【最新】都市計画を学ぶおすすめ本、テキスト – 独学でも使える入門から定番・応用まで

ページコンテンツ

都市計画を学ぼう

都市計画は、歳の土地利用の開発と設計、およびネットワークなどの都市部に関わるインフラストラクチャなどについての技術的および政治的プロセスとなっております。すべての都市の背後には、なにかしらの計画があります。 都市計画と分析方法の基本や都市の形態と外観をどのように理解していくかが都市計画を学ぶ上で重要です。ここでは、初めて学ぶ人、改めて都市計画を知りたい人向けにおすすめをセレクトしております。

ランキングも確認する
出典:出版社HP

 

都市計画教科書

学科共通で使える都市計画の教科書

本書は建設系の諸学科や社会工学科などの諸学科で共通して利用できる都市計画教科書です。幅広い専門分野について書かれているため情報量が多いですが、図表などの資料が豊富にあるためわかりやすい内容になっています。また、教養書としても通読しても楽しめるでしょう。

都市計画教育研究会 (編集)
彰国社; 第3版 (2001/3/1)、出典:出版社HP

序文

1984(昭和 59)年頃,建築学科だけでなく,土木工学科はじめ建設系の諸学 科一公園・緑地系や都市工学科,社会工学科などの諸学科で共通して利用できる都市計画教科書を,現在,教育に携わっている人々がそれぞれ専門の立場から協同して編集,執筆する構想が浮かび上がった。それ以来3年程の間,東京 大学・川上光秀,東京農大・鈴木忠義,早稲田大学・戸沼幸市,明星大学・広瀬盛行各教授が編集メンバーとして集まり,都市計画教科書構想の具体化を進 めたのであった。

初期の段階において内外から数冊の都市計画教科書を選び, 比較・検討を試みたのである。その際,気がついたことを挙げると,まず著者 の出身分野が土木・建築あるいは造園のいずれであるかにより,また,著者の 学生が所属する学部・学科,さらに教科書利用の想定対象によって,当然のこととは言え,それぞれの教科書に見られる著しい特徴として内容のいわば偏りがあった。

すなわち土地利用計画,交通計画および公園緑地計画の何れか一つ を柱として選び,これに著者が必要と考えた類の都市施設の立地論,計画論と 都市計画制度, 事業論に,都市計画の沿革を加えて教科書を構成するのである。 要するに著者の出身分野と関心によって柱と都市施設の選び方が異なるのであ る。とりわけ顕著に見られたのは,都市計画の歴史,制度・手法,公共建築物, 住宅問題,住宅地計画,交通施設計画と環境計画に対する比重の置き方であった。

大学教育では、著者の立場,思想が色濃く現れることは当然にせよ,都市 計画の全領域をカバーしている教科書は見当たらないことに気がついたのであ る。現代社会の都市計画課題の必要に対応する教育には不十分の恐れなしとは 言えない訳であって、改めてわれわれが都市計画教育の研究に関心を持たなか ったことに気がついたのであった。このような観点からこの教科書の編集は企 画されたのである。

この教科書は,都市と都市計画を知る(1~4章),人間生活・居住の場とし ての都市(5,6章),都市の仕組みと構造の計画(7,8章),都市設計(9 章),都市計画の制度手段 (10章),国土 (11 章),第三世界の都市計画 (12 章), の12章構成を取っている。原則として, 16 ページを1単位とし,3章(1.5単 位)、8章(2.5単位)以外はすべて1単位の分量からなっている。

各大学における都市計画の講義は,半年間の場合と通年の場合があり,その 学部・学科に応じて特徴があるのは当然であり,もとより必ずしも都市計画の 全領域を講義する必要はない。しかしながら,講義担当者自身が得意とする領 域だけにとどまってよいはずはなく、必要な分野についても正確な知識を伝授する必要がある。この教科書はそれを意図して編集している。したがって講義の担当者はこの点に特に留意いただいて、専門領域とそれに近い分野は自分の学識と持ち味を生かした講義を,この教科書とは別に独自の内容にしていただき,専門外の諸分野について、必要,重要と思われる部門・分野についてはこの教科書を十分に活用していただきたい。

またこの教科書は図表などの資料が豊富であるが,これらは努めて原典から直接引用することとし,かつ最新の資料を選択する方針を採っている。各章の執筆者は、専門領域について的確に把握した内容を平易に表現しており、本教科書は教養書として通読しても楽しく、編集の意図は,この意味では成功したと自負している。

この教科書が最初に刊行されたのは 1987(昭和62)年の6月であった。その後都市計画法の改正等もあり、内容に不十分な点も生じてきたので,今回小改訂を行った。また改訂にあわせて年表・都市計画資料を新しく加え,参考文献にも解題をつけるなどの工夫をした。うまく利用して頂けたら幸いである。

1994年12月
都市計画教育研究会

第三版によせて

1987 年に初版を刊行以来、好評を博してきた本書は,1995年に新規データの追加や都市計画法等の改正等の改訂を行い第二版を出し、今回 2000年の都市計画法の改正に伴って関連事項の見直しを行い,ここに第三版として刊行する。

2001年1月
編集部

都市計画教育研究会 (編集)
彰国社; 第3版 (2001/3/1)、出典:出版社HP

目次

1 都市論
1.1 都市の時代
都市の時代の到来/都市の基本的性格,機能,立地/都市の範域/都市の分類

1.2 都市化と都市問題
近代の都市化と都市の変容/古典的都市問題/現代的都市問題

1.3 現代日本の都市と都市化
日本の都市の形成課程/日本の都市 と都市化の特徴/現代日本の都市の 課題

2 都市計画論
2.1 都市の機能・構造と都市計画

2.2 都市計画とその社会的役割
都市計画とその基本的機能/都市計 画と地域社会の事象の物象化と空間化/都市像の発想・描出と情報伝達機能/自治体行政と国家政策の道具/調整と総合機能

2.3 現代都市計画の思想,概念,方法の ルーツ
オスマンのパリ改造/北海道開拓使 の函館街区改正/東京市区改正/都市拡張と区画整理/田園都市/工業都市/シティ・ビューティ フル運動/ゾーニングの思想/ 公園系統の思想/生物学,社会学的 視野に立つ都市計画の調査と表現/ 自動車交通への対応/アムステルダムの会議の7原則と大都市問題対策/ル・コルビュジエの 300万人の都市 とアテネ憲章/ジードルング/ 近隣住区理論/都市の適性規模と配 置を求めて/国土・地方計画へ視野 の展開/大ロンドン計画/ニュータウン/都市再開発/都市の マスタープラン

