GDP – 小さくて大きな数字の歴史(ダイアン・コイル著)

GDPの「これまで」と「これから」

GDP – 国内総生産(Gross Domestic Product)のことで一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことになりますが、中身についてわかっているようで,一般的にも誤解が生じるインディケーターになりやすいものです。

この数字は何を測ったものなのだろうか、この数字にはどんな意味があるのだろうか、とその誕生から利点と限界までをわかりやすくたどるGDP全史として、本書は数式なしに読みながら理解できる、GDP入門書となります。

一国はGDPを追うことを第一目標にすべきか,経済成長がなぜ必要なのか。しかしながらそれが全てなのか。人々が求める豊かさというものを改めて考えさせられます。成長だけを追う世の中より,大切な人と共有の時間をともにし,何気ない生活を普通に送れることの喜寿の方が大切かと感じてしまいます。しかしながら,まだまだ世界の発展途上国においては経済成長が必要で,それを通じて世界の貧困が緩和されることもあります。

最後の”第6章 新たな時代のGDP──未来”での持続的可能性では,そういった未来に対して示唆深い考察もあって良書だった。これに関してはGDPをカウントしたうえで,それに補足する形で環境,失業,所得格差などを取り入れるべきだといのが,スティグリッツアマルティア・センたちの貢献で2010年に「GDPに代わる指標」に関する報告書を刊行しております。そのあたりも興味がある方は,日本語でもでてきますので一読する価値はあるかと思います。

ダイアン・コイル (著), 高橋 璃子 (翻訳)
出版社: みすず書房 (2015/8/26)、出典:amazon.co.jp