ロジスティクス4.0 物流の創造的革新

本書は、ローランド・ベルガーのプリンシパルで、ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、多様なコンサルティングサービスを展開している小野塚征志氏による著作です。また本書は、次世代テクノロジーの進化や活用の拡大によって生じる新たなイノベーション「ロジスティクス4.0」を紹介することで、ビジネスにおける創造に向けたアイデアを提供し、読者がロジスティクスの未来に向かうきっかけになることを目的としています。

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ロジスティクス4・0 ― 物流の創造的革新 目次

はじめに

序章 ロジスティクスにおける革新の変遷
ロジスティクス1・0 輸送の機械化
ロジスティクス2・0 荷役の自動化
ロジスティクス3・0 管理・処理のシステム化
ロジスティクス4・0 物流の装置産業化

第1章 省人化による革新
1 輸送の省人化
自動運転トラックの実用性
ドローンの活用
自走式配達ロボットの実用化
自動運航船の可能性
2 保管・荷役の省人化?
自動倉庫の革新性と限界
倉庫ロボットの実用化①-棚搬送型ロボット
倉庫ロボットの実用化②-協調型ロボット
無人フォークリフトの事業性
ピッキングプロセス以外での省人化
物流システムインテグレーターの価値

第2章 標準化による革新
1 垂直統合による標準化
調達・生産プロセスでの標準化
流通・小売プロセスでの標準化
一気通貫での垂直統合
2 水平統合による標準化
共同物流の考え方
トラック運送でのデジタルマッチング
人や倉庫を組み合わせたマッチング
デジタルフォワーダーの躍進
統合管理システムの出現
3 物流の範囲を超えた標準化
物流管理システムの進化
ロジスティクスの範囲を超えたプラットフォーム

第3章 物流の装置産業化
1 属人的世界からの脱却
AIやロボットの得意とする領域
人間ならではの価値
2 属社的世界からの脱却
物流の外部化
物流機能の統合
3 戦略的投資の重要性
資本集約型ビジネスにおける勝者の要諦
RFID vs 画像認識システム
自動運転トラック vs 隊列走行
人を必要としない機械・システム vs 人の作業を支援する機械・システム
現状を「是」とせずに判断することの枢要性
4 未来を「創造」することの価値
先進プレイヤーの描いた未来
世界観を示すことの意味

第4章 物流会社の勝ち残りの方向性
1 物流サービスを核としたロジスティクスプラットフォーマー
特定の物流サービスで寡占的地位を獲得した物流会社
物流サービスを仕組み化することの重要性
2 荷主業界を核としたロジスティクスプラットフォーマー
特定の荷主業界で寡占的地位を獲得した物流会社
効率・品質の向上だけではない価値を提供することの重要性
3 物流+αのオペレーションアウトソーサー
物流+αの価値を創造した物流会社
「物流会社間でのパイの奪い合い」ではない事業の拡大
4 物流機械・システムのインテグレーションサプライヤー
機械・システムの外販で収益機会を拡大した物流会社
「物流会社製」であることの価値
5 外部リソースを戦略的に活用することの重要性
非連続な成長の必要性
外部リソースの活用による成長の実現

第5章 物流ビジネスでの新たな事業機会
1 荷主による物流ビジネスの展開
物流ビジネスを展開するに相応しい荷主の要件
アマゾンの真の姿
アマゾン=世界最大の物流会社
アマゾン=現代のローマ
アマゾンとは異なる未来
物流ビジネスを展開する意味
2 メーカーやデベロッパーによる物流ビジネスの展開
物流でのコト売りの実現
トラックメーカーによる物流ビジネスの展開
機械メーカーによる物流ビジネスの展開
ソフトウェアメーカーによる物流ビジネスの展開
デベロッパーによる物流ビジネスの展開

第6章 未来のロジスティクス
1 ロジスティクスの価値
モノを運ぶことの価値
モノとともに運べる価値
モノを運ぶ過程で提供できる価値
2 日本ならではのロジスティクス
地域による差異
日本ならではの特長①-物流品質
日本ならではの特長②-対応力
3 未来に一歩踏み出すためのマインドセット
短期での投資回収を前提としないこと
波及的価値を評価すること
意思を持って判断すること

あとがき

[COLUMN] ロジスティクス4・0はインダストリー4・0とどう関係しているのか?
物流センターに産業用ロボットを導入できないか?
サプライチェーン4・0とは?
省人化と標準化はどちらが先に進むのか?
物流の世界におけるインフラボーナスとは?
AIで日本は勝てるのか?
誰がロジスティクスの未来を担うのか?

