【最新】地頭力について学ぶためのおすすめ本 – 勉強にもビジネスにも活かせる力

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地頭力とは?どうすれば身に付けられる?

地頭力とは、あらゆる思考の基本となるもので、自分の頭で情報を整理し問題解決をしていく力のことを言います。様々な手法を用いて地頭力を鍛えていくことで、仕事でも勉強でも使える思考の基盤を整えることができます。ここでは、充実した人生を送るために必要不可欠な地頭力を学ためにおすすめの本をご紹介します。

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出典:出版社HP

世界で通用する「地頭力」のつくり方 自分をグローバル化する5+1の習慣

勝負できる人でいるための習慣

”世界で通用する”ために本書に揚げられている習慣は、どれも経験と幅広い知識に裏付けされていて、具体的です。本文も読みやすく胸ににすとんと落ちる内容となっています。自分のあり方に悩む社会人、どんな大人になりたいか明確に描けない学生。そんな将来に悩んでいる方におすすめします。

山中俊之 (著)
出版社 : CCCメディアハウス (2018/2/28)、出典:出版社HP

装丁―増田佳明(next door design)
本文フォーマットーnext door design
校正―円水社

目次

はじめに 世界に通用する人材になるための習慣
気がつくと「ガラパゴス化」してしまう日本社会
日本を「ガラパゴス化」させる3つの特性
グローバル化・AI化の「黒船」に打ち勝つ

本書の使い方
本書の3つの特徴
本書の構成「5プラス1」

第1の習慣 「情報」を変える
【根本課題①】日本起点、日本中心の情報ばかりに接しているため、世界のことがわからない
【根本課題②】情報発信者の思惑や頭、フィルターのため事実がわからない
【根本課題③】無知の無知知らないことすら知らない情報が大量にある
日本のマスメディア情報を半分以下にする習慣【根本課題①】
世界の情報から兆しを見つける習慣【根本課題③】
世界のビジネス情報のウェイトを高める習慣【根本課題①】
中東・アフリカ・中南米の情報も入れる習慣【根本課題①③】
英語メディアの情報を直接入れる習慣【根本課題①】
国には多様な側面あり―国家機関と国民を混同しない習慣【根本課題①】
マスメディア、ソーシャルメディア、人・現場の長所を活用する習慣【根本課題②③】
情報を鵜呑みにせず、相反する情報を検討する習慣【根本課題②③】
自分と違った立場の人のソーシャルメディアの投稿を読む習慣【根本課題③】
YouTubeを効果的に用いる習慣【根本課題①②③】
OE61人・現場情報を重視する習慣【根本課題①②③】
庶民から情報収集する習慣【根本課題①②③】
コラム:ソーシャルイノベーションを起こすアフリカのリーダー支援

第2の習慣 「知識」を変える
【根本課題①】社会人になってから学び続けない日本人ビジネスパーソンの能力開発は世界最低レベル
【根本課題②】「インターネット時代だからこそ知識が重要」という認識が弱い
【根本課題③】学ぶ分野が限定されており、幅広い教養に欠ける
森羅万象に好奇心を持ち学ぼうとする習慣【根本課題①②③】
そのジャンルで異端とされる本を読む習慣【根本課題①②③】
外国の映画・ドラマを戦略的に見る習慣【根本課題②③】
STEMを学ぶ習慣【根本課題①②③】
知識を深め、見識に高めるための「対話」の習慣【根本課題①②③】
「インドで月給3万円の労働者なら」「米西海岸のスタートアップIT企業社長なら」と当事者になって考える習慣【根本課題③】
各国の歴史・民族・宗教・経済・政治を常にチェックする習慣【根本課題①②③】
イノベーションを視野に入れて世界の知識を組み合わせ、再定義する習慣【根本課題②③】
付加価値をつけてアウトプットする習慣【根本課題①③】
コラム:7つめの大学で学ぶ学習オタクの私
参考:知識不足で起こりがち―「世界でこれを言うとNG」の事例

第3の習慣「ワークスタイル」を変える
【根本課題①】世界に比べジョブ、キャリアへの意識が弱く、モチベーションが低い
【根本課題②】時間単価、時間成果を意識しないのでパフォーマンスが低い
【根本課題③】空気を読むためイニシアティブをとらない
小さくても世界に通用するビジョンを持つ習慣【根本課題①③】
世界では当たり前―好きなことにこだわる習慣【根本課題①】
自らのパフォーマンスの世界での評価を重視する習慣【根本課題②】
現業にこだわらず、幅広くキャリアの可能性を考える習慣【根本課題①②】
新規事業、海外事業に手を挙げる習慣【根本課題③】
会社に売上・利益を入れる「稼ぐ」感覚を重視する習慣【根本課題②】
イニシアティブをとって意見と根拠を言う習慣【根本課題③】
日常的にイニシアティブをとる習慣【根本課題③】
世界標準の決断の習慣【根本課題②】
独立自営的な習慣【根本課題①②③】
海外も含めて自分の収入を多元化する習慣【根本課題②】
コラム:公務員と独立起業を経験して見えること

第4の習慣 「コミュニティ」を変える
【根本課題①】気の合う仲間か仕事上のコミュニティに閉じている
【根本課題②】日本人のコミュニティに閉じている
【根本課題③】コミュニティの外の人に不親切?
「仕事」「楽しむ」「切磋琢磨」の3種類のコミュニティをバランスして持つ習慣【根本課題】
「1対1」で切磋琢磨する関係を作る習慣【根本課題①】
コミュニティ内で肩書抜きでフランクに付き合う習慣【根本課題①②】
会社を利用しつつ、独自のコミュニティを作る習慣【根本課題①】
ソーシャルネットワークで世界にコミュニティを広げる習慣【根本課題①②】
マイノリティに幅見を持たずに接する習慣【根本課題①②③】
「日本人が差別されている」と過剰反応しない習慣【根本課題①②】
自分と違う人とも極力付き合う習慣【根本課題①②③】
外国人が多数参加する会合に参加する習慣【根本課題②】
外国人を招待するホームパーティーを企画する習慣【根本課題②】
友人・知人には親愛の情を身体で示す習慣【根本課題①②③】
知らない人にも笑顔で話しかける習慣【根本課題③】
四国お遍路に学ぶ――コミュニティ外の人に奉仕する習慣【根本課題③】
コラム:学際的・国際的な最高のコミュニティ、ケンブリッジ大学

第5の習慣 「オフ」を変える
【根本課題①】オンばかり重視し過ぎてオフが軽視されている
【根本課題②】疲れを感じている人が多い
【根本課題③】充実したオフになっていない
オフの予定をまず入れる習慣【根本課題①】
年、月、週、日のそれぞれに楽しみを入れる習慣【根本課題①】
元気溌剌を言葉にする習慣【根本課題②】
継続的に運動して脳を活性化する習慣【根本課題①②③】
癒し効果が証明――「森林セラピー」の習慣【根本課題②③】
自然の荘厳さに触れ謙虚になる習慣【根本課題②③】
短時間でも多くの国を回る習慣【根本課題①②③】
世のため人のための活動を何か実践する習慣【根本課題②③】
日本文化を披露する習慣【根本課題③】
1人の時間を作り、自分を見つめ直す習慣【根本課題①②③】
人類普遍の真善美の追求―芸術を楽しむ習慣【根本課題①②③】
引退後も続けることを視野に入れて活動する習慣【根本課題③】
コラム:英語落語は世界に通用する

補論 第6の習慣「英語」を変える
【根本課題①】「英語は通じればよい」と言っている人に問いたい。「情熱が感じられず、失礼な表現の日本語を話す外国人を信頼できますか?」
【根本課題②】リーダー層の英語力の低さのため、世界の優秀な人材がそっぽを向く
【根本課題③】日本人は「話す」「聞く」だけでなく「読む」「書く」も問題
【根本課題④】発音が悪いので伝わらない
【根本課題⑤】死屍累々―巨大なビジネス損失につながるお寒い症候群
王道なし―地道に単語や表現を覚える習慣【根本課題①③】
ライティングはネイティブチェックに出す習慣【根本課題③】
毎朝音読をする習慣【根本課題①③④】
発音記号とリンキングに注意する習慣【根本課題④】
落語のように「情」を入れる習慣【根本課題①③】
英文を多く読む習慣【根本課題①②③】
現地語も学ぶ習慣【根本課題⑤】
コラム:英語にこだわる私の1日の過ごし方

