【最新】心理統計を学べるおすすめ本 – 入門教科書から実践書まで

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心理統計を学ぶ

心理学の領域でも統計の知識は分析によって必要になっています。心理の量的研究では一体どのような統計学が使われているのかの入門から実際に分析をスタートしてみたい方向けの書籍を紹介します。エクセルなどの統計ソフトを使って実践で使える参考書もおすすめです。

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出典:出版社HP

改訂版 はじめての心理統計法

心理統計をはじめて学ぶ人のための1冊

本書は、大学1年生や2年生といったはじめて心理学で必要な統計方法を学ぶときに参考書として利用することを想定して書かれています。数学が得意でなくても少しずつ統計に慣れていけるようになっているので、自習でも十分に心理統計法の基礎知識を修得できるでしょう。

鵜沼 秀行 (著), 長谷川 桐 (著)
出版社 : 東京図書 (2016/9/1)、出典:出版社HP

改訂版 はじめての心理統計法

改訂版刊行にあたって

今回の改訂は、2008年に刊行した『はじめての心理統計法』に大幅な加筆・ 修正を行って、現在心理学教育の現場で求められる幾つかの要請に応えまし た。一つは、近年の心理学界における資格の動向を踏まえて、取り上げる内 容をその要請に対応させたことです。第二には、授業の中で学生が自ら予習・ 復習を行うことが以前にも増して求められていることから、より自習に適した形にしました。第三に、旧版を用いた8年間の講義の経験と学生の意見を 踏まえて、やや詳しすぎた解説や内容を削除し、代わって最近の分析で求められる内容を追加しました。
具体的には、今回の改訂版は 2008年に刊行した旧版に以下のような変更 を加えたものです。

(1) 多変量解析を新たに第9章に追加しました。因子分析や偏相関、重回帰分析について、実例を用いて初学者にわかりやすい解説を行いまし た。これは、最近の心理学関連の資格の動向も考慮した内容です。平 成27年9月に国家資格としての公認心理師が誕生することが決まりました。また28年4月からは、認定心理士(日本心理学会)に心理調査 士が加わることになりました。これらの資格では、実験・調査・観察 などによって収集されたデータを処理するための知識が重視されています。このような要請にも充分に応える内容になっています。

(2) 学習者の自習に役立てていただくために、理解のポイントになる箇所にTryとして新たに小テストを追加しました。また、各章の最後には 練習問題が加えられました。これらは、臨床心理士をはじめ、これま での種々の心理学関連資格の試験を踏まえて、特に学生が誤りやすい 点を中心に作られたものです。受験の際にも役に立つはずです。

(3) 効果量や多重比較を中心に、近年の学界の動向を踏まえて加筆しました。専門的な研究や、専門職の試験で求められるこれらの最近の分析 方法は、入門レベルでは触れられていないことも多いのですが、今回 の改訂では「くわしい説明」の項で丁寧に解説しています。

この改訂版で、読者の皆さんが心理学の方法についてさらに理解を深めて いただくことを願っています。最後に、煩雑な改訂作業に取り組んでいただいた東京図書・松永智仁さんにこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
平成28年4月
著者

はじめに

本書は、大学の初年次あるいは2年次の学生が、はじめて心理学で必要な 統計的方法を学ぶときに、教科書あるいは自習用の参考書として利用していただくことを想定して書きました。ただ、10 数年の学部や大学院での統計 法の講義経験から、学部高学年や大学院修士課程での基礎的なことがらの復 習や自習にも充分活用していただけると思います。
本書は、以下のような特徴をもっています。

(1) 数学が得意ではない読者を想定しています。そのため、中学程度の数学の知識で充分に理解できるように、繰り返し丁寧に解説し、計算過 程も省略せずに記載することで、どんな計算がおこなわれているのか、 1つひとつ確認できるようにしました。ですから、自習でも充分に心 理統計法の基礎知識を修得できます。

(2) 統計法では、ある程度の数学記号を必要とします。本書では、数学記号を使用する場合は、そのつど説明を加え、前ページに戻らなくても そこで再び理解できるように配慮しました。また、例を使って具体的 に数学記号の意味や計算の手順をわかりやすく説明してありますので、 記号に慣れていなくても計算ができます。

(3) 少しずつ統計的な表現に慣れていくことができるように配慮してあります。本書の最後では、大学の教科書に出てくる統計的な表現を理解 できるようになります。そのために、一部では実際の研究で使われる 記号も使っています。最後まで「太郎くん」「花子さん」の統計ではあ りません。

(4) 心理学の中でどのように統計が使われているのかを理解できるように、実際の研究例を Research として紹介しています。心理学でおこなわれる観察、検査、実験、調査などの方法を具体的に知ることで、どの ように心理統計法が利用されているのかがわかります。

(5)統計量や測度の計算方法は、皆さんがすぐになじめる例と心理学的な例の両方を取り上げて説明していますので、心理学を知らなくても心 理統計法を学ぶことができます。

(6)初学者向けの入門書ですが、大学生の卒業論文や大学院生の修士論文ぐらいまではほぼカバーできるように考えて書いてあります。そのた め、実際の研究においてありそうなデータを考慮しました。また、さまざまな統計量や測度が実際に使えるよう、1つひとつについてかな より詳しく踏み込んで解説しています。

(7) レポートや卒業論文を書くときに役立つように工夫されています。統計的結論など、実際にどのような書き方をするのか、読者がしばしば 「誤りやすい点をわかりやすく指摘しています。

本書の利用法

以上のような特徴を活かすために、つぎのように本書を利用していただく ことをおすすめします。
まず、ゆっくり気軽に読み始めてください。本書は大切なことを繰り返し 丁寧に説明しています。これまでの本は、一度だけの説明でそのことが理解 されたという前提で書きすすめられているものが多かったと思いますが、本 書ではあえて大切なことが繰り返されています。説明がくどくなりすぎる場 合には、参照していただく箇所をそのつど示しましたので、利用してください。

各節のおわりには、その節で学ぶポイントが示してあります。これは著者 のこれまでの講義の経験から、初学者がしばしば誤りやすい点をあげたもの です。その節をひととおり読んだ後や、講義の復習に活用してください。
一部の章をのぞいて、各章には研究例があげてあります。それにより、心 理学を身近に感じていただけると思います。データの収集(測定)がどのように行われ、心理学では何をどのように問題としているのか、を理解していただきたいと思います。2年生や3年生、あるいは卒業論文で実際にデータ を収集し分析する際にも参考にしてください。
実際の統計処理の手順を「まとめ」として最後に書きました。統計処理に どのように取りかかったらよいのかわからないときに利用してください。
最後に、本書の執筆と刊行にあたって東京図書の須藤静雄さん、岩元恵美さんからさまざまな具体的アイディアとご指摘をいただきました。煩雑な作 業を引き受けてくださったお二人の熱意と努力に感謝したいと思います。

平成20年春
著者

鵜沼 秀行 (著), 長谷川 桐 (著)
出版社 : 東京図書 (2016/9/1)、出典:出版社HP

目次

改訂版刊行にあたって、
はじめに
本書で使う主な記号一覧

第1章 統計の勉強をはじめる前に
心理統計はこころを理解するためのものさし
1.1 心理学の方法 (1)
なぜデータ処理が必要なのだろうか
1.2 心理学の方法(2)
どのようなデータ処理が必要だろうか
1.3 心理データの特性
こころを測る

第2章 データの性質と度数分布
データの性質と尺度レベル/度数分布
2.1 質的変数・量的変数、スティーブンスの4つの尺度
データのもつ性質について考える
2.1.1 質的変数・量的変数
2.1.2 スティーブンスの4つの尺度
2.2 質的変数についての度数分布
データの特徴をまとめる
2.2.1 度数分布表とは
2.2.2 グラフであらわす(視覚的にデータの分布の特徴をとらえる)
2.2.3 グラフ化の欠点
Research ● 乳児のアタッチメントの国際比較
2. 3量的変数についての度数分布
データの特徴をまとめる
2.3.1 量的データ(量的変数)を度数分布表にまとめる
2.3.2 量的変数についての度数分布表の概要
2.3.3 グループ化された度数分布とグループ化されていない度数分布
2.3.4 グループ化された度数分布表の作成手順
2.3.5 グループ化されていない度数分布表
2.3.6 グラフであらわす(視覚的にデータの分布の特徴をとらえる)
Research ● 顕在性不安検査 MAS(日本版)

第3章 代表値と散布度
分布の特徴をとらえる
3.1 代表値
データの特徴を要約する
3.1.1 平均値(算術平均)
3.1.2 中央値
3.1.3 最頻値(モード・並数)
3.2 散布度
データの散らばり具合をあらわす
3.2.1 標準偏差
3.2.2 四分位偏差(四分領域)
3.2.3 範囲(レンジ)
3.3 データの分布型から代表値や散布度について考える
データの分布型から考える
3.3.1 データの分布型のちがいによる代表値と散布度の算出
3.3.2 分布の偏りに対する対応(1):外れ値の処理
3.3.3 分布の偏りに対する対応 (2) : 変数の変換(調和平均、幾何平均)
3.4 分布の中の相対的位置と正規分布
順位と標準得点
3.4.1 順位
3.4.2 パーセンタイル順位
3.4.3 標準得点
3.4.4 標準正規分布の性質
3.4.5 標準正規分布表を利用する
3.4.6 偏差値
Research心的回転

第4章 相関係数と連関係数
-2 つの変数の間の関係を分析する
4.1 直線相関
2 変数間の直線的関係の強さを調べる
4.1.1 ピアソンの積率相関係数
4.1.2決定係数と非決定係数
4.1.3 予測(1) : 変数Xから変数 Yを予測する
4.1.4 予測(2):変数 Yから変数Xを予測する
4.2 順位相関係数
2つの順位値の間の関係を調べる
4.2.1 スピアマンの順位相関係数
4.2.2 ケンドールの順位相関係数
4.3 連関係数
カテゴリカルな2変数間の関係を検討する
4.3.1 クロス集計
4.3.2の係数(四分点相関係数)
4.4 その他の相関係数
カテゴリカルな変数と量的変数の関係
4.4.1 点2系列相関係数(点双列相関係数)
Research • 母親変数と子どもの知的発達に関する日米比較

第5章 標本と母集団
得られたデータとその背景にある「全体」の関係
5.1 母集団と標本抽出
限られたデータからはじめよう
5.1.1 母集団と標本
5.1.2 無作為抽出の他に考えるべきこと
5.1.3 母数と統計量
5.2 標本分布と標準誤差
統計量の散らばりを使う
5.2.1 統計量は変化する:標本分布
5.2.2 統計量の散らばり:標準誤差
5.2.3 現実的な問題:標本が1つならば
5.3 正規分布と確率変数
正規分布を使うために
5.3.1 確率分布と確率変数
5.3.2 標準正規分布
5.3.3 標準正規分布を使うために
5.3.4 標本分布と正規分布の関係:標本平均の場合

第6章 統計的仮説の検定と推定
データからどのようにして母集団について結論を出すか
6.1 統計的仮説の検定とは
仮説の意味と検定の手順
6.1.1 統計的仮説:帰無仮説とはい
6.1.2 仮説検定の手順
6.1.3 帰無仮説を棄却する基準:有意水準と臨界値
6.1.4 仮説の方向性と検定:片側検定と両側検定
6.1.5 2つの誤り
6.2 検定の実際
t 分布を使う
6.2.1 母集団の標準偏差がわからないとき
6.2.2 t分布と自由度
6.2.3 p値と効果量
6.3 区間推定
範囲を推定する
6.4 相関係数の検定
変数間の関係を分析する
6.4.1 ピアソンの積率相関係数の検定
6.4.2 相関係数の検定と評価
6.5 度数についての検定
推測統計の手法
6.5.1 x(カイ2乗)分布を利用する1:独立性の検定
6.5.2 x(カイ2乗)分布を利用する2:適合度の検定
Research ● 地下鉄内での援助行動

第7章 t検定
2つの平均値の間の有意差を検定する
7.0 t検定をはじめる前に
2つの平均値の比較について考える
7.0.1 2つの異なる母集団とは?
7.0.2 t検定の目的
7.1 対応のない場合(独立の場合
2 つの平均値の差を検定する
7.1.1 t検定の前提条件(t検定において仮定されること)
7.1.2 統計的仮説と検定の方向
7.1.3 t 検定の手順と計算
7.2 対応のある場合(関連のある場合)
2つの平均値の差を検定する
7.2.1 「対応のある場合」とは
7.2.2 t値の計算(対応のある場合)とは
7.3 2つの平均値の差の信頼区間
差の大きさはどのくらいか
7.3.1対応のない場合”の2つの平均値の差の信頼区間
7.3.2 “対応のある場合”の2つの平均値の差の信頼区間
Research ●知覚的防衛