3 都市の構成要素
3.1 道路とサーキュレーション
都市と道路/道路の分類/道路 網の構成/道路の段階構成と居住環 境地域/住宅地における細道路網と 歩道車の分離/都心商業地における道路網/各種道路の断面構成

3.2 建築と敷地
都市における建築の存在と作用/建 築の形態を決定する基本的要因/都 市の環境と建築/建築に対する都市からの規制

3.3 緑と都市オープンスペース
緑地・オープンスペースの意味/緑 地オープンスペースの機能/緑 地・オープンスペースの分類/緑 地・オープンスペースの段階的構成/緑地とオープンスペース計画

4 都市の把握と解析
4.1 都市計画の資料と情報処理
都市計画の計画立案プロセス/都市計画と情報/情報の収集と処理

4.2 都市把握の理論
都市の本質の理解/都市の分布と位 置付け/土地利用のパターン/ 土地利用のメカニズム /都市の内部構造のあり方

4.3 計画策定の計量モデル
解析方法の種類/事象の計量的表現/数理統計解析/数理計画法/シミュレーション・モデル/計 量評価モデル

5 都市と居住
5.1 都市化と住宅問題
地価高騰と住宅難/居住立地限定階 層の住宅問題/日本の住宅事情と住宅問題

5.2 居住環境と住宅水準

5.3 住宅政策
住宅・宅地・都市政策の変遷/国の 制度の一覧/行政組織/問題点

5.4 住宅・宅地供給計画

5.5 これからの課題
上からの住宅・都市政策の破たんと下か らの住宅・都市政策への転換/新し い土地政策への転換/高齢社会にお ける居住問題への対応/国際社会で果たす役割

6 都市の環境
6.1 人間と環境
6.2 人間・都市・環境

6.3 都市環境を理解するためのキーワード
自然と文明/マクロとミクロ/公と公害/公共と私/ハードとソフト/サービスと セルフサービス/過去と未来/学習と遊び/生産と消費

6.4 都市環境と用・強・美
都市における”用”/都市環境における”強”/都市環境における”美”

6.5 都市の安全
年と災害/都市と火災/都市と公害/都市と自然災害

7 都市の構成計画
7.1 都市空間構成の実態
市街地規模/都市空間の捉え方/各種利用空間単位の構成/各種利用空間単位の立地パターン

7.2 都市空間構成の計画
都市基本計画の立案プロセス/密度と密度計画/住区と住区計画

7.3 都市空間構成の実現
実現の手法 135/実現につなぐ計画の形

8 都市の構造計画
8.1 都市交通計画
都市交通の特性と計画の課題/総合交通体系計画の内容と方法/都市交通調査/将来交通需要の予測/都市総合交通体系計画

8.2 緑地網計画
緑被地調査法/緑地構造の把握/緑地の計画基準/公園などの施設計画・設計

8.3 都市水系計画
都市水系/利水計画/親水子 画/上水道計画/下水道計画

8.4 情報システムとエネルギー供給計画
新しいインフラストラクチュアと地下利 用/エネルギー使用量の増大と地 域冷暖房/情報化社会の新基盤施 設/ハイブリッド・システムの活用

9 都市設計
9.1 都市と形
現代都市の形の特徴/都市生活と形

9.2 都市設計のためのキーワード
都市美と人間尺度/快適さ (アメニ ティ)とその場所らしさ(アイデンティ ティ) /私と公/風土と歴史

9.3 都市設計の対象の大きさと内容
建築物と土木構造のスケール/都市の構成単位の階層性と場所の特似/施設系の都市設計

9.4 都市設計の道具と技法
花想を得るための道目と技法/設計のための道具と技法/表現の道具と技法

9.5 都市設計の実例
新宿西口副都心/丸の内オフィス街/原宿表参道

10 都市の基本計画を実現する手段としての都市計画法
10.1 都市の基本計画とは何か
都市計画法の「整備・開発または保全の 方針」/市町村の都市計画に関する基本的な方針

10.2 都市計画規制
都市計画区域/市街化区域・市街化 調整区域/地域地区/地区計 画/開発行為の規制/建築等の規制

10.3 都市計画事業
新住宅市街地開発事業/土地区画整理事業/市街地再開発事業

10.4 都市計画事業の財源
事業主体と負担主体/各主体の事業費の財源

10.5 都市計画決定手続

11 都市計画と国土の利用
11.1 国土の成立ちと国土利用
国士の成立ち/国土利用計画/土地利用基本計画/土地利用規制

11.2 地域の計画
市町村の計画/都道府県の計画/広域生活圏の計画/特定地域の計画

11.3 大都市圏と地方圏の計画
首都圏整備計画/近畿圏と中部圏の計画/地方圏の開発計画

11.4 国土の総合開発計画
国土総合開発計画の推移/三全総から四全総へ

11.5 都市計画と国土の利用
国土利用の展望/国土政策の方向/都市計画の課題

12 第三世界の都市と都市計画
12.1 都市と都市化の実態

12.2 都市開発政策
農村自体の開発整備計画/地方中 小都市の総合開発/大都市の開発 整備をめぐる重要課題 /都市開発政策の今後の課題

12.3 都市計画ならびに関連諸制度

都市計画年表
都市計画関連資料
演習問題
参考文献(解題)
図版提供・出典
索引

都市計画教育研究会 (編集)
彰国社; 第3版 (2001/3/1)、出典:出版社HP

都市計画(第3版)

基礎から幅広く学べる

本書は、都市の基盤施設計画から景観設計まで幅広く取り上げており、都市計画を基礎から学べる本になっています。都市の環境計画や防災計画についても取り上げており、最新の都市計画制度を丁寧に紹介しています。また、図や写真を使い、わかりやすい解説になっています。

川上 光彦 (著)
森北出版; 第3版 (2017/10/14)、出典:出版社HP

第3版まえがき

第2版の発行からおおむね5年,初版からおおむね10年が経過した.それぞれの版で何回かの増刷を重ねた。これは,多くの教育機関において教科書として採択いただいた結果であり,そのことに感謝しつつ,都市計画を学ぶ導入的なテキストとして活用されていることに引き続き大きな責任を感じている.