おわりに地球倫理の時代――日本人リーダーへの期待

山中俊之 (著)
出版社 : CCCメディアハウス (2018/2/28)、出典:出版社HP

はじめに 世界に通用する人材になるための習慣

私は、グローバルリーダー開発を本業としているトレーナーです。これまで4万人におよぶ国内外のリーダーやその候補の方々と研修・コンサルティング・大学講義・グローバルビジネス・外交の現場で向き合ってきました。「世界に通用する力を身につけて、活躍するためにはどうすべきか」ということは常に最大級のテーマであり、多くの世界のリーダーとともに議論してきました。
本書は、その経験や蓄積のもと、「情報」「知識」「ワークスタイル」「コミュニティ」「オフ」「英語」の観点から、日本人ビジネスパーソンの課題と課題解決のための習慣・方法論をまとめたものです。

《気がつくと「ガラパゴス化」してしまう日本社会》

日本でだけ通用する「ガラパゴス化」。これは私を含め、日本人ビジネスパーソンの多くに当てはまるかもしれません。職場の同僚や取引先と付き合い、テレビを見て、休日は自宅や近所で何となく過ごす……。意識せずにこのような日常を送っていると、ふと気づいたときには南太平洋の絶海の孤島にいるイグアナのようになっているかもしれません。
私は、世界の多くの革新的な製品・サービスを生み出しているスタートアップ企業(設立後間もないベンチャー企業)を数多く訪問させていただいています。そのときにいつも思うのは、「この企業について、日本の新聞や雑誌では報道されていない、少なくとも大きくは報道されていないな」「これだけインパクトのあるビジネスなのに日本では知られていないな」ということです。江戸時代の鎖国は昔の話であり、現在の日本はグローバル化されて世界に開かれていると考えがちですが、今も半ば鎖国状態にあることは変わりません(詳細は後述します)。
現在、世界がグローバル化する中で、日本人の情報、知識、思考、行動、成果が国内だけに閉じて留まり、世界とのギャップはますます大きくなっています。そうしたなか、世界に通用しない人材を量産しているといえるでしょう。
母語で自国の人々と会話をし、自国のマスメディアから情報を得て、自国中心の思考によってビジネスを展開すること自体は世界中のどの国でも普通のことです。たとえば、米国でも一部の大都市を除けば、外国生まれの外国人と日常的に接する人はそう多くはありません。それにタブロイドなど一般大衆紙、三大ネットワークであるNBCやABCをはじめとするマスメディアから人々は情報を得ています(本書では新聞・雑誌・テレビなど既存のメディアを「マスメディア」とし、個人が投稿できるソーシャルメディアとは区別します。また両方を合わせて「メディア」と呼びます)。それらの多くは米国起点で米国中心のニュースで
す。
このように書くと、「自国起点・自国中心は日本に限らないので問題ないのではないか」との意見もあるでしょう。しかし、日本には次のような、いくつかの世界に閉じている特性があります。

《日本を「ガラパゴス化」させる3つの特性》

第一に、人口が1億人を超える人口大国であるにもかかわらず、民族的・言語的に同質性が高いことです。世界には民族的にも言語的にも同質性の高い国が多数ありますが、そのような国の多くが小さな国です。人口が1億を超える国は中国、インド、米国、インドネシア、ロシアなどがありますが、これらはすべて多民族(さらに多言語)で異質の存在を国内に抱えています。また、同じ民族であっても、地域による文化や風習の違いが大きいため、「異質の他者」を意識せざるを得ません(非民主国が少数民族問題に目を向けないように国民を統制することはありますが、逆に言えばそれだけ国政に影響を及ぼしうるほどの多くの「異質な存在」を内包しているということです)。このように国内に多様な民族や言語集団を抱えているので、日本とは異なり、いわば「身内」とは異なる異質な他者を意識せざるを得ないのです。
同質性の高い国の例として韓国が挙げられますが、韓国は人口約5100万人(2016年)で国内市場が比較的小さいため、彼らは世界に目を向けています。母子で米国留学し、父親がひとり寂しく韓国で単身生活を送るといった事例を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
確かに日本にも先住民族のアイヌ民族の他、在日コリアンをはじめとした海外に出自を持つ人々は多数居住しているのはご存じのとおりです。しかし、もともと同質性が高く、移民を本格的に受け入れたことがないため、1億人を超える他の人口大国と比較しても相対的に同質性が高いことは間違いありません。このように同質性が高い人口大国の場合、異質な他者への感覚が弱くなり、内向き志向が強化され、ガラパゴス化に繋がってしまいます。
第二に、日本語が言語学的に国際標準語である英語から遠いため、英語を習得することが困難であることが挙げられます。それは同様に外国人の日本語学習への敬遠につながり、日本が閉じた国になる要因にもなっています。
民主主義国、かつ先進国のリーダー層(政治家、経営者、ジャーナリストなど)で英語ができない比率がこれほどまでに高いのは日本くらいです(第6章で詳述します)。その要因には英語教育の質的・量的な問題の他、そもそも経済活動が日本国内で完結してしまうため、英語習得の必要性を感じにくいなど多様な要因があります。しかし、言語学的に英語をはじめとする他の国際言語との乖離が大きく、習得が難しくなっている点も見逃せません。
また、複雑な漢字を使用する日本語を外国人が習得することが難しいため、外国人の日本語習得も進みません。ご存じのとおり、中国本土の漢字は中国の共産党革命以降省略化されました(簡体字)。日本は中国本土よりも複雑な漢字を使っています(台湾は複雑な繁体字)。言語的な壁が大変に大きいのです。
第三に、日本人の宗教に対する認識・理解の低さが挙げられます。いまも国際紛争の要因の多くが宗教であることは言うまでもなく、世界の人々の思考や価値観の軸として宗教は大きな位置を占めています。
たとえば、欧米社会では寄付が大変に重視されますが、これはキリスト教の価値観を反映したものです。しかし、日本人は宗教というと政治同様、何か触れてはいけないタブーになっているのが実態ではないでしょうか。そのため宗教について議論する機会が少なく、宗教への認識理解がなかなか進みません。このように宗教への理解が不十分だと、世界の多くのリーダーたちの価値観を理解することが難しくなってしまうのです。結果として、ガラパゴス化してしまいます。
もちろん欧米にも自分は無宗教であると言う人もいますが、欧米であればキリスト教的な価値観の影響を受けており、中東をはじめとするイスラム圏ではイスラム教の生活習慣や価値観が浸透しています。
これら3つの特性のため、日本人、日本社会はガラパゴス化してしまっていると私は考えます。

