アマゾンと物流大戦争 – 宅配の最大危機に誰が勝つ?

本書は株式会社イー・ロジットCEO兼チーフコンサルタントである角井亮一氏による著書ですが、物流合理化手段を追及するロジスティクス・カンパニーであるアマゾンのロジスティクスが、多くのビジネスマンにとって見過ごせないものになりうる理由やロジスティクスそのものについて語り、アマゾンの戦略や米国の最新事情、彼らへの対抗策なども解説することで、読者の漠然としたアマゾンに関する不安を解消すること、また、今後のビジネスや経済の見通しをよくする助けになることを目的としています。

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第1章では「物流のターニングポイント:ネット通販と宅配便の異変」ということで、まず創業者であるジェフ・ベゾスがアマゾンのインターネット通販を始めるにあたって最初に本を扱ったこと、ネット通販の利点や発展の経緯などについて述べられます。また、アマゾンは総合ネット通販に分類されますが、作業をある程度分業しているモール型ネット通販である楽天の失敗した点、ユニークな物流戦略を持つ企業の紹介、宅配会社や運送会社の競争が限界を迎えている状況などについて述べられています。ロジスティクスをコストではなく投資として考えて導入することがアマゾンの強みであったということ、また、アマゾンは配送費に1.3兆円をかけている現時点の問題から、配送ネットワークまでも自社だけでコントロールしようとしていることがわかりましたが、その優れた利益追求力から学べるものは多いと考えられると同時に、それによって既存小売業界や宅配業界が危機に陥っていることを考えると改めてアマゾンという物流企業の恐ろしさも感じられます。

第2章は「巨人アマゾンの正体:ウォルマートvsアマゾンの仁義なき闘い」と題され、世界を変えつつあるアマゾンに対するウェブサイトのウォルマートが台頭について述べられます。両者ともに「低価格」を売りにする企業であるために競合が始まり、売上高はウォルマートが圧倒的に優ってはいるが、アマゾンはその「低価格」イメージが世間に根強いために株価の上昇や急成長をしていることから、ウォルマートの危機感を煽っているとのことです。本章ではアマゾンがウォルマートの戦略を踏襲して成長していることや、「品揃え」と「低価格」実現のためには手段を選ばない企業であること、ウォルマートだけでなくアップルやグーグルなども意識して多様なサービスを展開してきたことがわかり、企業らの具体的な戦いの内容やアマゾンの徹底的な低価格と利益追求がここでも伺えます。企業の熾烈な競争によって良質なサービスが生まれ、消費者の利便性が高まっていくということが改めて実感させられますが、アマゾンは他の企業を意識したり倣うだけでなく、消費者の需要を先に見据えて的中させるという点で優秀であると感じさせられる内容です。

第3章は「物流大戦争の幕開け:アマゾンと競い合うための3つの戦略」と題され、日本において多様なロジスティクスでアマゾンに挑む企業らの具体的な事例などが述べられます。現在の日本のネットスーパーで最大の売上規模を誇るイトーヨーカドーは、ネットスーパーの2つの運営方法の、注文主の近隣にある店舗で商品をピッキングして配送するという「店舗型」と、専用の物流センターから出荷する「センター型」を併用することによって、成功の鍵である「小商圏で短期間に会員を獲得すること」を可能にしています。

日本におけるネットスーパーには米国のように力のあるプレーヤーはまだいないというのが現状ですが、品揃えの充実や物流機能強化のためにロジスティクスに大きく投資しているヨドバシカメラは、スピード配送が無料で行われるという優れた物流品質で高い顧客満足度を得ていたり、ヨドバシカメラと同様、店舗やネットを区別せず、あらゆる場所で顧客との接点を持とうとする考えや戦略である「オムニチャネル」を持つ大手流通企業のセブン&アイ・ホールディングスなどが、アマゾンと正面から競う企業となっているとのことです。本章では物流大戦争を生き抜くために、顧客が商品を受け取る最終段階のラストワンマイルやオリジナル商品の充実で差別化を図ることなどが重要であるということがわかり、いずれも顧客の満足度を上げるための努力であるということが、その激しい企業競争から改めて実感させられます。

本書はアマゾンという企業がなぜ優秀であるかはもちろん、その周りの企業や日本企業の状況、取り組みなども知ることができるため、物流業界の理解や優良企業の顧客獲得の方法を知るのにも有効的な著書です。

角井 亮一 (著)
出版社: NHK出版 (2016/9/10)、出典:amazon.co.jp