【最新】睡眠について学ぶためのおすすめ本 – 良質な睡眠で人生を豊かに

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良質な睡眠で得られるメリットとは?

人生において、「睡眠時間」は約3分の1を占めています。私たちはその重要性を頭ではわかっていても疎かにしてしまいがちです。残りの3分の2の人生で最高のパフォーマンスを引き出すためにも、質の良い睡眠は必要不可欠です。ここでは、幸せで健康な生活を送るための睡眠について学ぶためにおすすめの本をご紹介します。

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出典:出版社HP

スタンフォード式 最高の睡眠

睡眠の悩みを全て解決

「世界最高」の呼び声高いスタンフォード大学の睡眠研究より、睡眠の質を高める重要性と具体的方法が書かれています。不規則な生活をしていると忘れがちですが、睡眠、食事を意識するだけで一日の過ごし方は劇的に変わります。本書の内容を実行したことで日中のパフォーマンスが上がります。

西野精治 (著)
出版社 : サンマーク出版 (2017/2/27)、出典:出版社HP

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プロローグ 「ぐっすり」を追求した究極のスタンフォード・メソッド

最高の睡眠を確保し、日中のパフォーマンスを最大化する。
スタンフォード大学で30年近く睡眠を研究して得た知見を軸に、「あなたの睡眠を、あなた史上最高にする」方法をお伝えするのが本書のねらいだ。

たとえば、「睡眠時間」。よく、「ノンレム睡眠とレム睡眠の周期は90分。なので90の倍数分眠ればいい」といわれているが、実は必ずしも「90分周期」とは限らない。
なので「90分の倍数」寝ても、目覚めが悪いケースはいくらでもある。
このような「睡眠の俗説」についても、最新の科学的検証を通して、正しい知識とメソッドを本書では提供していく。

「世界一の睡眠研究所」と称されるスタンフォード大学睡眠研究所、そして睡眠生体リズム研究所(Sleep and Circadian Neurobiology Lab:以下SCNラボ)で蓄積したエビデンスをもとに、より良く眠り、より生産的に日中を過ごす「スタンフォード式最高の睡眠」について、これから述べていきたいと思う。

世界一の睡眠研究所はスタンフォードにある

今、全米の睡眠クリニックの数は、2000とも3000ともいわれている。睡眠について関心が高く、多くの人が悩みを抱えている証拠だろう。不眠症とまでいかずとも、眠りについて「満足です」と言う人は少ない。忙しいビジネスパーソンなら誰しも、何らかの「睡眠トラブル」を抱えているのではないだろうか。
だが、眠りは決して現代だけの問題ではない。睡眠障害の歴史は古いものだ。たとえば、私の専門であるナルコレプシー(突然眠りに落ちてしまう病気)は一番典型的な過眠症だが、140年前のフランスの文献にすでに記載がある。
また、日本の睡眠障害についての記録ははるかに古く、平安時代の文献がある。「病草紙」というの病気が記載された絵巻物で、そこには「不眠症の女」と、やたらに眠りすぎる「嗜眠癖の男」が登場するのだ。
一方、睡眠医学の歴史はまだ新しい。「睡眠?ただの休息だろう」という位置づけで、長い間、研究者もほとんどいなかった。
転機となるのは1953年、レム睡眠の発見だった。「脳は起きていて体は寝ている」このレム睡眠という不思議な状態に、可能性を感じたのだろうか。アメリカの大学のなかで、いち早く睡眠医学に注目したのがスタンフォードである。
レム睡眠発見者の一人であり、私の師でもあるウィリアム・C・デメント教授などの優秀な人材が集められ、1963年に世界初の本格的な睡眠研究機関「スタンフォード睡眠研究所」が設立された。クリニックも併設された画期的なものだった。
1972年にデメント教授とクリスチャン・ギルミノー教授は、世界で初めて、睡眠障害の系統だった講義をおこなった。
1989年、初めて睡眠医学の教科書を作ったのもスタンフォード。私も1チャプター執筆している。現在も使われているが、新たな知見を得るたびに改定されて第6版となり、今や5センチもの厚みになっている。
デメント教授は1975年に睡眠学会を立ち上げ、学会誌『Sleep』を刊行するなど、大学の枠を超え、世界の睡眠研究において中心的な役割を果たしてきた。
1990年にはアメリカ議会の要請を受けて、睡眠障害の実態を調査。睡眠障害はさまざまな病気につながり、産業事故を含めて700億ドルもの損失になるという試算を出した。これが睡眠の重要性と、睡眠障害の危険を広く知らしめることになり、アメリカ国立睡眠研究所の設立につながったのである。
かようにスタンフォードは、睡眠医学の発達に大きく貢献してきた。
その後、睡眠医学の研究は多様化してきている。
今ではハーバード大学の睡眠プログラムもすばらしいし、ウィスコンシン大学の睡眠医学・睡眠研究所も、ピッツバーグ大学の不眠症研究も目を見張るものがある。また、基礎研究では、フランスのリヨン大学やカリフォルニア大学ロサンゼルス校の貢献も大きい。
だが、身びいきを差し引いて、いまだに睡眠研究の総本山がスタンフォードというのは事実だ。
なぜなら、ハーバードをはじめ、今、世界で活躍する睡眠研究者のほとんどは、短期でも長期でもスタンフォードに籍を置いた経験があるからだ。
「世界の睡眠研究は、スタンフォードから始まった」
こう述べても、決して過言ではない。

「たくさん寝る」はベストな眠りか

スタンフォードと睡眠医学について説明したところで、ひとつ質問をしたい。「最高の睡眠」とは、具体的にはどういう眠りを指すのだろうか?
量よりも質が大切―。食事でも、モノでも、仕事でも、「量より質」という認識は、もはやグローバルスタンダードといえるだろう。
・大盛りや食べ放題よりも、味が良く、体にいいものを、少なめに食べたい。
・たくさんのモノを持つより、質のいいものを厳選してシンプルに暮らしたい。
・果てしなく残業し、休日返上で働くよりも、短時間、集中して効率良く働きたい。
私たちにとってはどれも当たり前すぎるほど当たり前のことだが、なぜか睡眠については、いまだ「当たり前」ではないようだ。
つまり、「日中眠たい」「頭がぼーっとする」「朝起きるのがつらい」といった睡眠ストレスを抱えている人の多くは、「もっと眠らなければ」と、量の確保を意識してしまうのだ。
しかし、忙しい日常を送る現代人にとって、「今以上」の量の確保は現実的とはいえない。毎晩日付が変わる前にベッドに入り、朝も自然に目が覚めるまで夢の中、そんなことが許される人はそうそういない。仕事、家事、育児、趣味など、大量にある「やるべきこと」と「やりたいこと」のはざまで、ただでさえ時間が足りないのに、睡眠時間だけたっぷりとるというのは無理な話だ。
「忙しければ睡眠を削る」というのは、悲しいことだが、やむをえないのではないだろうか。
また、仮に時間がありあまるほどあって、ベッドで好きなだけ過ごせるとしても、「眠れない」「寝ても疲れがとれない」など睡眠にまつわる問題がたくさん出てくる。
さらに、睡眠時間が長すぎるとかえって体に悪いというエビデンスも出てきている。
結論からいってしまおう。
睡眠にまつわる悩みもストレスも、「量の確保」では解決しない。
たくさん眠ったところで、最高の睡眠は得られないのだ。

「最強の覚醒」をつくる睡眠、「最高の睡眠」をつくる覚醒

「最高の睡眠=量ではない」
「眠りについての悩み=量では解決しない」
それでは改めて、最高の睡眠とは何だろう?
答えは、「脳・体・精神」を最高のコンディションに整える、「究極的に質が高まった睡眠」となる。
睡眠と覚醒(パフォーマンス)はセットになっている。
脳・精神・体のコンディションを整える質の良い睡眠をとれば、仕事でも勉強でもパフォーマンスの高い一日が送れるし、単に量を求めてだらだら眠ったら、調子が崩れてしまう。
また、日中調子が良く、成果を出すような活動をすれば、その分脳も心も体もハードに使うため、一日を終えたら効果的なメンテナンスとなる睡眠が必要だ。
眠っている間に、私たちの脳や体では、さまざまな営みがおこなわれている。朝、起きたときにベストな状態になるよう、睡眠中の脳と体の中では、自律神経や脳内化学物質、そしてホルモンが休みなく働いているのだ。
眠っている間の脳と体の働きをベストなものにして「睡眠の質」を徹底的に高め、最強の覚醒をつくり出す。これこそが、本書でいう「最高の睡眠」である。

