教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則 – 脳科学に基づく授業改善!

現在では教師それぞれが授業を展開し、どんな授業が良いもので、どんな授業は良くないのか様々な意見が飛び交っています。しかし、それは科学的に証明されたものなのでしょうか。良い授業とされているものの中には、誰がやっても効果を示す授業はどのくらい含まれているのでしょうか。そんな疑問を「教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則」から読み解いていきます。

全目次 - 教師の勝算
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目次
第1章 なぜ子どもは学校が好きでないのか?
頭は考えるようにはできていない
人間はもともと好奇心が強いが、好奇心ははかない
思考はどう働くか
教室への応用

第2章 テストでは事実だけを求められるのに、どうすれば子どもに技能を身につけさせられるのか?
読解には知識が不可欠
認知的技能には背景知識が必要
事実的な知識が記憶を高める
教室への応用

第3章 なぜ子どもはテレビで見たことは全部覚えているのに、私の言うことは全部忘れるのか?
記憶の重要性
優れた教師の共通点
物語の力
物語構成を利用する
でも、意味がないときはどうすればいいか
教室への応用

第4章 子どもが抽象概念を理解するのは なぜそれほど難しいのか?
理解とは変装した想起である
なぜ知識が浅いのか
知識はなぜ転移しないのか
教室への応用

第5章 演習にはそれだけの価値があるか?
練習がさらなる学習を可能にする
練習が記憶を長く留める&
練習が転移を促す!
教室への応用

第6章 本物の科学者や数学者、歴史学者と同じように子どもに考えさせることはできるか?
科学者や数学者のような熟達者は何をしているのか
熟達者の頭の道具箱
子どもに熟達者のように考えさせるにはどうすればよいか
教室への応用

第7章 子どもの学習スタイルによって教えかたをどう変えるか?
スタイルと能力
認知スタイル
視覚・聴覚・運動感覚学習者
能力と多重(マルチ)知能
結論
教室への応用

第8章 スローラーナーを支援するにはどうすればよいか?
人の知能を高めるもの
知能に対する考えの重要性
教室への応用

第9章 教師の知能についても考える
認知的技能としての指導
練習の重要性
フィードバックを受け、与える方法
意識的に高めようと努める―― 自己管理
スモール・ステップ

まとめ

子どもの認知機能から授業を作り変える

認知科学において、研究室で示されていることはイコール実践に役立つものとは限りません。例え反復行動が認知において大切だと示されていても、教室で反復練習をしても研究通りの結果は出ないものです。それは、反復行動は子ども達の集中力を下げ、やる気を奪ってしまうからです。同様に、今実際に行われている授業についても、科学的に良いとされているものはどのくらいあるのでしょうか。今回は「教師の勝算 勉強嫌いを好きにする9の法則」から認知科学と脳科学、教育学をすり合わせた新しい授業づくりについて読み解いていきます。

この本の作者はダニエル・T・ウィリンガムという人物です。心理学の文学士と認知科学の博士号を取得し、現在はヴァージニア大学で心理学の教授を務めています。研究内容は、幼稚園から高校までの学習者の認知心理学の応用です。

本書は全9章+まとめという構成となっており、各章で1つずつ、勉強嫌いを好きにする法則が示されています。

1章では、「子どもは好奇心が強いが、もともと考えることが得意なわけではない」という法則が提示されています。考えることは常に時間と労力を必要とします。それなのに、必ずしも明確な答えが出るとは限りません。しかし、考えるという活動に見合うだけの好奇心を持った時、人は考えることが好きだと言えるのです。それでも、人の好奇心はずっと続くものではなく、とても儚いものです。このような科学的見解を受け、授業に活かすためには発問の難易度、そして子ども達の認知能力の限界を考慮することが必要だと筆者は述べています。

2章では、「技能より先に事実的知識が必要」という法則が提示されています。例えば、料理方法を学ぶ授業において、下ごしらえや手順の意味を理解していない状態で料理方法を覚えるように言っても効果は薄いと考えられます。このようにならないためにも、子ども達の理解深度を把握し、地盤となる知識を与えなければならないと筆者は言っています。