《グローバル化・AI化の「黒船」に打ち勝つ》

このように海外と日本を比較すると、「私はドメスティックな人間なので関係ない」と言う方もいると思います。しかし、本当に自分はまったく無関係といえるでしょうか。
いま、すべてのビジネスパーソンにとって大きな脅威になると考えられているのが、グローバル化とAI(人工知能)化です。
まず、グローバル化の脅威とは、給与水準が比較的高い日本人ビジネスパーソンが海外のビジネスパーソンに代替されてしまうということです。
日本は、上級管理職を含めた経営者層、一部のIT技術者は別として、同規模・同業種の世界の企業と比較すると、国や業種にもよりますが、初級管理職クラスまでは給与が高い傾向にあると言われています。新興国の初級管理職と比較すると、日本人の給与の方が高いことは容易に想像がつくのではないでしょうか。
しかし、ここで「給料が高くてラッキー」と思ってはいけません。給与が高いということは、企業側から見ると「抑えられるべきコスト」です。同じパフォーマンスであるならば、人件費を抑えることのできる新興国をはじめとした海外での雇用にシフトすることを企業サイドは考えます。
自動車や家電などの工場の生産拠点が日本からコストの安い海外に移っていったことはみなさんもご存じのはずです。今後はマーケティング・研究開発などの拠点がどんどん海外に移っていく可能性があります。実際、私の本業である人材開発や研修の分野でも、外資系グローバル企業はアジアの拠点を東京からシンガポールや中国などに移転させており、東京からシンガポールに拠点を移した人もたくさんいます(日本のマスメディアでは東京一極集中の問題が報じられますが、それはあくまで国内に限定した話です。外資系グローバル企業のアジアにおける東京の地位は下落の一途で、世界の視点で見ればむしろ東京が衰退していることが課題です)。
このように日本人の仕事が海外に代替されつつある中で、国内だけに閉じた視点で他社の社員と給料を比較するだけでは不十分です。中国やインドなどの新興国で同じ仕事をしている人の給与と比較する必要があるのです。自らの雇用や給与を、これからは世界視点で見ていかなくてはいけません。
最近、「少子高齢化で人手不足」「売り手市場」という話をメディアで聞くという方もいらっしゃると思います。しかし、それは建設、介護、外食や中小零細企業で仕事と賃金が見合わない需要と供給のミスマッチが原因です(もっとも賃金を大きく上げることはできないので簡単には解消しませんが)。
話が逸れましたが、もう一つの脅威であるAI化についても見ていきます。今後、多くの仕事はAIに置き換わっていきます。生産現場だけでなく、事務、営業、中間管理職、さらには経営者の仕事までAIに置き換わっていく可能性があります。
英オックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授によれば、今後米国の雇用の47%はAIなどによって失われるとされています(論文『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」)。
また、ダボス会議を創設したクラウス・シュワブ氏は、「2020年代半ばまでにニュースの90%は人間の介在をほとんど必要としないアルゴリズムで生成される」可能性を指摘しています(『第四次産業革命―ダボス会議が予測する未来」日本経済新聞出
版社)。専門性の高い職業とされる新聞記者ですらAI化でなくなる可能性があるとは驚きです。
現在は指数関数的な変化の時代といわれます。指数関数的な変化とは、AIを含むIT技術やそのサービスの進化が線形のように徐々に変化するのではなく、何乗という指数関数のようにある段階から一気に急激に変化・成長するということです(図1参照)。1990年代初頭には存在しなかったグーグルやアマゾン、フェイスブックは、このような指数関数的な変化の波に乗って一気に市場を席巻しました。
グローバル化とAI化、これらの脅威のため、これまで存在した仕事が一気になくなる危険性が高まっています。仮になくなってしまわなくとも、低賃金に甘んじることになってしまいます。
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1853年、ペリーの黒船が来航しても、江戸幕府は未来永劫続くとほとんどの人が思い込んでいました。しかし、ペリー来航からわずか5年で260年続いた江戸幕府はいとも簡単に滅びてしまいました。現在、多くの日本人も幕末の日本人同様、「まあ、なんとかなるでしょう」とグローバル化とAI化の動きをさほど深刻にはとらえていないかもしれません。
しかし、現在の2つの黒船、すなわちグローバル化とAI化については、現役世代は十分に理解し、何らかの打ち手を講じておくことが必須です。今見てきたように、グローバル化やAI化によって代替されて仕事を失ってしまうのではなく、自らの人材としての開発戦略を大きく変え、自らの市場価値を上げ、世界に通用する人材になる必要があるのです。

山中俊之 (著)
出版社 : CCCメディアハウス (2018/2/28)、出典:出版社HP

本書の使い方

本書の3つの特徴

第一に、全体を通じてリーダー開発・人材開発の視点を重視しています。これは私の専門分野であり、研修や大学講義、実際のグローバルビジネスの現場で企業の将来を担う経営幹部やリーダーの開発・育成をお手伝いしています。_2000年に人材開発のコンサルタントになって以来、累計約4000人のリーダーにインタビューし、約3万人以上にリーダーシップに関連する研修を実施してきました。近年はアフリカでリーダー・イノベーター育成にも注力していますが、世界で起きている諸問題とその歴史・社会・文化など背景要因を議論しながら、リーダーとしての次の打ち手を考えています。そして、クライアント企業の世界のマーケット展開をお手伝いするだけでなく、自らも経営者として外資系グローバル企業とタフな交渉をしています。
また、エジプト・英国・サウジアラビアに外交官として駐在した経験、0か国以上で現地を徹底視察した経験、多数の国際会議に出席した経験、仏教思想に関連する修士号を取得し、現在は大学で芸術について学んでいる経験、これらも広い意味でリーダー開発のバックボーンになっています。
第二に、インプットを重視しています。「もし8時間木を切る時間を与えられたら、そのうち6時間を斧を研ぐのに使うだろう」。これは第5代米国大統領のエイブラハム・リンカーンの言葉です。
何かを変えるにはインプットが必要不可欠です。本書の1章と2章で、まずは「情報」と「知識」という重要なインプットについて取り上げますが、「良質なインプットなくして良質なアウトプットなし」は普遍的真実です。ちなみに「オフ」も本業への刺激という視点があるため、広い意味でインプットと言えます。
第三に、習慣によって再現可能なレベルの思考や行動(=地頭力)を鍛えることを重視しています。各章で日本社会における根本的な課題を事例や根拠・データを入れた上で3つ程度示し、10程度の習慣を取り入れます。世界で通用する人材になるためには、習慣化が重要だからです。
年に数回程度の行動であっても、習慣化に意義のある場合には取り入れていますが、ごくたまにしかないような例外的な行為や、特別な立場にある人だけに当てはまる行動は排除しています。毎日、毎週、毎月という単位で行動できる内容が中心で、誰にでも実践できるようにヒントを入れる配慮をしています。
本書の根本課題は、あくまで世界のリーダーを念頭に置いて、世界に通用する人材にならんとするための課題です。また、習慣もそのための習慣です。そのため日本国内・日本人同士を念頭に置いている一般的な習慣には重点を置いていません。

本書の構成「5プラス1」

第1章は、「『情報』を変える」です。日本人は一般的に日本語でのマスメディア情報に依存し過ぎており、今現在、世界の話題の中心が何であるのかがわからない状況に置かれています。政府や大手マスメディア、一部の影響力のある知識人などの情報を安易に信じてしまうことも問題です。情報源を多元化した上で情報の読み解き方・活用を変えていくことが世界で通用する人材には大事です。

山中俊之 (著)
出版社 : CCCメディアハウス (2018/2/28)、出典:出版社HP

30日間で身につく「地頭」が育つ5つの習慣

知力が上がる家庭習慣

変化に対応できる応用力のある人間に成長するために、親子で簡単にできる5つの家庭習慣を紹介しています。日常生活のちょっとしたことが学力にも影響することがわかり、日常生活の参考になります。知力を上げたい方、お子様を持つ保護者の方にもおすすめの一冊です。

石田 勝紀 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/3/30)、出典:出版社HP

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本作品購入時にご承諾いただいた規約により、有償・無償にかかわらず本作品を第三者に譲渡することはできません。
本作品を示すサムネイルなどのイメージ画像は、再ダウンロード時に予告なく変更される場合があります。
本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。

本作品は縦書きでレイアウトされています。
また、ご覧になるリーディングシステムにより、表示の差が認められることがあります。
本文中に「*」が付されている箇所には注釈があります。その箇所を選択すると、該当する注釈が表示されます。

プロローグ

私は、3歳で起業して以来、教育という分野に従事して、約3年になります。その間、私立の中高一貫校の経営、東京大学大学院での研究など、さまざまな領域で、多くの子どもたち、学生たちと出会ってきました。
その中でわかったことは、「どのような時代、どのような場所や分野でも、自分らしく生きていくための能力」というものが存在し、その能力を得てしまえば、これまでの教育(3世紀型の教育)で重視されている学力も上がるということです。
その能力が、「地頭」というものです。
本書の目的は、この「地頭」をよくするための、「(たった5つの)習慣を身につける」ことです。しかも、「家庭における日常生活で身につけよう」というのです。「本当にそんなことができるのか」と思われるかもしれませんが、本書を読めば、可能であることがよくわかると思います。
本書の出版に至った大きなきっかけは、2015年1月1日から隔週で長期連載している東洋経済オンラインでの『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?』でした。
すでに掲載回数は2016年2月段階で3回を超えました。お陰様で毎回、大変な反響をいただいているのですが、その中でも特にアクセス数の多かった記事に、『地頭のいい子は家庭内の習慣で作られる!――アクティブ・ラーニングは親子でもできる』というものがあります。
掲載日のアクセスランキングで第1位をいただき、さらにその後の反響も大きいものでした。「地頭」という言葉と「アクティブ・ラーニング」という斬新な言葉に大きな関心を示す方が多いことに驚きを感じるとともに、じつは内容的にも非常に重要な教育内容であるということに気づいたのです。
そして、その内容をさらに詳しく、実用書として、誰もが効果を実感できるように構成したのが本書なのです。
このタイミングで本書を出版する目的はもう1つあります。それは、非常に大きな出来事であるにもかかわらず、多くの親御さんが知らない次の事実をお伝えするためです。

