バレーボールを知る5冊 -観戦から実際のプレーまで-

バレーボールの試合というものは、なかなか教科書通りにはいかないものです。しっかり点数を取るだけでは勝てませんから、選手一人一人がどうしたら点が取れるのか考え、工夫をしていくことが大切です。今回は、基本的なプレーから、観戦の視点からバレーボールを見るのを楽しむための書籍を詳細します。

バレーボール超観戦術 「数」の視点で、プレーの駆け引きを読み解く

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1964年に開催された東京オリンピックで女子バレーボールが金メダルを獲得して東洋の魔女と呼ばれるようになりました。男子も1972年のミュンヘンオリンピックで金メダルを取り、今ではバレーボールは日本人にとって身近なスポーツの一つになってきているのではないかと思います。

つい最近までバレーボールのW杯が開催されていました。男女ともに連日世界各国の代表と熱い試合を繰り広げた姿をテレビ等で見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。惜しくもメダルには男女ともに届きはしなかったものの、次の大きな大会である東京オリンピックには大きな期待が寄せられています。

バレーボールが強いチームはどのようなチームだと思いますか。強いスパイクが打てる選手がいる、身長が高い選手がたくさんいる、誰もがそう考えるでしょう。ですが一番大切なのはすべてのプレーの最初となるサーブであり、どのようなサーブを打つのか決める戦術であると本書の著者である山本隆弘氏は言っています。

山本氏は、中学1年生からバレーボールを始め、高校に入ると1年生の頃からレギュラーに抜擢され、全国大会にも出場しています。2004年には日本人バレーボール選手としては初めてプロ契約を結びプロバレーボール選手となりました。オリンピック日本代表としてプレーし、現在では現役を引退して解説や普及活動を行うなど幅広く活動されています。
そのようなバレーをする側と見る側、両方のプロの目線から本書は書かれており、バレーボールの試合を何倍も面白くしてくれることでしょう。

第1章では、ポジションとローテーションという分野に焦点を当て、ローテーションをすることで試合はどう動いていくのか図を途中に入れながらわかりやすく説明しています。
第2、3章ではプレーについて書かれており、冒頭で取り上げたサーブについてであったり、スパイカーとそれを止めようとするブロッカーやボールを受けるレシーバーとの駆け引きであったりと、ただ試合を見ているだけでは気づけないようなポイントを解説しています。

最後の部分ではスパイクの決定率といったデータの見方から今の日本代表についても書かれており、バレーについて知りたい人には是非おすすめしたい一冊になっています。
2020年の東京オリンピックに向けて今からバレーボール観戦のプロになる準備を本書を通して始めてみてはいかがでしょうか。

バレーボールメンタル強化メソッド今より強い自分、強いチームになるために

渡辺 英児 (著)
実業之日本社、出典:出版社HP

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私たちが生活する上で、脳と身体は密接に関係しています。自分が経験したことのないことをするときは不安や緊張という感情が生じ、手が震えたり、心拍数が上昇し、パフォーマンスが低下します。スポーツにおいても同様に普段対戦しない、情報がない時は緊張と焦りから余裕がなくなり、普段は考えられないようなミスが生まれてしまいます。運動部に所属したことのある方なら、大会で緊張してしまい、思うように体が動かない経験をしたことがあるのではないでしょうか。

特にバレーボールでは、オーバーパスやアンダーパスのようなバレーボールにしか見られないようなプレーが多数存在しており、またラリー中にボールを持つという動きが一切無いため、腕の角度やボールを当てる面の位置など非常に細かい部分まで調整が必要で、それに伴い、メンタル面の強化も他のスポーツに比べると重要になっています。

本書の著者である渡辺英二氏は、海外の大学院の修士課程、中京大学の博士課程を得てスポーツ心理学について研究されてきました。2003年から10年間、龍谷大学の男子バレーボール部監督を務め、2009年から全日本女子バレーボールチームのメンタルトレーナーに就任し、2012年のロンドン五輪では28年ぶりのメダル獲得に影ながらも大きく貢献しています。

まさにメンタルの専門家と呼べる方が書き記した本が本書であり、どんな状況でも自分のなかの最高のパフォーマンスを発揮するための心の調整法について書かれています。
本書は、第1章から第5章までの構成となっており、全日本女子チームにメダルをもたらすまでの渡辺氏が行ってきたこと、メンタルは鍛えるものであり、そのためにはまず、考え方を含め自分自身を見つめてみること、そして本番前や最中の意識や心構えといった大事なプレーに結びつく前の段階に焦点が当てられています。

本文、タイトルにも書かれているように主に書かれているのはメンタルとあくまでバレーボールの関わりなので、バレーボールをしている人向けの本にはなっていますが、メンタル強化のための考え方や集中力向上については誰にでもあてはまることなので、メンタルに興味をもっている方にもおすすめしたい一冊になっています。

バレーボール 基本テク&練習法

大山 加奈 (監修)
実業之日本社、出典:出版社HP

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バレーボールはプレー一つ一つが非常に独特であり、かつボールを床に落としてはいけない、同じ人が2回続けてボールに触ってはいけないとルールも厳しく初心者にはかなり難しいスポーツです。そのため、上達するスピードも他のスポーツに比べて遅く、他の人に直接教えてもらってもなかなかコツをつかめません。ですが、上達しにくいということは逆に考えると上達できれば他の人に差をつけられるということでもあります。

