ゲーム理論入門おすすめ本 – ビジネス、日常でも使える知識を!

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入門からゲーム理論を学ぼう(ベストセラーや名著も!)

ゲーム理論をビジネスプラン・政策決定、また日常生活において使えるツールとして学べばいいかという関心はこれまで以上に注目されています。そのニーズもあり現在では、ゲーム理論の日本語で書かれたものもたくさん出版され様々な切り口のものがあります。

経済学を中心とした学問を大学での講義を受けるためゲーム理論を習得するテキスト形式から論理の厳密さを保ちつつ理解していくゲーム理論の入門本を紹介します。これらの書籍を通して、意思決定や、分析に役立てていきましょう。始めは数式的な要素が少ない物語口調のものからスタートすることも可能ですし、またある程度の数学が必要なレベルのゲーム理論書籍でもその一冊の中でかんけつできるものをピックアップしました。ぜひ自身のあっているものから手にとってみましょう。

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出典:出版社HP

ゼミナール ゲーム理論入門 (日本経済新聞出版)

説明がしっかりしているゲーム理論本格入門書

本書は分厚くいかにも専門書のように見受けられますが、特徴は説明の抜けがなく、論理も飛躍せずすらすら理解することができることです。一度目でほとんど躓くことなく読むことができます。その分文量も多いですが腰を据えてゲーム理論の入門をしたい方はもってこいの本です。

読者が基本的なゲーム理論の概念を独学で習得できることを目指した入門テキストであるとのことで、特に数学的なハードルを低くして、ゲーム理論がきちんと学べるよう に多くの工夫をしている点は独学でもってこいの書籍となります。

渡辺隆裕 (著)
日経BP (2008/4/7)、出典:出版社HP

 

まえがき

使えるテキストを目指す
「ゲーム理論がブームになっている」とか「流行している」と言われ始めて から久しく,最近ではそのような言われ方もされなくなった.それはゲーム理 論が経済学や経営学の中で「当たり前」に使われる基礎理論として定着したか らであろう。近年は,社会学・政策科学・政治学・法学・情報科学など,文 系・理系を問わずあらゆる分野に使われるようになってきた。これらの分野に 携わる者には,ゲーム理論は「新しい理論として学んでみたい」というレベル ではなく,「基礎として学ばなければならない」というところまで来ているように思える.このようにゲーム理論に対する学習の必要性は高まっているにもかかわらず,研究者を対象とするのではなく、大学生・企業人・公務員を対象 としたゲーム理論のテキストは、未だ日本では少ない。

筆者は,この10年間,多くの場所で、様々な属性の人にゲーム理論を教える 機会を得た。現在の勤務先である首都大学東京(旧東京都立大学)では,経済 学部や経営学系の大学生とビジネススクールの社会人,政策研究大学院大学や岩手県立大学総合政策学部では,政策に携わる社会人やそれを目指す大学生, 筑波大学情報科学類では理系の大学生,また,中小企業大学校や都庁をはじめ として、様々な企業の研修や自治体の公開講座などでは、幅広い階層の社会人。

本書は、これらの経験と講義ノートを活かし、多様な分野の学生や社会人 (企業人・公務員)に読んでもらえることを目指したテキストである。ゲーム理論の魅力は,複数の個人・企業・国家などの競争や協調の問題を, 共通した土台にのせ、それらに統一した解を与えることができるという点にある。ある人が考えればこうなるが、別の人が考えれば違う答えになるということはない。

モデル化してしまえば、答えはただ1つで世界共通である.これは 数学を背景とした厳密な理論構築による成果である,物理学の初歩を学び,前 提となる条件を与えれば、投げたボールの着地点も、斜面を直滑降でくだるスキーヤーの描く軌跡も、火星に向かうロケットの軌道もすべて同じ式で計算できるのと同じである.しかしながら、ゲーム理論の数学的な側面は,最大の利点であるとの和占であると同時に、ゲーム理論に向かう初学者にハードルを高くしている. そこでゲーム理論の入門テキストは,様々なケースや例をゲーム理論的思考として考える「おはなし」として紹介するにとどめるものも多い。このようなテキストは、ゲーム理論の面白さを知るには最適だが,いざ理論を使おうとするとうまくいかない。先の例で言えば,「様々な問題に物理学が使えることが分かった」として、 「実際にボールの着地点を計算してみろ」と言われて,自分一人では計算式を 導き出せないような状態に相当するだろう。

本書の5つの特徴

「本書は長年の講義経験を活かして,「おはなし」にとどめず,読者が基本的なゲーム理論の概念を独学で習得できることを目指した入門テキストである。 特に本書では数学的なハードルを低くして、ゲーム理論がきちんと学べるよう に多くの工夫をしている。以下に本書の5つの特徴を挙げる。
1つ目は,図表を多く利用したことである.数学を背景とした基本的な概念 は、言葉だけで理解することは難しいが,数式を用いなくても図表を使うこと で直観的に理解することができる。拙著『図解雑学ゲーム理論』では,この点 について多くの方から評価を頂いた。本書は、本格的なテキストとして,その ノウハウを引き継いでいる。

2つ目は、一般性や厳密さを捨てて理論の大意をつかませることに主眼を置いたことである。ゲーム理論の面白さは、人数が何人いても,戦略がいくつ あっても同じ原理が適用できることではあるが,その一般性を記述するための 「数学は障壁が大きい。しかしこれを一般的ではなく,「2人のプレイヤーで、 戦略を2つ」に限定すれば、話は簡単になる.また一次方程式ax = 0の解は,x = b/aであるが、それには、厳密には「a≠0 ならば」という条件がつくこの 後者の条件をはずせば、記述は簡単になる。数学的な視点から言えば,このような特殊ケースや一般性への拡張こそが興味の対象となるのであるが,入門書としてはここを省略することこそが、理解を早める近道と考えた.

3つ目は、数値例を用いて解を求める方法にこだわったことである。先の一次方程式の例で言えば、中学生は最初に「一次方程式ax=bの解は,x=b/aである」とは習わない、最初に「3x = 9, 12x=36, 5x=7, …」のようなドリルをたくさん解いて、一次方程式の解を求めることを身につけてゆくだろう。本 書も同様の方法をとったナッシュ均衡や完全ベイズ均衡などの解を,一般的に求めることは難しいが,簡単なゲームであれば解きやすいし,数値例であれば理解はたやすい、本書は一般的な定義ではなく、簡単な例を用いて,具体的 な解の求め方を示している。

4つ目は,抽象的な理論にとどめて応用を読者に任せるのではなく,どんな応用があるかを理論に対応させて必ずつけるようにしたことである,理論の導入部は,コンビニ戦争や転職,輸入代理店の競争のようなモデルを用いることとし,理論を学んだ後は、交渉・オークション・投票・コストダウンと社会厚 生の変化など,その応用例をつけることとしている。

5つ目は,理論がなぜそこにこだわるのか、なぜそのようなことを考えるのか、という意図や動機を徹底的に説明したことである。名著とは、あえてすべてを書かずに「なぜそんなことを考えるのだろう」「なぜそうなるのだろう」 と、読者自身が行間を埋めることによって、「ああ、そうか」と深い理解に到 達することができる本なのかもしれない。そうだとすれば,本書は、分かりやすく書くことに徹し,名著であるよりは読者の踏み台になることを目指したと 言える、「この本を読んでゲーム理論は分かったが,本に含蓄はないな」と言っていただければ,それは私の本望である。

本書を執筆するにあたって,多くの方々から助言と助力を頂いている。私の長年の友人であり、尊敬するゲーム理論の研究者である丸田利昌先生からは、草稿段階において多くのコメントをもらった。特に第11章に対しては、大変貴 重なアイディアを頂戴した。また升田猛先生には、ゼミに本書の草稿を使っていただき、先生ご自身も丁寧に読んで長期にわたって多くのコメントをお寄せ いただいた。升田先生の助言によって、本書は大きく改善されている.福田恵美子先生にも、コメントをレポートにするとともに草稿に赤を入れて送ってくださるなどアドバイスを頂戴した。鮫島裕輔先生,若山琢磨先生にも、ご多忙な中、多くの貴重な助言を頂いた。ここに感謝の意を表します。

本学の大学院生である多辺田将君,鈴木大介君,東京工業大学の大学院生の海老名剛君にも、一生懸命に原稿を読んでもらった.また,首都大学東京. 東京都立大学・岩手県立大学・政策研究大学院大学の多くの学生からは、講義 ノートの段階で多くの誤りを修正してもらった.特に渡辺ゼミの諸君はよく協力してくれた。これらすべての人に感謝し,御礼を申し上げたい。もちろん大 書の誤りはすべて筆者の責任によるものである。
もともと畑違いの私がゲーム理論を学び,このような本を執筆することができたのも,多くの諸先輩方からゲーム理論について多くの示唆と優れた考えを ご教授いただいたからである。特に大和毅彦先生と船木由喜彦先生には共同研 究を通じて多くのことを教えていただいた.また鈴木光男先生とその研究室の 出身である中山幹夫先生,武藤滋夫先生,金子守先生,岡田章先生,和光純先 生は、同じ東工大出身ということで,若い頃から筆者に様々な機会を与えてくださり、多くのことを学ぶことができた。また恩師の森雅夫先生とその諸先輩 方がいなければ、私がこの道に進むことはなかった。皆様に感謝の意を表したいと思います。

日本経済新聞出版社の堀口祐介さんには,執筆の機会を頂くとともに,筆が 進まない筆者を温かく見守り、時には励まし,また私の拙い文章に多くの助言 を頂いた。本当に感謝します。
最後に、私の最愛の妻である秋香の協力がなくては,本書は完成することは なかっただろう。本書は,多くのことをできる限り分かりやすく説明したつもりだが、彼女からの愛情と彼女への感謝の気持ちだけは、大きすぎて上手に説明することができない、この本を彼女に捧げることで,その代わりとしたいと思う。

2008年3月
渡辺 隆裕

渡辺隆裕 (著)
日経BP (2008/4/7)、出典:出版社HP

本書の読み方と学習計画

本書は13章からなり,通年の4単位講義やゼミなどの入門書として用いられきる。ページ数は多いが、これは読者が本書だけで細かい点まで自習できることを想定しているためで,1年間の講義で本書を読みきるのはそう難しくないはずである。むしろ数理的に洗練された途中過程を読者が埋めなければならないような薄いテキストに比べると、読むために必要な時間は少ないであろう。
1章に「ゲーム理論とはどのような内容からなり,どのように分類されるか」が書かれており,そこに照らし合わせて各章の内容が記してある.以下を 読んで,学習計画を立てる際は,先に1章に目を通すのがより効果的である。

1.入門書として本書を通読したい場合には【発展】と書かれている節(6.2, 6.4.7.2, 7.3.8.7, 8.8, 9.3, 10.3, 11.3) を省いて読んでも差し支えな い。これらの節を飛ばしても次の章が読めるように構成してある.
2.前期と後期の通年講義としては、以下のように分けて考えるとよい(13章 は発展学習のためのガイドなので,学生が自分で読み進める).
前期:1章→2章→3章→4章→5章→6章
後期:7章→8章→9章→10章→11章→12章 半期だけの講義の場合は、前期に相当する部分(1~6章)だけを学習し, それで終わってもよい。学習に負担を感じる場合は以下のようにするとよいだろう。

(1) ゲーム理論を、とりあえず知りたいと思う
1章から3章までを読む.
(2) 経済学は関係ない・複占競争はもう学んだ
5章は,経済学における不 完全競争や複占競争を扱っている。読者が「ミクロ経済学」などで複占競争を既に勉強している場合や,経済を学ぶためにゲーム理論を勉強するのではない場合は、5章(およびその応用となる10.2) は省略しても差し支えない、逆に経済学部の学生など,経済学の基礎としてゲーム理論を学び たいと考える者にとって、5章は必要不可欠である。
(3) 情報の非対称性に興味がない・もう学んだ
9章から11章までは,情報の非対称性を扱う「不完備情報ゲーム」に関する章である情報の経済 の学・モラルハザード・逆選択・シグナリングなどに興味がなければ,8章まで読むことを目標にし,8章で終わるか,8章から12章に飛ぶ.
(4) 経営学や経済学でのゲーム理論を知りたい
12章の協力ゲームは省いて もかまわない。また6章は,古典的なゲーム理論としてもっとも重要な概 念である混合戦略を扱うが,経営学や経済学の応用としては少ないと言ってよい。したがって、経営学や経済学の応用として学びたいのであれば, 6章を省くことも考えられる。
3. 通年の講義として、1章から12章まですべてを学習するのではやや負担を感じる場合は、2の(3のケースに即して、情報の非対称性については別の講 「義にゆずり、1~8章と12章を学習する計画にするとよい。
4. 一度ゲーム理論を学んだことがある者や、ゼミなどで教員が密接にガイド することが可能な場合は、2章から5章までは,学生が自習するようにして できるだけ早く進み,【発展】と書かれている節に挑戦してほしい。ただし この場合も9.3の最適な報酬契約の理論は,やや複雑なので,興味がある者 だけ読むことにするとよい。

なお本書を補完する講義資料やスライド,その他の情報を筆者のホームページhttp://www.nabenavi.netに掲載しているので,そちらも活用して頂きたい。

目次

まえがき
本書の読み方と学習計画

第1章 ゲーム理論への招待
1.1 ゲーム理論とは何か
1.2 ゲーム理論を学ぶ意味とメリット
1.2.1 本書の想定する読者・目標と本書の特徴
1.2.2 戦略的思考としてゲーム理論を学ぶ意味
1.3 ゲーム理論の分類と本書の歩き方
1.3.1 非協力ゲームと協力ゲーム
1.3.2 完全合理性によるアプローチと限定合理性によるアプローチ
1.3.3完備情報ゲームと不完備情報ゲーム
1.3.4 戦略形ゲームと展開形ゲーム.
1.3.5 モデルによる学習

第2章 戦略形ゲームの基礎
2. 1戦略形ゲームと利得行列
2.1.1 プレイヤー・戦略・利得
2.1.2 利得行列を作って考えよう
2.2 戦略形ゲームを解く
2.2.1 ゲームを解く
2.2.2 支配戦略を探せ
2.2.3 【応用】囚人のジレンマ
2.2.4 最適反応戦略を考える
2.2.5 【応用】小さな者が大きな者に勝つ方法
2.3 予想の先に行き着くものナッシュ均衡
2.3.1 ナッシュ均衡とは
2.3.2 ここまでのゲームの解とナッシュ均衡
2.3.3 ナッシュ均衡の求め方
2.3.4 ナッシュ均衡がゲームの解である理由は?
2.3.5 ナッシュ均衡は複数存在することがある
2.3.6 記号化と抽象化

第3章 完全情報の展開形ゲーム
3.1 展開形ゲーム
3.1.1 プレイヤーが順番に行動するゲーム
3.1.2 先読みで求めるゲームの解
3.1.3 バックワードインダクション
3.1.4 ゲームの解の記述方法
3.2 完全情報展開形ゲームの応用
3.2.1 【応用】軽口とコミットメント
3.2.2 【応用】チキンゲームとコミットメント
3.2.3 【実践】先手か後手か
3.2.4 【応用】交渉と最後通牒ゲーム
3.2.5 【実践】最後通牒ゲームの実験
3.3 ゲーム理論を実践するために
3.3.1 戦略の組合せが結果となる
3.3.2 意思決定の相互依存性
3.3.3利得の数値はどのように定めるのか

