【最新】空間デザインについて学ぶためのおすすめ本 – コミュニティ、カフェ、人気ショップまで

空間デザインとは?どうすればデザイナーになれる?

空間デザインとは、家具・インテリア・建築における配置や設計のことで、それを考慮して空間を作り上げる仕事が空間デザイナーです。あらゆる空間を、新しい発想・コンセプトに合わせた演出をし、人々に特別で心地いい気分を味あわせてくれます。ここでは、空間デザインについて学ぶのにおすすめの、デザイン性の高い様々な事例を取り上げている本をご紹介します。

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出典:出版社HP

にぎわいのデザイン: 空間デザイナーの仕事と醍醐味

空間デザイナー必読

さまざまなタイプの商業施設を手掛けている著者のモットーである「一過性ではないにぎわいを生み出していくこと」という考え方をもとに、空間デザインやその関係性について解説されています。対話を重ねて、モノで考える、この2つのデザインプロセスを9つの事例をもとに紐解いていきます。空間デザインに携わっている方あるいは空間デザイナーを目指す人におすすめの1冊です。

吉里 謙一 (著)
出版社 : コンセント (2020/2/14)、出典:出版社HP

にぎわいのデザイン:空間デザイナーの仕事と醍醐味

はじめに

以前、事務所のスタッフに、自分の仕事をどのようにまわりに紹介しているのかを興味本位で聞いたことがある。「インテリアデザイン」か「空間デザイン」か……どちらかを使うのだろうと思っていたのだが、答えの多くは「内装の設計」だった。まちがってはいないが、「デザイン」が含まれないことに愕然とした。みな「デザイナー」とは名乗らないという。まだ一人前ではない気恥ずかしさなのか、仕事内容の説明の難しさなのか。みなにとっても、学生時代からの憧れの職業に就いているはずだと思っていたのだが。
本書で取り上げる「空間デザイン」という仕事には、家具も含めた内装をデザインする「インテリアデザイン」、展示会場やショーウィンドウをデザインする「ディスプレイデザイン」なども含まれる。もともとそれらの領域から派生し、実際に応じて統合したデザイン分野といえる。「空間デザイン」は、施工と密接に関わるため、当然「設計」は重要な業務内容である。同じく「設計」を必要とする建築や環境デザインに隣接し、包括されている場合もあるが、それらと同じように学問として確立しているとは言い難い。
それゆえに「空間デザイン」は、一見なにを目指して、どう学べばよいものなのかわからないかもしれない。一直線にこの分野を勉強して「空間デザイナー」と名乗るのはじつはかなり難しい。事務所のスタッフが学んできたのも、建築や環境デザインであることが多い。よくよく考えてみれば、そういうことだ。
私自身、学生時代は家具デザインを学んでいた。人間のスケール、身体の仕組みをリサーチし、理想の椅子のデザインを考え、その価値を論理的に語るためのトレーニングを重ねた。思えば、それが自分のデザインの原点であり出発点である。
人びとの営みがおこなわれる、人と人との接点が生まれる場所には、どこでも「空間デザイン」の仕事があると断言できる。外側からではなく、人びとが居る場所、つまり内側からの視点が「空間デザイン」の価値を計るものさしだ。学生時代に取り組んだ椅子のデザインから、自分はこの「内側からの視点」を学んだ。換言すれば、それは利用者の視点を意識し、獲得することでもあったように思う。
日本の建築産業には、その経済規模を発展させるために、建物の内側については施工会社にまかせ、建物の内と外とでデザインを別々に進める分業を推進してきた歴史がある。そのため「空間デザイン」はいくぶん独自の成長と発展を経てしまったのかもしれない。しかし、このデザイン分野がもつ専門性と領域横断性は、今後ますます意味をもつようになると考えている。
社会経済の発展、イノベーションによるあらたな消費の誕生など、現代社会ではこれまでになかったサービス業態がつぎつぎと生まれている。そうした時代にあって、複雑化する施設の開発には、業種の垣根を超えて多くの専門家が集うようになった。そのなかにあって、「空間デザイナー」が果たすであろう役割と責任も大きくなっていると感じている。なぜならそうした施設の開発では、デザインの対象はほかならぬ実物、実体験であるからだ。プロデューサーやディレクターがいくらコンセプトを練りあげ、プロジェクトをリードしても、最終的に利用者たちが訪れ、目にして五感で経験する造形を、責任をもって詳細につくることができるのはやはりデザイナーしかいない。またそうした施設では、想定する利用者像の範囲も広い。グラフィック、プロダクト、照明、サインなど、利用者が触れるものすべてが、その空間を構成するデザインに含まれる。あらゆる人びとに快適さや居心地のよさを提供しなければならない。それが「空間デザイン」の仕事の難しさであり、また醍醐味でもある。
本書では、私自身の経験を踏まえて「空間デザイン」の具体的な仕事の内容とそこで必要になる考え方を記した。本文では、物事をおおきく進めるために殊のほか熱量が必要となる、クライアントをはじめとするステークホルダーたち、他業種の専門家や現場を支える職人たちとのコミュケーションについての記述が多くなっていると思う。人と人との関わりこそが、「にぎわい」を生みだすために一番大切にしなければならないと思っているからだ。
本書が、「空間デザイン」という分野についての理解の一助となること、また現在と未来の「空間デザイナー」たちをつなぐ共通知の一部となることを切に願っている。
空間デザイナー吉里謙一

吉里 謙一 (著)
出版社 : コンセント (2020/2/14)、出典:出版社HP

目次

はじめに
修業時代
美しい、デザインは言葉にできる
デザインという仕事
ジレンマを抱えた日々
自分の理想に近づく仕事の

空間デザインのプロセスI対話を重ねる
声にならない声がきっとある
からだを通した経験が必要
手からはじめるコンセプト策定
クライアントと思考を加速させる
デザインがジャンプする瞬間
考え方を分かちあって、はじめてチームになる

空間デザインのプロセスⅡモノで考える
マテリアルから空間が立ち上がってくる
無理のない空間
つくりこみ過ぎないこと
原寸でデザインを考える
空間におけるマチエールの働きは絶大
デザインとして魅力的かどうか
ハンス・ウェグナーから学んだ革新性
心がけているのは感情の抑揚をつくること

にぎわいを生みだす
事例1 鉄道高架下再開発の先駆けモデル「2k540」 商業施設
事例2 人が使い成熟していくにぎわいの市場「まるごとにっぽん」 商業施設
事例3 ストーリーとモニュメンタルな造形でコンセプトを具体化「azabu tailor SQUARE」 アパレル
事例4 店舗のコンセプトづくりからかかわる「両国橋茶房」 カフェ
事例5 現場にコミットし、精度を高める「Hayama Natural Table Bojun」 レストラン
事例6 静と動の劇的空間「タケヤ オフィス」 オフィス
事例7 時代の空気感を具体化する「ビシェス オペーク」 アパレル
事例8 企業文化の理解とデザインの方向性「眠りギャラリー TOKYO」 ショールーム
事例9 新幹線の駅にあたらしいにぎわいをつくる「アスティ新富士」 駅施設

対話編 これからのデザイナーに求められるもの 島崎信との対話
空間デザインの未来形 上垣内泰輔との対話
対談をおえて

おわりに
付録 空間につながる線

裝画 横山雄
ブックデザイン・記聞 長田年伸

修業時代

吉里 謙一 (著)
出版社 : コンセント (2020/2/14)、出典:出版社HP

デザイン科学概論:多空間デザインモデルの理論と実践

デザイン科学の教科書

デザイン科学において代表的理論と言われる「多空間デザインモデル」をもとに、デザインの応用事例を紹介しているので実務に活かせる知識が身につきます。デザインに携わる方や空間デザインの設計に興味のある学生におすすめの1冊です。

