【最新】スポーツ学について学ぶためのおすすめ本 – スポーツ生理学・栄養学の基本理論から実践メソッドまで

スポーツ学とは?パフォーマンスを上げるために必要?

スポーツ学とは、スポーツにおける身体の影響や環境、そしてコーチング理論などをさまざまな観点から科学的に研究する学問です。スポーツ学に含まれる生理学や栄養学を理論からしっかりと学ぶことで、アスリートのパフォーマンス向上が期待できます。ここでは、スポーツに関わる全ての方におすすめのスポーツ学を学ぶのにおすすめの本をご紹介します。

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出典:出版社HP

1から学ぶスポーツ生理学【第2版】

知識をすぐに現場に活かす

スポーツ生理学の基盤となる学問は、化学、生物学など多岐にわたる学際的な領域です。そのため全てをすぐに現場に活かすことは難しいです。本書は、そんなスポーツ生理学の知識と現場とをつなぐ架け橋の役割を担ってくれる1冊です。スポーツ生理学の基本だけでなく、近年注目されている女性スポーツまで大きく取り上げています。各章にコラムや確認問題があるので、実践知として身につきやすいです。

中里 浩一 (著), 岡本 孝信 (著), 須永 美歌子 (著)
出版社 : ナップ; 第2版 (2016/3/18)、出典:出版社HP

1から学ぶ(第2版スポーツ生理学」
日本体育大学教授)中里浩一日本体育大学教授岡本信日本体育大学教授須永美歌子

第2版序文

2012年4月に「1から学ぶスポーツ生理学」を発刊してから多くの方にさまざまなご意見をいただきました。図らずもというと著者の言葉としては少し無責任に感じられるかもしれませんが、おおむね好意的なご意見であり大変ありがたく感じました。また著者らの本務校である日本体育大学のみならず,数多くの教育機関において教科書に採用していただいたことは望外の喜びでした。
さまざまなご意見の中には単純なまちがいのご指摘もありました。われわれ著者が講義で用いていて不都合を感じる箇所もありました。今回版改訂のご提案があった折,単純なまちがいの変更はもちろん,それ以外に変更すべき点を著者間で協議しました。その結果,大きく以下の2点を変更することにしました。
1点はコラムの追加です。スポーツ生理学は長い歴史を経て積み上げられてきたものであり,実験科学に裏づけされたゆるぎない内容が大部分です。一方で,これは初版の序文でも触れましたが,競技スポーツ科学あるいは健康スポーツ科学の最前線は常に考え方の見直し,データの収集が行われている分野でもあります。同じ書物の中でこの両者を包含することは通常困難ですが、日々研究の現場にも触れている著者らとしては,日進月歩のスポーツ生理学の研究現場の雰囲気だけでも伝えることはできないかと思案しました。その結果,各章にコラムを加えることにしました。ただし最先端の研究を紹介すること以上に,教科書の一歩先に興味をもってもらえるような内容にすることで初学者にも親しみをもってもらえることを意識しました。
2点目は「女性とスポーツ」の章の追加です。初版を発刊して以降,パラリンピック選手や女性スポーツ選手の活躍に注目が集まるようになってきています。それと同時に女性スポーツ選手の健康やスポーツにおける性差にも関心が寄せられるようになりました。すでに日体大では女性スポーツ選手を対象とした先駆的な研究が行われています。これまでのスポーツ生理学の教科書では女性スポーツを大きく取り上げたものは少なく,本書の重要な特色になると思います。
初版の序論で述べた通りスポーツ生理学を学習したいと思っているすべての皆様にとって、本書がスポーツ生理学を理解するうえでの手助けになることを心より祈っております。

2016年3月
著者を代表して中里浩一

私は2003年度より日本体育大学にて学部や大学院でスポーツ生理学やかかわる講義を担当してきました。途中1年間のブランクがありましたが,計8年間さまざまな学生さんたちと接してきました。そのなかで強く印象に残っているのは競技者,コーチ,トレーナー,教員など目標は、さまざまでも,意識の高い学生さんほど自分の目標に必要な知識を貪欲に求めているということでした。それはやみくもに練習をしているだけでは勝てないし、自分が指導者になったときに適切な指導ができないという真摯な気持ちの現れにほかならないと思います。
その一方で生理学,とりわけスポーツ生理学はいわゆる学際的な領域であり,基盤となる知識は化学や生物学をはじめとして多岐にわたります。そして科学技術の進歩に合わせていまもその領域は拡大しています。しかも競技の場面では,最新の研究を取り入れより高いパフォーマンスを得ようとしています。高等学校を卒業したばかりの学生さんがスポーツ生理学が対象とするすべての内容を学習し、それらすべてを咀嚼し現場で活かすということは,そう容易ではないということは講義担当者として実感してきました。
本書はスポーツ生理に関する知識を希求している学習者と最新のスポーツ生理学とをつなぐ架け橋のような役割をもたせることを目標として作成されました。特に導入では可能な限り平易な表現や例を出すことを心がけながらも、最終的に到達するところはある程度最近の研究内容も含まれているかあるいは理解できるということを目指しました。本書の「1から学ぶ」という名称はそのような意味合いがまれています。
生理学の理解を困難にしているそのほかの要因として,生理学における学習内容が多段階・多要因の事象であるということがあげられると思います。学習者の多くはまず各臓器別に生理学を理解しようとします。しかし、結局競技におけるパフォーマンスは多臓器間の相互作用の結果ですので、知識と実際のスポーツ現場との乖離が発生する原因になりかねません。そこで本書では、生理的な事象は多臓器の相互作用の結果であるという理解を助ける試みとして序章を設定しました。序章には各章(各臓器)の関連性が記載されています。内容として決して十分とはいえませんが、生理学的事象の全体像を理解することの一助になればと思います。
今回の執筆は日本体育大学でスポーツ生理学の講義を担当している全教員が分担して行い、最終的には全員でその内容を精査しました。したがいまして、本書に含まれる内容は本学の学生さんたちをはじめとする競技スポーツにかかわる人たちにとって学んでほしいものであるということと,初学者であっても読み進めていくことができる程度の難易度であるということを確認しています。特に本学の学生さんにとっては本書を講義と併用することで一層の学習効果が期待できると思われます。
スポーツ生理学を学習したいと思っているすべての皆様にとって、本書がスポーツ生理学を理解するうえでの手助けになればこのうえない幸せです。