初版の「まえがき」に書いた都市計画の課題などについては,現在でも基本的に同じ ことが指摘できるが、都市計画の背景となる社会経済状況が変化し,また,都市計画の 地方分権が進み,市町村の権限が飛躍的に大きくなっており,これまでになかった視点も必要になっている。具体的には、都市における人口減少が現実のものとなり,より一層,自動車から公共交通への転換を進め,集約型都市構造へと変革していく必要性が高 まっていることなどがあげられる.

第3版の改訂に際しては、掲載データをできるだけ最新のものに更新した.そのほかに,諸外国の都市計画制度としてフランスの計画制度を取り上げた.これは,フランスの計画制度も,わが国における都市計画制度を検討する際に参考とされることが多いことを考慮したものである。また,新しい都市計画制度として立地適正化計画をとりあげ た。本制度は、具体的に集約型都市構造へ変革するために有効となる可能性がある.今後、市町村が新たに増えた都市計画権限や自主条例による創意工夫に努め、国や都道府 県がそれを支援することが求められる。

さらに,都市計画の地方分権化により、自治体が工夫して取り組む内容が多角的に進展してきている. そうした動向や内容をそれぞれの関連分野において解説し,事例を紹介するようにした。また、できるだけ理解しやすくするため、具体的な事例の写真や図 を追加するようにした。

第3版への検討に際しても、それぞれの専門分野で活躍されている方々にお願いして提案や示唆をいただいた、阿部成治氏(福島大学),和田幸信氏(足利工業大学),岡井有佳氏(立命館大学),三谷浩二郎氏(石川県),片岸将広氏・真島俊光氏((株)日本海コンサルタント), 小柳健氏(金沢市)である。また、出版に際して森北出版株式会社の加藤 義之氏にお世話になった。これらの方々に対して深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画の基本的な内容について学び,都市計画やまちづくりにかかわるさまざまな分野で活躍いただければ筆者の心からの喜びとするところである.

2017年8月
著者

まえがき

わが国は、明治以降の近代化の中で、西欧諸国の先進国をモデルとして、近代的な都市計画制度とそれに基づく都市づくりに取り組んできた。その中で、都市計画に関するプランを描くとともに、法的な規制を通じて土地利用計画の実現や誘導を行い、都市計画事業などにより都市基盤施設の実現を図ってきた。しかし近年、社会はますます急速に変化し、都市の問題や課題も増え、都市計画として対応すべき諸問題も多くなってきた。

こうしたなか、さまざまな分野においてめざすべき方向性と構築されてきた仕組みなどが見直されている。都市においても、災害に強い安全で安心できる環境づくり、地球環境問題や持続的発展のためのあり方などが重要なテーマとなっている。都市計画では、そうした動画をふまえつつ、近代的な都市計画制度の確立に向けてつぎのような新しい取り組みをする必要がある。

・都市計画マスタープランの充実などにより、都市全域を対象とする基本計画と地区レベルにおける計画の二段階的計画制度を充実させていくこと
・国、都道府県、市町村の役割を見直しつつ、都道府県などによる広域的な計画や調整
のもとに、市町村主体の都市計画制度へと変革していくこと
・都市計画を本来的な総合的環境形成のための制度へと充実させていくこと
・さまざまなまちづくり活動と積極的に連携するようにしていくこと
・計画に関連する情報のよりいっそうの公開と住民参加を拡大すること

さらに、これらを担うことができるプランナーなどを育成していくことも大切である。本書は、都市計画の入門書として、計画の理論と制度の基礎から実務的な内容の概要まで、総合的に扱っている。内容は,都市計画の歴史的流れ、諸外国などの理論や事例、都市基本計画や各分野における計画のための調査や計画の立案方法の概要を説明している。

また、後半部においては、都市計画制度についてできるだけ新しい内容や事例などを整理しながら、基本的なことについてわかりやすく説明している。また、各章末には、演習問題を掲載し、その解答例を巻末に示したさらに巻末には,執筆にあたり参考とした文献を掲載した。

本書の特徴は、都市の基盤施設計画から景観設計まで幅広く扱っていること、前述のようにその重要性から都市の環境計画や防災計画を独立した章として充実させていること。都市計画制度については、わが国が参考としてきた諸外国について紹介するとともにわが国の制度についてもていねいに紹介している。

本書を執筆するに際して、多くの方々にお世話になった。とりわけ、図表の作成には、城戸隆良氏(金沢大学技術専門職員)に協力いただき、出版に際しては、森北出版株式会社の石田昇司氏にお世話になった。深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画への理解を深め、都市計画や関連分野、まちづくり活動などについて関心をもち、さらには、読者自身が都市計画の進展に貢献いただければ、筆者の心からの喜びとするところである。

2007年10月

川上 光彦 (著)
森北出版; 第3版 (2017/10/14)、出典:出版社HP

目次

第1章 都市論
1.1 都市の定義
1.2 都市の成り立ち
1.3 都市問題
1.4 日本の都市と都市化
1.5 開発途上国の都市と都市化
1.6 社会変化と都市
演習問題

第2章 都市計画論
2.1 都市学と都市計画
2.2 日本における都市計画の発祥
2.3 都市計画の計画・設計の事例
演習問題

第3章 都市基本計画
3.1 都市基本計画の位置づけ
3.2 都市基本計画の上位・関連計画
3.3 都市基本計画の与件
3.4 都市基本計画の内容
3.5 都市基本計画の方法
3.6 日本の都市基本計画
演習問題

第4章 土地利用計画
4.1 土地利用計画の目的
4.2 土地利用の基礎的理論
4.3 土地利用の計画技術
4.4 日本の土地利用計画制度
演習問題

第5章 都市交通計画
5.1 都市交通の問題と課題
5.2 街路空間の機能・役割
5.3 都市交通計画の内容と手法
5.4 街路網の計画
5.5 都市交通計画の基本的方法
5.6 地区交通計画の必要性
5.7 地区交通計画の方法
演習問題

第6章 公園・緑地・オープンスペースの計画
6.1 公園・緑地・オープンスペースと都市環境
6.2 日本での公園の導入
6.3 都市と公園・緑地・オープンスペース
6.4 公園・緑地・オープンスペースの機能
6.5 都市公園・緑地
6.6 公園の計画・設計
6.7 新しい動向
演習問題