スタンフォードで見つけた「睡眠の法則」

「睡眠の質」は「覚醒の質」に直結する。
スタンフォードの学生や研究者、ビジネスパーソン、私がアドバイザーとして協力しているプロアスリートを見ても、成果を出す人はみな、睡眠の質を大切にしている。
では実際のところ、どうすれば質のいい睡眠がとれるのだろうか?
その鍵が、本書でお伝えする「90分の黄金法則」だ。
レム・ノンレムの周期にかかわらず、睡眠の質は、眠り始めの90分で決まる。「最初の5分」さえ質が良ければ、残りの睡眠も比例して良質になるのだ。逆に最初の睡眠でつまずいてしまうと、どれだけ長く寝ても自律神経は乱れ、日中の活動を支えるホルモンの分泌にも狂いが生じる。
どんなに忙しくて時間がなくても、「最初の90分」をしっかり深く眠ることができれば、最高の睡眠がとれるといっていい。
私は1987年に渡米し、スタンフォード睡眠研究所に所属した。そして2005年にその主たる基礎研究機関であるSCNラボの所長に就任して以来、睡眠に関する疑問を解くため、方法にとらわれずにあらゆることを日夜研究してきた。
患者を対象とした臨床実験、睡眠障害のメカニズムを解明し、新しい薬剤を開発するための動物実験、ボランティア被験者の協力を得た睡眠生理の実験、新たな睡眠計測装置の開発…など、「睡眠の謎」を解明するためにさまざまなことに取り組んできた。
「睡眠の謎を解き明かして社会に還元する」を大指針に、今日まで「眠り」ととことん向き合ってきたつもりだ。
私は睡眠の専門家だが、本書は小難しい専門書ではない。むしろ実用性と即効性を重視し、目を閉じている間のあなたに役立つことを、わかりやすくまとめていくつもりだ。
ただひとつ約束しておきたいのは、根拠なき話は書かないということ。
古典の引用を超え、最新科学で初めてわかったことや、スタンフォードの最先端の知見を、できる限り平易に日本のみなさんにお伝えしたい。
これも、SCNラボ所長であり、日本人である私の役割だと考えている。

眠りが「最強の味方」になる人、「最恐の敵」になる人

これから「眠りを巡る旅」が始まるわけだが、その流れは次のとおり。
本書は「0章」と題した章からスタートする。ここでは睡眠時間と睡眠の質について詳しく掘り下げ、あなたが知らないであろう、眠りに関する新事実を解き明かす。
この新事実は、最高の睡眠を得るうえで欠かせない。「固定概念を見つめ直し、ゼロベースでもう一度睡眠に向き合う」との思いから、「0章」とした。そして1章は、良質な眠りの土台となる「睡眠基礎知識」について。眠れる「夢」の不思議についても、この章でご案内したい。
2章では、「なぜ3分で勝負が分かれるのか」を、データをひもときながら検証していく。
3章では、いよいよ最高の5分を得るためのメソッドが登場する。キーワードは3つ、「体温」と「脳」と「スイッチ」。
朝起きてから夜寝るまでの行動を少しアレンジして「眠りの質を高める」習慣術を書いたのが4章。
最後となる5章で、目先の問題である「眠気」との賢い闘い方をお伝えする。
「睡眠とは最強の味方であり、敵に回すと最悪な恐ろしい相手」
これは私が長年にわたる研究を通じて得た実感である。1日24時間のうち、大きな部分を占める睡眠を味方にできるか敵に回すかで、人生は大きく変わる―膨大な数の「睡眠の悩み」と向き合う中で、幾度となくそう思い知らされてきた。また、研究すればするほど痛感させられる。
仕事を含めた日中のパフォーマンスは、睡眠にかかっている。
夜な夜な訪れる人生の3分の1の時間が、残りの3分の2も決めるのだ。
睡眠と3年以上対峙する中で経験したこと、学んだこと、そして突き止めたことを、エッセンスを取りこぼさぬよう、この一冊に凝縮した。本書を通じて、睡眠があなたの「最強の味方」になってくれることを、心から強く願っている。

スタンフォード大学医学部精神科教授
SCNラボ所長 西野精治

西野精治 (著)
出版社 : サンマーク出版 (2017/2/27)、出典:出版社HP

目次

プロローグ 「ぐっすり」を追求した究極のスタンフォード・メソッド
■世界一の重眠研究所はスタンフォードにある
■「たくさん寝る」はベストな眠りか
■「最強の覚醒」をつくる睡眠、「最高の睡眠」をつくる覚醒
■スタンフォードで見つけた「睡眠の法則」
■眠りが「最強の味方」になる人、「最恐の敵」になる人

0章 「よく寝る」だけでパフォーマンスは上がらない
知らぬ間にはまる「眠りの借金地獄」
■「眠りの借金」は借りていなくてもたまる
■飲酒運転より危険な「脳の居眠り」
■世界」「睡眠偏差値」が低い国・日本
「理想の睡眠時間」は遺伝子で決まる
■2か月眠らない動物がいた!
■人は眠らないとどうなる?
■ナポレオンの子はナポレオン?「ショートスリーパー」は遺伝だった!
■「寝だめしたい」は脳からのSOSサイン
■「眠りの借金」が寿命を縮める
■眠らない女性はどんどん太る
■バスケットボール選手のシュートカはなぜ劇的に上がったのか
「たっぷりの睡眠」でも脳は不満足
■「眠りの返済」は難しい
■週末の寝だめは効果があるのか?
「黄金の90分」で最高の脳と体をつくり上げる
■世界のエグゼクティブは始めている「睡眠メンテナンス」
■「最初の90分」を深くせよ!
■寝始めがつくる「最強ホルモン」
■「Better than nothing」

1章 なぜ人は「人生の3分の1」も眠るのか
世界のエグゼクティブが大事にする「眠りの共通点」
■トップアスリートほど「眠りへのこだわり」が強かった!
■「睡眠ジャンク」から脱出するには
■知識が脳に眠りをもたらす睡眠に課せられた「5つのミッション」
■真夜中、脳と体では何が起きているのか?
■睡眠ミッション①脳と体に「休息」を与える
■睡眠ミッション②「記憶」を整理して定着させる
■睡眠ミッション③「ホルモンバランス」を調整する
■睡眠ミッション④「免疫力」を上げて病気を遠ざける
■睡眠ミッション⑤「脳の老廃物」をとる
■「寝る前の目薬」で目は良くなる?
睡眠の終着駅「夢」の不思議
■夢はたくさん見たほうが良かった!
■「見たい夢」は見られるのか?眠りの質が「覚醒レベル」をこう決める
■「睡眠不満足者」はこんなに損している!
■あなたの「眠りの質」はどうすればわかる?
■「致死率40%」なのに身近な睡眠障害
■いびきは「歯の悲鳴」?
■世界的研究者を変えた「蓮眠力革命」

2章 夜に秘められた「黄金の30分」の法則
「8時間寝たのに眠い人」と「6時間寝てすっきりした人」
■なぜ「ウォッカを飲むオペラ歌手」は歌がうまいのか?
■目を閉じるとやってくる「スリープサイクル」
■レムとノンレムは90分周期じゃなかった?
最初の90分が「黄金」になる3大メリット
■メリット①寝ているだけで「自律神経」が整う
■メリット②「グロースホルモン」が分泌する
■メリット③「脳のコンディション」が良くなる
少数精鋭の「睡眠部隊」を味方につける
■「どうしても資料を作らないと……」な夜の過ごし方
■なぜ年をとると眠れないのか?「体温」と「脳」に眠りスイッチがある
■こうすれば、すぐに・ぐっすり眠れる!
■赤ん坊も知っている「体温のスイッチ」
■頭が睡眠モードに切り替わる「脳のスイッチ」

3章 スタンフォード式最高の睡眠法
体温と脳が「最高の睡眠」を生む
■「よく眠れる人」と「眠れない人」の差はわずか2分
■なぜメジャーリーグは「体温」に注目するのか
■「会議室での遭難者」
■体温は「上げて・下げて・縮める」
睡眠クオリティを上げる3つの「体温スイッチ」
■体温スイッチ①就寝5分前の入浴
■すぐ寝るときは「シャワー」がベスト
■〇〇風呂ならさらに効果アップ?
■体温スイッチ②足湯に秘められた驚異の「熱放散力」
■靴下を履くと眠気が逃げる?
■体温スイッチ③体温効果を上げる「室温コンディショニング」
■「そば殻枕」で頭を冷やせ!
入眠をパターン化する「脳のスイッチ」
■枕が変わったネズミは眠れない?
■「眠りの天才」は頭を使わない
■脳のスイッチ①「モノトナス」の法則
■「脳の関所」はこう突破せよ!
■脳のスイッチ②正しい羊の数え方
■逆スイッチ「貧乏揺すり」をすると眠れない?
脳にも「寝たくない」ときがある?
■そもそも、なぜ、人は眠くなるのか
■スタンフォードの睡眠実験「1日がもし90分だったら?」