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP

デザイン科学概論:多空間デザインモデルの理論と実践

はじめに

本書の狙い

本書は,デザイン科学における初めての教科書的出版物です。20世紀までの学問体系が縦割りであったことへの批判として,現在,横断型科学の必要性が強く問われています。デザイン(設計)という行為そのものを研究対象とするデザイン科学は,その代表的な学問領域です。
しかしながら,デザイン科学の基盤構築には幾多の課題がありました。たとえば,デザイン行為は,人々や社会のさまざまな潜在的・顕在的ニーズを物質的なモノや情報システムなどのコトに写像する行為です。そのため,デザイン科学は,人文科学や社会科学の問題を自然科学の問題に変換するという,まさに文理にまたがる学問領域になります。このことは,今でもデザイン科学を構築するうえでの難解さの主要因になっています。さらに,人はなぜ未知で多様なデザイン解(デザインされたモノやコト)を導けるのか。この創造の根源的なメカニズムについても,これまで,デザイン科学における大問題でありました。
筆者らを含むデザイン科学領域の研究者たちは,これらの問題に対して,さまざまな領域の知の統合を図ることで、少しずつデザイン行為を紐解くことに成功し、デザイン科学の基盤構築を進めてきたのです。それらの成果は,すでに幾多の人工物や人工システムの開発に応用され,その効果を示しています。また,得られた知見は,国内外の多くの論文としても報告され,世界的にも注目されはじめています。しかし、いまだ入門書的な概要を記した書籍はなく,このような背景を受けて本書は刊行されました。
本書では、デザイン科学の枠組みとその代表的な理論である「多空間デザインモデル」に注目しています。また,その理論をデザイン(設計)の実践に応用した事例を多く紹介することにより、実務に応用しやすいようにわかりやすく解説しました。デザイナーや設計者などの実務に携わる方々はもとより,デザイン・設計領域の研究者,教育者,さらには学生など,多くの方々に読んでいただければ幸いです。

本書の構成

本書は,以下の3部で構成されます。
<第1部デザイン科学と多空間デザインモデル> 第1部では、デザイン科学と多空間デザインモデルを概説します。デザイン科学では,分析・発想・評価による「デザイン思考モデル」,新たなアイデアを生み出す「創発デザイン」と既存のアイデアを極める「最適デザイン」を解説しています。また,それらの知を統合して生まれた多空間デザインモデルでは,その理論を実務に応用するための「Mメソッド」も含め,その意義や使用法について述べています。 <第2部多空間デザインモデルの応用領域> 第2部では、多空間デザインモデルの応用事例を紹介します。応用事例の領域は、プロダクトデザイン,システムデザイン,ソフトウェアデザインなどさまざまです。さらには,研究,教育への応用事例も紹介します。第2部では,これらを通じて、多空間デザインモデルの理論と実践の関係性について理解を進めていきます。 <第3部Mメソッドを用いたデザイン事例集> 第3部では、多空間デザインモデルの応用手法であるMメソッドについて,その適用事例集を紹介します。前半には、発想をおもな狙いとした「M-BAR」,後半には、分析・評価をおもな狙いとした「M-QFD」について,オフィス機器,福祉機器,生産システムなどの多彩な事例を紹介します。これらの応用事例を通じて,Mメソッドのつかい方や多空間デザインモデルの有効性を実感していただければ幸いです。 デザイン塾(謝辞) 本書に記載した内容には、「デザイン塾」(主宰:松岡由幸,ホームページ:http://www.designjuku.jp)におけるさまざまな議論を通じて得られた多くの知見が含まれています。デザイン塾は、企業における現場のデザイナーや設計者,デザイン・設計領域の研究者・教育者など、さまざまなデザイン・設計にかかわる関係者が集う場です。本書の刊行にあたり、関係者,参加者の皆様に、ここに改めて感謝の意を表します。 2017年11月 監修 松岡由幸

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP

Contents

はじめに [松岡由幸] 第1部 デザイン科学と多空間デザインモデル
第1章 デザイン科学の文脈
[加藤健郎] 第2章 デザイン思考のモデル
[加藤健郎] 第3章 創発デザインと最適デザイン
[佐藤浩一郎] 第4章 多空間デザインモデル
[佐藤浩一郎] 第5章 多空間デザインモデルを応用するMメソッド
[加藤健郎] 5.1 節 多空間デザインモデルに基づく発想法(M-BAR)
[高野修治] 5.2節 多空間デザインモデルに基づく分析・評価法(M-QFD)
[堀内茂浩・加藤健郎]

第2部 多空間デザインモデルの応用領域
第1章 プロダクトデザイン
[佐藤弘喜] 第2章 システムのデザイン
[西村秀和] 第3章 ソフトウェアのデザイン
[大槻繁] 第4章 機械システムのデザイン
[森田寿郎] 第5章 サイネージのデザイン
[小木哲朗] 第6章 座り心地のデザイン
[平尾章成] 第7章 宇宙科学探査ミッションのデザイン
[石上玄也] 第8章 デザインの研究
[佐藤浩一郎] 第9章デザインの教育
[増田耕・佐々木良隆・林章弘・松岡由幸]

第3部 Mメソッドを用いたデザイン事例集
【M-BAR の事例】
第1章 オフィス機器のデザイン
[浅沼尚・松岡慧] 第2章 アイウェアのデザイン
[浅沼尚・松岡慧] 第3章 プロダクトデザイン教育
[伊豆裕一] 【IM-QFD の事例】
第4章 福祉機器のデザイン
[松野史幸・加藤健郎・松岡由幸] 第5章 生産システムのデザイン
[三輪俊晴] 第6章 自動車部品のモジュラーデザイン
[星野洋二・加藤健郎]

索引
著者紹介

加藤 健郎 (著, 編集), 佐藤 弘喜 (著, 編集), 佐藤 浩一郎 (著, 編集), 松岡 由幸 (監修)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/3/20)、出典:出版社HP

空間デザイン事典

写真でわかるデザイン手法

空間をデザインする上で必要な概念や手法を整理・分類して、実空間を例示しながら解説していきます。多くの写真や図面が用いられているので、視覚的に難なく理解することができます。空間デザインに興味がある方や建築を学んでいる方におすすめの1冊です。

日本建築学会 (編集)
出版社 : 井上書院 (2006/7/20)、出典:出版社HP

まえがき

日本建築学会・空間研究小委員会では,これまでに『空間体験―世界の建築・都市デザイン(1998年)」,『空間演出一世界の建築・都市デザイン(2000年)」,『空間要素―世界の建築・都市デザイン(2003年)』を刊行してきた(いずれも井上書院刊)。これらは,「空間の魅力とは何か」というプリミティブな視点から建築・都市空間を吟味し,豊富な実例を多数引用しながらその魅力や面白さについて解説したものである。
本書は,これら3部作の根底に流れる編集意図を引き継ぎながら,2005年に刊行した『建築・都市計画のための空間学事典[改訂版]』(日本建築学会編,井上書院刊)の姉妹編として企画された。『空間学事典』が,建築・都市空間研究の分野で用いられる用語について解説した事典であるのに対し,本書『空間デザイン事典』は、空間を計画・設計(デザイン)する際に用いられるさまざまな概念や手法を整理・分類し,実空間を例示しながら解説した事典である。建築や都市について学んでいる初学者をはじめ、空間に興味をもつ一般の読者にとっての啓蒙書となるよう,多数の写真や図面を用いてわかりやすく解説している。
計画や設計のイメージを喚起させ,また,豊かにするための手掛かりとして,あるいは,研究対象を発掘する際の建築・都市空間の事例集として,さらには,実際に空間を見学し体験するためのガイドブックとして活用していただければ幸いである。建築学を学ぶ学生諸子にとって,これら2冊の姉妹図書が,それぞれ卒業研究と卒業設計のための恰好の参考図書とならんことを期待してやまない。
本書の編集にあたっては,空間研究小委員会のメンバー以外にも多くの方々から貴重な原稿や写真の提供を賜わった。また,井上書院の石川泰章氏,山中玲子氏には、企画から校正に至るまで丹念に対応していただいた。さらに,編集にご尽力いただいた出版ワーキング・グループのメンバーの方々,特に,積田洋氏(同主査),金子友美氏(同幹事)の熱心な取組みがなければ本書の完成はなかった。記して謝意を表したい。
2006年7月空間研究小委員会主査大佛俊泰

本書の特徴と構成

建築空間や都市空間の「魅力」は,さまざまな観点から読み取ることがですでに空間研究小委員会では,実際の建築や都市での空間体験を通じてその空間の魅力を紐解いた「空間体験―世界の建築・都市デザイン(1998年)」,また建築や都市空間を構築していくうえで,さまざまな手法を用いてより魅力的な空間を創出するための演出手法に着目して「空間演出一世界の建築・都市デザイン(2000年)』を、さらに空間を構成していくための基本的な構成要素である柱や窓,壁や天井といった要素に注目して、空間の魅力を要素の側面から綴った「空間要素―世界の建築・都市デザイン(2003年)」の3部作を刊行している(いずれも井上書院刊)。