第4章 戦略形ゲームの応用
4.1 弱支配戦略と支配されないナッシュ均衡
4.1.1戦略の支配関係
4.1.2 弱支配と弱支配戦略
4.1.3 支配されないナッシュ均衡とナッシュ均衡の精緻化
4.2 支配された戦略の繰り返し削除
4.2.1 支配された戦略を削除する
4.2.2 弱支配された戦略の繰り返し削除
4.3 【応用】オークション
4.3.1 オークションとゲーム理論
4.3.2 オークションの経済学的意義
4.3.3様々なオークション
4.3.4 セカンドブライスオークション
4.3.5 ファーストプライスオークション
4.4 【実践】インターネットオークション
4.4.1 自動入札方式とセカンドプライスオークション
4.4.2 ネットオークションの現実の入札行動

第5章 不完全競争市場への応用
5.1 完全競争市場とゲーム理論の発展
5.2 独占市場での企業行動
5.3クールノー競争
5.3.1 複占市場の分類
5.3.2 クールノー競争のモデル
5.4 クールノー競争による複占市場の分析
5.4.1 社会的総余剰,競争とカルテル
5.4.2 費用削減による効果,税金と補助金の効果
5.5 ベルトラン競争
5.5.1 ベルトラン・ナッシュ均衡
5.5.2 費用削減による効果,戦略的代替と戦略的補完
5.6 シュタッケルベルグ競争

第6章 混合戦略
6.1 混合戦略とナッシュ均衡
6.1.1 ナッシュ均衡のないゲーム?
6.1.2 混合戦略とゲームの解
6.1.3 混合戦略のナッシュ均衡
6.2 【発展】2×2の混合戦略のナッシュ均衡を求める
6.2.1 精巧堂vs便乗工房のナッシュ均衡を求める
6.2.2 「市コンビニ戦争PART3のナッシュ均衡を求める
6.2.3 その他の混合戦略のナッシュ均衡
6.3 2人ゼロ和ゲームミニマックス定理
6.3.1 2人ゼロ和ゲームとマキシミニ戦略
6.3.2 ミニマックス定理とナッシュ均衡.
6.4 【発展】マキシミニ戦略とミニマックス値を求める
6.4.1 混合戦略への拡張とミニマックス定理
6.4.2 マキシミニ戦略とミニマックス値を求める
6.4.3 2×nのマキシミニ戦略

第7章 一般の展開形ゲーム
7.1 不完全情報の展開形ゲーム・
7.1.1 不完全情報ゲームと情報集合
7.1.2 行動戦略
7.1.3 行動戦略におけるナッシュ均衡
7.1.4 展開形ゲームにおけるナッシュ均衡の問題点
7.1.5 部分ゲーム完全均衡
7.2 【発展】展開形ゲームの構成要素と部分ゲーム完全均衡点
7.2.1 展開形ゲームを構成する要素
7.2.2 部分ゲームと部分ゲーム完全均衡点
7.2.3 完全記憶ゲーム
7.3 【発展】展開形ゲームと戦略形ゲームの関係
7.3.1 展開形ゲームと戦略形ゲームの相互変換
7.3.2 混合戦略をどう考えるか
7.4 【応用】投票とゲーム理論
7.4.1 様々な投票
7.4.2 循環多数決と審議順序
7.4.3 戦略的投票

第8章 時間経過と長期的関係
8.1 割引因子による利得の計算
8.2 交渉の要因と交互提案ゲーム(2段階交渉ゲーム)
8.3 繰り返しゲーム
8.3.1 囚人のジレンマの繰り返し
8.3.2 繰り返しゲームの戦略と利得
8.4 有限回の繰り返しゲーム
8.4.1 2回の繰り返しゲーム
8.4.2 7回の有限繰り返しゲーム
8.5 無限回の繰り返しゲームと協力の達成
8.5.1 無限回の繰り返しゲーム
8.5.2 【実践】アクセルロッドの実験とおうむ返し戦略
8.6 評判
8.7 【発展】フォーク定理
8.8 【発展】有限回繰り返しの囚人のジレンマでの協力達成
8.8.1 有限の繰り返しゲームから協力の達成を導く
8.8.2 わずかな利得は気にしないプレイヤー
8.8.3 記憶が限定されるプレイヤー

第9章 不確実性とゲーム理論
9.1 リスクと行動
9.1.1 期待値とリスクプレミアム
9.1.2 期待利得と期待効用
9.2 【応用】 インセンティブ契約とモラルハザード
9.2. 1インセンティブとは何か
9.2.2 インセンティブ契約か固定給か
9.2.3 リスクとインセンティフ契約
9.2.4 モラルハザード
9.3 【発展】最適な報酬契約
9.3.1 ファーストベスト代理店の行動が観察できる場合
9.3.2 セカンドベスト 代理店の行動が観察できない場合
9.3.3代理店を努力させない場合
9.3.4 数値例

第10章 不完備情報の戦略形ゲーム
10.1 不完備情報ゲームの基礎
10.1.1 簡単な2人不完備情報戦略形ゲーム
10.1.2 タイプとは何か
10.1.3 不完備情報ゲームとベイズナッシュ均衡
10.1.4 ベイズナッシュ均衡を求める
10.2 【応用】不完備情報の複占競争
10.2.1 費用が不完備情報であるクールノー競争
10.2.2 事前の推測確率の影響
10.3 【発展】ベイズの定理とベイズゲーム
10.3.1 ベイズの定理
10.3.2 ベイズゲーム

第11章 不完備情報の展開形ゲーム
11.1 不完備情報の展開形ゲームと完全ベイズ均衡
11.1.1 不完備情報の展開形ゲームの表現
11.1.2 不完備情報展開形ゲームの解の考え方・
11.1.3 整合的な信念と完全ベイズ均衡
11.1.4 完全ベイズ均衡の簡便な求め方
11.1.5 【応用】逆選択
11.2 【応用】シグナリング
11.2.1 シグナリングゲームの例
11.2.2 シグナリングゲームを解く
11.2.3 シグナリングと費用
11.3 【発展】完全ベイズ均衡の詳細
11.3.1 ベイズの定理と完全ベイズ均衡
11.3.2 部分ゲーム完全均衡と完全ベイズ均衡

第12章協力ゲームの理論
12.1 交渉ゲームとナッシュ交渉解
12.1.1 交渉問題
12.1.2 交渉ゲームの公理的アプローチとナッシュ交渉解
12.1.3 ナッシュ交渉解を求める
12.2 協力ゲームの理論
12.2.1 提携形ゲーム
12.2.2 協力ゲームの解とコア
12.2.3 仁
12.2.4 シャープレイ値
12.3 協力ゲームと非協力ゲーム

第13章 ゲーム理論の勉強を進めるために
13.1 新しいゲーム理論
13.2 様々な分野のゲーム理論
13.3さらに深くゲーム理論を学ぶ

参考文献
事項索引
人名索引

装丁・山崎登

渡辺隆裕 (著)
日経BP (2008/4/7)、出典:出版社HP

ゲーム理論・入門 新版–人間社会の理解のために (有斐閣アルマ)

有斐閣アルマからのゲーム理論入門

ゲーム理論の基礎的な内容を中心に解説しています。ゲーム理論の学問的な位置づけや成り立ち、ゲーム理論が扱う人間のモデルのような、そもそもゲーム理論とはなんぞや、といったポイントから始めています。また、意思決定の背景にあるミクロ経済学の考え方についても示されており、ゲーム理論がよくわからない初心者の方でも理解しやすいと思います。

肝心のゲーム理論のトピックですが、寡占市場での均衡や公共財、ナッシュ均衡、囚人のジレンマといった有名な項目に加えて、先読み理論、ゲームの情報構造、繰り返しゲームといった応用的な理論についても解説されています。難しい数学が必要となることで理解しにくいイメージが強いゲーム理論ですが、本書は、数学がそれほどできなくても理解できるものとなっています。ゲーム理論について基本を学びたい方向けの本でしょう。

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2014/9/18)、出典:出版社HP

新版へのはしがき

初版の出版以来,本書がゲーム理論に関心をもつ多くの方々に 読まれ、フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの『ゲームの理論 と経済行動』出版 70周年の記念すべき年に新版を出版できること は、私の大きな喜びである。

人間社会において、私たちは異なる価値観や文化をもつ他の人々 とどのようにして利害の対立を克服し、協力関係を築くことができ るだろうか。このような人間社会の根本問題を考察するためには、 社会と人間行動の基本的なメカニズムを研究し理解する必要があ る。現在, ゲーム理論は,経済学を超えて、人文・社会科学や自然 科学,工学の広範囲な学問分野で活発に研究が行われている。今 後,さらに、すべての人々にとって幸福な人間社会を実現するため の基礎的な学問として発展することが期待されている。また,ゲー ム理論のものの見方や考え方を身につけることは、グローバル化し た社会を生きる私たちの新しい教養の1つとして有用であると思う。
新版では、読者の方々が学びやすいように2色刷とし、表現や 説明をよりわかりやすいものに改訂した。また,近年,発展が著し いオークション理論の基礎的事項を追加した。

有斐閣の尾崎大輔氏には,初版と同様に,本書の企画,編集,出 版について大変お世話になりました。ここに記して深く謝意を表し ます。

2014年7月
岡田章

初版はしがき

21世紀に入り,私たちの社会はインターネットなどの新しい情報技術の発達によって、個人,企業,組織,国などのさまざまなレベルでグローバル化が急速に進んでいる。現代社会では,私たち自身と他の人々とのつながりはますます緊密なものとなっている。 私たちの行動は互いに影響を及ぼし合い,相互に依存している。社会 を構成する私たち1人ひとりはそれぞれ独自の価値や目的を追求 する存在であり,その結果として,地球温暖化問題や経済格差など の例に見られるようなさまざまな利害の対立が生じている。いかに して,このような利害の対立を克服して他の人々と協力関係を実現 するかが,現代社会を生きる私たちにとっての大きな課題である。

ゲーム理論は、社会や経済における複数の主体の相互に依存する 行動や意思決定を研究し,さらに,人間の行動をとおして、社会の 成り立ちやあり様を研究する学問である。ゲーム理論は経済行動を 分析するための数学理論として誕生したが,その後,自律した行動 主体(システム)の相互作用というゲーム理論の研究対象は,経済 学だけにとどまらず他の社会科学や人文科学,さらに自然科学や情 報科学などの広範囲な学問分野で共通に見出されている。そして現 在では、ゲーム理論は普遍的な理論としてさまざまな学問分野で活 発に研究されている。今後、さまざまな学問分野をつなぐ共通言語 としてのゲーム理論の役割はますます大きくなることが期待されて いる。

また,研究のフロンティアだけでなく、ゲーム理論の考え方や見 方を身につけることは,国際化が一層進展している現代に生きる私たちの新しい教養の1つとして有用であると思う。とくに,こ れからの新しい時代に活躍する若い世代の人々にとって,異なる 価値観や文化をもつ他の人々の考え方や行動を理解し,利害の対立 を克服して協力関係を築くための理性と感性(著者はこの2つをとも にもつ心をゲーム・マインドと呼んでいる)を磨くことが大切であり, ゲーム理論の学習はこのために役立つはずである。

本書は,ゲーム理論を初めて学習する読者を対象に書かれた入門 書である。執筆にあたっては、読者がゲーム理論の学習をおもしろ いと感じ,さらに学習を進めていくにつれてゲーム理論の基本的 な考え方や見方が自然と身につくように配慮した。そのため,数学 的記述はなるべく避けるようにした。なお,本書を学習するための 必要最小限の数学知識は、Helpとして適宜説明を加えているので 必要に応じて参照してほしい。また,入門書ではあるが扱う内容の レベルは下げず,基礎から最新の研究成果までをわかりやすく解説 するように努めた。しかしながら,著者の力不足のため,初学者の 方々にとっては記述がわかりにくい点も残っているかもしれない。 その点は、読者の方々のご批判を仰ぎたい。本書が,少しでも読者 の方々のゲーム理論の学習の手助けとなれば,著者にとってこれ以 上の喜びはない。

本書の執筆にあたっては、多くの方々から多大のご支援をいただ いた。ゲーム理論の入門書を執筆することを着想したきっかけは、 2002年から2年間,京都大学の経済学部と法学部の学生有志諸君 と催した「初学者のためのゲーム理論勉強会」である。勉強会で は、初学者の斬新な発想や,初めてゲーム理論を学習するときに感 じるハードルがどこにあるのかを理解できて,著者にとって大変有 意義であった。一緒に楽しくゲーム理論を勉強する機会を与えてく れた参加者の方々に感謝したい。また、京都大学総合人間学部と一橋大学経済学部でゲーム理論の入門的な授業を担当する機会が与えられ,本書の内容はこれらの授業の講義ノートにもとづいている。 2007年は、一橋大学経済学部の授業「応用ゲーム理論」で本書の 原稿を実際に用いて講義した。授業に出席し多くの質問やコメント をしてくれた学生の皆さんに感謝したい。2004年に京都大学から 一橋大学に移った後は、大学院と学部のゼミを担当し,日頃,ゼミ の学生諸君から多くの刺激と励ましを受けている。ゼミの学生諸君 が,ゲーム・マインド(院生諸君はゲーム・スピリット)をもった自 由な個人として社会のさまざまな分野で活躍することを期待して、 ゼミのモットーは「自由とゲーム・マインド」である。読者の方々 にも,本書を通じて,ぜひゲーム・マインドを身につけていただき たいと願っている。

次の方々は、本書の原稿を丹念に読んで大変有益なコメントを下さった。丸田利昌教授(日本大学大学院総合科学研究科,以下肩書きは執筆当時),宮川敏治准教授(大阪経済大学経済学部),加茂知幸准教 授(京都産業大学経済学部), 福住多一講師(筑波大学大学院人文社会科 学研究科), 新井泰弘氏(知的財産研究所)。ここに記して謝意を表し ます。津田塾大学の味曽野梨果さんには原稿の作成で大変お世話に なりました。
最後に,有斐閣の尾崎大輔氏には、本書の企画、編集、出版につ いて大変お世話になりました。ここに記して深く謝意を表します。

2008年6月
岡田章

著者紹介

岡田章(おかだ・あきら)
1982年、東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了(理学博士)
1982年より東京工業大学理学部情報科学科助手,1989 年より埼玉大学
大学院政策科学研究科講師,同年助教授,1991年京都大学経済研 究所助教授,1996年京都大学経済研究所教授,2004年一橋大学大学院経済学研究科教授,2015年京都大学経済研究所教授を経て,
現在、一橋大学名誉教授
専攻:ゲーム理論,理論経済学
主著:『ゲーム理論』(初版1996年,新版 2011年,有斐閣);『経済学・経営学のための数学』(2001年,東洋経済新報社): 『ゲーム理論の 新展開』(共編著,2002年,勁草書房);『ゲーム理論の応用』(共 編著,2005年,勁草書房); 『国際紛争と協調のゲーム』(共編, 2013年,有斐閣); 『ゲーム理論ワークブック』(監修・著, 2015年, 有斐閣)