西野精治 (著)
出版社 : サンマーク出版 (2017/2/27)、出典:出版社HP

最強の睡眠 世界の最新論文と 450年企業経営者による実践でついにわかった

最高の体調を取り戻す

全てを取り入れるのはなかなか困難ですが睡眠に限らず、日常生活を向上させるヒントがたくさん載っています。この本には忙しい日々の中だとしても、どれほど睡眠を充実させることが重要なのかが書かれていて、自分の意識次第で改善出来ることがこんなにあったんだ!と学べます。

西川ユカコ (著), 坂木浩子(ぽるか) (イラスト)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/4/4)、出典:出版社HP

はじめに

「寝付きが悪く、なかなか眠れない」
「夜中に目が覚めてしまう」
「よく寝たはずなのに、翌朝スッキリしない」
「ちゃんと寝ても、日中眠たくなる」
「そもそも、睡眠時間が確保できない」
働き盛りのビジネスパーソンが訴える、睡眠に関する悩みの典型例です。
このように、多くの人がうまく眠れないことで慢性的な疲れを溜ため込んでおり、本来の能力やパフォーマンスを十分に発揮できていない現状があります。そんな人たちに、「最高の体調」を提供するのが本書の目的です。
私自身もそうですが、現代のビジネスパーソンは多忙すぎます。いくら働き方改革が推進
されても仕事量そのものは変わらないし、むしろ同僚が産休や介護休暇をとるタイミングが重なったり、何らかの事情で欠員が出ても補充されないなどもあり、かえって仕事量が増えている人もいるでしょう。
また、会社を離れても食事づくりなどの家事、人によってはそれに加えて育児など、個人的に取り組まなければならない課題が山積みなのが実情です。それに、もちろん自分のための時間だって欲しいですよね。それはよくわかります。
問題は、多くのビジネスパーソンが「だから、仕方ない」と諦め、よりよい体のコンディ
ション、より高いパフォーマンスを手にするチャンスを放棄していることです。
そのチャンスについて、カギを握っているのは、間違いなく「睡眠」です。

私は毎朝、皆さんと同じように混み合った電車に揺られ、自宅から会社まで通勤しています。そこでは、朝から「どんよりモード」のビジネスパーソンをたくさん目にします。
彼らを目にした私には、一瞬で「この人、眠り方を間違っている」とわかります。さらには、間違いを正そうという意識が薄そうだということも。
今や日本の成人の5人に1人は不眠症状を抱えています。さまざまな睡眠の不調を訴える
声もあちこちで耳にしますが、本気で改善に取り組んでいる人はごく少数と言わざるを得ません。おそらく、「やってみたけれど効果がなかった」「そもそも、どうしていいかわからない」というのが本音でしょう。
そして向き合いたくない事実ではありますが、35歳ごろから睡眠の質は急激に下がります。何の工夫もしないままでは、いつも「何となく不調」でも、当然なのです。
そうした事実を無視して「仕事が忙しいから睡眠についてはどうしても後回しになってしまう」などと言っていたら、疲れを溜めるのは当たり前ですし、ましてやいいパフォーマン
スが期待できるはずがありません。

本書は、睡眠について真正面から取り組み、あなたのパフォーマンスを根底からアップすることを目的としています。限られた時間の中で、いかに高いパフォーマンスを発揮して過ごすかということは、ビジネスの結果はもちろん、私たちの人生の質そのものを左右する大問題です。

ではなぜ、医学者でも科学者でもない私に、そのためのアドバイスができるのか。それを
説明するために、ここで自己紹介をさせてください。
私は、昭和西川という老舗寝具メーカーの創業家に生まれました。ルーツを辿ると約45
0年前の室町時代にまで遡ります。ただし、次女であったために最初から後継者としては目
されず、将来は結婚して実家を離れることを前提に育てられました。
実際に、大学卒業後は出版社の雑誌編集者として、寝具メーカーの娘とは思えぬような、睡眠不足極まりない生活を送っていました。

10年ほどそんな日々を送った後、私は昭和西川の一社員になりました。長く勤めてくれていた社員が辞めてしまい、その穴を埋める必要が出てきたのです。
数年後、企画部門に異動になり、会社のメインブランドのリブランディング(ブランド再構築)を担当することになりました。私は、編集者としての経験がその仕事に活かせるはずだと踏んでいました。ところが、広告宣伝費をかけすぎて、創業以来最悪の収支をはじき出すという大失敗をやらかしてしまったのです。
会長である父は大激怒。私は企画部門から、まったく門外漢の管理部門に異動になりました。管理部門が非常に重要な業務を担っていることは理解していましたが、私には経験のな
い不得手な分野です。活躍などしようもなく、「干された」も同然でした。父は、自分の娘だからと手心を加えてくれるような甘い経営者ではありませんでした。
もともと、創業家の娘がいきなり入ってきて、一般社員からすると扱いにくい部分があったはずです。そこにもってきてこの人事で、私は完全に浮いた存在になりました。誰も話しかけてこず、毎日一人で大量の出入金伝票のチェックを行うだけの日々。しかも、その仕事たるや「初心者マーク」もいいところのふがいないものです。
誰からも必要とされない透明の存在にでもなったかのような無用感と孤独感に苛まれ、私
は、それまで好きだったお酒、甘いお菓子やコーヒーを毎日大量に摂取するようになりまし
た。それは3年間にも及び、体を壊し手術もしました。

そしていつもどこかに不調を抱え、精神的にも追い詰められていた私が、唯一、夢中になって取り組めたのが睡眠に関する実践的研究でした。寝具メーカーの社員として必要とされるレベルの知識は当時から持っていましたので、それを片っ端から検証していったのです。
たとえば、医学者や科学者が論文に寄せているような内容や出版されている本の内容について、それまでは「専門家が研究した結果なのだから正しいのだろう」という捉え方をしていたのですが、私はこれを機に自らの体で試していきました。そこには、自分の不調を治したいという思いもありました。と同時に、私は、なんとか元気になって仕事でリベンジしたいと考えていたのです。
出合った全ての「快眠法」を試し、さらには「快眠できない」とされていることにもあえて挑戦してみました。
すると、効果があることとないことがわかり、まさに玉石混交の「玉」を拾えるようになりました。そして、石を捨てて玉をくり返しているうちに、私の体調はすっかり上向き、精神的にも驚くほど強くなっていったのです。
それだけでなく、小さなことにはこだわらなくなり、あれほど中毒状態にあったお酒、お
菓子、コーヒーともすっぱり縁が切れました。
このことは、私に睡眠のプロとしての自信を与えてくれ、本当に効果の高かったことだけをお客様に発信したいと思うようになりました。
また、まるで生まれ変わったかのような私のパフォーマンスは、誰の目から見ても劇的に向上したらしく、再び会社の主力商品のリブランディングも含めた大きな仕事を任されるようになりました。そして今は、代表取締役副社長という責任ある立場にいます。

私は医学者でも科学者でもありませんが、睡眠で「元気になりたい」「不調を治したい」という睡眠の求道者としては日本一だと自負しています。それだけ、トライもエラーもしてきたからです。自分で自分の不調を治した専門家として、睡眠に悩む人たちの気持ちや状況をよりリアルに想像し、最適な解決策としての「玉」だけを提案できるのは、あの苦しい3年間があったからだと確信しています。

本書で私は、ふだんは「睡眠講師」として招かれたセミナーなどで伝えているノウハウの全てを公開します。
柱は大きく二つあります。
一つは、これまであまりにも不足してきた睡眠時間を取り返すこと。いわゆる睡眠負債を返済していくことです。これがまず喫緊の課題です。
もう一つは、睡眠の質を上げること。「うまく眠れない」状態を脱し、自分の睡眠を自分でハンドリングできるようになってもらうことです。そのためには、体内時計を整え、セロトニン(睡眠ホルモンであるメラトニンのもと)という脳内物質の分泌を増やす必要があります。
そのために、私が試した中で一番簡単、かつ効果的な方法をお伝えしますが、それを習慣にしていけるかどうかはあなた次第。もし、あなたが日々の疲労感や不調を根本から解決し、これまでで一番のパフォーマンスを実現したいと本気で望んでいるなら大丈夫です。次に進んでください。
毎日の積み重ねは絶対に裏切りません。
本書で「何をやればいいか」がわかったら、あとはポイントカードにスタンプを押していくように、快眠のための生活習慣を溜めていくのみです。
どうか、面白がって続けてください。必ず、あなたは「快眠体質」に変われます。
そして気が付いたら、驚くほど体調がよくなり、「パフォーマンスの高いあなた」に変貌していることでしょう。

