【最新】行動経済学を知る6冊 – 入門・基本から最先端・応用まで

伝統的な経済学者は人間の完璧なる合理性を仮定する一方、行動経済学者は人間を合理的な生き物とは考えていません。 むしろ合理的な意思決定の限界に焦点を当てております。行動経済学は従来の経済学に心理学や、社会学、神経科学、進化生物学などさまざまな学問領域と経済学の特徴とされてきた分析を融合させて、より現実社会を映し出しております。

今回は、その学問の切り開いたダニエル・カーネマン、そして直近の行動経済学の分野でのノーベル賞(経済)をとったリチャード・セイラーの書籍に加え、また昨今、日本語書籍でも充実している行動経済のテキスト入門から学部上級と使えるもの、さらには実際にそれらを使ってみたい気持ちにさせる書籍もあります。自身の知りたい度合いでぜひ、行動経済学の本を選んでみてはいかがでしょうか。

行動経済学入門

筒井 義郎 (著) ,佐々木 俊一郎 (著), 山根 承子 (著), グレッグ マルデワ (著)
東洋経済新報社 (2017/4/28)、出典:出版社HP

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行動経済学は、経済学の中でも最も新しい研究領域です。経済学は複雑な社会現象をできるだけシンプルに捉えるために、様々な仮定を置きます。この仮定には、自然なものや現実とは異なるものも置かれることがあり、そのような枠組みで経済学は成り立っています。本書では、その枠を少しずつ広げながら、人の心の不思議について理解を深めていこうとするのが行動経済学だとしています。

行動経済学入門という名前の通り、行動経済学の立ち位置や基礎的な説明から入っています。私たちは、普段の生活を送る上で、多くの選択を行なっています。その選択はどのように行われるのか、その選択肢を選んだ理由はなぜなのかという疑問に答えていく形式が本書では取られています。ドラッグストアなどで、シャンプーを購入する際、人はどのように決定するのかといった具体的な例を挙げて説明しているため、身近な内容に感じられます。

さらに、行動経済学がこれまで発見してきた理論を、実証実験を紹介した上で、解説しています。経済学というと、難しい数式が並んで、わかりにくいイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、本書では、数式がほとんど無く、算数ができれば、理解できるような構成になっています。また、個人の行動について焦点を当てているために、納得できる理論が多く、行動ファイナンスや幸福の経済学、実世界における行動経済学なども取り上げられているため、実際の事象との関連についても考えることができます。行動経済学に関心がある初心者の方にオススメの本です。

行動経済学の使い方

大竹 文雄 (著)
岩波書店 (2019/9/21)、出典:出版社HP

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本書は行動経済学の概要の説明と実践方法について書かれています。多くの行動経済学の本は、用語の解説や理論の説明、実例の紹介を主なコンテンツにしていますが、本書では、基礎的な説明は序盤の第1章で行い、第2章以降は、実践的な使い方に重点を置いた説明が行われています。第2章は、ナッジについて解説されています。ナッジは軽くひじでつつくという意味を持つ行動経済学の用語の中で最も有名なものの一つです。

選択肢を残し、インセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変えるように仕向ける手法ですが、公共政策での利用などにも応用されています。本書では、ナッジの概要に加えて、数多く提案されているチェックリストの説明も行なっています。ナッジを実践するための具体的なプロセスの解説を行なっているため、コミュニティーなどで解決すべき課題がある方に参考となるかもしれません。

第3章は、仕事における行動経済学について研究の結果をまとめています。タクシー運転手の賃金と労働時間の関係を研究した検証結果が取り上げられています。第4章では、先延ばし行動と題し、年功賃金に対する行動経済学からの分析が紹介されています。第5章では、ある病院での無断キャンセルを減らす研究の事例が紹介されており、与える情報によって選好が変化することが確認できます。

第6章では、働き方を変えるためのナッジの設計について解説しており、第7章では、医療・健康活動への応用の仕方について解説されています。第8章は、公共政策への応用について書いており、行動経済学が様々な分野で応用されていることがわかります。一度読めば、行動経済学を日常生活にも取り入れることができるかもしれません。

行動経済学 見るだけノート

真壁 昭夫 (著)
宝島社 (2018/8/16)、出典:出版社HP

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本書は、見るだけノートシリーズの行動経済学版です。行動経済学の概要について、イラストを多く用いて、解説しています。行動経済学は、現在、注目を集めていますが、なぜなのでしょうか。これまでの経済学は、人間は常に合理的で、経済も金融も合理的な人間によって出来上がっているという考え方が根底にありました。

しかし、実際の人間は、合理的でない判断をよくします。例えば、課題を先延ばしにしてしまう、同じ条件なのに、言い方によって判断を変えるなどがあります。行動経済学は、そのような実際の経済や金融の姿に、従来の経済学をより近づけていこうとしているのです。そのために、日常生活で役立つことがたくさんあります。

本書は、その行動経済学の基本的な要点から実践的な理論を実例を挙げることで、理解しやすいように紹介しています。行動経済学は、心理学の理論や知識を応用していますが、実際の経済も人々の心理によって動かされている側面があります。本書で紹介されている例では、株価の変動がよく出てきます。