第7章 住宅・住環境の計画
7.1 都市化と住宅問題
7.2 住宅・住環境の計画体系
7.3 居住水準
7.4 住宅需給計画
7.5 住宅地の計画
7.6 関連トピックス
演習問題

第8章 都市基盤施設の計画
8.1 都市基盤施設と都市施設
8.2 都市水系
8.3 都市エネルギー
8.4 情報通信システム
8.5 廃棄物処理施設ほか
8.6 そのほかの都市基盤施設
演習問題

第9章 都市環境の計画
9.1 都市の環境問題
9.2 産業・都市の活動と環境
9.3 低炭素都市づくり
9.4 生活と環境
演習問題

第10章 都市の防災計画
10.1 防災計画の仕組み
10.2 都市の防災計画の課題
10.3 災害危険性の評価
10.4 避難計画
10.5 住まいの復旧・復興
演習問題

第11章 都市の景観設計
11.1 景観設計の方法
11.2 都市形態のデザイン
11.3 都市デザインの形態的手法
11.4 都市デザインの基本理念
11.5 道路・街路の機能とデザイン

11.6 歩行空間の各種装置
11.7 広場
11.8 ストリートファニチュア
11.9 都市空間における防犯デザイン
11.10 バリアフリーデザイン
11.11 景観,バリアフリー関連制度
演習問題

第12章 欧米諸国の計画制度
12.1 イギリスの計画制度
12.2 ドイツの計画制度
12.3 フランスの計画制度
12.4 アメリカ合衆国の計画制度
演習問題

第13章 日本の都市計画制度
13.1 都市計画制度の歴史と概要
13.2 全体および土地利用に関連する計画
13.3 市街地開発事業
13.4 地区を対象とする計画制度
13.5 宅地開発指導要綱
13.6 計画決定プロセス
13.7 まちづくり関連条例
演習問題

演習問題の解答例およびヒント
参考文献・資料
索引

川上 光彦 (著)
森北出版; 第3版 (2017/10/14)、出典:出版社HP

都市計画 第3版増補

都市計画について学ぶのに最適

現代は人々の考え方や価値観などが多様化し、都市計画のあり方についても新しい方向を見定めなければならない状況になりました。都市計画の本質を知り、現状の課題について正しく認識することが必要です。本書は、都市計画に関する重要な事項を広くまとめてあります。大学で都市計画を学ぶ学生が知っておくべきことが本書に全てまとまっています。

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP

第3版まえがき

第2版の発行からおおむね5年,初版からおおむね10年が経過した.それぞれの版で何回かの増刷を重ねた。これは、多くの教育機関において教科書として採択いただいた結果であり、そのことに感謝しつつ、都市計画を学ぶ導入的なテキストとして活用されていることに引き続き大きな責任を感じている。

初版の「まえがき」に書いた都市計画の課題などについては,現在でも基本的に同じことが指摘できるが、都市計画の背景となる社会経済状況が変化し,また,都市計画の地方分権が進み、市町村の権限が飛躍的に大きくなっており,これまでになかった視点も必要になっている。具体的には、都市における人口減少が現実のものとなり、より一層,自動車から公共交通への転換を進め、集約型都市構造へと変革していく必要性が高まっていることなどがあげられる.

第3版の改訂に際しては、掲載データをできるだけ最新のものに更新した,そのほかに、諸外国の都市計画制度としてフランスの計画制度を取り上げた。これは、フランスの計画制度も,わが国における都市計画制度を検討する際に参考とされることが多いことを考慮したものである.また,新しい都市計画制度として立地適正化計画をとりあげた、本制度は,具体的に集約型都市構造へ変革するために有効となる可能性がある.今後,市町村が新たに増えた都市計画権限や自主条例による創意工夫に努め、国や都道府 県がそれを支援することが求められる.

さらに,都市計画の地方分権化により,自治体が工夫して取り組む内容が多角的に進展してきている、そうした動向や内容をそれぞれの関連分野において解説し,事例を紹介するようにした.また,できるだけ理解しやすくするため、具体的な事例の写真や図を追加するようにした.

第3版への検討に際しても,それぞれの専門分野で活躍されている方々にお願いして提案や示唆をいただいた阿部成治氏(福島大学),和田幸信氏(足利工業大学),岡井有佳氏(立命館大学),三谷浩二郎氏(石川県),片岸将広氏・真島俊光氏((株)日本海コンサルタント),小柳健氏(金沢市)である.また,出版に際して森北出版株式会社の加藤義之氏にお世話になった。これらの方々に対して深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画の基本的な内容について学び,都市計画やまちづくりにかかわるさまざまな分野で活躍いただければ筆者の心からの喜びとするところである。

2017年8月
著者

まえがき

わが国は、明治以降の近代化の中で,西欧諸国の先進国をモデルとして、近代的な都市計画制度とそれに基づく都市づくりに取り組んできた。その中で、都市計画に関するプランを描くとともに、法的な規制を通じて土地利用計画の実現や誘導を行い、都市計画事業などにより都市基盤施設の実現を図ってきた.しかし近年,社会はますます急速に変化し、都市の問題や課題も増え,都市計画として対応すべき諸問題も多くなってきた。

こうしたなか、さまざまな分野においてめざすべき方向性と構築されてきた仕組みなどが見直されている。都市においても,災害に強い安全で安心できる環境づくり地球環境問題や持続的発展のためのあり方などが重要なテーマとなっている。都市計画でそうした動向をふまえつつ、近代的な都市計画制度の確立に向けてつぎのような新らしい取り組みをする必要がある.