第8章 分散分析
複数の平均値をまとめて比較する
8.1 一元配置
多くの平均値を一度に比較する
8.1.1 なぜ分散分析が必要なのだろうか
8.1.2 分散分析の考え方
8.1.3 分散分析の計算
8.1.4 効果の大きさを評価する:効果量
8.1.5個々の平均値をさらに比較したい:多重比較
8.2 要因計画
2つ以上の要因を組み合わせる
8.2.1 複数の要因を組み合わせると
8.2.2 2要因分散分析(被験者間計画)の考え方
8.2.3_2要因分散分析(被験者間計画)の計算例
8.2.4 分散分析の後で
8.2.5 1人の被験者を繰り返し測定すると:被験者内計画
8.2.6 1要因被験者内計画の計算例
Research ミューラー・リヤー錯視

第9章 多変量解析
3つ以上の変数の間の関係を分析する
9.1 多変量の分析
3つ以上の変数の関係を理解する
9.1.1 偏相関
9.2 重回帰分析
ある変数を複数の変数から予測・説明する
9.2.1 多変量データと多変量解析
9.2.2 重回帰分析とは
9.2.3重回帰分析の実行
9.2.4 重回帰分析の結果の検討
9.2.5 パス図を描く(図にあらわす)
9.2.6 結果のまとめ
9.2.7 重回帰分析をおこなうにあたって
9.3 因子分析
背後に潜む変数を仮定する
9.3.1 相関係数と因子分析
9.3.2 因子分析の考え方
9.3.3 因子の解釈
9.3.4 因子のもとめかた
引用・参考文献一覧
付表1 標準正規分布表
付表2 t分布表(臨界値)
付表3 2分布表(臨界値)
付表4 マン – ホイットニーのU検定のための表(臨界値)
付表5 F分布表(臨界値)
付表6 テューキー法で用いる女の表(臨界値)

分析のためのフローチャート
Try と練習問題の解答
索引

改訂版 はじめての心理統計法

本書で使う主な記号一覧
第2章
総度数N
総データ数 N

第3章
平均値(算術平均、標本平均) X, M
値の総和 ∑(シグマ)
中央値 Me
最頻値 Mo
標準偏差 SD
分散S
四分位偏差Q
四分位数の範囲 R
調和平均HM
幾何平均GM
標準得点z
偏差値Z

第4章
ピアソンの積率相関係数(相関係数)
決定係数
非決定係数R=1-72
回帰係数6
スピアマンの順位相関係数r,
ケンドールの順位相関係数T(タウ)
連関係数(ファイ係数) (ファイ)
点2系列相関係数(点双列相関係数) )

第5章
総データ数N
母平均(母集団の平均値) (ミュー)
母集団の標準偏差 o (シグマ)
母集団の分散
理論的な標本分布の平均値
標本の大きさ(データ数) n
標準誤差 SEE
平均値の標準誤差
平均値の標本分布の分散o/
不偏分散(不偏推定値) G
不偏分散からもとめた標準偏差 (シグマハット)
正規分布 N(平均 , 分散o)
標準正規分布 N (0,1)
確率 P
|第6章
帰無仮説 H
対立仮説 H
有意水準 a(アルファ)
有意確率(小値))
第一種の過誤の確率 a (アルファ)
第二種の過誤の確率 B(ベータ)
ティー分布、ティー検定 t
自由度 df
効果量(平均値の差) d
母相関係数p(ロー)
カイにじょう分布、カイにじょう検定 x2
観測度数 0
期待度数 E

第8章
平方和SS
平均平方 MS
群内の平均平方MS
誤差の平均平方MS.
テューキーの HSD法(多重比較) HSD
スチューデント化された範囲(多重比較)q
効果量(分散分析)
n(イータにじょう)
エフ分布、エフ検定、分散分析 F

第9章
偏相関
相関係数 1
分散拡大係数VIE
重回帰係数 R

CHAPTER1 統計の勉強をはじめる前に

この章で学ぶこと

心理統計はこころを理解するためのものさし
本章では、はじめて心理学を学ぶ皆さんに、なぜ心理統計法を学ぶ必要があるか、心理統計法のデータにはどのような特徴があり、どのようなデータ処 理の方法があるかを解説します。これから心理統計法を学ぶにあたって、今、 何を問題としているかを理解していただきたいと思います。統計学では集めたデータが数字であっても、「好き」「きらい」ということばであっても、「変 数」とよびます。また「こころ」を測定したデータは、こころを理解するための「ものさし」です。これを「尺度」とよびますが、尺度には4つの種類があります。これらについて1つひとつ説明していきますから、しっかり理解していきましょう。

鵜沼 秀行 (著), 長谷川 桐 (著)
出版社 : 東京図書 (2016/9/1)、出典:出版社HP

よくわかる心理統計 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

心理統計の入門書

本書では、「なぜ心理学で統計が必要なのか」という根本的なことから、記述統計や推測統計まで説明しています。著者が行っている授業を再現したような内容のため自習用として最適です。また、統計の重要概念について丁寧に解説されているため、統計の基本原理について正しい理解をすることができます。

山田剛史 (著), 村井潤一郎 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2004/9/10)、出典:出版社HP

よくわかる心理統計 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

はじめに

■よくわかる心理統計
本書では, 「なぜ心理学で統計が必要なのか」という点から説明をはじめ, 記述統計,推測統計と話を進めています。その意味で,「よくある統計の本」 と思われる方もいらっしゃるかと思いますが,本書には以下のような特徴があります。
講義と同じような形で言葉を尽くして説明をしていますから,自習用として最適です。私たちが普段おこなっている授業を再現した感じに仕上がっています。

● 各トピックスは、2ページ, 4ページ, 6ページの読み切りですので,読み進めやすく,授業用テキストとしても使用しやすいと思います。
●「息抜き」として、会話形式の「コラム」を設けました。
●記号を使っていません。式展開は必要最小限に限っています。
● 例題は、日常的で身近なものにしてあります。
●手計算の方法について,間をとばさず順を追って丁寧に説明しています。
●標準的な心理統計のテキストに採用されている内容をひととおり含むよう
にしました。具体的には,変数と尺度水準,記述統計(1つの変数についての数値要約,2つの変数の関係), 推測統計(母集団と標本,統計的仮説検定の基礎,種々の検定手法, t 検定,分散分析)をとりあげています。
●特に分散分析では,さまざまなケースについて広くカバーし(具体的には2要因の混合計画まで),計算方法を説明しています。
●わかりやすくするために,統計の重要概念の説明を省略するのではなく,ここぞとばかりに一生懸命に説明しています。統計の基本的原理について 正しい理解をしてもらいたいという気持ちがあるからです。
●統計の核心部分について十分な説明をしましたので,この本を読んだ後、 さらに進んだ本を読むことができます。発展性があります。

以上のような特徴をもった本書ですが,本当に「よくわかる心理統計」なの でしょうか。この点については、読者の皆さんに判断していただきたいと思い ます。心理統計を理解するために、本書が少しでもお役に立てればと思います。

2004年5月
山田剛史・村井潤一郎

山田剛史 (著), 村井潤一郎 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2004/9/10)、出典:出版社HP

もくじ

■よくわかる心理統計
はじめに
プロローグ よくわからない心理統計
1 よくわからない心理統計
2 よくわかるための心理統計
I なぜ心理学に統計が?
1 心理学と数字
2 心理学と記述統計
3 心理学と推測統計
4 心理統計の実際

II 1つの変数の特徴を記述しよう
1 データとは
2 尺度水準
3 尺度水準と変数変換
4 データの図表化
5 代表値
6 散布度
7 標準化
コラム1 偏差値をめぐって

Ⅲ 2つの変数の関係を記述しよう
1 散布図
2 共分散
3 相関係数
4 相関係数の性質
コラム2回帰効果
5 クロス集計表と連関係数
コラム3 シンプソンの
パラドックス

IV 標本から母集団を推測しよう
1 母集団と標本
2 母集団分布を仮定する
3 正規分布とその性質
4 標準正規分布
5 標準正規分布表
6 標本分布1
7 標準誤差
8 標本分布2
9 推定と推定量
10 不偏性
11 不偏分散
コラム4 テレビの視聴率

V 統計的仮説検定って何だろう
1 統計的仮説検定の考え方
2 帰無仮説と対立仮説
3 有意水準
4 検定結果の報告
5 両側検定と片側検定
6 統計的仮説検定における2種類の誤り
7 統計的仮説検定の手順
8 標準正規分布を用いた検定 (1つの平均値の検定)
9t分布を用いた検定(1つの平均値の検定)
10 相関係数の検定
11 カイ2乗検定1(適合度の検定)
12 カイ2乗検定2(独立性の検定)
13 まとめ
コラム5有意は偉い?

VI 2つの平均を比べよう(t検定)
1 t検定による平均値の比較
2 独立な2群の平均値差に関する t検定1
3 独立な2群の平均値差に関するt 検定2
4 対応のあるt検定
5 t検定の前提条件とウェルチの検定
コラム6 t検定でやってはいけないこと

Ⅶ3つ以上の平均を比べよう (分散分析)
1「平均」の比較なのに,なぜ 「分散」分析?
2 分散分析の手順 (1要因被験者間計画)
3 多重比較
4 実験計画
51要因被験者内計画
6 2要因被験者間計画
7 交互作用
8 2要因被験者内計画1
9 2要因被験者内計画2
10 2要因混合計画」
コラム7適性処遇交互作用

Ⅷ 心理統計に関するちょっといい話
1 クロス集計表に関する注意点
2 検定に関する注意点
3 内的妥当性と外的妥当性
4 臨床心理学と統計1 (1事例実験)
5 臨床心理学と統計2 (メタ分析)
コラム8検定力の求め方

エピローグ さらにステップアップするために
1『よくわかる心理統計』を 読み終えた後に
2 読書案内

付録
1統計手法早見表
2主な統計的仮説検定の分類
付表
本書でとりあげた文献
さくいん

よくわかる心理統計

山田剛史 (著), 村井潤一郎 (著)
出版社 : ミネルヴァ書房 (2004/9/10)、出典:出版社HP

心理統計学ワークブック―理解の確認と深化のために

心理統計学をより深く理解する

心理統計学は、心理学の分野において苦手に感じる学習者が最も多いもののうちの一つです。本書では、心理統計が苦手な学習者のために、誤答に至ったプロセスと推察して詳しい解説が付けられています。心理統計学を深く理解し、有効に活用したいと考えている方におすすめのテキストです。

南風原 朝和 (著), 杉澤 武俊 (著), 平井 洋子 (著)
出版社 : 有斐閣 (2009/9/1)、出典:出版社HP

本書のコピー、スキャン,デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反です。

はじめに

実際に問題に取り組むことによって,理解が曖昧であったり誤解したりしていたことに気づき,そこからより深い理解に至るというのは,とても大切な学習のプロセスです。心理統計学のように苦手に感じる学習者が少なくない領域では,そのプロセスが特に重要だと思います。また,学習者もそのことを感じており,大学の授業で「お薦めの問題集はありませんか?」という質問を何度も受けました。しかし,心理統計学全般にわたって演習 用の問題を提供する本はなかなか出版されませんでした。そこで,それぞれの大学で心理 統計学の授業を担当している私たち3人が相談し,協力して作ったのがこのワークブックです。

本書は,学習者が自らの理解を確認し,さらに深化させるために主体的に演習問題に取り組むことや,教師が授業の流れに合わせて教材として利用することを想定して構成しました。内容は,基本的な用語の意味を問うものから,データを使った作業を通して学ぶことを意図したもの,さらには現実の研究場面でのデータ解析に近い状況での解釈や判断を求めるものまで、幅広く設定しました。また,概念や方法の間の相互関連がわかるような作問を心がけました。そして,各問題には、その問題で正答しなかった学習者を念頭におき,誤答に至ったプロセスを推察してくわしい解説をつけました。これは,問題に正答した場合でも,理解をより確かなものにするうえで役立つでしょう。
これらの演習問題に加え,本書では,心理統計学の新たな展開や歴史,やや高度な問題やコンピュータ・シミュレーションなど、理解を深めるだけでなく,統計的知識を広げられるような「トピック」も数多く掲載しました。

全体の章構成は著者の1人(南風原)が執筆した『心理統計学の基礎——統合的理解のために」(有斐閣アルマ)に準拠していますが、どのテキストを使っているかたにも柔軟に問題を選択して利用してもらえるよう、それぞれの問題にその内容をあらわす見出しを付けて、目次にその一覧を示しました。また、テキストによって記号の使い方に違いがある場合があることをふまえ、付録に本書で使用している記号の一覧を示して、読者が使用しているテキストにおける記号との照合ができるようにしました。

心理統計学のワークブックということで,企画の段階で時間をかけて検討したことの1つに、ソフトウェアを使った実習をどう位置づけるか、ということがありました。広く流 通している市販のソフトウェアの使い方を解説し、実習のための課題を用意する,ということも考えました。しかし、そのような内容の書物は数多く出ていることと,その内容を含めることで,理解を確認し深化させるための問題数を削減することになっては当初の目的が達成できなくなると考え,ソフトウェア実習という内容は省きました。その代わり,ほとんどのパーソナル・コンピュータに装備されている表計算ソフトウェアであるExcelと、無料でダウンロードして使用でき、最近急速に利用が広まっているRについて、付録で入門的な解説を行い、本書の問題やトピックにおいても一部使用しました。一般に統計学の学習において,ソフトウェアを使いこなすスキルを磨くことや、ソフトウェアで実際にデータ解析を体験しながら理解を深めることはとても重要なことですので,それぞれの環境の中で、ソフトウェアを用いた学習も並行して進めていただきたいと思います。

