カーネマンが考えるタレブの反脆弱性と七面鳥問題

ニューヨーク公共図書館で開催された、現在の時代を代表する2人の思想家ナシーム・ニコラス・タレブとダニエル・カーネマンの2人のディスカッションが行われました。

Transcript(台本)

二人はそれぞれ7語辺りで自身を自己紹介するところから進められ、カーネマンは“Endlessly amused by people’s minds”とタレブは“Convexity. Mental probabilistic heuristics approach to uncertainty”と自身について描いています。これらは彼らのこれまでの書籍(タレブにおいては確率、カーネマンについては(心理)における関連性は大いにあります。

ディスカッションは主にそれぞれのテーマについて述べるセッションではなく、どちらかというとタレブの作品・アイデア(多くは反脆弱性 – antifragile)に対して、カーネマンの考え、鋭い意見を述べている形となっています。

タレブは彼のブラック・スワンのベストセラーで知られるようになりましたがその概念はほとんど起こりえないようなことであるがそれでもなお、規則的に発生するものであり、ブラック・スワンはそれを題材にした作品です。金融専門家を含む多くの人々は、人生において将来およびその不確実性の評価にブラック・スワンの可能性を含まないことが多いのです。

その後の作品となる反脆弱性ではタレブは新たなコンセプトを導入しました。世の中にある不確実性、カオスが常々予測はできないが、起こり得るものであるならそれを利用とするスタンスが必要だと説きます。そのような衝撃など、人々がネガティブに思っているようなことを利用して利益に変えること、不確実なショックが個人1人にしても組織、会社、経済市場が成長するためには必要条件だというものが反脆弱な事だといいます。

カーネマンの意見は少し違います。ほとんどの人は変化を好むより、恒常的に穏やかな事を望み、安定性・確実性を求める事に傾向があるのではないかと言います(上記の動画でのセッション23:35辺りからのやり取りです。)。

タレブが良く例にあげる問題として七面鳥問題(ターキープロブレム / The Turkey Problem)というものがあります。七面鳥は生まれたとときから飼い主(牧場であったり)に餌を与えられます。何も苦労せず毎日飼い主は餌をもらって、七面鳥は自身の人生に何も問題はない、ただこのまま現在のことがこれからも続くだろうと予想します。

毎日、毎日同じことが繰り返され、明日もまた同じことが続くだろうといいます。しかしながら感謝祭の日(Thanksgiving Day /欠かせない料理として七面鳥があげられる)に全ては終わります。それと同じように毎日、毎日が同じように続くと突発的に起こるとんでもないショックが襲いかかることはないと勘違いしてしまいます(金融危機などがその一種です。)。

タレブはそのような不確実性がある世の中だからそれに備えよという趣旨で反脆弱性の中で述べています。しかしカーネマンは反脆弱的な概念は人間の本質には全員には当てはまらないのではと言います。
結局のところ、すべての七面鳥は感謝祭の時に死んでしまうかもしれないが、これらの七面鳥は実際、それまでの人生は穏やかなものであったものだし、非常に良い人生ではなかったのか。それまではストレスもなく過ごせたのだからと。

どちらも人間の本質的なところをついており、もちろん人間全員がリスクをとって起業家になりたいということでもなく、安定した公務員を目指していきたいということもあるかもしれない、そのような示唆を掲示しているともとれるかもしれません。

ナシーム・ニコラス・タレブ (著) , 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)
出版社: ダイヤモンド社; (2017/6/21)、出典:amazon.co.jp

 

ダニエル・カーネマン 村井章子(翻訳)
出版社: ダイヤモンド社; (2017/6/21)、出典:amazon.co.jp

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