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タックス・ヘイブンについては最近になってようやく、世界的にもニュースになりメディアにもでるようになりました。これまでどのようなタックス・ヘイブンの事件があったのか、そもそもタックス・ヘイブンはどのように分類されるのか。またそれのステークホルダー、監視システムとの関わりはどうなっているのか、今知りたいタックス・ヘイブンこの5冊を紹介いたします。
タックス・ヘイブン 逃げていく税金
著者は、大蔵省主税局国際租税課長、主計局主計官などを歴任し、OECD租税委員会、FATFのメンバーとして国際舞台でタックス・ヘイブンの問題に取り組んだ、タックス・ヘイブン問題のエキスパートである、志賀櫻氏です。本書は、タックス・ヘイブンとは何か、それがどのような問題を引き起こしているのか、どのように対抗すればいいのかについて、過去に生じた事件や金融危機を例に挙げながら、取り上げています。
タックス・ヘイブンとは、一般に、「税金がない・ほとんどない国や地域」を指し、高所得者層はこれを利用して税負担の軽減を図っているといいます。そして、高所得者層が税金対策により課税を免れたしわ寄せは、中間所得者層や低所得者層に来ると、著者は指摘します。これは、中間所得者層や低所得者層が、タックス・ヘイブンを利用して、税金の負担を免れることができないためです。
本書の中で最も印象的なフレーズ、「税は文明の対価である」。著者は、タックス・ヘイブンの解決方法は必ず見つかるとし、続いて、タックス・ヘイブンがもたらす「文明」に対する災厄について正しく問題の所在を理解することこそ、税の対価として「文明」を受け取る立場にある一般の納税者がやるべきことであるとします。
本書を読み、私たちに影響を与えるタックス・ヘイブンについて、改めて学び、考えてみるのはいかがでしょうか。
富裕層のバレない脱税 「タックスヘイブン」から「脱税支援業者」まで
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本書は、タックスヘイブンの利用をはじめとした国際的な租税回避の方法を紹介するのがメインです。もっとも、いきなりそのような説明から入るのではなく、東京国税局課税部資料調査課での勤務経験のある著者自身の経験をもとに、飲食店や中小企業などの「庶民」の脱税といった比較的イメージがしやすく、身近に潜む脱税の紹介から始まります。その次に、「富裕層」の国際的な租税回避スキームなどの紹介、その租税回避を裏で支え暗躍する「脱税支援ブローカー」の紹介がされています。
また、著者の経験から、なぜ人は脱税をするのかについての紹介もされており、脱税、租税回避についてより身近なものとして考えられるのではないでしょうか。そして、本書は、租税回避の方法について主に紹介するものですが、過去にあった事件をもとに、その租税回避の方法(スキーム)について詳細に紹介されており、タックスヘイブンなどを利用した方法について学ぶことができます。
これでわかるタックスヘイブン: 巨大企業・富裕者の<税逃れ>をやめさせろ!’
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本書では、タックスヘイブンが明るみになるきっかけとなったパナマ文書の紹介を皮切りに、タックスヘイブンとは何か、それがどのように利用され、どのような問題を引き起こすのか、どのように対処すればよいのかについて、簡潔にまとめられています。
アップル、グーグル、アマゾンといった私たちの生活にとって身近な存在の企業もタックスヘイブンを利用しているとのことですが、それによって富裕層の税逃れは20兆円を超え、日本でも5兆円の税収が失われているといいます。その結果、民主主義の根幹をも揺るがすことになってしまいます。
重大な問題であり、私たちの生活にも影響のあるタックスヘイブンについて考える事の重大性に改めて気づかせてくれます。わかりやすい言葉で書かれているだけでなく、表やグラフ、各ページの下部には用語の丁寧な解説が付されており、また、参考書も紹介されているため、タックスヘイブンについて全く知らない人でも、入門書としておすすめできるものです。
ルポ タックスヘイブン 秘密文書が暴く、税逃れのリアル
本書は、朝日新聞ICIJ取材班が、共同通信、NHKを含む世界各国の報道機関の記者らとともに調査した「パラダイス文書」について、その調査内容や調査によって明らかになったタックスヘイブンの実態についてまとめたものです。
タックスヘイブンが明るみになるきっかけとなった「パナマ文書」。その報道後、バミューダ諸島に拠点を置く法律事務所「アップルビー」の顧客情報がパナマ文書と同じ南ドイツ新聞に送り届けられました。この文書が「パラダイス文書」。この文書について、バミューダ諸島を始めアフリカ、モーリシャス、日本など、世界中で行われた調査について、図解を適宜入れながら、わかりやすくかつ詳細にまとめられたのが本書です。また、タックスヘイブンとはいったいどういう問題なのかについてもわかりやすく解説がされています。
“実は発展途上国こそが「税逃れの最大の被害者」ともいわれている。”
“租税回避が大規模になればなるほど、そのしわ寄せは、租税回避をしない一般の納税者に向かう。”
これらの一節にあるように、タックスヘイブンが世界にどのような影響を与えるのか、また、我々の生活にどのような影響を与えるのかについても詳細に書かれています。本書の末尾には池上彰氏によるわかりやすい解説も付されており、解説も含めて一読の価値のある一冊となっているのではないでしょうか。
タックス・オブザーバー――当局は税法を理解しているのか
本書は、次の4つの質問を読者に問いかけるところから始まります。
① 日本の税制は、格差の是正に役立っているか。
② 日本の所得税は、金持ちほど税金を多く支払う累進構造になっているか。
③ 日本の税務行政は、公平で正確か。
④ 日本国政府は、公平・公正に徴税し、そのおカネを国民のために使っているか。
おそらくどの質問にも即座にイエスと答えることはできないのではないでしょうか。本当にそうなの?国会議員がそれを目指すと言っていても、実際はそうなっていないのでは?との疑問を思い浮かべる人も多いと思います。本書は、まさにそのような納税者の疑問に答える内容となっています。
所得の概念といった租税法の基本概念にも触れつつ、消費税、所得税、法人税など身近な税に潜む諸問題について端的にまとめられており、租税の理解を深めることができます。また、増税って本当にすべきなの?といった、今まさに私たち国民が直面している問題にも答える内容となっています。
“納税者の各人が知って声を上げるところから始めないことには、なにも起こらない。いつまで「羊のようにおなしい」ということであってはならない。日本国の惨憺たる現状は、納税者がおとなしいのが原因であるというぐらいの自覚は持ってもらってもよいのではなかろうか。”
著者のいう「声を上げる」ためには、まず現状を知らなければなりません。冒頭の4つの質問に対する答えが気になる方はぜひ本書を読んでみてはいかがでしょう。