2012年4月
著者を代表して中里浩一

中里 浩一 (著), 岡本 孝信 (著), 須永 美歌子 (著)
出版社 : ナップ; 第2版 (2016/3/18)、出典:出版社HP

もくじ

【序章】恒常性を維持しようとするからだとスポーツ-
Ⅰ.細胞外液はからだの内部環境である
1.ヒトのからだは細胞でできている
2.細胞外液は体内環境である
II.ヒトのからだは常に細胞外液の“恒常性”を保とうとする
1.恒常性
2.体内の細胞外液の循環が細胞外液の恒常性を保つ
3.からだのさまざまな臓器が細胞外液の恒常性を保つ
4毛細血管は細胞と細胞外液とが物質のやり取りをする場所である.
III.神経系と内分泌系は細胞外液の恒常性を保つ司令塔である
1.神経系はからだ全体の恒常性を見張り,命令を下す
2.内分泌系は血流を介して全身に指令を伝える
1IV.スポーツと細胞外液の恒常性
【第1章】スポーツ生理学の化学的基礎1-炭水化物,脂質タンパク質-
I.スポーツに重要な栄養素は6つある
II.グリコーゲンとグルコースは生体内の重要な炭水化物である
「III.炭水化物(糖質)の主な役割はエネルギー源である
IV.脂質の主な役割は低強度運動におけるエネルギー源である
V.タンパク質はアミノ酸からできている
V.タンパク質は筋肉や骨を形づくる
Column1和菓子は日本人アスリートのリカバリー食?
確認問題
【第2章】スポーツ生理学の化学的基礎2-ATP1合成
I.ATPはあらゆる生命活動のエネルギー源である
II.ATPを産生する仕組みには3種類ある
III.解糖系は酸素を要することなくATPをつくる仕組である
IV.有酸素系は酸素を用いてミトコンドリアでATPをつくつくる仕組みである
V.ATP-PCr系はクレアチンを用いてATPをつくる仕組みである
VI.3つのATP合成系はATPの合成速度や合成量が異なる
VII.三大栄養素はすべてATPをつくるためのエネルギー源になりうる
Column2乳酸に申し訳ない・・・。
確認問題
【第3章】骨格筋の構造と働き
I.骨格筋は力を発揮して骨を動かす
1.筋は平滑筋,心筋,骨格筋に分けられる
2.骨格筋は腱を介して骨に力を伝える.
3.骨格筋の力の方向と腱の走行は必ずしも一致していない
II.筋原線維が骨格筋の力を生み出す.
1.骨格筋は筋線維の束である.
2.筋原線維は基本単位(サルコメア)の繰り返しでできている
3.アクチン線維とミオシン線維はタンパク質の集合体である
4.筋線維が太くなれば骨格筋が太くなり、より大きな力が生まれる
5.筋衛星細胞(筋サテライト細胞)は筋損傷の修復において重要である
6.骨格筋は長さによって発揮する力に差が生じる
7.骨格筋は収縮する速度によって発揮する力に差が生じる
III,持久性の高い骨格筋と持久性の低い骨格筋ではATPのつくり方が異なる
1.筋線維には持久性の高い線維と低い線維がある・・33
2.遅筋線維では主に酸素を利用してミトコンドリアでATPを産生する。
3.速筋線維では主に解糖系およびクレアチンを使ってATPを合成する
4.持久性の高い筋線維と持久性の低い筋線維は発揮する筋力の性質も異なる
IV.骨格筋の伸展性は筋線維とそれを包む筋膜や腱と関係している
1.骨格筋の伸展性は,関節の柔軟性を決める要因の1つである
2.骨格筋と筋膜,腱をまとめて筋膜複合体と呼ぶ
3.筋膜複合体の伸展性を決める要因は大きく2つに分けられる
4.コネクチンは筋膜複合体の伸展性に影響を与える筋線維内のタンパク質である
5.コラーゲンは筋腱複合体の伸展性に影響を与える筋線維外のタンパク質である
6.トレーニングによるコネクチンおよびコラーゲンの変化は今後の検討課題であるColumn3身もだえする学生アスリートたち
確認問題
【第4章】神経組織とスポーツ
Ⅰ.中枢神経と末梢神経
1.神経組織は中枢神経と末梢神経に分けられる
2.神経細胞は細胞体と神経線維でできている
3.中枢神経は灰白質と白質に分けられる
4.末梢神経は自律神経と体性神経に分けられる
5.体性神経は運動神経と感覚神経に分けられる
6.自律神経系による調節は無意識に行われる
II.神経細胞と筋
1.筋線維には運動神経がつながっている
2神経線維を伝わる活動電位が筋力や筋の収縮を調節している
3.神経の電気信号を筋の収縮に変換する仕組みを興奮収縮連関と呼ぶ
4.異なる筋線維タイプには異なるタイプの神経が結合している
5.筋力トレーニングや脱抑制による神経系の変化が発揮筋力を増大させる
III.中枢神経と運動
1.骨格筋,腱,靱帯には力を感じるセンサーがある
2.伸張反射は運動中の重要な反射である
3.Ib抑制反射によって筋は弛緩される
4.脳が随意運動を司る
Column4意識が高ければ復帰も早い
確認問題
【第5章】呼吸器系とスポーツ
I.呼吸器の構造
1.呼吸器は気管・気管支・肺に分けられる
2.呼吸は呼吸筋によって行われる
II.呼吸器の働き
1.呼吸とは酸素と二酸化炭素の交換である
2.酸素は肺で二酸化炭素と交換される
3.取り込まれた酸素は気圧の低いほうへ受け渡される.
4.取り込まれた酸素はすべて使用されているわけではない
5安静時に取り込まれた酸素から生命維持に必要なエネルギー量がわかる
6基礎代謝量は呼吸,心拍、体温の維持などで構成される.
III,呼吸器系と運動トレーニング
1.運動強度が増加すると呼吸数も増加する
2.運動中は酸素がたくさん取り込まれる
3.酸素摂取量を測定すると消費エネルギーが測定できる
4.METsを使うと消費カロリーが推定できる
5.呼吸をみれば運動中のエネルギーに何が使われているかがわかる
6.運動中の換気量はある地点から急激に増加する
7.激しい運動時は酸素を借りている
Column5高強度・間欠的トレーニングは
有酸素性能力と無酸素性能力を同時に高める
確認問題
【第6章】循環器系とスポーツ
I.心臓と血管の構造
1.心臓には4つの部屋がある.
2.血管は動脈・静脈・毛細血管に分けられる。
II.心臓と血管の働き
1.血液は心臓から送り出される
2.心臓は電気刺激によって動いている
3血圧は動脈に加わる圧力である
II.心臓と運動トレーニング
1運動を開始すると心拍数と1回拍出量は増加する
2.運動を開始すると血圧は増加する
3.心拍数は運動強度を表わす
4.有酸素性トレーニングによって心機能は高まる
5.スポーツ選手の心臓は大きい
IV.血管と運動トレーニング
1.運動強度が増加すると血流量は増加する
2運動中の血流は活動筋に対して優先的に分配される
3.スポーツ選手の血管は太い
4有酸素性運動トレーニングは動脈伸展性を増加させる
5.筋力トレーニングは動脈伸展性を低下させる
Column6オリンピックのメダリストは長生き
確認問題
【第7章】内分泌系とスポーツ
I.内分泌系とは
1.ホルモンは内分泌組織で分泌され,標的細胞の受容体と結合して作用する
2.ホルモンには水溶性と脂溶性がある
3.ホルモン分泌量はネガティブフィードバック機構によっても調節されている
II.内分泌系と運動トレーニング・
1.運動ストレスに対して高まるホルモンをストレスホルモンという
2.筋肥大に影響を与えるホルモンがある
3.脂肪の分解に影響を与えるホルモンがある
4.オーバートレーニングはホルモン分泌異常を引き起こす
Column7筋肥大のためにはお酒はほどほどに?
確認問題
【第8章】体液・血液とスポーツ
I.体液の量と組成
1.体液量は体重の約60%を占める
2.体液には電解質が含まれる.
3.体液量を一定に保つ仕組みがある
4.体液のpHを一定に保つ働きを緩衝作用という
5.体液量の低下や電解質の損失によってパフォーマンスが低下する
6.水分は運動前・中・後にこまめに補給する
II.血液の成分と働き
1.血液の成分は血漿,赤血球,白血球,血小板に分けられる
2赤血球変形能はトレーニングによって高まる
3.低~中強度の運動は免疫機能を高める
4血漿量は急性運動後に減少し,持久性トレーニングによって増加する
5運動性貧血には鉄欠乏性貧血,溶血性貧血,希釈性貧血がある
Column8水は飲みすぎるとからだに悪い!?
確認問題
【第9章】スポーツとウエイトコントロール
I.身体組成
1.身体は筋・脂肪・内臓・骨で構成されている
2.体脂肪はエネルギーである
3.体重が重いだけでは肥満ではない
4.筋肉はエネルギーを消費する
II.減量
1.減量とは体脂肪を減らすことである。
2.サウナに入って体重が落ちてもやせたわけではない
3.効果的な減量はパフォーマンスを下げない
II.増量.
1.増量とは筋肉を増やすことである
2.効果的な増量はパフォーマンスを上げる
3筋力トレーニングによる増量はタンパク質の同化と異化のバランスで決まる
Column9トレーニングを休むともとの体力を取りもどすのに休んだ期間の倍かかる?
確認問題
【第10章】外的要因とスポーツ
I.暑熱,寒冷
1.体温は熱の獲得と喪失で決まる
2.高温あるいは寒冷環境に対するからだの反応は視床下部によって調節される
3.運動強度が高くなると体温も高くなる
4.寒冷下では筋のふるえにより体温を上げるため、パフォーマンスは低下する
II.高地
1.高地環境では空気と酸素の量が低下する
2.酸素濃度が低下すると呼吸や循環および血液の変化により
体内酸素運搬を高めようとする
3.高地トレーニングは主に血中ヘモグロビン量や赤血球の増加を期待した
トレーニングである
Column10みんな地球に生きている
確認問題
【第11章】内的要因とスポーツ
I.加齢に伴う身体諸機能の変化
1.こどもの身体機能は発育期にめまぐるしく変化する
2.発育期における運動能力は10代に完成する
3.子どもの筋機能分化は、小学校中学年以降に生じる.
4.加齢に伴い身体機能は低下する
5.加齢は運動機能を低下させる
6.基礎代謝量は加齢とともに低下する
II.運動と遺伝子
1.遺伝子はタンパク質の設計図である
2.遺伝子は多型性を有している
3.ACE遺伝子のI/D型遺伝子多型は循環器系と関連した遺伝子多型である
4.ACTN3遺伝子のR/X型遺伝子多型は筋に関連した遺伝子多型である
III.スポーツパフォーマンスの男女差
1.骨格筋量の男女差は下半身より上半身のほうが大きい.
2.持久性パフォーマンスの男女差は少ない
Column11三毛猫と遺伝子の複雑な話
確認問題
【第12章】女性とスポーツ
I.女性の身体的特徴
1.健康な成人女性は妊娠・出産が可能である
2.女性アスリートの三主徴
II.月経周期
1.正常な月経周期は25~38日である
2.月経周期は基礎体温の測定でわかる
3.月経周期に伴いコンディションは変化する
4.月経周期はパフォーマンスに影響を与える可能性がある
Column12女性にとって体重をキープすることは難しい?
確認問題
参考文献
索引