西川ユカコ (著), 坂木浩子(ぽるか) (イラスト)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/4/4)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに

第1章 眠れない人が知っておきたい「睡眠の原理・原則」

1 どこでも眠れる人こそ、実は危険! 「睡眠負債」の怖い現実
2 慢性的な睡眠不足で脳が「ほろ酔い」状態になる
3 睡眠不足はあなたを太らせる
4 短時間睡眠で肌はくすみ、姿勢も悪くなる
5 「週末に寝溜め」が、時差ボケを引き起こす
6 睡眠の質を上げる第一歩は「体内時計を整えること」
7 「最後は「よく寝る」人が勝利する
8 35歳を過ぎると、睡眠の質が低下する
9 「疲れ知らずの体」と「セロトニン」との深い関わり

COLUMN1 睡眠はビジネスを成功に近付けるセーフティネット

第2章 俗説にダマされるな! 「睡眠の新常識」

1 「ミュンヘンクロノタイプ」で、最適な睡眠時間がわかる
2 ショートスリーパーは、たったの0・5%しかいない
3 「眠り始めの3時間」はゴールデンタイム
4 「睡眠」こそ、ストレスをなくす最強の方法
5 「寝付くために酒を飲む」と睡眠の質が下がる
6 「夜の頻尿」は、体内時計が狂っている証拠?
7 働きながら睡眠負債を返済する「三つの解決策」
8 「逆算法」で、睡眠時間を確保する
COLUMN2 睡眠を考えることは、人生を考えること

第3章 「朝の過ごし方」で午前中のパフォーマンスが劇的にアップする

1 夜の睡眠の質は「その日の朝」に決まっている
2 「日光不足」が睡眠をダメにしている
3 「目覚めたら窓辺に直行」が毎朝のルーティン
4 「朝食」が、一日のパフォーマンスを左右する
5 忙しい朝でも、簡単につくれて栄養が摂れる「時短メニュー」
6 朝ご飯は「日光浴できる場所」で摂るのがベスト
7 「通勤時間」は、セロトニンを分泌させる絶好のチャンス
8 「5分ガムをかむ」だけでも、セロトニン効果が得られる
9 「呼吸」を変えれば、自力でセロトニンをつくり出せる
COLUMN3 セロトニンが出ている合図の見分け方

第4章 夕方まで高いパフォーマンスを持続させる「日中の過ごし方」

1 ランチも仕事の一環。「3パターン」を戦略的に摂るべし
2 パフォーマンスを上げるなら、「15〜20分の昼寝」を
3 工夫すれば「歩くだけ」でも、セロトニンはつくられる
4 “プチ瞑想”で、不安や緊張を和らげる
5 カフェインを飲むなら「14時」がタイムリミット
6 お菓子を食べたくなったときこそ「ホエイプロテイン」
7 「ホエイプロテイン」で、気軽にタンパク質補給
8 免疫力を上げる「ビタミンD」は、日光浴とサプリで補充
9 「1時間に1回の小休憩」が疲れを遠ざける
10 「自然音」を流すだけで、疲労対策になる
COLUMN4 「デジタルデトックス」で、質のいい睡眠を手に入れる

第5章 疲れを翌日に持ち越さない「夜時間」の過ごし方
1 夜は照明を暗くしないと、日中の努力がムダになる
2 夕食を「就寝の2時間前までに終える」には?
3 「飲み会で睡眠時間を減らす」のはナンセンス
4 「38℃のお湯に15分浸かる」と、眠気が起こりやすくなる
5 「すごく疲れた日」は、ためらわずに30分早く寝る
6 「夜の団らん」で、その日を幸せな気分で終える
7 寝る前に「ワニのポーズ」で全身をほぐす
8 ベッドに入っても眠れないときの「とっておきの方法」
COLUMN5 寝る前の「ブルーライト」は、快眠を奪う天敵

第6章 翌日のパフォーマンスに直結! 「快眠」のための環境づくり

1 快眠を呼ぶ「温度・湿度の設定ポイント」
2 リラックス効果のある「香り」も快眠の味方
3 「深く眠れるパジャマ」の黄金ルールとは?
4 睡眠の質を左右する「マットレス」選び三つのポイント
5 枕選びは「素材」 「高さ」 「幅」がポイント
6 快眠に欠かせない「羽毛布団」の選び方とメンテナンス
7 羽毛布団は「季節ごとに使い分ける」のが正解
8 湯たんぽや電気毛布は「寝る前」まで
COLUMN6 パートナーとは「別寝」がベスト

おわりに
参考文献

付錄

西川ユカコ (著), 坂木浩子(ぽるか) (イラスト)
出版社 : SBクリエイティブ (2020/4/4)、出典:出版社HP

誰でも簡単に疲れない体が手に入る 濃縮睡眠®メソッド

いかに速く熟睡できるか

学者さんが書いた睡眠本とは一線を画す、実践的なアドバイスの数々。何も買い足す必要もなく、家にあるものだけで、今日から実践できるものばかりです。難しい言葉がなくて、とても読みやすい本ですのでサクサク読めてあっという間に読了できます。

松本美栄 (著)
出版社 : かんき出版 (2019/9/19)、出典:出版社HP

はじめに

「仕事が忙しくて、十分な睡眠時間がとれない」
「寝つきが悪い。眠りも浅い気がする」
「寝不足で、いつも頭がぼんやりしている。最近は集中力も落ちたと感じる」
「寝ても疲れがとれない。いつも体が重い」
「休日は、平日の寝不足を取り戻すように昼過ぎまで寝てしまう」

この本を手にとったあなたは、きっと眠りについての悩みを抱えていらっしゃるのだと思います。
現代社会では、睡眠について悩んでいる人がたくさんいます。
というより、「理想的な睡眠をとれていない」という意味では、現代人のほとんどが悩んでいると言ったほうがいいのかもしれません。
数年前には、「睡眠負債」という言葉が新語・流行語大賞でトップテン入りしました。睡眠不足が蓄積すると、心身に深刻なダメージを与えるというのです。
こうした言葉が一般的になったことも、眠りに悩む人がいかに多いかを物語っているようです。

「忙しい毎日、かぎられた時間のなかで、よりよく眠りたい」

これは、現代人にとって切実な願いです。
もちろん、眠れさえすれば、それでいいというわけではないでしょう。
よく眠ることによって、体調を改善したい。元気になりたい。活力にあふれた生活を送りたい。
もっと楽しく、笑顔で仕事をしたい。仕事の生産性を上げたい。エネルギッシュなビジネスパーソンになりたい……。
私たちがよりよい眠りを求めるのは、よりよい人生を生きたいからこそ。
そんな願いを持って、本書を手にとられた方も多いはずです。
この本は、そんなあなたの望みを実現するための、「濃縮睡眠」メソッドを提案するものです。

午前2時就寝、午前5時起床の「濃縮睡眠」生活

私は現在、東京・南青山で、「プロスパービューティー」という睡眠改善と姿勢美矯正のサロンを開いています。
もともとは骨盤などを整えてボディラインを美しくする骨格矯正がメインでしたが、近年ではビジネスパーソンを中心とするお客様の睡眠改善のお手伝いで、メディアに取り上げていただくことが増え、これまで延べ5000人の睡眠改善にかかわってきました。
そんな私自身が、どんな「睡眠生活」を送っているかというと……、

就寝するのは、だいたい午前2時ごろ。
起きるのは、4時半〜5時半の間。

つまり、3時間前後の睡眠時間です。
休日に寝だめしているわけではありません。毎日3時間睡眠の生活を、かれこれ4年ほど続けています。
3時間しか眠らなくても、朝はぱっちりと目覚めます。
日中も眠くなることはなく、接客や施術にフル回転。それだけでなく、企業の睡眠改善セミナーや講演会で講師をさせていただいたり、今回のように本を執筆させていただいたりと、新しい仕事にもどんどんチャレンジしています。
こんなふうに、忙しく働いてはいるのですが、朝と夜には十分な自由時間があるので、仕事の後に映画を2本観たりすることもよくあります。

3時間睡眠で、毎日元気に生活していると言うと、驚かれるかもしれません。
にわかには信じられないという方もいるでしょう。もしかすると、「もともと体質的にショートスリーパーなのでは?」と思われるかもしれません。
ところが、そうではないのです。
こんなライフスタイルが可能なのは、私が、本書でお伝えする「濃縮睡眠」メソッドで短時間に深く眠っているからこそなのです。