「2020年に日本の教育は大変革する」

ちょうど、東京オリンピックと同じ年です。
大変革とは、簡単に申し上げると、大学入試センター試験が廃止され、新しい試験になること、さらに日本の学校教育の大黒柱である「学習指導要領」が大きく改訂されることです。
小学5年生、6年生での英語教科化をはじめ、アクティブ・ラーニングという授業手法の導入など、さまざまな内容が転換、追加され、180度とまではいきませんが、大きく変わることが予定されています。
この変革を「明治維新以来150年ぶりの大変革」という方もいるぐらいです。
このような変革の背景に、世界が変化し、社会が変化し、「従来の教育のあり方では対応が難しい」という状況があります。これまでの教育を如世紀型教育といい、これからの新しい教育を1世紀型教育というならば、単純化してそれらを比較すると次のようになります。

◆20世紀型教育
知識集積型=簡単にいえば知識を習得し偏差値を上げる教育
→講義型授業が多い

◆21世紀型教育
知識活用型=簡単にいえば知識を使いこなす教育
→グループワーク型授業が多い

さてこれを見てどう思われますか。
21世紀型教育(といってもすでに始まりつつある)では、考える力、コミュニケーション能力、自分の意見を言う力、チームワークなどが重視され、クリエイティビティ(新しい考えを生み出す)や人と異なる考えを持つことが重要になります。
まさにグローバルな社会、21世紀の社会に適合する教育という感じなのです。それが正式に2020年から始まるということです。
そうすると、現在の小中学生は、このような新しい教育で評価される世界で生きることになります。
しかし、このような話を聞いても、
「まだ先だし、今の状況を何とかすることのほうが大切」
「確かに21世紀型の教育も大切だけど、勉強ができないと話にならない」
「まずは、短期目標である試験に合格することが重要」
「コミュニケーション能力も論理思考も重要だけど、今やっているテストの点数が伸びなければ無意味」
と考える方が多いのではないでしょうか。
それはそうです。私もそう思っていますから。

これまでの日本の教育がすべて悪いというわけではなく、新しい世界に対応するために、これまでのよいものを残し、改善すべき部分を改善するという形で移行します。ですから知識が重要であることに変わりはありません。
しかし、問題なのは、知識の獲得方法でしょう。黒板の字をただ書き写すだけの「作業」、テスト前に意味なく丸暗記で知識を詰め込むやり方、問題集を考えることなくただくり返す機械的作業ばかりでは「勉強=つまらない」状態が一生続き、「学校の勉強をしても意味がない」という言葉が発せられることでしょう。
そこで、私は本書を通じて、「地頭をよくすることで、知識を自然な形で吸収し、さらにそれが活用できる21世紀型教育もまるまるやってしまおう!」ということも主張していきます。
要するに、「地頭さえよくしてしまえば、これからの時代への対応も可能となり、ついでに偏差値も上げることができてしまう!」ということなのです。
それを、「たったの4週間で、お金をかけずに、家庭のほんのわずかな習慣を変化させるだけで行う」方法を本書で余すことなく公開していきます。
では、これからお話を始めていきます。

2017年3月
石田勝紀

石田 勝紀 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/3/30)、出典:出版社HP

もくじ

プロローグ
第1章 5つの簡単な家庭習慣で、「地頭のいい子」になっていく
第1節 地頭は生まれつきのものではない!
第2節 アクティブ・ラーニングは親子でできる
第3節 地頭をよくするための5つの習慣
第4節 習慣化までの4週間モデル
第5節 習慣化させる5つのポイント

第2章 【第一の習慣】「前を見る」習慣―最強マインドを手に入れる
第1節【第一の習慣】はこの2つで身につける
第2節 発する言葉の種類で「伸びる・伸びない」が決まる!
第3節 失敗や間違いを量産する!
第4節 【第一の習慣】が身につく親子アクティブ・ラーニング

第3章 【第二の習慣】『脳を動かす』習慣―ロジカル思考とクリエイティブ思考を同時に手に入れる―
第1節 ロジカルとクリエイティブを手に入れると人生が変わる
第2節 「考える力」はこうして手に入れた!
第3節 ロジカルな思考が養成される2つのマジックワード
第4節 国語力も高まる「要するに?」「例えば?」の効果
第5節 クリエイティブな思考を手に入れるたった2つのマジックワード
第6節 親子でのアクティブ・ラーニング「4つのマジックワード」事例

第4章【第三の習慣】『観る』習慣―観察し分析する習慣―
第1節 「観る」習慣をつけてしまえば、怖いものはない!
第2節 学びの3つの型
第3節 『観る眼』を作る親子アクティブ・ラーニング
第4節 事実を分析するための親子アクティブ・ラーニング

第5章 【第四の習慣】『見抜く』習慣―ポイントを見抜く『眼』を持つー
第1節 『見抜ける』人間になる
第2節 国語で本質を見破る訓練をする(親子アクティブ・ラーニングその1)
第3節 思考の樹を描く(親子アクティブ・ラーニングその2)
第4節 Gノートの作成(親子アクティブ・ラーニングその3)

第6章【第五の習慣】『話す』習慣|自分の意見を言う習慣―
第1節 「話す」習慣ができている子はじつは非常に少ない
第2節 感性を高める習慣を実践しよう!(親子アクティブ・ラーニングその4)
第3節 筋道を立てて話ができる習慣を作ろう!(親子アクティブ・ラーニングその5)
第4節 事実と意見を区別しよう!(親子アクティブ・ラーニングその6)
第7章 Q&A
エピローグ

第1章
5つの簡単な家庭習慣で、「地頭のいい子」になっていく

石田 勝紀 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/3/30)、出典:出版社HP

入門『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法

AI時代に必須の”地頭力”

「思考力」とは「自分の頭で考える力」であり、その思考力を身に付け、育成することによって、AIとは違う「人間の役割」を果たすべきであると著者は言います。本書では、これからの社会で自分の役割を果たすのに不可欠な「思考力」、つまり「地頭力」を鍛えるための方法が、32のキーワードを解説していくことを通して述べられています。

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

この作品は、2019年8月に東洋経済新報社より刊行された書籍に基づいて制作しています。
電子書籍化に際しては、仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

はじめに

AI(人工知能)が飛躍的な発展を遂げ、私たちの生活に大きな影響を与えつつあります。ビジネスの現場では、ビッグデータやIoT(Internet of Things)といったデジタル技術とともにAIを活用することで大きなチャンスが広がっています。同時に、いま人間が行っている定型業務を中心とする仕事の多くの部分がAIに取って代わられるだろうという予測もあります。
このように人間の知的能力に対する大きな問題提起がされている時代に重要なのが、既成概念にとらわれずに自ら能動的に問題を発見し、やるべき解決策を考えて、それを行動に移していく力です。その一方で、これまで日本の学校や会社で重視されてきたのは、それとはまったく逆の次のような能力でした。

・定められた知識を受動的に記憶する
・決められた時間やルールを守る
・個性よりもチームワーク重視で、皆同じことを一斉に足並み揃えて行う
・与えられた命令をミスなく着実に実行する