・都市計画マスタープランの充実などにより,都市全域を対象とする基本計画と地区レベルにおける計画の二段階的計画制度を充実させていくこと
・国,都道府県,市町村の役割を見直しつつ、都道府県などによる広域的な計画や調教のもとに、市町村主体の都市計画制度へと変革していくこと
・都市計画を本来的な総合的環境形成のための制度へと充実させていくこと
・さまざまなまちづくり活動と積極的に連携するようにしていくこと
・計画に関連する情報のよりいっそうの公開と住民参加を拡大すること

さらに、これらを担うことができるプランナーなどを育成していくことも大切である。本書は,都市計画の入門書として、計画の理論と制度の基礎から実務的な内容の概要ま で、総合的に扱っている。内容は、都市計画の歴史的流れ、諸外国などの理論や事例、都市基本計画や各分野における計画のための調査や計画の立案方法の概要を説明している。

また、後半部においては、都市計画制度について、できるだけ新しい内容や事例などを整理しながら、基本的なことについてわかりやすく説明している。また,各章末には、演習問題を掲載し、その解答例を巻末に示した。さらに巻末には、執筆にあたり参考とした文献を掲載した。

本書の特徴は、都市の基盤施設計画から景観設計まで幅広く扱っていること、前述のようにその重要性から都市の環境計画や防災計画を独立した章として充実させていること、都市計画制度については、わが国が参考としてきた諸外国について紹介するとともに、わが国の制度についてもていねいに紹介している。

本書を執筆するに際して、多くの方々にお世話になった。とりわけ、図表の作成には城戸隆良氏(金沢大学技術専門職員)に協力いただき、出版に際しては、森北出版株式会社の石田昇司氏にお世話になった、深く感謝申し上げる。

本書を通じて、都市計画への理解を深め、都市計画や関連分野、まちづくり活動などについて関心をもち、さらには、読者自身が都市計画の進展に貢献いただければ、筆者の心からの喜びとするところである。

2007年10月
著者

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP

目次

第1章 都市論
1.1 都市の定義
1.2 都市の成り立ち
1.3 都市問題
1.4 日本の都市と都市化
1.5 開発途上国の都市と都市化
1.6 社会変化と都市
演習問題

第2章 都市計画論
2.1 都市学と都市計画
2.2 日本における都市計画の発祥
2.3 都市計画の計画・設計の事例
演習問題

第3章 都市基本計画
3.1 都市基本計画の位置づけ
3.2 都市基本計画の上位・関連計画
3.3 都市基本計画の与件
3.4 都市基本計画の内容
3.5 都市基本計画の方法
3.6 日本の都市基本計画
演習問題

第4章 土地利用計画
4.1 土地利用計画の目的
4.2 土地利用の基礎的理論
4.3 土地利用の計画技術
4.4 日本の土地利用計画制度
演習問題

第5章 都市交通計画
5.1 都市交通の問題と課題
5.2 街路空間の機能・役割
5.3 都市交通計画の内容と手法
5.4 街路の計画
5.5 都市交通計画の基本的方法
5.6 地区交通計画の必要性
5.7 地区交通計画の方法

第6章 公園・緑地・オープンスペースの計画
6.1 公園・緑地・オープンスペースと都市環境
6.2 日本での公園の導入
6.3 都市と公園・緑地・オープンスペース
6.4 公簿・緑地・オープンスペースの機能
6.5 都市公園・緑地
6.6 公園の計画・設計
6.7 新しい動向

第7章 住宅・住環境の計画
7.1 都市化と住宅問題
7.2 住宅・住環境の計画体系
7.3 居住水準
7.4 住宅需給計画
7.5 住宅地の計画
7.6 関連トピックス
演習問題

第8章 都市基盤施設の計画
8.1 都市基盤施設と都市施設
8.2 都市水系
8.3 都市エネルギー
8.4 情報通信システム
8.5 廃棄物処理施設ほか
8.6 そのほかの都市基盤施設
演習問題

第9章 都市環境の計画
9.1 都市の環境問題
9.2 産業・都市の活動と環境
9.3 低炭素都市づくり
9.4 生活と環境
演習問題

第10章 都市の防災計画
10.1 防災計画の仕組み
10.2 都市の防災計画の課題
10.3 災害危険性の評価
10.4 避難計画…
10.5 住まいの復旧・復興
演習問題

第11章 都市の景観設計
11.1 景観設計の方法
11.2 都市形態のデザイン
11.3 都市デザインの形態的手法
11.4 都市デザインの基本理念
11.5 道路・街路の機能とデザイン

11.6 歩行空間の各種装置
11.7 広場
11.8 ストリートファニチュア
11.9 都市空間における防犯デザイン
11.10 バリアフリーデザイン
11.11 景観,バリアフリー関連制度
演習問題

第12章 欧米諸国の計画制度
12.1 イギリスの計画制度
12.2 ドイツの計画制度
12.3 フランスの計画制度
12.4 アメリカ合衆国の計画制度
演習問題

第13章 日本の都市計画制度
13.1 都市計画制度の歴史と概要
13.2 全体および土地利用に関連する計画
13.3 市街地開発事業
13.4 地区を対象とする計画制度
13.5 宅地開発指導要綱
13.6 計画決定プロセス
13.7 まちづくり関連条例
演習問題

演習問題の解答例およびヒント
参考文献・資料
索引

日笠 端 (著), 日端 康雄 (著)
共立出版; 第3版増補版 (2015/1/23)、出典:出版社HP

初めて学ぶ 都市計画(第二版)

都市計画の必須知識が身に付く

これからの50年は、人口減少や地球温暖化、災害に加えてさらなる経済のグローバル化や人口移動など私たちの暮らしがどんどん変化していくでしょう。そのような時代でも快適な都市を作り続けるために都市計画が必要になります。本書は、日本の都市計画を行うための基礎を学ぶ人のために著されたものです。

饗庭 伸 (著), 鈴木 伸治 (著)
市ケ谷出版社; 第二版 (2018/3/20)、出典:出版社HP

「初めて学ぶ 都市計画(第二版)」発行にあたって

本書が出版される2018年は、1868年の明治維新から150年目の年にあたる。江戸時代の長い鎖国が終わり,近代化の大きな転機となったのが明治維新であった。

江戸時代後半の150年間の我が国の人口は3000万人で安定していたが、そこから150年間で1億人の人口が増加し、2018年1月の人口は,総務省の発表では1億2659万人を数えた。つまり、私たちはこの150年間で1億人が暮らす新しい都市をつくってきたことになる。

都市をつくってきたのは,私たち自身である。快適な生活をしたいよい仕事をしたい、こうした単純な必要性に基づいて,私たちはこの150年間,都市をつくり続けてきた。しかし,私たちの全てが独自の考えで都市をつくってしまうと都市空間は混乱してしまう。そこに都市計画が登場する。明治維新以降に導入された都市計画は、江戸時代までの都市計画と区別して「近代都市計画」と呼ばれる。近代都市計画は150年間を3つの時期に区切るようにして発展してきた。