裏表紙の記述

小野塚征志 = おのづか・まさし
ローランド・ベルガー プリンシパル。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、多様なコンサルティングサービスを展開。

CONTENTS
序 章 ・ロジスティクスにおける革新の変遷
第1章・省人化による革新
第2章・標準化による革新
第3章・物流の装置産業化
第4章・物流会社の勝ち残りの方向性
第5章・物流ビジネスでの新たな事業機会
第6章・未来のロジスティクス

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まず序章では「ロジスティクスにおける革新の変遷」について述べられ、元々「兵站」を意味する軍事用語であったロジスティクスという言葉が、「輸送の機械化」というロジスティクスにおける第一の革新によって経済活動でも用いられるようになったことが言及されています。船舶が基本であった輸送手段が19世紀以降は鉄道の蒸気機関車へ、また20世紀以降は内燃式のエンジンのトラックへと変化したことが、ロジスティクス1.0という第一の革新であったことが述べられています。第二の革新は「荷役の自動化」で、人手に頼られていた荷物を積み込んだり降ろしたりする作業が、荷役車両であるフォークリフトや荷役資材であるパレットの普及で自動化されたことや、また1960年代以降は海上コンテナや自動倉庫の普及で荷役作業の効率化が果たされたことが述べられています。第三の革新であるロジスティクス3.0は、人手に頼られていた荷物や機械の管理・処理に関する業務が、倉庫管理システムや輸配送管理システムによって効率化したという「管理・処理のシステム化」と述べられます。

そしてその次の段階であるロジスティクス4.0は「物流の装置産業化」を示しており、ここではIoTやAI、ロボティクスといった次世代テクノロジーを利用して、物流オペレーションの主体を人から機械やシステムに置き換える「省人化」と、ロジスティクスに関する様々な機能・情報が繋がることで、物流会社や輸送ルート、手段などをより柔軟に組み替えられるようになる「標準化」が目指されるとあります。

小野塚 征志 (著)
日本経済新聞出版社 (2019/3/16)、出典:出版社HP

次の第1章では、そのロジスティクス4.0の「省人化による革新」について述べられますが、いつか実現するロジスティクスにおける完全なるオートメーション化までの過渡期では、必要十分な投資を戦略的・計画的に実行していくことが重要とあります。まず「輸送の省人化」においては、自動運転の実現やドローン活用などのメリットが述べられています。次に「保管・荷役の省人化」では、まず自動倉庫の革新性と限界について述べられますが、その問題解決のために自動倉庫よりも汎用性が高く柔軟な対応が可能な倉庫ロボットの実用化へと話題が移ります。本章では他にも、無人フォークリフトの事業性、荷物をパレットの上に積み付けるパレタイザや逆にその荷物をバラして降ろすデパレタイザなどのピッキングプロセス以外での省人化、機械・システムの導入・運用を支援する物流システムインテグレーターの重要性などについて述べられています。

第2章は「標準化による革新」に関する内容で、IoTの進化によって、各組織・個人の有する機能・情報が見える化され、他者と共有されるようになり、物流版シェアリングエコノミー(モノやサービスを共同で利用する仕組み)が現出しつつあるとまず言及されます。このシェアリングエコノミーにより、「人の仕事を機械やシステムに置き換える省人化にあたって必要となるリソースを最小化するイノベーション」が標準化です。そしてそこから、サプライチェーンにおける調達・生産といった上流プロセスでは先行的に「垂直統合による標準化」が進んでいること、また、企業の垣根を超えて物流機能を水平的に共有することで荷量を増やし、物流の効率性を高める「水平統合による標準化」が多くの企業で取り組まれていることについてが詳しく述べられています。「物流の範囲を超えた標準化」としては、物流に直接関係しない多様な機能・情報も取り込むことで物流管理システムが進化してきたことや、大手物流会社UPSが荷物の外側にある物流システムの機能・情報だけではなく荷物の中身までもシェアリングの対象にし、荷主に代わって製品を製造・出荷する3Dプリントサービスという「ロジスティクスの範囲を超えたプラットフォーム」を確立したことなどについて述べられています。

