教育の効果 – メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化 –

データから導き出す効果的な指導法

学校教員は皆自身の指導は良いものと認識し、他の教員に口を出したり出されたりすることはそう多くはありません。そこで、データに基づいた効果的な指導法を根拠とともに紹介する本「教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化」から普遍的な指導の最適解を読み解いていきます。

教育の効果の要因は何か

学習者の上げる成果には、様々な要因が入り混じっています。そこには学習者要因、家庭要因、学校要因、教師要因、そして指導方法要因です。今回は「教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化」からそれぞれの要因をデータより分析し、効果的な指導方法を導き出していきます。

本書の著者はジョン・ハッティ氏です。1950年生まれで、オークランド大学教授、メルボルン大学教授を経て、現在メルボルン大学名誉教授兼同大学院教育研究所長をされています。専門は教育測定・効果と教育心理学です。

本書は全10章の構成になっており、資料や図表を用いて解説されています。

1章では本書の試みとして、教員に様々ある指導方法を比較する方法を身につけ、フィードバックによって学習をより良いものとすることができると理解してもらうとあります。
2章では何をデータとして利用するか、どう判断するかが書かれています。

3章では筆者の主張があります。学習成果の様々な要因の中でも、教師が教室で行う指導が大きな影響を及ぼすとあります。しかし、すべての教員のすべての指導はすべて良いというわけではありません。「一部」の慎重な検討の元、計画的で見通しのある方法をとることができる教師の指導が学習者に影響を及ぼします。また、到達目標を教師と学習者がそれぞれ共有し合うことが学習を進める上で助けになってくると筆者は言っています。そして、教師にも学習者にも当てはまることですがフィードバックが優れた指導につながると述べています。教師は年々移り変わる学習者とそれに合わせた指導法の効果を分析しフィードバックすることで効果を上げていきます。それと同様に教師は学習者にもフィードバックを求めていかなければ効果的なものにはならないと言います。難しい課題に取り組むときには常に学習者にフィードバックを求めていかなくてはいけません。学習者がうまく対応できるように導くためのフィードバックなのです。

4章から9章までは学習者要因、家庭要因、学校要因、教師要因、指導方法要因の影響をそれぞれ分析しています。

10章では、前の章までを受けてのまとめと分析結果から読み取れたことについて書かれています。また、本書のタイトルにもあるメタ分析について、見通しが立つ指導と見通しが立つ学習の要件は教師が児童生徒の目を通して学習を見ること、そして児童生徒が自分たちの教師として自分を見ることだと主張しています。教師も学習者も自分には無い目で自身を見ることによって、学力を高める指導につながる答えが見えてくるのです。

巻末には分析やデータが付録としてついており、図表や事項の索引もあるなど読者に向けたサービス豊富な一冊となっています。教育従事者や研究者に一度は読んでほしい内容となっています。

 

John Hattie (原著), ジョン ハッティ (著), 山森 光陽 (翻訳)
出版社: 図書文化社 (2018/2/20)、出典:amazon.co.jp