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人間の脳について、どのくらい関心があるでしょうか。脳科学は、人間の脳の仕組みを解明することを目指す学問ですが、未だに解明されていない部分が数多くあります。
しかし、日々の研究により、解明された箇所も増えています。例えば、記憶の仕組みがその一つです。自分は物事をうまく覚えられない、と感じる方もいらっしゃると思いますが、記憶を改善する方法が発見されています。脳科学は、実は私たちの生活を変える可能性がある学問なのです。脳科学が発展することにより、性格や感情のメカニズムがわかれば、より人付き合いがうまくできるかもしれません。
うつ病などがより効果的に治療できるかもしれません。脳の仕組みの解明は、勉強や仕事、運動や恋愛など、私たちに身近なテーマにも関わります。脳科学の研究は現在も進められていますから、最新の研究を書籍で追っていくのはいかがでしょうか。
進化しすぎた脳
本書は、大脳生理学という脳科学の一分野を研究している著者が、ニューヨークで、高校生に対して行なった講義をまとめた本です。著者が講師として生徒に質問を投げかけ、何人かの生徒が答えを返し、その回答の内容を踏まえて、脳についての解説を行う形式となっています。
そのため、文体が話し言葉で、難しい言葉が使われていないため、わかりやすくなっています。第1章では、生徒たちが持っている脳のイメージについて質問したり、脳とコンピュータの違いから哲学的な視点で脳を捉えたりしています。そこから徐々に、人間の脳の構造や特徴について解説しています。脳のどの部分がどのような働きをしているか、どの神経がどのような命令を扱っているかを講義の時点で解明されているポイントについて紹介しています。そこで、著者は人間の脳が過剰に進化したのではないかという考えを脳と身体との関係から持っているとしています。
第2章は、心や意識といった抽象的なものと脳の関係性や、言葉に脳が依存しており、抽象的な思考をするためには言葉が必要である、といったより脳の本質に迫る解説をしています。第3章では、脳と記憶がどのように結びついているかを説明しています。また、神経細胞の仕組みから脳の仕組みを解明しようとしています。第4章では、人間は進化のプロセスを進化させると題し、講義のまとめを行なっています。第5章では、講義の後に著者と一緒に研究している学生との対談がまとめられています。脳科学の研究の内容と意義について話し合われています。
脳はいいかげんにできている その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ
本書は、脳の研究者によって書かれています。著者は、かなりの数の人々が脳に興味を持っていることを実体験を通して認識している一方で、誤った脳の見方がメディアなどで宣伝されていることに不満を持っています。脳は非常に洗練された究極の機械である、といった紹介や脳を神聖視する風潮に対して、著者は、脳のはたらきは驚異的に優れているが、設計自体は間に合わせで、全く非効率の洗練されていないものであるとしてします。
本書では、その脳のいい加減なつくりについて焦点を当て、脳の仕組みから脳の不思議なはたらきについても解説しています。第1章は、脳の設計がどれほど欠陥だらけかを説明し、それでも人間の脳が賢くなっている理由についても触れています。第2章は、脳の部品が非効率であることを説明しています。第3章では、脳のそれぞれの部品のはたらきについて解説しています。第4章では、脳が感情と感覚にどのように作用しているかについて説明しています。第5章は、記憶と学習をテーマに、記憶の仕組みと記憶の特徴について解説しています。
第6章は、愛とセックスと題し、人類が他の種と比べて、大きく異なる性質を持ち、そのような性質を持つ理由について考察しています。さらに、性差や性的指向との関係性についても触れています。第7章では、睡眠と夢について、第8章では、宗教と脳の関係について説明しています。第9章は、まとめとして、脳の設計が間に合わせであるという結論を主張しています。
脳科学は人格を変えられるか?
