MaaS・CASE・モビリティー革命を知る5冊

新たなモビリティサービス構築に向けて自動車業界の主役は変わろうとしています。配車サービスを皮切りに、自動運転と飲食や医療、物流などを組み合わせた新サービスが続々とでてくる中で、MaaS、CASEという言葉が出てきました。

C:Connectivity(接続性)、A:Autonomas(自動運転)、S:Shared(共有)、E:Electric(電動化)と呼ばれるCASEとMobility as a Service (MaaS)と呼ばれる概念がモビリティのこれからの自動車を中心とした『移動』はこれまでにないものとなっていきます。

環境規制やIoT(モノのインターネット化)の台頭などを背景に、車の電動化、電装化の流れは止まらず、保有という概念からさらに延長した使い方へ。今回は、MaaS、CASEを知る5冊を紹介したいと思います。

CASE革命 2030年の自動車産業

中西 孝樹 (著)
日本経済新聞出版社 (2018/11/21)、出典:出版社HP

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現在の日本やアメリカでは、マイカーを持つことは一般的なことです。日本の場合は、ピークを過ぎてはいるものの、地方に住む人々にとっては、所有していて当たり前という地域も数多くあります。しかし、その状況が徐々に変化しています。その変化を表した言葉にCASEがあります。CASEとは、「Connected(接続)」「Autonomous(自動化)」「Shared&Service(シェアリング&サービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をとった、ダイムラーの造語です。CASEは、IoT化や知能化、電動化について示しており、従来の自動車産業にとっては、無視できない大きな変化です。

さらに、MaaS(サービスとしてのモビリティ)という、交通手段をシームレスに統合する動きも、自動車産業に大きな影響を与えます。クルマの概念を覆すCASEですが、本書では、IT企業の新規参入などの環境の変化についての解説も行い、それぞれの要素について、各国の自動車メーカーやIT企業の取り組みの紹介を行っています。

コネクティングと自動運転については、日米欧中の自動車メーカーやIT企業が現在激しい競争を繰り広げておりますが、本書では、その課題と展望についても触れており、最先端の自動車技術について学べます。電動化は、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題がきっかけとなった、環境負荷の低いエネルギーへの転換の潮流について解説しています。終盤では、2030年のモビリティ産業での覇者をテーマに、自動車メーカー各社の動向や今後迎えるとされる産業変化の移行期への対処などを検討しています。日本企業は、モビリティ産業でも、リードすることはできるのでしょうか。

MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

日高 洋祐 (著), 牧村 和彦 (著), 井上 岳一 (著), 井上 佳三 (著)
日経BP (2018/11/22)、出典:出版社HP

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MaaSは、あらゆる交通手段を統合し、その最適化を図った上で、マイカーと同等かそれ以上に快適な移動サービスを提供する新しい概念です。日本では、ウーバーの配車サービスなどの単一のモビリティサービスを指すケースがありますが、それは、MaaSの構成要素の一つでしかありません。

利用者視点に立って、複数の交通サービスを組み合わせ、それらがスマホアプリでルート検索から予約、決済まで完了し、シームレスな移動体験を実現する取り組みがグローバルスタンダードであると本書は指摘しています。世界的なデジタルプラットフォーム競争が繰り広げられると予想できますが、日本では、この変化に対応できるのでしょうか。筆者もその不安を抱くほど、MaaSは大きな変化です。影響を受けるのは、公共交通機関や自動車産業だけではありません。

人々の移動が自由になるために、小売業やサービス業、不動産などにも影響します。本書では、MaaSの概要やこれまでの経緯から今後の展望に加えて、多角的な視点でMaaSを捉え、MaaSの実現後の世界についても解説しています。

日本では、まだMaaSは普及しておらず、世界的な潮流から出遅れています。乗り換え案内のアプリケーションは利用され始めていますが、予約や支払いなどは、各企業のホームページから申し込む仕組みで、サービスの統合には程遠い状況です。MaaSの取り組みの事例が、本書では紹介されており、MaaSの現状や将来を考えるために必要な内容が網羅されています。

MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略

森口 将之 (著)
学芸出版社 (2019/7/25)、出典:出版社HP

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MaaSという言葉が日本にも徐々に普及し始めています。MaaSとは、モビリティ・アズ・ア・サービスの略称で、フィンランドで生まれた、新しいモビリティサービスの概念です。直訳すると、サービスとしてのモビリティですが、様々な公共交通システムを一つの移動手段として捉える概念のことを表しています。例えば、東京から大阪まで行きたいとしましょう。