本書を読むにあたって

●本書の構成
本書は全12章と,文献ガイド,練習問題の解答で構成さ れています。まず第1章で、ゲーム理論とは何か,本書で扱われる内容の 概略を解説します。次に第2章では意思決定と,ゲーム理論の学習で重要 な確率について丁寧に説明し,第3章ではさまざまな日常生活などにおけ るゲームの例を概観します。第4章以降では,理論の基礎から最新の研究 成果まで解説します。豊富なゲームの例を示しながら,楽しく学び進める ことができ、基本的な考え方や見方が自然と身につくように工夫しました。 第12章では、ゲーム理論を実際に検証する実験研究について概観します。 本書を通じて,現代社会を生きるうえで重要な,利害の対立を克服して協 力関係を築くための理性と感性「ゲーム・マインド」をぜひ身につけてく
ださい。
●ポイント
各章の冒頭には、その章の位置づけや概要をコンパクトに解 説した「ポイント」を用意しました。
●キーワード
各章で学ぶ重要な用語や概念を青色太字で表記しました。 索引でも,その用語や概念がとくに説明されている箇所の数字が青色太字 で表記されています。
●Column
本文の解説の背景となる知識や,追加的な話題を解説した7つ の Columnを収録しました。
●Help
本書を学習するための必要最小限の数学知識は、適所にHelpと して7つ挿入し、説明を加えています。必要に応じて参照してください。
●練習問題
各章末に、本文の内容確認やより進んだ学習のための「練習 問題」をつけました。巻末には「練習問題の解答」を収録しています。
●文献ガイド
巻末に、次のステップへ進むための参考文献をテーマごと に紹介しています。さらにゲーム理論を学ぶためにぜひご活用ください。
●索引
巻末に「事項索引」「人名索引」を収録しました。索引です。 キーワード(とくに説明している箇所)のページ番号を青色太字で表記 ています。「人名索引」には,それぞれ原綴りも掲載しています。

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2014/9/18)、出典:出版社HP

目次

新版へのはしがき
初版はしがき
著者紹介
本書を読むにあたって

第1章 ゲーム理論とは何だろうか?
1 人間社会の科学
ゲームとは?
ゲーム理論の考え方と対象
2 ゲーム理論の創設者
●フォン・ノイマン、モルゲンシュテルン、ナッシュ
ゲーム理論の誕生
ナッシュの貢献
3 ゲーム理論における人間のモデル
人間をどのように捉えるか
合理的な人間とは?
4 ゲームの基本用語
5 経済学とゲーム理論

第2章 選択と意思決定
1 意思決定のモデル…
選択と選好
合理的な意思決定
2 リスクを含む選択対象
3 期待効用仮説
期待効用仮説の成立条件
期待効用と意思決定
リスクに対する態度
4 不確実性と主観確率
5 確率の基礎知識
確率とは
確率変数
条件つき確率とベイズの公式

第3章 戦略ゲーム
1 ゲームの例
2 確率的な戦略
ペナルティキックの戦略
混合戦略
3 クールノー寡占市場
4 公共財の供給
5 オークション

第4章 ナッシュ均衡点
1 最適応答
2 ナッシュ均衡点とは?
ナッシュ均衡点の求め方
協調ゲームのナッシュ均衡点
男性と女性の争いのナッシュ均衡点
タカーハトー・ゲームのナッシュ均衡点
ナッシュ均衡点の定義
3 均衡点の2つの考え方
●合理的均衡と集団均衡 合理的均衡
集団均衡
2つの考え方の違い
4 均衡点の計算方法
混合戦略のナッシュ均衡点
連続変数のナッシュ均衡点
5 支配戦略とマックスミニ戦略
支配戦略
第2価格封印入札
マックスミニ戦略

第5章 利害の対立と協力
1 囚人のジレンマ
2 個人合理性
3 集団合理性
パレート最適性
一般的なパレート最適性の定義
囚人のジレンマの特徴
4 ナッシュ均衡点とパレート最適性
パレート最適な戦略
クールノー寡占市場と公共財の供給
値下げ競争のジレンマ
5 協調と協力
相関戦略と相関均衡
ジレンマの解決

第6章 ダイナミックなゲーム
1 ゲームの木
逐次的なゲーム
ダイナミックなゲームの例
最後通告ゲーム
2 先読み推論
チェーンストア・ゲーム
レディファーストのゲーム
最後通告ゲームでの理論予測
3 ゲームの情報構造
情報集合
情報分割
完全記憶ゲーム
個然手番
4 展開形ゲームの戦略の概念
戦略と行動
行動戦略
偶然手番をもつゲームの戦略
5 部分ゲーム完全均衡点
展開形ゲームのナッシュ均衡点
完全均衡点
部分ゲームと完全均衡点
複数回の逐次手番ゲーム

第7章 繰り返しゲーム
1 繰り返し囚人のジレンマ
完全情報をもつ繰り返しゲーム
繰り返し囚人のジレンマの戦略
将来利得の割引
繰り返し囚人のジレンマのナッシュ均衡点
トリガー戦略
しっぺ返し
戦略
2 フォーク定理
個人合理的利得ベクトル
暗黙の協調
3 利己的動機と利他的行動
利己的動機と利他的動機
互恵的利他主義
4 不完全情報とシグナル
不完全情報と繰り返しゲーム
ベルトラン寡占市場

第8章 不確実な相手とのゲーム
1 情報不完備ゲーム
不完全な知識
非対称情報
ベイジアン・ゲーム
2 プレイヤーの信念とベイズの定理
事後予想と信念
整合的な信念
3 完全ベイジアン均衡点
情報不完備ゲームの均衡
分離均衡
一括均衡
4 逆選択とシグナリング
情報の非対称性による問題
シグナリング・ゲーム
5 モラルハザード
モラルハザードとは
プリンシパル=エージェント問 題
固定賃金契約のゲーム
ボーナス賃金契約の ゲーム
6 オークションの収入同値定理
参加者の入札戦略
主催者の期待収入

第9章 交渉ゲーム
1 2人の交渉問題
2 ナッシュの公理
公理論的アプローチと戦略的アプローチ
交渉解の4つの公理
3 ナッシュ交渉解
4 交渉の戦略ゲーム

第10章 グループ形成と利得分配

1 協力ゲーム
提携の形成
優加法的ゲーム
協力ゲームと非協 力ゲームによるアプローチ
パレート最適性と個人合理性
3人ゲームの配分の集合
2コア
3 シャープレイ値
4 交渉の戦略的アプローチ .
5 市場ゲーム

第11章 進化ゲーム
1 進化ゲームの基礎
進化的に安定
メイナード・スミスの考え
進化
ゲームによる新しい視点
2 進化のダイナミックス
3 進化的に安定な戦略(ESS)
4 協力の進化

第12章 ゲーム実験
1 実験研究の意義
理論の検証
経済学と実験
実験研究の3つの意義
2 最後通告ゲーム
最後通告ゲームの最初の実験
互恵性の発見
正の互恵性と信頼
3 公共財の供給
限定合理性と学習
ただ乗りと処罰機会
4 平均値推測ゲーム
ケインズの美人投票
ゲームの理論予測
予測に対する実験結果

よりゲーム理論を学ぶための文献ガイド
練習問題の解答
索引

Column一覧
1 科学とは何か?
2 プロスポーツ選手はゲーム理論を使う?
3 ゲーム理論と夏目漱石「私の個人主義」
4 チェーンストア・パラドックス(134)
5 情報不完備ゲームと不完全情報ゲーム
6 天才ナッシュ
7 日本の大学生による平均値推測ゲームの実験

Help一覧
1 集合,数,関数
2 関数の微分と最適化
3 十分条件と必要条件,逆と対偶
4 数列と無限級数
5 確率変数の分布関数
6 関数の積分
7 閉集合と口集合

ゲームの例,一覧
2.1 個人の目標
2.2 宝くじの購入
2.3 株の購入
2.4 事前予想の更新
3.1 ピザ店の顧客獲得競争ゲーム
3.2 協調ゲーム
3.3 男性と女性の争い
3.4 タカハト・ゲーム
3.5 ペナルティキック
3.6 クールノー寡占市場ゲーム
3.7 公共財の供給ゲーム
3.8 封印入札の価格ルール
4.1クールノー均衡
4.2 公共財の供給
5.1 ピザ店の値下げ競争ゲーム
6.1 チェーンストア・ゲーム
6.2 レディファーストのゲーム
6.3 最後通告ゲーム
6.4 ペナルティキックのゲーム
6.5トランプ・ゲーム
6.6 不確実性下での値下げ競争ゲーム
6.7信頼ゲーム
7.1 贈り物ゲーム
7.2 ベルトラン寡占市場
8.1 不確実な相手とのゲーム
9.1 収益分配の交渉
9.2 債権回収の交渉
9.3 共同行動の交渉
10.1 ベンチャー企業の起業
10.2 3人多数決ゲーム(230)
10.3 1人の売り手と2人の買い手
11.1 囚人のジレンマ
11.2 コンピュータの OS 選択
11.3 タカー ハト・ゲーム
11.4 「男性と女性の争い」における共進化

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2014/9/18)、出典:出版社HP

ビジュアル ゲーム理論 (日経文庫)

視覚的に理解するゲーム理論入門

入門の入門として執筆されたロングセラーになった『図解雑学ゲーム理論』を全面改訂されて本書となりました。入門書では図、表、イラスト付きのゲーム理論随一となっております。

渡辺 隆裕 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/16)、出典:出版社HP

まえがき

ゲーム理論は2人以上のプレイヤー(個人、企業、政 府など)が競争や協力を行う状況や問題を数学によっ て理論化したものです。経済学を中心に経営学、政治 学、社会学などの社会科学はもちろん、生物学やコン ピュータの研究においても広く用いられています。

囚人のジレンマをはじめ、チキンゲーム、モラルハ ザード、インセンティブ、リスク分担、逆選択など、 皆さんが日常で耳にするキーワードもゲーム理論と深 い関係があります。 「ゲーム理論について、よく知りたい、学びたい」と いう声を受け、筆者は2004年に『図解雑学〉ゲーム 理論』をナツメ社から出版しました。おかげさまでこ の本は多くの方に読まれ好評価を頂き、長く愛されて きました。しかし10年以上が過ぎ残念ながら絶版とな り、その一方でゲーム理論の研究も進み、また読者の もつ知識やニーズにも変化が出てきました。そこで、 マッチング理論などの最近の話題も盛り込み、大幅に 改訂してリニューアルしたものが本書です。

〈図解雑学〉では数式をあまり用いずに、概念や解の 求め方などの理論部分を説明するとともに、キーワー ドについて例や説明もバランス良く盛り込んだ本を目指しました。このような欲張りな目標も「図解」とい う方法をうまく用いることで達成でき、大学のゼミの テキストとして使われることもしばしばで、「『雑学』 という言葉が合わないテキストとしても使える本だ」 とも言われました。

その後、本務である首都大学東京のビジネススクー ルの講義や企業の講演などで頂いた質問や意見で、〈図 解雑学〉で説明不足の点やわかりにくい点などに気づ くことができました。今回のリニューアルでその点を 改善することもでき、「痒いところに手が届く」本にな ったと自負しています。
日本経済新聞出版社の堀口祐介さんには本書を出版 する機会を頂くとともに執筆を支えて頂き、大変感謝 致しています。またいつも執筆を励ましてくれる私の 妻にもこの場を借りて感謝したいと思います。

本書を通じて、楽しく魅力的なゲーム理論を知り、 その理解を深め、さらなる学習へ発展して頂けること を願ってます。

2019年4月
渡辺隆裕

渡辺 隆裕 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/16)、出典:出版社HP

目次

第1章 ゲーム理論を学ぶ
1 ゲーム理論とは何か
2 幅広い応用分野
3 なぜゲーム「理論」なのか?―理論による理解
4 数学を用いたゲーム理論の力
5 理論による説明とデータによる説明
coffee Break 1 フォン・ノイマンとゲーム理論

第2章 基本―同時ゲームか交互ゲームか
6 同時ゲームと交互ゲーム
7 同時ゲームを構成する3つの要素
8 同時ゲームの例1 文秋vs. 新朝PART1―特集記事競争
9 利得行列を書いて分析しよう
10 「支配戦略」を探せ
11 ゲームの結果=ゲームの解
12 同時ゲームの例2 文秋vs. 新朝PART2
13 どちらか一方だけに支配戦略があるとき
14 支配戦略に対する最適な戦略を選択する
15 同時ゲームの例3 文秋vs. 新朝PART3
16 ナッシュ均衡とは?
17 読み合う先に行き着く結果
18 ゲームの解はナッシュ均衡で決まり!
19 交互ゲームの例文秋 vs. 新朝 PART4
20 交互ゲームでは「ゲームの木」で考える
21 交互ゲームも同時ゲームも思考法は同じ
22 「先読み」で考えよ
23 交互ゲームにおけるゲームの解
24 バックワードインダクション
25 交互ゲームの戦略とナッシュ均衡
Coffee Break 2 将棋や囲碁とゲーム理論

第3章 応用―チキンゲーム、インセンティブ、囚人のジレンマ
26 チキンゲーム
27 チキンゲームとフォーカルポイント
28 ゲームを変えろ! コミットメント
29 先手が有利か、それとも後手が有利か?
30 インセンティブとゲーム理論
31 努力に対する報酬のインセンティブ
32 報酬と罰則によるwin-winの契約
33 交渉をゲーム理論で考える
34 交渉の利益と余剰の分配
35 最後通牒ゲーム
36 最後通牒ゲームと実験経済学
37 オークション
38 競り
39 インターネットオークションと自動入札方式
40 セカンドプライスオークション
41 収益等価定理
42 囚人のジレンマ―2国の環境汚染を例に
43 囚人のジレンマの由来
44 囚人のジレンマの条件
Coffee Break 3 コーディネーションゲーム

第4章 発展―循環多数決、繰り返しゲーム、トリガー戦略
45 交互ゲームと同時ゲームの混合形
46 部分ゲームと部分ゲーム完全均衡
47 決定の順序と戦略的投票
48 循環多数決
49 戦略的投票一ゲーム理論で考える
50 繰返しゲーム
51 有限回の繰返しゲーム
52 無限回の繰返しゲーム
53 トリガー(引き金) 戦略
54 協力の達成とフォーク定理
55 アクセルロッドの実験とオウム返し戦略
56 スポーツの戦略とゲーム理論
57 ナッシュ均衡のないゲーム
58 期待値を考え、ゲームの解を求める
59 戦略的思考の神髄
Coffee Break 4 ナッシュ博士と『ビューティフル・マインド』

第5章 不確実性と情報モラルハザード、逆選択、マッチング
60 不確実な状況下でのゲーム理論
61 期待値と期待金額とリスク
62 利得の期待値―期待利得
63 モラルハザード
64 モラルハザードのモデル
65 逆選択―相手の「属性」がわからない
66 ベイズの定理
67 ベイズの定理とゲーム理論
68 行動と情報―資格試験を例に
69 資格が正しい情報となる条件
70 シグナリング、コスト、事前確率
71 不完備情報ゲームとベイズ完全均衡
72 マッチングとメカニズムデザイン
73 マッチングの安定性
74 受入保留方式
75 耐戦略性、メカニズムデザイン、マーケットデザイン
Coffee Break 5 混雑ゲームとポテンシャルゲーム

第6章 大きく広がるゲーム理論
76 新しいゲーム理論
77 進化ゲーム理論
78 コンピュータとゲーム理論
79 実験経済学と行動ゲーム理論
80 もう1つのゲーム理論―協力ゲーム
Coffee Break 6 シャープレイ値と投票力指数

文献案内

渡辺 隆裕 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/16)、出典:出版社HP

ゲーム理論入門の入門 (岩波新書)

岩波入門の入門シリーズのゲーム理論編

本書では前提知識ゼロからゲーム理論を紹介しています。ですので、入門書でもでてくるゲームの利得表なども殆ど出てきませんが、イメージや簡易的な図で説明を用いながら具体的な事例で紹介していきます。本書はまた、既に教科書的な扱いの入門書を読んでみた方が読んでみても面白さは薄れません。すでに利得表やゲームの木で学びがあれば本書でもある通り。本書では、普通の入門編や中級編の教科書では扱われないが「入門の入門」にもってこいもセレクトされています。

鎌田 雄一郎 (著)
出版社: 岩波書店 (2019/4/19)、出典:出版社HP

はじめにこの本を手にとったあなたへ

この本を手にとったあなたは、「ゲーム理論」という言葉を聞いたことはあるかもしれない。でも、それはどういう理論なのだろうか?この本を読めばその全貌が明らかになる!ということは多分ないけれど、今までよりも鮮明なイメージを持ってもらえるようになるだろう。本書を読むと、以下のような良いことがある。

①もしあなたが進路を決めかねている高校生なら、本書を読むと大学で勉強する経済学のことが垣間見られるかもしれない。ゲーム理論は今や経済学を語る上で欠かせない理論だ。「経済学部に入るとこんなことを勉強するのか」と実感してもらえると思う。

②もしあなたがサボり癖のある大学生なら(もしくは、過去にそうだったなら)、せっかくの有難いゲーム理論の講義を寝て過ごしたなんてことがあるかもしれない。そんなあなたのための、ゲーム理論の復習書だ!