「心理統計学の基礎」の「はじめに」にも書いてありますが,私たちは、私たちは「統計学は難しい」と実感しています。本書を作る過程でも、自分たちの理解が完全なものでないことに何度か気づかされました。ですから、読者のみなさまにも,本書の問題にすぐに正答できなくても、解説やテキストを参老にして根気強く学習を続けてほしいと思います。本書が,心理統計学を深く理解し,有効に活用したいと考えている読者のかたに,少しでもお役に立てればと願っています。
最後になりましたが、有斐閣書籍編集第二部の櫻井堂雄さんと中村さやかさんには,企画の段階から完成に至るまで大変お世話になりました。お二人ともご自身の大学時代の心理統計学の学習経験をフルに生かして、たくさんの貴重なご意見をくださいましたこと に、心より感謝申し上げます。

2009年6月
南風原朝和
平井洋子
杉澤武俊

著者紹介

南風原朝和(はえばらともかず)
1977年,東京大学教育学部卒業
1981年,アイオワ大学大学院教育学研究科博士課程修了(Ph.D.)
現在,東京大学名誉教授
主要著作:『行動科学における統計解析法」(共著,東京大学出版会,1990年),「心理学研究法入門−調査・実験から実施まで」(共編著,東京大学出版会,2001年),『心理統計学の基礎−統合的理解のために』(有斐閣,2002年),『臨床心理学をまなぶ7 量的研究法』(東京大学出版会,2011年),『統·心理統計学基礎——統合的理解を広げ深める』(有斐閣,2014年),『教育心理学 第3版』(共著,有斐閣,2015年),『検証 迷走する英語入試一スピーキング導入と民間委託』(編著,岩波書店,2018年)

平井洋子(ひらいようこ)
1984年、東京大学文学部卒業
1996年,東京大学大学院教育学研究科博士課程单位取得退学
現在,首都大学東京人文社会学部人間社会学科心理学教室教授
主要著作・論文:「測定・評価に関する研究の動向一尺度による測定と「定型」再考」(「教育心理学年報』 40,112-122,2001年),「心理統計技法』(分担執筆,福村出 版,2002年),「心理学研究法の新しいかたち」(分担執筆,誠信書房,2006年),「見直そう、テストを支える基本の技術と教育』(分担執筆,金子書房,2010年)

杉澤武俊(すぎさわたけとし)
1998年,東京大学教育学部卒業
2006年,東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(博士(教育学))
現在,早稲田大学人間科学部学術院准教授
主要著作:『Rによる新しい統計学』(共著,オーム社,2008 年),「心理学檢定公式問 題集」(分担執筆,実務教育出版,2009年),「Rによる心理データ解析」(共著,ナカニシヤ出版,2015年),「心理学のためのサンプルサイズ設計入門」(分担執筆,講談社, 2017年)

南風原 朝和 (著), 杉澤 武俊 (著), 平井 洋子 (著)
出版社 : 有斐閣 (2009/9/1)、出典:出版社HP

目次

第1章 心理学研究と統計
問題
1 心理学研究の流れ
2 仮説の正しさと得られる結果
3仮説通りの結果が得られない原因
4 心理学研究のアプローチ法
5 時間的観点による調査研究の分類 解答と解説
6 測定の定義
7 データの図示
8 母集団とサンプル
9 記述的指標
トピック
1-1 データの視覚的表示の工夫
1-2 統計的方法の間の関連

第2章 分布の記述的指標とその性質
問題
1 記述的指標の位置づけ
2 平均と中央値の性質
3 極端な値に関連する用語
4 外れ値
5 数式による散布度の定義
6 分散と標準偏差の性質
7 線形変換後の記述的指標(1)
8 線形変換後の記述的指標 (2)
9 線形変換と尺度体系
10 2種類の平均偏差の大小
11 合成変数と集団の合併に関する公式
12 集団を合併したときの記述的指標
13 標準化と標準得点
14 標準化の応用
解答と解説
トピック
2-1対数間隔尺度、
2-2 平均と中央値の性質の確認

第3章 相関関係の把握と回帰分析
問題
1 散布図と相関関係の指標
2 2変数間の関連に関する統計量
3 共分散の性質
4 変数の変換と共分散
5共分散の最大値
6 共分散と相関係数の関係
7 相関係数の性質
8 合成変数の分散,共分散,相関係数
9 条件付きという考え方
10 最小2乗法による推定
11 回帰分析の用語
12回帰分析の実際(1)
13回帰分析の実際 (2)
14回帰分析の実際 (3)
15回帰分析の性質 (1)
16 回帰分析の性質 (2)
17 残差の意味
18 選抜効果
19 平均への回帰
20 変数の目盛りと相関係数
21得点変化の解釈
22 研究のタイプと変数間の関連性
23 相関関係と共変関係
24 因果関係の主張
25 測定の質をあらわす用語
26 妥当性の証拠
27信頼性の求めかた
28 信頼性と真値モデル ,
29 妥当性と信頼性の性質
30 相関の希薄化
解答と解説
トピック
3-1 最小2乗法を使わずに回帰直線を求める
3-2 テストの a係数を導く

第4章 確率モデルと標本分布
問題
1 統計的推測の用語(1)
2 サンプリングの方法(1)
3 サンプリングの方法(2)
4 母集団分布の役割
5 分布の名称
6変数の名称
7 確率的に変動するもの、しないもの
8統計的推測の用語(2)
9 不幅性と不偏推定量
10さまざまな標本分布
11 平均や比率の標本分布
12標準正規分布における確率
13 一般の正規分布における確率
14 標本分布における確率の意味
15 平均の差の分布
16 標準誤差の計算と解釈
17 標準誤差に基づくサンプルサイズの計算
18度数の標本分布
19周辺分布
20相関係数の標本分布
21フィッシャーのZ変換
22ランダム化とランダムサンプリングの区別
23頑健性
解答と解説
トピック
4-1 合成変数の性質を利用した2項分布の平均と分散の導出
4-2 コンピュータ・シミュレーションによる標本分布の近似

第5章 推定と検定の考え方
問題
1 統計的推測の方法の整理
2推定に関する用語
3 統計的検定に関する用語
4 いろいろな母数とその推定量
5 推定量と推定値の間の関係
6 最小2乗法による推定
7 最尤推定法と尤度
8 最尤推定法の考え方
9 相関係数の標準誤差とサンプルサイズ
10 検定の考え方と手続き
11 相関の検定と数表利用
12t分布における棄却の限界値と棄却域
13 検定における判断と確率 (1)
14 検定における判断と確率 (2)
15 有意水準やサンプルサイズの影響
16 p値の性質と意味
17 検定における2種類の誤り
18 検定力と検定力分析
19 相関係数の検定と結果の意味
20 フィッシャーのZ変換と検定力の計算
21 検定と信頼区間の関係
22 信頼区間の性質 (1)
23 信頼区間の性質 (2)
24 統計的推測の用語
解答と解説
トピック
5-1尤度関数と対数尤度関数
5-2 最尤法の限界とベイズ推定
5-3 有意水準5% はいつ誰が決めたのか
5-4 検定か区間推定か

第6章 平均値差と連関に関する推測
問題
1 研究法に関する用語
2 平均値差と連関の検定に関する用語
3 検定で用いられる式の整理
4 検定における仮定
5 独立な2群の平均値差の検定
6 独立な2群の平均値差の標本分布
7 平均値差の標本分布が正規分布にならない理由
8 検定結果に基づく信頼区間の計算 (1)
9 信頼区間の性質と意味
10平均値差と効果量
11 効果量と検定力,サンプルサイズ
12 効果量に基づく平均値差の検定
13 群間の対応関係の判断
14 マッチングの利点
15 検定結果に基づく信頼区間の計算 (2)
16 群間の相関と検定力との関係
17質的変数に関する用語
18 独立な2群の比率差の検定
19 カイ2乗検定)
20ファイ係数
21クラメルの連関係数の計算
22 連関の大きさを示す3つの統計量の性質
23 検定方法の選択
24 平均値差や比率差の検定
25 検定方法の選択と実行(1)
26 検定方法の選択と実行 (2)
27 検定方法の選択と実行 (3)
28 検定方法の選択と実行 (4)
29 検定方法の選択と実行(5)
解答と解説
トピック
6-1 ノンパラメトリック法
6-2階層的データの取り扱い

第7章 線形モデルの基礎
問題
1 分散の分割
2 平方和とその分割
3 平方和とその自由度
4 自由度
5 独立変数の効果の検定
6 2値変数の効果の検定と2群の平均
7線形モデルのバリエーション
8 ベクトルによる変数と統計量の表現
9 回帰分析のベクトル表現
10 ベクトルによる平方和の分割の導出
値差の検定の関係
解答と解説
トピック
7-1 ベクトル表現を用いて回帰係数を導く

第8章 偏相関と重回帰分析
問題
1 疑似相関
2 変数の影響を除いた成分
3 変数の影響を除いた相関係数・回帰 係数
4 偏相関係数の計算
5重回帰分析
6 重相関係数
7重回帰分析の計算
8 多重共線性
9 重回帰分析の性質 (1)
10 重回帰分析の性質 (2)
11 偏回帰係数の検定と平方和のタイプ
12 重回帰分析における統計的推測の前提条件
13 分散説明率の増分に関係するもの
14 自由度調整済み重相関係数
15 重回帰分析の結果の解釈
解答と解説
トピック
8-1 部分相関と偏相関の使い分け
8-2 偏相関係数を導く
8-3 量的な独立変数間の交互作用

第9章 実験デザインと分散分析
問題
1 分散分析の適用場面
2 要因と水準
3 実験法の用語
4 平方和の分割
5 完全無作為1要因デザインにおける分散分析の性質(1)
6 完全無作為1要因デザインにおける 分散分析の性質(2)
7 完全無作為1要因デザインの分散分析表
8 外れ値除去による検定結果への影響
9 全体的な分散分析とテューキーの事後検定の結果
10 完全無作為2要因デザインにおける分散分析の性質
11 完全無作為2要因デザインの分散分析表
12 完全無作為2要因デザインの分散分析と事後検定
13 アンバランスデザインの影響(1)
14 アンバランスデザインの影響(2)
15 アンバランスデザインと平方和割
16 変量効果と固定効果
17 球面性の仮定
18 t検定と分散分析の関係
19 分析手法の選択
20 共分散分析
21 高次の交互作用
解答と解説
トピック
9-1 複数の検定結果の解釈
9-2イプサティブデータの分散分析

第10章 因子分析と共分散構造分析
問題
1 因子分析に関する基本的な用語等
2 因子分析のアプローチ法
3 1因子モデルにおける相関係数の復元
4 直交解と斜交解
5 因子分析と回帰分析の関係
6 因子分析の性質
7因子パタン,因子構造,準拠構造
8 単純構造の意味
9 因子の回転の目的
10 因子の回転の性質
11 因子の回転法
12 初期解の推定法
13 ソフトウェアの出力の解釈
14 共分散構造分析関連の用語
15 モデルの識別性
16 不適解 17モデルの適合度
18 同値モデル
19 希薄化の修正
解答と解説
トピック
10-1 因子分析と主成分分析の違い
10-2 共分散構造分析における適合度検定

引用・参考文献
付録
A 標本統計量と母数の記号一覧
B Excelの基本的な使い方
CRの基本的な使い方
D 付表・付図

南風原 朝和 (著), 杉澤 武俊 (著), 平井 洋子 (著)
出版社 : 有斐閣 (2009/9/1)、出典:出版社HP

伝えるための心理統計: 効果量・信頼区間・検定力

統計解析のあり方がわかる

最近の統計解析を使用した研究報告において、今まで重要視されていなかった効果量・信頼区間・検定力の報告が不可欠なってきています。本書は、注目されつつある効果量・信頼区間・検定力についての情報を体系的に解説している本です。読者として、学部学生から研究者まで幅広い方々が対象になっています。

大久保街亜 (著), 岡田謙介 (著)
出版社 : 勁草書房 (2012/1/26)、出典:出版社HP

まえがき

近年,帰無仮説検定にかたよった旧来の統計解析に,確実に変化が起こっています.この変化は心理学だけに見られるわけではありません.医学,公衆衛生学, 生態学など,さまざまな分野で変化が見られます。心理学では,この変化を統計改革 と呼ぶ研究者もいます(Cumming, Fidler, Leonard, Kalinowski, Christiansen, Kleinig, LO, McMenamin, & Wilson, 2007; Finch, Cumming, Williams, Palmer, Griffith, Alders, Anderson, &Goodman, 2004).