眠りを変えることは、人生を変えること

かつての私の睡眠は、今とはまったく違うものでした。
ショートスリーパーなんてとんでもない。できれば8時間、許されるなら10時間でも寝ていたいタイプで、朝起きるのはとにかく苦手でした。
とはいえ、美容関係の仕事をしていましたから、労働時間はどうしても長くなりがち。とくに、独立してサロンを開いてからは自分で何もかもやらなければいけませんでしたから、8時間もの睡眠時間なんて、どうやっても確保できません。
毎朝眠くて眠くて、起き出すだけでもひと苦労でした。しかも、二度寝の常習犯でもあったので、起きるのがギリギリになって、バタバタと身支度をして出勤。毎朝遅刻寸前状態でした。日中もどこかぼんやりしていて、集中力が続かない。
休みの日になると、平日の睡眠不足を穴埋めするように、12時間以上眠ることもありました。14時間眠っていたことだってあります。
それで疲れがとれればいいのですが、かえって体はだるいし、頭も重い。「あーあ、また貴重な休みを無駄にしちゃった」と後悔ばかりが残る……。
そんな生活でしたが、美容と健康にかかわる仕事をしていますから、疲れた顔でお客様に接するわけにはいきません。眠い目をこすりながら、なんとか気力を振り絞って仕事に取り組むという日々でした。
こういう話をすると、読者のみなさんにも「あるある」と頷いてもらえると思います。そう、かつての私はよくある睡眠の悩みでいっぱい。しかも、そんな生活を続けているうちに、とうとう体調を崩してしまいました。
これはなんとかしなくてはいけない。
本気で睡眠を改善したい。そう思って周囲を見てみると、忙しい毎日、短い睡眠時間でもエネルギッシュに働いている人はいます。
眠り方を変えることで、自分も変われるはず。そんな思いで脳科学や生理学、解剖学、行動学などの勉強をはじめ、生活を改善するなかで生まれたのが「濃縮睡眠」メソッドです。
こうして、睡眠を根本から改善した結果、現在の私は3時間睡眠で元気に仕事をすることができています。もともとは自分のために考え、実践していた「よりよく眠る」ための方法を使って、現在の私は睡眠改善のお手伝いをさせていただいています。さらにこうして、本書でみなさんに「濃縮睡眠」のメソッドをお伝えすることにもなったわけです。

といっても、この本では、いきなり「今夜から睡眠時間を3時間にしましょう」といったことを提案するわけではありません。
「とにかく睡眠時間を短くすること」が目的ではないのです。
この本では、かぎられた時間のなかで睡眠の質を高めるための、現実的なメソッドを提案していきたいと思います。
もちろん、睡眠の質が高まった結果、睡眠時間は短くなるでしょう。私のように3時間睡眠になる人もいるでしょうし、4時間半~5時間睡眠になる人もいるでしょう。
いずれにしても、睡眠の質が上がれば、集中力が上がり、仕事のパフォーマンスは劇的に向上します。仕事がはやくなれば、自由に使える時間も増えるはずです。
活力がみなぎり、プライベートも充実します。新しい趣味をはじめたり、新しい仕事にチャレンジしたりすることもできるかもしれません。
実際、「濃縮睡眠」を学び、実践したクライアントのみなさんは、高い確率で新しいことをはじめています。
「前から興味のあったゴルフをはじめました」「本をたくさん読むようになりました」「朝の時間を使って執筆し、本を出しました」といった声をよく聞きますし、まったく異業種に転職したり、なかには、海外に飛び出し新しい仕事をはじめた人もいます。
睡眠の質を高めることは、体調やメンタルの改善、仕事のパフォーマンスアップにつながります。ひいては、人生を変えるくらいの大きな意味があるのです。

「濃縮睡眠」で眠りの質はこれだけ変わる

ここで、そもそも「濃縮睡眠」とはなんなのか、そのコンセプトを簡単に紹介しておきましょう。
まず、定義から言うと、

「濃縮睡眠」とは、入眠から30分以内に、最も深いレベルの”ノンレム睡眠状態”に入って、
一定時間深い眠りの状態を維持できる睡眠である。

専門用語も入って、少しわかりにくいかもしれません。
わかりやすく言うと、次のようになります。

ベッドに入ってすぐに深い睡眠に入れて、その深い睡眠が持続する。
その結果、より短い時間で深い睡眠がしっかりとれるメソッド。

一般的に、人が深い眠りに到達するまでには約90分かかると言われています。
「濃縮睡眠」では、その3倍の速さ、つまり30分以内に深い眠りにつくことができるようになります。
短時間で深く眠る結果、長くダラダラと眠るよりもむしろ体がラクになり、頭の働きもよくなり、パフォーマンスがアップする。だから元気で充実した生活ができるようになる。これを目指すのが「濃縮睡眠」です。
ここでポイントとなるのが、”深い睡眠”です。
「眠り足りないな」と感じている人というのは、そもそも深い睡眠を十分にとれていません。
詳しくは本編で説明しますが、現代人の生活は深い眠りを妨げる原因でいっぱいです。浅い眠りでは、どれだけ長く眠っても疲れはとれないままです。
また、深い睡眠をとれている人でも、眠りが深くなるのに時間がかかってしまえば、全体としての睡眠時間は長くなってしまいます。
いい睡眠をとるために必要なのは、時間ではなく、「質」なのです。
最近では、睡眠の深さはスマホのアプリなどで簡単に計測することができます。
ここで挙げているのは、睡眠の深さを「スリープサイクル」というアプリで計測したグラフです。
まず、次の図は、私のクライアントであるAさんが、睡眠改善に取り組む前のグラフです。
ひと目でわかるように、就寝してから起きるまで、全体的に睡眠が浅いままで推移しています。「ほとんど眠れていない」と言っても過言ではありません。

次に、次ページの図。これは、私自身の睡眠グラフです。Aさんのグラフとの違いは、一目瞭然だと思います。

就寝直後、いっきに最も深い睡眠にたどり着いています。しかも、深い睡眠が持続して、ちょうど台形を逆さにしたようなグラフになっています。
ちなみに、入眠してから30分以内に最も深いレベルの眠りまで達し、それを持続することができれば、それは質の高い睡眠だと言うことができます。
私の場合は、入眠から8~10分ほどで最も深い眠りに入ることができます。それを表しているのが、グラフの最初に現れている急降下です。
この2つのグラフを見た人は、たいてい「えっ、こんなに違うの!」と驚かれます。
繰り返しますが、以前は私も、いい睡眠がとれず、悩んでいました。Aさんと同じように、なかなか深い睡眠に入ることができなかったからこそ、長く寝てしまうし、また長く寝ても疲れがとれなかったのです。
それが今では、あっという間に深く眠ることができるようになりました。
そして、Aさんの睡眠も、「濃縮睡眠」を学び、実践することで大きく変わりました。次の図は、睡眠改善後のAさんの睡眠グラフです。

このように、「濃縮睡眠」は、誰にでも実践できるメソッドなのです。
しかも、そのために難しいこと、特別なことをする必要はありません。
具体的な方法はこの本のなかで詳しく紹介していきますが、たとえば、ちょっとしたマッサージやストレッチ、タオル1枚でできる快適な枕づくりといった、簡単で現実的な生活改善を積み重ねることで、理想的な睡眠は実現できます。
ですから、本書を読みながら、「あ、これならできそう」ということがあったら、さっそく試してみてください。できそうなことを無理なく実践しながら読み進めていただけたら、と思っています。

「もっと気分よく、元気に毎日を過ごしたい」
「新しいことに挑戦したい」
「忙しいけれど、もっと自由な時間がほしい」

睡眠の質を高めることは、そんな願いを叶え、人生をもっと充実させる第一歩になります。
人生を変える「濃縮睡眠」メソッドを、この本で気軽に、楽しく学んで実践していただければ幸いです。

2019年9月 睡眠セラピスト 松本美栄

「濃縮睡眠」メソッドとは?