③もしあなたがゲーム理論をマスターした気になっている大学生・大学院生(だった)なら、この本を読んでもう一度ゲーム理論への理解を深めることをお勧めする。本書では、普通の入門編や中級編の教科書では扱われないが僕が「入門の入門」に適切だと判断したトピックが扱われているからだ。

④もしあなたが数十年前に大学生だった人なら、当時はゲーム理論の講義自体まだなかったかもしれない。ゲーム理論は比較的新しい理論なのだ。本書は、そんなあなたを最新のゲーム理論の世界へご案内する。錆びついた知識を一挙更新しよう!

⑤もしあなたが重要な戦略決定(たとえば、新商品の価格設定や、新規市場への参入戦略の策定)に携わるビジネスパーソンなら、ゲーム理論の基礎を理解していることは欠かせないだろう。え?実はよく分かっていない?じゃあ、急いでこの本を読もう。

⑥もしあなたが何か新しいことを勉強したいと思っている人なら、この本はうってつけだ。ゲーム理論は前提知識をほとんど(というかまったく)必要とせず学べる理論なのだ。そして本書がそんなゲーム理論の、「入門の入門」である。本書を読んで、充実した知の生活を送ろう!
さて、本編に入る前に、少し自己紹介をしておく。何処の馬の骨だか分からない人が書いた解説なんて、信用ならないでしょ?

僕はアメリカの大学教員だ。カリフォルニア大学バークレー校という大学のハース経営大学院に所属している(図011)。いわゆるビジネススクールだ。大学教員だと言うと、時間の大半を授業に使っていると思われがちだが、これはよくある誤解だ。たとえば僕の場合、だいたい週一回MBA(経営学修士)かPhD(博士課程)の学生に授業をする以外は、もっぱら研究活動に勤しんでいる。具体的には、新しい理論を考えて学会誌に発表すべく、日々ゲーム理論のことを考え続けている。と言われても読者の皆さんは「何のことやら」と思われると思うが、だいたい毎日共著者とメールやテレビ電話で論文の方向性を話し合ったり、ホワイトボードに向かってウンウン唸って問題を考えたり、そうした結果をもとにパソコンに向かって論文を執筆したりしている。この本でも、我が大学での話、授業のことや研究生活のことも書いていくつもりだ。

僕の大学があるバークレーは、サンフランシスコのすぐ近くにある大学街だ(図012)ほぼ毎日晴天で、青空が綺麗。一年を通して暖かく、冬だってBBQができる。BBQで現地在住の日本人(一~二年のみ滞在の派遣駐在員の人が多い)と集まって話していると、「一体どういう経緯でアメリカの大学教員になったのですか?」とか、「アメリカ育ちなんですか?」とかよく聞かれる。でも僕は鎌倉生まれ横浜育ち。東京大学の農学部を卒業後、ハーバード大学の経済学部に留学した。農学部から経済学部に鞍替えするにあたっての壮大なストーリーは残念ながら本書では割愛するが、ともかく大学院に五年間通って博士号を無事取得した。その後イェール大学で一年間研究員を務めた後、現職に至る。ちょうど今、ここバークレーにきて六年目だ。
というわけで何やら経歴だけ見ると凄い人みたいだけれど、この本を読むと、「こいつ本当は大した奴じゃないんじゃね?」という気がしてくるかもしれない。そういう気がしてくるくらい、ゲーム理論は実は単純明快、初学者でもすぐ使いこなせるようになる理論なのだ。
でもまあとりあえずは、少しは僕のことを信用してもらえるかしらん?とにかく、これから始まるゲーム理論の世界に、ようこそ!

鎌田 雄一郎 (著)
出版社: 岩波書店 (2019/4/19)、出典:出版社HP

目次

はじめにこの本を手にとったあなたへ
第1章ゲーム理論とは―戦略的思考の理論
ラスベガスで意思決定
競馬で意思決定
じゃんけんぽい
スマホ市場のゲーム理論

第2章ナッシュ均衡――相手の動きを読め!
実はコロンブスの卵
ナッシュ均衡の定義
こんな簡単なことでノーベル賞?
ルパンと次元は白状するか
「ジレンマ」と太郎くん
囚人のジレンマで、社会経済問題を斬る!
僕のジレンマ
僕は学会、家てんてこ舞い
我が家のナッシュ均衡
妥当な予測方法?
授業でゲーム
ナッシュ均衡なんて信用ならん!

第3章複数均衡の問題――どのナッシュ均衡?!
ラブジェネゲーム
哲平と理子のナッシュ均衡
ナッシュ均衡は予測に使えるか
キーボード配列とエスカレーター

第4章非存在の問題――ナッシュ均衡がない?
じゃんけんのナッシュ均衡
新しいナッシュ均衡の定義
じゃんけんを科学する
「分からない」の意味
ナッシュが証明したこと
PKも科学する
サッカー選手が学習する
カリスマ候補者vs平凡候補者
選挙戦の行方はいかに?!

第5章完全情報ゲームと後ろ向き帰納法―将来のことから考える
先手必勝の場合
バークレーでラーメンゲーム
ゲームの木で考える
博多天神は、出店するのか
サンフランシスコでもラーメンゲーム
ゲームの木の描き方ルール
典型的な間違い
後ろ向き帰納法、威力を発揮!
値下げなら値下げラーメンゲーム
市場分析と、利潤最大化(の知識)の仮定
一風堂店主とトランプ大統領

第6章不完全情報ゲームと完全ベイジアン均衡、そして前向き帰納法|過去について考える
ゲームの木に装飾を
センスのない金持ち
画家ゲームを解こうとすると
金持ちは、お値打ちの絵を買えるか?
届いてしまった絵
届かない絵
ビジネスにおける完全ベイジアン均衡
あおいと准一の完全ベイジアン均衡
わざわざデートに来たあおいちゃん
読書案内
おわりに

図版製作前田茂実

第1章 ゲーム理論とは

戦略的思考の理論

第1章では、世の中には3つの意思決定問題があるということを学ぶラスベガスのカジノで遊ぶこと競馬で馬に賭けること,じゃんけんをすること、これらは、実はすべて異なる種類の意思決定問題なのだ.ゲーム理論がどのような意思決定問題を分析する理論なのか、理解を深めよう。

鎌田 雄一郎 (著)
出版社: 岩波書店 (2019/4/19)、出典:出版社HP

ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)

文庫なのに内容はスタンダード教科書レベル

文庫でのものなのでざっくりなものかと印象を持ちますが、非協力ゲーム、協力ゲーム、完全情報ゲーム、不完全情報ゲーム、そして進化ゲームを基礎的な部分を程よい文章と図で手堅く解説してある良書です。もちろん文庫での文字数の制約があり、テキパキした説明のところもあるので、理解が難しいところは渡辺隆裕著の『ゲーム理論入門』でじっくりとした説明を読むのも良いかと思います。

武藤 滋夫 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2001/1/1)、出典:出版社HP

まえがき

本書は,「ゲーム理論」の入門書です。ゲーム理論という言葉もかなりポピュラーなものになってきましたから,すでにどこかでこの言葉を目にされたことがおありになるかもしれません。ゲーム理論というのは、簡単にいってしまえば、複数の意思決定主体が存在する状況における意思決定の理論です。複数の意思決定主体がいますから,たとえ自分のとる行動が同じであっても,他の人々のとる行動によって結果は違ってきてしまいます。したがって,他の人々がどのような行動をとるかを常に考慮に入れながら自らの行動を決定していかなければなりません。そこに、ゲーム理論の難しさもあり,おもしろさもあります。

ゲーム理論は、チェスなどの室内ゲームに代表されるような,利害が完全に対立する2人の意思決定主体の行動分析から始まりました。しかしながら,「ゲーム的状況」は,室内ゲームの世界だけではありません。われわれの社会は人と人の間の関係から企業,国家などの組織と組織の間の関係に至るまで, 様々なゲーム的状況にあふれていますから、ゲーム理論はただちに経済学,政治学,社会学など社会科学の諸分野に浸透していきました。

特に,1980年代からの経済学,なかでも産業組織論などミクロ経済学への浸透はめざましいものがあり,現在では、ミクロ経済学はゲーム理論なしには語れないといっても過言ではありません。そして,政治学,社会学などの他の社会科学の分野はもちろんのこと、生物学,情報科学, 経営工学,社会工学,オ ペレーションズ・リサーチなどの理工学の分野にも、ゲーム理論は大きな広がりを見せています。 これらの動きを受けて、英文のゲーム理論のテキストも1990年代に入って数多く出版されるようになってきました。日本でも, 1990年代半ばから,翻訳書を含め多くのゲーム理論のテキストが出版されています。

ゲーム理論がこのような展開を見せるなかで,「ゲーム理論は難しい」という言葉をよく耳にします。確かに, ゲーム理論 は数理的な理論ですから,数式がよく出てきます。最近出版されている日本語のテキストも例外ではありません。数式が多いということがゲーム理論は難しいという原因になっているのかもしれません。しかし,ゲーム理論の基本的な部分は+−×÷ の四則演算だけで十分です。

一方,ゲーム理論の違った観点からの難しさを耳にすることがあります。他の人々の動きを考慮しながら自分にとって最適な意思決定を行うという概念的な難しさです。経営工学やオペレーションズ・リサーチなどの分野でも意思決定を扱いますが、そこでは他の人々など外部の動きはすべて確率的に扱ったうえで最適な意思決定を行うことが普通です。しかしながら, 他の人々もそれぞれの意思を持って行動しているわけですからそれでは不十分ではないでしょうか。では、どうやって他の人々の動きを考慮したうえで意思決定をしていくか,そこにゲーム理論の概念的な難しさがあります。

本書では、ゲーム理論の基本的な考え方そしてそのおもしろさを、できるだけ平易に解説し,読者にゲーム理論は難しくないことを知っていただこうと思っています。したがって,数式 による議論はできるだけ避け,簡単な事例を用いて議論を進めていきます。もちろん、ゲーム理論は数理的な理論ですから, 数式を全く用いないで議論することはできません。ただし,そのときも抽象的な議論は避け、具体的な数値を入れて目に見え る形で話を進めます。さらに,理解を深めていただくために、 各章末に練習問題を用意しました。 本書を読んで、文字通りゲーム理論の門をくぐっていただきたいと思います。そして,ゲーム理論のおもしろさをわかって いただき,本書を橋渡しとして現在出版されている他のゲーム理論のテキストへと進んでいただければ,筆者にとってこの上もない幸せです。

本書は、筆者のこれまでの東京工業大学,東北大学,東京都 立大学などにおけるゲーム理論の講義ノートをベースに,最近のトピックを付け加えたものです。中山幹夫氏(慶應義塾大 学), 松井知己氏(東京大学),松井泰子氏(東海大学)には, 本書の初稿の段階から丁寧かつ建設的なコメントをいただきました。牛尾吉昭氏(東京経済大学),大西匡光氏(大阪大学), 岡田章氏(京都大学),船木由喜彦氏(早稲田大学), 丸田利昌氏(大阪府立大学),大和毅彦氏(東京都立大学), 渡辺隆裕氏 (岩手県立大学)からは、最終稿に対してそれぞれのご専門の 立場から有益なコメントを多数いただきました。また,東京工 業大学大学院学生の石原慎一君,陣内悠介君,武藤正義君,小 川竜児君,福田恵美子さん、山田典一君には計算結果をはじめ 最終稿を細かくチェックしてもらいました。日本経済新聞社の堀口祐介氏には,本書の企画の段階から完成まで大変お世話になりました。これらの方々に心から感謝いたします。

2000年12月
武藤 滋夫

武藤 滋夫 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2001/1/1)、出典:出版社HP

目次

Ⅰ ゲーム理論を学ぼう
1 ゲーム理論とゲーム的状況
2 協力ゲームと非協力ゲーム
3 ゲーム的状況の表現
4 ゲーム理論が与えてきたもの
5 本書を読まれるにあたって

Ⅱ 非協力ゲームⅠ:行動決定が同時に行われる場合
1 事例による把握
2 戦略形ゲーム
3 戦略の支配
4 囚人のジレンマ
5 最適反応戦略とナッシュ均衡
6 戦略の支配とナッシュ均衡
7 混合戦略
8 ナッシュ均衡の求め方
9 ナッシュ均衡の応用例:クールノーの複占市場
10 マックスミニ戦略
11 2人定和ゲームとミニマックス定理
12 多人数戦略形ゲーム
13 利得と期待効用
練習問題

Ⅲ 非協力ゲームⅡ:行動決定が時間をおいて行われる場合
1 事例による把握
2 展開形ゲーム
3 戦略形ゲーム表現
4 ナッシュ均衡
5 部分ゲーム完全均衡
6 チェーンストア・パラドックス
7 繰り返しゲーム
8 部分ゲーム完全均衡の応用例:シュタッケルベルクの複占市場
練習問題

Ⅳ 情報不完備なゲーム
1 事例による把握:行動決定が同時に行われる場合
2 ベイジアンゲームの戦略形ゲーム表現
3 ベイジアン均衡
4 事例による把握:行動決定が時間をおいて行われる場合
5 ベイジアンゲームの展開形ゲーム表現
6 完全ベイジアン均衡
7 情報不完備なゲームの応用例:中古車市場とレモン
練習問題

Ⅴ 2人協力ゲーム:交渉ゲーム
1 協力ゲーム理論と非協力ゲーム理論
2 事例による把握と相関戦略
3 実現可能集合と交渉の基準点
4 交渉ゲーム
5 ナッシュ交渉解と公理系
6 ナッシュ交渉解に対する非協力ゲームからのアプローチ
7 譲渡可能効用とサイドペイメント
練習問題

Ⅵ 多人数協力ゲーム:特性関数形ゲーム
1 事例による把握
2 特性関数形ゲーム
3 優加法性と全員提携の形成
4 配分
5 コア
6 仁
7 シャープレイ値
8 特性関数形ゲームにおけるその他の解
練習問題

Ⅶ 進化と学習のゲーム理論
1 進化と学習のゲーム理論を学ぶ前に
2 進化論的ゲーム理論
3 進化的安定戦略
4 混合戦略型の行動様式まで考えた進化的安定戦略
5 進化ゲームの動学的モデル
6 適応型学習に基づくゲーム理論Ⅰ:現在の状態の観察
7 適応型学習に基づくゲーム理論Ⅱ:過去の経験の記憶
練習問題

〈文献ガイド〉 ゲーム理論をより深く学ぶために
練習問題の略解
事項索引
人名索引

事例
価格引き下げ競争
規格の統一争い
視聴率競争
クールノーの複占市場
男女のジレンマ
価格引き下げ競争における先導者と追従者
参入と参入阻止
多期間にわたる価格引き下げ競争
部分ゲームの説明
シュタッケルベルクの複占市場
価格引き下げのもたらす影響の不確実性
B社(参入企業)の不確実性
規格統一におけるA社とB社の協力
利得行列の変更
投票による決定
家の売買
費用の分担
タカーハトゲームⅠ
タカーハトゲームⅡ
2種類のワープロソフト
ドアの出入り

COFFEE BREAK
フォン・ノイマンは著書に「ゾウ」を入れた!
囚人のジレンマのもともとのストーリーは?
フォン・ノイマンはナッシュ均衡がキライ?
強かったのはお返し戦略!
有名大学卒業は採用時の判断材料になるか?
「無関係な結果からの独立性」の公理は妥当?
ユダヤ教の教典にあったゲーム理論!
エスカレーターはどちらに並ぶ? そして、ドアは押さえる? 押さえない?