その他にも、物事の判断を行うための情報の選択が合理的でない状況の解説やバブルが発生する要因についても触れられており、日々の生活を過ごす際にも参考になる内容が多くあります。また、マーケティングに関連した説明を含んでいたり、政府などの行政機関が政策を進める際に、注目されているナッジの概念の説明があり、行動経済学が幅広い分野に影響を与えていることが実感できます。

行動経済学 伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して

大垣 昌夫 (著), 田中 沙織 (著)
有斐閣; 新版 (2018/12/22)、出典:出版社HP

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本書は、行動経済学についてまとめた入門的な書籍です。しかし、大学の経済学部3、4年生の講義やゼミに用いられることを想定しています。そのため、経済学についての知識が全くない方には、向かないかもしれません。本書は、学術的な構成となっており、行動経済学の定義を一般書よりも厳密にしたり、行動経済学の果たす役割も一般的な書籍とは異なる捉え方をしています。

本書の冒頭でその説明がされており、「経済学は限られた資源がどのように人々に分配されているか、またされるべきかを探求する学問である」とし、行動経済学の定義は利己的で合理的な経済人の過程を置かない経済学であるとしています。行動経済学の解説が主なテーマですが、行動経済学には、伝統的な経済学の考え方を基礎としている必要があることを示し、囚人のジレンマやナッシュ均衡といったゲーム理論の概要の説明も行われています。

行動経済学は伝統的な経済学を否定したと見られるケースがありますが、本書では、伝統的経済学にも行動経済学もそれぞれの有用性と限界を持つ道具であるとしています。さらに、神経経済学も取り上げ、脳の仕組みの解明を目指す神経科学と経済学を組み合わせることで、人間の行動を説明しようとする手法について学ぶことができます。行動経済学の理論に加えて、新しい学問の潮流を抑えています。

一般書よりも詳細な行動経済学のアプローチについて調べたい方や伝統的経済学を学んでいる方におすすめです。

行動経済学の逆襲 – Misbehaving: The Making of Behavioral Economics

リチャード・セイラー (著) , Richard H. Thaler (その他), 遠藤 真美 (翻訳)
早川書房 (2016/7/22)、出典:出版社HP

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世界でも有数の行動経済学の学者であるリチャード・セイラーが記した本です。ノーベル経済学賞を受賞したことで、一般的にも知られるようになりましたが、これまでの業績については知らない方も少なくないのではないでしょうか。本書は、著者が学生時代行なっていた研究から始まり、これまで目の当たりにしてきた伝統的経済学と現実世界の乖離に疑問を持ち、行動経済学を開拓していった経緯について書かれた自伝です。

伝統的経済学では、仮定として、ホモエコノミカスという架空の人間がモデルとして設定されます。著者は、ホモエコノミカスをエコンと略し、常に合理的に考え、冷徹に行動する、スタートレックのミスター・スポックのような存在であると説明しています。このモデルは、行動経済学の理論を考えていく出発点として重要である一方で、現実の人間とは異なる側面を持ち合わせています。

経済学において、人間の心理的な要因を考慮することの重要性に、行動経済学の研究者は気づいていましたが、この考えは、当時では、簡単に受け入れられませんでした。著者は、ダニエル・カーネマンの価値理論に大きく影響を受け、行動経済学の分野に足を踏み入れることになりましたが、そこで、メンタル・アカウンティングについて研究することとなります。

その後、行動経済学が徐々に、伝統的経済学のフレームを修正していきますが、その過程は、読む人を惹きつけます。自伝ですが、読みやすい文章で、行動経済学を学ぶだけでなく、当たり前と考えられている従来の定説を覆す姿勢も参考になると思います。

ファスト&スロー(上) (下) あなたの意思はどのように決まるか – Thinking, Fast and Slow

ダニエル・カーネマン (著) , 村井章子 (翻訳)
早川書房 (2014/6/20)、出典:出版社HP

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本書は、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カールマンの代表的な著書です。著者は、ヒューリスティクスとバイアスが人間の意識の中に存在することを示したことが高く評価されていますが、本書では、第2部でそれらがテーマとして扱われています。

統計に関する直感が専門家であっても、バイアスが確認される事例や、アンカリング効果やハロー効果、利用可能性ヒューリスティクスなどの判断を誤らせる要因について説明しています。その前の第1部では、ファスト&スローのタイトルにもなっている早い思考のシステム1と遅い思考のシステム2について解説しています。直感的な思考であるヒューリスティクスと深く考える遅い思考の違いや関連の説明もしています。第3部では、自信過剰になりやすい人間の心理についてまとめています。

下巻の第3部の最後には、資本主義の原動力と題して、起業家が楽観主義であるとし、自信過剰であることの危険性を指摘しています。第4部では、プロスペクト理論や保有効果、メンタル・アカウンティングについてまとめています。人間は損失を回避したがり、買い物や株式投資の際に非合理的な判断をよく行いますが、それらの判断がなぜ取られるか、を理論的に説明しているため、普段、そのようなことを意識していない方には、新たな発見があるかもしれません。

第5部では、経験する自己と記憶する自己の二つの自己の関係性について解説しています。結論を下巻の後半に記しており、意思決定に関して、多くの視点があることに気付かされます。