中里 浩一 (著), 岡本 孝信 (著), 須永 美歌子 (著)
出版社 : ナップ; 第2版 (2016/3/18)、出典:出版社HP

序章 恒常性を維持しようとするからだとスポーツ

この教科書は、筋肉や心臓などスポーツを行う際に重要な臓器や組織について,臓器別・組織別にそれぞれを説明するような内容になっています。
ところが、からだのなかで臓器はそれぞれ別々にあるわけではなく、互いに影響を受けたり、与えあったりしています。そのときの重要な考え方として、からだの内部環境を一定に保とうとする働きがあるということがあげられます。
この序章では、この教科書を読む際の前提として、スポーツに対する適応・変化をからだ全体の変化としてとらえてみたいと思います。
なおこの章のいろいろな箇所に関連した章を示してあります。より深く勉強する際には、それぞれの章を参照してください。あるいはそれぞれの章を勉強した後に改めてこの章を読んでみるのもいいかもしれません。

中里 浩一 (著), 岡本 孝信 (著), 須永 美歌子 (著)
出版社 : ナップ; 第2版 (2016/3/18)、出典:出版社HP

基礎から学ぶ! スポーツ栄養学 (基礎から学ぶ!スポーツシリーズ)

何をどう食べるかで、身体は変わる

パフォーマンス向上に欠かせないスポーツ栄養学を、さまざまな分野から紹介しています。基本だけでなく、スポーツの現場で求められるスポーツ栄養学の応用的な知識まで網羅されています。本書は目的や理解度に応じて使い分けできるような構成になっているので、愛好者からアスリートまで幅広く満足できる1冊です。

鈴木 志保子 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2008/5/1)、出典:出版社HP

内容

スポーツに取り組む際に身に着けておきたい、さまざまな分野の基礎知識を紹介する「基礎から学ぶ!」シリーズ第1弾。
近年 ではスポーツ栄養という言葉が浸透し、パフォーマンスの向上を目指して食事や栄養管理に気を配るアスリートが増えてきた。しかし、その一方で、正しい基礎知識を知らないまま、「効果がある」という情報に飛びつき、その結果、弊害が生じているケースも見られるようになっている。
本書では、栄養素や食品の基礎知識、身体のしくみ、エネルギー代謝といった栄養学の基礎から、スポーツ現場で求められるさまざまなスポーツ栄養学の知識までをすべて網羅。食事管理を1人で行っているアスリートや、食事・栄養に興味を持っている人が、食事管理に関して中級以上になれる知識とスキルを紹介している。通読すればスポーツ栄養学全体を系統立てて基礎から学べるが、興味のある章を選んで読む、あるいは各章をランダムに読み進めるなどの使い方も可能。目的や理解度に応じて自由に活用できるよう構成されている。

鈴木 志保子 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2008/5/1)、出典:出版社HP

目次

■第1章 栄養素と食品の基礎知識
1.栄養素
2.食品
[コラム] 日本食は世界一のスポーツ栄養食

■第2章 身体のしくみ
1.消化
2.食物摂取と消化・吸収・代謝
3.身体組成
[コラム] 大腸の個性と食物繊維

■第3章 エネルギー代謝
1.体内のエネルギー
2.エネルギー消費
[コラム] 完璧なエネルギー平衡は、実現可能か?

■第4章 コンディショニングのための栄養
1.自己管理
2.内臓疲労
3.エネルギー補給
4.アスリートの食事
5.アスリートに必要な糖質の摂取
6.アスリートに必要な脂質の摂取
7.アスリートに必要なタンパク質の摂取
8.アスリートに必要なビタミンの摂取
9.サプリメントの摂取
[コラム] アスリートが摂取すべきタンパク質量は?

■第5章 競技力向上のための栄養
1.水分摂取
2.試合前、当日、試合後の食事
3.減量
4.貧血と予防策
5.身体づくりとカルシウム摂取量
6.女性の身体
7.ドーピング
[コラム] あなどるとコワイ、熱中症

■第6章 世代別に見るスポーツ栄養の考え方と栄養サポートとのかかわり方
1.小・中学生(学童)のスポーツと栄養
2.高校生のスポーツと栄養
3.大学生、実業団・プロアスリートのスポーツと栄養
4.中・高年のスポーツと栄養
5.栄養サポートとのかかわり方

鈴木 志保子 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2008/5/1)、出典:出版社HP

スポーツ栄養学最新理論〈2020年版〉

スポーツ栄養学の応用

スポーツ栄養学の基礎的な解説をするのではなく、最新・最先端の知見を中心にして応用的な内容が紹介されています。話題になって注目されている分野に限定して、これからのスポーツ栄養学の展望を学ぶことができます。やや難易度が高めなので、他の書籍でスポーツ栄養学の基礎を固めてから本書に進むとより効果的です。

寺田 新 (著)
出版社 : 市村出版 (2020/11/1)、出典:出版社HP

2020年版
スポーツ栄養学最新理論
寺田新編著
市村出版

【編著者】寺田新 東京大学大学院総合文化研究科 准教将
【著者】
藤平杏子 東京都健康長寿医療研究センター研究所研究員
東田一彦 滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科 准教授
石橋彩  国立スポーツ科学センタースポーツメディカルセンター 研究員
日本学術振興会特別研究員(東京大学大学院総合文化研究科)
加藤弘之 味の素株式会社食品研究所主席研究員
川中健太郎 福岡大学スポーツ科学部教授
近藤衣美 国立スポーツ科学センタースポーツメディカルセンター研究員
近藤早希 日本学術振興会特別研究員(東京大学大学院総合文化研究科)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所協力研究員
松井崇 波大学体育系助教
宮下政司 早稲田大学スポーツ科学学術院准教授
元永恵子 国立スポーツ科学センタースポーツ研究部研究員
下山寛之 筑波大学体育系助教
須永美歌子 日本体育大学児童スポーツ教育学部教授
吉野昌恵 山梨学院大学健康栄養学部准教授

はじめに

オリンピック・パラリンピックや世界選手権などでのメダル獲得のためには、選手の弛まぬ努力が必要なのはもちろんのこと,周囲のスタッフによるサポートも欠かすことができません.「栄養サポート」もそのような選手に対する重要なサポートの一つであり,その実践活動を支える学問分野である「スポーツ栄養学」に対する関心も高まっています.トップレベルの選手ではごく僅かな差で勝敗が決するため,スポーツ栄養士には,基本的な食事を整える手助けをすることに加えて,最新の知見・情報を取り入れてライバルに少しでも差をつけられるような栄養・食事サポートを行うことが求められます。本書では,スポーツ栄養に関する研究・論文報告を積極的に行っている日本人研究者の方々に,自身の研究成果も含めながら,世界のスポーツ栄養学における最新の知見について紹介・解説をしていただき,現場で活躍されているスポーツ栄養士の方々にその理論を広く知っていただくことを目的としています。
近年,スポーツ栄養学に対する興味関心が高まり,様々な書籍が出版されています。その多くが、スポーツ栄養学の基礎的な知識についての解説を目的として書かれていますが、本書は、そのような書籍とは一線を画した内容となっています。つまり,基本的な内容・知識を系統立てて説明したり,間違いのない確実な知識・理論を解説したりするのではなく,未だ可能性の段階にある手法も含めて最新・最先端の内容を中心に紹介する,というものになっています。したがって、スポーツ栄養学のすべての分野を網羅するというものではなく,この数年間で話題になっている・注目されている分野・手法に限定した内容となっています。この本の中で紹介されている新たな手法・理論を実際に現場で試してみたところ、素晴らしい成果が得られることもあれば、期待していたような成果が得られなかったということもあるかもしれません。そのような場合には,事例報告・症例報告として学会などで積極的に報告し、その情報を研究者と共有していただきたいと思っています。そのようにして,研究者とスポーツ栄養士との間で情報のやり取りが行われることで、その手法の改良や新たな手法の開発が進み,スポーツ栄養学が益々発展してくことになります.
上述したように,本書はスポーツ栄養学の「応用編」といった,やや難解な内容になりますので,初学者の方は,「エッセンシャル・スポーツ栄養学」(市村出版)などで基礎的な勉強をしてから,本書に進まれることをお勧めいたします.本書のタイトルに「2020年版」という言葉が入っていますが,これは、もし本書の内容が好評であれば,また次のオリンピック・パラリンピックイヤーに「2024年版」として内容を全面改訂したものを発刊したいという希望を持っているためです(残念ながら,東京オリンピック・パラリンピックは2021年に延期となってしまいましたが…).改訂の際には,その時点でスポーツ栄養学研究の最前線にいる研究者に執筆をお願いする予定です.私を含めて,著者が大幅に入れ替わる可能性もあります.4年後も研究の最前線で活躍し、この本の執筆者となれるように,スポーツ選手の方々と同様に,研究者もお互いに切磋琢磨していきたいと思っています.
2020.8.
編集者寺田 新