その場合、様々な移動手段が考えられますが、東京から大阪まで移動するために、利用者の目的によって、新幹線を使うか、飛行機を使うか、それとも高速バスを使うかが異なるでしょう。さらに、出発地から、その長距離移動をするための場所、つまり駅や空港までの移動手段も異なります。

現在は、その移動手段や運営主体がバラバラであるために、乗り換えや運賃が利用者に分かりづらいケースが少なくありません。MaaSは、このような公共交通が抱える課題に対して、ICTの技術などを使って、移動を一つのサービスで捉えることで、利用者の利便性を高めようとしています。

本書は、フィンランドの現状や、欧米の事例に加え、日本の事例を紹介し、MaaSを導入し始めている地域ついて、具体的に解説されています。著者は、日本において、MaaSが単なる新しいビジネスとしか捉えられていないと危惧しており、都市計画の一部であることを強調しています。また、大都市と地方でのMaaSの導入についてそれぞれの手法が開設されており、交通に関心がある人だけでなく、地方活性化に関心がある方も参考になると思います。

モビリティー革命2030 自動車産業の破壊と創造

デロイト トーマツ コンサルティング (著)
日経BP (2016/10/6)、出典:出版社HP

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本書は、自動車産業の大きな変化についてまとめ、新たな自動車産業が創り出す将来を予想しています。近い将来、3つのドライバーによって、クルマの役割、使われ方、利用者が全て変わるとし、その3つのドライバーの一つ目は環境問題への対応策として「パワートレーンの多様化」がさらに進むこと、二つ目は先進技術の進展により「クルマが知能化」すること、三つ目がサービスに対するニーズや価値観の変化に伴い、消費者にとって、「シェアリングサービス」が日常風景となることとしています。

一つ目のパワートレーンの多様化は、従来の自動車の動力源であったガソリンエンジンやディーゼルエンジンからモーターや燃料電池などに切り替わることを示しています。地球温暖化対策の一つとして、自動車の変化が起こるとしています。二つ目のクルマの知能化は、自動運転技術や人工知能の発展に伴う新たなビジネスの誕生や従来の自動車産業の破壊の可能性について指摘しています。

三つ目のシェアリングサービスの台頭は、日本でも現在普及し始めているカーシェアリングがもたらす自動車メーカーへの影響について解説しています。所有から利用へ、サブスクリプションとも関連する脅威的なビジネスモデルとも考えられます。本書の後半では、日本の自動車産業への影響を予測しており、サプライチェーンへの打撃となる可能性からメーカーの経営への影響、販売やアフターサービス、保険業界についても取り上げており、MaaSと世界をリードしてきた日本の自動車産業の関係について、幅広く学ぶことができます。

モビリティ2.0 「スマホ化する自動車」の未来を読み解く

深尾 三四郎 (著)
日本経済新聞出版社 (2018/9/22)、出典:出版社HP

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現在、自動車業界で100年に1度の大変革が起きていると言われています。本書では、その本質は「自動車のスマホ化」と表現し、車両の生産から、都市のエコシステムでの生き残りをかけた競争に移り変わったとしています。

この変化は、携帯電話がスマートフォンに代替される時期にも似ていると、著者は指摘しています。さらに、モビリティの意味が変わり、従来の、人やモノを運ぶものから通信技術の発達により、データを運ぶものも含まれるようになったとしています。この急速な変化の背景には、デジタル化社会の到来、環境への配慮が重視される時代、人口の多くの割合を占めているミレニアル世代の3つが後押ししていると、著者は説明しています。

本書では、第1章で、日本の自動車産業が世界のトレンドから出遅れた現状について触れています。第2章では、ミレニアル世代、第3章では、環境への配慮と都市化が求めるエコシステムについて、第4章では、デジタル化の解説を行っています。第5章では、中国の取り組み、第6章では、インドとスイスの取り組みについてまとめています。さらに、第7章では、デザインについて取り上げ、今後のモビリティ産業に大きな影響をもたらすと考えられるテーマについて解説しています。

第8章では、まとめとして、オールジャパンをやめるべきだとし、イノベーションが起こりやすい環境を日本でつくり、新たな産業で、日本が生き残るための戦略について考えるきっかけになります。