行動経済学見るだけノート

行動経済学を知る6冊 – 入門・基本から最先端・応用まで –も確認する

はじめに

私たちの“心の働き”が経済を動かしている。

かなり以前から、普通の読者にもわかりやすい行動経済学の本を書きたいと思っていました。本書でその願いがかないました。イラストの専門家の方にも協力をいただいて、見ることを中心にして行動経済学の概要を理解していただける本ができたからです。

行動経済学というのは聞いたことがあるのだが、どういう学問なのかよくわからない。あるいは、入門書を読み始めたが、途中でわからなくなってやめてしまったという人は多いのではないかと思います。本書は、目で見ることを基礎にして、現在、注目を集めている行動経済学の主な内容をわかっていただくことを目的としています。

行動経済学は、私たちの心の働きに注目し、金融や経済などの動きを理解しようとする経済学の一分野です。これまでの経済学は、人間は常に合理的で、経済も金融も合理的な人間によってでき上がっているという考え方に基づいていました。

しかし、実際の人間はときにバカなこともします。ということは必ずしも合理的とは言えません。そういう“生身の人間”が作っている経済や金融は、どうしても人間の“心”に酔って理屈から離れて動くこともあります。つまり、行動経済学は、それまでの伝統的な経済学をより実際の経済や金融の姿に近づけることを目指した学問と言えます。それだけに、行動経済学は私たちの日常生活の中でも役に立つことがたくさんあります。

私自身、はじめて行動経済学に出会ったとき、「これだ!」と感じたことを昨日のことのように覚えています。それまで、私は伝統的な経済学や金融工学を学びました。そうした知識を基にして、金融市場でのディーリング(債券や為替の売買)などの業務に従事してきました。
ただ、日々の金融市場で業務を行っていると、伝統的な経済学の理論では説明ができにくい場面にも遭遇しました。それにつれて、実際の金融市場の変化を、より深く理解できる理論はないものかと思うようになりました。そうした状況下、行動経済学に出会ったことは、大きな喜びである以上に、とても幸せなことでした。

本書を通して、みなさんにも「ああ、そういうことか」と思わず手をたたきたくなるような喜びを、ぜひ実感していただきたいと思います。本書が、多くの方が行動経済学に関心を持つきっかけとなることを祈っています。

真壁昭夫

真壁 昭夫 (著)
宝島社 (2018/8/16)、出典:出版社HP

目次 – 行動経済学見るだけノート

はじめに

Chapter 1 行動経済学ってなに?
01 一体、行動経済学ってどういう学問?
行動経済学
02 “行動”ってなにを意味するの?
心理学の応用
03なぜ、行動経済学が注目されているの?
行動経済学の説明力
04 “伝統的な経済学”との違いとは?
生身の人間
05 行動経済学の理論を構築した学者たち
行動経済学の歴史
06 ノーベル経済学賞の対象にもなった
ノーベル経済学賞
07 経済学者は行動経済学研究しているの?
行動経済学の現在
08 行動経済学は、どう役に立つの?
行動経済学の応用性1
09 どんな仕事に行動経済学は役立つの?
行動経済学の応用性2
10 じゃあ、伝統的な経済学は役に立たないの?
組み合わせが大事
Column01 行動経済学を勉強するにはどうしたらよいの?

Chapter2 経済学者の深い反省
01 私たちは常に“合理的”とは限らない
ホモエコノミカス
02 私たちの“ありのまま”を解き明かす
現実への接近
03 人間は常に“あるべき行動をとるとは限らない
人間の不合理性1
04 考えに違いがあるから、行動が違う
人間の不合理性2
05 経済学の考え方に疑問を持ち始めた研究者
経済学者の反省
06 人々が持っている。情報には偏りがある
情報の非対称性
07 景気を左右する私たちの心理
景気は気から
08 イグノーベル賞を受賞した行動経済学者の研究
病は気から
09 欲求のさまざまな段階
とまらない欲求
10 行動ファイナンスってどういう分野?
行動ファイナンス
Column02 経済学でも実験をするって本当?