本書は,これら3部作の成果を踏まえて、建築や都市をデザインするでの概念や手法を用語として整理し,その用語について事例を中心に解説した事典として編纂したものである。
いわゆる事典が用語の解説に当たって活字のみで記述されがちであるのと対照的に、本書では解説文は極力簡潔なものにすることを前提に,ページ構成の紙面の中で2割程度の分量として、解説文は550字程度にとどめることにした。したがって、紙面の多くは実例を掲載している。この構成が最も特徴的な点であり,多数の建築や都市空間の事例をカラー写真でビジュアルに示すことにより,その中に読み取れるデザイン手法を実証的に理解することを目論んでいる。

まず,デザイン手法として多数の概念や手法を出版ワーキング・グループのメンバーで整理・分類した。次に,用語を目次に示すようにデザイン行為を操作的・能動的に表現する言葉で「章」を構成することとし,「立てる。覆う,囲う,積む、組む,掘る・刻む,並べる,整える,区切る,混ぜる,つなぐ,対比させる,変形させる,浮かす,透かす・抜く,動きを与える,飾る,象徴させる、自然を取り込む,時間を語る」の20の概念に整理した。さらに、これらの概念を具体的に示すデザイン手法として,概念ごとに4~6つの用語に整理した結果,計98の用語について見開き2ページで解説している。一つの用語については、10数個の事例を挙げており、最もその用語についてデザイン手法を代表する事例の写真を大きく扱い、さらに用語ごとに写真のみならず平面図や断面図なども併せて掲載し、理解を促すようにレイアウト・構成している。

本書で例示した建築・都市空間の事例数は,重複も含め総計700近くにも上っている。これらの事例は,巻末に事例索引として世界の地域別に名称をまとめて示している。

当然のことながら,建築や都市空間をデザインする方法は多様である。本書では,その用語の代表的な事例を掲載することに努めているものの,写真は原則的に執筆者や協力者である学生の撮影したものを採用しているため、用語によってはおのずと限界があり例示できないものもあった。さらに、建築や都市空間のデザインの手法が一つの手法で創出されていることは、むしろ稀なものであり,複数の手法が複合的に用いられていることは言うまでもなく、事例の採用に当たっては,編集委員会で幾度も検討を行った。その結果として,本書で扱った事例を代表例として掲載していることをご理解いただければ幸いである。
本書の解説文で用いられた空間について語られる用語については,本書の姉妹編である当委員会編纂の『建築・都市計画のための空間学事典(2005年)』(井上書院刊)を参照していただきたい。

本書の編集に際しては,本書の特徴であるデザイン手法を示す多数の建築・都市空間の例示が中心となっていることから,目次にも示されているようにそれぞれの章について担当者を決め,概ねその章の担当者の研究室に所属する学生を中心に,編集段階から多数の写真を収集し掲載している。
改めて幹事の金子友美氏をはじめ,編集委員の方々ならびに章の担当者,さらに多数の写真を提供していただいた方々に深く感謝申し上げる。

本書が,建築や都市を学ぶ学生諸子,さらに実際に計画・設計に携わっている方にデザインを考えるうえでの一助になれば望外の幸いである。

2006年7月空間研究小委員会出版ワーキング・グループ主査積田洋

[編集委員] 積田洋東京電機大学工学部建築学科教授空間研究小委員会·出版WG主香
金子友美昭和女子大学生活科学部生活環境学科講師同小委員会・出版WG幹事
土肥博至神戸芸術工科大学大学院芸術工学研究科教授
福井通神奈川大学工学部建築学科助手
安原治機工学院大学工学部建築都市学科教授
山家京子神奈川大学工学部建築学科教授

[執筆者] 赤木徹也 工学院大学工学部建築学科助教授
石井清已 神戸芸術工科大学大学院土肥研究室
伊藤真貴 神戸芸術工科大学大学院土肥研究室
井上猛 東京工業大学大学院大佛研究室
大佛俊泰 東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻助教授
金子友美 前出
鎌田詩織 東京工業大学大学院大佛研究室
木下芳郎 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻助手
黒川茜 神戸芸術工科大学大学院土肥研究室
腰越耕太 KOA Architects建築設計室主宰
斉藤理 東京大学客員研究員,東京理科大学非常勤講師
佐々木一晋 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士後期課程,慶應義塾大学環境情
報学部非常勤講師
佐野奈緒子 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻助手
島田廉 東京工業大学大学院大佛研究室
鈴木信弘 鈴木アトリエ一級建築士事務所代表,神奈川大学工学部建築学科非常勤講師
鈴木弘樹 栗生総合計画事務所,東京電機大学工学部建築学科非常勤講師
関戸洋子 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻客員研究員
高柳英明 高柳英明建築研究所顧問,千葉大学工学部开工学科助手
津田良樹 神奈川大学工学部建築学科助手
積田洋 前出
土肥博至 前出
富井正憲 神奈川大学工学部建築学科專任講師,東京大学生產技術研究所協力研究員
中田由美 東京工業大学大学院大佛研究室
林田和人 早稻田大学理工学術院講師
日色真帆 愛知淑德大学现代社会学部現代社会学科教授
福井通 前出
星野雄 東京工業大学大学院大佛研究室
本間義章 本間義章建築設計事務所(associate with S.C.S)
安原治機 前出
柳田武 日本大学理工学部建築学科講師
山家京子 前出
山岸千夏 神戸芸術工科大学大学院土肥研究室
横山勝樹 女子美術大学芸術学部デザイン学科教授
横山ゆりか 東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系助手

[2006年度空間研究小委員会・出版WG] 主査 積田洋
幹事 金子友美 佐野奈緒子 鈴木信弘 鈴木弘樹 高柳英明
委員 大佛俊泰* 林田和人** 福井通 安原治機 柳田武
土肥博至 横山勝樹 恒松良純 山家京子

*:空間研究小委員会主查
**:2005年度空間研究小委員会,出版WG委員
(主查・幹事以外は五十音順)

日本建築学会 (編集)
出版社 : 井上書院 (2006/7/20)、出典:出版社HP

CONTENTS

1立てる 福井通
中心・要に立てる
高々と立てる
周域に立てる
林立させる
連続して立てる

2覆う 安原治機
自然で覆う
光とともに覆う
柔らかく覆う
街路・広場を覆う
軽く覆う

3囲う 土肥博至
全体を囲う
緩やかに囲う
仮に囲う
領域を表す
中央空間をつくる
囲わない

4積む 積田洋
同じ要素を積む
異なる要素を積む
層を重ねる。
基壇に載せる
ずらしながら積む
ランダムに積む

5組む 鈴木信弘
格子で組む
トラス・スペースフレームでつくる
面でつくる
ボリュームでつくる
組み立てる

6掘る・刻む 積田洋
掘り下げる横に掘る
刻む・切り取る
地下空間をつくる

7並べる 金子友美
均等に並べる
リズムをつくる
集中させて並べる・分散して並べる
秩序をつくる

8整える 大佛俊泰
幾何学で整える
比例・比率で整える
軸線を通す
シンメトリーにする
グリッドでつくる

9区切る 福井通
壁で区切る
幅で区切る
レベル差で区切る
装置・記号で区切る
曖昧に区切る

10混ぜる 横山勝樹
カオスを表現する
まだらにする
複数のコードを使う
コラージュする
スタイルを混ぜる

11つなぐ 山家京子
動線でつなぐ
空中をつなぐ
分節してつなぐ
上下をつなぐ
緩やかにつなぐ

12対比させる 金子友美
形態を対比させる
明暗をつける
開閉で対比をつくる
色彩で対比させる
新旧を対比させる

13変形させる 大佛俊泰
曲げる
ずらす
崩す
うねらせる
軸をふる

14浮かす 林田和人
全体を浮かす
一部を浮かす
水に浮かす
吊って浮かす
突き出す

15透かす・抜く 安原治機
物を通して透かす
間を透かす
水平に抜く
垂直に抜く

16動きを与える 横山勝樹
ボリュームで動きをつくる
景を転換する
面で動きをつくる
人の流れをつくる.