寺田 新 (著)
出版社 : 市村出版 (2020/11/1)、出典:出版社HP

目次

1章 糖質摂取とパフォーマンス ……川中健太郎・松井崇
1. 筋と肝のグリコーゲンに関連した研究
(1) 運動中の糖質利用と疲労
1) 運動強度と糖質利用
2) 筋グリコーゲンと疲労
3) 肝グリコーゲンと疲労
(2) 試合前日までの糖質補給
1) 筋グリコーゲンローディング
2) ファットローディング
(3) 試合当日の糖質補給
(4) 試合中の糖質補給
1) グルコース摂取 .
2) グルコースとフルクトースの混合摂取
(5) 試合終了後の糖質補給
1) 糖質摂取のタイミングと量
2) たんぱく質と糖質の同時摂取
3) 摂取する糖質の種類
(6) トレーニング期の糖質補給
1)ガイドラインで推奨されている糖質摂取量
2) 糖質制限下でのトレーニング
2. 脳グリコーゲンに関連した研究
(1) 脳グリコーゲン:脳内唯一の貯蔵エネルギー
(2) 運動による脳グリコーゲンの減少と超回復
(3) 筋グリコーゲンローディング(筋GL)が脳グリコーゲン貯蔵に及ぼす影響
(4) 海馬グリコーゲンローディング(海馬GL)の開発:
海馬を標的とするよりシンプルなGL条件探索
1)高糖質食の影響
2) 運動の影響

2章 たんぱく質・アミノ酸摂取とパフォーマンス…… 加藤 弘之
1. 運動選手におけるたんぱく質摂取の3つの役割
(1) 運動後の筋肥大
(2) 運動後の筋損傷の回復
(3) 運動中のエネルギー源の補給
2. 運動選手のたんぱく質摂取推奨量に関する最新動向
(1) 現時点のたんぱく質摂取推奨量
(2)「推定平均必要量」と「摂取推奨量」
(3) 筋肥大を目的とした場合のたんぱく質摂取推奨量に関する最新知見
(4) 持久運動選手に関するたんぱく質摂取量に関する最新知見
(5)たんぱく質摂取推奨量に影響を及ぼす因子
3.効果的なたんぱく質摂取法1:摂取タイミング
(1) 運動後のタイミング
(2) 運動前と運動後
(3) 1日を通じたたんぱく質の最適な摂取パターンとは…
1) 1回の摂取量
2)何回に分けて摂取するべきか
3) 睡眠前のたんぱく質摂取の効果
4) たんぱく質摂取タイミングによる効果の違いに対する反論
4. 効果的なたんぱく質摂取法2 :たんぱく質の「質」
(1) たんぱく質の質とは
(2) たんぱく質の「質」の違いが及ぼす筋たんぱく質合成,および体組成への影響
(3) 乳たんぱく質の「質」の違いの影響
(4) 乳たんぱく質とステーキの違い
(5) 筋たんぱく質代謝に及ぼすたんぱく質の「質」の違いの一要因:アミノ酸組成
5.たんぱく質摂取の安全性について
6. アミノ酸を活用した1日のたんぱく質摂取量の軽減の可能性
まとめ

3章 脂質摂取とパフォーマンス 寺田新
1. 国際的なスポーツ栄養の公式見解における脂質摂取についての考え方
2. 各代謝機能に及ぼす脂質摂取の影響
(1) 糖代謝との関係
(2)たんぱく質代謝との関係
(3) 脂質代謝との関係
1)ファットアダプテーションとは
2) ケトン食とは
3) ケトン食のメリット
4) ケトン食のデメリット
5) ケトン食はパフォーマンス向上において有効か
6) ケトン体サプリメントの摂取による効果
3. 糖質と脂質の適切な摂取比率

4章 微量栄養素(ミネラル・ビタミン)とパフォーマンス
……東田 一彦・石橋彩
1. ミネラル
(1) カルシウム
1) 体内でのカルシウムの働き
2) 運動時のカルシウム代謝
3) カルシウム欠乏の評価と必要量
(2) 鉄
1) アスリートにおける鉄の働きと貧血の評価
2) ヘプシジン(鉄代謝ホルモン)
3) 糖質,エネルギー不足と鉄欠乏
4) 鉄を摂るタイミング
5) 鉄の必要量
2. ビタミン
(1) ナイアシン
1) ナイアシンとNAD合成経路
2)スポーツパフォーマンスとナイアシン
(2)ビタミンD
1) ビタミンDの働き
2)アスリートにおけるビタミンD不足
3) 筋機能およびパフォーマンスに及ぼすビタミンD摂取の影知
4) 基準値について
まとめ

5章 運動と食欲調節……宮下政司・藤平 杏子
1. 運動に対する食欲の評価の意義
2.食欲調節
(1) 中枢における食欲調節
(2) 末梢における食欲調節
3. 運動と食欲調節
(1) 急性の運動による食欲への影響
(2) 慢性の運動による食欲への影響
(3) 肥満予防の視点
1) 運動様式,運動継続時間および運動強度
2) 肥満遺伝子
(4) 運動後の栄養摂取の視点
1) 栄養摂取
2) 外部環境
おわりに

6章 消化・吸収系機能とパフォーマンス…近藤早希・寺田新
1.長時間運動中における糖質飲料の摂取と消化・吸収系機能
2、食事に対する消化・吸収系機能の適応
3. 一過性の運動が消化・吸収系機能に及ぼす影響
4.長期的なトレーニングが消化・吸収系機能に及ぼす影響
まとめ

7章減量とパフォーマンス…近藤衣美・下山寛之
1 アスリートのエネルギーバランスと身体組成変化の特徴
2.代謝適応、生理学的代謝反応の狩猟採集民族との比較
3. 狩猟採集民族との比較と総エネルギー消費量の配分
4. 減量速度と競技力の関係
5. 減量を行うと走パフォーマンスが向上する理論
6. 体重階級制競技の減量
7. ウォーターローディング

8章 女性アスリートに関する諸問題
(エナジーアベイラビリティー, RED-S) …… 須永美歌子
1. エナジーアベイラビリティー
(1)定義
(2) 測定方法
(3) 基準値
2. エネルギー不足の生化学的指標
(1) レプチン,グレリン
(2) トリヨードサイロニン, サイロキシン
(3) コルチゾール
(4) インスリン様成長因子-1
3. LEAに関連する健康障害と運動パフォーマンスへの影響
(1) 生殖機能
(2) 骨
(3) 循環器系
4. 運動パフォーマンス
おわりに

9章 パラアスリートへの栄養指導・栄養サポート…..元永恵子・野昌恵一
1. アセスメントおよびモニタリング項目と留意点
(1) 食事調査
1) 食事調査の方法と注意点
2) 食事調査結果の評価
(2) 体重測定
1) 肢体不自由
2) 視覚障がい
3) 知的障がい
(3) 体組成評価
1) DXAE 2)空気置換法(ADP) 3) BIA法
4) 皮下脂肪厚法. 2. 最近のトピックス
(1) 利用可能エネルギー不足(low energy availability: LEA)
(2) 暑熱対策と水分摂取
1) 脊髄損傷
2) 切断・欠損
3) 脳性麻痺
(3) サプリメント
1)カフェイン
2)クレアチン
3) ビタミンD
4) サプリメント使用時の留意点
3. 実際の栄養サポート
(1)視覚障がいのあるアスリートの栄養サポート
(2) 脊髄損傷のあるアスリートの栄養サポート
おわりに

索引

寺田 新 (著)
出版社 : 市村出版 (2020/11/1)、出典:出版社HP

最新版 アスリートのためのスポーツ栄養学: 栄養の基本と食事計画 (GAKKEN SPORTS BOOKS)

パフォーマンス向上のための知識

アスリートが強い体づくりや試合に勝つために実践している食事方法について、ジュニアから成人の方に向けた内容が紹介されています。栄養の基本から、パフォーマンス向上のための食事計画まで、目的別の食事方法がわかります。すぐに活用できるので、スポーツに関わる全ての方におすすめの1冊です。