帰無仮説検定の問題点や限界は,古くから指摘されて来ました.入門レベルの統計解析の講義でも、そのいくつかにふれるはずです.たとえば,帰無仮説 検定が「差がない仮説」を調べるには不適切な枠組みであることや,有意水準 設定の恣意性などです。これらは,講義における頻出例でしょう。
最近,統計解析やその結果の記述に関して、「改革」が進んでいます。主に論文投稿の規則に関して、改革は今でも進行中です。その結果,帰無仮説検定に 対する過度な依存が少しずつ弱まってきました。たとえば,論文を投稿する際, 原稿に帰無仮説検定の結果しか記載しなかったら,(国際的な論文誌で)採択される可能性は高くないでしょう。少なくとも審査の過程で何らかの指摘を受けると思います(そのような例を多々見てきました).実際,多くの論文誌では,帰無 仮説検定を行う場合,あわせて効果量の報告を義務づけています。国際的な論 文誌の最新号を手にとって見てください、結果のセクションには,必ずと言ってよいほど,効果量が書かれているはずです。
しかし残念ながら、日本で改革の兆しはほとんど見られません。筆者は,心理学における日本語論文を対象に,最近の動向を調査しました(大久保, 2009). その結果,効果量や信頼区間の報告といった統計改革に関連した変化は,日本語論文に全く見られなかったのです.

改革が進まない背景には,情報不足があるのかもしれません。たとえば,箏者は(大久保は), 効果量や信頼区間に関する教育を,大学,大学院を通してきたちんと受けたことがありません.当時,私が読んでいたテキストにも,ほとんどふれられていませんでした.もちろん,これはわたしの不勉強ゆえかもしれません.しかし,情報不足の可能性について,他の研究者も指摘しています.井上 (2008) や水本・竹内(2008)は,効果量や信頼区間そして検定力について,日本語で体系的に解説した書籍がほとんどないと述べています.実際,英語で書かれたものですら,読みやすいものが出版されるようになったのは最近です.もちろ ん,日本でもメタ分析に焦点をあて効果量について詳述した芝・南風原 (1990) や. 入門書にもかかわらず効果量や信頼区間の説明に紙幅を割いた南風原(2002)のような意欲的な取り組みもありました.それでも,あくまでも例外的なものでしたし,実際のデータ解析に活用できるほど詳しくはありませんでした。

帰無仮説検定は,まだまだ有効な枠組みです。心理学では,現在でもほぼすべての実証的な研究で,帰無仮説検定が使われています.しかし,それだけで は十分な情報を読者に伝えることができません。だからこそ,統計改革が進んできたのです。
このような状況を鑑み,筆者らは近年の統計改革を受けて起こった変化を理論と実践の両面からまとめることにしました。具体的には,研究報告で最近は不可欠となった効果量,信頼区間,検定力を中心に詳細に取り上げました.これらについて,実際の研究場面での使用に耐えうる情報を本書に載せました。そのまま論文の執筆にも対応できるように APA Publication Manual 第6版(American Psychological Association, 2009) にしたがって,統計記号(p. 115)を記述しました.また,単に実践的なだけでなく,統計改革に至る歴史的,理論的な背景もあわせて紹介しました。これは,本書を単純なデータ分析プロセスだけを書いた無味乾燥なハウツー本にはしたくなかったからです.
そこで,本書は2部構成とし,第I部において改革が起こった歴史的,理論的背景をまとめ,第II部では効果量,信頼区間,検定力の理論的な説明と計算方法など実践的な使用法を紹介しました.内容は,認知心理学を専攻し,主にユーザーとして心理統計に関わってきた大久保と,心理統計それ自体を研究対象としてきた岡田が,お互いの立場から議論し決定しました.そして, 1, 2,4, 5音は主に大久保が, 3,6章および付録は主に岡田が担当し,その後,議論を重ね修正を行いました。

本書では読者として,記述統計や推測統計の基礎を理解し,実際にデータを取り扱う人たちを想定しています.具体的には、学部学生から,大学院生,研究者に至る幅広い方々が対象です。内容は決して難解なものではありません。効果量も信頼区間も検定力も最先端の解析手法ではありません。昔から使われてきたものが,改めて脚光を浴びるようになったものです.統計解析の入門書を 読んだことがある,あるいは統計解析の入門クラスの単位を取得済みなら,十分に理解していただけるでしょう。我々としては,理論と実践を兼ね備えた読みやすい本にすべく準備したつもりです。もちろん,その成果については読者の皆様に判断していただくしかありません。

最後になりますが,本書は専修大学社会知性開発研究センター/心理科学研 究センターにおける研究プロジェクト「融合的心理科学の創成:心の連続性を探る(平成 23 – 27 年度文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業,S1101013)」の成果の1つです。このプロジェクトにおいて,個々の専門分野をこえて議論する研究の場を与えていただけたからこそ,本書をまとめ上げることができました.また,本書の企画にあたり、勁草書房の永田悠一氏に大変お世話になりました。改めましてみなさまに厚く御礼を申し上げます.

平成23年夏
大久保 街亜

大久保街亜 (著), 岡田謙介 (著)
出版社 : 勁草書房 (2012/1/26)、出典:出版社HP

目次

まえがき
第Ⅰ部 背景と歴史
第1章 心理統計における新展開:統計改革がはじまった
1.1 Cohen (1994)
1.2 心理学における統計改革
1.3 さまざまな分野における統計改革
1.4 日本における統計改革
1.5 統計改革の現状と将来
1.6まとめ

第2章 帰無仮説検定:その論理と問題点
2.1 「有意」の誕生
2.2帰無仮説検定の論理
2.3 帰無仮説検定の問題点
2.4 帰無仮説検定を擁護する
2.5 まとめ

第II部 理論と実践
第3章 効果 :効果の大きさを表現する
3.1 効果量とは
3.2 d族の効果量
3.3 r族の効果量
3.4 効果量の解釈
3.5 ノンパラメトリックな効果量
3.6 元の測定単位での効果量
3.7 効果量を求める(実践編)
3.8 まとめ

第4章 信頼区間:区間推定と図のカ
4.1 検定と推定
4.2 母平均の信頼区間
4.3 頻度の信頼区間
4.4 相関係数の信頼区間
4.5回帰分析の信頼区間
4.6 効果量の信頼区間
4.7 図の力
4.8 まとめ

第5章 検定力:研究の信頼性と経済性を高めるために
5.1 検定力とは何か?
5.2 なぜ検定力を分析するか?
5.3検定力と標本サイズ
5.4 高すぎる検定力・低すぎる検定力
5.5 適切な検定力
5.6 さまざまな検定力分析
5.7まとめ

第6章 さらなる改革に向けて
6.1 メタ分析
6.2 ベイズ統計学によるアプローチ
6.3 Prep

付録:Rプログラム
第3章のR プログラム
第4章のR プログラム
第5章のRプログラム
第6章のR プログラム

あとがき
参考文献
索引

コラム
コラム1:統計的有意性と臨床的意義
コラム2: Fisher vs. Neyman & Pearson
コラム3:有意水準ではなく、正確なp値を報告しよう
コラム4: Stiglerの法則
コラム5:標準偏差と標準誤差
コラム6:白衣の天使と円グラフ
コラム7:マジカルナンバー2010
コラム8: Fisherの抱えていた矛盾

大久保街亜 (著), 岡田謙介 (著)
出版社 : 勁草書房 (2012/1/26)、出典:出版社HP

統計嫌いのための心理統計の本:統計のキホンと統計手法の選び方

統計の全体像がつかめる!画期的入門書

本書は、前半では統計や統計ソフトの使い方がわからない人が統計に詳しい人を頼るために必要な知識について紹介し、後半では主要な統計手法ついて、どのような全体像なのか掴んでいきます。そのため、統計手法や数式の詳しい解説や統計ソフトの使い方は書かれていないので、統計が嫌いな人でも読み進めることができます。

白井 祐浩 (著)
出版社 : 創元社 (2017/1/25)、出典:出版社HP

目次

はじめに――統計における3つの理解
第I部 統計が得意な人を頼るには
第1章統計が得意な人を頼るには
第2章統計手法を選ぶ上で知っておくべき用語
第3章尺度水準と代表値・散布度
第4章 統計手法を選択するための視点
第5章 統計手法の簡単な解説と研究例 —

第II部 心理学でよく用いられる統計手法
第6章 主要な統計手法を理解する上で知っておくべき用語
第7章 統計の種類と統計的仮説検定の考え方
第8章 t検定
第9章 分散分析
第10章 x 検定
第11章 ピアソンの積率相関係数

*付録――統計手法チェック表
*文献紹介1―統計の解説書
*文献紹介2――統計ソフトの解説書
*索引
*おわりに

Column1 量的研究と質的研究
Column2 分散と標準偏差
Column3 心理現象は順序尺度? 間隔尺度?
Column4 関係と違いを区別する方法
Column5等しいことを言いたい時は?
Column6 対応のないt検定と対応のあるt検定
Column7 統計研究は客観的か? (1)―解釈における主観性
Column8 統計研究は客観的か? (2) なぜ有意水準は5%なのか
Column9 分散分析と x^検定でわかることの違い
Column10 直線関係と共分散――なぜ直線関係で共分散が最大になるのか

白井 祐浩 (著)
出版社 : 創元社 (2017/1/25)、出典:出版社HP

はじめに 統計における3つの理解

0-1 本書の取扱説明書

本書は統計の専門家になるための本ではありません。「統計や数式が嫌い」で「本 を読んでもよくわからない」けれど、「研究で統計を使わないといけないので困っている」という統計嫌いの人のための本です。そのため、本書を読むに当たっては 次の点にご注意ください。

・本書を読んでも、統計で使われる数式や統計手法の正確で詳しい説明はありません。
・統計ソフトの使い方についての解説もありません。

これらの点について知りたい人は巻末に「文献紹介」として個人的におススメの 本を紹介していますので、そちらをご覧になって自分に合う本を探してみてください。本書で紹介するのは次のようなことです。

1 統計がわからないし統計ソフトの使い方もわからない人が、統計に詳しい人を頼るために必要な知識について紹介します。
2 主要な統計手法について、何となくこんなことをしているんだなという全体像 がつかめる形で紹介します。

本書は2部構成になっていますが、すべてを通読する必要はありません。自分に とって必要なところを選んで読んでください。
第1部では、1の統計に詳しい人を頼るために必要な知識について説明していま す。「別に統計について知りたいわけではないから、統計に詳しい人を頼るために 必要なことだけわかればいい」という人や、「統計手法の詳しい内容はわからなくていいから、どんな統計手法を使えばいいかがわかればいい」という人は第1部を見てください。
第II部では、2について、次節で紹介する「数式による理解」「文章による理解」「イ メージによる理解」という3つの理解の仕方を用いて主要な統計手法の解説を行い ます。少し前向きに「数式ばかりの統計の本は読んでもよくわからないけれど、少 しでも統計を理解したい」という人や「細かいところはいいから、統計の全体像を つかみたい」という人は、第II部を見てください。ただし、あくまで統計について の大まかなイメージを持つためのものとなっています。 また、本書は心理統計の本ということで、心理学を専攻する学生を念頭に置いて います。そのため、研究の具体例には心理学 (特に臨床心理学)の研究例を多く用いて いますので、その点はご了承ください。もちろん、内容としては他の学問領域でも 役立つ知識になっていますので、心理学以外を専攻している人もぜひ研究を進める 上での参考にしてください。

0-2 統計理解の3つの方法

みなさんは、本書を手に取ったということは、「統計が苦手だ。本を読んでも意 味がわからない」という人だと思います。では、どうしてそんなに統計に対する苦 手意識を持ってしまうのでしょうか?その理由の1つは、統計学は数学のイメー ジが強く、やたらと数式が並んでいるため、とっつきにくいという点が挙げられる と思います。特に、心理学は学問分野としては人文・社会科学に属しているため、 文系から心理学に来た人の中には「こんなはずじゃなかった……」と頭を抱える人 も多いのではないかと思います。数学アレルギーの人にとっては、統計が数学の一 分野というだけで、拒絶反応を起こしてしまうかもしれません。
また、それだけではなく、統計用語についても「母集団」や「分散」など堅苦しい 言葉が並び、あたかも知らない言語で書かれた本を読んでいるかのような感覚に陥る人もいるのではないかと思います。この文章での説明の難解さも統計嫌いを生み 出す要因の1つと言えるでしょう。
では、数式は見るだけでトリハダが立つし、難解な文章は読む気にならないという人は統計を理解することはできないのでしょうか? そんなことはありません。 私は統計には次の3つの理解の仕方があると考えています。

1数式による理解:数式を用いて統計を理解する方法。
2文章による理解:文章を用いて統計を理解する方法。
3 イメージによる理解:イメージを用いて統計を理解する方法。