17飾る 柳田武
象徴性を与える
内部空間を飾る
文様で飾る
過剰に飾りたてる
レイヤーをまとう

18象徴させる 鈴木信弘
場を象徴させる
思想・主張を象徴させる
メタファーを使う
技術を象徴させる

19自然を取り込む 積田洋
地形を生かす
風土になじませる
風景をつくる
風景を切り取る
光を取り込む
水を取り込む

20時間を語る 土肥博至
物語を表現する
宗教を形に表す
引用する
歴史を取り込む
記憶を引き継ぐ

執筆/写真・図版提供/協力
引用文献
索引
事例索引

日本建築学会 (編集)
出版社 : 井上書院 (2006/7/20)、出典:出版社HP

話題のショップをつくる注目の空間デザイナー・建築家100人の仕事

特別感のある空間を生み出す

インバウンド向けのホテルの増加、空き家を生かしたリノベーションなど、新しい発想でこれまでにない空間を作り出す手法について、実例を紹介しながら解説していきます。空間デザインに興味のある方やグライックデザイナーにも役立つおすすめの1冊です。

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2018/11/12)、出典:出版社HP


Editorial Notes エディトリアルノート
A 事務所名/代表者名
B プロフィール
C ポートレイトまたはロゴマーク
D 住所・Tel・Fax・E-mail・URL
掲載希望の情報のみを記載しています。
E 主に手がけている仕事にチェックを入れています。
F 店舗名
G制作スタッフ

【スタッフクレジット略称について】
CL:Client クライアント
AR:Architect 建築・設計
ID:Interior Designer インテリアデザイナー
CD:Creative Director クリエイティブディレクター
AD:Art Director アートディレクター
GD:Graphic Designer グラフィックデザイナー
P:Photographer フォトグラファー
PR: Producer プロデューサー
DR:Directorディレクター
WEB:Web Design ウェブデザイン
DF: Design Firm
デザイン会社 S:Submitters 作品提供者
(出品者以外にも提供者がいる場合のみ記載しています)

*上記以外の書きは略さずに記載しております。
*本書に記載されている店名・店舗写真などは、全て2018年10月時点の情報です。
*本書に掲載している店舗は、既に営業を終了しているものもあります。
*作品提供者の意向により、データの一部を記載していない場合があります。
*各企業に付する、株式会社および有限会社は表記を省略させていただきました。

はじめに

社会状況が大きく変化している近年、インバウンド効果を狙ったホテル建設や地域活性化のためのまちづくりなど、商業空間や建築業界でも、これまでにない魅力的な場所づくりが求められています。そのような場所では、建築・インテリア・ファッションやグラフィックなどの垣根を越えたデザインや、他業種との協働が必要とされる場面も増えています。

本書は、建築、インテリアはもちろん、家具やグラフィックなど、統一されたデザインで場の魅力をつくりだす、空間デザイナーと建築家たちの作品をプロファイル形式で紹介しています。人気のサードウェーブコーヒー店や古民家をリノベーションしたホテル。オープンキッチンのスイーツショップや泊まれる本屋さんなど、行ってみたくなる魅力的な空間を約380作品紹介しています。これまでの常識に留まらない、新しい時代のショップや場所づくりを目指される方々の、お仕事の一助になれば幸いです。

最後になりましたが、本書制作にあたり快く作品をご提供いただきました出品者の方々と、制作にあたりご協力をいただきましたすべての方へ、この場を借りてお礼を申し上げます。

パイインターナショナル編集部

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2018/11/12)、出典:出版社HP

特集

建築界に新しい風を吹き込むサポーズデザインオフィスの挑戦

真ん中に厨房があって、シェフたちが忙しく立ち働いている。鍋からは湯気が出ている。ここは谷尻誠と吉田愛が率いるサボーズデザインオフィスの事務所。れっきとした、建築設計事務所だ。なぜここに厨房が?建築という枠に留まらない、建築界の革命児として注目される彼らは、どのように考え活動するのか?その秘密に迫る。
Text_Naoko Aono


皆が良くないと思うところに価値を見出す
サポーズデザインオフィスは2000年に谷尻が設立、2001年に専門学校の同級生だった吉田が加わる。以来20年近く、多くのプロジェクトを手がけてきた。建築家のキャリアの始まりは小さな住宅やショップのインテリアになることが多い。彼らの初期作品の多くもその二つだが、中でも注目を集めたのは大胆な住宅だった。しかもほとんどがローコストの案件だ。
「必然的にシンプルで合理的なものになりました。「毘沙門の家」なら高床式にして柱で建物を支えるようにすれば、基礎は柱の分だけで済む。床一面分の基礎工事をするより安上がりなんです。敷地も傾斜地だから安く買えるし、造成もしていません。「西条の家」では基礎を作るために掘った土を周りに盛って、塀のかわりにしました。土を捨てるのにも残土処理費用がかかるんです。こういった知恵は工務店さんに教えてもらいながら身につけていきました」できるだけ開放的に作りたい、というのも彼らの特徴だ。かと言って、単に窓の大きな建築を作っているわけではない。
「僕が子供の頃住んでいたのは、ご飯を食べに行くのに雨が降ってたら傘をささなくてはいけないような、古い長屋だったんです。だからというわけではないんですが(笑)、家の中と外を区別しないような)を作りたい」
通常なら敬遠される傾斜地など、不利な条件の土地にも建てるしができる。もっと開放的な家を作ることができる。彼らの建築はそんなメッセージも内包している。彼らはそのメッセージを「オープンハウス」という手段でも発信していた。オープンハウスとは完成した家の見学会のこと。普通は設計者や工務店が関係者のみを招待して内々に行うことが多い。このオープンハウスをサポーズは「イベント」にしてしまった。
「クラブのフライヤーみたいなものを作って、街じゅうのお店に置いてもらうんです。家具屋さんに協力してもらって家具も置いて、暮らし方が想像できるようにして。こうするとみんな来やすいし、建てる予定のない人も来てくれる。幸いなことにクライアントもノリのいい人が多くて、オープンハウスを楽しみにしてくれる人もいました」彼らの出身地である広島を拠点にスタートしたサポーズだが、徐々に自都造の仕事も増えてきた。彼らの東京進出のきっかけになったのが、建築専門のプリズミック・ギャラリー」での展示だ。建築展では出来上がったプロジェクトの写真や模型などを並べるのが普通だか、サポーズがやることはここでも普通じゃない。彼らが展示したのは事物」だった。ギャラリーに椅子とデスクを並べ、パソコンを置く。そしてスタッフは仕事をしている。来場者はスタッフと同じように型やパソコンを自由に触れる。
「終わったらそのまま東京事務所を作ればいいと思って(笑)。展示が告知にもなるし。僕たちはPR力が高いと思います。ウェブサイトも早くから作ってます。建築というとちょっとお高くとまってるイメージがあった。カッコつけてればわかってくれるよ、みたいな。そこにチャンスがあると思ったんです。クライアントは一般の人なんだから、彼らにわかってもらえるようにすればいい。ちょうどそのポジションがあいていたんです」建築家としての二人のキャリアはややイレギュラーだ。普通なら大学や大学院で建築を学び、アトリエ系と呼ばれる、建築家が率いる事務所で修業した後に独立、となることが多いが、彼らはそうではない。またサポーズの二人は、ややもすれば殻に閉じこもりがちな建築界のあり方にも疑問を持っていた。
「すでにあるレールをたどって行ってもその前には行けない。建築界という狭い世界の中で評価されたとしても、社会全体から見ると何パーセントになるんだろう?それよりも、社会に対して開いていくための言語を持つ必要があると思いました」そんな彼らが参考にしていたのが、糸井重里と安藤忠雄だという。コピーライターであり、現在は「ほぼ日刊イトイ新聞」の発行者として活躍する糸井と、建築家としては大量の著書があり、そのうちのかなりのものが一般向けである安藤。彼らの言葉の使い方から、サポーズは多くを学んだ。

ONOMICHI U2
地域を面白くする、風土に合わせたデザイン


制約を価値に変換するデザイン
こうして小住宅や個人商店のインテリアなどを手がけていたサポーズの最初の転機になったのが、メガネ製造小売の大手、「JINS」との仕事だった。
「僕たちにとって初めての、大企業との仕事でした。しかも担当者は、『カッコいいお店にはしないでくれ」と言うんです。言い方はちょっと悪いですが、『田舎のおばさんがサンダルばきで行ける店に』というのが先方の希望でした。ここで、『カッコいい=売れる』ではないことに気づいた。たとえば幼稚園ならクライアントは子供であって、彼らは僕たちの美意識を求めているわけではないんです。建築家の性やスタイルを手に入れたいと思っているわけではない。場所も、クライアントも違うのに同じスタイルで通すのには違和感がある。自分たちがしたいことだけするのではなく、制約がある中で作っていくことにやりがいを覚えるようになった」次の転機は「ONOMICHIU2」だ。サイクリストに人気の高いしまなみ海道近くに作られた、サイクリストフレンドリーな複合施設だ。昭和19年に建てられた倉庫を改修して、ホテル、カフェ、サイクルショップ、ベーカリーなどにしている。事業者は広島の造船業が母体の会社。その会社と一緒に広島県の主催する倉庫活用の事業コンペに参加した。そこで選ばれたのがサポーズの提案する案だった。元の倉庫にあった大きな扉を開けてサッシュをはめ、グラフィックを施した他は外観には大きな変更は加えていない。内部は木材を多用した、どことなくこの付近の民家を思わせるデザインだ。
「昔から残ってる倉庫の素材感はそのままに現代性をどう入れるか、新旧のコントラストをどう作るかを考えました。一つは地域性を表現すること。この場所にニューヨークみたいなものができてもしょうがない。こういったことに関してはインドのスタジオ・ムンバイで見たことが役に立ちました。金物でも石でもセメントに混ぜる粉の色でも、その土地の風土や文化に合わせて選ぶんです」もう一つのキーワードは彼らが住宅でも意識している開放性た。内部には厳密な仕切りがなく、緩やかにつながっている。
「垣根について、ずっと考えてきたんです。内部と外部、インテリアと建築、ファッションとレストランといった業態、本来なくてもいい垣根があるように見えている。『ONOMICHIU2』ではそういう垣根を取り払うことを目指しました。倉庫の中に路地がある、というように内部も外部も区別なく存在している」用途についても今の建築は限定し過ぎだ、と指摘する。「昔の日本家屋では同じ部屋でも時間によって使い方が変わった。今は効率や合理性を追求するあまりつまらないものになっている。それを元に戻そう、というだけのことなんです」「ONOMICHIU2」では本来求められていなかったグラフィックのディレクションも手がけた。メニューの制作やアートワークの選定、伝統産業の生地を使ったオリジナルグッズの企画もしている。初期に高校の同級生から頼まれた住宅も「ログハウスを」というものだったが、「別にログハウスである必要はなく、面白い家ならいいのでは」と考え、サポーズが考えるベストな家を設計した。彼らはこんな、要求を上回る提案をよくしている。
「本質にたどり着きたい、価値変換したいというのが動機です。住宅でも傾斜地とか、予算がないといった通常ならマイナスと思われるものでもやり方次第で価値あるものになる、ということを証明したかったんです」


自分たちが行きたくなるワクワク感をつくる
渋谷パルコパート2跡地に新築された「hotel koe tokyo」はアパレル企業から依頼されたもの。その企業が持つブランドの服のショップが条件だった。
「今は通販で服を買うことが普通になっている時代。そんなときに、お店で服を買う意味って何だろう、って考えました」「ONOMICHIU2」でも他のプロジェクトでもサポーズは「ごくシンプルに、自分たちが行きたい場所を作っている」のだという。「自分たちが行きたいと思えば他の人も行きたいと思うだろうし、そういう場所は必ず活性化するはず。カスタマー・ファーストなんです」この「hotel koe tokyo」でも同様に自分たちが行きたくなるような場所を考えてみたら、そのひとつがホテルだった。
「ホテルって、寝て、食べて、と日常のことをしているのに非日常感が漂う。そこがすごく面白いと思うんです」
そこでこの場所はホテルをコンセプトにする複合施設となった。内前にはイベントができるスペースもある。大階段と、その下の小さな点だ。「シブヤといえば音楽カルチャーの盛んな街だからだ。その場にはは宿泊者でなくても使えるカフェがある。服は比較的カジュアルな若い人をターゲットにしたものだが、ホテルはかなり高額な部屋もある。
「人種、性別、収入で行く場所がわかれているけれど、それを超えるところに面白さがあるし、みんな同じだったら夢がない」サポーズは地元、広島に自分たちのホテルを作ろうとしている。設計はもちろん、運営も自分たちでやる予定だ。
「広島には県外・海外から来た人のための少し高めだけれどいいホテルというのが少ないんです。それにホテルの建築・インテリアが僕たちの空間ポートフォリオになるのはもちろん、カフェやリネン、音楽も自分たちでやればそれもポートフォリオになる。設計業ではクライアントに引き渡した後は関わることがないけれど、自分たちで運営することで成長できるし、次のクライアントに新しい提案ができると思う」ここでようやく冒頭の「厨房のある事務所」に話が戻ってくる。サポースの東京事務所には「社食堂」があるのだ。「社員の食堂+社会の寝室=社食堂」というコンセプトで、ここではサポーズの社員にランクを提供するほか、一般の人も普通のカフェとして利用できる。主なメニューはメインを肉か魚から選ぶ定食。「おかん料理」がテーマの食事だ。「デザインってその人の細胞から生まれるものではないか。だとすると、毎日コンビニの弁当でいいわけがない。みんなで食べることが強い会社を作ることにもなる。もちろん、ホテルと同じで運営の勉強にもなる」

STYLE-B
自転車店のイメージを変える、ライフスタイルの提案

いい仕事をするために能動的に動く
広島事務所ではおよそ月に1回の割合で「THINK」というトークイベントを行っている。こちらはもう8年も続いているのだそう。谷尻たちがこれまで会った人の中で「素敵な人で仲よくなった人」にゲストとして喋ってくれるよう依頼するのだ。これまでデザイナー、建築家のほか、写真家の石川直樹やアスリートの為末大、漫才コンビ・キングコングの西野亮廣、ファッションデザイナーの三原康裕、放送作家の小山薫堂といった有名人も登場している。「事務所のボスである僕たちがいろんな人に会って面白い話を聞いてるときに、スタッフは仕事をしている。スタッフにもこんな人の話を聞いてもらえばいい刺激になると思った」著名人であれば、実際に会うことでメディアでの“顔”と、個人的な付き合いからにじみ出る人格の間には差があるということもわかってくる。「色眼鏡で見ないこと。プロジェクトにもこれが大事だと思っています!サポーズではさらに「絶景不動産」と「21世紀工務店」という新事業も始めている。「絶景不動産」は傾斜地など、ちょっと手は出しづらいけれど本当は価値のある敷地も扱う不動産会社だ。
「一般の不動産屋なら南向きで整形なのがいい土地、ということになるけれど、設計の視点で敷地を見ると価値が変わる。僕たちは建物単体を考えるのではなく、建築によって風景をリノベーションしているつもりなんです。そうやって世の中にいい風景を作っていく」「21世紀工務店」は、問題を避けがちな施工会社に対して、逆に出来ること」を増やす施工会社を自分達でやろうという発想で立ち上げた。
「みんな『こういう理由があるからできない」とか「こんな事情がある。からできない』とか、『できない」にクリエイティブなんですよね、そうではなくて『できる」を増やしたい。『絶景不動産」も「21世紀工店』もそのために作ってます」TONOMICHIU2」が完成してから尾道にも「若い人が増えた」という。それも「いい風景」の一つだ。こんな取り組みも含め、サポーズが未来の設計事務所の業務からはみ出すようなことに積極的に取り組むのはなぜだろうか。
「自己満足ではなく、意味のあることをやりたい。それが本質に近くことだから。設計は依頼主があって業務が発生するクライアントワークだけれど、それを変えたいんです。自分たちから面白い場所を提案したい」
サポーズ自体が「面白い場所」になるような取り組みもしている。有給休暇を増やしたり、独自の社訓を作ったりといったことだ。
「有名建築家が率いる設計事務所って仕事は面白いけれど全然休めない、ということもあるんです。でもそれっておかしい。クリエイティブと経済は両立すると思うし、休みも世の中の休みに合わせてもしょうがないから、休みもデザインしたい。サポーズでは誰かが変なことをしたら「君がそういうことをするとルールを作らないといけなくなるから、注意してね」と言ってます。ルールを作るとそれに得られるし、あるいは、「ルールを守ってさえいればいい」となる可能性もある」住所が「まだ途中なんですけど」と言って見せてくれた「社訓」案には、次のような文章が並んでいた。
「新しいを目指そう―イノベーションの継続の先に伝統があるのだから」
「問題を好もう一新しい価値が生まれる時には、問題が隣り合わせだから」
「出来るをつくろう出来ないという判断ができるということは、既にある価値観だから」
谷尻と吉田の動き方や発想はたしかに型破りだ。でも話を聞いているとそれって本来当たり前のことじゃないか、とも思えてくる。価値観が大きく転換する時代を牽引しているのが、彼らのような人たちなのだ。

社食堂
社員とのコミュニケーションの場となる食堂

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2018/11/12)、出典:出版社HP

CONTENTS

14 AIDA ATELIER
16 AIDAHO
18 芦沢啓治建築設計事務所
20upsetters architects
22 ABOUT
26 arbol
28 ELD INTERIOR PRODUCTS
30イガラシデザインスタジオ
32 一級建築士事務所 ageha.
34 一級建築士事務所 こより
36 ITO MASARU DESIGN PROJECT/SEI
38 井上貴詞建築設計事務所
40 YLANG YLANG
42 Infix Inc.
44 AIRHOUSE
46 EIGHT DESIGN
48 MMA Inc.
50エリアコネクション
52E.N.N.
54 ENDO SHOJIRO DESIGN
56 OHArchitecture
58 奥和田健建築設計事務所
60 OSKA&PARTNERS 62ODS / 鬼木デザインスタジオ
64 オンデザインパートナーズ
66 onndo
68 cafe co. design & architecture office
70 KiKi 建築設計事務所
72 # # $ PFT
74 graf
76 GRAMME INC.
78 KROW
80 CASE-REAL 82 KOUEI
84 SIERR$
86 SIDES CORE
88 THE OFFICE
90 # E $
92 SUPPOSE DESIGN OFFICE
96 GENETO
98 GENERAL DESIGN CO., LTD.
100 Jamo Associates Co.,Ltd.
102 SWING
104 STUDIO DOUGHNUTS
106 STUDIO RAKKORA ARCHITECTS
108 STACK D.O.
110 SNARK
114 設計事務所岡昇平
116 SO,u inc.
118 DAIKEI MILLS
120 タカスガクデザイン アンドアソシエイツ
122 CHAB DESIGN
124 坪井建築設計事務所
126 design office Switch
128 design office TERMINAL
130 dessence
132 Tosaken inc.
134 dot architects
136 TONERICO:INC.
138 THE TRIANGLE.JP
140 トラフ建築設計事務所
144 DRAFT Inc.
146 Tripster inc.
148 DRAWERS
152 長坂常 / スキーマ建築計画
158 ninkipen! – 一級建築士事務所
160 Puddle
162 BaNANA OFFICE
164 浜田晶則建築事務所
166 ハンクラデザイン
168 無相創
170 phyle
172 fathom
174 fan Inc.
176 BUENA DESIGN INC
178 14sd / Fourteen stones design
180 FUJIWALABO,INC.
182 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
184 松井亮建築都市設計事務所
186 松島潤平建築設計事務所
188 松本直也デザイン
190 mangekyo
192 モーメント
194やぐゆぐ道具店
196 山崎健太郎デザインワークショップ
198 山本達雄デザイン
200 YusukeSekiDesignStudio
202 UDS
204 ユナイテッドパシフィックス
206 Life style工房 208 LINE-INC.
210 Wrap 建築設計事務所
212 ROOVICE
214 LUCY ALTER DESIGN
216 レアジェム
218 REICHLIKEDA DESIGN
220 Log.design
222 wipe

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2018/11/12)、出典:出版社HP

新しいコミュニティを生み出す空間とデザイン

次世代の施設・空間づくりのアイデアが満載

近年、魅力的なコミュニティ形成によって人とをつなぐ個性的な施設が増えています。本書では、日本だけでなく世界のリノベーションの成功例、空間デザインの仕組みやそれに用いたグラフィックツールまでオールカラーで紹介していきます。時代を先取りし、現代の空間デザインの潮流がよくわかります。

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2020/4/10)、出典:出版社HP

はじめに

多様な価値観との共生が求められる現在、廃校を活用した施設や託児所
カフェなど、人をつなぎコミュニティ形成を育むユニークな施設が増えています。 こうした施設の多くが、複数の機能を備えることで、異なる目的で訪れた人々に出会いをもたらしたり、異ジャンル同士の思わぬ交流により文化発展と発信の場を提供することに成功しています。

本書では、コミュニティを生み出す仕掛けに満ちた86施設のデザインや アイデアを「暮らす」、「体験する」、「遊ぶ」、「学ぶ」の4つのカテゴリに 分けて国内外から紹介します。 「暮らす」では、飲食店やコインランドリーなど、日常生活に寄り添うサービスを提供する施設を、「体験する」では、アートホテルや廃校を利用した 自然教室など、近年増加する体験型の宿泊施設をメインに、「遊ぶ」では、 アートや音楽など娯楽の提供をメインに据える文化・商業施設を紹介して います。「学ぶ」では、図書館やシェアオフィスなど、利用者の知的好奇心が刺激される施設をとり上げました。

また、それぞれの施設のイニシャルコストや資金調達の方法、開設に要した期間なども可能な限り記載しています。自分たちで「場」を持ってみたい、スモールビジネスを始めてみたい、という読者の方々にもお役に立てれば幸いです。

最後になりましたが、本書制作にあたり、ご多忙中な中、多大なご協力を 賜りました方々に、深く御礼を申し上げます。

パイ インターナショナル編集部

Contents

はじめに
Contentes
Interview TER BONUS TRACK
Editorial notes
Index

• Chaper 暮らす
KAKAMIGAHARA STAND
STYLE-B
ラシーヌファーム トゥー パーク
Spin Laundry Lounge
Chus
子ども映画食堂-りっぷキッチン永和町
Laundry Project
Bath Haus
OMOKEN PARK
& VILLAGE
サケウェアハウス
葉日
おむすびスタンド ANDON
山のテーブル
五味醤油 / KANENTE / Tane
Café&Living UCHIDA
大江町まちなか交流館 ATERA
三崎港蔵書室 本と毛
りくカフェ
喫茶ランドリー
LETTER
みちくさくらす
ナノグラフィカ
新浪体釋
conichi かわらぐち
CASACO
サウナの梅湯

Chapter.2 体験する
BnA Alter Museum
CITAN
Theater Zzz
HOTEL ANTEROOM KYOTO
AREA INN FUSHIMICHO FUKUYAMA CASTLE SIDE
マガザンキョウト
KAGANHOTEL -河岸ホテルー
ターンテーブル
HOUSEHOLD
真鶴出版2号店
MORIUMIUS
ユクサおおすみ海の学校
はたらくものづくり村
藤屋
gift_lab GARAGE/山ノ家
BAITAcinema

Chapter. 3 遊ぶ
COMMUNE
De Ceuvel
Folkehuset Absalon
Blueprint Cultural & Creaitve Park –
アメリカヤ
Hama House CASICA HAGISO
ヤマキウ南倉庫
TSURUMI こどもホスピス
ものかたり
出町座
まちのば、
東川町複合交流施設せんとぴゅあ
整個劇場
シンカイ ただのあそび場ゴジョーメ
競花村 Tiehua Music Village
KAGIYA ビル
THE BAYS
CRAFT BRIDGE
岐阜ホール
COMMON-SHIP橋通り

Chapter4 学ぶ
絵と言葉のライブラリー ミッカ
みちのきち
静岡市こどもクリエイティブタウンま・あ・る
渋谷東しぜんの国こども園
BABAME BASE 五城目町地域活性化支援センター
Sodacco
BOOK LAB TOKYO
とんがりビル
リトルトーキョー
シェアアトリエ カンダマチノート
Hacoa VILLAGE TOKYO
G Innovation Hub YOKOHAMA
Kraftwerk Zürich
co-ba ebisu
三日市ラボ
SHIBAURA HOUSE
立川子ども未来センター
シモノロパーマネント
神山バレー・サテライトオフィスコンプレックス
WEEK 神山

interview

誰も見たことのない新しい下北沢へ 下北線路街の新スペース「BONUS TRACK」で 「余白のある生き方」を考える

2020年4月、小田急電鉄による下北沢開発プロジェクト「下北線路街」のエリア内に、 新しいスペース「BONUS TRACK(ボーナストラック)」がオープンした。 下北沢~代田にかけて広がる同スペースは、スモールビジネスや副業を始めてみたい人など、チャレンジする人を応援する場として、 レジデンスやお店、イベントスペースが一体となった、”現代版の商店街”となっている。 運営に携わるのは、ソーシャルデザインをテーマにしたWebサイト「greenz.jp」にも関わる、プロデューサー・小野裕之氏と、 下北沢の名物書店 「本屋B&B」などを手がけるブックコーディネーター・内沼晋太郎氏。 リアルな場所を持つことの新しい価値、下北沢の街づくりに込める思いについて、両名にお話を伺った。
写真:笠峰新志

チャレンジを応援し、新しいビジネスモデルを生む場に

小田急電鉄より、「小田急の線路跡に、二階が住居で一階が店舗の物件 を作る。そこを丸ごと借り上げて運営してくれないか」、「『現代版の商店街』 というテーマで何か作れないか」という話が小野氏に持ちかけられたことが きっかけでスタートした「BONUS TRACK」。Webマガジンの編集業に加え、ジュエリーブランドやおむすびスタンド(「ANDON」p.36)の運営など様々な肩書きを持つ小野氏だが、「さすがに自分一人ではやりきれない」という懸念があった。そこで、下北沢に書店「本屋B&B」を構え、「greenz.jp」の開設 当初から親交のある内沼氏に、共同運営という形で話を持ちかけたという。
小野:2006年から「greenz.jp」というソーシャルデザインを扱うWebサイトを営してきましたが、そこでメインとして取り上げている、「社会課題を解決し、社。 会にいいことをしながら稼ぐ」といった形態のお店が、日本ではまだまだ広がっていないことに課題感を持っていました。例えば海外だと、賞味期限切れの 食品だけを使った飲食店や、障がい者雇用を積極的に取り入れたカフェなど、 が日常的に存在しています。日本にも、体に優しい、自然に優しい、人に優しい実業を作りたい。そして最終的にはいろんな人が働ける場所を作りたい。 けれど、そういったソーシャルビジネスは、きっと長期的に見れば普通のお店よりファンが付きやすいお店になる可能性が高いのですが、様々な要素が絡み合うため、正直、運営には手間もコストもかかる。経験や体力もない小さなプレイヤーが、東京のど真ん中でソーシャルビジネスを始めることのハードルは高い んです。だから、そうした面白いお店がたくさん出店される環境を整えるため には、鉄道会社さんや不動産会社さんなどの大きなデベロッパーや自治体と連 携するからこそできる、エリア全体の価値向上を視野に入れた指針づくりや、それにともなう開発コストやメリハリある賃料の設定、開業のサポートといった街づくり的観点からアプローチする必要があると気づいたんです。

リアルな店舗を持つ意義を発信したい

内沼:最初はさすがに、自分にできるだろうかと思ったのですが、いろいろ考えるうちに、自分がやるべきことと街づくりとの関係性を強く感じるようになりました。 僕は「本屋B&B」の経営に加えて、さまざまな本のある場所のプロデュースや、 書店経営に関心のある人に向けて本を書いたり講座をやったりしてきました。 世界最大のEC企業であるAmazonが本からスタートしているように、本というのはインターネットでの販売に最も適している商品のひとつです。その分、本を売るリアルな書店は、早くから苦境にさらされてきました。だから、書店の未来に ついて考えると、リアルな場の存在価値という話を避けて通れないんです。
いま、本のある場所をつくろうというとき、本が単体で存在することはほとんどありません。必ず「カフェを併設しよう『イベントを開催しよう」「商品の メッセージを伝えよう」といったほかの取り組みとセットになる。そのたびに「飲食店経営とは?」「イベント運営とは?」「広告とは?」と、他の業種について 知る必要が出てきます。それらすべてを内包するのが街ですよね。人がいて、 店があって、街がある。人が暮らしたり働いたりする場所に、これからも本のあるリアルな場所を維持していくためには、本のことだけでなく、人と店と街のこと について幅広く考えなければいけないんだ、と気づいたんです。

売って試して改善できる売り場

小野:今の時代は、お店というものが、生活に必要なものを売ったり買ったり する場所ということから、様々な情報や価値観、ライフスタイル、出会いに触れる場所という体験的な価値提供の場に変わってきていると感じます。一方で、お店を運営することの負担自体は全然変わっていない。大手企業と違い、小さなプレイヤーたちが単純に「体験型の店」というのを打ち出して、「お店では商品を買ってくれなくても、ネット販売などどこかで取り戻すので大丈 夫です」ということをやると、経営的には継続することができません。だから 「BONUS TRACK」は、「売って試せるコワーキングスペース」も用意します。 例えば、ものづくりをしている中で生まれる、「実際に手にとって体験してもらいたい」という思いを実験的に試すことが可能です。使いながら売りながら、 その場でフィードバックをもらって改善していけるんです。テナント同士でも、 お互いのマネタイズ方法や売り場の工夫を間近で目にすることができる。こう したお店や売り場を再定義する要素、試せることが価値になるような設計を、 「BONUS TRACK」の中には作りたいと思っています。

コピー&ペーストではない「リアルな場」が生む価値

内沼:先にお話しした本の流通や、あるいはグローバルなチェーン店が実現し たような「同じものをどこでも手に入れられる」ことの価値は、相対的に下がっているといえます。ひとつの成功事例のコピー&ペーストでは、マネタイズがし にくくなっている。これからは、個人の強いこだわりとか、必然性が一見わかりにくい掛け合わせとか、そういうものの魅力を芯に据えつつ、少しずつピボットしながら同時にスケールメリットを出していくという、難しいチャレンジをしていかなければならなくなっています。それと同時に、自分がやりたいと思い込んでいることや過去の成功体験にとらわれ過ぎて、本来やりたかったことからズレていくようなことがないようにチューニングもしたい。そのために必要なのは、小さなトライ&エラーができる場所です。「BONUS TRACK」はそういう線場所にしたい。それは個人店の多い下北沢という脅が、もともと持っていた本能でもあるんですよね。先人たちがしてきた文化をリスペクトしつつ「全然違うものができたね」と言ってもらえるような、現代的な取り組みに思っています。

「本気」の副業が、全体のパフォーマンスを向上させる
小野:本気の副業みたいなものこそが、全体を変えていく力を持っているんじゃないかと思うんです。本業と副業、メインとサブ、というような言い方はやめていきたいですよね。どっちとも思い入れがあるんだったら、どっちも大事です。僕だって何個か会社を経営していますが、全部で一つだと思っています。本業と副業が分断されていると捉えると、副業によって本業のパフォーラ ンスが落ちるという感覚になる。でもそうじゃなくて、実際は自分のできるであ が試せると、自分のポテンシャルが成長していく。そうすると、社会全体として は個人が発揮できる才能の総和は増えていくはず。例えば仕事を80と200 割合に分割してみることによって、収入やパフォーマンスが120になったりすることもある。本業に費やす労力や時間を減らすリスクを恐れるのではなくまずは始めてみたらいいと思います。「BONUS TRACK」ではそんな働き方に対 する余白を提案できればいいなと思っています。

内沼:「BONUS TRACK」という施設名にも、そうした意味を込めています。 CDの最後に付けられる「ボーナストラック」は、そのアルバムの世界観には入 らないけれど、ミュージシャンとしては思い入れのある曲だったり、実験的な取り組みやライブの音源だったりすることが多いですよね。まさしく限られた時 間、CDの録音時間の余白に、そういう少し外れた、けれど大事なものが入っている。そこはクオリティが問われない、なんでもありの場所では決してありません。余白だからこそ本気でやりたい、そういうそれぞれの実践ができる場所 になるといいなと思います。

PROFILE

小野裕之(おの・ひろゆき)(写真:左)
下北沢のまちづくり会社「散歩社」共同代表 「「greenz.jp」ビジネス アドバイザー / ジュエリーブランド「SIRI SIRI」共同代表 / 「おむすび スタンドANDON」共同代表 / 「株式会社sonraku」社外取締役 / 「発酵デザインラボ株式会社」取締役CFO
1984年岡山県生まれ。中央大学総合政策学部卒業。ソーシャルデザイン をテーマにしたウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズの経営を6年務めた後、同法人のソーシャルデザインやまちづくりに関わる事業 開発・再生のプロデュース機能をO&G合同会社として分社化、代表に就任。

内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)(写真:右)
下北沢のまちづくり会社「散歩社」共同代表 「本屋B&B」共同経営者 / 「NUMABOOKS」代表/「株式会社バリューブックス)社外取締役
1980年山形県生まれ。一橋大学商学部商学科卒業。NUMABOOKS代表。 ブック・コーディネーター。2012年、ビールが飲めて毎日イベントを開催する 新刊書店「本屋B&B」を東京・下北沢に、博報堂ケトルと協業でオープン。 ほか、株式会社バリューブックス社外取締役、「八戸ブックセンター」ディレク ターなど、本にかかわる様々な仕事に従事。著書に「これからの本屋読本1 (NHK出版)、『本の未来を探す旅 台北(共著・朝日出版社)など。


「下北線路街」では他にも、小田急線「東北沢駅」~「世田谷代田駅」の線路跡地に、下北沢らしい遊び心に溢れた多 多様な施設を新設。「下北線路街空き地(写真)では、人々の「やってみたい」や自由な発想の楽しい仕掛けでい坂
スペース、キッチンカー、イベントスペースなどのレンタルスペースを提供している。さらには、地域密着型 の複合施設、学生寮、保育園や宿泊施設など下北沢に集う老若男女が広く活用できる様々な施設を企画。それ まち全体で連動することで、年齢、性別、文化や国籍の垣根を超えたコミュニティの形成を活性化させている。
下北線路街 空き地


A. 地域
B, 施設の概要
C. 施設名と施設の主な機能
D. URL E.施設の住所
F. 施設のロゴ
Gスタッフクレジット

H. 開設に要した期間/資金/資金調達の方法
I. 地域コミュニティ
J.施設名
K、施設の機能
L. 利用客層

CL:クライアント
CD:クリエイティブ・ディレクター
AD:アート・ディレクター
D:デザイナー
I:イラストレーター
CW:コピーライター
P:フォトグラファー
Pr:プロデューサー
D: ディレクター
PL:プランナー
DF:デザイン会社
AO:設計会社
SB: 作品提供者(社)

その他の制作者呼神は省略せずに掲載しております。

※上記外の家をお芽は、運営に巻載しております、あるにされていますまる。高品などの携は、2029年4月時点での情報です。
※本職にきれていまキャンペーン、プロモーションは鉄に終了しているものもごさいますので、ご了承ください。

パイ インターナショナル (編集)
出版社 : パイインターナショナル (2020/4/10)、出典:出版社HP

カフェの空間学 世界のデザイン手法: Site specific cafe design

カフェデザインを建築的視点で読み解く

世界中のカフェを題材にして、豊富な写真、平面図とスケッチと設計者の視点からデザイン的な工夫などの空間デザインについて学ぶための資料集です。新築、リノベーション問わず多くの事例を扱っているので、設計者はもちろんカフェのオーナーや開業を考えている方にもおすすめの1冊です。

加藤 匡毅 (著), Puddle (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/9/8)、出典:出版社HP

まえがき

この本が出版される2019年秋は、歴史上最もバラエティに富んだカフェがこの 世界に存在しているだろう。金太郎飴のようにどこでも同じ顔をしていたチェーン店も旗艦店ではまったく違う空間をつくり出している。僕の住む街の周辺だけ で見ても個性豊かなカフェが次々と生まれている。 現代の人々はスマートフォンや PC によりどこからでもアクセスできるバーチ ャルな場でのコミュニケーションを手に入れた反動か、以前にも増してリアルな場での営みを必要としている。どこでも同じ顔をしているアプリのインターフェ イスやウェブサイトのデザインとは違う、その場その場に根付いた個性豊かなカフェを、である。
では個性豊かなカフェとはどのようにしてつくることができるのであろうか。 美味しいコーヒー、人、ホスピタリティ、様々な要因がかけ合わさって存在して いるカフェであるが、ここでは特に空間という建築的側面から考察していくこと にしたい。
今日まで僕は、それぞれの場に相応しい「個性」を生み出すことを目指して、 「15 を超える国と地域でカフェを設計してきた。
よそ者としてお邪魔し、その地の良さを見つけ出し、核をつくり、磨き、人々の前に「個性」ある空間を引き渡すのだ。
……と言えば聞こえは良いが、決まった方程式があるわけでもなく、プロジェクトごとにもがきながら、答えを探し続ける終わりのない旅のようでもある。

2018年の春先、そんな旅の軌跡を振り返る機会をいただいた。それがこの本である。
この本は、僕が仕事やプライベートで訪れ、印象に残ったカフェを中心に、国内外計 39 件をカメラ、スケール、紙、ペンを持って再訪、取材し、まとめたものだ(2件は現存せず。3件は僕自身が設計者としてかかわった)。客として何気なく訪れていた時に感じた居心地の良さ、記憶に残る体験は一体どこから来ていたのか、オーナーや設計者へのインタビューからわかったことに僕の解釈を加え、それぞれのカフェがどのような意図で「個性」を構築し得たのかを読み解いてみた。
設計の仕事に就く前から続く趣味である「スケッチ」と「写真」を中心にして いるので、設計者はもちろん、建築の専門家でなくても読みやすい内容になっていると思う。

事例は、僕が設計で常に意識している以下の三つのカテゴリーに分けて紹介す
1部の場所とのかかわり
2部人とのかかわり
3部時間とのかかわり

1部では、カフェのデザインが場所そのものや周辺環境からどう影響を受け、またどう影響を与えているか。2部では、カフェを利用する人とデザインのあり 方について。そして3部は、カフェに流れる様々な時のあらわれ方について考えてみた。
先頭から順に読み進めていただいても良いし、好きなページから読んでいただ いても良いと思っている。
本書を通して、カフェの空間設計が人の営みや街の個性をつくる大切な行為で あることを再認識していきたい。

加藤匡毅

加藤 匡毅 (著), Puddle (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/9/8)、出典:出版社HP

CONTENTS

まえがき
本書に掲載する事例
1部 / 場所とのかかわり
1.環境を借りる
01自然へのリスペクト、環境からのプロテクト – Third Wave Kiosk / トーキー
02借景以上一CAFE POMEGRANATE/バリ
03オフィス街に川床をつくる-BROOKLYN ROASTING COMPANY KITAHAMA/大阪市
04脱着できるカフェー Skye Coffee co./バルセロナ
05 中庭の階段を取り込む – HONOR/パリ
06都会の空地に宿る – the AIRSTREAM GARDEN/渋谷区・
07軸線を強調する大庇fluctuat nec mergitur/バリ
08街の動線と共存するー Dandelion Chocolate, Kamakura / 鎌倉市
09金融街で土着の素材と技術を使う意味 – The Magazine Shop/ドバイ

2. 境界をぼやかす。
10フラットな関係が開放性を生み出す – Seesaw Coffee – Bund Finance Center / 上海
11通りにせり出す可動式カウンター -Dandelion Chocolate – Ferry Building/サンフランシスコ
12内外の一体感を生む窓際の仕掛け Slater St. Bench / メルボルン
13 視線を誘い込む組み木のトンネル ニースターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店/太宰府市
14 エントランスにある余白の価値 – SATURDAYS NEW YORK CITY TOKYO / 目黒区
15 アプローチというファサード ー ブルーボトルコーヒー 三軒茶屋カフェ/世田谷区
16 街にひらけた小さな軒下 – ONIBUS COFFEE Nakameguro / 目黒区

3.外との関係を断つ
17 半地下から通りを眺める – GLITCH COFFEE BREWED @ 9h / 港区
18時間を閉じ込めた船一六曜社 コーヒー店/京都市
19 無窓空間におかれたバリスタの舞台 – KOFFEE MAMEYA/渋谷区
column際を設計する

2部 / 人とのかかわり
1. 人がつくるファサード
20 摺り上げ式窓がつくる都心の小さな縁側 – Elephant Grounds Star Street / 香港
21 現代版パリのオープンテラス ー KB CAFESHOP by KB COFFEE ROASTERS/パリ
22 通りにつながるサウナ式ベンチー HIGUMA Doughnuts x Coffee Wrights 表参道/渋谷区・
23 ストリートファニチャーがつくる通りの顔 – 三富センター/京都市
2. 人をもてなす距離
24 4本脚のカウンター – Bonanza Coffee Heroes /ベルリン
25 白い空間に、1本の「道」 – ACOFFEE / メルボルン
26 バリスタとの距離を近づける極浅の2段カウンター – Patricia Coffee Brewers/メルボルン
27 モルタルのひな壇 – NO COFFEE / 福岡市
28 どこからでもアプローチできる細長いカウンター – COFFEE SUPREME TOKYO/渋谷区
29 「狭小建築」の「極小カウンター」 – ABOUT LIFE COFFEE BREWERS/渋谷区
30 タバコ屋に倣う、日常風景の再構築 MAMEBACO/京都市 –
31 オーナーの小宇宙に広がるもてなしの空間 – CAFE Ryusenkei / 足柄下郡箱根町
3. 営みの掛け算
32 生業と住まいの関係 – FINETIME COFFEE ROASTERS/世田谷区・
33 カフェの顔を持つ歯科 – 池渕歯科 POND Sakaimachi/岸和田市

column2 誰のための空間か

3部 / 時間とのかかわり
1. 古い建物を生かす
34 大空間をまとめる6つのスキップフロアー Higher Ground Melbourne/メルボルン
35 演出されたキッ チン – Lune Croissanterie /メルボルン
36 和室に配したキューブ状キオスクー OMOTESANDO KOFFEE / 渋谷区
37 すべてを白く染める – walden woods kyoto / 京都市

2. プロセスのデザイン
38 所作を美しく見せる仕上げと素材 _ -artless craft tea & coffee / artless appointment gallery/目黒区・
39 体験のデザイン – Dandelion Chocolate, Factory & Cafe Kuramae/台東区

column3 時間を視覚化する

あとがき 空間の記憶
掲載店舗情報

本書に掲載する事例 (日本)

加藤 匡毅 (著), Puddle (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/9/8)、出典:出版社HP