このような能力は、例えば、20世紀に日本が奇跡的とも言える成長を遂げた要因でもある、自動車や電機製品といったハードウェアを完璧な品質で仕上げる場面では見事に強みとなりました。一方で、既成概念にとらわれない、創造的かつ能動的な発想をする上では、これまたものの見事に負の遺産となってのしかかってきます。
それを象徴的に表すのが、バブル期を境に日本が「世界の優等生」から先進国でも有数の経済停滞国に落ち込んだことです。
学校や企業における「従来の優等生」が持っている資質、能力は、実はAIが最も得意とする領域でもあり、ここはAIに任せればいいでしょう。人間はその上流、つまりそもそも解決すべき問題や目的を見つけることにシフトしていくべきなのです。
本書はそのような能力を身に付けるための入口となる本です。
思考力とはすなわち「自分の頭で考える」ことであり、本来そのためのテキストはあってないようなものです(そもそも「テキストを読んでいる」時点で自分の頭で考えることにはなっていません)。そうは言っても自ら考えるにも最低限の知識を押さえておくことは必要です。
本書はそのような初学者のために、まずは思考(法)に関する基本的なキーワードを学んだ上で本格的な思考力を身に付ける学習に入っていくための入口を提供します。
読者の皆さんに本書で習得していただきたいのは、「思考」に関する32のキーワードの【WHAT】【WHY】【HOW】です。

・【WHAT】そのキーワードの基本的な定義と意味
・【WHY】そのキーワードが重要な理由
・【HOW】そのキーワードの具体的な活用方法

キーワードそれぞれについて、この順に解説していきます。
さらに各キーワードの最後に理解度の確認として【理解度確認問題】と【応用問題】をクイズ的に用意しました。本文を読めば必ずわかる問題になっていますので、もしすぐにわからなければ、本文をもう一度読み直してみてください。

「人間の知的能力に対する問題提起」という課題は、私自身がもう10年以上も著作や研修活動で取り組んできたことです。
『地頭力を鍛える―問題解決に活かす「フェルミ推定」」をはじめとするさまざまな著作においてそれを表現し、人間の知的能力がどうあるべきかという問いに対する私の考え方を提示してきました。
本書は、それらの本を読む前に、あるいはそれらの本と同時に読んでいただきたい、いわば思考(法)を学ぶための入門の入門書です。これまでの私の著作でも多くを語ってきた、さまざまなキーワードの一つひとつについて、簡潔にまとめて解説しています。
本来、「考える」ことと「知識を獲得する」ことでは、頭の使い方が異なります。本書は「考える」に至るまでの基本的な知識を身に付けるための本です(その意味で「読者に考えさせること」を目的としてきたこれまでの著作とは(内容的には抜粋ではあるものの)目的が異なっています)。
思考への入口を提供する本書によって、まずは基本的な知識を習得した上で、その後の「自ら能動的に考える」ためのトレーニングに進む気になってもらえれば、本書の目的は達せられたことになるでしょう。
2019年6月
細谷功

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

目次

はじめに
Chapter1 基本の思考法を押さえる
思考の基本動作を身に付ければさまざまに応用できる
【キーワード01】戦略的思考
いかに並ばずに人気のラーメンを食べるか?
【キーワード02】ロジカルシンキング
誰が見ても話がつながっているか?
【キーワード03】仮説思考
プロジェクトは「最終報告」から考える
【キーワード04】フレームワーク
良くも悪くも「型にはめる」
【キーワード05】具体と抽象
思考とは「具体→抽象→具体」の往復運動
【キーワード06】「なぜ?」
なぜ「Why?」だけが特別なのか?
【キーワード07】アナロジー思考
アイデアは遠くから借りてくる

Chapter2 二項対立で考える
「視点」と「思考の軸」を意識して使い分ける
【キーワード08】二項対立
二者択一はデジタル的、二項対立はアナログ的
【キーワード09】因果と相関
雨が降れば傘が売れるが、傘が売れても雨が降るわけではない
【キーワード10】演繹と帰納
「そう決まっているから」なのか?「多くがそうだから」なのか?
【キーワード11】発散と収束
「落としどころありき」の思考停止に陥ってはいけない
【キーワード12】論理と直観
「論理」で守り、「直観」で攻める
【キーワード13】論理と感情
できるビジネスバーソンは「使い分け」がうまい
【キーワード14】川上と川下
「自ら考える力」は使いどころを見極める

Chapter3 コンサルタントのツール箱
コンサルっぽい見せかけだけでなく、「魂を入れる」ことができるか
【キーワード15】ファクトベース
「みんな言ってる」って、どこの誰がいつ言ったのか?
【キーワード16】MECE
「マッキンゼー流」の十八番
【キーワード17】ロジックツリー
「形から入る」ことで論理が身に付く
【キーワード18】2×2マトリックス
コンサルタントが好きな4象限マッピング
【キーワード19】フェルミ推定
なぜコンサル、外資系金融の面接試験の定番なのか?

Chapter4 AI(人工知能)vs.地頭力
AIではなく、人間ならではの知的能力の使いどころがある
【キーワード20】地頭力
結論から、全体から、単純に考える
【キーワード21】問題発見と問題解決
なぜ優等生は問題発見ができないのか?
【キーワード22】AI(人工知能)
何ができて、何ができないのか?
【キーワード23】ビジネスモデル
「何を売っているか」ではなく「収益の上げ方」のパターン
【キーワード24】多様性
思考回路の転換と「ニワトリと卵」の関係
【キーワード25】未来予測
アマゾンは書店の代替ではない、と気づいたか?

Chapter5 「無知の知」からすべては始まる
「いかに自分は知らないか」を自覚することから思考回路は起動する
【キーワード26】無知の知
自分を賢いと思ったらゲームオーバー
【キーワード27】知的好奇心
地頭力のベースであり、考えることの原動力となる
【キーワード28】能動性
「育てる」ではなく「育つ」
【キーワード29】常識の打破
「常識に従う」ことで思考停止に陥ってはいけない
【キーワード30】「疑う」こと
「信じてはいけない」(この本に書いてあることも)
【キーワード31】認知バイアス
人間の目は曇っている。
【キーワード32】メタ認知
気づくためには上から自分を見る
おわりに
本書のベースとなった書籍

Chapter1 基本の思考法を押さえる

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

地頭力を鍛える強力ツール

地頭力とは「結論から・全体から・単純に考えること」これがこの本の結論であり、具体的な解説を中身で行っています。問題解決のためには、これらの思考力や力が必要という全体的な枠組みを知るためにおすすめの本です。

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2007/12/7)、出典:出版社HP

本作品は、2007年12月発行の、細谷功著『地頭力を鍛えるー問題解決に活かす「フェルミ推定」』(東洋経済新報社)に基づいて制作しています。
本作品を電子書籍として刊行するにあたり、一部の演字を簡易慣用字やかなで表記している場合があります。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

はじめに

■なぜいま「地頭力」が必要なのか?