最初の時期は,1919年の都市計画法制定までの50年間であり、江戸期の都市計画から近代都市計画への転換期へと位置付けられる。次の時期は、第二次世界大戦を挟んで新しい都市計画法が制定される1968年までの50年間である。戦前の経済成長,戦災からの復興,戦後の経済成長の中で勢いよく形成される都市を最低限の基準でもって、つくりきった時期と位置付けられる。

そこから今日にいたるまでの50年間は,都市空間が量から質へと転換していった時期であり、政府主導から民間主導。市民主導の都市計画への転換期でもあった。さて、次の50年はどういう時代であろうか。人口減少、地球環境の変化、災害の発生という大きな前提ははっきりしているものの、経済のさらなるグローバル化とそれに伴なう人口移動、都市に関わる様々な技術やサービスの高度化など、予測できない未来が私たちの前に広がっている。これからの都市計画に携わる専門家には、様々に起きる可能性と課題に対して、創造的に答えをつくり続けることが求められる。

我が国の都市計画は、150年かけてつくり出されてきた体系を持っている。もちろんその制度には様々な課題があるが、これから求められる創造的な取り組みの基礎であることには変わりはない。本書はこのような、我が国の都市計画の基礎を学ぶ人たちに向けて執筆されたものである。

2018年2月
編修・執筆代表
餐庭 伸

本書の構成と使いかた

本書は2008年に出版された「初めて学ぶ都市計画」を大幅に改訂したものである。初版から10年が経ち、都市問題の深化や法制度の改正に対応する必要があったことが改訂の動機であるが、あわせて旧版の構成を大きく変更した。

旧版では「現況と展望編」と「制度と技術編」の2編構成をとっていたが、2つの編に内容が分かれて使いにくかったこと,「制度と技術編」に初学者には高度な内容が含まれていたことから、本書では「現況と展望編」の内容に「制度と技術編」の一部を書き加える形で一つの章にまとめ、「制度と技術編」の多くを「用語集」としてまとめなおした。また,実際の都市を歩いて都市計画を学習することを重視し、全国24の「事例ガイド編」を新たに書き起こした。

内容は11の章と24の事例で構成されている。大学の標準的な授業は、12~15回程度であるが,1つの章を1回の授業にあて、さらに事例ガイド編を使って実際の都市に出ることを想定している。
事例ガイド編には、町歩きのルートを示しているが,それぞれ2~3時間程度で歩き終わるように設定した。

また、各章の終わりには「こんな問題を考えてみよう」として,各事例の終わりには「歩き終わったらこういうことを議論してみよう」として、学生たちの議論を通じて学習した内容を反復できるような問いを示した。

用語集は、専門的な用語の意味を深く知りたいとき、あるいは都市計画の実務の現場で分からない用語に出会った時に参照していただきたい。また、用語集には本文の流れで説明しきれない内容も一部含まれている。本書を有効に活用していただくことを執筆者一同祈念しています。

都市計画を,このように格調高く説いた人がいました。太平洋戦争の大空襲で日本各地の都市が破壊されてまだ3年,戦後日本の復興に向かう時代のことです。説くだけではなく、焼け野原となってしまった東京の街を再建し復興する実際の指揮をした都市計画家です。新生日本を背負う中学生のために,教科書副読本として書いたのでした。

それから60年後の今,日本の都市は理想と現実の狭間でどのようなものとなったでしょうか。私たちの生活している現代の都市は,戦後の人口増加と経済成長を続けてきた20世紀日本の都市計画の成果であるといえます。

21世紀日本は,経済は安定期へ,人口は減少期へ,地球レベルの環境問題の顕在化など,20世紀とは大きく異なる社会になろうとしています。20世紀の延長上ではなく,違う局面に立つ21世紀型の社会システムとしての都市計画が求められているのです。次の世代に安心して継承してもらう都市をどうつくるか,わたくしたちは重大な転換点に立っているのです。

◆初めて都市計画を学ぶ学生たちのために
この本を使っていただきたいのは,大学の建築系あるいは工業高等専門学校の建築系の学生を主な対象としていますが,造園系,住居系,土木系,環境系等の関連分野の学生,そしてまた一般教養としての都市問題に興味のある学生たちにも読んでいただきたいのです。

次世代を支える人たちが、これからどう都市社会をつくっていくのか,都市計画を専門とするのでなくても,都市計画を通じて社会のあり方を学んでいただくことを期待しています。都市は、市街地あるいは単に街といいかえてもよいのですが、誰もが生まれたときから都市で暮らしているのです。その都市をどのように造りどのように使うか、つまりそれが都市計画なのですから、都市計画は日常生活に密接する身近なことなのです。

その都市計画を体系的かつ入門的に学んでいただくことで、人々の生活空間を豊かにする都市づくり、つまり社会に対する愛情ある都市計画を次世代の人々に期待して、本書をつくりました。

◆まちづくりに関心ある社会人のために
本書は,地域で活動する社会人たちも対象としてつくりました。全国各地で起きている「まちづくり活動」は、大きく変ろうとする時代に対応する地域社会をつくろうとするもので、都市計画の動きなのです。自分のまちは自分たちでつくり,直し,守っていこう,それが現代の都市計画でありまちづくりと言い換えることもできます。まちづくりに参加している,あるいは参加しようと考えている一般市民の人たちにも、「まちづくり基礎知識集」として,ぜひとも読んでいただきたいものです。

21世紀はこれまでよりも違う局面で都市化が進み、新たな都市問題に立ち向かうことになるでしょう。地域社会を支える市民・住民たちが、そして次代を背負う若者たちが,自分たちのための都市計画として自ら何をするべきか、それに本書が役立つことを期待しつつ,都市計画の各分野の第一線にいる専門家たちの衆知を集めて本書を編修・執筆したのです。

2008年3月
編修·執筆代表 伊達美德

饗庭 伸 (著), 鈴木 伸治 (著)
市ケ谷出版社; 第二版 (2018/3/20)、出典:出版社HP

目次

第1章 都市計画を学ぶ
1.1 都市計画を学ぶ
1.2 都市の要素と設計
1.3 あなたの街の都市計画を知る
1.4 都市計画で何ができるか?
1.5 専門家の役割とこれからの都市