最新版
アスリートのためのスポーツ栄養学
栄養の基本と食事計画
相模女子大学栄養科学部健康栄養学科准教授
柳沢香絵監修

はじめに

スポーツと栄養には、切っても切り離せない関係がある。
プロのアスリートたちには、各競技の目的に合わせ、からだを強くするための食事や、試合に向けてコンディションを整えるための食事を管理や指導する専門の栄養士がいます。昨今、アマチュアのアスリートでも市民大会などの試合に参加するような方々は、食事や栄養に興味を持っていることでしょう。現在、スポーツ栄養に関する情報はさまざまな形で発信されています。しかし、スポーツ栄養の十分な知識がないままに、その情報を自分の都合のよい部分だけ活用してしまったことで逆にコンディションを崩してしまう人もいるようです。
アスリートが栄養士ほどの知識を持つ必要はありません。でも、栄養について知らずにいるのはもったいないことです。専門家の言葉や知識を上手に利用して、正しい食事を意識していきましょう。栄養学を学べば、必然と食事について考えるようになります。食べ物に含まれる栄養が、からだをつくり、強くしてくれるからです。そして、からだを効率よく強化させるために必要なのは食事計画を立てることです。
ただ、アスリートひとりひとりの年齢や性別、競技別によって摂取する栄養の種類や量は違います。そこで本書では、世代別や競技別、目的別に分けて食事計画を紹介しています。
まずは、基本的な栄養素の種類とその役割について知っていきましょう。アスリートにとっての栄養とは何か、どのように働くのかという点に着目していきます。その後、試合に向けたコンディションの整え方を解説していきます。さらに、ハイパワー、ボールゲーム、ローパワーに区分けした競技別の食事方法も紹介します。また、ジュニア期や高校生、シニア期による食事や、体調不良やケガによるアクシデント時における食事のとり方などについても紹介しています。
日ごろのトレーニングの効果を最大限に引き出すことのできる、競技力の向上とからだづくりのために必要な食事は何か、それを知ることから始めましょう。
本書を読むことで、自分の競技生活にふさわしい食事をしっかりと見極め、栄養素をバランスよく摂取できる食事生活の確立に役立つことができれば幸いです。
また、少しでも多くの人たちが、食事とスポーツとの関連性について意識や関心を持つようになることを願っています。
柳沢香絵

ウォームアップ
自分の食生活と向き合うために競技別セルフチェック!
アスリートとしてよい食事がとれているか?
からだを動かすためにはエネルギーが必要となり、消費されたエネルギーの補給として食事があります。これはどんな人にでも当てはまる事実ですが、アスリートは普段の生活に加え、通常体を動かさない人たちに比べて約2倍のエネルギーが必要となります。
ですから、一般の人たちと同じ食事法では補給が追いつかなくなります。だからといって、やみくもに食事量を増やせばよいわけではありません。競技によって消費されるエネルギー量は変わっていきます。そのため、摂取すべき栄養素の割合も異なります。
本書では、競技のタイプを運動時のエネルギー供給によって「ハイパワー」「ボールゲーム」「ローパワー」の3つに区分し、それぞれの競技に適した食事法を紹介していきます。また、ウェイトコントロールが必要な競技については、減量時と増量時に気をつけたいポイントを取り上げています。まず最初に、自分の競技タイプに合った食事がとれているか、チェックしてみましょう。

目次

はじめに
チェックリスト
自分の食生活と向き合うために、競技別セルフチェック!

Part1
アスリートが知っておきたい栄養素の基本
戦うからだをつくるためにアスリートが考えておくべき食事
アスリートのエネルギー源である糖質がなくては始まらない
アスリートのからだづくりの基礎はたんぱく質が重要となる
役割と性質を理解すれば、脂質はアスリートの味方
アスリートのからだの機能をキープするビタミン
アスリートに必要なさまざまな栄養成分を含むミネラル
アスリートに不可欠な「水」という栄養素について考える
COLUMN
日本の食事と食品のよさを語れるアスリートを目指す

「強いからだ」をつくる食事の基礎知識

Part2
アスリートの食事の基本は栄養のバランスを整えること
ジュニア期は「食べる」訓練をする時期だと考える
体脂肪との付き合い方を考える女性アスリートの食事
サプリメントは栄養補助として条件を守って摂取しよう
運動機能に大きく貢献!知られざるビタミンDのパワー
運動後に牛乳が効果的?進化する水分補給を知る
筋肥大を促進させるために高たんぱく食が有効とは限らない
COLUMN
「真のアスリート」を目指すために食事マナーについて考える

Part3
試合に向けた食事計画~ベストコンディションを目指す~

備えあれば憂いなし!試合に向けた準備期の過ごし方
準備期の体重管理はバランスよく全体量を調整すること
試合前に慌てないために、生活と食事のリズムをつくる
エネルギー源のグリコーゲンをいかに効率よく蓄えるか
実力を発揮するために、当日朝までに準備しておくこと
間食をとってエネルギーを補給!食品のGI値に着目。
グリコーゲンの貯蔵は、タイミングで変わると覚えよう。
試合前コンディションをチェック!
試合後コンディションをチェック!
オフ期は次シーズンのための準備期間。体重の増加に注意
食べたいものは必要なもの。からだの声に耳をすませて
糖質をいかに効率よく摂取するかを意識しよう
決して悪者ではない!エネルギー源としての脂質の立場
アミノ酸スコアで、必要摂取量と良質たんぱく質を見分ける
アスリートにとってのビタミンとその働きを理解しよう
渇きに合わせた水分補給がいつでもできる環境をつくることが大切
COLUMN
ドーピングへの意識を高めた自己管理の確立

Part4
競技力向上のための食事計画~競技別/世代別~

筋力と瞬発力が勝負!ハイパワー系競技の特性を知る
ハイパワー系競技のテーマは最大筋力の向上!
力を発揮するためには、たんぱく質以外の栄養素にも目を向けよう
パワー、スタミナ、技術が試される、ボールゲーム系の特性
ボールゲーム系競技の決め手はスピードとスタミナ!
高度なテクニックを維持するためのビタミンB群の役割
最大限の能力を引き出し、集中力を高く保つ!
カルシウムで競技中のせり合いに負けないからだづくりを目指す
試されるのは持久力!ローパワー系競技の特徴
過酷な練習に耐えられるエネルギー源を確保しておくために
エネルギー源である糖質が底をつかないように注意
貧血対策も忘れずに。鉄分の補給は念入りにしておこう
疲労骨折を防ぐため、カルシウムで骨の強化をする
ジュニア期である小中学生に必要な食事について考える
本格的なトレーニング開始。高校生は食生活の乱れに注意
練習と生活の両立を目指す大学生のための食事計画
本格的なアスリート集団である実業団のための食事計画
からだへの自覚が重要!シニアのための食事計画
COLUMN
GI値は食品の組み合わせ次第で変化する3

Part5
強くなるための目的別食事計画
たんぱく質、ビタミンC。ブラスアルファで風邪に勝つ!
下痢や便秘の際に、どのような食事をとるかを知る
ケガの回復を早める栄養素の働き
栄養素を組み合わせスポーツ貧血からからだを守る。
アスリートの減量はいわゆるダイエットではない
コツをつかんで乗り越える!意外に難しいアスリートの増量
環境の変化に負けない!合宿・遠征先での食事の注意点
アスリートにとって「効果的な間食」は存在する
自分のからだを客観的に見つめることで勝利につながる
食事をチェックして、必要なもの不必要なものを明確に
COLUMN
熱中症を自覚するために知っておきたいこと。

Part6
データでわかるからだをつくる食品の栄養素

栄養バランスが整った食事の基本型
主食
主菜
副菜
果物・種実類
乳製品

理論と実践 スポーツ栄養学

最高のパフォーマンスを引き出す

スポーツ栄養学について、豊富な事例を図表とイラストを用いて紹介されているので非常にわかりやすいです。栄養学に関する疑問や悩みを徹底的に解説し、内容としては栄養学の基礎からマネジメントまで完全網羅しています。スポーツ栄養を愛する著者が全てのアスリート、指導者、スタッフそして家族に贈る渾身の1冊です。