数式による理解、文章による理解が難しい人でも、実はイメージという方法を用 いることで思いのほかすんなりと統計が理解できたりします。3つの理解の仕方に はそれぞれのメリットとデメリットがあり、どの理解の仕方が合っているかは人それぞれだと思います。この中から自分が得意なやり方を選んで統計を学んでいけば いいのです。まずは、この3つの理解の仕方がどのようなものなのかについて紹介 したいと思います。

0-3 数式による理解

数式による理解は数式を用いて統計を理解する方法です。多くの統計の専門書は 数式を用いて解説をしていますが、どうして数式が使われるのでしょうか?
その理由は、数式が数を扱う上で非常に効率のよい言語だからです。言葉で説明 すると何ページもかかってしまう説明を、たった1つの数式で説明することが可能 です。しかも、なかなか言葉にしにくい抽象的なことを、数式はいとも簡単に表現 します。例えば、「2を基準にして、ある値が1ずつ増えると、もう1つの値が2ずつ増える状態」を、数式では「y%3D2x+2」と非常にシンプルに表現することができ ますし、数式の意味さえわかっていれば、文章で表現されるよりも数式で表現されたほうがわかりやすくもあります。さらに数式の長所としては、値を入れればその まま答えを計算することができるという点があります。「2を基準にして、ある値 が1ずつ増えるともう1つの値が2ずつ増える状態で、ある値が3の場合、もう1つ の値は?」と聞かれても、とっさに答えは出てきません。しかし、数式で示されれば、xに3を代入すればいいということさえ知っていれば、y%3D2×3+2=8とすぐ に答えを出すことができます。
このように、数式による理解にはシンプルさと実用性という長所がありますが、 当然、短所もあります。1つは、数式の意味やルールがわからなければ、まったく 意味がわからないという点です。英語も日本語も単語や文法を理解していなければ 文章が読めないように、数式の意味やルールを理解していなければ数式によって統計という文章を理解することはできません。数式に関する基礎知識があって初め て、数式による理解が可能になります。心理学を学ぶ文系の人はそもそも数式という単語に慣れ親しんでいないため、数式で表現された統計という文章を読むことが できないのは当たり前といえば当たり前です。また、数式を用いた説明は非常に論 理的で数式の積み重ねで成り立っているので、わかる人にはクリアに理解できるの ですが、わからない数式が1つ出てくると後はお手上げ状態になってしまいます。 何となくわかるとか、そこそこわかるという理解の仕方はあり得ません。数式による理解は、数式という単語に慣れ親しんでおり、理路整然とした論理的な考え方を 持つ人に向いている理解の仕方と言えます。
数式による理解の例として、数式による平均値 (754ページ) と分散(754ページ)の 説明をイメージ0-1に載せています。

0-4 文章による理解

文章による理解は文章で統計を理解する方法です。数式をほぼ使わず、文章だけ で説明している統計本もいくつか出ています。数学が苦手な人にとってはまだ手に 取りやすいですね。
文章による理解の長所としてまず挙げられるのは、数式の意味やルールを知らなくても理解ができるという点です。数学の基礎知識を持っていない人でも、日本語 はわかりますよね。文章による理解は数式という言葉を知らなくても、日本語さえ わかればある程度は理解ができます。これは文系の人にとっては非常に大きな長所 になります。また、1つの数式は別の数式による表現は難しいので、数式による理 解では補足や説明のバリエーションはありません。しかし、文章による理解であれ ば、例を挙げたり補足説明を加えたりすることで、何通りもの説明を行うことがで きます。このような説明のバリエーションがあることで、1つの説明でわからなくても他の説明で補足ができるため、すべては理解できなくても何となくはわかると いう中間的な理解が可能になります。
一方、欠点としては、たった1つの数式で説明できることを長々と説明しなくて はならず、また数式は抽象的で言葉にしづらい言語なので、説明がややこしくなってしまう点があります。さらに、数式は1つの意味しか持たないため誰が読んでも 同じ理解につながりますが、日常語は読み手の解釈によって誤解を生んでしまうこともあります。このややこしさといろいろな解釈を許す可能性が、文章による理解 を難しくしてしまうところと言えます。
このことから、文章による理解には当然、文章の読解力が必要になります。言葉 になりにくい数式を無理に言葉にしているため、うまく表現できないところや欠落 してしまっているところが出てくるのは仕方ありません。したがって、その点を自 分で補いながら読み進んでいくことが必要になります。また、ややこしい説明から 本質的な部分を見抜く力も必要となるでしょう。文章による理解は、文章の読解力 に優れた、ややこしい文章から本質を拾い上げられる人に向いている理解の仕方だ と考えられます。
文章による理解の例として、文章による平均値と分散の説明をイメージ0-2 に 載せています。

0-5 イメージによる理解

イメージによる理解は視覚的なイメージを利用して統計を理解する方法です。最 近はマンガやイラストを用いて説明する統計本も増えています。私の場合は統計を 教える時に図を用いることが多いのですが、視覚的なイメージが持ちやすいように 伝えることで直感的な理解につながるようです。文章だと長々と説明しなければな らないことが、図やイラストを用いることで、一目で何となく全体的な意味が理解 できます。
イメージによる理解の長所は、何となくではあってもわかりやすい、直感的理解 が可能な点です。数式もややこしい説明も必要なく、わずかな説明だけでその本質 的な意味や全体像が理解できるため、入り口としては非常に入りやすい理解の仕方 と言えます。
一方、欠点としては、直感的であるがゆえに大まかな理解にとどまってしまうところがあります。何となくはわかるけれどいざ説明しようとするとうまく説明でき なかったり、大雑把にはわかるけれど詳しいことはよくわからなかったりすること があります。その点では、理解の入り口には良いですが、より詳しく知ろうと思ったらさらに数式による理解か文章による理解にステップアップしていく必要がある でしょう。
イメージによる理解は、視覚的なイメージが得意で想像力が豊かな人、まず統計 の全体的な大枠を理解したい人に向いている理解の仕方と言えるでしょう。臨床心 理学を学んでいる人は特に統計が苦手という人が多い気がしますが、イメージ力や 直感力が重要な臨床心理学を学んでいる人にとってはこの理解の仕方が向いている のかもしれません。
イメージによる理解の例として、イメージによる平均値と分散の説明をイメージ 0-3に載せています。

0-6 3つの理解の方法と意味による理解

ここまで、統計の3つの理解の方法について紹介してきました。実際には、数式 と言葉とイメージの3つの理解の方法のすべてで理解して初めて、統計を本当に理 解したことになるのかもしれません。
そうは言われても、3つの理解の仕方をすべて理解できる自信がないと思う人も いるでしょう。ご安心ください。実は、この3つの理解は相互に関係し合っていま す。例えば、文章による理解で統計の意味がわかれば、それをもとにしてイメージ をふくらませていくことでイメージによる理解が、数式に当てはめていくことで数 式による理解が可能になります。数式による理解で統計の意味が理解できれば、数 式で理解した意味に沿って文章を読み解いていくこともできれば、イメージに置き 換えることもやりやすくなります。イメージによる理解で全体像をつかめば、後は それに沿って数式や文章を読み解きやすくなります。
いずれか1つのやり方で理解ができれば、残りの理解の仕方もわかりやすくなる のです。大切なのは、どの方法でもいいのでとりあえず1つのやり方で理解することです。初めの取りかかりが数式なのか、文章なのか、イメージなのかの違いに過 ぎません。自分が一番わかりやすい方法で、統計の意味(それが何を意味しているのか、 何をやっているのか)を理解すること、つまり「意味による理解」を行うことが重要な のです(イメージ0-4)。
本書では、これら3つの理解を駆使しながら、一見難しくお手上げ状態だと感じてしまうような統計をわかりやすく紹介していきたいと思います。少しでもみなさんの統計理解の役に立てたら幸いです。

白井 祐浩 (著)
出版社 : 創元社 (2017/1/25)、出典:出版社HP

Excelで今すぐはじめる心理統計 簡単ツールHADで基本を身につける (KS専門書)

レポートも安心!統計の基礎もコツも実感できる

本書は、今手元にあるデータをすぐに分析しなければならない統計に自信のない人向けに書かれた本です。統計の理論的な説明はほとんどせずに、Excel上で動く統計ソフトであるHADの使い方に焦点を当てています。分析の時間に余裕のない統計初心者の方におすすめの統計本です。

小宮 あすか (著), 布井 雅人 (著)
出版社 : 講談社 (2018/1/27)、出典:出版社HP

Excelで今すぐはじめる心理統計 簡単ツールHADで基本を身につける (KS専門書)

注意

・本書に記載したURL ソフトウェアのバージョンなどは予告なく変更されること
があります。
・HAD は「無保証」のソフトウェアです。http://norimune.net/696(HAD 開発者 による「HADとは」のページ, URL 確認:2017年11月)のご一読をお願いいたします。
・Windows®, Excel® は、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
・本書ではR,TMマークは明記しておりません。
・本書では、Windows7 Enterprise, Excel2016. HAD16_008 で動作確認を行っております。同じソフトウェアを用いていても、環境の違いバージョンアップ時の変更その他により、操作手順などが本書記載のものと異なる可能性があります。
・統計解析を実行した結果につきましては、著者および弊社は一切の責任を負いません。
・本書で用いたデータは,http://www.kspub.co.jp/book/detail/1548121.html よりダウンロードできます。

はじめに

この本は,「あまり統計には自信がないけれども,今手元にデータ があって,とりあえず何とかして分析をしなくちゃいけない」人向けに書かれた応急処置の本です。この本では,統計の理論的なところや細かいところの説明は最低限にとどめ,統計ソフトである HAD の使い方に焦点を当てた構成をとっています。HAD は Excel 上で動くマクロプログラムと呼ばれるもので,心理統計で使いやすいよう に設計されています。関西学院大学社会学部の社会心理学者・清水 裕士先生によって開発され、無料で公開されています。心理学者に よって開発された心理統計用のプログラムなので,「かゆいところに 手が届く」として、心理学者の間では評判です。

HAD にはたくさんの機能があります。ただ,たくさんの機能がありすぎて、何をどう使えばいいのか、はじめて分析しようとする初 心者は迷子になることがあります。そこでこの本では,初心者がよく使う分析に絞って使い方を説明しています。すべての機能には触 れません。この本の中で扱う以外にもHAD でできることはたくさんありますので、気になったら清水先生のホームページや HAD の 説明書をのぞいてみてください。

ですから,この本はすでに統計に詳しい人には向いていませんし, 手元にデータがない人にも(今はまだ)あまり向いていません。も しあなたが統計について詳しいなら,この本で紹介する HAD では なくて、まずR や SAS で分析することを考えてみてください。デー タのない人は、データ収集を終えてから,あるいは何かしらのサン プルデータを入手してから,この本に戻ってきてください。本はいつまでも待ってくれます。時間的な余裕のある人は,統計について 詳しく書かれた別の本を読んで一から勉強しましょう。今日では、統計の理論についてわかりやすく説明してくれるよい本がたくさん 出ています。
さて、準備はできましたか? 手元にデータはありますか? 皆さんのお手持ちのデータ,一緒に分析してみましょう。

2017 年 12月
小宮あすか・布井雅人

小宮 あすか (著), 布井 雅人 (著)
出版社 : 講談社 (2018/1/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに
[第0章] HADの準備
0.1 HADのダウンロード方法
0.2 データの準備をする
0.3 HADの利用について
[第1章] ちょっと理論的な話1 心理学でなぜ統計が必要なのか
[第2章] ちょっと理論的な話2 尺度水準
[第3章] 記述統計 データの分布を知る・代表値と散布度
3.1 データの分布を知る
3.2 HADで度数分布表・ヒストグラムを出力する
3.3 代表値
3. 4散布度
3.5 HADで代表値や散布度を算出する1:量的変数の場合
3.6 HADで代表値や散布度を算出する2:順序尺度の場合
[第4章] ちょっと理論的な話3 推測統計と統計的検定
4.1 推測統計
4.2 統計的検定
4.3 どの検定を選ぶべきか
4.4 レポート・論文で報告する必要のある心理統計用語
[第5章] t検定
5.1 t検定とは
5.2 2種類のt検定
5.3 HADで対応のあるt検定を行う
5.4 HADで対応のないt検定を行う
5.5 結果の報告
[第6章] 1要因分散分析
6.1 分散分析とは
6.2 主効果
6.3 多重比較
6.4 HADで1要因分散分析(参加者内要因)を行う
6.5 HADで1要因分散分析(参加者間要因)を行う
6. 6結果の報告
[第7章] 2要因分散分析.
7.1 2要因分散分析とは
7.2 主効果
7.3 交互作用
7.4 HADで2要因分散分析を行う1:参加者間要因×参加者内要因
7.5 HADで2要因分散分析を行う2: 参加者内要因×参加者内要因
7.6 HADで2要因分散分析を行う3:参加者間要因×参加者間要因
7.7 結果の報告
[第8章] 相関とその検定
8.1 相関関係とは
8.2 相関係数
8.3 相関係数に対する有意性検定
8.4 相関に関する注意点
8.5 HADで相関係数を算出する 8.6 結果の報告
[第9章] 単回帰分析.
9.1 単回帰分析とは
9.2 HADで単回帰分析を行う――「散布図」の機能を使う
9.3 HADで単回帰分析を行う――「回帰分析」の機能を使う
9.4 結果の報告
[第10章] 重回帰分析
10.1 重回帰分析とは
10.2 多重共線性の問題
10.3 HADで重回帰分析を行う
10.4 結果の報告
10.5 交互作用項を入れる場合(階層的重回帰分析)
10.6 HADで交互作用項を含んだ重回帰分析を行う
10.7 交互作用項を含んだ重回帰分析の結果の報告
10.8 ちょっと進んだ分析――媒介分析
[第11章] 因子分析
11.1 構成概念とその測定
11.2 因子分析とは
11.3 HADで因子分析を行う
11.4 結果の報告
[第12章] カイ2乗検定
12.1 カイ2乗検定とは
12.2 2種類のカイ2乗検定
12.3 HADでカイ2乗検定を行う1:適合度の検定
12.4 HADでカイ2乗検定を行う2:独立性の検定
12.5 結果の報告
終わりにもっと分析したい人のために
付録:フィルタの使い方
ブックガイド