人間には、様々な性格のタイプがあり、それが個性となって、その人を形成しています。本書では、なぜ前向きな性格と後ろ向きな性格があるのだろう、という素朴な疑問を解明しようとしています。ものごとをどう見るか、それに対してどう反応するかによって、実際に起きることが変化する強力な事実を心理学が解き明かしていることを序盤で紹介し、徐々に脳の活動パターンが解き明かされていることを説明しています。
そして、ポジティブな心に関連した神経回路をサニーブレイン、ネガティブな心を担当している神経回路をレイニーブレインと呼び、両者の関連性や違いを本書のメインテーマにしています。第1章では、快楽と不安の二項対立と題して、ものの見方が実際の行動に与える影響やサニーブレインとレイニーブレインの対立の説明を行なっています。第2章では、具体的な例を挙げて、楽観的な見方の重要性や楽観的であることが何をもたらすのかを示しています。第3章では、不安や恐怖がもたらす影響やレイニーブレインの役割について解説しています。
第4章では、人間の基本的な要素とも言える遺伝子に注目して、遺伝子が性格を決めるのか調査した研究の結果についてまとめています。著者が行なった研究ですが、研究の過程と結果が非常に興味深いものです。第5章は、人間の脳が変化する不思議な特徴について解説しています。第6章では、抑うつ病が今後の神経の解明によって、科学的に治療できる可能性について触れています。人間の性格について興味のある方にはオススメの本です。
あなたの知らない脳 意識は傍観者である
皆さんは普段、行動を取るときや様々な選択肢の中から選び出すとき、どのように判断しているでしょうか。なんとなくといったり、勘であったり、その後の展開を予想した結果などが理由として考えられるでしょう。それらの理由は全て、自分が意識して選んだ、と考えている点で共通しています。しかし、本書では、その認識について違う可能性を示しています。本の副題の「意識は傍観者である」は、人間の行動をコントロールしているのは「自分の意識」ではない、ことを表しています。
その言葉だけを聞くと、信じられないような話ですが、実際に、意識が傍観者であることを裏付けるような事例があります。例えば、自動車を運転している際に、衝突の危険をはっきり認識する前に、足はブレーキを踏んでいることがあります。天啓という言葉や神がかりといった現象もその事例の一つと考えられるかもしれません。
つまり、脳はたいてい自動操縦で動いており、意識は遠い外れから脳を傍観しているにすぎない、というのです。そのため、本書では、人間が判断を行う仕組みの解明への取り組みを解説していますが、これまでの常識や当たり前だと思っていたことが覆されていき、新たな仮説が立てられていく過程に、知的好奇心を感じることでしょう。
さらに、本書の後半で、意識が判断を直接下していないという事象を、哲学的な視点から考え直しており、人間の脳の神秘性と難しさが実感できます。
つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線
本書は、脳科学の様々な研究分野について解説した本です。扱うトピックは章ごとに分かれており、自分にあった読み方ができます。脳科学は、人間の脳を理解する学問です。現代では、遠い宇宙のことや小さな原子の世界について、人間は多くのことを理解していますが、自分の脳や心については、比較的にはあまり分かっていません。
なぜなら、人間の脳は物質であるものの、身体の他の臓器と異なり、脳の神経細胞は、その一つ一つがそれぞれ異なる働きをしているためです。そのために、心や脳の働きを物質レベルで理解しようとするとき、どの分子がいつどこで働いているかを明らかにする必要があります。脳は複雑であるために、その理解へのアプローチも様々です。第1章では、記憶のメカニズムが研究で明らかになりつつあることを解説しています。
記憶を思うままに操作できる可能性も考えられます。第2章では、時間と脳の関係について説明しています。第3章では、情報を伝える神経の仕組みとその仕組みが取られている理由の研究について書かれています。第4章は、五感と脳の関係性がテーマです。感覚が生み出されるメカニズムについて、ハエを観察して解明を目指していることが説明されています。第5章では、数理モデルなどの理論からのアプローチについて解説しています。
人工知能の説明もあり、人間とAIの違いも理解できるようになっています。第6章は、感情と神経回路の関係性の研究がテーマです。第7章は、脳研究を支える最新技術の紹介をしています。第8章では、うつや精神疾患を脳の仕組みの解明によって克服しようとする動きについて説明しています。第9章では、親子関係と脳の関係性について紹介しています。
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脳はいいかげんにできている: その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