武藤 滋夫 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2001/1/1)、出典:出版社HP

はじめてのゲーム理論 (ブルーバックス)

趣向を変えたゲーム理論入門!

ナッシュ均衡とパレート効率性のあとに、混合戦略、協調問題、知識と情報の問題、メカニズム・デザイン論、不可能性定理、そして量子ゲームという流れになっています。演習を進めながら、一歩ずつ理解し、慣れることに焦点をあてているのも良い点です。ゲーム理論の入門としては扱うテーマがバラエティ豊かですが、こういうこともゲーム理論で考えていくことができるのかと理解することもできます。時間をかけてゲーム理論に取り組むところならおすすめの1冊といえます。

川越 敏司 (著)
出版社: 講談社 (2012/8/21)、出典:出版社HP

はじめに

わたしがゲーム理論に出会ったのは、大学生のときでした。アルバイト先で、隙をうかがっては仕事をさぼっている人を見て、こういう人たちをまじめに働かせるにはどうしたらよいのだろうかと考えたのがきっかけです。

「もっとまじめに働いてくださいよ!」と訴えてみても、人間関係が悪くなるばかりで、たいして効果もなさそうです。もちろん、怖い上司や先輩が怒鳴ったりすれば一時的には問題が解決するかもしれませんが、またすぐに元に戻ってしまいそうです。人の性格や態度というのはそれほどすぐに変わるものではありませんし、同じ給料をもらうのなら、まじめに働くよりもさぼったほうが得だからです。では、暴力や脅しによらないで人をまじめに働かせる方法はないのでしょうか?

そんなとき、ゲーム理論の考えを使えば、うまく問題を解決できるということを本で読んで知りました。そこでは、職場のルールをうまくデザインすれば、自己利益を追求しがちな人でも、仕事をさぼらなくなるようにできるとありました。人の性格を変えるのではなく、社会のルールを変えるのです。

これはとても大きな発想の転換でした。わたしたちの社会にはさまざまなルール(法律や制度など)があります。こうしたルール(ゲーム理論ではメカニズムといいます)をうまくデザインしさえすれば、わたしたちを取り巻くいろいろな問題が解決される。それは、社会の矛盾や不正に悩む若者にとって、まったく新しい福音でした。
人間行動の原理や意思決定の原則を分析する学問であるゲーム理論を応用して、社会を変えることができる。ゲーム理論の中でもとくにこの「メカニズム・デザイン論」という研究分野に、わたしは非常に惹きつけられました。

ところが、メカニズム・デザイン論による社会の変革というわたしにとっての夢はやがて「不可能性定理」という壁にぶち当たりました。不可能性定理とは簡単にいえば、ゲーム理論による理想的なルール設計の限界を示す定理です。ゲーム理論をどんなにうまく使っても、解決できない問題が必ずあることをこの定理は示しているのです。

それ以来、なんとかこの不可能性定理から抜け出す道はないかと、大学院に進んでさらにメカニズム・デザイン論の研究を続けました。具体的には、不可能性定理が示すような問題が発生する確率を計算して、それがどれくらい深刻であるかを評価する研究をしました。しかし、ゲーム理論を深く学ぶにつれてますます、不可能性定理の深刻さを知ることになりました。

それでも「希望は失望に終わることはない」と聖書にあるように、メカニズム・デザイン論にも少しずつ新しい方法論が導入されて、不可能性定理の限界を超える道が次第に開かれてきました。そうした成功例は本書でもいくつか示していくつもりです。

こうして、メカニズム・デザイン論によって発見され、理論的には成功を約束されたルールを、被験者を集めて実験室内で検討することがわたしの主要な研究テーマになりました。実験でその性能を保証されたルールを現実社会の問題解決に用いてもらうこと、それがわたしの研究の目標になったのです。

本書はゲーム理論にはじめて出会う人のために書いた入門書です。ただし、わたし自身のこうした歩みから、ほかの多くのゲーム理論入門書に比べて、メカニズム・デザイン論に関する話題がたくさん盛り込まれています。しかし、その成果はみなさんの日常の問題解決に用いることができるものが多いので、きっとそれを知れば、実際に使ってみたくなるに違いありません。

ずいぶん前置きが長くなりました。それでは、すばらしいゲーム理論の世界へ、わたしと一緒に飛び込んでいきましょう。

川越 敏司 (著)
出版社: 講談社 (2012/8/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに
プロローグ
ビジネスに生かされるゲーム理論
ふだんの生活でも有効なゲーム理論
広がるゲーム理論の世界
ゲーム理論の中心概念「ナッシュ均衡」
パレート効率性とナッシュ均衡のジレンマ
メカニズム・デザインと不可能性定理
本書のねらい

第1章
ナッシュ均衡とパレート効率性
フォン・ノイマンのミニマックス定理
ミニマックス定理への失望
ナッシュ均衡とはなにか
予想された戦略が最善の戦略という状態
もっとも単純なナッシュ均衡の例
ナッシュ均衡の求め方
パレート効率性は「無駄がない配分」
囚人のジレンマ・ゲーム
●練習問題

第2章
混合戦略とナッシュ均衡
アメリカの国民的ギャンブル
ブラフは合理的な戦略か?
簡略化ポーカーによる分析
展開形ゲームの標準化
支配された戦略
純戦略のナッシュ均衡を探す
混合戦略のナッシュ均衡を探す
ブラフは合理的な戦略である
●練習問題

第3章
協調問題
2つの協調問題
コーディネーションの問題と「焦点」
非対称性のある協調問題
エスカレーターの協調問題
相関均衡と信号機
チキン・ゲームと相関均衡
「協力の発生の問題」も潜んでいる
チキン・ゲームにおける相関均衡
囚人のジレンマ・ゲームと相関均衡

第4章
知識と情報の問題
共有知識とは何か
ユダヤ人の知恵
帽子のパズル
自動車保険の例
パスカルの賭け
全知のパラドックス
ニューカムのパラドックス
心理学的ゲーム理論によるパラドックスの解消
人間行動の機微をモデル化情報の非対称性

第5章
メカニズム・デザイン論
公平とは何かナイフ移動法(2人の場合)
ナイフ移動法(3人の場合)
ナイフ移動法の問題点
ソロモン王のジレンマ
非対称情報のもとでのゲーム設計
実現できない目標
マスキンの単調性
2段階ゲームによるジレンマの解消

第6章
不可能性定理
アメリカ建国時代の議席割り当て問題
ハミルトン方式とアラバマ・パラドックス
ウェブスター方式
人口パラドックス
バリンスキー=ヤングの不可能性定理
コンドルセ・パラドックス
アローの不可能性定理
投票制度に求められる5つの仮定
仮定を満たすのは独裁制のみである
点数投票制度と戦略的操作
ルイス・キャロルの投票制度
ギバードーサタースウェイトの不可能性定理
補論単峰的な選好と不可能性定理

第7章
量子ゲーム
ギャンブラーの錯誤とホットハンド
ブラックジャックとカウンティング
「地獄チンチロ」
電子スピン合わせゲーム
2つの状態の「重ね合わせ」
量子力学的戦略とは

電子スピン合わせゲームにおける量子力学的戦略
実現可能な必勝法
量子囚人のジレンマ・ゲーム
量子力学的戦略Q

エピローグ~読書案内
ゲーム理論の入門書
ゲーム理論の教科書
ゲーム理論の応用
古典・伝記
コラム①ノーベル賞を受賞したゲーム理論家たち
コラム②宮本武蔵「五輪書」にみる混合戦略
コラム③文学作品に描かれた囚人のジレンマ
コラム④労働者を一生懸命働かせるには?
コラム⑤オークションと「勝者の呪い」
コラム⑥ほかにもある不可能性定理
コラム⑦ゲーム理論が教える割り勘の賢い方法
あとがき
巻末付録
参考文献

川越 敏司 (著)
出版社: 講談社 (2012/8/21)、出典:出版社HP

プロローグ

みなさんはゲーム理論と聞いてどのようなことを想像するでしょうか?おそらく、まずは将棋や囲碁、麻雀といった遊戯ゲームを想像するのではないでしょうか?それは決して間違いではありません。

実際、このあとでもう少しくわしく説明しますが、ゲーム理論の生みの親であるアメリカの数学者ジョン・フォン・ノイマンは、もともとはポーカーというカジノでプレーされるカード・ゲームを分析するためにゲーム理論を生み出したのでした。また、フォン・ノイマンが最初の体系的研究を発表する以前に知られていたのは、エルンスト・ツェルメロという数学者による、チェスには必勝法が存在することを示す研究でした。

このように、ゲーム理論はそのはじまりの時点では、遊戯ゲームととても密接な関係のある学問でした。ところが、やがてゲーム理論は経済学において必須の分析道具とされるようになりました。

どうしてでしょうか?それは、ゲーム理論が研究の対象としているのは、人々の間での戦略的な駆け引きだからです。「もし相手がこの手できたら、自分はあの手で応じよう」戦略的な駆け引きとはこのように、相手の出方を予想し、それに対する自分の最善の策を考えることです。こうした駆け引きは遊ゲームで頻繁に現れるだけではなく、ビジネスの現場でも不可欠なものです。

ビジネスに生かされるゲーム理論

建設会社は大きな工事契約を勝ち取るために、入札で競争しています。ほかの会社がどのような価格で入札してくるかを予想しながら、自分の会社が赤字にならない範囲でいくらなら落札できるかを考えることになります。ここに戦略的駆け引きが必要になってくるのは言うまでもありません。

アメリカなどでは携帯電話サービスの普及に伴い、これまでは政府が規制していた電波周波数帯を民間企業に売却する際に、ゲーム理論に基づいた分析を通じて最適な販売方法が考案され、用いられていました。1990年代にアメリカの連邦通信委員会は、問題の多かったヒアリングやくじ引きによる配分に代えて、オークションによって周波数帯を配分することに決めたのです。このとき、業者に適切に周波数帯を配分しながら、なるべく市場価格に近い価格で販売するにはどうしたらよいかという問題を解くために、ゲーム理論が用いられました。

医学部を卒業した研修医を、どの病院に配属して研修させるかという問題についても、ゲーム理論の研究が役立っています。この場合、研修医には、内科や小児科など、なるべく自分が研修を受けたい部門に配属されたいという希望があります。一方、病院側でも指導する側の医師の数などにより、どの部門で研修医を迎えたいかについて希望をもっているはずです。この両者の希望を最大限生かして配属するしくみが、ゲーム理論によって考案されてアメリカなどで実用化され、最近は日本でも用いられるようになってきています。

このように、ビジネスや社会の現場ではゲーム理論はなくてはならない分析道具としての地位を獲得しているのです。

ふだんの生活でも有効なゲーム理論

しかし、ゲーム理論が有効なのはビジネスの現場だけではありません。

たとえば、1つしかないケーキを2人の兄弟でどちらにも不満がないように分けさせるには、どうすればよいでしょうか?子供というのは自分のことしか考えられない場合が多いですから「兄弟仲よく分けっこしなさい」と言うだけではうまくいかないこともしばしばです。こうしたとき、ゲーム理論が役に立ちます。

ひとつの方法は、兄にケーキを半分に切らせて、弟にどちらか好きなほうを選ばせるというものです。兄は残ったほうのケーキをもらいます。これを「カット&チューズ法」と呼びまこの方法では、ケーキを切る兄は、あとで弟がどちらを選ぶかを予想したうえでケーキの切り方を考えなくてはならないという意味で、戦略的駆け引きが必要な「ゲーム」になっています。結局、切ったケーキのうち弟がどちらを選んでも自分が損しないように、兄はケーキをちょうど半分の位置で切ることになるはずです。
この方法はほかにもいろいろと使い道があります。たとえば、都会のアパートでルームシェアをしていた2人が、大学卒業の機会にそれぞれ別の地へと旅立つことになったとしましょう。ところが、部屋には2人が共有してきたテーブルや冷蔵庫、テレビに洋服ダンスなどがあります。これらの一部は粗大ごみとして処分するか、リサイクルショップに売ることになるでしょうが、一部は新しい住まいに持っていきたいかもしれません。そのとき、これらの家財道具を2人で公平に分けるために、やはりこの方法が使えます。

まず、2人の間で分けるべき物品の名前を上から下へ順に並べたリストを作ります。次に、2人のうちどちらかが、そのリストを上下半分に分ける線を好きな位置に引きます。そのあともう1人が、リストの上下どちらか好きなほうを選びます。
この方法もケーキカットの場合と同じく、最初にリストを2つに分ける側の人は、上下どちらのリストも(なるべく)同じ価値になるように分けることになるはずです。このように、ゲーム理論はわたしたちの日常生活上の諸問題を解決する処方箋も与えてくれる便利な道具なのです。

広がるゲーム理論の世界

遊戯ゲームの研究からはじまり、ビジネス・経済から日常生活に至るまで問題解決に盛んに応用されているゲーム理論ですが、その適用先はさらに広がりを見せています。今日では、生物学や物理学といった自然科学の世界にもゲーム理論は応用されているのです。

生物学の世界では、「進化ゲーム」と呼ばれるゲーム理論が盛んに研究されています。物理学では「量子ゲーム」が最近のホット・トピックになっています。
進化ゲームでは、チャールズ・ダーウィンが『種の起源』で示した自然選択のしくみをベースにゲーム理論の考えを取り入れて、生物進化の謎を解き明かすのに貢献しています。

量子ゲームでは、現在盛んに研究が続けられている量子コンピューティングや量子通信といった、量子力学を応用した超高速計算・通信技術によってはじめて可能になる戦略を考慮に入れたゲーム理論が研究されています。

それだけではありません。ゲーム理論は、いまでは政治学、社会学、心理学、脳科学、認知科学、人工知能など、人間や生物、あるいはロボットなどの戦略的行動や意思決定がかかわる幅広い分野において、重要な分析道具として活躍しているのです。
このゲーム理論とはどのような学問なのか?その内容をできるだけわかりやすくお伝えし、なおかつその適用の広がりに
ついてもお知らせしようというのが本書のねらいです。

