反脆弱性 – 不確実性・カオス・ランダム・を利用する

Nassim Nicholas Talebの半脆弱性(antifragile・アンチフラジャイル)の背後なるコンセプトはとてもシンプルかつ興味深いものです。 まずはこの世にあるもの(人、物、組織・制度、生活様式(食事からスポーツジムまで)を3つのカテゴリに分類します。脆弱(fragile)、頑健・強固(robust)そして反脆弱(antifragile)です。

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「壊れやすい(脆弱)」の反対は「頑健や強固」のではないのですかと? 一部の人々はそれを考えるかもしれません。 しかし、反脆弱(antifragile)では決して「壊れにくい」ということではありません。まったく違うカテゴリーのものです。

反脆弱(antifragile)では大きな影響を与えることで大きな利益を上げることについてです。脆弱(fragile)は例えば、お皿をテーブルから落とすことで割れてしまう→つまり衝撃がマイナスの影響(破壊)の影響を与えることがある一方、反脆弱(antifragile)はむしろプラスのことを生むためにそのような衝撃を必要としています。衝撃や混乱によってより強く創造的になり、困難に直面し、それぞれの新たな課題に順応することができるようになれば、反脆弱となります。

タレブは、我々が反脆弱性を目指すべきだと考えています。反脆弱性はタレブが考えた造語ですが、不確実性に満ちた世界での成功の秘訣です。 前書では確率が低い珍しい出来事、つまり「ブラックスワン」も有名な言い回しとなっており、測定できないことを示すことにどちらかというと集中した書籍でした。本書はどちらかというと、それではどう動くのか? について書かれています。

2011年に福島の原子炉を襲った震災からリーマンショックに代表される金融危機は誰も予測できず最悪のシナリオとなっていました。 したがって、我々ができるのは将来を予測して何か行うのでなく、行うべき最善のことは、ショックが発生したときにそれを利用することです。

悪い出来事・イベントに有用な情報が含まれる方法はいろいろあります。痛みは子供たちに避けるべきことを教える。過去の起業家の失敗は、同じ過ちから次の多くの新興企業を導きます。飛行機墜落事故は次の飛行をより安全にするデータを生み出します。 (なお,銀行の破綻は反対の影響を及ぼします。金融システムの相互接続性のために、1回影響がまた同じ1回の可能性が高まります – 何度も金融危機が起こっていることを思い出しましょう)。

確かに、安定を求めるためにすることは必要かもしれませんが、それが実は上辺だけの安定ということもあります。長期にわたる上辺だらけの安定は、大災害が発生するまでリスクが蓄積することでもあり,時限爆弾でもあります。政治体制なんかもそうで、アラブの春でみたエジプトのムバラクのような政権によってもたらされた安定性は政治だけでの都合で人為的な形だけのもので抑圧的につくられた安定でした。

この関係性の原則は、仕事や企業にも適用されます。大企業の安定的な仕事は、実は何かで土台が崩れると一気に、失業が非常に突然の急激な収入の損失を引き起こすというリスクを装います。では頑健(robust)なものはなんでしょうか。タクシー運転のような職業はば、本当に大きな衝撃を受けにくくなります。彼らはまた、情報としてボラティリティを使います。もし、今いる街に客がいなければ、彼(彼女)は別の地域に向かいます。

それでは予想外のことでありそれが破壊やカオスや複雑性がむしろ潜在的な利益が潜在的な損失を上回るという点で、反脆弱性の核心となりますがそれが最初は赤字を垂れ流すベンチャー企業であり、そのようなものを生むのが起業家であったり、またはそのような出資体系であります。

「反脆弱性」とは、そのような選択がする特性です。ベンチャーキャピタリストは、リスクを冒して試行錯誤する多数の起業家に少量を投資することで大きな収益を得ます。多くの失敗した投資からの損失の上限はせいぜい投資の合計ですが、成功した投資が型破りで爆発的な利益を達成することができるという非対称があります。この非対称の現象は本文中に何度もでてきます。この場合、投資先の起業家が何を打つのかわからないため、できる限りさまざまな試行錯誤をすればベンチャーキャピタリストの成功率は高まります。