3章では「記憶は思考の残渣」という法則が提示されています。記憶に残る学習をするためには、子ども達は何を考えるか、ということを意識して授業をする必要があると強調しています。

4章では「既に知っている事柄に結びつけて理解する」という法則が提示されています。新しい知識を得るために必要となる足がかりがあることを認め、どの程度子ども達が前段階となる知識を持ち合わせているか知る必要があると言っています。

5章では「練習無くして知的活動をマスターすることはできない」という法則が提示されています。前述した通り、子ども達の反復練習をさせるには限度があります。ですから、どんなことを練習するか、どのようにすれば飽きずに練習できるかなどを慎重に考え、ゆとりを持って学習させることが大切だと述べています。

6章では「初心者と熟達者の認知能力は根本的に異なる」という法則が提示されています。初心者と熟達者では何が違うのかを考え、初心者には熟達者のような創造的な考えを求めるのではなく、深く理解させるよう努めなければならないのだそうです。

7章では「子どもの思考方法と学習スタイルには大きな違いはなく、むしろ類似点が多い」という法則が提示されています。子どもたち一人一人に得意不得意や思考方法の違いは確かにありますが、一人一人に合わせた授業を作るのではなく、授業の内容を意識して授業を作る必要があると述べています。

8章では「努力を重ねることで知能に変化を及ぼすことができる」という法則が提示されています。子どもにとって知能とは能力によるものか努力によるものかという問題に向き合い、努力によるものであることを強調して話す必要があるといいます。

9章では「教えることも他の認知的行動と同様に練習が必要である」という法則が提示されています。教師も子どもと同様に教える練習が必要であり、それは経験を重ねるだけでなく意識的なフィードバックが必要であると紹介しています。

このように教授法の中でも普遍的な原理を科学的根拠を用いて紹介しています。教育従事者ならびに教育に関心のある保護者の方にもオススメの一冊となっております。ぜひ書店にて手に取ってみてください。

Daniel T. Willingham (著), 恒川 正志 (翻訳)
出版社: 東洋館出版社 (2019/4/26)、出典:amazon.co.jp
全目次
第1章 なぜ子どもは学校が好きでないのか?
頭は考えるようにはできていない
人間はもともと好奇心が強いが、好奇心ははかない
思考はどう働くか
教室への応用第2章 テストでは事実だけを求められるのに、どうすれば子どもに技能を身につけさせられるのか?
読解には知識が不可欠
認知的技能には背景知識が必要
事実的な知識が記憶を高める
教室への応用

第3章 なぜ子どもはテレビで見たことは全部覚えているのに、私の言うことは全部忘れるのか?
記憶の重要性
優れた教師の共通点
物語の力
物語構成を利用する
でも、意味がないときはどうすればいいか
教室への応用

第4章 子どもが抽象概念を理解するのは なぜそれほど難しいのか?
理解とは変装した想起である
なぜ知識が浅いのか
知識はなぜ転移しないのか
教室への応用

第5章 演習にはそれだけの価値があるか?
練習がさらなる学習を可能にする
練習が記憶を長く留める&
練習が転移を促す!
教室への応用

第6章 本物の科学者や数学者、歴史学者と同じように子どもに考えさせることはできるか?
科学者や数学者のような熟達者は何をしているのか
熟達者の頭の道具箱
子どもに熟達者のように考えさせるにはどうすればよいか
教室への応用

第7章 子どもの学習スタイルによって教えかたをどう変えるか?
スタイルと能力
認知スタイル
視覚・聴覚・運動感覚学習者
能力と多重(マルチ)知能
結論
教室への応用

第8章 スローラーナーを支援するにはどうすればよいか?
人の知能を高めるもの
知能に対する考えの重要性
教室への応用

第9章 教師の知能についても考える
認知的技能としての指導
練習の重要性
フィードバックを受け、与える方法
意識的に高めようと努める―― 自己管理
スモール・ステップ

まとめ