コンビニ店長の残酷日記

コンビニについてのトレンド・仕組みを知る5冊 -オーナーの働き方から外国人アルバイトまで
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目次 – コンビニ店長の残酷日記

まえがき
第1章 新春から店長は七転八倒(元日~3月)
年明け最初のお買い上げは194円也
悩ましい雑誌の立ち読み問題
もっとも重要な仕事は2日先を読む発注作業
「あれ、ライターはくれないの?」
電話の子機を手に、客の落とし物であるポーチを探す
泣く子も黙るスーパーバイザーがやってきた
試食の恵方巻きをおかずにカップ麵を食べる強かな高校生
「自爆」でノルマを達成する店も
レジ横のチョコを試食品と勘違いして食べる女性客
食べられる食料品を捨てる心の痛み
口を開けば「機会ロスを避けましょう」
若いカップル客は端数まで割り勘
何も買わずに「トイレ、ある?」は当たり前
コンビニカフェの大ヒットに各店舗の店長全員大喜び
加盟金の250万円は早期退職の割増金で賄った
ドン・キホーテの売値の方が仕入れ値よりも安かった
仕入れの請求書も領収書も見せてもらえない
毎日3回はトイレを借りに来る常連さん
売上は、毎日全額を本部に送金しなければならないという掟
うっかり「送金処理」が遅れて罰金9000円が引かれた

第2章 年度初めも波瀾万丈 (4月~6月)
コンビニの売上は「立地」で決まる
出店前の研修は軍隊式
家族2人以上での業務が契約条件
かつては楽だったアルバイトの採用
内引きするアルバイト店員
二の句が継げなかった「プリン事件」
「点かないライター」の大問題
看板の電源を抜いてスマホの充電
人情味溢れるトラック野郎は家族同然
日商は上がっても利益が出ないカラクリ
昼間から酔っ払いに絡まれる
「廃棄で生活費を浮かしてはどうですか?」
添加物問題
常連客は詐欺師だった
店を出た途端に逮捕
買い物弱者を救うサービスで新たな悩み
モデル並みの美女バイトに店内大騒ぎ
食べ散らかされたチキンの残がいを片付けに行く
本部推奨の割高な消耗品
4日寝なかったら意識朦朧に
家族旅行は1泊0日
増え続けるサービスはとても全部は覚えきれない
公共料金の収納代行に頭を痛める
トイレ美容院
買掛金に金利がかかっている?

第3章 真夏の黒い事件簿 (7月~9月)
お中元の予約受注に四苦八苦
深夜働く主婦に情が移る
あるSVの不祥事
奇妙なクレーム電話
うなぎは夏に限る
親族の葬儀のときにレジに入ってくれたSV
なぜか本部も「死筋排除」だけは大賛成
ただでアイスクリームをくれた運転手
トイレに立てこもったターザン
万引きロンダリング
夏休みになると訪れる招かれざる客
日本独自の会計方式
「値下げ」で売ると黒字になる理由
モデル級美女バイトの豹変
容器も割り箸も店負担
カマキリや蛾が入り込むことも
SVより怖いSNS
ブラックバイト問題
「チン」で失敗して買い取るハメに
「土下座強要」で逮捕者が

第4章 冬に向かって撃て! (10月~2月)
お祭りは稼ぎ時
「貸せ貸せ星人」が来襲する
強面のお客様とのちょっとイイ話
フリーターのバイトに助けられる
うそつき万引き犯を執念で捕まえる
「フリーメイソン」と「強盗犯」が立て続けにご来店
立ち飲み居酒屋に変身
店に車が突っ込んできた!
コンビニ版・仁義なき戦い
アメリカに「日本方式」を輸出
スマホに祟られる
便利なマイナンバーで泣くバイト
「代行呼べ!」「タクシー呼んで!」
強面カップルの来店に緊張する
軽減税率でさらに多忙に
クリスマスケーキ
誠意あるアルバイトに感動
「ご来店ありがとうございました」
あとがき

三宮 貞雄 (著)
小学館 (2016/4/1)
、出典:出版社HP

 

まえがき

私は現在、ある中核都市の郊外店でコンビニ店長(オーナー)として、1日に平均2時間以上は働いている。もっとも重 要な発注作業は当然のこと、金銭管理に品出し、レジ打ちに、ごみの清掃、トイレ掃除だってやる。休みは年に数えるほ どだ。