鈴木 志保子 (著)
出版社 : 日本文芸社 (2018/7/14)、出典:出版社HP

理論と実践 スポーツ栄養学

はじめに

本書は、大学を卒業し管理栄養士になってから30年、スポーツ栄養を仕事にするようになってから20年が経ったことをきっかけに、執筆することを決めた。この30年間を振り返ってみた。管理栄養士になって最初の10年は、生涯「スポーツ栄養」で生きていくことを決めた10年だった。高校生のときにアスリートの栄養のことをやりたいと思い、管理栄養士養成校の大学に行き管理栄養士になったものの、アトピー性皮膚炎のため厨房業務に不向きということで、管理栄養士として勤めることができず、一般就職した。けれども当初の思いを捨てきれずに8カ月で退職し、管理栄養士として健診業務に就いた。そこでは、健康増進や生活習慣病の予防に興味を持ち、精力的に仕事をするものの、ここでも当初の思いを捨てきれず、またまた退職し、大学院に進学することにした。このころから「スポーツ栄養」という言葉が一般的に使われるようになってきた。
大学院生をしながら、京都産業大学の陸上競技部で栄養サポートに挑戦したが、何の役にも立たないどころか、悪影響を生んでいることに気づき、アスリートと一緒に暮らし、同じ生活をすることしかできなかった。一緒に生活することでいろいろ感じた。感じたことを一つ一つ解決するために「勉強して、その内容を解決策として具体化してアスリートに試してみる」をくり返した。解決できない問題や課題もたくさんあり、それが私のスポーツ栄養への原動力となった。京都産業大学陸上競技部監督の伊東輝雄先生は、未熟な私にチャンスと勇気をくださり、勝利の喜びを教えてくれた。また、一緒にいてくれたアスリートたちは私の先生であり、とても感謝している。サポートをしながら大学院の修士課程、博士課程を修了し、博士(医学)を取得した。
次の10年は、鹿屋体育大学の教員になることから始まった。ここで初めて、スポーツ栄養で給料をもらえることになった。鹿屋体育大学にいた3年間で、全部活のアスリートに栄養調査をして、練習を見て、個別指導を行った。競技種目別の身体やトレーニングの特徴、競技に関するアスリートや指導者の考え方がわかった。多くのアスリートの栄養サポートをすることができてとても幸せだったが、私と同じマインドを持った管理栄養士を育てなくてはならないという思いも強くなっていき、管理栄養士養成校である神奈川県立保健福祉大学に着任することにした。
それまでは、自分がサポートしているアスリートにしか興味がなかったが、スポーツ栄養の仲間が増え、スポーツ栄養学の普及啓発、アスリートへの栄養管理システムの構築、人材育成としてスポーツ栄養士の資格制度の確立にも力を入れるようになった。この10年間で、日本スポーツ栄養研究会(現、日本スポーツ栄養学会)を設立し、公認スポーツ栄養士資格制度を施行したほか、スポーツ栄養の一般の方への普及啓発のために『基礎から学ぶ!スポーツ栄養学』(ベースボール・マガジン社)を出版した。栄養管理システムについては「スポーツ栄養マネジメント」を構築するとともに、このシステムを使って栄養管理をしたソフトボールの日本代表チームが北京オリンピックで金メダルをとることにより、有効性を示すことがで
きた。
ここ最近の10年間は「質の高い栄養サポート」を実施することを目的に過ごした。私のサポートをする姿勢というか、考え方というか、アスリートの身体から感じるものの受け止め方というか、課題や問題に対する解決法の根本的な概念というか、そういうものが「そもそもなぜ、身体はそのような状態にならなくてはいけなかったのか」を追究することだった。追究するためにエビデンスを確認し、エビデンスを参考に問題・課題の原因と対策を明確にしたうえで栄養サポートを進めた。アスリートの身体は、一人一人全く違う。身体だけではなく、すべてが一人一人違うのだ。そのため、栄養サポートは、理論を一人一人に合ったものにアレンジして実践する必要がある。この10年間で試みたアレンジが、系統立てて確立されてきたので、この本にまとめることにした。手がけること1年以上、私のサポートもこの期間に更新をし、何度となく書き換えをすることになったが、現時点におけるスポーツ現場で活用できるスポーツ栄養学としてまとめることができた。
この本の特徴は、タイトルに「理論と実践」とあるように、理論として「なぜ」を解決するための根拠をできるだけ明確にした。わかりづらいところはイラストや事例を活用して理解を促したうえで、実践できるように解説した。また、用語などについて理解を深め、実践的に活用するために本書の中で関連することが記載されているページを(→P000)としてつなげるようにした。
各章について説明しよう。第1章は、アスリートの栄養摂取の考え方と栄養サポートの必要性、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの摂取について解説した。この章を理解するには、栄養学の基礎知識が必要となるため、必要に応じて第2章と第8章も読みながら理解を深め「そういうことか!」とうなずいてほしい。
第2章は、エネルギーの補給と消費、エネルギー代謝について解説した。スポーツ栄養学は、アスリートのように一般の人に比べてエネルギーをたくさん使う人のための栄養学ともいえることから、エネルギーについて理解しなければスポーツ栄養学を理解したことにならない。そのため、難しく無視されがちなエネルギー代謝をできるだけやさしい表現やイラストで解説した。しかし、この章を受けつけない人がいるかもしれない。そのような方は、ここは飛ばして、第3章を読んでほしい。最後に戻ってきて読んでほしいが……「我慢して読んだらわかってきた!」と納得してほしい。
第3章は、アスリートの食事やサプリメントについて解説した。レシピは1つもないが、どうして食べなくてはいけないのか、どのように食べればよいのか、栄養素と食事の関係、サプリメントの活用をまさに理論を実践できるように書いた。「よし、やってみるぞ!」とこの章を読んだあとの食事が楽しみになってほしい。
第4章は、試合期・遠征中の栄養管理と食生活について解説した。この章は、私が今までサポートしたチームやアスリートにしか見せたことがない試合期の栄養サポートの詳細を書いた。「公認スポーツ栄養士はこういうことをやってくれるのか!自分もサポートを受けたくなる!」と思ってほしい。
第5章は、目的別の栄養管理として、増量、エネルギー不足、貧血、皮力賞折、減量をあげて解説した。この章は、理論と私の経験をエビデンスとして、目的を達成するため、改善するために必要な栄養管理について実践できるように書いた。「そうだったのか!」と読みながらつぶやいてほしい。
第6章は、コンディションを良好に保つために、日々のセルフマネジメントの方法から栄養サポートの活用、休養のとり方を解説した。また、対象者別に栄養管理に必要な考え方や知識、実際に栄養管理をするうえでの問題や課題、その解決法などについても解説した。「今日から始めてみよう!」とすぐにとり組んでほしい。
第7章は、体温を調節するためになぜ汗をかくのか、脱水するとどうなるのか、なぜ水分補給しなくてはいけないのか、どのように飲めばよいのかを解説した。「一生、熱中症にはならないぞ!」と確実に実践してほしい。
第8章は、この本を理解するために必要な栄養学の基礎をまとめた。第1章から第7章を読んでいるときに何度かこの章を読まなくてはいけないこともあると思う。しっかりと理解するために必須の章だ。「なんだかんだ、8章全部読んでいた」と最後に感想を漏らしてほしい。
私は、スポーツ栄養のプロフェッショナルだ。スポーツ栄養を愛している。私の愛するスポーツ栄養を私と出会ったアスリートだけではなく、この本と出合ったアスリートにも体感してほしい。アスリートだけではない、アスリートを支える指導者やスタッフ、家族にもスポーツ栄養のすばらしさを実感してほしい。この本から私の愛するスポーツ栄養の世界を楽しんでください。
鈴木志保子

鈴木 志保子 (著)
出版社 : 日本文芸社 (2018/7/14)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 アスリートの栄養摂取
栄養管理や栄養サポートが必要な理由は?
1 アスリートにおける栄養摂取の基本的考え方
エネルギーや栄養素の必要量が多いとバランスのよい食事だけでは不足する

最も重要なエネルギー源
2糖質の摂取
基本的考え方/アスリートにとっての糖質摂取/糖質を含む食品の種類/糖質摂取のタイミング/ リカバリーのための糖質補給

アスリートにとって油をとる意義とは?
3脂質の摂取
基本的考え方/アスリートにとっての脂質摂取/脂質の種類とその活用

摂取に関する新常識とは?
4タンパク質の摂取
基本的考え方/アスリートにとってのタンパク質摂取/タンパク質の過剰摂取

多岐にわたるビタミン・ミネラルの役割
5ビタミン・ミネラルの摂取
アスリートにとってのビタミン摂取/アスリートにとってのミネラル摂取

第2章 エネルギーの補給と消費
必要量を正確に知ることは可能か?
1エネルギー補給
エネルギー消費量は結果としてしか評価できない

エネルギーを消費するのは運動だけではない
2エネルギー消費とは?
エネルギー消費の種類/エネルギー消費量の測定/エネルギー消費量の算出方法

糖質やビタミンの重要性がわかる
3エネルギー代謝
安静時と身体活動時のエネルギー代謝/エネルギー源としてのタンパク質の代謝/エネルギー代謝に必要なビタミン

第3章 アスリートの食事・サプリメント
欠食や偏食が与える影響がわかる
1バランスよく食べなくてはいけない理由
細胞を作りかえるにはエネルギーや栄養素が必要/欠食を続けると直接筋肉に影響する/バランスか 偏った食事が身体作りに及ぼす影響とは?/筋肉・骨への刺激によって身体作りも変化する/肋肉・用の刺激と栄養状態の関係/

食事内容と自分にとっての適正量が決め手
2バランスのよい食事とは?
食事構成と補食・間食/食材の選び方/適正量を食べる

アスリートが誤解しやすいタンパク質と糖質のとり方
3注意が必要な栄養素と食事の関係
タンパク質と主菜の関係/糖質と主食の関係/糖質とタンパク質の食べ方の関係/エネルギーや栄養摂 取量を調整できる「調理」について

食事量が多いアスリートだからこそ気をつけたい
4食塩の摂取
食べる量が増えれば食塩量も増える

目的や注意点を知ってから使おう
5サプリメントの活用
栄養素以外のサプリメントは安易に使用しないこと/タンパク質のサプリメント利用は過剰摂取に注意/ビタミン・ミネラルのサプリメントで注意したい点とは?