「濃縮睡眠」とは?
入眠から30分以内に、最も深いレベルの”ノンレム睡眠状態”に入って、一定時間深い眠りを維持できる睡眠。

「濃縮睡眠」メソッドの3要素
「濃縮睡眠」メソッドは、次の3つを行うことによって、よりはやく深い睡眠に入り、それを持続できるようにするメソッドです。

1 脳疲労を取り除く
脳疲労とは、文字通り、脳の疲れのこと。脳が疲れると、自律神経の機能が低下し、深く眠ることができません。
脳疲労の大きな原因は、「眼精疲労」と「過度なストレス」です。これらを取り除くことが「濃縮睡眠」の大きなポイントになります。

本書では、眼精疲労を解消するマッサージや、ストレスを解消するノウハウを使って脳疲労を取り除きます。

2 血液の循環をよくする
筋肉が緩むと血の巡りがよくなり、副交感神経が優位になります。適度に緩んで、ほぐれた体は、はやく、深く眠れる体でもあります。血液の循環は「眠れる体」をつくるために大事な役割があるのです。

本書では、血流を改善する簡単なストレッチなどを紹介します。

3 睡眠環境を整える
睡眠の質と、環境(寝室の状態には、大きな関連があります。
たとえば、ベッドの下などにホコリが溜まっていると呼吸が浅くなり深く眠れません。また、寝具や寝室の温度、香りなど、ちょっとしたことを見直すだけで、睡眠の質はグッと上がります。

本書では、快適な睡眠環境をつくるための、さまざまな方法を紹介します。

松本美栄 (著)
出版社 : かんき出版 (2019/9/19)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに

第1章 睡眠に対する意識を改革しよう

「いつ寝ているの?」と言われる成功者たち
「8時間睡眠」はどこまで正しいのか?
「ゴールデンタイム」「シンデレラタイム」の誤解
「睡眠負債」という言葉がストレスを増やしている
「濃縮睡眠」メソッドは、短時間睡眠が目的ではない

第2章 「短時間で完全に疲れをとる”熟睡脳”のつくり方

疲れがとれないのは、体ではなく脳が疲れているから
脳疲労が溜まると頭が大きく重くなる
脳のコリが劇的にほぐれる頭蓋マッサージ
眼精疲労は脳の疲れ
目を温めて血流を改善する
眼精疲労に効くツボマッサージ
“不安を書き出す”。これだけで熟睡できるようになる
不安をアウトプットしたら、願望もアウトプットする
仕事の合間に1分でできる!脳疲労をとる瞑想法
「感謝」には脳波を整える効果がある
口角を上げて脳疲労を改善する
眠りの質を高める”528ヘルツの音”とは?

第3章 「30分以内に深い眠りにつく眠れる体のつくり方

血流を改善するだけで”眠れる体”は簡単につくれる
猫背は眠りを浅くする
まずは椅子に座ったままでできる肩回しから
タオル1枚でできる肩甲骨まわりのストレッチ
バスタオルでつくる柔らかいストレッチポール
姿勢が変わればメンタルも変わる
わずか6回のスクワットで血流は改善できる

第4章 眠りの効率を最大化する睡眠環境の整え方

寝室は”眠るための場所”と再認識する
ベッドをソファ代わりにする人はなかなか眠れない
寝室を雑巾がけするだけで眠りは驚くほど深くなる
“すのこベッド”こそ、最高のベッドである

「寝具の値段」と「睡眠の質」が比例しない理由
睡眠効率を最大化する温度と湿度
体に負担をかけない最高の枕は自分でつくれる
寝室にふさわしい香りとは?

第5章 睡眠の”質”を劇的に上げる11の習慣

睡眠を変えるのは”ちょっとした習慣”の積み重ね
習慣1 休みの日も同じ時刻に起きる
習慣2 体内時計を整える朝の行動
習慣3 起きたらコップ1杯の水を飲む
習慣4 たった15分のパワーナップ(昼仮眠)が午後のパフォーマンスを格段に上げる
習慣5 深い眠りにつながる通勤時のちょっとした運動
習慣6 栄養に気を配り、抗酸化の食事を選ぶ
習慣7 お酒を飲むときは同量のチェイサーを
習慣8 夕食時に糖質を摂りすぎない
習慣9 入浴は布団に入る90分前に
習慣10 腸のコンディションを整える
習慣11 深夜のパソコン、スマホ作業を読書に変える

巻末付録 「濃縮睡眠」を実践・継続するために

「濃縮睡眠」は1日にして成らず
リバウンド防止のために睡眠の深さを計測し続ける
朝に予定を入れる
“二度寝の罠”を逃れる手段を複数用意する
朝のルーチンを決める
「毎日早起きに成功しなくても大丈夫」と考える

おわりに

装幀・本文デザイン 小口翔平+岩永香穂(tobufune)
図版作成 株式会社RUHIA
イラスト 田渕正敏
編集協力 川端隆人

松本美栄 (著)
出版社 : かんき出版 (2019/9/19)、出典:出版社HP

睡眠こそ最強の解決策である

睡眠こそが万能薬

一冊で睡眠についての全体像を理解することができます。本書は「睡眠時間を確保しないといかに危ないか」と、睡眠の量にフォーカスが当てられています。そういった面からもモチベーションがつけられます。睡眠に興味がある人はもちろん、睡眠に興味がない人にも面白い本ですので、おすすめです。

マシュー・ウォーカー (著), Matthew Walker (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/5/19)、出典:出版社HP

私に書くきっかけを与えてくれたダッチャー・ケルトナーへ

目次

Part1 眠りとは何か?

第1章「眠り」という謎
——最先端科学が明かす睡眠の真実
睡眠不足は先進国の流行病だ
すべては睡眠で最適化される
睡眠は心身の健康を保つ最強の薬
世界最先端の睡眠の科学

第2章 睡眠リズムをとり戻す
——カフェイン、時差ボケ、メラトニンの影響
すべての生物に体内時計が備わっている——人間にもオジギソウにも
人間の体内リズムはきっちり24時間ではなくだいたい24時間
脳が体内時計をリセットする
なぜ朝型人間と夜型人間がいるのか?
「吸血鬼ホルモン」メラトニン
時差ボケの恐ろしい真実——睡眠リズムとタイムゾーンの移動
午後のコーヒーが夜の睡眠を奪う——カフェインと睡眠圧
いつ眠くなるのか、いつ目が覚めるのか——睡眠と覚醒
徹夜すると脳はどうなる? ——アデノシンと概日リズム
あなたの睡眠は足りているのか?

第3章 レム睡眠とノンレム睡眠
——なぜ眠りは時間を奪うのか、夢は時間を引き延ばすのか
そもそも寝ているとはどんな状態か——睡眠を定義する
レム睡眠とは何か? ノンレム睡眠とは何か?
なぜ深い眠りと浅い眠りがあるのか——睡眠サイクルの謎
2つの睡眠で記憶スペースの容量不足を解消する
脳はどのように眠りを生み出しているか
深い眠りの間、脳は何をしているか
ノンレム睡眠で情報を整理し、レム睡眠で情報を統合する
夢を見ているとき、身体はマヒ状態になる

第4章 ヒトは眠りで進化した
——脳の半分しか眠らないイルカ、長時間眠らない渡り鳥
眠らない動物などいない
私たちは夢を見るように進化した
レム睡眠とノンレム睡眠、どちらが重要か?
イルカの脳は半分ずつしか眠らない
アメリカ政府が眠らない渡り鳥を研究する理由
人間の正しい眠り方とはどういうものか?
昼寝をやめたら死亡リスクが37%上昇した
人間の睡眠はあらゆる動物の中で特別
レム睡眠こそ最大のギフトだ

第5章 年齢と睡眠
——なぜ若者は朝寝坊し、老人は早起きするのか
生まれる前の睡眠
自閉症スペクトラムとレム睡眠
アルコールがお腹の赤ちゃんのレム睡眠を奪う
なぜ子どもはなかなか寝てくれないのか
成長期に睡眠の質が激しく変化する
思春期の心はなぜ不安定なのか?
思春期とうつとノンレム睡眠
思春期の夜更かし、朝寝坊は当然のこと
中年期から老年期の睡眠と寿命
なぜ年をとると朝が早くなるのか
加齢によるもの忘れと睡眠の関係
高齢者ほど睡眠を必要としている

Part2 なぜ眠りが重要なのか?

第6章 記憶力と睡眠
——シェイクスピアは眠りの効果をすでに知っていた
眠りが記憶のスペースをつくる
なぜ睡眠で記憶力が高まるのか?
よく寝たほうがテストの成績がいい
記憶力をさらに高める方法
覚えたいことだけ記憶する方法
人は忘れるためにも眠りを使う
一晩寝たらなぜかできるようになっている
睡眠は運動スキルを高める
NBL、NFL…アスリートが睡眠の効果を続々証明

第7章 睡眠不足と脳
——ギネスも認める眠らないことの恐ろしさ
睡眠不足は真っ先に集中力を奪う
睡眠不足のときは睡眠不足に気づかない
なぜ先進国では自動車事故が多発するのか
居眠り運転による悲しい事故
昼寝に効果はあるのか?
6時間以下の睡眠で本来のパフォーマンスができる人はゼロに等しい
睡眠不足と感情のコントロール
子どもの自殺、いじめ、ドラッグ依存と睡眠の関係
睡眠不足でひどくなるうつ、軽くなるうつ
徹夜は成績を下げる
学習したその日に寝ないと記憶は脳に定着しない
睡眠不足の人は、アルツハイマー病になりやすいか
睡眠が脳を掃除する

第8章 睡眠不足が寿命を縮める
——ガン、心臓発作、そして早すぎる死
睡眠不足と心血管疾患
睡眠不足が食欲を増し、代謝を低下させる
睡眠不足と糖尿病
睡眠不足と肥満
睡眠が不足するとジャンクなものが食べたくなる
睡眠はダイエットの強い味方
睡眠不足と生殖機能
睡眠不足とインフルエンザ
睡眠不足とガン
睡眠不足と遺伝子、そしてDNA

PART3 なぜ夢を見るのか?

