『なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本』−なんとなく見ていた世界を理論的に

著者は筒井美希氏。株式会社コンセントのアートディレクターであり、雑誌・書籍・広報誌・学校案内などのアートディレクション・デザインを手がけている。デザインを良くするヒントが欲しい新人デザイナーの役に立つように作られたそうだが、デザインに関して全くの素人でも楽しく学べる内容になっています。プレゼン用の資料を作る際にも応用できそうです。

デザインには絶対的な「答え」がない – だからデザインは面白い!

王道を守れば良いものになるわけではないというのです。どんな人に、何を、なぜ、いつどこで、伝えたいのか。これを頭に入れてデザインを考えると良いものになっていくそうです。整然としたものが正解なわけではなく、「たのしい」というテーマなら写真の大きさもバラバラにしてメリハリを生み出し、色使いや書体にも遊び心を加えて…。言葉を、色を、写真を、うまく使いこなすコツが存分に詰まっています。

デザインの流れ

⓪図解とラフ:デザインしたいことを整理
①方向性を決める:表現と構造を考える
②骨格をつくる:色や書体に頼らなくても成立する配置
③キャラを立たせる:書体、組み、カタチ、配置に気を配る
④足し算と引き算:狙った印象と比較して足し引き
⑤ブラッシュアップ:全体と寄りをチェック

この一つ一つの過程を実際のデザイン例を用いて説明してくれています。デザイナーさんの凄さがわかります。何気なく見た雑誌の1ページも実は考え抜かれているんですね。デザイナー恐るべしです。

生き生きしたデザインにするための擬人化

書体を声色に例えてみる(68ページ)。これがすごいところですが、ただの書体なのに命を吹き込まれたように見えました。「おはようございます 今日もいい天気ですね」という言葉が「おはようございます いい天気ですね」とすると応援団長のような元気な声になりますね。色を年代に例えてみる(76−77ページ)も「たしかに、そのイメージ!」と思わず言ってしまいます。

グラフはメッセージにそったものを

グラフは説得力を増す大事なツールです。デザイナーではない方もプレゼンなどに使うことがあると思います。このグラフをわかりやすくデザインするには、そのグラフによって何を伝えたいかというメッセージが大切であるそうです。そうするとシンプルで見やすいグラフが出来上がるということです。グラフってごちゃごちゃしがちで、こういう情報は助かりますよね。そして割合を示したいなら円グラフ、項目の大小なら横棒グラフ、時系列の増減なら縦棒グラフ、分布なら折れ線グラフといったものが伝わりやすく、それらをより見やすくするポイントも書いてあります。

読んでいるだけで「ハァ〜」と唸ってしまうような、デザインとはここまで色々考えられていたのかと思う一冊でした。デザイン初心者の方は通勤時に見る電車の車内広告、いつもの雑誌の1ページ、よく行くお店のメニュー…様々なものに、「あの技法だ!」と楽しくなること間違いなしです。そしてデザイナーの方にも本書はおすすめできます。本書では今まで何となく感じていたデザインのあれこれを理論として整理し紹介されているので、すごく参考になると思います。

筒井 美希 (著)
出版社: エムディエヌコーポレーション (2015/7/31)、出典:amazon.co.jp