あなたは日々の暮らしの中でどこまで本当に自分の頭を使って考えているだろうか?
いま「考える」ことの重要性がかつてないほどに高まっている。
インターネットによる情報検索が発達し、世界中のありとあらゆる情報が一瞬にして入手できるようになった。その結果として情報量という観点からは専門家と素人の差がほとんどなくなってきている。ところがこの膨大な情報量そのものが我々の世界をある意味で危機にさらしている。
ここに日本経済新聞の二〇〇七年四月二十日付の記事がある。「コピペ思考」というタイトルで、インターネットで検索した内容をそのまま「コピー&ペースト」してレポートにする若い研究者のことが掲載されている。インターネットの情報を使えば、表面上だけは専門家と同等レベルの論文を作成することが可能になったが、実は深い考察や事実・データによる検証に裏付けられたものでも何でもない。これは情報の洪水とお手軽な検索ツールの発達による「コピペ族」の増殖に伴う人々の思考停止の危機の一例を表している。
インターネット情報への過度の依存は三つの意味での危険をはらんでいる。第一は、素人参加型の情報源であるゆえ、鮮度が高い反面で精度に疑いが残るということ、第二はITや通信技術をはじめとした技術革新等、環境変化が著しく速くなってきたために陳腐化が激しくなってきていること、そして最後に情報への過度の依存が思考停止を招く可能性があることである。
インターネットの向こう側にある情報の大海というのは諸刃の剣である。検索エンジンによってすべての人間が膨大な情報への簡単なアクセスを手にした。しかしこういった膨大な情報を単に「コピペ」するという姿勢で使っていたのでは人間の考える能力は退化していき、そのうちにコンピュータにその役割は取って代わられて、そういった人たちはたちまち大海の藻屑として散るだろう。ただし、その反面で考える力(本書でいう「地頭力」を身につけた人はこの膨大な情報を駆使してこれまでとは比べ物にならないような力を発揮できる可能性がある。本書ではこの二極化を「ジアタマデバイド」と呼ぶ。
大宅壮一氏が「一億総白痴化」という言葉で、テレビの普及に対しての警鐘を鳴らしたのはすでに五十年以上も前のことである。そしていま、ふたたび世界は「インターネットによる総白痴化」の危機を迎えているといっても過言ではない。いまや漢字や電話番号はすべて携帯電話が「憶えて」くれており、単なる記憶力に関してですら、我々はますます頭を使わなくてもすむようになってしまった。
そうした危機感を反映してか、「脳力開発」「ロジカルシンキング」がビジネスパーソンの間でブームであり、数学が苦手な人や学生時代に理数系を専攻したビジネスパーソンに向けた数学本なども売れ行き好調のようである。またこうした傾向は日本にとどまらず、日本で命名された「数独」は海外でもブームを巻き起こしている。
これから本当に重要になってくるのはインターネットやPCでは代替が不可能なエリア、膨大な情報を選別して付加価値をつけていくという、本当の意味での創造的な「考える力」である。考える力を持っていれば、知識や経験が陳腐化すること自体は少しも恐れるに足らない。最新の情報はインターネットでいくらでも入手できるから、あとは自分の力を使って考えることによって新しい知識をいくらでも生み出していけるからである。
本書ではこの基本的な「考える力」のベースとなる知的能力を「地頭力」と定義した。「地頭」という言葉はコンサルティング業界や人事採用の世界では比較的日常的に使われていたが、定義があいまいで、かつ世間一般にはそれほど浸透している言葉ではなかった。筆者にとっても明確な定義のあるものではなかったが、十年以上にわたって「徹底的に考えること」を使命とするビジネスコンサルタントとして現場で様々な問題解決をクライアント企業とともに実施していくうちに問題解決に必要なベースとなる能力が明確になってきた。併せて若手コンサルタントとのプロジェクト活動を通じて、短期間で成長していくコンサルタントに共通の思考回路としての考える力のベースとなる部分、すなわち「地頭力」というものが存在することを強く意識するようになった。そしてまたその本質が「結論から」「全体から」「単純に」考えるという後述の三つの思考力を中心とする三層構造であると結論づけるに至ったのである。

■そもそも「地頭」は鍛えられるのか?

読者の中には、「地頭とは生まれつきの頭のよさなのだから、そもそも『地頭を鍛える』ということはできない、あるいは自己矛盾した言葉なのではないか?」と思われる人もいるかもしれないが、それは本書における定義においては必ずしも正しくない。確かに「地頭」という言葉が「生まれつきの頭脳」という意味で用いられる場合もあるが、本書における定義は「考えるために基本となる力」としての三つの思考力とそのベースカと定義しており、この意味における「地頭力」、特に三つの思考力というのは訓練によって必ずあるレベルまでは到達できると考える。

■「フェルミ推定」で地頭力を鍛える

それでは具体的に「地頭力」を鍛えるにはどうすればよいのか?
本書ではその具体的な訓練のツールとして「フェルミ推定」というものを紹介する。
筆者がフェルミ推定に初めて出会ったのは十年以上前、コンサルティング業界に入ってからのことであった。当時はそれを「フェルミ推定」と呼ぶということは知らずに「日本中に郵便ポストはいくつあるか?」「ガソリンスタンドは何軒あるか?」といった、容易には算出困難な数値を算出する課題がコンサルティング会社の面接で問われるということで、好奇心をそそられて興味は持ったものの、その時点ではその本質や奥の深さにまでは気づいていなかった。
時を経てコンサルティングの現場での経験を重ねるうちに、コンサルタントの使命とする「問題解決」におけるフェルミ推定の本当の威力や、その奥の深さに気づいていくことになる。フェルミ推定は問題解決の縮図であり、きわめてシンプルで誰にもわかりやすい敷居の低さを持ちながらも問題解決の方法論が凝縮されてここにつまっており、すぐに伸びていくコンサルタントはこのフェルミ推定の「ツボ」(基本精神)をしっかりと押さえている。
こうしたことからフェルミ推定が、先に触れた「結論から」「全体から」「単純に」考える「地頭力」を鍛えるための強力なツールと信じている。
インターネットには中毒性がある(これもテレビと一緒である)。したがって、この「ネット検索中毒」から脱するのは容易なことではない。考えるより先に検索エンジンへの入力の手が動いてしまうという「中毒症状」から脱して考える癖をつけるためには、「自らを羽交い絞めにして」でも検索をやめて一度立ち止まって考える癖をつけなければならない。
そのために「フェルミ推定」というツールを「ジアタマデバイド」への対策として活用してほしい。

■本書の構成

本書の構成は、まず第1章では本書のメインテーマである「地頭力」について、その定義と意義、およびその構成要素について解説するとともに、今後必要な「考える」知的能力を持った人間として「地頭型多能人」(パーサタイリスト)というものを提案する。次に第2章で二つ目のキーワードであり、おそらくほとんどの読者になじみのない「フェルミ推定」の定義とその意義を解説し、次の第3章で具体的なフェルミ推定の例題を用いて地頭力を鍛えるのにどう役に立つかの関連を説明する。続いて第4章では現実のビジネスへのフェルミ推定の精神の活用方法を紹介し、第5、6、7、8では地頭力の各構成要素、三つの思考力とベースカに関して個別に詳細を述べる。第9章では再びフェルミ推定にもどって、その応用例を紹介するとともにフェルミ推定以外の地頭力強化のためのツールを紹介するという構成である。
「フェルミ推定」および「地頭力」に関して包括的に定義・解説した類書はこれまで存在しておらず、そうした点で本書は他に類を見ないものと考えている。

■「地頭力」でジアタマデバイド時代を生き残る

本書が対象とするのは、若手のビジネスコンサルタントや企業における「問題解決」を必要とする業務に携わるビジネスパーソン、あるいは起業家(とその予備軍)に加えて、「考える力」を向上させたいと考える学生や研究者等のすべての職業の人であり、今後の日本を背負っていく人たちである。
本書を通じて「インターネットによる思考停止の危機」を食い止めるとともに、これまで知識詰め込み偏重であった日本人全体の「地頭力」、ひいては問題解決能力が向上し、世界におけるかつての競争力を取り戻すことに少しでも貢献ができればと考えている。
フェルミ推定による地頭力トレーニングの世界へようこそ。ぜひ「地頭力」という武器を持ってインターネットの情報の大海をうまく乗り越え、読者なりの「新大陸」を発見していただきたい。ではよい航海を。

二〇〇七年十月
細谷功

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2007/12/7)、出典:出版社HP

目次

はじめに
■なぜいま「地頭力」が必要なのか?/■そもそも「地頭」は鍛えられるのか?/■「フェルミ推定」で地頭力を鍛える/■本書の構成/■「地頭力」でジアタマデバイド時代を生き残る

第1章「地頭力」とは何か
□「地頭力」を定義する
■「頭のよさ」は三種類/■「物知り」タイプの有する記憶力/■「機転が利く」タイプの有する対人感性力/そして考える力が高いタイプが有する「地頭力」/■三つの力のまとめ
□知的能力を「面」で語る
■旧来の会社経験で養われた「YZ平面」/■受験勉強で試される「XZ平面」/■「知の触媒機能」に必要な「XY平面」
□「地頭力」の構成要素
■ベースとなる三つの力/■地頭力に固有の三つの思考力
□なぜ「地頭力」が重要なのか
■「圧倒的に」生産性が上がる/■「結論から」「全体から」「単純に」は経営者の発想そのもの/■思考回路としての重要性/■トレーニングは二種類のアプローチ
□「地頭力を鍛える」ことは可能なのか
□「デジタルデバイド」から「ジアタマデバイド」へ
■地頭型多能人(バーサタイリスト)の時代へ■第1章のまとめ

第2章 「フェルミ推定」とは何か
□フェルミ推定=地頭力を鍛えるツール
■東京都内に信号機は何基あるか?/フェルミパラドックス/■「オーダー・オブ・マグニチュード」であたりをつける
□どんな場面で使われているか
□フェルミ推定が面接試験で用いられる三つの理由
■第2章のまとめ