第9章 レム睡眠の異常な世界
——夢の中の感情と理性
夢を見ているときの脳の中
どんな夢を見たかわかってしまう
夢にはどんな意味があるのか
夢は何に左右されるのか

第10章 夢は傷ついた心を癒す
——セラピーとしての夢
夢は心の傷薬
どんな夢がトラウマを癒すのか
PTSDと夢セラピー
レム睡眠が洞察力を養う

第11章 夢と創造と問題解決
——夢が創造力を生み、問題を解決する
夢は創造性が生まれる場所
レム睡眠のあいまいなロジック
夢の中で記憶が溶け合う
暗号解読と問題解決
機能は形に従う——夢の中身が問題だ
明晰夢——自分の夢をコントロールする

Part4 睡眠とどう向き合うべきか?

第12章 睡眠障害と眠らないことによる死
——どのくらい眠ればいいのか
夢遊病
不眠症
ナルコレプシー
致死性家族性不眠症
睡眠不足と栄養不足
本当に必要な睡眠時間は6時間? 7時間? 8時間?
9時間睡眠は寝すぎなのか?

第13章 あなたを眠らせない犯人は誰か
——スマホ、目覚まし、アルコール
現代の明かりのダークサイド
アルコールは眠りを妨げる
夜は涼しく——理想的な寝室の温度は18・3度
目覚まし時計の功罪

第14章 眠りを妨げるもの、眠りを助けるもの
——睡眠薬と自然療法
本当にその薬は必要なのか?
睡眠薬は百害あって一利なし
薬に頼らない不眠治療
誰もがよりよい眠りを獲得できる方法

第15章 睡眠のために社会は何をすべきか?
——医療と学校の誤謬、グーグルとNASAの英断
睡眠不足はいくら損失を与えるか
睡眠不足はなぜ損失を与えるのか
睡眠時間が増えると収入が増える
睡眠を奪うのは拷問である
始業時間を遅らせたら、成績が上がった
子どもの非行を減らし、死亡率を下げる方法
子どもの睡眠不足とADHD
なぜ研修医は睡眠を削るようになったか
睡眠不足の医師と医療事故
チェルノブイリ原発事故の原因

第16章 21世紀の新しい睡眠
——もっと充実した睡眠ライフのために
テクノロジーを最大限に利用する
少しずつ習慣を変える
教育システムを変える
組織を変える
睡眠を主軸にすれば、医療改革できる
睡眠は国家レベルでとり組むべき課題

おわりに——眠るべきか、眠らざるべきか
謝辞
付録——健やかな眠りのための12のアドバイス

マシュー・ウォーカー (著), Matthew Walker (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/5/19)、出典:出版社HP

Sleep,Sleep,Sleep

睡眠の質を上げて、生活の質を上げる

科学者が「今、知っていること」すべてまとめたスウェーデン発の睡眠本です。・科学者はなぜ、揃って「絶対寝るべき」というのか?・眠らないとどうなるのか?・どうすれば「眠りの質」が上がるのか?等、睡眠について学べます。

クリスティアン・ベネディクト (著), ミンナ・トゥーンベリエル (著), 鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)
出版社 : サンマーク出版 (2020/12/8)、出典:出版社HP

ヨーハン・ハンソン(1964〜2018)に捧げる

はじめに

睡眠研究者が「今、知っていること」すべてをまとめた

おそらく、誰もが気づいているだろう。ここ数十年、健康ブームの大波が押し寄せていることに。
いつの間にか、「10キロのレースに参加するだけでは物足りない、フルマラソンでなければ」などと耳にするようになった。
数年前に流行ったのは健康ジュースだ。およそ考えつくかぎりの果物と野菜が、これでもかとジューサーに詰め込まれ、もしくはミキサーにかけられスムージーに姿を変えた。

そしてついに、睡眠に順番が回ってきた。
仕事で深夜までコンピュータの前で過ごすこと、明け方までパーティを楽しむことがかっこいいとされた時代は、どうやら終焉を迎えたようだ。
声を大にして言いたい。じつにいい傾向だ!
なぜなら睡眠こそが、私たちに健やかで活力に満ちた生活をプレゼントしてくれる最良の友だから。スポーツと健康的な食事も大切だが、安定した睡眠・覚醒リズム、それに睡眠を通じた休息に注意を払うことは、健康な生活への最初の、そして重要な一歩なのだ。

本書の狙いは、私たちが睡眠について知りうるすべての興味深い新事実を、読者のあなたと共有することにある。執筆に取り組んでいる間にも、世界中で、睡眠に関する新たな研究が数多く発表された。
睡眠学は、日進月歩の研究分野であり、関与する研究者の数も増えつづけている。たとえば、人間の体内時計の仕組みを解明して2017年にノーベル生理学・医学賞を受賞した3人のアメリカ人研究者、ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤングもそうだ。彼らの研究によって、私たちの睡眠・覚醒リズムを制御するメカニズムが突き止められたのだ。

「健康」 「知能」 「感情」をコントロールしている

よい睡眠には、すばらしいメリットがある。
健康や朗らかな気持ちにつながるのみならず、2型糖尿病や肥満、認知症、うつ病などの病気の予防効果をもつ。
睡眠は賢さにも影響する。十分な睡眠をとっている人は、記憶力や集中力、創造的思考力が向上するため、学校や仕事で高い成果を出すことができる。
日中にどれだけ時間を費やしても解決できなかった問題の答えを、寝ている間に思いつくこともある。「大事なことは一晩寝かせたほうがいい」とは、よく言ったものである。
さらに付け加えるなら、質のよい睡眠をとったあとは、自分自身や他者の感情をよりよく理解し、整理分類できるようになる。感情移入スキルや共感力が高まるのだ。

毎晩無料で「とんでもない効果」が手に入る

だが睡眠の最も優れている点は、「無料」ということにつきる。時間さえ不要だ。というのも、余分にとった睡眠は翌日、高いパフォーマンスという形で1000倍になって返ってくるからだ。
しかも、睡眠の改善は簡単に始められる。高級フィットネスクラブも、モルディブのリゾートホテルも必要ない。夜、心地よい自分のベッドにもぐり、目を閉じて、夢の国を訪れるだけで十分だ。

本書を通して、あなたに睡眠に対する前向きな考えをお伝えできれば幸いだ。
睡眠は、けっして負担や恐怖心を感じるような類のものではなく、贈り物なのだととらえてほしい。
とくに、睡眠障害に悩んでいる場合は、つらい夜であっても多少なりともリラックスした時間を過ごせるよう、ポジティブな姿勢を保つことが大切だ。

睡眠に「影響しないこと」は何ひとつない

もうひとつ理解しておくべきことがある。
それは、私たちの体にとって睡眠とは、ベッドの中でまどろんでいる時間だけを指すのではなく、じつは24時間労働なのだという点だ。
睡眠の準備は、朝、目を覚まし、網膜に太陽の光を受け、体内時計に1日が始まるというシ
グナルが発せられたそのときから始まっている。それは、私たちの睡眠・覚醒リズムが、日光や屋外の気温から強い影響を受けるからだ。
その一方で、いつ食事を摂取し、水分を補給し、どの時間帯に運動をするかということも重要な役割を果たす。
つまり、「朝のうちに日光を浴び、明るい間にスポーツをし、夕食は少量にとどめ、スマー
トフォンはできるだけ手に取らない」というように、起きている間の睡眠衛生(睡眠に影響を与える生活習慣や行動)に気をつけることで、夜ぐっすりと眠れるようになるはずだ。睡眠はいわば、覚醒時の行動を映し出す鏡なのである。

奥深く、エキサイティングな睡眠の世界へようこそ。あなたが私たちと同じぐらいこの世界に魅了されたなら、このうえない喜びだ。

ウプサラ大学 睡眠学研究者 クリスティアン・ベネディクト
ジャーナリスト・作家 ミンナ・トゥーンベリエル

クリスティアン・ベネディクト (著), ミンナ・トゥーンベリエル (著), 鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)
出版社 : サンマーク出版 (2020/12/8)、出典:出版社HP