索引
一般索引
HADの操作に関する用語索引

HADの準備

それでは HAD を皆さんのコンピュータにダウンロードしましょう。 なお,この本で説明に用いているデータはホームページ上(http:// www.kspub.co.jp/book/detail/1548121.html) からすべてダウンロー ドできます。なお,この本で扱っているデータはすべてコンピュータ 上で作った架空のデータです。実際の分析のシーンでよく目にするも のに似せて作っています。

0.1 : HADのダウンロード方法

HAD はマイクロソフト社の表計算ソフトである Excel 上で動くプロ グラムです。Excel のインストールされていないコンピュータでは動 きません。清水先生は Windows マシンでの利用を推奨しています。こ の本では、Excel2016での動作を紹介しています。
Step1 清水先生のホームページ(http://norimune.net/)にアクセスし,「統計ソフト HAD」をクリックします。
Step2 「HAD のダウンロード」をクリックします。
Step3 開いたページの中から,「HADO0」をクリックします (○○はバージョン名)。
Step4 ファイル名を右クリックし、「ダウンロード」をクリックし ます。右上の「ダウンロード」内の「直接ダウンロード」をクリックし ます。Excelファイルがダウンロードされますので、それを開きます。
ファイル名をクリックしただけではファイルは開きませんので注意 してください。
Step5 Excelのファイル名を確認してください。
ファイル名の「HAD」に続く数字が大きい Excel ファイルが最新 バージョンです。最新バージョンでは、バグ(間違い)がある可能性がありますが最新の機能が使えます。数字が小さい Excel ファイルは 1つ前のバージョンです。バグのある可能性は比較的低く,安定して使えます。

0.2 : データの準備をする

HAD をダブルクリックして開きます。セキュリティの関係で「編集 を有効にする」かどうかと「コンテンツの有効化」について警告が出る場合があります。いずれもクリックして承諾します。
開いてみると,データシートが選択されています。ここに,Excel の データを貼り付けるか、または直接入力します。 「通常1人の参加者から得られたデータはすべて同じ行に入力します。一番左側には、識別用の参加者の番号(ID)を入力します。

Tips HADの読み方
HADの読み方は特に決まっていません。清水先生曰く、「えいちえーでいー」でも「はど」でも、どちらの読み方でもよいそうです。

0.3 : HADの利用について

HADで分析した結果を公に報告する際には、以下の文献を引用文献 として挙げてください。
清水 裕士 (2016). フリーの統計分析ソフト HAD:機能の紹介と統計 学習・教育,研究実践における利用方法の提案メディア・情報・コ ミュニケーション研究, 1,59-73.
その他,細かい利用方法のガイドラインは清水先生のホームページ(http://norimune.net/3036)を確認してください。

小宮 あすか (著), 布井 雅人 (著)
出版社 : 講談社 (2018/1/27)、出典:出版社HP

続・心理統計学の基礎–統合的理解を広げ深める (有斐閣アルマ)

統合的理解が得られる

本書は、『心理統計学の基礎―統合的理解のために』の続編で、前編の次の段階で学習するためのテキストとして執筆されています。基本原理の学習を通して計算手法を統合的に理解することを目的としているため、他の心理統計学のテキストと比べて数式が多いです。心理統計学そのものに興味を持っている人におすすめです。

南風原 朝和 (著)
出版社 : 有斐閣 (2014/12/13)、出典:出版社HP

続・心理統計学の基礎–統合的理解を広げ深める

はじめに

本書は拙著『心理統計学の基礎——統合的理解のために』(以下, 前編とよびます)の続編として執筆しました。
前編では,現在の心理学の研究論文を読み解くのに必要な「重回 帰分析」「分散分析」「因子分析」「共分散構造分析」など,入門的 テキストとしては比較的高度な方法まで取り上げて,それらが統合 的に理解できるような解説を試みました。
しかし,近年の心理学や関連領域における研究論文では,たとえば種々の効果量の信頼区間とか,対比分析,マルチレベル分析,メ タ分析など,前編の内容ではカバーできていない方法が広く使われるようになってきており,学生の卒業論文,修士論文,博士論文で 用いられる統計的方法も,より広範なものになってきています。ま た,前編をテキストにして授業をしていると,「t分布の自由度と カイ2乗分布の自由度って何か関係あるんですか?」といった一 歩進んだ質問や,「学校をいくつか選んでその中から生徒を選ぶような2段抽出のとき,検定とか普通にやっていいんですか?」と いった方法論的な質問を受けることがあり,まとまった補足的な解 説が必要になることもしばしばありました。

本書は,心理学および関連領域における統計的方法の活用の現況 や、心理統計学の授業の受講者のニーズなどをふまえ、前編やその 他の入門的テキストの次の段階で学習するテキストとして,あるい は入門的テキストの学習の途中での副読本として、特に必要と思われる内容を選んで解説したものです。 新たに取り上げる方法について、個々にその内容やソフトウェアでの計算手法を学んでいくことはもちろん必要ですが,これらの前 提となる基礎的な方法との関連や,これらの方法相互の間の関市 そして多くの方法に共通する基本的原理の学習を通して,これらの 方法を統合的に理解していくことが,研究の中でこれらを柔軟に かつ自信をもって活用していくうえで有効です。本書では,このような考えから,前編でねらいとした「統合的理解」を,新しい内容 によって広げ、そしてそれを通して理解をさらに深められるよう心、 がけました。

なお,本書は前編と同様,心理統計学のテキストとしては,数式 がやや多い印象を与えるかもしれません。しかし,たとえば微分・ 積分の演算式とか,複雑な確率密度関数の式などのような数学的に 高度なものはなく,上述の統合的理解にとって必要最小限の数式の みを提示しています。概念的には理解したと思っていることでも, 数式を参照することでその理解の誤りに気づくこともあり,言葉に よる説明の限界を補ううえで,ある程度の数式は必要であり,実際 に有用です。
本書の構成と学習の進め方については第1章であらためて説明 しますが,上述のようなねらいで執筆した本書が,心理統計学の 理解,そして実際の研究への活用に役立つことを願っています。ま た、読者の皆様には,記述の誤りなど,お気づきのことがありまし たら、ご指摘いただけますと非常にありがたいです。
本書の執筆にあたり、星野崇宏さん(東京大学)には全編にわたって目を通していただき,貴重なご意見をいただきました。また, 草稿の段階で,加藤健太郎さん(ベネッセ教育総合研究所),杉澤式 俊さん(新潟大学),村井潤一郎さん(文京学院大学),吉田寿夫さん (関西学院大学)(五十音順)から,それぞれいくつかの章について, 多くの貴重なご意見をいただきました。そして,有斐閣の櫻井雄さんには,編集上のご助言だけでなく,内容についても有用なコメ ントをいただきました。心より感謝いたします。

2014年8月
南風原 朝和

著者紹介

南風原朝和(元/bb办)
1953年 沖縄県那覇市生まれ
1977年東京大学教育学部教育心理学科卒業
1981年 米国了才大学大学院教育学研究科
教育心理・測定·統計学專攻博士課程修了(Ph.D.)
現在 東京大学大学院教育学研究科教授
專攻 心理統計学,心理測定学,心理学研究法 主要著書
「行動科学における統計解析法』(共著,東京大学出版会,1990 年)
「心理学研究法入門』(共編著,東京大学出版会,2001年)
[心理統計學)基礎』(有斐閣,2002年)
「心理学研究法」(共編著,放送大学教育振興会,2003年)
「心理統計学ワークブック』(共著,有斐閣,2009年)
『臨床心理学を学ぶ7 量的研究法』(東京大学出版会,2011 年)
「教育心理学第3版』(共著,有斐閣,2015年)
『検証 迷走する英語入試』(編著,岩波書店,2018年)

南風原 朝和 (著)
出版社 : 有斐閣 (2014/12/13)、出典:出版社HP

目次

第1章
本書の構成と学習の進め方
1 本書で取り上げる内容とその位置づけ
基礎的な方法とその相互関係(1) 本書で取り上げる内容(3) 分 布間の関係と非心分布への拡張 (3) さまざまなデザインにおける 効果量とその信頼区間(5) リサーチ・クエスチョンに対応した比 較 (6) 階層的データへの対応(7) 複数の研究で得られる効果量
の統合 (8) 母数に関する確率の導入 (9) 2 学習の進め方
本書で取り上げる内容の間の関係と学習の進め方(10) ソフトゥ ェア(11)

第2章 分布間の関係と非心分布への拡張検定力と信頼区間のために
1 2項分布と正規分布
2項分布(13) 2項分布と正規分布の関係(14)
2 正規分布とカイ2乗分布
標準正規分布とカイ2乗分布の関係(17) カイ2乗変数の和の分
布(17) 平方和の分布(19)
3 カイ2乗分布と F 分布とも分布
平方和の比の分布(21) 分子の自由度が1のとき(21) 大分布に したがう変数の例 (22) t分布と標準正規分布(24) ここまでのまとめ(24)
4 2項分布と多項分布とカイ2乗分布2項分布から多項分布への拡張(25) 多項分布に関する帰無仮説のカイ2乗検定(26) ここまでのまとめ -a (29)
5 非心も分布
通常のt分布と非心t分布(29) 非心t分布の例(32) 非心度 と効果量(33) 非心度と検定力 (34) 非心t分布を用いた検定力 計算の例(35)
6 非心カイ2乗分布と非心 F 分布……
非心カイ2乗分布(36) 非心カイ2乗分布を用いた検定力 例(38) 非心 F分布(39) 非心 F分布を用いた検定力計首。

第3章 効果量(1)2変数データの分析において
1 研究における効果量の位置づけ
効果の3つの側面と効果量(43) 検定力を規定する効果量(44) 解釈の観点からの効果量(45) 標準化効果量と非標準化効果量 (45) 効果量の信頼区間(48) 研究のタイプと効果量の解釈(18) 理論確証型研究における効果量の報告 (50)
2 相関と回帰に関する効果量
検定力を規定する効果量(51) 解釈の観点からの効果量(52) 双列相関係数(52) Fisher の Z変換に基づくp の信頼区間(54) 非心t分布に基づく検定力と p の信頼区間(55) 数値例(60) 効果量の信頼区間の利点と留意点(61)
3 独立な2群の平均値差に関する効果量
検定力を規定する効果量(62) 解釈の観点からの効果量(63) 2 群の分散が顕著に異なる場合(66) 標準化平均値差の信頼区間(67) 数値例(68) dに基づく信頼区間(70)
4 対応のある2群の平均値差に関する効果量
検定力を規定する効果量(71) 独立な2群の場合との比較(72)解釈の観点からの効果量(73) 効果量 8′ の信頼区間(74)
5 カテゴリ変数間の連関に関する効果量
検定力を規定する効果量(75) 解釈の観点からの効果量(76) ク ラメルの連関係数の信頼区間(77) 数値例(77)

第4章 効果量(2)多変数データの分析において
1 重回帰分析における効果量
重相関係数の検定の検定力を規定する効果量(79) 追加変数の効 果の検定の検定力を規定する効果量(80) 解釈の観点からの効果 量(81) 部分決定係数(81) 偏決定係数(82) 異なる効果量の 間の関係 (83) 標準偏回帰係数(85) 効果量の点推定(87) 重相関係数と決定係数の信頼区間(88) 偏決定係数の信頼区間(90)標準偏回帰係数の信頼区間 (91)
2 分散分析における効果量
1要因デザインにおける検定力を規定する効果量(92) 解釈の観点 からの効果量(95) 決定係数の点推定(97) 数値例(98) 決 定係数の信頼区間(99) 数値例 (100) 多要因デザインにおける検定力を規定する効果量(100) 部分決定係数/決定係数(102) 偏決定係数(105) 多要因デザインにおける偏決定係数の信頼区間(107) 種々の平均値差に関する効果量(108)
3 共分散構造分析におけるモデルの適合度としての効果量
母数の最尤推定と検定(109) 検定統計量と効果量と適合度(109) 適合度指標 RMSEA (111) RMSEA の信頼区間(113) 数値 例(113)