ゲーム理論の中心概念「ナッシュ均衡」

ゲーム理論を理解する第一歩はナッシュ均衡とは何かを知ることです。ナッシュ均衡こそ、現代のゲーム理論においてもっとも重要な概念なのです。
なぜかというと、ゲーム理論では戦略的駆け引きをナッシュ均衡という形で理論化しているからです。戦略的駆け引きとは、さきほど述べたように「相手の出方を予想し、それに対する自分の最善の策を考える」ことでした。ナッシュ均衡とは、この考え方を表現したものにほかなりません。ですから、ゲーム理論を理解するには、まずナッシュ均衡を理解しないといけないわけです。

くわしくは次の章で説明していきますが、与えられた意思決定状況で、ナッシュ均衡が何であるかを探し求めること、これがゲーム理論による分析の第一歩なのです。

パレート効率性とナッシュ均衡のジレンマ

ゲーム理論を理解するうえでもう1つ重要な概念があります。それはパレート効率性です。パレート効率性とは簡単にいえば、結果の「善し悪し」を決める基準のようなものです。
さきほど述べたナッシュ均衡を求めれば、与えられた意思決定状況下でプレーヤー(意思決定をする人)は互いに最善の選択をしたことになります。ところが、この最善の選択が、必ずしもよいものであるとは限らないのです。

実は、ナッシュ均衡には重要な前提があります。それは、プレーヤーは「あくまで自分の利益だけを考える」という前提です。自分の利益さえ高ければ、相手の利益がいくら低くなっても気にしない。そういう利己的な人を想定しているのです。
ところが、そうした利己的な人にとっての最善の意思決定は、必ずしも自分と相手双方にとって最善の意思決定となるという保証はありません。これもあとでくわしく述べますが、パレート効率性とは、自分と相手双方にとって最善な結果であると理解してください。

残念ながら、多くの意思決定状況では、ナッシュ均衡はパレート効率的な結果になりません。つまり、各自が自分のことだけを考えて行動すると、結局みんなが不幸になるという結果になることが少なくないのです。
たとえば、2人でチームを組んであるプロジェクトに取り組んでいるとしましょう。プロジェクトが成功するかどうかは、2人がプロジェクトのために費やした時間の合計にかかっているものとします。
一生懸命働くと、それだけ余暇が削られ、個人的には損になります。しかしプロジェクトが成功すれば、昇進・昇給が期待できます。こんなとき、どのように行動すべきでしょうか?
ナッシュ均衡に従って考えると、人はあくまで自分の利益だけを考えて行動するので、相手が努力してくれているかぎり、相手の努力にただ乗りして自分は何もしないほうがよいことになります。2人ともそう考えると、結局、どちらも努力しないためにプロジェクトは失敗に終わり、せっかくの昇進・昇給の機会を失ってしまいます。
ところが、2人がお互いの利益を考えて協力して取り組めば、プロジェクトは成功し、ともに昇進・昇給するという双方にとって最善の結果になります。これがパレート効率的な結果です。
このように、ナッシュ均衡とパレート効率的な結果は異なる場合があるのです。

メカニズム・デザインと不可能性定理

こう書くと、だったらはじめからみんながパレート効率性だけに従って行動すればよいのではないかと考える人もいるでしょう。でも、そうはいかないのです。
実際には、人が利己的な行動(ナッシュ均衡)をとるのを止めるよう強制する手段がないという状況のほうが多いのです。先に述べたケーキ・カットの例を思い出しても、幼い兄弟に公平に分けることを強制するのはなかなか難しいものです。

では、どうしたらよいのでしょうか?その答えは、ゲームのルールを変えることです。双方の利害に関係のない第三者が、ゲームに新しいルールを導入するのです。ちょうど、ケーキ・カットの問題でカット&チューズ法を導入したようにです。
このとき理想的なのは、あくまで自分の利益を追求する利己的な人でも、最善の策(つまりナッシュ均衡)を考えていけば、みんなにとってよい(パレート効率的な)結果に知らず知らずのうちに導かれてしまう、そんなルールをデザインすることです。それがまさに、ゲーム理論におけるメカニズム・デザインという研究分野が課題としている問題です。

このように、ナッシュ均衡をどうにかしてパレート効率的な結果へと導いていくルールを考え出すことが、ゲーム理論において非常に重要な研究テーマなのです。
しかし、残念ながらどんな場合でもうまいルールがデザインできるとは限りません。「はじめに」でも述べたように、むしろ、どんなに工夫しても、問題をうまく解決するルールをデザインすることはできないという不可能性定理さえ知られているのです!

本書のねらい

「何事もはじめは難しい」という有名な格言があります。それはゲーム理論についても例外ではありません。一つの学問を習得するには、結局は砂をかむような思いで一歩一歩進んでいかなければいけないものです。しかし、学ぶにあたっては目標が必要です。

本書では、通常の入門書ではなかなか取り扱われない進んだ話題を大胆に取り入れながら、わたしたち研究者がゲーム理論のどこを面白いと思っているのかを読者のみなさんに伝えたいと考えました。ゲーム理論を学ぶとこんな面白いことが理解できるようになる。読者がそんな気持ちになれるような本にしようと願って、あえて難しい上級レベルの題材も取り入れてみました。

ゲーム理論は、わたしたちを取り巻く問題を未然に防ぐ理想の社会が実現可能かどうかといった、もっと深刻で重要な問題にも光を投げかけてくれます。さきほど述べた不可能性定理とはいったいどのようなものなのか、早く知りたくて読者のみなさんはうずうずしているのではないでしょうか。

さらに、ギャンブルの分析をきっかけにして生まれたゲーム理論が、経済学のみならず現在では自然科学にも応用されていると述べましたが、とくに本書では最終章で、最先端の話題として「量子ゲーム」にも焦点を当てました。日本人の貢献も多い分野ですので、やがて専門家の手による解説書が出てくると思いますが、本書はその予告編として、その内容を楽しい例を通じて解説しています。どうぞご期待ください。

もちろん、高校生からでも理解できるように説明には工夫をしているつもりです。ゲーム理論は数学者によって生み出された数理科学の一分野ですから、専門的なレベルまで習得するには数学的訓練が欠かせませんが、なるべく式の計算をしないでも理解できるようにしました。どうしても必要な計算や証明などは巻末付録にまとめましたので、興味ある読者はそちらも参照してください。

本書を読んだみなさんが、さらにゲーム理論を深く学びたいという気持ちになってくだされば、これに過ぎた喜びはありません。幸いわが国ではすぐれたゲーム理論の教科書が数多く出版されていますので、本書を読み終えたらぜひ手にとってみてください。

川越 敏司 (著)
出版社: 講談社 (2012/8/21)、出典:出版社HP

高校生からのゲーム理論 (ちくまプリマー新書)

高校生からでも大人からでも!

ゲーム理論をちょっとでも知りたいと思ったら、本書はうってつけです。人間や組織の相互的な関係を読み解くものであるゲーム理論が具体的な事例をもとに紹介されています。高校生からとのタイトルですが、もちろん興味がある社会人からでも面白い内容となっています。

松井 彰彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2010/4/7)、出典:出版社HP

 

目次

序章 恋は駆け引き
第一章 戦略編
1はじめの一歩
2 PKは苦手な方向へ蹴れ
3共有地の悲劇
4タルムードの財産分割

第二章 歴史編
1背水の陣
2天下三分の計
3デルフィの神託

第三章 市場編
1きつねの手ぶくろ
2参入か否か、それが問題だ
3折れた翼
4コンパスより折り紙
5顔の見える競争

第四章 社会編
1真実はみんなの意見でつくるもの
2おれがやらなきゃだれかやる
3帰国子女の女の子
4みんなが手話で話した島

第五章 未来編
1人間の科学を目指して
2いじめられる理由なんてない
3理論が世界を変える
あとがき
もっと勉強したい人のために
参考にした本
本文イラスト川口澄子

松井 彰彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2010/4/7)、出典:出版社HP

序章 恋は駆け引き

数年前、久方ぶりに本郷のキャンパスに戻ってきたぼくは、気持ちだけはすっかりあのころに戻っていた。学生とサッカーをし、飲みに行き、恋愛の話をし、失恋の話をした。ただし、今回は、もっぱら聞き手として。
男子学生が関西弁丸出しのイントネーションで言う。
「今、つきあっている娘がいるんですよ」
ぼくは訊く。
「ふうん。いつから?」
「つきあいはじめたのは、一年くらい前なんですけど」
「けど?」
「高校のときの同級生なんです」
「あらそう、焼けぼっくいに火がついたって感じかしらん」
「ああ、まあ」
「東京にいるの?」
「いいえ~、地元にいるんですよ」
「あ、じゃあ遠距離恋愛?(遠距離恋愛は長続きさせるの難しいよ)」
すると、ぼくの心を読んだように言う。
「そうなんですよ。それもあって向こうはぼくに早く一人前になってもらいたいみたいで、それとなくプレッシャーが来るんですけど、ぼく、大学院に進みたいから」
「ま、結婚してから大学院で養ってもらうのもあり得るけどね。世間の目さえ気にしなければ、研究に集中できて楽だよ」
「先生じゃあるまいし!」

年上のサラリーマンとつきあっているらしい女子学生が言う。
「最近、忙しいらしくてなかなか会えないんですよ」
「どのくらい?」
「土日も忙しいらしくって、もう二、三か月かな。『お仕事、大変そうだけどがんばってね』ってメール打つと、『サンキュ♪』って返事はくれるんですけどね」
(それってもう終わってるよ)
「あっ、今鼻で嗤いませんでした?」
「(えっ)ううん。仕事、何やってるの?」
だらだらと終わった恋の話が続く。

あちらでは失恋したばかりの娘をくどいている奴がいる。世話の焼きすぎで逃げられてしまったのもいる。孫子曰く、敵を知らず、己を知らざれば戦うごとに危うし、である。

恋愛は難しい。ゲーム理論を勉強したくらいで恋愛上手になれるのなら、クリスマスに学生が大勢でぼくの家へ押しかけることもあるまい(みんな、来てくれてありがとう。でも、来られる人、もっと少ないと思ったよ)。ぼくだってそんな魔法の学問があるなら知りたいくらいだ。でも、恋愛がなぜ難しいか、ときには学問よりもずっと難しいか、そういう話なら少しはできるかもしれない。

女心と秋の空
というわけで、恋愛と学問を比べてみよう。どちらも難しいことに変わりはない。たとえば気象学を例にとってみる。この学問、科学技術や観測地点が昔に比べて飛躍的に改善されたのにもかかわらず、肝心の予報となるとあまり精度が向上していない。長期予報となると、もう絶望的。正に「来年の話をすると鬼が嗤う」くらい予報は難しいのである。
それでも学問は「進む」。少しずつだが、気象現象を読む精度は上がっていく。たとえば、「5年の三日先の気圧配置の数値予報の精度は、8年以前の二日先の精度と同じ程度」らしい。「天気予報がよく当たるようになってきたのは、いろいろな分野での努力が積み重ねられてきた結果である。まず大気中で起こるさまざまな現象を扱う気象学の進歩が大きい。気象衛星やレーダー、アメダスなどの観測データも充実した。しかし、何といっても「中略]数値予報の進歩が寄与した部分が大きい」とのこと(アエラムック『気象学のみかた。)。いつも当たらないと思っている天気予報だが、着実に進歩しているのだ。
恋愛はどうか。天気を読むのと同様、恋愛では相手の気持ちを読むことがともかく大切である。相手が自分のことをどう思っているか。自分のことをきちんと理解したうえでデートに誘ってくれるのか、恋に憧れているだけなのか、単なる遊びか。相手のことを好きになればなるほど、いてもたってもいられなくなる。では、ぼくたちは昔に比べて相手を読む精度が上がったのであろうか。あるいは、恋愛上手になったのであろうか。
相手を読む?恋愛は出会いがしらよ、と言われる方もいるだろう。フェロモンの働きと「恋愛遺伝子」の配列で決まるのさ、と主張される方もいるかもしれない。山元大輔『恋愛遺伝子』によると、DNA解析が進むにつれて、カップルとDNAとの関係も少しずつ明らかになっているという。もちろん出会いがしらや相性の大切さは否定しない。しかし、多くの人が(小学校時代の初恋はご愛嬌としても)高校時代や大学時代の恋を成就できない現実を思うとき、学習の大切さにも目が向かざるを得ない。
民俗学の研究でも、恋愛結婚が幅広く行われ、それが単なる出会いがしら以上のものであったことは、かなり以前から認識されている。柳田國男はつぎのように語っている。

恋がトリスタンとイゾルデのように必ず生まれぬ前から指定せられているものならば、これは問題とするに足らなかったであろうが、もしも各自の心をもって右し左すべきものなりとすれば、かねて法則をもって学んでおくことは安全であった。
それも情味のないただの理論ならばあるいは応用に失敗したかもしれぬけれども、これは実例を言葉に引き当て、または言語でも描かれない表情法をもって一々実地に解説する久しい経験の集積であった。
―柳田國男『明治大正史世相篇』第八章「恋愛技術の消長」

「恋愛教育の旧機関」と題されたこの節では、柳田國男は若者組とか処女会といった村の男女の集まりが、恋愛技術を磨く上で重要な役割を果たしたと述べている。そこでは、「姿恰好応対振り、気転程合い思いやり」と、言ってみれば男も女も総合力で勝負していたという。恋愛における読み合いが古くから実践されていたことは、考えてみれば何の不思議もないのである。

ところで、天気予報と恋愛の読み合いには大きな違いがある。天気は自分が「相手」のことを一方的に読もうとしているのに対し、恋愛では、自分が相手のことを読もうとしている正にその瞬間に相手も自分のことを読もうとしているからである。相手が自分のことを読もうとしているのであれば、そこも含めて読めばいいじゃないか、と言われるかもしれない。しかし、相手もそういう自分――つまり自分のことを読もうとしている相手のことを読もうとしている自分――を読もうとしているかもしれない。ここまでくると賢明な読者の方はおわかりであろう。そう、お互いに相手を読もうとする行為がぐるぐると終わりのないサイクルを描き始めてしまう。こうなると、きりがないのである。

かと言って、相手の気持ちを読まなければ、DNAの相性がいくらよくても恋は成就しない。世話の焼きすぎで逃げられるケースなどは、自分しか目に入っていない典型であろう。相手にプラスになることならば悪く思われるはずがない。尽くすほうはそう思って尽くすのかもしれないが、尽くされるほうはカゴの鳥のような気分になってしまうこともある。囲碁でいう「勝手読み」というやつである。自分勝手に読めばそのつけは必ず回ってくる。囲碁なら自分が負けるだけですむが、恋愛の場合は相手も傷つける。
相手のことを読めなければ「忙しい」の一言も字義通りにとってしまう。忙しい、という一言をあえて文章化すれば、「君に会うよりも優先順位の高い事柄がある」ということになる。時間は作るものである。本当に君のことが大切ならば時間は作れる。南極隊員じゃあるまいし、二、三か月も好きな人に「忙しくて会えない」などということがあるものか。まあ、もっとも恋愛は千変万化、決めつけるのは止めておこう。

さて、岡目八目という諺があるが、これも囲碁から生まれたものだ。この八目というのは八手先のことらしい。読み合い勝負の囲碁で相手より八手も先まで読めるとしたら、勝負は目に見えている。岡目とは、傍目、すなわち傍観者として戦況を見る、ということである。傍観者は八手先まで余分に見渡せるくらいいろいろなものに気づく、というのがこの諺が言おうとしていることである。「囲碁と男女の仲ほどこの諺がぴったりくるものはない。傍目から見れば終わってしまった恋も当の本人はまだ続いていると思っている。いや、思いたがる心が自分をだます。周りも「それって終わってるよ」とはなかなか言い出せない。たまに野暮な親切心を出して忠告でもしようものなら、逆に友人としての誠意を疑われる。頭では理解しつつも感情では拒否するのが人情というものだ。