第3章は「物流の装置産業化」と題され、まずこの実現には、労働集約的ビジネスから資本集約的ビジネスへの転換により、相応の投資や戦略的な意思決定が必要となることが言及されます。このロジスティクス4.0におけるAIやロボットの得意とする領域では「属人的世界からの脱却」が先行的に進みますが、これに至るまでは長い「過渡期」が存在するため、ここでロボットが担う領域と人間が担う領域を的確に見極め、準じた投資をすることが必要であると述べられています。また、省人化への対応や標準化の進行に伴って、企業では自社ならではの物流にこだわることの経済合理性がますます希薄化するため、「属社的世界からの脱却」が進むということも述べられています。次に「戦略的投資の重要性」について、どのような機械・システムを投資対象にすべきかという問いから出発し、詳しく述べています。

第4章は「物流会社の勝ち残りの方向性」に関して述べられますが、装置産業化への適応が必須となるような、物流ビジネスに破壊的インパクトをもたらすロジスティクス4.0において、どのような勝ち残りの方向性があるかという問いから始まります。そしてそれには、「物流サービスを核としたロジスティクスプラットフォーマー」や「荷主業界を核としたプラットフォーマー」としての地位を確立すること、もしくは物流での事業基盤をベースに新たな価値を提供する「物流+αのオペレーションアウトソーサー」や、物流会社としてのビジネスを基盤に機械・システムを提供する「物流機械・システムのインテグレーションサプライヤー」になることなどが挙げられています。本章ではこのそれぞれについて詳しく説明がなされています。

第5章は「物流ビジネスでの新たな事業機会」と題され、まず「荷主による物流ビジネスの展開」について、世界最大の物流会社になることが十分に予想されているアマゾンやその他物流企業の実情について説明しながら述べています。また、必ずしも物流をコアコンピタンスにしているからといって全ての荷主が物流ビジネスで新たな収益を得ることに挑戦しなければならないわけではないこと、しかし挑戦するのであれば自社の荷物があることや本業での収益があることを最大限活かした物流ビジネスにすべきであるということでまとめられています。次に「メーカーやデベロッパーによる物流ビジネスの展開」について、メーカーやデベロッパーが「モノ売り」から「コト売り」、つまり物流機械・システムを販売するのではなく、物流サービスとして提供するという転換を検討・実行していることが述べられます。本節ではトラックメーカーや機械メーカー、ソフトウェアメーカーやデベロッパーによる物流ビジネスの展開について、それぞれ詳しく説明されています

最後の第6章「未来のロジスティクス」では、まず「ロジスティクスの価値」について述べていますが、モノを運ぶこと、モノと一緒に情報をも運ぶこと、それらを運ぶ過程で提供できる可能性のあるものについて言及することで、未来のロジスティクスがいかに価値高いものになりうるかを説明しています。次の「日本ならではのロジスティクス」という節では、物流の装置産業化によってそれまでよりも海外展開しやすくなる日本の物流ビジネスが、日本ならではの特長である物流品質や対応力を武器に競争を図るべきであることが述べられています。最後の節「未来に一歩踏み出す為のマインドセット」では、来たるロジスティクス4.0に対する心構えとして、短期での投資回収を前提としないことや、次世代のデジタル技術導入ではその波及的価値を評価すること、意思を持って適切な投資時期を見極め、判断することが重要であると述べられています。ロジスティクス4.0の世界を切り開く人には、このような力量が問われているというかたちで本書はまとめられています。

本書はロジスティクスに関して、これまでの歴史的変遷から現在、また未来についての予測を詳細に述べている為、新たなロジスティクス4.0への理解を深めることや、物流事業で携わるにあたってとるべき指針などを掴むことができる内容になっています。物流の全体像を把握し、今後に備える方法について考えるのに、非常に参考になる内容であると言えます。

小野塚 征志 (著)
日本経済新聞出版社 (2019/3/16)、出典:出版社HP

ロジスティクス4・0 ― 物流の創造的革新 目次

はじめに

序章 ロジスティクスにおける革新の変遷
ロジスティクス1・0 輸送の機械化
ロジスティクス2・0 荷役の自動化
ロジスティクス3・0 管理・処理のシステム化
ロジスティクス4・0 物流の装置産業化

