科学が教える、子育て成功への道 – 6Csのスキルとは何か

本書「科学が教える、子育て成功への道」が出版された背景に現在、教育に対して関心を持っている人は多いなかで、今の教育に疑問を持っている人やこれからどのようなスキルを身につけようと考えている人が非常に多いことがあげられるかもしれません。内容は科学的なエビデンスが体系的に散りばめられており、単なる子育て・本としても読めるが、もっと中身は濃い。幼児教育から社会人教育まで、学校の内側だけでなく、外側も包含した、学び続ける人生の骨格を示す書籍となります。

この本はアメリカを代表する学習科学・発達心理学者が筆者で、講演活動や社会貢献のためのプロジェクトなどの研究業績以外にも多くの活動を行っており、学習科学・発達心理学の第一人者であるキャシー・ハーシュ=パセックとロバータ・ミシュニック・ゴリンコフによって書かれた「BECOMING BRILLIANT」の翻訳本となります。

今の時代に成功できるような子供を育てるために必要なことが書かれていますが、本書で紹介されている能力や力は子供だけが身につけておいた方が良いことではなく、大人にとっても成功した人生を送るために必要なことです。本書でいう「成功」は、ただ良い大学を出て良い会社に勤めることではありません。様々な分野で一流となることが「成功」です。

子供が成功するために身につけておくべきスキルとして「6Cs」が必要だと説きます。「6Cs」とは、コラボレーション、コミュニケーション、コンテンツ、クリティカルシンキング、クリエイティブイノベーション、コンフィデンスの6つのCから名付けられたスキルです。コミュニケーションの強さは健康な状態や学業と関連するスキルの高さに関連し、クリティカルシンキングができる人は実行機能スキルという過去の事例や方法を生かして現在の問題を解決する新しい方法を考え出すことのできるスキルを備えています。このように「6Cs」にはこれから一流の人材になるには必要不可欠なスキルが揃っていますが、現在「6Cs」を身につけるための教育というものは日本で行われてきていません。これから先、成功の新しい共通の価値観を持ち子供達を成功に導くために教育を見直し、変えていかなければならないでしょう。

筆者も以下のように述べています。

“6Csは以下の点でこれまでのモデルと違う。一つ目の違いは、私達のモデルが子供の発達についての研究に基づいた 何十年にもわたる学習科学の成果から生まれたこと。こうした研究のおかげで、沢山リストアップされたスキルの中か ら、カギとなる相互に関連するスキルを選ぶことができた。こうして選ばれたスキルは、何度も同じプロセスを繰り返し て洗練され、あるスキルが別のスキルの成長を助け、お互い関わり合いながら発達する。二つ目は6Csは学ぶことで伸 ばすことができる能力であること。誰もが夫々のスキルにおいて、より進んだレベルに成長できる。但し一旦ある領域で 最高レベルに到達したとしても、全ての領域で通用するわけではない。これらのスキルは性格的な特徴ではなく、一旦最 高レベルに到達したらもう安泰というわけでもない。三つ目は、私達がこれらのスキルを教師や親ではなく、学習者に焦 点を置いて考えたこと。従って、何を学ぶかだけでなく、子供がどのような方法を用い、どのようなプロセスを通じて学 ぶかを重視している。四つ目は全てのスキルを様々な文脈で用いることができること。子供が学校で過ごすのは全生活時 間の二〇%に過ぎない。従って、学校「内」だけでなく、家庭や地域も含めた学校「外」の学びの場を作る必要があ る。6csを用いれば、いつでも、どこでも、誰とでも学びの場を作ることができるのである。”

世界中どの国の子供達も共通したスキルを必要としていると考えたニューヨーク科学アカデミーは地球規模での教育改革を構想しています。そこで必要となるのが公衆衛生学の専門家である、ジェファーソン大学のロブ・シモンズの言った「グローカル」の精神です。「グローカル」とは、子供に教育するスキルは世界共通のグローバルなものだが、文化の違いなどがあるため教える方法はローカルな方法で行うということです。シンガポールやフィンランドは成功の捉え方を変えて、新しい教育モデルを作っています。教育改革と言いながらも従来の教育方法を変えられていない日本は、他の教育改革をした国から学ぶことは多そうです。

本書は一流の子供を育てるために家庭内で行うべき教育を紹介しているものではなく、自分たちの家庭、学校、地域で行っていかなければならない教育を紹介しています。そしてその教育をするためには、私たちの今ある教育に対する考え方や成功に対する価値観を変えていく必要があり、それはこの本を読むことで納得できるのではないかと思います。

キャシー・ハーシュ=パセック (著), ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ (著), 今井 むつみ (翻訳), 市川 力 (翻訳)
出版社: 扶桑社 (2017/8/19)、出典:amazon.co.jp