目次

はじめに
睡眠研究者が「今、知っていること」すべてをまとめた

「健康」「知能」「感情」をコントロールしている
毎晩無料で「とんでもない効果」が手に入る
睡眠に「影響しないこと」は何ひとつない

第1部 科学者がそろって「絶対寝るべき」と言う理由
自覚できないが「すごいこと」が起きている

1章 眠らないとどうなる?
研究者が知っている「睡眠の正体」
自分のことなのに「思い通り」にならない時間
起きているかぎり「刺激」を受けつづける
脳の「ゴミ」は寝てきれいになる
あらゆる部位が「再生」する
7〜9時間眠る人は「有病率」が最も低い
自分に必要な「睡眠時間」をテストする
睡眠不足は「遺伝子」に影響が出る
寝不足は「一晩」でも代償があまりに大きい
「生産性」「感情」すべてめちゃくちゃになる
「450億ドル」分の損をしている

2章 睡眠には「4ステージ」がある
浅い眠り・深い眠り、どちらも必要

第1ステージ——覚醒から睡眠にシフトする
■「眠り始め」に体がビクッとする
第2ステージ——「睡眠紡錘波」が出る貴重な時間
■このとき「運動能力」が伸びる
■睡眠紡錘波が「外の世界」を遮断する
■「Kコンプレックス」で眠りが続く
第3ステージ——石のように眠り、最も「回復」する
■「ストレスホルモン」が減り、「成長ホルモン」が増える
■ここで起きれば「酩酊」状態に
■神経細胞の「つながり」が整理される
「食べる炭水化物」で眠りが変わる
「座りすぎ」は睡眠に確実に影響する
「睡眠負債」は覚醒時間が長いほど溜まる
第4ステージ——外見で「夢を見ているかどうか」わかる
■記憶が「ランダム」に脳に刻まれる
■その日「経験したこと」で夢が構成される
夜中に何度も「覚醒」している

3章 私たちを支配する「体内時計」
この「タイムライン」でぐっすり眠れる

「起きるか眠るか」を自分で決めていない
目は「朝」 「夕」光に敏感になる
体が目覚めるのは「太陽の光」
遅い就寝時間は「電球の発明」によるもの
「天気」によって日光を浴びるべき時間が変わる
「昼光色」照明で日光と同等の効果を得る
「寝室」の温度を下げて眠る
「酸素」がたくさんあったほうがよく眠れる
手足が温まって「睡眠に合った体温」になる
食事は「7〜19時」の間にすませる
「食べたもの」は眠りに影響する
■「玉ねぎ」は腸でガスを発生させ、睡眠の邪魔に
■パターやチーズの「飽和脂肪酸」は入眠を妨げる
■「牛乳」でスムーズに眠れる
■「サワーチェリー」は入眠効果のある果物
「カフェイン」は体内時計を遅れさせる物質
「朝コーヒー」で肝臓のリズムが整う
「持久スポーツ」をする時間で朝型になったり夜型になったりする
人間の体は「1日2回」眠るようにできている
昼寝は「15分以内」ならプラスになる
「目を閉じる」だけですごい効果がある
「早朝からベスト」な人はほんの一部
「光」を手放す
テストは「受ける時間」でスコアが変わる
人間は「朝型→夜型→朝型」の順で成長する
「時差ぼけ」で体内時計がカオスになる
「東への旅」は西よりきつい
薬局の「メラトニン」は眠り薬ではない
「週末」に体内時計が時差ぼけ並みにくるう
ティーンは「平均4時間」週末にリズムがずれる
体内時計は「季節の変わり目」に調節が必要
夏と冬で「起床時間」が違った
睡眠は「起きている時間にしたこと」でできている
体内時計を「自分」で調節する方法

4章 「デジタル革命」で人間は熟睡を失った
「人工の光」が睡眠を破壊する

電子書籍と紙の本で「読後の眠り」が違う
「夏」はブルーライトの影響が少なくなる
寝る2時間前に「スクリーン」をオフにする
「SNS」が強力なストレス源になる
一日に触れる情報量が「脳のキャパ」を超えている

第2部 睡眠の「すごい効果」を全部受け取る
コンディションとパフォーマンスが最大化する唯一無二の時間

5章 眠って「賢者」になる
正しい眠りは頭をよくする

睡眠中に脳に「空きスペース」ができる
カルシウムが「シナプス」を強化する
「何度もやったこと」を脳は優先して覚える
「感情」は記憶を確かにする
「生存に重要」と脳がジャッジする
浅い眠りが「運動能力」強化に欠かせない
「香り」と記憶が寝ている間にドッキングする
「睡眠学習」は復習なら可能
たくさん寝て「長期記憶」に保存する
「ストレス」+「寝不足」で記憶力は最悪になる
女子は睡眠不足で「成績」が悪化しやすい
眠って「左脳」と「右脳」の連携をよくする
「交通事故」と睡眠時間の確かな関係
寝不足は「アルコール」を飲んだのと同じ
「メンタル」が整って適切な判断ができる
快眠だと「衝動的」になりにくい
「ADHD患者」はなかなか寝ない

6章 夢が「創造性」を開花させる
アイデアは夜、ビッグになる

支離滅裂な夢に「大事な役割」がある
「レム睡眠」が元素周期も蒸気機関も生んだ
「昼寝」は創造性に無関係
幼児は夢で「世の中」を理解する

7章 眠って「感情」を整える
「ストレス」はレム睡眠で処理される
徹夜で「扁桃体」がフル回転する
夢を早く見ると「不安」が解消されにくい
「光」はメンタルに作用する
抗うつ剤」はレム睡眠を減らし、夢を見られなくする
「ファーストナイト・エフェクト」で熟睡できない
「馴染みある寝具」に勝るものはない
クモ恐怖症の人が「クモ」を怖がらなくなった
眠れないのは「思い込み」のことが多い
「横になる」だけで効果がある
「眠れない」ときにできること

8章 「認知症」を予防する睡眠
寝不足は「脳細胞」にこんなに危ない

一晩寝不足で「脳老廃物」が5%増える
「プラーク」ができ、脳細胞が壊死する
本来と違う時間に「活性酸素」が出まくる
「頭を強打したときに出る分子」の濃度が上がる
加齢で脳波が「変なとき」に出る
「いびき」はサインかもしれない

第3部 いい睡眠は「最良の薬」
ゼロリスクで「完璧な体」に生まれ変わる

9章 眠って「スリム」になる
「体型」は目を閉じている間に決まる

人間の体は「出す」より「溜める」性質がある
夕食は「熱」になりにくい
「代謝」は日中ピークになる
寝不足で「食事のサイズ」が大きくなる
7時間未満睡眠では「甘いもの」に抗えない
ホルモン分泌が「あべこべ」になる
「食欲抑制ホルモン」の出が一日中悪くなる
「善悪の判断」がつかなくなる
睡眠時間で「身体組成」が変わる
「腸内細菌」は夜、休まないといけない
睡眠時間は「外見」に出る
「クマ」は目の下に溜まった体液

10章 「免疫」を強くする
「風邪予防」から「がん予防」の効果まで
睡眠不足で「感染症」にかかりやすい
「細胞」がウイルスと戦う
寝不足だと「細菌」を追えない
「予防接種の効き目」はその日の睡眠時間で決まる
「ナチュラルキラー細胞」は眠って活発になる
「メラトニン」ががんの成長を食い止める
「化学療法」の効果が高まる
「シフト勤務者」はがんリスクが高くなる
がんに「寝る前の食事時間」が関係していた
「歳」をとったらこう眠ってほしい
「部屋」は暗くして眠る

11章 「糖が溜まらない体」に睡眠が不可欠
「糖尿病」を予防する効果がわかった

「食生活の問題」とは言い切れない
「昼夜逆転」で2型糖尿病リスクが上昇
体は寝足りないと「血糖値」が上がるつくりになっている
あまりに「よくないこと」が起きる——合併症に筋肉分解

12章 強靭な心臓
眠って「最重要臓器」を強くする

睡眠中「心臓のタンパク質」が入れ替わっている
睡眠時無呼吸症候群——30秒息を止めるようなもの
「舌」がのどの気道を狭める
無呼吸にはいくつか「兆候」がある
適切な「治療」を検討する
「仰向け寝」はよくない―ボールで「寝る姿勢」を変える
「夜中の食事」で心臓回復が進まない
「こんな人」はメラトニンの投与を考えて

あとがき
巻末付録 日本語版によせて 「日付変更線」をまたぐ時差ぼけの対処法
参考文献

クリスティアン・ベネディクト (著), ミンナ・トゥーンベリエル (著), 鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)
出版社 : サンマーク出版 (2020/12/8)、出典:出版社HP