また長い間生き残ってきた人々は時代の名の無慈悲なランダムさを(その定義から)証明なしに抗脆性と見なすことができます。それとは逆が洗練された事業計画に基づく、利益が最も効率的で計画通りになることにかかっている事業は「脆弱」です。これは、非対称性がないために、突然の外的要因に弱くそれまでに発生した利益が一発で消えてしまうことが原因です。

分からない世界であるからやることは限られている,またはオプション性を利用するなどどのように生活スタイルから企業経営をするべきか本書では多くのヒントが隠されています。

 

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Some things benefit from shocks; they thrive and grow when exposed to volatility, randomness, disorder, and stressors and love adventure , risk, and uncertainty.

(世の中には)ショックから利益を得るものもあります。むしろボラティリティ、ランダム性、無秩序、そしてストレス要因にさらされるとそれらは成長し成長します。冒険、リスク、そして不確実性が大好きです。

Yet, in spite of the ubiquity of the phenomenon, there is no word for the exact opposite of fragile. Let us call it antifragile. Antifragility is beyond resilience or robustness. The resilient resists shocks and stays the same; the antifragile gets better.

それでも、この現象は普遍的に見られるにもかかわらず、実際はこの脆弱とは正反対の意味の言葉はありません。ですのでそれを反脆弱性と呼びましょう。反脆弱性ははレジリエンス(回復力)や強固性といった概念を超えています。レジリエンスはショックに耐え、(プラスマイナスのゼロという)同等にとどまりますが、反脆弱性は(ショック)で良くなります。

This property is behind everything that has changed with time: evolution, culture, ideas, revolutions, political systems, technological innovation, cultural and economic success, corporate survival, good recipes (say, chicken soup or steak tartare with a drop of cognac), the rise of cities, cultures, legal systems, equatorial forests, bacterial resistance… even our own existence as a species on this planet.

進化、文化、アイデア、革命、政治システム、技術革新、文化的・経済的成功、企業の存続、優れたレシピ(例えば、チキンスープやコニャックを少し垂らしたにしたステーキのタルタル)また都市、文化、法制度、赤道の森林、バクテリアの耐性など、この地球上の種としての私たち自身の存在さえも,この種の特性は時間とともに変化したことすべての背後にあります。

And antifragility determines the boundary between what is living and organic (or complex), say, the human body, and what is inert, say, a physical object like the stapler on your desk.

そして反脆弱性は、生きているものと有機的な(または複雑な)もの(たとえば人体)と、不活性なもの、たとえば机の上のホッチキスのような物との間の境界を決めます

The antifragile loves randomness and uncertainty, which also means— crucially—a love of errors, a certain class of errors. Antifragility has a singular property of allowing us to deal with the unknown, to do things without understanding them— and do them well.

反脆弱性(な物)は不規則性と不確実性が大好きです。これは、さらには、ある種のエラーを起こすことが好きでということも意味します。反脆弱性(な物)には、未知のものに対処し、それらを理解せずともうまく実行することを可能にするという独特の特性があります。

Let me be more aggressive: we are largely better at doing than we are at thinking, thanks to antifragility. I’d rather be dumb and antifragile than extremely smart and fragile, any time.

もっとアグレッシブに言ってしまいましょう:我々は考えているより行っていることのほうが,ずっとずっと上手です。いつでも、自身は賢くてもろいよりもむしろ愚かで反脆弱でいたいほうです。

 

ナシーム・ニコラス・タレブ (著) , 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)
出版社: ダイヤモンド社; (2017/6/21)、出典:amazon.co.jp

出版社: Random House (2012/11/27)、出典:amazon.co.jp