コンビニ業界の現状・課題を知る5冊 -オーナーの働き方から外国人アルバイトまで

日本人が身近に使うコンビニエンスストア。現在のライフスタイルの中で利用者も多いのではないのでしょうか。時代とともに統廃合があり、現在もコンビニの再編がありつつ、コンビニエンスストアの業務の多角化も紙面を賑わせています。

また業界としての視点の他に、コンビニに携わるオーナー、そして従業員についての働き方についてもフォーカスされております。今回は、コンビニに関するトレンドからその組織体系・仕組みについてから、そこで働く現場の声が発せられた4冊をご紹介します。

図解入門業界研究最新コンビニ業界の動向とカラクリがよ~くわかる本

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コンビニ業界は、ここ数年で急速に再編が進んでいます。本書は、コンビニ業界の内情から、コンビニがどのように運営されているのかをテーマごとに分けて解説をした書籍です。コンビニ大手といえば、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンですが、これは業界の寡占化の進行の結果と言えるでしょう。

ファミリーマートとサークルK・サンクスのユニーHDの経営統合が特に印象的と感じる方もいらっしゃるかもしれません。中堅コンビニのデイリーヤマザキやミニストップもありますが、売り上げの規模は上位3社が圧倒的です。本書は、大手のシステムにも焦点を当て、各社の出店戦略、商品開発を紹介しています。

業界の王者セブンイレブンのドミナント戦略、オムニチャネル、プライベートブランドは有名ですが、セブンイレブンを追うローソンとファミリーマートの経営戦略もやや古い情報ではあるものの、概要についても説明しています。さらに、コンビニの商品配送の仕組みと、売り上げを伸ばすための店舗づくりなど、より詳細なシステムの解説がされており、あれほどの多品種の商品がどうして常に店舗にあるのか、という疑問が解消されると思います。

また、コンビニチェーンの競争において、情報が重要な鍵を握ることも本書では、記されています。効率の良い商品販売と顧客の要望に応え続けるには、様々な情報が必要となります。本書はコンビニ業界の仕組みや潮流を捉えやすい一冊でしょう。

コンビニオーナーになってはいけない: 便利さの裏側に隠された不都合な真実

コンビニ加盟店ユニオン (著), 北 健一 (著)
旬報社 (2018/9/1)、出典:出版社HP

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コンビニは、現代の日本では、とても身近で、便利な場所です。しかし、そこで働くフランチャイズ店舗のオーナーは、過酷な環境にさらされているケースがあります。その実態をまとめた動画をyoutubeに投稿した著者は、何度も動画が削除されたと言います。本書では、オーナーが本部と契約を交わすところから、サービスを提供する裏側の苦悩について描かれています。

本書の途中では、会話形式で、コンビニのオーナーが体験した出来事について記述した章もあります。利用者と本部との関係に苦しむオーナーもいることを感じさせます。また、コンビニのフランチャイズ契約は、一定の期間があり、契約の更新を希望する加盟店のオーナーは数多くいます。

本書では、この契約更新を利用した圧力をかけられた事例について指摘し、問題のあるケースがあると主張しています。さらに、コンビニ独自の会計についても解説しており、仕入れと売り上げ、商品の廃棄について、本部に有利な仕組みとなっていると主張し、加盟店のオーナーに負担を強いるケースがあるとしています。本書の最後には、社会のインフラとなったコンビニについて、現在のフランチャイズ契約の課題をどのように解決していくか対談形式でまとめています。

オーナーのみならず高校生のアルバイト店員に大きな責任を負わせているブラックバイトの事例についても触れています。コンビニがより社会と従業員を豊かにする仕組みづくりにを考えるきっかけになる一冊です。

コンビニ外国人

芹澤 健介 (著)
新潮社 (2018/5/16)、出典:出版社HP

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私たちが普段から利用するコンビニは数年前から様相が変化しています。レジでお会計をする際、流暢な日本語で応対する外国人の店員が急激に増加しました。多種多様な品物が並ぶ上に、ATMがあったり、公共料金の支払いができたり、住民票などの公的な書類を発行できるなど、様々なサービスが受けられるインフラとなったコンビニですが、その分、従業員の作業が複雑化したり、24時間営業であるために、慢性的な人手不足に苦しんでいるのが現状です。

