プラスチック問題を知る4冊

廃プラスチックや廃プラスチック、企業のプラスチック製のストリー廃止など多くの言葉をこれまで聞くようになりました。プラスチックをめぐって今、何かが起きているのでしょうか。

もちろん人間の生活においてプラスチック製品は大変役に立っていますが、現代社会の代表的な大量生産・利用において憂慮すべきは、地上で消費・廃棄されたプラスチックが河川を経て海洋に流出し、環境を汚染していることです。特にそれらが細かく砕けたマイクロプラスチックは多くの生態系に深刻なダメージを与えています。

今回は、プラスチック問題で何が起きているかを知る手がかりとなり、解決案を掲示している4冊をご紹介します。

プラスチック・フリー生活今すぐできる小さな革命

シャンタル・プラモンドン (著), ジェイ・シンハ (著), 服部 雄一郎 (翻訳)
NHK出版 (2019/5/25)、出典:出版社HP

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本書は、プラスチックをできるだけ利用しない生活を送るためのガイドブックと言えます。プラスチック・フリーと聞けば、不可能だと感じます。もちろんそれは、現代社会に暮らす私たちにはできないものです。しかし、著者は不可能ではあるものの、目指す価値のあるゴールだ、重要なのは、その目標に向かって生活を変える努力であると言います。

本書では、そのプラスチック・フリー生活を目指すきっかけとして、プラスチックの有毒性を主張し、避けるべきプラスチックの種類を表にしてまとめています。プラスチックの製品の添加剤が化学結合していないために、食品などに流れ出すとして、事細かに注意点を挙げ、解説を行っています。そして、プラスチックの代替品も紹介し、それらの成分の安全性や、注意点も記し、身の回りにあるプラスチックをどのように把握していくかを説明しています。

さらに、実践編として、実際にプラスチック製品を減らすにはどうすれば良いかをさらに具体的に解説しています。キッチンでの調理器具や保存容器、お風呂場での石鹸やシャンプー、化粧品や歯磨き粉などを容器や成分からどう選択していくか、方針を明示しており、プラスチック・フリーのための取り組みがしやすくなっています。その他にも、寝室や庭にあるもの、掃除・洗濯用品、文房具などの日用品と身の回りにある製品もリストアップしており、徹底的に取り組みたい人にとって役立つ内容です。

プラスチック汚染とは何か (岩波ブックレット)

枝廣 淳子 (著)
岩波書店 (2019/6/6)、出典:出版社HP

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プラスチックは安価で便利な素材として、大量に生産、消費されてきましたが、同時に捨てられてもきました。特にプラスチックの海洋汚染は21世紀最悪の環境問題の一つと言われ、私たちの健康や産業・経済にも大きく関わっています。身の回りでも、魚からプラスチックの破片が出てきたり、人体にも汚染が入り込んでいる可能性も報告されています。

しかし、汚染の影響がどのくらいあるのか全体像ははっきりとはわかっていません。その一方で、世界的なプラスチックへの取り組みも急速に進んでおり、政府や自治体、企業などが積極的に対策に取り組む姿勢を見せています。本書では、前半では、プラスチックの歴史と性質、利用状況や現状をまとめています。

海洋プラスチック汚染の実態とその汚染が引き起こす問題についても取り上げ、プラスチックごみを減らすための取り組みについても紹介しています。さらに筆者は、プラスチックごみの問題について、四つの基本的枠組みを示し、プラスチックごみの回収から供給源まで全体的に問題を捉え直し、実例を挙げ、プラスチックごみの問題の解決策を検討しています。国際的な問題であるプラスチックごみの問題における日本の課題についても最後の章で検討しています。

日本では、環境問題として捉えられがちなプラスチックの問題を、欧州のように産業政策として考え、出口対策だけでなくごみが出ない仕組みを如何にして作り出すか、包括的に計画すべきだとしています。

海を脅かすプレスチック 漂うレジ袋は氷山の一角 (ナショナル ジオグラフィック日本版 2018年6月号)

ナショナル ジオグラフィック (編集)
日経ナショナルジオグラフィック社 (2018/5/30)、出典:出版社HP

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プラスチックは第二次世界大戦後の世界を大きく変え、経済発展に貢献しました。軽く、丈夫で、安価な製品で、現在では、至る所に使われています。身の回りでもペットボトルやレジ袋などの容器、雑貨など、現代の生活では、触れない日がないほど幅広く普及をしています。

しかし、近年になり、プラスチックごみの海洋投棄が生物の生態系に多大な影響を与えています。プラスチックは分解されず、生物が誤飲をするケースや、プラスチックのゴミが体に絡まり身動きができなくなり死に至るケースがあります。さらに、プラスチックが小さな粒子、「マイクロプラスチック」として砕かれた状態で、生物の中に取り込まれていることを示す研究結果が発表され、人体への影響は不明ですが、その可能性に言及する意見も出ています。

本書は、プラスチックごみの海洋投棄の問題提起を、写真を用いて行っています。プラスチックの適切な処理が行われれば、環境への負荷は小さいものになりますが、現状は、多くのプラスチックが、プラスチックごみとして、そのまま投棄される実態があります。プラスチックごみを減らす取り組みは、先進国を中心として、徐々に広がり始めていますが、プラスチックの生産は増加の一途をたどり、プラスチックごみが生まれやすい環境が、今後もある程度、継続することは避けられません。この環境問題を解決するには、企業や政府の対策に加えて、個人の取り組みも必要となるでしょう。

地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの

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化学の発達により、人類はこれまで、数多くの化学物質を生み出してきました。過去には、ダイオキシンやフロン、環境ホルモンなど環境問題となった事例もありますが、また新たに化学物質による問題は起きているのでしょうか。

実は、化学物質が遠く離れた地域の生物から高濃度で検出される事態が起こっているのです。つまり、大気の循環により、かつての公害病のような局地的問題に留まらず、国際的な問題となっているのです。しかし、有用な化学物質は、現代社会にとっては欠かせないものです。もちろん、化学物質の効用は素晴らしいものですが、注意すべき化学物質も存在します。本書では、 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』で有名なDDTを含むPoPs(残留性有機汚染物質)やダイオキシン、プラスチックや重金属の環境問題について取り上げ、その化学物質の問題点や環境への影響の大きさを指摘しています。

最近よく取り上げられる、マイクロプラスチックも、下水道から多くの割合は取り除かれるものの、100%の除去ができておらず、日本でも、排出されている現状が説明されており、身近な問題であることが実感できます。また、PM2.5の問題も解説されており、環境問題が多国間の関係する複雑な問題となっている状況などについても説明しています。また、化学物質は人体にどのような影響を与えるのか、についてもまとめられており、化学物質の管理について考えさせられます。