岡の上から戦況を眺めるように、離れて人間関係を読むことは大切である。難しいのは、恋愛の場合、離れて読もうと客観視すれば当事者意識が薄れ、気がつけば「負け犬」なんてことになりかねない点である。恋愛や結婚には熱い想いと勢いも大切だからだ。

当事者なのに離れて見る。でも心は熱いまま。幽体離脱じゃあるまいし、と思われる方もおられるであろう。しかし、この幽体離脱のような離れ技こそ、恋愛だけでなく、ぼくたちが学ぼうとしている社会科学にも必要なものなのである。その昔、「熱き心と冷静な頭脳」と言ったのはマーシャルという高名な経済学者であるが、傍観者でいようと思えば熱が冷め、社会の不正に憤ってわれを忘れれば本質を読み誤る。そう、社会科学には恋愛と同じ難しさがあるのである。だから恋愛を通じて学んだことは社会科学の研究にも役立つ。

逆も真なりである。ゲーム理論をマスターすれば、きっと恋も成就する(保証はしない)。無理が通れば道理が引っ込むチキン・ゲーム。お互いの最善手が最悪の結果をもたらす囚人のジレンマ。自分の退路を断つことで有利な結果をもたらす背水の陣、などなど。本書では、華麗なるゲーム理論の世界にあなたを誘うお手伝いをさせていただくつもりである。

読む順番は自由だ。ゲーム理論を少し知っているという方は第一章をとばしてもらってかまわないし、全然知らないという方でも第一章1節を読んだ後は、他の章にとんでも大丈夫なように心がけた。第二章以降は、歴史に興味がある方は第二章から、経済への応用を見てみたいという方は第三章から、社会との関わりを知りたい方は第四章から、哲学的な議論に興味がある方は第五章からと、好みに合わせて好きな章節から読んでもらえればと思う。その際、ゲーム理論の第一原理――自分が当事者でありつつも、外から見る目を養うこと!を頭の片隅に置いておいてもらえるとうれしい。


松井 彰彦 (著)
出版社: 筑摩書房 (2010/4/7)、出典:出版社HP

ゲーム理論 新版

入門後の本格ゲーム理論

本書は、ゲーム理論の本格的なテキスト的な位置づけにあります。レベルとしては、学部の後半〜院の前半くらいでしょうか。ゲーム理論の基本的な内容から始め、戦略形ゲーム、展開形ゲーム、均衡、情報不完備ゲーム、繰り返しゲーム、期待効用理論、交渉ゲームなどといった、伝統的ないくつかの条件を設けた状況での理論について、例を示しながら説明しています。

新版である本書では、比較的新しいトピックも記載されており、行動ゲーム理論や学習の理論なども解説されています。ゲーム理論のトピックを網羅的に整理して解説しているため、ゲーム理論の概観を学ぶ目的に有用でしょう。ミクロ経済学を学んでいる学部上級、大学院生にとっては、研究対象を選ぶきっかけにもなります。

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2011/12/2)、出典:出版社HP

 

新版へのはしがき

本書の初版が出版されてから15年の歳月が経過した。この間のゲーム理論の発展は著しく,初版でゲーム理論のフロンティアとして解説したいくつかのトピックスは,すでにゲーム理論の標準的な内容に定着した。そして現在も,経済学を中心にさまざまな学問分野でゲーム理論の新しい研究が進められている。この度,初版の内容を増補して,新版を出版することにした。

新しく改訂された内容は、主に次のとおりである。まず,第11章として「進化ゲーム」の章を追加した。進化ゲームの理論は、1970年代に進化生物学の分野で誕生した後,人文・社会科学の分野でも行動の進化,慣習,規範など限定合理性に基づく経済行動のダイナミックスを分析するための基礎になっている。また,各章の応用例を増やした。その主なものは,戦略的な情報伝達,評判と不完全情報,グローバル・ゲーム,金融政策の時間非整合性,不完備契約とホールド・アップ問題,ネットワーク形成,協力の進化,などである。「ゲーム理論のフロンティア」の第12章では,最近の研究動向として、社会心理学の知見を取り入れた行動ゲーム理論と確率安定性や学習の理論などを解説した。
初版と同様に,新版も読者の方々のゲーム理論の学習の手助けとなり,多くの方々がゲーム理論に興味をもたれるようになれば,著者にとってこれ以上の喜びはない。
新版の執筆にあたっても,多くの方々から多大のご支援を頂いた。とくに,本書の原稿に関して有益なコメントをくださった筑波大学の福住多一講師,および一橋大学大学院の白田康洋君と西村健君にお礼を申し上げたい。

最後に,有斐閣の尾崎大輔氏には,初版の原稿をTEX原稿に再入力して頂き,新版の企画,編集に関して大変にお世話になりました。深く謝意を表します。

2011年9月
岡田章

初版はしがき

1994年,ハルサニ,ナッシュ,ゼルテンが非協力ゲーム理論への画期的な貢献に対してノーベル経済学賞を受賞した。また,この年はフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの大著『ゲームの理論と経済行動』の出版50周年でもあり,ゲーム理論にとって記念すべき年となった。

ノーベル経済学賞が初めてゲーム理論の分野に授与されたことが端的に示すように,現在,ゲーム理論はミクロ経済学,マクロ経済学を問わず経済学のほとんどの分野に応用されていて,経済分析のための基本道具の1つとなっている。さらに,経済学の分野を超えて政治学などの他の社会科学の分野や生物学などの自然科学の分野でもその有用性が認められていて,ゲーム理論は学際的理論として大きく発展している。

本書はこのようなゲーム理論の新しい展開を基礎に書かれたゲーム理論の中級レベルの教科書である。対象とする主な読者は、学部上級生,大学院初級生やゲーム理論に関心をもつ他の分野の研究者や実務家の方々である。「ゲーム理論は経済や社会におけるさまざまな意思決定と行動の相互依存状況(ゲーム的状況)を数理的なモデルと論理を用いて研究する学問である。このために、ゲーム理論を学習するにあたって第1に大切なことは,ゲーム理論特有の「ものの見方や考え方」を修得することである。さらに,ゲーム理論をより専門的に学習するためには、さまざまな概念の定義や定理の数学的内容をよく理解することが必要である。このような理由から,本書ではできるだけ多くの例を用いてゲーム理論の中心的概念の説明を行うとともに,ほとんどの定理には証明を加えている。また,研究者や実務家の方々の便宜を考慮して,ゲーム理論の発展の経過と現在の研究動向についても教科書としてはやや詳しく述べている。教科書としての性格上、すべての内容についてオリジナルな文献を引用しているとは限らず、この点について,これまでゲーム理論の発展に貢献されてきた多くの研究者の方々に感謝するとともにご容赦をお願いしたい。本書が少しでも読者の方々のゲーム理論の学習の手助けとなり、多くの方々がゲーム理論に興味をもたれるようになれば、著者にとってこれ以上の喜びはない。

本書を執筆するにあたって,これまでに多くの方々から計りしれない学恩を受けている。東京工業大学でご指導くださった恩師,鈴木光男先生(東京工業大学名誉教授,現東京理科大学教授),大学院生時代から研究の討論相手になってくださっている同じ研究室出身の法政大学中山幹夫教授,筑波大学金子守教授,東京都立大学武藤滋夫教授,アメリカとドイツでの研究滞在中大変にお世話になったノースウェスタン大学エフド・カライ(EhudKalai)教授とボン大学ラインハルト・ゼルテン(ReinhardSelten)教授,ならびに日頃,研究上の有益な助言をくださっている京都大学経済研究所の今井晴雄教授と西村和雄教授の諸先生方に心より感謝の意を表します。

本書は,東京工業大学理学部情報科学科,埼玉大学政策科学研究科,京都大学経済学研究科および経済学部,東京都立大学経済学部,ウィーン高等研究所での講義ノートに基づいている。これまでゲーム理論を講義する機会を与えてくださった諸先生方,とくに,過去3年間,京都大学経済学部での授業「経営数学」でゲーム理論を講義することを励ましてくださった故浅沼萬里教授(本年3月逝去)に心より感謝申し上げます。ここですべての方々の名前は挙げられないが,講義に出席し質問やコメントをしてくださった多くの学生の皆さんに感謝致します。

本書の原稿に関して有益なコメントをくださった京都大学大学院の渡邊直樹君,丸山徹也君,中嶋亮君にお礼を申し上げたい。とくに,渡邊直樹君は原稿を丁寧に読んで多くの誤りを指摘してくれるとともに表現上の助言をくださった。京都大学経済研究所の永田敦子さんには本書の原稿のワープロ入力と索引の作成に多大のご協力を頂いた。

最後に,本書の執筆の機会を作ってくださった筑波大学酒井泰弘教授と本書の編集,出版に関して大変にお世話になった有斐閣の石塚務氏に深く謝意を表します。

1996年10月
岡田章

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2011/12/2)、出典:出版社HP

目次

新版へのはしがき
初版はしがき
本書で用いる記号表
本書で登場するゲームの一覧表

第1章 ゲーム理論とは何か
1.1ゲーム的状況
1.2ゲームの基礎概念
1.3非協力ゲームの理論と協力ゲームの理論
1.4ゲーム理論の歴史

第2章 戦略形ゲーム
2.1戦略形ゲームの定義
2.2ナッシュ均衡点
2.3混合戦略と期待利得
2.4均衡点の存在
2.5均衡点の計算方法
2.6利得支配とリスク支配
2.7応用例
2.7.1クールノー複占市場
2.7.2寄付金ゲーム
2.7.3公共財の供給ゲーム
2.7.4電力消費ゲーム
2.7.5湖水の汚染
2.7.6査察ゲーム

第3章 展開形ゲーム
3.1展開形ゲームの定義
3.2戦略の概念と均衡点
3.3ゲームの分解と合成
3.4完全情報ゲーム
3.5完全記憶ゲーム
3.6情報のインフレーション
3.7応用例
3.7.1シュタッケルベルク複占市場
3.7.2政策のアナウンスメント効果
3.7.3金融政策における裁量とルール
3.7.4ドルオークション
3.7.5シナリオ・バンドル法

第4章 完全均衡点。
4.1ナッシュ均衡点の意味
4.2部分ゲーム完全均衡点
4.3完全均衡点の定義
4.4最適化原理と逐次均衡点
4.5存在定理
4.6完全均衡点と逐次均衡点の計算例
4.6.1完全均衡点の計算方法
4.6.2逐次均衡点の計算方法は
4.7戦略の支配と安定性
4.8応用例
4.8.1最終提案ゲーム
4.8.2組織参加のジレンマ
4.8.3チェーンストア・パラドックス
4.8.4戦略的な情報伝達
4.8.5評判と不完全情報

第5章 情報不完備ゲーム
5.1情報不完備ゲームの定式化
5.2ベイジアン均衡点
5.3ベイジアン・ゲームの例
5.4情報構造と知識
5.5相関均衡点
5.6メカニズムの顕示原理
5.7応用例
5.7.1非分割財の取引
5.7.2中古車市場の逆選択
5.7.3労働市場のシグナリング
5.7.4情報不完備なクールノー複占市場
5.7.5電子メール・ゲーム
5.7.6グローバル・ゲーム

第6章 繰り返しゲーム
6.1繰り返し囚人のジレンマ
6.2繰り返しゲームの定式化
6.3フォーク定理
6.4完全フォーク定理
6.5有限回繰り返しゲーム
6.6応用例
6.6.1クールノー複占市場
6.6.2ベルトラン複占市場
6.6.3贈り物ゲーム
6.6.4政策の信用性
6.6.5繰り返し囚人のジレンマと評判

第7章 期待効用理論
7.1サンクトペテルブルクのパラドックス
7.2期待効用の公理系
7.3期待効用の表現定理と一意性
7.4リスク回避度

第8章交渉ゲーム
8.1交渉問題の定式化
8.2ナッシュ交渉解の公理
8.3交渉の非協力ゲーム分析
8.4交渉の非協力ゲーム分析(II)
8.5交渉ゲームの実験
8.6応用例
8.6.1 100万円の分配交渉
8.6.2経営者と労働組合の団体交渉
8.6.3環境汚染と補償交渉
8.6.4不完備契約とホールドアップ問題
8.6.5収穫分配契約の交渉

第9章 コアの理論
9.1協力ゲームの定式化
9.2特性関数の性質
9.3協力ゲームのコア
9.4コアの存在条件
9.5市場ゲーム
9.6投票ゲーム
9.7安定集合
9.8応用例
9.8.1 1人の売り手と2人の買い手の非分割財市場
9.8.2手袋ゲーム
9.8.3ゴミ処理ゲーム
9.8.4ルームメイト問題
9.8.5結婚問題
9.8.6ネットワークの形成

第10章 他の協力ゲーム解
10.1シャープレイ値
10.2シャープレイ値の公理系
10.3投票力指数
10.4分配の公正としての仁
10.5応用例
10.5.1手袋ゲームのシャープレイ値
10.5.2滑走路の使用料金
10.5.3費用逓減産業の価格決定

第11章 進化ゲーム
11.1進化ゲームの基礎
11.2進化的に安定な戦略
11.3レプリケータ動学
11.4社会進化の動学ゲーム
11.5応用例
11.5.1協力の進化:共通利害ゲーム
11.5.2協力の進化:囚人のジレンマ
11.5.3コミュニケーションの進化
11.5.4参入阻止行動:チェーンストア・ゲーム
11.5.5社会規範の生成
付録

第12章 ゲーム理論のフロンティア
12.1限定合理性の研究:進化ゲームと学習理論
12.2ゲーム実験と行動ゲーム理論
12.3合理的行動の探究とゲーム理論のフロンティア
参考文献
索引

本書で用いる記号表

本書で登場するゲームの一覧表
市場シェア・ゲーム
囚人のジレンマ
男女の争い
硬貨合わせゲーム
クールノー複占市場
寄付金ゲーム
公共財の供給ゲーム
電力消費ゲーム
湖水の汚染
査察ゲーム
レディー・ファーストのルール
シュタックルベルク複占市場
政策のアナウンスメント効果
金融政策における裁量とルール
ドル・オークション
シナリオ・バンドル法
チェーンストア・ゲーム
最終提案ゲーム
組織参加のジレンマ
チェーンストア・パラドックス
戦略的な情報伝達
評判と不完全情報
非分割財の取引
中古車市場の逆選択
労働市場のシグナリング
電子メール・ゲーム
グローバルゲーム
繰り返し囚人のジレンマ
ベルトラン複占市場
贈り物ゲーム
政策の信用性
100万円の分配交渉
経営者と労働者の団体交渉
環境汚染と補償交渉
不完備契約とホールドアップ問題
収穫分配契約の交渉
アルバイト・ゲーム
エッジワース市場ゲーム
3人多数決ゲーム
重みつき投票ゲーム
投票のパラドックス
多数決ゲーム
1人の売り手と2人の買い手の非分割財市場
手袋ゲーム
ゴミ処理ゲーム!
ルームメイト問題
結婚問題
ネットワークの形成
拒否権プレイヤーのパワー
株主総会の投票力分布
滑走路の使用料金
費用逓減産業の価格決定(電力料金決定のゲーム)
技術標準の選択
タカーハト・ゲーム
じゃんけんゲーム
共通利害ゲーム
鹿狩りゲーム