大学の経済学部を卒業して、いったんはサラリーマンをしていた。だが、そのときから心のどこかで、「独立した経営 者」になりたいという夢を持っていた。様々なタイミングが重なり、現在に至るわけだが、私自身は今の仕事にプライド を持っている。 4時間、365日営業。雪が降ろうが、嵐が来ようが店は必ず開ける。というより、閉めることは一時もない。どんな時間でも欲しいものは揃っている。食料品やモノを売るだけではない。

宅配便、納税、公共料金の支払い、チケットの発券…数えればきりのない社会の公共空間としてのサービスを提供している。「街のインフラ」として、現代社会におい てはもう必要不可欠な存在になっていると自負している。 もはや、コンビニを利用したことのない人はいないのではないだろうか。 今やコンビニは全国で5万店以上ある。これは交番や郵便局などの公共施設よりも多い数字だ。4時間灯りをともし、 防犯にも役立っているはずだ。

しかし、きれいごとばかりではない。 自分が現在、加盟するコンビニチェーン本部には驚かされることの連続だ。もちろん、そこに所属している人間たち、 個々人には人格者だっているし、悪い人間ばかりではないということはわかる。しかし、自分の成績を上げることのみを 考え、加盟店に無理難題をふっかけて、私たちを苦しめる社員も少なからず存在する。そういう社員が店の担当者になっ たりすると悲惨だ。

資本主義社会である以上、利益追求は当たり前のことだ。 しかし、その方法というのが、理解に苦しむことばかりなのだ。この仕事を始めてから様々な疑問を抱くようになっ た。もちろん、すべてを理解しているとは言い難いが、自分がわかる範囲内で、それらを解き明かしていこうと思う。所属するコンビニチェーンは、テレビなどに大々的に広告を打つ。そのため、マスメディアでは「クライアント・タブー」 として、コンビニチェーンにとってよほどのことがない限り、不都合なことは報じない。

これだけではない。コンビニという「場所」は、人間の本性が現れる場でもある。いつもエリートのような装いをした 紳士も、深窓の令嬢も、店内に入ったとたんに鎧を脱ぎ捨て、常識では考えられないような行動を起こすことを嫌という ほど思い知らされてきた。その度に驚き、嘆き、天を仰いだ。もちろん、その逆にお客様の温かい言葉や思いやりに感激 することもなくはないのだが。

従業員にしても、真面目できちんとした人間もいれば、ルーズでいい加減な人間もいる。そういった人間たちとふれ合 うことで、時には大いに失望させられ、泣かされ、苦汁をなめることもある。一方、見かけによらず責任感があって、真 面目で正義感のある優しい心を持つ従業員も少なからず存在している。 コンビニは人間の素がさらけ出される人間ドラマの宝庫でもある。 つくづく思うのは、一昔前と、現代とでは日本人は明らかに変わってきている点だ。何かが確実におかしくなっている と感じるのだ。

本書は、コンビニという「社会インフラ」の知られざる実情や、そこに関わる人間模様を知ってほしいという思いから。執筆した。これから書く話は冗談でもなんでもない。すべて、私が実際に経験した実話である。 私には中学生の頃から、日記をつける習慣がある。 よって、本書も日記形式にして、一部補足するという形態にしてある。もちろん、6年にわたる店長生活には穏やかな 日々もあり、特段、記すべきもない日だってある。月ごとに書く内容は6年間に起きたことを、それぞれちりばめたもの である。同一年度にすべての事件が起きているわけではないことをご承知おきいただきたい。登場人物は、すべて実在の人間で、現在も私とつながりのある人もいる。よって、私の加盟するチェーンや個人が特定 されないよう背景や設定を一部変更していることもご理解いただきたい。上記の理由から私の名前もペンネームである。

また、ここに登場する話は、コンビニ業界の実態をより理解してもらうために、私が加盟していない(=他のコンビニチェ ーンにいる知人の話)コンビニチェーンの話もあることをあらかじめお断りしておく。 それでは、驚天動地の舞台裏へ、「いらっしゃいませ、こんにちは」。

三宮 貞雄 (著)
小学館 (2016/4/1)
、出典:出版社HP