第5章 対比分析
1 対比とは
研究の例(115) 一般的な分析手続き(115) 対比としての表現
(117)
2 リサーチ・クエスチョンに合わせた対比
リサーチ・クエスチョンは何か(119) 特定の増減傾向に関心があるとき(120)
3 対比に関する検定と推定
対比の推定量とその分布(122) 対比に関する検定(123) 対比係’ 数の決め方と検定(125) 対比の区間推定 (126) 標準化対比とその信頼区間(126)
4 対比と分散分析の関係
対比の平方和と平均平方(129) 対比の平方和と群間の平方和 (130) 互いに直交する対比(131) 分散分析における検定と対比の検定(134) 総括的な検定と対比の検定 (135)
5 検定の多重性
対比単位の誤りの確率と組単位の誤りの確率(136) Sidak の方法と Bonferroni の方法(137) Scheffé の方法 (139)
6 研究上の対比の位置づけと検定の多重性への対応
計画的対比と事後の対比(141) 検定の多重性への対応(142)

第6章 マルチレベル分析
1 階層的データとその性質
階層的データの例(145) 階層的データの統計的性質(147) 的データの取り扱い(149) 階層的データに対するリサーチ・ケースチョン(151)
2 マルチレベル・モデル
モデルの設定と評価(153) ランダム効果の分散分析モデル(154) マルチレベル・モデルにおける記号法(154) 平均に関する回帰 デル(157) ランダム係数モデル (157) ランダム効果の共分散分 析モデル(158) 独立変数のセンタリング (159) 係数に関する回
帰モデル(161)
3 母数の推定と分析例
推定法と仮定(161) ランダム効果の分散分析モデルの分析例 (163) 平均に関する回帰モデルの分析例(165) ランダム係数 モデルの分析例(167) ランダム効果の共分散分析モデルの分析 例(170) レベル2の独立変数のある共分散分析モデルの分析例(172)
4 モデルの比較
モデル間の関係(174) 尤度比検定(176) AIC による比較 (179)
5 個人内反復測定データの分析
個人内変化のモデル(181) センタリング(182) レベル2以上 のモデル(183) 潜在成長曲線モデル(184)

第7章 メタ分析
1 研究の積み重ねと結果の統合
個々の研究の限界(189) 追試研究と結果の統合(190) 対象となる効果量(191) 固定効果モデルとランダム効果モデル (192)
2 標準化平均値差の統合
データの例(193) 固定効果モデルによる統合(195) 標準化平均 値差の等質性の検討(197) ランダム効果モデルによる統合 (201)固定効果モデルとランダム効果モデルの比較(203)
3 相関係数の統合
データの例(204) 固定効果モデルによる統合(206) 相関係数の
等質性の検討(208) ランダム効果モデルによる統合(209)
4 効果量の差異の説明要因の検討
リサーチ・クエスチョン (211) 効果量に関する線形モデル (212) 固定効果モデルとランダム効果モデル (213) 種々の母数の推定 (214)

第8章 ベイズ推測
1 確率の考え方の違い
検定や推定における確率の意味(215) 仮説や母数に関する主観確率(216)
2 ベイズの定理
ベイズの定理(217) ベイズファクター(220) ベイズの定理の数値例(221) ベイズの定理の図示(224)
3 母数の事前分布と事後分布
母数に関するベイズの定理(226) 母数の事後分布の役割(228) 分散既知の正規分布モデルにおける母平均の分布(230) 分散未知 の正規分布モデルにおける母平均の分布(232) マルコフ連鎖モンテカルロ法(235)
4 母数のベイズ推定
損失関数と母数の点推定(235) 母数の区間推定(237) 数値例と 解釈 (238) 事前分布の設定による推定結果の違い(240) 事前分布の設定の仕方(241)
5 将来の観測値に関するベイズ予測
予測分布(244) 正規分布モデルにおける予測分布(246)

おわりに
引用文献
付表
索引

本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を 除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンや デジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反です。

南風原 朝和 (著)
出版社 : 有斐閣 (2014/12/13)、出典:出版社HP

これならわかる! 心理統計

統計の基本がゼロからわかる

「心理統計」とは、多くの統計的な方法からなります。本書が取り上げ統計的な方法は、変数が1つか2つの場合の基本的な方法です。数学が苦手な人でもわかりやすいように平易に説明されているため、心理学を学び始めたばかりの方のような「心理統計」がどのようなものかあまり理解できていない人におすすめです。

宮埜壽夫 (著), 谷田部かなか (著), 櫻井広幸 (著)
出版社 : ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

これならわかる! 心理統計

はじめに

心理学は、「こころ」の働きを理解するための科学です。別の言い方をすると、 心理学は「こころ」に関わることならすべて研究の対象となる科学です。実際、 心理学には研究の仕方や対象によって分けられた多くの分野があります。感 覚・知覚心理学、認知心理学、動物心理学、社会心理学、性格心理学、発達心 理学、学習心理学、生理心理学、臨床心理学、犯罪心理学などは、代表的な分 野の例といえます。

心理学は、このように多くの分野からなりますが、「こころ」の働きを理解 するという目的のほかに、どの分野にも共通している点があります。それは、 いずれの分野においても調査や実験から得られたデータに基づいて研究を進めるという点です。「十人十色」というように、実際に得られたデータは個人に よる違いの影響を受けます。また、同じ人であっても、いつも同じデータを得られるとは限りません。心理学で扱うデータには、多かれ少なかれ「ばらつき」 があるといえます。

本書に解説する「心理統計」は、心理学における統計的な方法のことであり、 「ばらつき」のあるデータから、データの一般的な特徴や傾向を推測する、またはデータからみて理論が正しいかどうかを判断するために使われます。デー タの統計的な扱いは、心理学の分野によらず必要とされる「共通言語」のよう なものです。臨床心理士やカウンセラーなどの資格の取得にも、統計的な方法 に関する知識は必要とされます。
心理統計を理解するには、ある程度の数学的な知識が必要です。読者によっては数学の苦手な人もいると思いますので、本書では理解に必要な数学はできるだけ少なくし、平易に説明するように心掛けています。本書が、心理学を学 ぶ、または心理学関係の資格取得を目指す読者にとって、共通言語である「心 理統計」を学習する助けとなれば幸いです。

宮埜壽夫

宮埜壽夫 (著), 谷田部かなか (著), 櫻井広幸 (著)
出版社 : ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
本書の特長

第1章 心理統計とは
01 心理統計って何?
02 心理学での測定
チェックテスト

第2章 データをわかりやすくまとめよう 記述統計
01表やグラフによる表現
02 データを代表する値(代表値)
03 データのばらつきを調べる
04 グラフによる表現
05 変数間の関係
06 相関係数
07 変数の関係のグラフ化
チェックテスト

第3章 データの基礎的な分布を知ろう
01 確率分布
02 二項分布と期待値
03 正規分布
04 標準正規分布と標準得点
チェックテスト
◆数学的知識を確認しておこう

第4章 部分から全体を知る 推測統計
01 母集団と標本
02 標本分布
03 母集団の推測
チェックテスト

第5章
仮説を検証しよう―統計的仮説検定の考え方と方法
01 仮説の検証と推論
02 母平均に関する検定
03 検定の誤りと検出力
04 母分散の検定
05 母比率の検定
06 母相関係数の区間推定と検定
07 カテゴリー・データの検定
08 ノンパラメトリックな検定方法
チェックテスト

第6章 実験結果を分析しよう 分散分析
01 実験計画とは
02 実験計画
03 分散分析
チェックテスト

第7章心理テストを作る
01 心理テストに求められること
02 項目反応理論
チェックテスト

おわりに
参考文献
索引

本書の特長

本書は、心理学でよく使われる統計的な方法を、基礎からわかりやすく した書籍です。 初めて統計に触れる人でも理解しやすいように、図やイラストを豊富に し、調査や研究などにも活用できる内容としています。

★ポイント
各節で解説する主な要点を挙げています。次のように使いましょう。
●本文を読む前にチェックし、まずは要点を理解する
●本文を読んだあとにチェックし、 おさらいする。

★イラスト
心理統計の基本、分析や調査の方法、 数式の考え方などをイラスト化し、具体 的にイメージできるようにしています。

★重要な内容・用語
心理統計を理解するうえで重要な内容や用 語は、覚えやすいよう に色文字にして表示し ています。

★心理学の具体例/考え方
心理統計が使われる具体的な場面や、就 計学の考え方などを紹介、実際の研究や 調査などを想定しやすくしています。

★キーワード
重要な用語や内 容の補足説明で す。本文と併せて 読むことで、より 深い知識を得る ことができます。

本書のメリット
●数学や統計学が苦手な人でも理解しやすい「Oからの解説」
●統計の基礎や実例をイメージしやすい「図とイラスト」
●調査や研究に活用しやすい「豊富な実例」
●内容が定着しやすい 「チェックテスト」

★チェックテスト
各節で解説した内容の要点を、穴埋め形式や選 択肢式のチェックテストにしています。各節を読んだあとに解くことで、知識の定着が図れます。

本書を読む前に押さえておくこと
1 本書におけるローマ字の大文字は原則として「変数」を、小文字は「変数の値」を表し、
ています。
2 本書における変数は、とる値が確率的に現れる「確率変数」と呼ばれるものです。
3 負でない数aをn回掛けた数を、” と表します。たとえば、2を3回掛けた数は2です。 4 a’ =bのとき、はがすと表すことができます。ただし、n = 2のとき、わきの代わりに、と表すこともあります。
5 底をaとするときの6の対数は、log.bと表します。ただし、本書で使う対数はすべて 「自然対数」なので、底を省略してlogbと表します。
※自然対数は、ネイビア数 eを底とする対数です。ネイピア数については3章 72 ペー ジを参照してください。
6 ギリシャ文字 (ミュー), (シグマ),p(ロー)は、「測定変数」の対象となる集団(母集団)の特性 (平均や分散など)を表しています。
7 半開区間[a, b) は、「a以上6未満の値の集まり」という意味です。一方、半開区間 (a, b]は、「aより大きくら以下の値の集まり」という意味です。
8 計算結果は、四捨五入をしています。たとえば、値1.36を小数第2位で四捨五入した値は、1.4です。四捨五入しているために、計算が正しくないように見えることがあります。たとえば、確率の合計が1になるはずなのに、そうならないことがあります。
9 本書では、たとえば一 = 0.33 のような、本来は近似的に等しい関係を、誤解のない戦法
で等号 (=)で表しています。
10 データを列挙する場合や、座標を表す場合などは、「、」ではなく、「、」を使っています。

宮埜壽夫 (著), 谷田部かなか (著), 櫻井広幸 (著)
出版社 : ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

SPSSによる心理統計

心理学を学ぶ学生のための教科書

本書は、SPSSという統計解析ソフトウェアを用いて、研究に適切な統計的方法を自分で選択し、適切に結果を読み取り解釈ができるようになることを目的としたテキストです。また、どの分析でも論文での結果の報告の方法が解説されているので卒論や修論を書く際にも役立ちます。

山田 剛史 (著), 鈴木 雅之 (著)
出版社 : 東京図書 (2017/7/10)、出典:出版社HP

SPSSによる心理統計

本書では IBM SPSS Statistics 24で動作確認しています。
SPSS製品に関する問合せ先:
〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21 日本アイ・ビー・エム株式会社アナリティクス事業部 SPSS 営業部
Tel. 03-5643-5500 Fax.03-3662-7461 URL http://www.ibm.com/spss/jp/
本書で使用しているデータは、東京図書 Webサイト(http://www.tokyo-tosho.co.jp/) の本書紹介ページからダウンロードすることができます。
R 日本複製権センター委託出版物 本書を無断で複写複製(コピー)することは、著作権法上の例外を除き,禁じられています。本書をコピーされる場合は、事前に日本複製権センター(電話:03-3401-2382) の許諾を受けてください。

まえがき

本書は, SPSS (IBM SPSS Statistics, http://www-01.ibm.com/software/ jp/analytics/spss/)という統計解析ソフトウェアを用いて,心理学研究 で利用されることの多い統計的方法を学ぶためのテキストです。具体的 な心理学研究の文脈で、1つ1つの統計的方法について演習していきます。想定する読者は,心理学領域で卒業論文や修士論文に取り組もうと している学生・院生です。本書を読み進めるための前提として,大学等 で心理統計に関する入門講義を履修していることを想定しています。具 体的には,山田・村井(2004)を読み終えた程度の心理統計に関する知 識を有していることを期待しています。ある程度の知識を有することを 前提としているという意味では,本書は全くの初学者向けの本ではあり ません。本書でも統計の基本的な内容について必要な説明はしています が,心理統計の理論について書かれた他のテキストと併用することで,より学習効果が高まると思います。

