応流―/燃焼室内の化学反応―化学平衡―/ノズル内の反応流
4.4 燃焼室の冷却
再生冷却/アブレーティブ冷却/放射冷却
4.5 エンジンサイクル
開放型―ガス発生器サイクル―/閉鎖型―2段燃焼サイクルー/エンジンサイクルの比較
4.6 液体推進薬の特性
液体酸素とケロシン(RP-1)の組合せ/液体酸素と液体水素の組合せ/四酸化二窒素とヒドラジン系燃料の組合せ―毒の液体推進薬―/液化天然ガスの将来性
4.7 無効推進薬について
コラム:宇宙の眼2. 怖いロケット燃料の話

5. 固体ロケット
5.1 固体ロケットの仕組み
大推力/推進薬密度/固体ロケットの弱点
5.2 モータケース
モータケースの材料/断熱材とライナ/点火装置
5.3 固体ロケットのノズル
ノズルの材料/可動ノズル
5.4 推進薬と推力パターン
コンポジット推進薬/推進薬の組成/推進薬の断面形状と推力パターン
5.5 製造と組立て
セグメント組立てと一体組立て/上段用および下段用固体ロケットの構造性能
5.6 大型固体ロケットのシステム
5.7 固体ロケットと環境問題
酸性雨/宇宙ゴミの問題

6. ロケットの構造と材料
6.1 宇宙ロケットの骨格
構造システムの役割/ロケットの形状と構成/コア機体と補助ロケット/第1段液体ロケットと固体補助ロケットの組合せ衛星フェアリング
6.2 液体推進薬タンクの構造
一体型タンク/酸化剤タンクと燃料タンク/構造様式について/タンクの製造法
6.3 構造設計の考え方
荷重に耐荷すること/安全設計の方法/荷重と強度の定義/設計安全係数の定義/安全余裕の定義/宇宙ロケットの安全係数/耐荷することの―保証確率・統計の考え方―/例題:有人ロケットの「破壊」に対する安全の確保/安全係数と安全余裕について/軽量化の考え方
6.4 ロケットの材料
コラム:宇宙の眼3. 宇宙ロケットの先端はなぜ丸いのか?
コラム:宇宙の眼4. 頭のにぶい物体の空気力学

7. ロケットの分離機構
7.1 分離機構とは
7.2 火工品の効用
7.3 代表的な火工品の作動原理
7.4 宇宙ロケットの分離機構

8. 宇宙ロケットの飛行と誘導制御
8.1 飛行経路の設計
基準飛行経路/姿勢変更の設定/イベント・シーケンスの設定
8.2 ロケットの誘導制御
誘導制御の役割/電波誘導と慣性誘導
8.3 慣性航法
航法の原理/慣性センサユニット/IMUの搭載方式と航法計算
8.4 誘導
誘導はなぜ必要か/“誘導をかける”こと/大気層飛行中の誘導―無誘導飛行―/大気層外飛行中の誘導―誘導飛行―/日本の誘導事情
8.5 制御
姿勢制御の方法/シーケンス制御と姿勢制御
8.6 宇宙ロケットはどのように飛行するか―H-2Aロケットの打上げ―

9. ロケットの打上げ運用
9.1 ロケット打上げの諸条件
発射場の地理的制約/打上げ方位と追跡局/地球観測衛星の打上げ/打上げの窓/気象条件/垂直発射と斜め発射
9.2 計測と通信
ロケット飛行の監視
9.3 ロケットの打上げに伴う安全対策
射点近傍の警戒/機体の落下予測海域と通報/飛行安全管制
9.4 宇宙ロケットを取り巻く状況と課題
打上げに伴う国際的義務/宇宙ロケットの民営化と商業利用/わが国の営化と課題/次期ロケットの考え方
コラム:宇宙の眼5. あやまちは人の常―ロケットの開発と不具合

10. 自然の法則と宇宙ロケット―宇宙工学入門への試み―
10.1 古典力学の世界
慣性系/2体問題/非慣性系と慣性力
10.2 地球中心の円錐曲線軌道
軌道エネルギー/軌道要素について/軌道傾斜角iの補足説明
10.3 人工衛星の軌道
10.4 軌道変更の原則
10.5 静止衛星は如何にして“静止”衛星となるか
静止衛星の打上げ手順/静止トランスファ軌道の最適軌道傾斜角について/衛星質量と軌道との関係
10.6 宇宙探査機の軌道
コラム:宇宙の眼6. 無重量(無重力)とは何か?

付録A 主要な宇宙ロケット一覧
A-1 日本の宇宙科学衛星打上げロケット
A-2 日本の実用衛星打上げロケット
A-3 海外の主要な宇宙ロケット
付録B 略語表

参考文献
索引

宮澤 政文 (著)
出版社 : 朝倉書店 (2016/11/30) 、出典:出版社HP