第3章 フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか
□フェルミ推定の例題に挑戦
■フェルミ推定例題の解法例
□フェルミ推定と地頭力との関連
■「地頭力」を構成する三つの思考力/■「結論から考える」仮説思考力/■「全体から考える」フレームワーク思考力/■「単純に考える」抽象化思考力/■地頭力のベース
□あなたの地頭力を判定する
■地頭力の判定結果について
■第3章のまとめ

第4章 フェルミ推定をビジネスにどう応用するか
□ケーススタディ「地頭課長と積上クンの会話」
□フェルミ推定が必要な六つのタイプの症状と処方箋
■「検索エンジン中毒」|自分自身を羽交い絞めにする/■「完璧主義」―「タイムボックス」の考え方の習得/■「情報コレクター」―少ない情報で仮説を立てる/■「猪突猛進」―客観的に全体像で考える/■「セクショナリズム」―各因数のパランスよい算出を習得/■「経験至上主義」一般化・モデル化・共通の解法の適用
■第4章のまとめ

第5章 「結論から考える」仮説思考力
□仮説思考力のポイント
□仮説思考で最も効率的に目標に到達する
■仮説思考とは「逆算する」こと/■「はじめ」からでなく「終わり」から考える/■「できること」からでなく「やるべきこと」から考える/■「自分」からでなく「相手」から考える/■「売れないセールスマン」にならないために/■会議が「ミステリー列車」になっていないか?/■「手段」からでなく「目的」から考える/■キャリアプランも仮説思考で考えてみる/■人生設計を「自分の葬式」から考える/■両方のベクトルをバランスよく考えること
□どんなに少ない情報からでも仮説を立てる
■仮説が先か情報収集が先か?/データ分析の成否を決める仮説構築力/■仮説思考している人の口癖は「落としどころ」「うそでもいいから」
□前提条件を決めて前に進む
■前提条件を決めるとは課題を定義すること/■情報が足りなくても立ち止まらない
□限られた時間で答えを出す「タイムボックス」
■完璧主義を捨てる/■「ほうれんそう」をタイムボックスで考える/■プレゼンテーションのQ&Aもタイムボックス思考で
□仮説思考の留意事項
■はじめの仮説にこだわりすぎるべからず/■深掘りが甘くなるリスクに注意
■第5章のまとめ

第6章 「全体から考える」フレームワーク思考力
□フレームワーク思考力のポイント
□フレームワーク思考で「思考の癖を取り払う」
■すべての人には思考の癖がある/■個人が持つ相対座標と絶対座標/■座標系の具体例/■個人の相対座標とは「暗黙の思い込み」/■適切なコミュニケーションに不可欠な「座標系の一致」/■ホワイトボードで座標系を合わせる/■「プロ」とは「その道の絶対座標」を持つ人のこと
□全体を高所から俯瞰する
■全体俯瞰の威力/■全体は一つだが部分は無限/■「ズームイン」の視点移動で考えろ/■なぜ「話が長い」と感じるのか
□最適の切り口で切断する
■切り口の最適の選択は経験から決まる「アート」■フレームワークには「死角」が存在する
□分類とは「足し算の分解」
■「もれなくダブりなく」(MECE)が原則/■同レベルの「粒度」を合わせる/■狭義のフレームワークツールの活用/■KJ法の限界/■「箱を別に考える」のがフレームワーク思考/■「その他」を作ったり、安易に「改良」してはいけない
□因数分解とは「掛け算の分解」
■ビジネス指標分析への因数分解の応用/■業務プロセス分析も因数分解思考で
□全体最適をボトルネックから考える
■全体パフォーマンスはボトルネックで決まる
□フレームワーク思考の留意事項
■フレームワーク思考は「専制的」か?
■第6章のまとめ

第7章「単純に考える」抽象化思考力
□抽象化思考力のポイント
□抽象化とは「一を聞いて十を知ること」
■共通の性質から応用力を広げる/■抽象化思考のプロセスは「逆U字型」/■本質に迫るための抽象化/■抽象化レベルの違いに見る「改善」と「改革」の違い
□「モデル化」でシンプルに考える
■自然科学の標準アプローチ/■図解でモデル化力を鍛える/■枝葉を切り捨てる/■「牛を球とみなす」という発想/■知れば知るほど遅くなる?/■情報量が増えると本質が見えなくなる/■本質を理解すれば「三〇秒で」説明できる/■「三〇秒チェック」で頭の整理を
□アナロジーで考える
■「自分は特殊である」という思い込みを排除する/■抽象化能力の高い人はたとえ話がうまい/■たとえ話の効用の例/■「なぞかけ」は日本伝統のアナロジー能力開発ツール
□抽象化思考の留意事項
■抽象化と具体化をうまく組み合わせるべし/■「過度の一般化」にも注意すべし
■第7章のまとめ

第8章 地頭力のベース
□地頭力のベースの構造
■守りの「論理」と攻めの「直観」/■ビジネスは「アート」か「サイエンス」か
□「万人に理解される」ための論理思考力
□経験と訓練で鍛えられる直観力
□地頭力の一番のベースとなる知的好奇心
■知的好奇心にも二種類/■子供に学ぶ好奇心/■問題解決の達人に見る知的好奇心
■第8章のまとめ

第9章 さらに地頭力を鍛えるために

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2007/12/7)、出典:出版社HP

現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート―「6パターン、5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!

最高の思考トレーニング

内容は「フェルミ推定」というテーマの基本的なところを学ぶことを目的としたもので、比較的平易です。考え方も詳しく解説してあり、初学者にも読みやすく、頭の体操の読み物としても面白いです。「フェルミ推定」が面接で問われる職種への就職活動を検討されている方には一読の価値があります。

この作品は、2009年10月東洋経済新報社より刊行されました。
電子書籍化に際しては、2012年11月発行の第10刷に基づいて制作しています。また仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート
―「6パターン、5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!

はじめに

本書の目的・趣旨

本書はビジネスパーソンや学生、そして戦略コンサルティングファーム(以下、戦略コンサル)への就職を目指している就活生も含めた幅広い方々に対して、フェルミ推定の体系と解法ステップを提案する解説書であり、それに準拠した問題集でもあります。
本書の主要な目的は、就職活動面接におけるフェルミ推定のテクニックやノウハウを紹介することではありません。フェルミ推定の持つ論理的思考訓練ツールとしての奥深さを感じていただきたいというのがその根幹の趣旨です。
われわれ東大ケーススタディ研究会のメンバーは、戦略コンサル就活のために、フェルミ推定に関する本を片っ端から読み漁り、スターバックス(以下、スタバ)に集まって1日何時間もの議論を数カ月間繰り返してきました。
当初は面接対策が目的の活動でしたが、徐々にフェルミ推定はロジカルシンキング、仮説思考、モデル化、定量化など、広く「地頭力」を鍛える最高のトレーニングであることに気づき、その魅力・おもしろさにはまり込んでいきました。
われわれはこの経験をもとに、ぜひ多くの方々にこのようなフェルミ推定の魅力を伝えられればという思いから、今まで解いてきた1000問近くの問題を体系化し、その解法の類型化に着手しました。
その過程では幸運にも、われわれの声に賛同してくれた多くの戦略コンサル内定者の方々の協力を得ることもできました。
結果として、実際の面接のリアリティを伝え実践的対処法を解説するにとどまらず、フェルミ推定の本質である大胆かつ緻密な論理プロセスの構築方法を、遊び心を交えながら描き出すことができたと思っています。
また、昨今の地頭力ブームに乗って、「フェルミ推定」と冠した書籍は数多く出ていますが、問題数も限られており、その解法もやや単純にすぎるものが多い気がしています。
本書はその質・量において、他に類を見ない価値を読者の方々に提供でき、フェルミ推定を学ぶ上でのスタンダードとして多くの方に受け入れていただけるものと自負しています。その意味で、戦略コンサルへの就職を目指している学生の方々の面接対策としてお使いいただけるのはもちろん、職業・年齢を問わず「地頭力」を鍛えたいと思っているすべての方が楽しみながらフェルミ推定を解くための「水先案内人」となり得たのでは、と感じています。

