航空のゆくえ ──自由化の先にあるもの

本書の著者は、現在日本空法学会会員、韓国航空宇宙法学会会員である柴田伊冊氏によるものです。同氏は空港勤務や東京成徳大学人文学部非常勤講師(国際航空論担当)の経験があり、本書は航空を通して地球社会の近未来について考えることを目的としています。

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全目次 - 航空のゆくえ 自由化の先にあるもの【目次】
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はじめに
航空をどのようにみるか/航空は、いつ現れたのか/排他的領空主権と黎明期の到来/航空会社の登場/転機の到来/本書の構成

I 航空現代史―世界の枠組みと航空協定の変遷から

第1章 混乱と荒廃の世界に秩序を打ち立てる 再建の時代
世界が国際航空の秩序を議論する――誰が議論したのか/議論の残影――誰が主導者になっ たのか/合意が秩序をつくる―世界秩序の形成基盤/航空の秩序形成――第二次世界大戦 後の枠組み/合意は何を意味したのか――黎明期の日米航空協定から/合意は何を意味した のか――安定期の日米航空協定から

第2章 自主性を確立する 航空会社の時代
秩序という形式に息を吹き込む――自ら航空を稼働させる/航空会社が世界を動かす――自主性の態様/運送会議運賃を決める/民営化と戦後秩序の成果

第3章 国際航空を航空協定の変遷からみる
二国間航空協定が航空の枠組みを形成していく/便利な道具―――国際社会と二国間航空協定 /二国間航空協定と空の自由―5つの自由/二国間航空協定は国益のために/国益の意味 /二国間航空協定の標準的な構造/航空協定の議定書/世界はどのようにみたのかーバー ミューダ航空協定の背景/萌芽期の自由化と二国間航空協定――なぜ、自由化が求められる のか/世界経済のグローバル化と二国間航空協定世界規模でみてみよう/ICAOが描 く世界の枠組み―将来像/複数国間航空協定の登場/ICAOと航空関係国が描く航空の 世界―自由化以降(1994~2013年)

第4章 自由を追求する 自由化の時代
自由化=既存の枠組みを変化させる/自由化は利用者のために?/揺れる二国間航空協定/ 揺り戻し以降――自由化への弾み/自由化の様相―アメリカ国内/オープンスカイ協定の 効用――アメリカ主導で世界は自由化を目指す/世界とオープンスカイ協定の関係――ヨーロッパに見るオープンスカイ協定

II 世界の再構築―航空が未来を変える
第5章 新たな世界の模索―地域の事例から
自由化の火際1―南米の例から/自由化の実際2 ―オーストラリアとニュージーランド の例から/自由化の実際3|APEC多国間航空協定の例から/自由化の実際4|中南 米の例から/多国間航空協定による統一を目指す ICAOから

第6章 アメリカが自由を普及させる
規制緩和――アメリカ国内から規制が消えたとき/アメリカの競争の態様―参入障壁、既 行からの継続の部分と革新の部分の間/自由化の世界への波及―国際航空政策宣言(19 95年)/オーブンスカイという「自由化」/自由化と航空会社の実行1|コードシェアの 普及、カボタージュ留保条項の形骸化/自由化と航空会社の実行2|アライアンスの普及、 国籍条項の形骸化

第7章 ヨーロッパのための自由
ヨーロッパの自由/統合の認識――航空管制機関/パッケージ1~3の段階的自由化/ヨーロッパの航空自由化の発端/EU域内の国籍と自由化――多数の国々と自由化の関係/訴 訟―――EU域内では誰が航空交渉の当事者なのか/空港と航空の位置――ヨーロッパの特徴 /ヨーロッパの自由――彼らの自由

第8章 アジア・太平洋地域のその後
再興――韓国の場合/自由化と国単位の戦略/日本乗り入れの実際/中国の台頭―航空大 国の可能性/LCCの覇権―伸長するLCC/アメリカやヨーロッパのLCCと比較する /日本の自由化は?/アジア・太平洋地域の自由―我々の自由

終 章 航空の近未来
多様化する航空―地球のその後/争点は何か/航空の近未来に求められること

おわりに

参考文献

本書の構成は、航空現代史とII世界の再構築の二つに大きく分かれています。

航空の歴史は大まかには1903年のライト兄弟の飛行実験に始まり、二度の世界大戦では武器としての戦闘機、戦間期には航空会社の登場などを経て現在に至っているとのこと。第一次世界大戦時には爆撃機からの攻撃の抑制のために排他的領空主権が確認されていますが、これは現在においても国防目的のみならず、航空産業での国益のために利用されています。また、第二次世界大戦は航空の技術発展に貢献したと同時に、民間航空を破壊した紛れもない張本人であり、航空業界に復興の必要を余儀なくさせた、後進的で矛盾のあるものでありました。

本書によれば、航空とは技術主導のものであるため、航空の動きを見ることで世界の動向を理解することに繋がるといいます。たしかに航空は高度な技術を必要とし、世界に繋がる大きな手段であることからもそれは納得できます。また、航空機が実際に国をまたがるということは、国ごとの通貨での精算方法の設定や、搭載業務の機材の統一など、様々な労力が必要となり、航空会社以外の民間の会社も巻き込み、必然的に経済が大きく動くきっかけになるものであったはずであると言います。航空の民営化は自由な競争を促し、国内外のグローバリゼーションにも繋がり、国益の大きな部分を占めるものとなったが、戦後の復興に寄与したのはこの大規模な民間航空の展開であったと言えます。

また、航空の自由化が国による保護育成のもとではなく、他の航空会社と競争することによって利用者のためになるという主要な考えの変遷については、まさに市場経済における自由放任主義そのものであり、航空の発展の仕方が経済の発展の仕方と同じであることが明らかでありました。そして、現在発展した航空業界は多方面で国籍を逸脱しており、国籍に根拠を置いた国による規制が経済的なものからセキュリティーに重点が移っているということも、航空は現代世界の情勢の縮図のように思われます。

本書から、現在までに全世界が試行錯誤しながらも発展を遂げさせ、自由化のあり方を模索してきた航空の未来が、利用者のための安全を重視しながら、他の航空会社と競争することで今後も発展していくことが、世界のより良い経済発展と、それに伴う平和に繋がるのだろうと考えさせられる一冊となっています。

柴田伊冊 (著)
出版社: 筑摩書房 (2019/5/10)、出典:amazon.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに
航空をどのようにみるか/航空は、いつ現れたのか/排他的領空主権と黎明期の到来/航空会社の登場/転機の到来/本書の構成

I 航空現代史―世界の枠組みと航空協定の変遷から

第1章 混乱と荒廃の世界に秩序を打ち立てる 再建の時代
世界が国際航空の秩序を議論する――誰が議論したのか/議論の残影――誰が主導者になっ たのか/合意が秩序をつくる―世界秩序の形成基盤/航空の秩序形成――第二次世界大戦 後の枠組み/合意は何を意味したのか――黎明期の日米航空協定から/合意は何を意味した のか――安定期の日米航空協定から

第2章 自主性を確立する 航空会社の時代
秩序という形式に息を吹き込む――自ら航空を稼働させる/航空会社が世界を動かす――自主性の態様/運送会議運賃を決める/民営化と戦後秩序の成果

第3章 国際航空を航空協定の変遷からみる
二国間航空協定が航空の枠組みを形成していく/便利な道具―――国際社会と二国間航空協定 /二国間航空協定と空の自由―5つの自由/二国間航空協定は国益のために/国益の意味 /二国間航空協定の標準的な構造/航空協定の議定書/世界はどのようにみたのかーバー ミューダ航空協定の背景/萌芽期の自由化と二国間航空協定――なぜ、自由化が求められる のか/世界経済のグローバル化と二国間航空協定世界規模でみてみよう/ICAOが描 く世界の枠組み―将来像/複数国間航空協定の登場/ICAOと航空関係国が描く航空の 世界―自由化以降(1994~2013年)

第4章 自由を追求する 自由化の時代
自由化=既存の枠組みを変化させる/自由化は利用者のために?/揺れる二国間航空協定/ 揺り戻し以降――自由化への弾み/自由化の様相―アメリカ国内/オープンスカイ協定の 効用――アメリカ主導で世界は自由化を目指す/世界とオープンスカイ協定の関係――ヨーロッパに見るオープンスカイ協定

II 世界の再構築―航空が未来を変える
第5章 新たな世界の模索―地域の事例から
自由化の火際1―南米の例から/自由化の実際2 ―オーストラリアとニュージーランド の例から/自由化の実際3|APEC多国間航空協定の例から/自由化の実際4|中南 米の例から/多国間航空協定による統一を目指す ICAOから

第6章 アメリカが自由を普及させる
規制緩和――アメリカ国内から規制が消えたとき/アメリカの競争の態様―参入障壁、既 行からの継続の部分と革新の部分の間/自由化の世界への波及―国際航空政策宣言(19 95年)/オーブンスカイという「自由化」/自由化と航空会社の実行1|コードシェアの 普及、カボタージュ留保条項の形骸化/自由化と航空会社の実行2|アライアンスの普及、 国籍条項の形骸化

第7章 ヨーロッパのための自由
ヨーロッパの自由/統合の認識――航空管制機関/パッケージ1~3の段階的自由化/ヨーロッパの航空自由化の発端/EU域内の国籍と自由化――多数の国々と自由化の関係/訴 訟―――EU域内では誰が航空交渉の当事者なのか/空港と航空の位置――ヨーロッパの特徴 /ヨーロッパの自由――彼らの自由

第8章 アジア・太平洋地域のその後
再興――韓国の場合/自由化と国単位の戦略/日本乗り入れの実際/中国の台頭―航空大 国の可能性/LCCの覇権―伸長するLCC/アメリカやヨーロッパのLCCと比較する /日本の自由化は?/アジア・太平洋地域の自由―我々の自由

終 章 航空の近未来
多様化する航空―地球のその後/争点は何か/航空の近未来に求められること

おわりに

参考文献