世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史 – 新しい視点で歴史を広く見る

筆者のスティーブン・ジョンソン1968年、米ワシントンDC生まれ。ブラウン大学で記号学を学び、コロンビア大学大学院で英文学の修士号を取得。本書では数々のベストセラーを生み出した筆者が、ものの進化の歴史を今までとは違う視点から考えていく「世界をつくった6つの革命の物語」という本が朝日新聞出版から出版されました。

リビア砂漠で旅人がガラスにつまずかなければインターネットはなかったかもしれない、というような一見ありえないと思ってしまうことを歴史の流れから解説していきます今までとは違う歴史の魅力が見えてくる一冊。

 

本書は日常生活で使っているガラスレンズやエアコンなどのもののイノベーションのことについて、ものが人間の進化にどう影響を与えたかという視点から書かれています。何かが発明されたとき、どれだけ多くの努力がされたかや一見関係なさそうな変化をどうして引き起こしたのかというようなことがこの本からは見えてきます。

例えば、ガリレオがピサの大聖堂で目にした祭壇ランプを再現することから時間を発見し、時計が生まれ、鉄道によって時間が広い地域で統一され、さらに現在ではより正確な原子時計が発明されている、という話が本書の中にはあります。時間はガリレオの時代から現代まで発展を続けていますが、時間がありそれを時計で確認することは当たり前のことになってしまい、発明や発展させるために苦労をした人のことを忘れているのではないでしょうか。

本書は、一般に当然と思われていることを新鮮な目で見ることができます。また、アイデアとイノベーションの歴史は動物の思いもよらない進化と同じように展開してきています。このような変化を何らかの価値基準で評価することは一切せずにその変化がどうして起こったのか解明することを目的としています。

1万年前リビア砂漠を旅していた誰かがつまずいて発見したガラスは最終的にコガネムシの形に彫られ胸当ての中央に飾られツタンカーメンの埋葬室にたどり着きました。そしてローマ帝国の最盛期の時代に、ガラス職人が丈夫で透明なガラスを作る方法を見つけた時にガラスは装飾から先進技術に変容し、13世紀後半から14世紀前半頃に現在のガラスが完成しました。

それと同じ頃別の場所でガラス職人がメガネを発明していて、印刷機の発明で庶民も文字を読むようになってから爆発的に売れるようになりました。そして、メガネのレンズを二つ縦に並べたことで物体が拡大されることに気づいたメガネ職人の親子は顕微鏡を発明し医学と科学の革命につながる道を開きました。

またガラスで繊維が作られるようになり、グラスファイバーとして家の断熱材や衣類、コンピューターのチップの回路基板などに使用されるようになりました。このようにガラスの発展について見ていくだけで、様々な方向に進化していっているのがわかります。様々なスケールで同時に進化を検討するロングズームの視点から歴史を語ることによって従来の物語の魅力がますます大きくなるでしょう。

スティーブン・ジョンソン (著) , 大田 直子 (翻訳)
出版社: 朝日新聞出版 (2016/8/5)、出典:amazon.co.jp