COLUMN
なぜ朝から食べないといけないのか
生活リズムと朝食の関係

第4章 試合期・遠征中の栄養管理・食生活
確実に勝つための条件とは?
1試合期の栄養管理
緊張や興奮からくる栄養状態への影響と対策/試合に備えて糖質を体内に貯蔵する「グリコーゲンロー ディング法」/試合中は脱水のリスクが高くなる/試合期における栄養管理の留意点とは?

試合前、試合当日、試合後の食事の内容・量・タイミング
2試合期の食生活
試合期に守りたい食事の基本ルール/試合前日までの食生活/試合当日の食生活/試合後の食生活/ 軽食・補食・サプリメントの活用/試合期の下痢と便秘対策

事前の計画・準備がカギ
3試合期・遠征中の環境整備
試合会場に合わせた管理のポイント/海外での試合の食環境整備/衛生管理

陥りやすいポイントとは?
4合宿中の栄養管理・食生活
練習量の増加に合わせた栄養管理が必要/指導者に見直してほしい昼食と午後練の開始時刻

COLUMN
無自覚のまま禁止薬物を摂取していることも
ドーピングに対する対策・注意

第5章 目的別の栄養管理
ただ食べるだけでは達成できない
1増量
体重の増加による増量/体重を増加させるための考え方/筋肉量の増加による増量

身体の組織や機能に支障をきたす
2 エネルギー不足
エネルギー不足の状態とは?/エネルギー不足になったときに出てくる症状/エネルギー不足を評価する/ エネルギー不足の治し方/エネルギー不足の予防

持久力の低下や疲労を引き起こす
3貧血
パフォーマンスを左右するヘモグロビン値/アスリートの貧血の原因と対策/貧血を回復する方法/ 貧血の予防/陸上長距離選手の貧血改善プロセス

栄養面に問題があることもある
4疲労骨折
エネルギー不足が原因の疲労骨折とは?

体調を維持しつつ確実に結果を出すには?
5減量
急速減量によって身体に起きることとは?/階級別競技種目における試合前の減量方法/パフォーマンス 向上のための減量方法/減量がうまくいかないときに考えられること

第6章 コンディショニング
段階を経て導入していくことがポイント
1セルフマネジメント
セルフマネジメントの3段階導入方法とは?

目的達成のために導入したい
2栄養サポートの活用
目的をもって期間を決めたら計画を立てて実施する

栄養とともに意識したい
3休養
25歳以降の体力を左右する完全休養の必要性/パフォーマンスに直結する!質のよい睡眠のススメ

今後の人生のために不可欠な月経管理
4女性アスリート
月経に伴う「食」管理/選手生命に影響を及ぼすこともある“女性アスリートの三主徴”とは?

成長に影響を及ぼすエネルギー不足に注意
5ジュニアアスリート
しっかり食べているつもりでも栄養状態が悪くなることがある/ジュニアアスリートのエネルギー・栄 養素摂取の問題と課題/ジュニアアスリートの利用可能エネルギー不足とは/利用可能エネルギー不足 の原因と改善方法/ジュニアアスリートの食事・食生活の留意点/ジュニア期の食教育

生涯現役を目指すには?
6シニアアスリート
加齢に伴う身体の変化を受け入れ、対応する/個人の状態に合わせて疾病を予防・改善しよう

栄養管理は障がいの部位や状態によって異なる
7障がい者アスリート
現場での経験から見えてきた留意点や注意点

第7章 熱中症の予防と水分補給
体重の約2/3を占める水分の働きとは?
1 体内の水分の役割と体温調節
体液には身体にとって大事な3つの作用がある/皮膚からの体温調節の方法とは?/機能が未熟だからこそ要注意!子どもの脱水/発汗の種類には精神性発汗もある/汗だけで水分が失われるのではない! 1日の水分出納/シニア期の水分補給の留意点

水分補給以外の対策とは?
2 熱中症とその予防
熱中症は4つの病型に分類される/覚えておきたい熱中症予防8ヶ条/体温を下げて発汗を少なくする努力も必要/暑いところだけではない寒冷環境での脱水に注意

アスリートが必ず身につけておきたい知識
3水分補給法
汗をかくと水とともに電解質が失われる/糖質の適した濃度は4~8%程度/運動時の具体的な水分袖 給法/スポーツドリンクと経口補水液の違いは? /水分のとり過ぎによる水中毒とは?

第8章 栄養素・エネルギー・消化吸収の基礎
知っておきたい栄養素の基礎知識
1栄養素の種類
身体にとって必要な五大栄養素/糖質脂質/タンパク質/ビタミン/ミネラル/食物繊維

各食品のエネルギー量を算出する方法
2食品のエネルギーとは?
三大栄養素のエネルギー/エネルギー換算係数

1つの食品にはさまざまな栄養素が含まれている
3食品の特徴と分類
18のグループに分けられる食品群

口腔から肛門までの食物の通り道
4消化管の働き
消化管と消化腺からなる消化器系/口腔の働き/胃の働き/小腸の働き/大腸の働き/膵臓の働き/腎臓の働き/肝臓と胆のうの働き

COLUMN
メリットとデメリットを知って上手に付き合おう!
アルコールとパフォーマンスの関係

さくいん
参考文献
おわりに

注意
この本の内容を実行する際には、自己責任で行ってください。 この本に記載されている内容の精度には、細心の注意を払っていますが、著者、編集者、出版社は、本書の内容を活用することで生じた結果や事故等に対する責任はなく、活用後の結果や成果を保証するものでもありません。

装丁・本文デザイン
引間俊之
中島香菜
高階寬司
(株式会社アイム)

企画
戶島正浩
(株式会社 加入,以卜口一夕)

編集
坂 裕治
(株式会社 日本文芸社)
石坂卓也
(株式会社 ブレインズ・ネットワーク)

編集協力
中寺晓子
光成耕司

イラスト
山田奈穗

鈴木 志保子 (著)
出版社 : 日本文芸社 (2018/7/14)、出典:出版社HP

第1章 アスリートの栄養摂取

アスリートに栄養管理が必要なことは、広く知られるようになった。 その一方で誤解されていることも多い。
特有の栄養管理が必要な理由や五大栄養素を摂取する際のアスリートならではの目的について理解を深めよう。

鈴木 志保子 (著)
出版社 : 日本文芸社 (2018/7/14)、出典:出版社HP

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

基礎理論から学ぶ

アスリートのパフォーマンスを向上させるための食事摂取法や運動との組み合わせなど、基礎となる理論を紹介しながら細胞・分子レベルで解説していきます。メソッドやマニュアルではなく、科学的根拠のある基本理論を理解することができるので、現場に応用して活用することができるようになります。

寺田 新 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2017/10/25)、出典:出版社HP

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

Molecular and Cellular Sports Nutrition
Shin TERADA University of Tokyo Press, 2017
ISBN978-4-13-052706-4