Chapter3 行動経済学の“いろは”
01 意思決定を支える“直感”
ヒューリスティック
02 物事はシンプルに考えることが重要
単純化
03 意思決定を左右する情報の利用可能性
情報の利用可能性1
04 今あるものに大きな価値を見出す心理
現状維持バイアス
05 「見た目が9割」は本当か?
初頭効果1
06 テストの点が悪かったときお父さんにどう報告する?
初頭効果2
07 最新の情報が意思決定を左右する
親近効果
08 なぜ人は“ブーム”に乗ってしまうのか?
ハーディング現象1
09 「ピザって10回言って」の仕掛けとは?
アンカーリング
10 失敗は他人のせい、成功は自分の手柄
コントロールへの欲求
11 ルーレットで黒が3回続いた、次は絶対に赤だ!
ギャンブラーの誤謬
Column03 失敗は成功のもと、の真偽

Chapter4 バブルはなぜ起こる?
01 バブルって、なに?
バブル1
02 バブルは、一個人には関係ない?
バブル2
03 バブルはいつも、どこかで起きている
バブル3
04 行動ファイナンスで考えるバブル
アノマリー
05 損失を避ける心の働き
プロスペクト理論
06 儲けの喜びと、損の悲しみは非対称
価値関数
07 FX取引をやっていますが全然儲かりません
リスク回避
08 失敗すると、いつも言い訳を探してしまう
心は「言い訳」上手
09 人はなぜ、宝くじを買ってしまうのか?
決定の重みづけ
10 “億り人”ビットコインブーム考
仮想通貨
Column04 投資の必勝法はありますか?

真壁 昭夫 (著)
宝島社 (2018/8/16)、出典:出版社HP

Chapter5 生活に役立つ行動経済学
01 内容より、見せ方が大事って本当?
初頭効果(応用編1)
02 個人の投資家が企業の業績を判断する例
初頭効果(応用編2)
03 プレゼンでは、伝えたいことを一つに絞る
単純化(応用編1)
04 最後は直感、これって正しい?
単純化(応用編2)
05 大穴を狙う心理
穴馬バイアス
06 なぜギャンブルは、やめられないの?
サンクコスト1(コンコルド効果)
07 なぜ企業の不祥事はなくならないの?
集団思考の罠
08 選択肢が多いと決めることができません
選択のパラドックス
09 いつかも誰かのせいにしてしまうのはなぜだろう
帰属理論
10 経験が邪魔をする
因果関係の過大評価
11 合理的にはいかない心の会計処理
心理会計(心理勘定)
12 一人の行動が他の大勢の行動を呼ぶ
インフォメーション・カスケード
Column05 サザエさんの視聴率で景気がわかる?

Chapter6 セールスに惑わされないための行動経済学
01 損を避けたい心理に刺さるサプリのコマーシャル
損失回避
02 今だけ半額!それで儲かるの?
現状維持の罠
03 フリーのネットサービス、なぜ儲かる?
無料の威力
04 ディズニーランドはいつも行列
バンドワゴン効果
05 ハロウィンは、なぜ日本で急に広まった?
ハーディング現象2
06 巷にあふれる“モンドセレクション金賞受賞”
権威への服従
07 芸能人のCM出演料が高いのには訳がある
ハロー効果
08 死亡率20%の手術は成功率が高い?
フレーミング効果1
09 「1日100mg」より「1カ月3,000mg」
フレーミング効果2
10 プラモのパーツが入ったパートワークはなぜ売れる
サンクコスト2
11 BGMでワインが売れる?
音響の心理学
12 週末に折り込みチラシが増えるワケ
情報の利用可能性
Column06ダメといわれるほど試したくなる心理

Chapter7 使える範囲が広がる行動経済学
01 今と1年後、どちらが大事?せっかちを科学する
双曲割引モデル1
02 我慢ができる人が成功する、その真偽
双曲割引モデル2
03 選択の自由を認めつつ行動を促す“ナッジ”
ナッジ理論1
04 料理の並べ方一つで、メタボ改善
ナッジ理論2
05 日本におけるナッジの例
ナッジ理論3
06 そのほかたくさんあるナッジの応用例
ナッジ理論4
07 間違いは予測可能って本当?
ヒューリスティックの罠
08 なぜ、政治は良くならないんだ!
政治と行動経済学1
09 より良い政策をめざそう
政治と行動経済学2
Column07 行動経済学で社会をより良くしよう

Chapter8 行動経済学のこれからの展望
01 私たちの“行動”が、さらなる研究を支える
実践の重要性
02 心の働きを突き詰めると脳に行き着く
神経経済学
03 豊富にあるナッジの機会加速する政策への応用
リバタリアン・パターナリズム
04 常に“自己中”ではない私たちの心理の可能性
利他性1
05 他者への思いやりが社会をよくする?
利他性2
06 “やる気”の追及やる気があれば何でも可能
アニマル・スピリット
07 今も進んでいる行動経済学の研究
行動経済学の未来
Column08 行動経済学は人生を豊かにする
掲載用語索引

真壁 昭夫 (著)
宝島社 (2018/8/16)、出典:出版社HP