本書の構成

「PART1」では、フェルミ推定の全類型を広く俯瞰した後に、具体的な問題を例にその解法プロセスを深く詳細に解説しています。
まず、「フェルミ推定の基本体系」において、フェルミ推定のジャンル別体系を提示しています。われわれが実際に解いてきた1000問近くのフェルミ推定の問題のほとんどがこの体系に収まることを考えると、かなり汎用性の高い体系になっているといえます。
この体系の意義は、ツリーによって分類される問題とその基本的な解法が1対1に対応していることにあります。つまり、出された問題が体系のツリーのどこに分類されるかさえわかれば、基本的な解法もわかるように作られているのです。
このフェルミ推定の体系こそが、本書におけるわれわれの最大の提供価値であるといっても過言ではないでしょ
さらに、「フェルミ推定の基本5ステップ」において、すべてのフェルミ推定に共通する基本的解法プロセスを、われわれの実際の面接経験に基づいて作成した対話形式で体感していただきます。ここはフェルミ推定の骨組みとなる部分ですので、しっかり読んで身につけていただければと思います。「PART2」では、基本体系に基づいた代表的な例題とその解答・解説、それに対応した練習問題を掲載しました。
「例題」はいきなり解答・解説に目を通すのではなく、少しだけでもいいので頭と手を使って考えてみてください。それによって解答・解説から得られるものも変わってきます。自信のある方は時間を測って解いてみるのも勉強になるでしょう。
自分なりの見通しが立ったら、解答・解説の論理展開を1つひとつたどって、かみしめてみてください。聞き手を説得するために必要な論理レベルを実感できるでしょう。ただし、答えを導くプロセスは文字通り無数に存在し、解答はあくまでも「例解」にすぎないため、自らのロジックを頼りに批判的に読み進めていただければと思います。
フェルミ推定においては、ロジックが通っていることがもっとも重要であり、最終的に計算された数字と現実との適合性はそこまで重視されません。しかし現実と比較することは、今後よりリアリティのあるロジックを組み上げるための反省材料になるのはたしかです。
そういったねらいから、多くの問題には実際の統計データが付してありますので、自分の出した数字と比べ、どこが現実とズレていたのかをたしかめてください。ロジック感覚と数的センスが磨かれてくるでしょう(ただし、「東京都に鳩は何羽いるか?」など統計データの探索がきわめて難しい問題に関しては、途中で置いた仮定の検証で代替したり、他の数値と比較することでその数値の実感を示すにとどまっていることもあります)。
例題を終えた方は、ぜひそれに続いた「練習問題」にチャレンジしてください。基本的解法は例題と同じですが、難易度は例題より高いものが多いです。解答・解説は巻末に載せてありますので、活用してください。例題と同様に、時間を測って解いてみるのもよいでしょう。
本書の問題をこなしていくうちに、徐々にフェルミ推定のリズムが体に染みついてくるのが実感できると思います。街を歩いているとき、「日本に郵便ポストはいくつあるか?」や「東京都内に捨てタバコは何本あるか?」といった問いが自然と頭に浮かび、脳が勝手に数の計算をはじめるようになればしめたものです。
フェルミ推定のロジックが脳内言語として完全にインストールされるまで、楽しみながら練習を繰り返してください。
なお、これらの問題は1人でこなしていくのも有効ですが、友人と時間を測って解き、ロールプレイング的に面接を実践したり、ディスカッションをしていくとさらにおもしろいでしょう。
友人のロジックに対して批判や検討を加えていくことで、さらなるロジックの高みが見えてきます。実際、われわれもスタバで大声を出しながら、世界中のゴキブリの数やトイレットペーパーの国内市場規模について、マニアックな(?)議論を数時間繰り返していました。周囲の人はさぞや不審感を抱いたことでしょう。1人でも多くの方に頭脳訓練ツールとしてのフェルミ推定の魅力を感じていただき、そのロジックの旋律を楽しんでいただければ幸いです。

目次

はじめに
PART1 1000問解いてみてわかった!フェルミ推定6つのパターンと5つのステップ
Chapter1フェルミ推定の基本体系
Chapter2フェルミ推定の基本5ステップ
コラム①フェルミ推定は実生活に役立つ!

PART2 6+1パターン15問のコア問題で、地頭を効率的に鍛える!
【個人・世帯ベースでストックを求める問題】
例題1日本にぬいぐるみはいくつあるか?難易度《A》
例題2、日本に自動車は何台あるか?難易度《B》
【法人ベースでストックを求める問題】
例題3日本にゴミ箱はいくつあるか?難易度《C》
【面積ベースでストックを求める問題】
例題4日本に郵便ポストはいくつあるか?難易度《A》
例題5日本にコンビニはいくつあるか?難易度《B》
例題6日本に宅配ピザの店舗はいくつあるか?難易度《B》
【ユニットベースでストックを求める問題】
例題7日本にスキー場はいくつあるか?難易度《C》
例題8日本にすべり台はいくつあるか?難易度《C》
【マクロ売上を求める問題】
例題9ぬいぐるみの市場規模は?難易度《B》
例題10新幹線の中のコーヒーの売上は?難易度《A》
例題11自動車の年間新車販売台数は?難易度《C》
【ミクロ売上を求める問題】
例題12スターバックスの売上は?難易度《A》
例題13カラオケの売上は?難易度《B》
例題14タクシー(1台)の1日の売上は?難易度《B》
【「マクロ需要・ミクロ供給」でストックを求める問題】
例題15日本に中華料理店はいくつあるか?難易度《C》
コラム2「フェルミバカ」によるフェルミ推定訓練法
おわりに

+15問でワンランク上の地頭を作る!【練習問題解答】
練習問題1日本にピアスはいくつあるか?難易度《A》
練習問題2日本に猫は何匹いるか?難易度《A》
練習問題3日本にコピー機は何台あるか?難易度《C》
練習問題4日本に電柱は何本あるか?難易度《A》
練習問題5日本にスターバックスの店舗はいくつあるか?難易度《B》
練習問題6日本に消防署はいくつあるか?難易度《B》
練習問題7世界遺産はいくつあるか?難易度《C》
練習問題8東京都に鳩は何引いるか?難易度《C》
練習問題9ピアスの市場規模は?難易度《B》
練習問題10割り箸の年間消費数は?難易度《B》
練習問題11マッサージチェアの市場規模は?難易度《B》
練習問題12丸の内のラーメン店の売上は?難易度《A》
練習問題13ゲームセンターの売上は?難易度《B》
練習問題14キヨスク1店舗の1日の売上は?難易度《B》
練習問題15日本に美容師は何人いるか?難易度《C》
フェルミ推定問題厳選100問
カバー・本文デザイン/dig

PART1
1000問解いてみてわかった!
フェルミ推定6つのパターンと5つのステップ

フェルミ推定とは
本書で紹介する「フェルミ推定」とは、「日本全国の牛の数」「長野県のそば屋の数」「胃腸薬の市場規模」など、「直感では見当のつかないような荒唐無稽な数量を、知っている知識だけをもとに、合理的な仮定とロジックを駆使して、短時間で概算する方法」を指します。封筒の裏などに短時間でちょこちょこっと計算するところから、Back of Envelope(封筒の裏)の計算などとも呼ばれます。
フェルミ推定は科学者の思考訓練ツールとして有効であると認められたことから、欧米の学校では理科系の教材として幅広く利用されています。中には、フェルミ推定の「科学オリンピック」のような大会まで存在しています。このようにして科学の世界における物理量の推定に端を発したフェルミ推定でしたが、科学者教育の教材だけでなく、後々にはコンサルティング会社や外資系企業での面接試験、そして今では一般のビジネスパーソン向けの教育ツールにも利用されるようになってきています。

Chapter1
フェルミ推定の基本体系
本書はフェルミ推定を解くことで、ロジカルシンキング、仮説思考、モデル化、定量化などの「思考プロセス」を習得していただくことを目的としています。ですが、いざフェルミ推定の問題を解こうとしても(たとえば「日本全国の電柱の数はいくつ?」と聞かれても)、「どこからとりかかっていいのかわからない」と感じる人が多いのではないでしょうか?そこで、本書ではフェルミ推定理論の骨組みとなる「基本体系」を示します。
この「基本体系」を頭に入れておくことで、「~の数はいくつ?」と突然だれか(たとえば面接官)に聞かれたとしても、「あ、体系の中のあそこにあった類型の問題だ!」とわかり、すぐに解決の糸口が見つかるはずです。フェルミ推定の「基本体系」は次の図のようなものになります。