はじめに

一流のスポーツ選手が繰り出す超人的とも思える数々のパフォーマンスに私たちは魅了され,感動する.2016年のリオオリンピック・パラリンピックも終わり,いよいよ2020年の東京オリンピック・パラリンピック,さらにはその先の大会にむけて,各競技団体もメダル獲得のための強化に本腰を入れ始めている.では,そのようなスポーツ選手の競技パフォーマンスを向上させる方法にはどのようなものがあるのだろうか。たとえば,一流選手の動作を解析し,無駄のない効率の良い動きを獲得するために,スポーツバイオメカニクスと呼ばれる「身体の動き」に着目した研究が行われている.また,効果的なトレーニング方法を確立したり、一流選手のさまざまな生体機能を測定し,どのような能力が優れているのかということを解明したりするトレーニング科学や運動生理学といった分野も存在する。さらには,スポーツ選手がほどよい緊張のなかで最高のパフォーマンスを発揮できるように心理面からサポートを行うスポーツ心理学も注目を集めている。このように近年のスポーツ科学研究の発展にともない、多くの競技選手がいわゆる「科学的トレーニング」と呼ばれる手法を積極的に活用するようになっている。また最近ではランニング愛好者が急増し、空前のマラソンブームとなっていることなどもあり,トップアスリートだけではなく,一般のスポーツ愛好者の多くが、スポーツ活動をより楽しく行うためにその成果を積極的に活用しはじめている.本書はそのような,近年目覚ましい進歩を遂げているスポーツ科学のなかでも「スポーツ栄養学」と呼ばれる分野について解説するものである。
スポーツ栄養学とは、「スポーツ選手のパフォーマンスを向上させるためには,どのような内容の食事をどのように摂取したらよいのか?」,「運動と食事をどのように組み合わせれば、健康の維持・増進につながるのか?」ということを解明し,実際にアスリートのパフォーマンスや一般の人びとの生活のために役立たせることを目的とした応用科学・実践科学であるというのしたがって、近年出版されているスポーツ栄養学に関する書籍の多くが「各種スポーツ活動をサポートするためにはどのような食事を準備すべきれのか」といった実用的な内容のものであった.本書では,そのような実用的な内容というよりも、スポーツ栄養学の基礎となる理論を紹介しながららに一歩踏み込んで「なぜそのように摂取すると効果的なのか?」というメカニズムを細胞レベル・分子レベルで解説することを目的として書かれている.このようなメカニズムを知ることは,その栄養学的手法が本当に理にかなったものであるのかどうかを自ら判断できる能力を養うことにつながるためである.
本書は、著者が東京大学教養学部後期課程統合自然科学科において担当している「スポーツ栄養学」の講義内容の一部をまとめたものである.スポーツ栄養学の分野は日進月歩であり,毎月、毎日のように新たな研究成果が報告されており、講義ではその内容も随時紹介・解説している.本書でも,まだ完璧とはいえず、可能性の段階の手法も含めて,できるだけ最新の研究成果も解説するように心がけた。ぜひスポーツ栄養学の学問分野・研究分野としての魅力も感じていただければ幸いである。「東京大学出版会の丹内利香氏には、本格的な本の執筆が初めての経験であった著者を、企画の段階から粘り強くサポートしていただき,大変お世話になった.また,東京大学に着任後,研究室の初期メンバーとして著者をサポートし,研究を精力的に進めてくれた,松岡智子氏,野中雄大氏,稲井真氏,西村脩平氏,浦島章吾氏,近藤早希氏,深澤歩氏,横田悠天氏,普段一緒に研究活動をしていただいている東京大学の八田秀雄教授と八田研メンバーには深く御礼申し上げる.最後に,同じスポーツ栄養学分野の先輩研究者であり、公私にわたりサポートをしてくれている妻の木村典代(高崎健康福祉大学教授)への感謝の気持ちをここに付け加えることをお許しいただきたい.
2017年 寺田新

寺田 新 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2017/10/25)、出典:出版社HP

目次

はじめに
序章 スポーツ栄養学とは?
スポーツパフォーマンスと健康のための食事の重要性 2/スポーツ栄養学に対 する間違ったイメージ 4/スポーツ栄養学に関する知識の必要性 5/スポーツ 栄養学の学問としての魅力7
コラム1 世界と日本におけるスポーツ栄養学の歴史

第1章 身体組成と体脂肪・脂肪細胞の種類
1.1 肥満の指標と身体組成
肥満を客観的に判断する BMI 13/身体組成16/体脂肪量の測定法―生 体電気インピーダンス法16/体脂肪量測定のゴールドスタンダード 19/スポーツ選手における身体組成の測定
1.2 体脂肪の種類
内臓脂肪と皮下脂肪 25/「貯める」脂肪と「使う」脂肪28/第3の脂肪細胞 ベージュ脂肪細胞33/運動と褐色脂肪細胞,ベージュ脂肪細胞34
コラム2 若年女性の痩せ問題

第2章 エネルギー消費量と摂取量
2.1 エネルギー消費量
カロリーとは?39/運動によるエネルギー消費40/3つのエネルギー消費 量 42/基礎代謝量 43/食事誘発性熱産生48/運動時のエネルギー消費量の測定法51
2.2 エネルギー摂取量
・・・55 エネルギー摂取量・食欲の調節 55/「腹八分目」で得られる効果――エネルギー摂取量の制限と長寿効果 61/アスリートにおけるエネルギー有効性 常な生理機能と骨密度を維持するために 64
コラム3 脂肪研究最前線

第3章 糖質——パフォーマンスと健康のための三大栄養素摂取法(その1)
3.1 運動と糖質
「糖類」,「糖質」,「炭水化物」の違いは? 73/運動時における糖質の重要性 74/筋グリコーゲン量を高める――グリコーゲンローディング77/運動前の地 質補給に関する注意点 83/運動後のグリコーゲン回復 86/運動中の糖質の利用を減らすためには? 92/持久的トレーニングの効果を高める方法 ―Training-Low, Compete-High 法, Sleep-Low法
3.2 糖尿病と運動・栄養
糖尿病の原因は? 98/運動・栄養による糖尿病予防効果 101/糖質制限食の効果 102/食物繊維の効果 105 コラム4 栄養素の組み合わせによる相乗効果・相殺効果

第4章 たんぱく質——パフォーマンスと健康のための三大栄養素摂 取法(その2)
4.1 筋肉とたんぱく質.
「たんぱく質」,「アミノ酸」,「ペプチド」の違いは? 111/筋肥大のメカニズ ム 112/筋力の生理的限界・心理的限界 117/骨格筋の膨張現象――パンプア ップとは? 119/たんぱく質の分解と合成――動的平衡119/運動による筋たんぱく質の分解と合成 122
4.2 たんぱく質の摂取法
たんぱく質の摂取量 124/良質なたんぱく質とは? 126/たんぱく質摂取のタ イミング129/プロテインサプリメントの効果 132/たんぱく質摂取の効果を 高める方法 134/たんぱく質の過剰摂取による影響136/たんぱく質摂取の例 果に関する最近の話題 138/減量・怪我による骨格筋の萎縮140
コラム5 たんぱく質の摂取量を減らしたほうが良い?

第5章脂質——パフォーマンスと健康のための三大栄養素摂取法(そ の3)
5.1 脂質の種類と健康
「脂肪」, 「油」,「脂」,「脂質」の違いは? 149/脂質のおいしさ150/脂肪酸 の種類 152/脂肪酸の種類による効果の違い154/トランス脂肪酸とは? /脂質はどれくらい摂取すべきなのか?
5.2 運動と脂質
スポーツ選手にとっての脂質摂取 172/長期的な高脂肪食摂取に対する骨格筋 の適応 173/高脂肪食摂取と疲労・パフォーマンス 175/低糖質・高脂肪食=ケトン食の効果 177/運動後の疲労回復と脂質摂取 182
5.3 特殊な脂質——機能性脂質
通常の油脂の消化・吸収の仕組み184/中鎖脂肪酸の効果 185/ジアシルグリセロールの効果 190
コラム6 Exercise mimetics

第6章 運動中の水分摂取法とスポーツドリンクの効果
6.1 発汗作用と体温調節
1日の水分出納197/運動時の体温上昇と体温調節 199/夏場の発汗量とパフォーマンスへの影響202/体水分量を調節するメカニズム205
6.2 スポーツドリンクの効果
スポーツドリンクの組成209/スポーツドリンクに含まれる糖質 211/糖質飲 料で口をすすぐーマウスリンス 213/スポーツドリンクの主な種類——ハイポトニック vs. アイソトニック
コラム6 マラソンと体型,熱放散との関係

第7章 パフォーマンス・健康とサプリメント
薬機法と食品衛生法による分類 219/サプリメントの分類223/パフォーマン ス向上を目的としたサプリメントエルゴジェニックエイドを活用する際の注 意点224/サプリメントについてのエビデンス(科学的根拠) 226/サプリメ ントの情報源231/代表的なエルゴジェニックエイドの効果232/スポーツ選手がサプリメントを活用する際の心構え236
コラム8 効果的な食事・栄養素摂取法の確立にむけて

索引

寺田 新 (著)
出版社 : 東京大学出版会 (2017/10/25)、出典:出版社HP