【レビュー】これでわかるタックスヘイブン: 巨大企業・富裕者の<税逃れ>をやめさせろ!

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目次 – まえがきにかえて

1.世界を震撼させたパナマ文書
明るみに出たタックスヘイブンの秘密世界/
何のためのペーパーカンパニーなのか/
金融機関がペーパーカンパニー作りをビジネスにしている/タックスヘイブン・ネットワークと英米金融センター/パナマは氷山の一角/イギリスの海外領土、旧植民地がタックスヘイブンに/米国にもタックスヘイブン州がある

2.タックスヘイブンとは何か?
見えない秘密世界/タックスヘイブンの4つの要素/
タックスヘイブンのイメージ/ロンドンの金融街から始まった「ヘイブン」/
オフショアとタックスヘイブンいま、タックスへイブンは、どこにあるのか?/
世界のタックスヘイブンがある主な場所/
「秘密度」をはかる指標はあるのか

3.アップル、グーグル、富裕者がタックスヘイブンを税逃れに利用している
アップルの税逃れのしくみ/
スターバックスの税逃れのしくみ/
日本でも税を納めないアップル、グーグルなどの多国籍企業/
タックスヘイブンを利用し始めた日本の巨大企業、富裕者/
日本の富裕者のタックスヘイブン利用の実例

4.タックスヘイブンがマネーロンダリングや賄賂に利用されるしくみ
犯罪資金をきれいなお金に変える方法/
イギリスのメガバンクHSBCのマネーロンダリングの手口/
「スイス・リークス」が暴露したHSBC銀行の不法行為/
マネーロンダリング対策に乗り気ではない先進国/
日本はマネロン天国?

5.オフショア・タックスヘイブンを支える闇のビジネス……
その主役はメガバンク/プライベートバンクという存在/
法の隙間を突いた4大会計事務所の税逃れビジネス/

6.タックスヘイブンに集まる巨大な資金……68
資金の総額は闇のなか/
タックスヘイブンによって失われている税収/
失われた法人税収は3兆円以上/
富裕層の税逃れは20兆円以上/
日本では5兆円の税収が失われている

7.不公正な税制が各国の財政を破綻させる
リーマンショック以降の深刻な税収不足/
法人税減税と消費税増税の政策/
資本主義の宿命/富裕者税(バフェット税)が提案されたが……/
タックスヘイブンが富の集中に拍車をかける

8.世界の貧困を解決するためにもタックスヘイブンの解体が不可欠……
2030年までの「持続的な開発目標」/
途上国から不当に持ち出される資金/
アディスアべバ行動目標の採択

9.大企業・富裕者の税逃れを許さない……
2つのサミットが風向きを変えた/
BEPS報告書の3つの柱とらの行動計画/
期待される自動情報交換制度/伊勢志摩サミットでの進展

10.私たちにできることは何か?……
イギリスを先頭にした「悪しき税の競争」/
日本も「悪しき税の競争」の渦中に/
税は民主主義の根幹/
グローバル資本主義に潜むブラック・ホール/
タックス・ジャスティス・ネットワークという存在/
あらたな2つの課題/
日本でも「公正な税制を求める市民連絡会」がスタートした
参考になる本
他あとがきにかえて

 

まえがきにかえて

これまでタックスヘイブンといえば、地球の片隅の取るに足りない問題だと多くの人は考えてきました。ヤシの茂るどこか遠い南洋の離れ小島の天国(ヘブン)を想像して、自分たちとはかかわりのないものと考える人も多かったと思います。
こうした人々の無関心を良いことにして、タックスヘイブンは次第に膨らみ、今や世界を飲み込もうとしています。

タックスヘイブンは世界がグローバル化し、マネーが最大の利益を求めて自由に国境を超える時代の産物です。マネーが最大の利益を上げるためには、税が低く、マネーに対する規制が緩い場所が必要です。その場所を提供するのがタックスヘイブンであるといっていいでしょう。

巨額のマネーを意のままに動かしているのは巨大企業やメガバンクであり、一握りの富裕者にほかなりません。タックスヘイブンは多国籍企業や富裕者の要求に応じて生まれ、次第に膨張してきたのです。タックスヘイブンを利用することによって、彼らはますます巨大な力を得るに至っています。

国家の規制を逃れて成長した多国籍企業は、今や国家に対して対等の立場、あるいは国家よりも高い立場で、国家に対してさまざまな要求を突つきつけ、無理を通そうとしています。ふんだんなマネーの力でロビー活動をおこない、国家の政策を左右できるまでの力を持つに至っています。

のちほど紹介しますが、アップル社に対する課税をめぐって、ヨーロッパとアメリカの間で展開されている攻防にその一端を見ることができます。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が2016年8月末、アップル社に対して過去に与えた税優遇分130億ユーロ(約1兆4900億円)を追徴課税するよう、アイルランド政府に求めたことに対して、アメリカ最大の財界ロビー団体であるビジネス・ラウンド・テーブルは、EU&カ国のリーダーに対して、この追徴課税を取りやめることを求め、もし取りやめなければ、報復措置をとるという書簡を出しているのです。アメリカ財務省もEUの追徴課税の動きに対して、アメリカ系企業を狙い撃ちするものという批判を展開しています。

ヨーロッパとアメリカの一連の攻防は、巨大企業が国家の上に立って、その政策を左右するカを持っていることを示すものです。巨大企業や富裕者が国家の政策を左右する時代に、それ以外の99%の人たちの利益はどうして守られるでしょうか。これは民主主義の危機と言わなければなりません。タックスヘイブンに対するたたかいは、暴走する資本主義から民主主義を救い出すたたかいです。