読者の皆さんは、実際に SPSS を起動して、本書に書かれた分析を1つ1つ自分の手を動かしながら追体験して欲しいと思います(そのため に、本書で用いた全てのデータを、東京図書のホームページで公開して います)。そうすることで,本書で取り上げる統計的方法への理解が深まることでしょう。しかし、本に書かれたことをただ書かれた通りにSPSS で実行できるだけでは、十分ではありません。本書では,「SPSS を用いてデータ分析ができること」だけではなく,もう少し先のことを目標に しています。具体的には, ・ 自分のリサーチクエスチョンに応じて、適切な統計的方法を自分で選択できること。 SPSS の出力結果を正しく読み取り,適切な解釈ができること。

・ データ分析の結果と,その結果に基づく考察を分かりやすい、文章で報告できること。

を目標とします。SPSS はあくまでデータ分析という作業を遂行する、 の手段であり、大きな目標は,分析した結果から必要な情報を読み取り それをレポートや論文としてまとめられるようになることです。この日 標を達成するために,本書では以下のような工夫を施しました。

本書の特徴

本書は,基礎編と実践編からなります。基礎編では, 鈴木・武藤(2013) という1つの心理学研究を例に,心理学領域の卒業論文や修士論文でよく使われる統計的方法について演習を行っていきます。データの作成 項 自分析(1変数,2変数の記述統計),尺度構成(因子分析),尺度得点に ついての分析,群間の平均値差の検討 (t 検定,分散分析),変数間の関 連の検討(相関分析,回帰分析),という実際の心理学研究と同様の流れ で,重要な統計的方法について一通り学んでいきます。読者の皆さんに, 自分が鈴木・武藤(2013)の研究の著者であるかのような擬似体験をしてもらえたらと思っています。

実践編では,基礎編よりもやや高度なことを取り上げています。最近 の心理学研究の動向を踏まえて,新しく注目されている統計的方法についても紹介しました。具体的には,尺度構成に関する諸問題として,実 際に尺度構成を行う場合に生じ得る様々な具体的なケースとそれへの 対応について説明しました。さらに,重回帰分析による交互作用の検討, プリ・ポストデザインデータの分析,対比分析」といった基礎編に比べると少し難易度の高い、しかし,重要なデータ分析の方法について解説 しました。これらの方法について理解を深めることで、より多面的にデー タを検討することができるようになると思います。最後に,統計的仮説 検定の問題点,心理学における統計改革、ベイズ統計学といったトピッ クについて紹介しています。統計的仮説検定については様々な問題が(か なり以前から)指摘されています。しかし、現在でも心理学研究における主要なデータ分析法として君臨し続けています。「一般的な方法である から…」, 「みんなが使っているから…」と無批判に利用するのではなく, 一度立ち止まって、読者の皆さん自身で「統計的仮説検定」というツー ルについてじっくりと考えてみてほしいと思います(クリティカルシン キングを行ってほしいということです)。 本書を読むことで,以下のようなことが達成されたら嬉しいです。

・沢山の統計的方法の中から,データの種類や研究目的に沿った適切な方法を選んで分析を実行できるようになる。
・漠然と考えている「やりたいこと」を、「この分析によって実現できる」と自分で変換できるようになる。例えば,「ある指導法は, 英語を学ぶ意欲が低い人ほど効果があるかどうかを検討したい」 ときに、それを「交互作用の検討をすれば良いのだ」と具体的な分析方法に置き換えることができるようになる。

本書は SPSSのマニュアルを書くことを目的とはしていないので, SPSSの細かな操作について学びたい人は、他のテキスト,例えば,酒井 (2016)などを参照して下さい。また、購入しているオプションソフト次第で,本書に掲載されている画面とは完全に一致しないことがあります のでご注意下さい。本書では基本ソフトであるIBM SPSS Statistics Base で実行できる機能のみを紹介しているため,Base 以外のオプショ ンは不要です。どのようなユーザーであっても本書に書かれたものと同 様の分析が実行できます。

引用文献
酒井麻衣子 (2016). SPSS 完全活用法――データの入力と加工(第4版)
東京図書) 鈴木雅之・武藤世良(2013). 平均的な学業水準との比較による学業的自
己概念の形成――学業水準の高い高校に所属する生徒に焦点を当て
て― パーソナリティ研究, 21, 291-302. 山田剛史・村井潤一郎(2004). よくわかる心理統計ミネルヴァ書房

山田 剛史 (著), 鈴木 雅之 (著)
出版社 : 東京図書 (2017/7/10)、出典:出版社HP

目次

まえがき
【基礎編】
1章 本書で用いる質問紙について
1-1 本書で紹介する研究(鈴木・武藤, 2013)の目的
1-1-1 学業に対する有能感一学業的自己概念
1-1-2 有能感を形成する要因一学業達成,内的準拠枠,外的準拠枠
1-1-3 鈴木・武藤(2013)で検討したこと
1-2研究で使用した質問紙
1-2-1 学業的自己概念
1-2-2 学校内での相対的な学業水準の知覚
1-2-3 一般的な高校生との相対的な学業水準の知覚
1-2-4 達成目標
1-2-5 学業成績(模擬試験の偏差値)
1-3 本書で検討するリサーチクエスチョンと,検討のために用いる分析
1-4 本書におけるデータ分析の流れについて

2章 データ分析前の下準備
2-1 質問紙に含まれる項目について
2-1-1 プロフィール項目
2-1-2 質問項目
2-2 SPSS でデータを作る
2-2-1 データのコーディング
2-2-2 SPSS を起動する
2-2-3 「変数ビュー」で変数の情報を入力する
2-2-4 「データビュー」でデータを入力する
2-3 SPSSで簡単な分析を実行してみる
2-3-1 質的変数についての視覚的分析
2-3-2 量的変数についての視覚的分析・基本統計量の算出
2-4 本書で用いる SPSS データについて

3章 項目分析
3-1 鈴木・武藤(2013) データを確認する
3-2 プロフィール項目の分析
3-2-1 度数分布表と棒グラフ
3-2-2 クロス集計表
3-3 変数の種類と尺度水準
3-3-1 質的変数と量的変数
3-3-2 4つの尺度水準
3-4 量的変数の分析
3-4-1 視覚的な分析
3-4-2 データの要約
3-4-3 ファイルの分割を用いて、グループ間比較を行う
3-5 練習問題

4章 2つの変数の関係の視覚化と要約——相関分析
4-1 散布図と相関係数
4-1-1 散布図
4-1-2 相関係数
4-1-3 相関係数の性質
4-2 SPSSによる相関分析
4-2-1 散布図の表示
4-2-2 相関係数の算出
4-2-3層別相関係数の算出
4-2-4 論文での結果の報告例
4-3 練習問題

5章 尺度構成——因子分析
5-1 因子分析
5-1-1 因子分析とは
5-1-2 因子分析の考え方
5-1-3因子分析の手順
5-2 SPSS による因子分析その1(因子数が1つの因子分析)
5-2-1 逆転項目の処理
5-2-2 因子分析の実行(因子数の決定)
5-2-3 因子分析の実行(因子負荷の推定)
5-3 SPSS による因子分析その2(因子数が複数ある因子分析)
5-3-1 因子分析の実行(因子数の決定)
5-3-2 因子分析の実行(因子負荷の推定)
5-3-3 因子の解釈
5-4 共通性と因子寄与
5-4-1 共通性と独自性
5-4-2 因子寄与
5-5 論文での結果の報告例
5-6 練習問題

6章 尺度得点についての分析
6-1尺度の妥当性
6-1-1 妥当性とは
6-1-2 妥当性の評価
6- 2尺度の信頼性
6-2-1 信頼性とは
6-2-2 妥当性と信頼性の関係
6-2-3 古典的テスト理論と信頼性係数
6-2-4 信頼性係数の推定
6-3 SPSS による尺度得点についての分析
6-3-1逆転項目の処理
6-3-2a係数の算出
6-3-3尺度得点の計算
6-3-4尺度得点の記述統計量の算出
6-4 練習問題

7章 学業的自己概念の性差の検討――独立な2群のt検定
7-1 学業的自己概念の性差の検討
7-2 統計的仮説検定の基礎
7-2-1 統計的仮説検定の手順
7-2-2 独立な2群のt検定の手順
7-3 SPSS による独立な2群のt検定
7-3-1 独立な2群のt検定の実行
7-3-2 SPSS の結果を解釈する
7-3-3 p値と有意水準を比較する
7-3-4 統計的仮説検定の重要用語
7-3-5 論文での結果の報告例
7-4 練習問題

8章 学業的自己概念と学業水準の関係の検討―― 一要因分散分析
8-1 学業的自己概念と学業水準の関係の検討
8-2 3つ以上の群の平均値を比較する分散分析
8-2-1 分散分析に関する用語
8-2-2 一要因被験者間分散分析
8-3 SPSS による一要因被験者間分散分析
8-3-1 一要因被験者間分散分析の実行その1
8-3-2要因被験者間分散分析の実行その2
8-3-3 論文での結果の報告例
8-3-4 学業的自己概念の学校間差がみられなかった結果について
8-4 練習問題

9章 学業的自己概念と性別,文理志望の関係――三要因分散分析
9-1 学業的自己概念と性別,文理志望の関係の検討
9-2 二要因の分散分析
9-2-1 交互作用
9-2-2 主効果
9-2-3 単純主効果
9-2-4 二要因被験者間分散分析
9-3 SPSS による二要因被験者間分散分析
9-3-1 二要因被験者間分散分析の実行
9-3-2 論文での結果の報告例
9-4 SPSS によるクロス集計表の作成と – 検定
9-4-1 クロス集計表の作成と r- 検定の実行
9-4-2 論文での結果の報告例
9-5 練習問題

10章 学業的自己概念の予測——回帰分析
10-1 回帰分析
10-2 重回帰分析
10-2-1 偏相関係数
10-2-2 重回帰分析
10- 3 SPSSによる回帰分析
10-3-1 回帰分析の実行
10-3-2 回帰分析とは検定の関係
10-3-3 偏相関係数の算出
10-3-4重回帰分析の実行
10-3-5 論文での結果の報告例
10-4 基礎編のまとめ
10-5 データの階層性とマルチレベル分析
10-6 練習問題

【実践編】
1章 尺度構成に関する諸問題
1-1 不適解が生じたとき
1-2 妥当性や信頼性が確認されている尺度を使用するとき
1-3 a 係数が低いとき

2章 重回帰分析による交互作用の検討
2-1 「学業的自己概念」と「相対的な学業水準の知覚」の関係に対する達成目標の影検討
2-1-1 「相対的な学業水準の知覚」と達成目標の交互作用
2-1-2 重回帰分析における交互作用の検討
2-1-3 多重共線性と中心化
2-1-4 分散分析における交互作用と重回帰分析における交互作用
2-2 SPSS による重回帰分析
2-2-1 変数の中心化と交互作用項の作成
2-2-2重回帰分析の実行
2-2-3 出力結果の読み取り
2-2-4 論文での結果の報告例
2-3 交互作用の視覚的分析
2-4 交互作用が有意であったときの下位検定
3章 プリ・ポストデザインデータの分析——対応のあるt検定,共分散分析
3-1 研究例(鈴木・市川, 2016)
3-1-1 工夫速算能力
3-1-2工夫速算能力を高めるための準実験
3-2 研究で使用した変数
3-2-1 事前コンパス得点
3-2-2 事後コンパス得点
3-2-3 SPSS データ (鈴木・市川(2016) データ)
3- 3 SPSSによる対応のあるt検定
3-3-1 1群プリ・ポストデザイン
3-3-2 対応のあるt検定
3-3-3 対応のあるt検定の実行
3-4 SPSSによる変化量についての独立を2群のt検定
3-4-1 2群プリ・ポストデザイン
3-4-2 変化量についての独立を2群のt検定
3-4-3 変化量についての独立な2群のt検定の実行
3-5 SPSS による共分散分析
3-5-1 共分散分析
3-5-2 共分散分析の実行

4章 対比分析
4-1 研究例(鈴木, 2011)
4-1-1 学習者のテスト観
4-1-2 テスト観に対するルーブリック提示の効果
4-2 対比分析
4-2-1 対比分析とは
4-2-2 一要因分散分析と対比分析
4-3 SPSS による対比分析
4-3-1 鈴木(2011) データの確認
4-3-2 対比分析の実行
4-3-3論文での結果の報告例

5章 有意か否かを超えて――近年の統計改革の動向について
5-1 統計的仮説検定に関する諸問題
5-1-1 分散分析と多重比較
5-1-2 多重比較の方法による検定結果の相違
5-1-3 統計的仮説検定の問題点
5-2 心理学における統計改革
5-2-1 心理学における統計改革とは
5-2-2 効果量
5-2-3 効果量の使われ方
5-2-4 SPSSによる効果量(偏イータ2乗)の算出
5-3 ベイズ統計学
5-3-1 ベイズの定理
5-3-2 ベイズ推測の活用
引用文献
付録質問紙
索引

基礎編

山田 剛史 (著), 鈴木 雅之 (著)
出版社 : 東京図書 (2017/7/10)、出典:出版社HP