その結果として、コンビニで外国人が店員として働くケースが増えたのですが、本書では、その外国人も、様々な事情の中で働いていることを取材し、まとめています。外国人の店員がここまで増加した背景には、日本の外国人留学生の増加が関係していると言います。日本語を学ぶために、日本語学校に通う外国人の若者が数多くいたり、日本でアルバイトをするために、留学生として入国する外国人もいますが、そのような外国人は就労ビザを持たないため、基本的に就労制限があります。

しかし、学費の関係上、規定よりも多く働かなければならないケースや、籍を置いているだけで、アルバイトが主な目的となっているケースなど、問題もあります。また、コンビニなどのサービス業では、人手不足が深刻であるために、労働力需要は常にあるため、コンビニと外国人の利害が一致しています。外国人頼みの現状は、自然な流れとも言えますが、社会的な問題とも関係する場合もあり、見直しが迫られるかもしれません。

コンビニ店長の残酷日記

三宮 貞雄 (著)
小学館 (2016/4/1)、出典:出版社HP

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本書は、サラリーマンから中核都市の郊外で、コンビニのオーナーになった男性の体験談を日記形式でまとめた新書です。今や、コンビニは商品を売る単なる小売店舗ではなく、宅配便、公共料金の支払い、チケットの発券なども行う街のインフラとなっています。24時間365日休まず営業する店舗がほとんどで、日本の社会を支えていると言っても過言ではありません。

しかし、そのコンビニでは、様々な人々が利用するために、数々のドラマが繰り広げられます。オーナーとして日々の業務をこなす筆者は、1月から12月までの1年の日記に見立てて、これまでの体験談をまとめています。風変わりなお客様のエピソードから本部から来る手強いスーパーバイザーとのやり取りが非常に印象的です。

そのほかにも、本部との契約の厳しさについても綴られています。名目上は加盟店とチェーンの本部は対等な関係であるはずですが、実態は、本部が強い立場にあり、要求なども多いとしています。廃棄が少ないとスーパーバイザーが仕入れを増やすことを提案してきた事例から、仕入れがブラックボックスである、日商を上げてもオーナーに入ってくる利益が増えないような特殊な会計の仕組みについても触れています。

契約はチェーンや店舗によって異なる点がありますが、オーナーに不利な条件で契約していたケースもあるとしています。コンビニの抱える問題がオーナーの視点からわかりやすく書かれており、読みやすい本です。

コンビニ地獄 – 週刊ダイヤモンド

筆者
ダイヤモンド社 (2019/5/27)、出典:出版社HP

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近年、日本では人手不足が数多くの業界で課題となっています。特に、サービス業の人手不足が多くのメディアでも取り上げられるようになりました。その中でも深刻なのは、コンビニエンスストアです。コンビニは、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートが主要なチェーンですが、その店舗の多くは、フランチャイズ契約です。

コンビニのフランチャイズ契約は、過去には本部と加盟店が共に利益を享受できていた仕組みでしたが、人手不足が深刻化した現在では、加盟店に非常に大きな負担がかかっている状況が作り出されています。

24時間営業であるために、深夜も営業することが求められる業態ですが、人手不足により、深夜の従業員が集まらず、オーナーが自ら長時間労働を行うケースが続々と出てきました。本書では、匿名での加盟店のオーナーへのインタビューに加え、コンビニ大手三社の社長にそれぞれインタビューを行い、加盟店への支援や契約、配送網の見直しと今後の経営方針について聞き出しています。さらに、日本の小売業の要とも言えるコンビニ業界の行き詰まり感をデータで指摘し、構造改革に迫られている状況が示されています。

オーナーが本部から厳しい要求や圧力を受けたとする記事もあり、加盟店のオーナーの厳しい現状を訴える内容が列挙されています。今後、人口減少による需要の減少が予想される中で、激しい競争を繰り広げてきたコンビニですが、多くの役割を担っているために、負担が大きいこの状況がどのように改善されていくのかを考える機会となりそうです。