第1章 省人化による革新
1 輸送の省人化
自動運転トラックの実用性
ドローンの活用
自走式配達ロボットの実用化
自動運航船の可能性
2 保管・荷役の省人化?
自動倉庫の革新性と限界
倉庫ロボットの実用化①-棚搬送型ロボット
倉庫ロボットの実用化②-協調型ロボット
無人フォークリフトの事業性
ピッキングプロセス以外での省人化
物流システムインテグレーターの価値

第2章 標準化による革新
1 垂直統合による標準化
調達・生産プロセスでの標準化
流通・小売プロセスでの標準化
一気通貫での垂直統合
2 水平統合による標準化
共同物流の考え方
トラック運送でのデジタルマッチング
人や倉庫を組み合わせたマッチング
デジタルフォワーダーの躍進
統合管理システムの出現
3 物流の範囲を超えた標準化
物流管理システムの進化
ロジスティクスの範囲を超えたプラットフォーム

第3章 物流の装置産業化
1 属人的世界からの脱却
AIやロボットの得意とする領域
人間ならではの価値
2 属社的世界からの脱却
物流の外部化
物流機能の統合
3 戦略的投資の重要性
資本集約型ビジネスにおける勝者の要諦
RFID vs 画像認識システム
自動運転トラック vs 隊列走行
人を必要としない機械・システム vs 人の作業を支援する機械・システム
現状を「是」とせずに判断することの枢要性
4 未来を「創造」することの価値
先進プレイヤーの描いた未来
世界観を示すことの意味

第4章 物流会社の勝ち残りの方向性
1 物流サービスを核としたロジスティクスプラットフォーマー
特定の物流サービスで寡占的地位を獲得した物流会社
物流サービスを仕組み化することの重要性
2 荷主業界を核としたロジスティクスプラットフォーマー
特定の荷主業界で寡占的地位を獲得した物流会社
効率・品質の向上だけではない価値を提供することの重要性
3 物流+αのオペレーションアウトソーサー
物流+αの価値を創造した物流会社
「物流会社間でのパイの奪い合い」ではない事業の拡大
4 物流機械・システムのインテグレーションサプライヤー
機械・システムの外販で収益機会を拡大した物流会社
「物流会社製」であることの価値
5 外部リソースを戦略的に活用することの重要性
非連続な成長の必要性
外部リソースの活用による成長の実現

第5章 物流ビジネスでの新たな事業機会
1 荷主による物流ビジネスの展開
物流ビジネスを展開するに相応しい荷主の要件
アマゾンの真の姿
アマゾン=世界最大の物流会社
アマゾン=現代のローマ
アマゾンとは異なる未来
物流ビジネスを展開する意味
2 メーカーやデベロッパーによる物流ビジネスの展開
物流でのコト売りの実現
トラックメーカーによる物流ビジネスの展開
機械メーカーによる物流ビジネスの展開
ソフトウェアメーカーによる物流ビジネスの展開
デベロッパーによる物流ビジネスの展開

第6章 未来のロジスティクス
1 ロジスティクスの価値
モノを運ぶことの価値
モノとともに運べる価値
モノを運ぶ過程で提供できる価値
2 日本ならではのロジスティクス
地域による差異
日本ならではの特長①-物流品質
日本ならではの特長②-対応力
3 未来に一歩踏み出すためのマインドセット
短期での投資回収を前提としないこと
波及的価値を評価すること
意思を持って判断すること

あとがき

[COLUMN] ロジスティクス4・0はインダストリー4・0とどう関係しているのか?
物流センターに産業用ロボットを導入できないか?
サプライチェーン4・0とは?
省人化と標準化はどちらが先に進むのか?
物流の世界におけるインフラボーナスとは?
AIで日本は勝てるのか?
誰がロジスティクスの未来を担うのか?

裏表紙の記述

小野塚征志 = おのづか・まさし
ローランド・ベルガー プリンシパル。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、多様なコンサルティングサービスを展開。

CONTENTS
序 章 ・ロジスティクスにおける革新の変遷
第1章・省人化による革新
第2章・標準化による革新
第3章・物流の装置産業化
第4章・物流会社の勝ち残りの方向性
第5章・物流ビジネスでの新たな事業機会
第6章・未来のロジスティクス