本書はそうしたバレーボールが他の人よりももっと上手になりたい方向けに書かれており、パス、レシーブ、サーブといった基本技術からウォーミングアップやチーム練習まで、大山加奈氏監修のもと完全網羅されています。

大山氏は小学校2年生からバレーボールを始め、6年生の時には日本一に、高校生になってもその勢いは止まらず、持ち前の高身長を活かしたパワフルなプレーで唯一の高校生プレーヤーとして世界選手権に出場しました。その後も日本代表の一員としてプレーし、現在は現役を引退しているもののバレーボールの普及活動を精力的に行なっています。

本書は第1章から第9章までの構成になっており、各章ごとにサーブやアタックといった一つのプレーに重点をおいて展開されています。そのため、非常に細かい部分まで説明がされています。後半部分では、チームで行う練習の方法、バレーボールで使う主な筋肉を効果的に刺激するストレッチやウォーミングアップのやり方についても書かれています。

さらに、本書は写真が多く引用されているため、イメージしやすくなっています。連続写真を用いることによって自分とどこが違っているのかを明確にすることができ、効率的に練習をすることができます。また、ページの合間に大山氏のコラムがあります。バレーボールを始めたきっかけや苦悩などが書かれており、プレー以外の面でも参考になるはずです。
ポイントを絞った解説とわかりやすい写真で楽しみながら上達することができます。是非バレーボールをしている方に手にとってもらいたい一冊になっています。

セッター思考 人と人をつなぐ技術を磨く

竹下 佳江 (著)
PHP研究所、出典:出版社HP

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世の中にはバレーボールのポジションになぞらえて3つのタイプの人がいるとされています。

人をグイグイ引っ張っていくような行動力があり、団体競技のスポーツなら、チームのエースになるような存在である「アタッカー型」、黒子のように自分から人前に出るようなことはあまりなく、チームみんなの活躍を支える縁の下の力持ちのような存在である「セッター型」、やや受け身なところがあるものの与えられた役割はきっちりこなす職人のような存在の「リベロ型」に分類することができ、その中で最もリーダーに向いているのは「セッター型」の人間であると本書の著者である竹下佳江氏は述べています。

竹下氏は高校を卒業後実業団のチームに所属、2004年には日本女子バレーボール選手で初めてプロ宣言を行いました。2005年からは日本代表のキャプテンを務め、2011年のW杯においてベストセッター賞と個人賞を受賞、2012年のロンドン五輪では日本女子悲願の銅メダルを獲得しました。現在は現役を引退されていますがゲームの解説員や、子供たちの指導などバレーボールの魅力を選手時代とは違う形で伝える活動をされています。

本書は竹下氏が現役を引退後、様々な活動を通してバレーボール以外の世界を知るようになり、選手時代に培ったセッターの考え方がいろんな場面で活かすことができると気づきます。そして、どうすれば一人一人異なる特徴を持つチームを一つにまとめることができるのかを、人と人をつなぐ技術である「セッター思考」を用いて考えています。

本書は、「セッター思考」を身につけるために竹下氏がどのようなことをしてきたのか、思考の鍛え方、磨くための7つの習慣であったりと、私たちが「セッター思考」を身につけるためのポイントについても書かれています。リーダーとしての能力を伸ばしたいと考えている方や、人との接し方についてのスキルを磨きたいという方に是非おすすめしたい一冊となっています。

DVDで差がつく! 小学生のバレーボール 上達のコツ50 新版

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今、バレーボールは私たちにとって身近なスポーツの一つになりつつあります。小学生から大人までそれぞれ毎年全国大会が開かれていたり、学校の体育の授業にバレーボールが組み込まれていたりと今後もバレーボールと私たちの関わりは深まっていくことでしょう。

そんなバレーボールに対する意識が高まっていく中、バレーボールの小学生の部にも注目が集まってきています。もちろん高校生や世界を相手に戦う日本代表の試合ほど迫力のあるものではありませんが、年々増えるテレビ中継やニュースの報道を通してバレーボールをやってみたい、または親御さんが自分の子供に習わせたい、そんなケースが増えてきているのです。

本書はそうした、小学生のバレーボールプレーヤーや上達の手助けになりたい方向けに書かれている本になります。実際に小学生バレーボール全国大会常連の強豪チームの監督である佐川延夫氏の監修のもと、小学生に対象を絞った非常に中身の濃い一冊となっています。

佐川氏は東京都実業団の9人制バレーで関東大会および全国大会出場を経験しています。1981年にバレーボールクラブを発足し、チームを関東大会、全国大会に導くとともに、子供たちがバレーボールを通じて立派な社会人となるべく日々指導されています。

本書は各章で題材を限定し、一つ一つを深く掘り下げられています。例えば第3章ではスパイクについて取り上げられていますが、そのなかでも通常のトスで打つスパイクの他に、乱れたボールを打ち込む二段トスのスパイクや、相手コートから返ってきたボールをそのまま打ち返すダイレクトスパイクがあり、それぞれの特徴を解説しながら重要となるポイントを丁寧に説明しています。

また本書の表現方法にもいくつか工夫がされており、このプレーができるようになると、どのようにプレーに役立つのか書かれていたり、難しさをレベルで表現したりと練習の意欲が出やすくなっています。また付属のDVDを利用することで何度でも確認ができ、上達につながります。

この一冊を通してより楽しく、よりたくさんの技術を身につけ、次世代を担う期待の新星がたくさん見つかることを期待しています。