第2章 都市と都市計画
2.1 都市について理解する
(1) 都市とは
(2) 都市の起源と都市化
(3)都市の地域構造と都市圏
(4) 都市の範囲

2.2 都市計画の意義について考える
(1) 都市計画とは
(2) 都市計画の歴史

2.3 都市計画の理論・思想
(1) 田園都市(Garden City)
(2) 機能主義の都市計画
(3) 生態的・科学的都市計画
(4) 近隣住区論
(5) 反機能主義の都市論
(6) 伝統回帰と持続可能な都市

2.4 都市計画制度の沿革
(1) 近代都市計画の成立と制度化
(2) 日本の近代都市計画制度の沿革

2.5 都市計画法の体系
(1) 都市計画法と関連法
(2) 都市計画の目的と基本理念
(3) 都市計画の適用範囲
(4) マスタープラン
(5) 都市計画の内容
(6) 都市計画の決定者と手続き
(7) 都市計画制限と都市計画事業

2.6 こんな問題を考えてみよう
用語集

第3章 都市の構成と土地利用計画
3.1 はじめに

3.2 都市はどのように形成されたか
(1) 戦災復興と土地区画整理事業
(2) スプロール市街地
(3) 大規模ニュータウン
(4) 民間電鉄会社による沿線開発
(5) 土地区画整理事業と公団・公社の団地開発
(6) 民間デベロッパーによる開発
(7) 人口減少と市街地の再編成

3.3 都市の把握の方法
(1) 都市の密度を把握する
(2) 都市と後背地の関係を把握する
(3) 都市の構造を把握する
(4) 都市核・都市軸で市街地の構造を分析し,方針を考える

3.4 土地利用計画の方法と制度
(1) 区域区分と開発許可
(2) 用途地域に代表される地域地区
(3) 立地適正化計画

3.5 こんな問題を考えてみよう
用語集

第4章 建築物のコントロール
4.1 市街地の構成

4.2 建築物が形づくる市街地の姿
(1) 建築物の用途
(2) 建築物がつくる密度
(3) 建築物の高さ・配置

4.3 建築物の用途・密度・形態を規制する
(1) 規制手法の構成
(2) 敷地と道路
(3) 「用途」の規制
(4) 「密度」の規制
(5) 「配置」の規制
(6) 「高さ」の規制
(7) 規制緩和による市街地環境の誘導

4.4 こんな問題を考えてみよう
用語集

第5章 地区スケールの計画・ルール
5.1 地区スケールの計画・ルールの必要性と背景

5.2 地区スケールの計画・ルールの種類と特徴
(1) 建築協定
(2) 地区計画
(3) その他の地区スケールの諸制度

5.3 地区スケールの計画・ルールづくりのプロセス
5.4 地区スケールのルールのメリットと限界
5.5 こんな問題を考えてみよう
用語集

第6章 都市の再生と交通システム
6.1 街路からの都市づくりと再生
(1) 街路の歩行安全性確保の考え方
(2) 都市における自転車利用の新たな展開
(3) 自動車優先の見直しによる商業地区活性化
(4) 憩いの空間としての街路
(5) 駐車・荷捌き需要のマネジメント

6.2 交通拠点を核とした都市づくりと再生
(1) 鉄道駅の再生とまちづくり
(2) 港湾空間を活用したまちづくり

6.3 持続可能な都市構造と交通システム
(1) 都市内における交通機関の機能分担
(2) 公共交通指向型都市開発とコンパクトシティ
(3) 地域公共交通の活性化
(4) 都市における道路ネットワーク形成

6.4 都市交通システムの計画技術
(1) 市民参加型の交通計画手法
(2) 交通需要予測手法
(3) 都市交通プロジェクトの環境影響評価手法

6.5 こんな問題を考えてみよう
用語集

第7章 都市と自然
7.1 都市計画における公園整備・緑地保全の意義
(1) 都市における「自然」の多様性と本質
(2) 「都市緑地」の効果

7.2 イギリスにおける狩猟苑の開放によきる公園の誕生
7.3 アメリカのパークシステムの展開と大規模公園

7.4 日本における公園整備,緑地保全の歴史
(1) 「都市緑地」の歴史的積層性とまちづくり
(2) 「神宮の森」づくりと参道整備
(3) 風致地区制度による「面」としての緑地保全
(4) 関東大震災後の震災復興公園と防災機能
(5) 幻の環状緑地計画・東京緑地計画
(6) 高度経済成長期の都市化における都市緑地制度

7.5 「都市公園」の制度と背景
(1) 都市施設としての「公園」
(2) 営造物としての「都市公園」の種別と配置標準

7.6 都市緑地法を根拠法とした「緑の基本計画」
(1) 「都市緑地」の多様性と「緑の基本計画」
(2) 計画策定にむけた与条件の整理

7.7 公園・緑地の整備・保全・創出のこれから
7.8 こんな問題を考えてみよう
用語集

第8章 市街地開発事業と都市再生
8.1 市街地開発事業とは何か
(1) 市街地開発事業とは何か
(2) 市街地開発事業と都市再生

8.2 日本の市街地開発事業の歴史
(1) 土地区画整理事業
(2) 市街地再開発事業
(3) その他の計画的な市街地を効率的に整備する事業
(4) 防災街区整備事業
(5) 都市再生の時代へ

8.3 日本の市街地開発事業の特徴
8.4 市街地開発事業が直面している課題

8.5 都市再生の実際
(1) 都市中心核の再生
(2) 木造住宅密集市街地の再生
(3) 中心市街地の再生
(4) 団地再生
(5) 集合住宅の再生
(6) 戸建て住宅地の再生

8.6 こんな問題を考えてみよう
用語集

第9章 都市と防災
9.1 災害にどう対処するのか
(1) 都市と防災
(2) 被害を想定する
(3) 災害発生後の対応

9.2 都市を災害から守る
(1) 防災の制度の変遷
(2) 火災から都市を守る
(3) 地震動から都市を守る
(4) 水害から都市を守る
(5) 津波から都市を守る
(6) 土砂災害から都市を守る
(7) 火山から都市を守る
(8) 犯罪から都市を守る

9.3 被災したまちを再建する
(1) 災害の種類と地域特性
(2) 地震からまちを再建する
(3) 津波からまちを再建する
(4) 事前復興の試み

9.4 こんな問題を考えてみよう
用語集

第10章 都市の景観まちづくり
10.1 景観とは何か
10.2 都市景観の構成要素・種類

10.3 さまざまな景観まちづくり
(1) 景観を「まもる」
(2) 景観を「つくり,そだてる」

10.4 景観まちづくりと法制度
10.5 景観法とそのしくみ
10.6 景観まちづくりに関連するその他の制度
10.7 公共空間の整備・活用と景観
10.8 こんな問題を考えてみよう
用語集