岡田 章 (著)
出版社: 有斐閣; 新版 (2011/12/2)、出典:出版社HP

ゲーム理論ワークブック

問いて学ぶゲーム理論

初めてゲーム理論を学ぶ方向けの問題集となります。4つのステップがあり、要点整理、理解度チェック、演習問題、練習問題と進めることで、段階的にゲーム理論とその問題の解き方が身につくようになっています。基本から応用まで対応しており、主要なトピックを比較的新しいものまで幅広く抑えているためゲーム理論をとりあえず学びたい場合には、役立つでしょう。

また、ゲーム理論の基本的な論理を問題演習によって理解し、応用できることを目指した並べ方をしているため、ゲーム理論を大きな視点と小さな視点で考えるきっかけになるでしょう。

出版社のウェブサイトでは、練習問題の解答・解説、追加の練習問題も提供しているため、経済学部の大学生にも、ゲーム理論を学ぶ際に役立つかもしれません。

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP

はじめに

本書の特徴

本書は,はじめてゲーム理論を学ぼうとする方々を対象とした演習書である。ゲーム理論は、プレイヤー間で利害が相互に影響を及ぼしあう状況,いわゆる「戦略的状況」における意思決定を扱う理論である。本書に収録したさまざまな問題を実際に自分の手で解くことで、読者が,ゲーム理論への理解を深めるとともに、現実の戦略的状況でもゲーム理論的な思考を実践できるようになることを期待している。 本書の特徴は以下の通りである。

(1) ゲーム理論の基本的なロジックを理解し応用できる
ゲーム理論は他の学問と同様に論理一貫した体系を持っている。初学 者を対象とする本書では、ゲーム理論の体系を段階的に理解し,さらにどのような場面でゲーム理論を使うことができるのかがわかるように,多くの応用問題を配列している。
(2) 幅広いトピックを学べる
初学者向けのテキストでは、扱うトピックを絞る傾向にある。もちろん、それは初学者が混乱しないための配慮であるが,ゲーム理論が対象とするトピックは幅広く,また,興味深いものも多くある。本書は,読者の多様な関心にできる限り応えられるように、現代のゲーム理論の主要トピックをバランスよく網羅している。
(3) 自学自習が可能である
ゲーム理論を理解するには、講義で理論の解説を受け、その理解を深める,あるいは応用するために演習クラスなどで適切な指導を受けるのが理想である。演習クラスでは、受講者の理解度に応じて詳しく解説したり、時には、答えだけを提示して受講者に解かせるといったことが行われる。本書に収録した問題には,詳細な解説と解答を付けたものや、 単に解答だけを付けているものがある。さらに、さまざまな難易度の問題を配置している。理解の程度に応じて読み進めていけば、独学であっても演習クラスを受講するのと同じ効果を得ることができる。

本書は主に, 岡田章 (2014) 『ゲーム理論・入門(新版)』(有斐閣アルマ;以下, 「入門」)とともに利用されることを想定している。そのため本書の章立ては, 基本的に『入門」の章立てに沿った構成となっている。
ただし、「入門」の第3章「戦略ゲーム」,第4章「ナッシュ均衡点」,第5 章「利害の対立と協力」の内容は,いずれも戦略形ゲームを扱ったものであるため,本書では第2章「戦略ゲームとナッシュ均衡点」として,まとめて取り扱っている。また,「入門』の第12章で扱われている「ゲーム実験」については,本書では一部の章末に「実験してみよう」というコーナーを設けて、 実際の実験方法を紹介することにした。

各章の構成

各章は、要点整理,理解度チェック,演習問題,練習問題で構成されている。
要点整理では、各章で扱われる重要な用語や概念を簡潔に説明している。問 題を解く際に,用語や概念の定義を確認したい場合は、その都度ここを読み直 してほしい。ただし、ここでは必要最低限の説明しかしていないので、ここを読んで理解が不十分だと感じたときは『入門』で,さらに詳しく確認すること をおすすめする。
理解度チェックは、穴埋め形式や,一問一答の形式で解答できる形の,とくに基礎的な問題を配置した。基礎的な知識が身についているかどうかを確認す るために,演習問題に取り組む前に,できればすべての問題を解いてみてほしい。

演習問題は,本書の中心となるパートであり,各章のテーマに沿った問題 と,それに対するヒント,詳細な解答が与えられている。問題と解答を並列さ せることで,ゲーム理論の問題を実際に解くための手順や考え方がわかるよ うになっている。演習問題については、与えられている解答をすぐに見るので はなく,まず,問題文をよく読んで自分で答えを考えることを試してみてほし い。どうしても解答への糸口をみつけられない場合はヒントを見てもう一度考 え何らかの答えを自分で用意した後に,解答を確認することを読者に望みた い。まずは自分で考えてみることで、ゲーム理論の問題を解く真の力が身につ くはずである。問題に関連するトピックや、より詳細なトピックについては、 「コメント」というコーナーを設け,適宜解説している。また,演習問題の中 でも,ぜひ取り組んでほしい基本的な問題には、タイトルの横に「*」印を付 けた。最初に取り組むときや,時間に余裕がない際には、まず「*」印の付い た問題から始めていくといいだろう。

練習問題は、演習問題を終えた読者を対象としたパートである。解答が並列されていない練習問題を解くことで、より理解を深められるはずである。ここでも、演習問題と同様,基本的な問題には「*」印を付けた。なお,練習問 題には難易度の高い問題も含まれているが、解き方、考え方を身につけたうえで、ぜひ挑戦してほしい。
また、練習問題の解答・解説は,下記で案内している本書のサポート・ウェブサイトに掲載したので、自分で問題に挑戦したうえで活用してほしい。

本書のサポート・ウェブサイト

以下の本書のサポート・ウェブサイトではさまざまなウェブ資料・付録を提 供している。
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/2015/10/post-ecfd.html
(「付加データゲーム理論ワークブック」で検索)
このサイトでは,
・練習問題の解答・解説
・より高いレベルの問題を望む読者や,もっと多くの問題を解いてみたい 読者に向けた追加の練習問題
などを提供している。

謝辞

草稿段階から、新井泰弘先生,市野泰和先生,今井晴雄先生,岩井尚希様,川上敏和先生,清滝ふみ先生,小西秀樹先生,白田康洋先生,武岡則男先生 土橋俊寛先生,福住多一先生,堀一三先生,和光純先生には、授業やゼミを どで実際にご利用いただき,誤りの指摘,内容の改善を提案していただきました。また,大阪経済大学宮川ゼミナール(2013年2回生)の皆さん,および ゲーム理論勉強会(甲南大学)に参加してくれた学生の皆さんからは、読者としての立場からのコメントもいただきました。これまでに大阪経済大学京都産業大学、甲南大学、一橋大学でゲーム理論に関する授業に出席した多くの学生の皆さんは、質問などを通じて筆者らを励ましてくれました。以上の方々に、深くお礼申し上げます。 最後に,有斐閣の尾崎大輔氏には、筆者らが,東京,京都,大阪,神戸と離 れているなか,本書の企画段階から調整,原稿編集について大変お世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。
2015年10月
著者一同

本書をお使いになる先生方へ

大学の授業やゼミで本書をお使いになる先生方へ本書やウェブ付録に掲載 していない,小テストや定期試験等でご利用頂けるようなさまざまな問題を, 別途用意しています。この問題集をご希望の方は,以下の有斐閣書籍編集第2 部宛メールアドレスまで、ご連絡ください。
・お申込み先メールアドレス:sho2@yuhikaku.co.jp
件名を「ゲーム理論ワークブック問題集希望」として頂き、メール内に
・お名前
・ご連絡先
・資料送付先のご住所(原則ご所属先)
・ご採用授業の名称
を明記のうえ、お申込みください。データ、またはハードコピーをお送りいた します。問題集の見本のご要望、その他お問い合わせも、上記のメールアドレ スにて承ります。

著者紹介

岡田 章(おかだ・あきら) 【監修・著】
1982 年,東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了
現在,一橋大学名誉教授,理学博士
主著:『ゲーム理論』有斐閣,初版 1996年,新版 2011年。『ゲーム理論·入門―人間社会の理解のために』有斐閣アルマ,初版 2008年,新版 2014年。

加茂知幸(かも・ともゆき)
2001年,同志社大学大学院経济学研究科博士後期課程单位取得退学
現在,京都産業大学経済学部教授
主著: “Vetoer and Tie-Making Group Theorems for Indifference-Transitive Aggregation Rules,” (with Jun Iritani, Ryo-ichi Nagahisa) Social Choice and Wefore, 40(1:155-171, 2013.「非循環的社会的厚生関数の諸性質」(入谷純上と共著)『国民経済雜誌』第201卷4号:17-28, 2010年。

三上和彦(みかみ・かずひこ)
2001年,ボストン大学经济学部博士課程修了
現在,甲南大学经管学部教授, Ph.D. (経済学)
主著:「市場の創造―Coase (1937)の再検討」甲南大学経営学会編『経済学の伝統と革新』千倉書房,2010年。“Bargaining Equilibrium with Complexity,” 甲南経営研究”第52卷2号:21-49, 2011年。
宮川敏治(みやかわ・としじ)
1998年,西学院大学大学院経济学研究科博士課程単位取得退学
現在,大阪経済大学経済学部教授,博士(経済学)
主著: “Existence and Efficiency of a Stationary Subgame-Perfect Equilibrium in Coalitional Bargaining Models with Nonsuperadditive Payoffs,” Economic Theory, 39 (2): 291-306, 2009. “Barriers to Global Free Trade through Bilateral Agreements,” (with Fumi Kiyotaki) Review of International EcoTonics, 21(3): 536-548. 2013.

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書をお使いになる先生方へ
著者紹介

第1章 選択と意思決定
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう1

第2章 戦略ゲームとナッシュ均衡点
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう2

第3章 ダイナミックなゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう3

第4章 繰り返しゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第5章 不確実な相手とのゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第6章 交渉ゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう4

第7章 グループ形成と利得分配
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第8章 進化ゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

Column
1 ベイズ推定
2 アレのパラドックス
3 オークションの種類

Help
1 等比数列の和
2 一様分布と期待値
3 3人ゲームの配分の表現

「理解度チェック」一覧
1.1 期待値と期待効用
1.2 条件付き確率
1.3 リスクに対する態度
1.4 確実性同値額とリスク・プレミアム
2.1 利得行列
2.2 支配戦略
2.3 最適応答とナッシュ均衡点
2.4 混合戦略ナッシュ均衡点
2.5 マックスミニ値
2.6 支配される戦略の逐次削除
2.7 弱支配戦略
2.8 バレート最適とナッシュ均衡点
3.1 展開形ゲームによる表現
3.2 展開形ゲームの性質
3.3後向き帰納法
3.4 部分ゲーム
3.5展開形ゲームにおける戦略
3.6 数えあげゲームと後向き帰納法
4. 1繰り返しゲームの戦略
4.2 割引総利得と割引平均利得
4.3 トリガー戦略
4.4 個人合理的利得
5.1 ベイジアン・ゲーム
5.2 ベイジアン均衡点
5.3 事後予想(信念)
5.4 シグナリング・ゲーム
5.5 非対称情報
5.6 逆選択
6.1 ナッシュの公理(1)
6.2 ルームシェア問題
6.3 ナッシュの公理(2)
6.4 最後通告ゲーム
7.1 ゼロ正規化
7.2 ベンチャー企業設立
7.3 シャープレイ値
7.4 市場ゲーム
7.5 マッチング
7.6 3人ゲームの配分
8.1 集団均衡
8.2 進化的に安定な戦略
8.3 位相図

「演習問題」一覧
1.1 サイコロの賭け*
1.2 選好と効用関数*
1.3選好順序と効用*
1.4 期待効用とリスク態度*
1.5 カードゲーム
1.6 モンティ・ホール問題
2.1 出店ゲーム*
2.2 価格競争ゲーム*
2.3 硬貨合わせゲーム
2.4 読者獲得ゲーム*
2.5 3×3ゲーム
2.6 弱支配戦略と逐次削除
2.7 ミニマックス定理
2.8 相関戦略と相関均衡
3.1 小国と大国の争い
3.2 ライバル雑誌の特集記事*
3.3 交互競り上げオークション*
3.4 少数決ゲーム”
3.5 公共財供給ゲーム
3.6 前向き帰納法
4.1 トリガー戦略
4.2 有限回繰り返し囚人のジレンマ*
4.3難壕戦
4.4 ダイナミックな協調
4.5 クールノー複占市場における協調
4.6 暗黙の談合と課徴金
5.1 ベイジアン均衡点*
5.2 整合的な信念
5.3 完全ベイジアン均衡点*
5.4 モラルハザード*
5.5 逆選択
5.6 シグナリング・ゲーム*
5.7 第2価格オークション*
5.8 第1価格オークション
6.1 タクシー料金の分担
6.2 雇用契約
6.3 共同行動の交渉を
6.4 遂次交渉
6.5 最後通告ゲームと混合戦略
7.1 3人対称ゲーム*
7.2 プロジェクトの収益の分配問題
7.3 市場ゲーム
7.4 投票力とシャープレイ植*
7.5 マッチング
7.6 非分割財の交換
8.1 協調ゲーム*
8.2 流行と進化ゲーム*
8.3 鹿狩りゲーム*
8.4 タカ -ハト・ゲーム

「練習問題」一覧
1.1 確率と賭け*
1.2 期待値
1.3 賭けと所持金*
1.4 プロジェクトへの投資*
1.5 留保価格*
1.6 ベイズ推定
1.7 サンクトペテルブルグのパラドックス
2.1 純戦略ナッシュ均衡点*
2.2 混合戦略ナッシュ均衡点*
2.3軍拡競争
2.4 携帯キャリア間の価格競争
2.5 クールノー競争*
2.6 ベルトラン競争*
2.7 差別化された製品の価格競争*
2.8じゃんけんゲーム
2.9 支配される戦略と逐次削除
2.10 硬貨合わせゲーム
3.1 後向き帰納法*
3.2 部分ゲーム完全均衡点*
3.3 共有地の悲劇*
3.4 防衛ゲーム*
3.5 シュタッケルベルク競争*
3.6 イギリス式オークション*
3.7 オランダ式オークション*
3.8 コミットメントと誇示行動
3.9 混合戦略と行動戦略
4.1 非対称囚人のジレンマ*
4.2クールノー複占市場ゲーム*
4.3 有限回繰り返しゲームと後向き帰納法*
4.4 成分ゲームのナッシュ均衡点*
4.5 贈り物ゲーム
4.6 ミニマックス利得
5.1 ベイジアン均衡点*
5.2 完全ベイジアン均衡点*
5.3 均衡の精緻化
5.4 最適価格設定*
5.5 シグナリング・ゲーム*
5.6 中古車市場とレモン
5.7 モラル・ハザード*
5.8 ポーカー・ゲーム
6.1 ナッシュ交渉解*
6.2 ベンチャー企業設立*
6.3 家事分担交渉*
6.4 環境汚染と補償交渉*
6.5 リスク回避型選好
6.6 交換経済
6.7 有限回交渉ゲームの極限
6.8 交互提案ゲーム:定常戦略
7.1 コアとシャープレイ値*
7.2 3人対称ゲーム
7.3 市場ゲーム*
7.4 勝利提携とシャープレイ値*
7.5 滑走路建設の費用分担
7.6 マッチング*
7.7 ルームメイト問題
7.8 非分割財の取引
8.1 進化的安定戦略の導出
8.2 進化的安定戦略とナッシュ均衡点*
8.3 非対称タカーハト・ゲーム
8.4 売買交渉

本文イラスト:有留ハルカ

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP