なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)

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キリスト教の辞書的一冊

初心者向けのキリスト教に関する基本的な事項から、宗派による細かい違いまでQ&A形式で掲載されています。また、祭服や作法などはイラストを用いて解説されているので、視覚的にもわかりやすくなっています。索引も完備されているので、辞書的一冊としてどなたにもおすすめの本です。

八木谷 涼子 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2012/4/6)、出典:出版社HP

西方教会の期節と祭色(典礼色)

朝日新聞出版
なんでもわかるキリスト教大事典
八木谷涼子

本書は二〇〇一年十二月、新潮OH!文庫より刊行された「知って役立つキリスト教大研究」を改題し、加筆・修正したものです。

前奏(まえがきのまえがき)

著者は学問を究めた学者ではないし、名の知られた作家でもない。それでも二〇〇一年に刊行され、十刷まで版を重ねた「知って役立つキリスト教大研究」(新潮OH!文庫)は多くの方の支持を得た。その理由としては、一冊の文庫に意外なほどの情報が詰まっていたこと、図版が多くてわかりやすかった(ように見えた)こと、そして、それまでになかった切り口で情報を整理していたことがあげられるだろう。記述が客観的だという感想は、キリスト教会内部の方々からもいただいた。「洗礼を受けた人には、この本をプレゼントしているんですよ」と教えてくれた牧師もいる。
本書はその増強改訂版である。今回新たに朝日文庫に加えてもらうにあたっては、前作のミスを修正して最新情報を加え、記述事項を増やし、イラストや図表類はすべて制作し直した。五十頁近く増強しているので、前作をおもちの方にも入手価値のある一冊になっていることと思う。それでは、後奏までごゆっくりとお過ごしください。

招きのことば(まえがきに代えて)

この本を手に取ってくれたあなたは、多かれ少なかれ、キリスト教に関心をおもちのことと思う。ことに、西欧を舞台にした小説や映画、報道番組などに親しむ機会が多いのではないかと想像する。聖書もすでに開いたことがあるかもしれない。また、欧米の文化を真に理解するためには、聖書とキリスト教の知識が不可欠、という指摘を耳にしたことがあるかもしれない。あるいは、実際にクリスチャンとの交流をおもちの方もいるかもしれない。もしそうだとしたら、あなたはこれまでにこんな疑問を抱いたことはないだろうか?

「カトリックとプロテスタント以外にどんな教会があるのだろう」
「プロテスタントも内部はいろいろ複雑らしいけれど、具体的にはどんなふうに分かれているの?」
「同じキリスト教とはいっても、A派ではなくB派に属するということは、この時代、この地域において、なにを意味したのかな」
「服装によって聖職者を見分けるには?」
「《神父》と《牧師》は、どういうふうに使い分けたらいいんだろう」
「《ビショップ》は、どう日本語にしたら適切なのか」……

キリスト教は、もちろん聖書(旧約と新約)を土台にした宗教である。信者たちは、同じ唯一の神を礼拝するという意味で、同一の信仰をもち、時間と空間を超えて、ひとつの聖なる普遍的な教会に属している。それは、神の目だけにしか見えない教会だ。いっぽう、人の目に見える教会、すなわち現実に地上に組織された教会を見ていくと、個々の人びとの信仰のあり方は、ひとつの枠組みだけで単純に整理しきれない事例があまりに多い。そもそも、なにを聖書の「正典」とするかは、そのグループによって違う。教義の強調点、聖職者についての考え方、信者のライフスタイルも一様ではない。ようするに、信じ方がそれぞれ異なるのである。
また、日本におけるキリスト教は、異文化圏からもたらされたという意味で、「翻訳の世界」だといえる。教会で使われている多くの用語は翻訳されたもの、あるいは、ある言語での音を日本語で表記したものだ。その訳語は群れごとにまちまちだったり、同じ日本語でも意味する範囲が異なっていたりすることもある。
本書は、そんな教えや特徴、独特の用語を、キリスト教の内部にある複数の流れ、すなわち「教派」ごとにとらえようとした試みである。もちろん、その目的は、それぞれの間に優劣をつけたり、どこが「正統」でどこが「異端」かといったジャッジを下すことではない。また、どこかの教派への入信をすすめたり、逆に、阻もうという意図もない。学問的な研究を意図したわけでもない。あくまで平易な「ガイド本」として、冒頭にあげたような素朴な疑問を解きほぐし、キリスト教圏の文化の理解に役に立つ基礎情報を提供すること、それが本書の目標だ。本文には、あえて表現や表記を統一しなかった部分がたくさんあろが、これは、既存の辞書に収録されることの少ない、その教派特有の用語を可能な限り紹介しようとした結果である。索引や用語の英和対照表も用意したので、とくに、翻訳関係者の方々には便利に使っていただけるのではないかと思う。
それでは、まずはキリスト教の基礎知識から入ってみよう。

八木谷 涼子 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2012/4/6)、出典:出版社HP

〈目次〉

前奏(まえがきのまえがき)
招きのことば(まえがきに代えて)
本書で用いた表現について

第1章
初めての人のためのキリスト教Q&A
・キリスト教徒=クリスチャンということでしょうか?
・では、クリスチャンって具体的にどういう人たちのこと?
・どうすればクリスチャンになれるんでしょうか?
・「洗礼」するってどういうこと?
・よく「救い」と聞きますが、具体的にはどういうことですか?
・「聖書」ってなんでしょうか?
・クリスチャンは、みんな同じ聖書を読んでいるの?
・イエス・キリストって神さまのことですか?
・マリアさまって女神さまのようなもの?
・ローマ法王っていったい何をする人のこと?
・宗教改革ってなんですか?
・牧師などの聖職者って結婚できないんでしょうか?
・神父や修道士・修道女がいるのがカトリックで、牧師がいるのがプロテスタントですか?
・懺悔とか告白って聞きますが、いったい何をするの?
・サクラメントってなんでしょう?
・虫餐式ってどういうもの?
・キリスト教のイベントというと、クリスマスと結婚式くらいしか思い浮かびませんが、ほかにはどんなものがあるの?
・さっきから出てくる「教派」ってなんのことですか?

第2章 比べてみよう教派いろいろ
・教会の分け方いろいろ
正統教会と異端教会(四世紀以降)
東方教会と西方教会(十一世紀以降)
カトリックとプロテスタント(十六世紀以降)
法定教会と、それ以外の自由教会(十六世紀以降)
プロテスタント内部の区分け(リベラル派と福音派)
・教会政治
監督制
長老制
会衆制/組合制
教会政治の図式
教派の系譜 全国版
・東方正教会
・ローマ・カトリック教会
ローマ・カトリック いまむかし
・ルター派(ルーテル教会)
・聖公会(アングリカン教会)
・改革派/長老派
・会衆派/組合派
・バプテスト
・メソジスト
・ペンテコステ派
・メノナイト系
・クエーカー (フレンズ)
・ユニテリアン・ユニヴァーサリスト
・救世軍
・福音派&原理主義者
・十九世紀のアメリカで生まれたグループ
セブンスデー・アドベンチスト
エホバの証人
末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)
キリスト教科学(クリスチャン・サイエンス)
・日本で生まれたグループ
無教会主義

八木谷 涼子 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2012/4/6)、出典:出版社HP

第3章 少し違いが見えてきた人のための調べてみようキリスト教
・赤ちゃんのときに洗礼を受けると誰でもクリスチャンになるの?
また、洗礼って誰でも受けられるもの?
洗礼いろいろ
・クリスチャンって何をするの? 夜寝るときと食事のときに必ずお祈りをするっていうイメージしかないのですが
・クリスチャンは禁酒禁煙で、離婚も禁止?
・「神を礼拝する」ことのほかにも、人びとが教会のメンバーになる理由はあるのでしょうか?
・お祈りの言葉はみんな同じなの?それとも仏教のように連っているの?
主の祈りいろいろ/祈り・礼拝・儀式時のポーズいろいろ
・礼拝で歌う賛美歌(里歌)も教派ごとに特色があるのですか?
・自分とは違う教派の教会の礼拝に参加したり、教会を移ることは可能なのですか?
ローマ・カトリック、ルター派、聖公会の用いる祭貝/プロテスタントの用いる聖餐用と陪餐/献金の時間に用いられるグッズ/ローマ・カトリック教会 ミサでの聖体拝領/十字架いろいろ/東方正教会の祭具と領聖/一般的なプロテスタント教会の聖壇/東面式の聖公会の祭壇/西方教会 教会堂 内部のグッズいろいろ
・同じクリスチャンでも、教派が違う人同士で結婚はできるの?
・一番結婚式が派手/地味な教派はどこ?
・西洋史をひもとくと、キリスト教徒が起こした戦争の話ばかりが目につきます。絶対に暴力を否定し、文字通りに「右の頬を打たれたら、左の頬を向ける」クリスチャンというのは存在するのですか?
・教会はどんな人でも受け入れると聞いています。でも、実際問題として、人種や出身地、財産の有無などと、教派はどのように関わっているのですか?
・教会内部でそういうことを理由にした差別や区別はあるのでしょうか
・子ども向けの物語などにも、そういう教派がはっきりわかるお話はありますか?
・神父や牧師、修道士や修道女になるには何年くらいかかるのですか?
ローマ・カトリック教会 修道会 修道者コースの一例
・教会の神父や牧師はどうやって生計を立てているの?
・聖職者は階級によって服装が違うのですか? また、一般の信徒でも、どこの教派に属しているのか、服装によって見分けることができますか?
東方正教会の祭服いろいろ/西方三教派の祭服いろいろ/プロテスタント牧師服いろいろ/聖職者のシャツのカラーはこうなっている!/侍者・聖歌隊員の服いろいろ
・聖職者は結婚できるのでしょうか。また、世襲もあるのですか?
・女性を聖職者として認める教派はどこですか?
・同性愛者の聖職者がいる教派、同性同士の結婚を祝福してくれる教派はありますか?
・キリスト教圏の国に長期滞在します。気をつけたほうがいいことってありますか?
・実際にキリスト教の教会に行ってみたくなりました。どうすれば探すことができますか?
・教会というのは、いつ行ってもいいのですか?
・ちょっとひと休み あなたに向いているのはどの教派?

第4章 クリスチャンライフあれこれ
イングランドの田舎に住む上層中流階級の子どもの日曜日(1920年代)/北米プロテスタント家庭のある日曜日 (19世紀後半~23世紀前半) /ある日本の正教徒の一日(現代)/正教徒の動作いろいろ/クリスチャンの1年(ヨーロッパのローマ・カトリックを中心に)
・七つの秘跡でたどる ローマ・カトリック教徒の一生
・牧師インタビュー 牧会者の生活
・シスターインタビュー 修道者の生活

第5章 日本のクリスチャンの言い回しがわかるキリスト教会用語表現集
・感謝(あとがき)
・後奏(増強改訂版のあとがき)

コラム|
《異端》について
もっとも愛唱されている定番賛美歌とは?
一夫多妻のクリスチャンはいる?
アメリカの教派ジョーク
アーメン・コーナー
「合同教会」あれこれ
受動態
神父と牧師
キリスト者の死にまつわる表現
死と死者の表現、儀式・行事の種類、追悼の言い回しなど
キリスト者の挨拶・結びの言葉
ありがちなワープロ誤変換
教会の教籍にまつわる用語
「にっき」はどっち?
聖書の書名と略語

附録
英和対照表/教派の系譜/4教派固定祝日対照表/4教派移動祝日対照表2012年版/9教派対照表/東方正教会&ローマ・カトリック聖職者対照表/参考文献リスト

カバー装戦
小林祐司(TYPEFACE)
カバー装画・本文イラスト
八木谷涼子

本書で用いた表現について

■枠組みをさす言葉
キリスト教 ひとつの宗教に対する総括的な名称
宗派 宗教全体のなかの大きな流れ(キリスト教、仏教、イスラームなど)
教派 キリスト教内部の大きな流れ(聖公会、メソジストなど)
教団 教派を構成するいろいろな社会的組織(ルター派のなかの、日本福音ルーテル教会、日本ルーテル教団など)。
キリスト教界では「日本基督教団」を示す略称としても使われるが、本書では普通名詞としてだけ用いた
群れ 教派や教団のなかでさまざまに分化した小さな流れ。必ずしも組織化されていない。なお、日本のプロテスタント教会では「群れ」という表現に軽践的なニュアンスはまったくなく、書き言葉でよく使われる
教会 最小単位としての個々の教会(各個教会)をさす場合もあるし、教派や教団全体をさして使う場合もある。ただ し本書では「教会堂」(建物)の意味では使っていない。なお、現実には、名称として「教会」の語を用いず、 「集会」とか「フェローシップ」などと名乗る教会もある

■教会の奉仕者と信者をさす言葉
教役者 教派を問わず、キリスト教界全体で、教会や信徒のために働く人びと全体をさす。教派によっては、教職(職)候補者や信徒奉仕者までを含む
教職/教職者 プロテスタント教会一般で牧会にあたる者。とくに、教職資格が必要な教団における牧師
聖職/聖職者 狭義には、正教会やローマ・カトリック教会、聖公会で按手を受け、専務にあたる者。キリスト教の教役者一般をさして使う場合もある
牧会者 聖公会を含むプロテスタント教会一般、および正教会において、ひとつの教会を率いる指導者
牧者 羊の群を率いる者、転じて教会(会家)の指導者
信者 キリスト教の信仰をもつ者。いわゆる、クリスチャン。必ずしもどこかの組織(教会)に属しているとは限らない
信徒 一般に、上記の教職および理職以外の教会員をさす。ただし厳密には、プロテスタント教会の教職者も、イエ ス・キリストの体である教会を形づくる者という意味で、「信徒」の一員である。ローマ・カトリック教会においては、叙階の秘跡を受けず修道会にも属していない者だけを「信徒」と呼ぶ
教会員 登録された、その教会のメンバー
(以上の区分けは、必ずしも全教派に共通する、普通的なものではない)
※本文中の横文字のうち、とくに断りのないものは英語表記である

八木谷 涼子 (著)
出版社 : 朝日新聞出版 (2012/4/6)、出典:出版社HP