第11章 参加・協働のまちづくり
11.1 参加・協働のまちづくり
11.2 様々な参加・協働のまちづくり

11.3 参加・協働のまちづくりの定義
(1) 登場人物
(2) 参加・協働のまちづくりのテーマ
(3) 活動の期間
(4) 参加・協働のまちづくりの定義

11.4 参加・協働のまちづくりの意義
(1)質の高い都市計画・デザインを行う
(2)紛争の回避
(3) 都市計画に正当性を与える
(4) コミュニティをつくる

11.5 参加・協働のまちづくりの方法と制度
11.6 計画プロセスをデザインする方法と制度

11.7 主体をデザインする方法・制度
(1)どのような主体があるか
(2)主体の育成制度

11.8 コミュニケーションをデザインする方法・制度
(1) 議論を豊富化する手法
(2) 議論を支える手法
(3) 計画を絞り込む手法
(4) 情報を外部に伝える手法

11.9 こんな問題を考えてみよう
用語集

事例編 まちを歩くときの注意事項

事例マップ

事例
事例1 札幌都心部:魅力的な公共空間による都心構造強化
事例2.1 函館:北の開港都市のシェアリングヘリテージ
事例2.2 小樽:シェアリングヘリテージによる都市再生の模索
事例3.1 弘前:あずましの城下町・弘前の都市計画を学ぶ
事例3.2 黒石:「こみせ」が生み出すあずましの公共空間
事例4 仙台:新旧の都市計画を巡る
事例5 東京都心部:神田・丸の内
事例6 多摩ニュータウン
事例7 世田谷:下北沢,梅ヶ丘,三軒茶屋
事例8 横浜都心部:都市デザインの現場を歩く
事例9 高崎中心部:城下町の景観・都市計画
事例10 長岡:城下町・戦災復興都市のまちなか再生を巡る
事例11 金沢:保全型都市計画の現場を歩く
事例12 富山中心部:最先端のコンパクトシティを歩く
事例13 松江:歴史的町並みの残る水の都を歩く
事例14 名古屋都心部:都市基盤の歴史 を歩く
事例15 京都:歴史都市の保全刷新の歩みをたどる
事例16 大阪都心部:都市再生の現場を歩く
事例17 神戸:都心ウォーターフロントと阪神・淡路大震災後の復興のまちを歩く
事例18 高松:まちなか再生と地方都市
事例19 広島:国際平和文化都市「ひろしま」を歩く
事例20 福山市鞆の浦: 瀬戸内の歴史的港湾都市
事例21 福岡都心部:福岡と博多をつなぐ
事例22 北九州市門司港:港湾都市の新旧を巡る
事例23 熊本市中心部:城下町熊本を歩く
事例24 鹿児島:戦災復興の都市空間を活かす

参考文献
索引

饗庭 伸 (著), 鈴木 伸治 (著)
市ケ谷出版社; 第二版 (2018/3/20)、出典:出版社HP

入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-

都市計画の全体像がわかる

地域の商店街の話題や空き家問題、防災対策など都市に関わるさまざまなニュースがあります。このような都市に関わる課題を解決しより良い都市にするために働きかけを行う行為を「都市計画」という。本書は、具体的な都市計画の事例を交えながら都市計画に対する考え方や手がかりなどを解説しています。

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP

まえがき

テレビや新聞を眺めてみると、都市にかかわるニュースや話題が,必ず毎日どこかで取り上げられています。それらは商店街の活性化の試みや地域の環境づくりの話題であったり、住宅の空き家問題から防災対策に至るまで、じつに多岐に渡ります.そして、それらはいずれもわれわれの生活に大きくかかわることばかりです.

また,その内容は時代の流れに応じて大きく変化しています。たとえば、地球環境への配慮や,スマートフォンを用いたまちづくりの情報交換などは,過去のまちづくりには想像もされなかったことですこれら都市にかかわる様々な課題を的確に把握し、よりよい将来を実現するために,都市そのものや,そこで暮らす人たちに対して働きかけを行う行為が「都市計画」です。

都市計画は「数学」や「物理」といった学問などと比較すると、一見誰にでも取り組めそうな簡単なことに思われるようです。しかし,将来を的確に読み,現状を客観的に理解し,そして有効な方策を考案するには、きわめて高度な専門性が必要とされます.また,そのようなプランニングといわれる能力は、一度身につけると都市計画 の専門にかかわらず、広く社会の中で様々なシーンにおいて活かすことが可能です.本書は,そのような素養をなるべく楽しんで誰にでも身につけていただけるよう,最新の都市計画に関する知識と話題をわかりやすく整理したものです。

なお、優れた都市計画の教科書はすでに数多く出版されています.しかし,それらはおもに都市計画に関連する既存の制度解説に主眼が置かれています。制度をきちんと網羅しようとすると,現在ではほとんど使われなくなった制度もある反面,追加される制度もあるので,教科書はどんどん分厚くなっていきます.

また,教科書に書いてあることとして現在の制度を最初に頭に入れてしまうと,人間というのは不思議なもので、その制度が正しいという前提のもとで,その制度を守るための行動を取るようになります。プランニングにおいて、このような思考停止はもっとも避けなければなりません、既存の制度をなぞるだけでは、現在の激しい社会変化の中で、本来行うべき都市計画の改革が実施できなくなっているということを,まずわれわれは認識する必要があります。以上のような問題意識から、本書では,制度解説は可能な限り最小限に抑え、その反面,具体的な事例を多く交えるようにしました。

今後を考えるうえで、必ずしも成功例とはよべない事例も学習のために多く取り入れたことも、既存の教科書とは大きく異なる点です。社会が変わっていく中で、どう都市計画に対する「考え方」を変えていく必要があるのか、そして、その手掛かりをどうつかむのか、そのヒントの提示にむしろ本書は重点を置いています。最初に学ぶ機会において 志高く発想を自由に拡げられるようにしておくことは、とくに都市計画の専門家になる人にとってはきわめて大切な要件であると考えるからです。

また,都市計画を将来専門としない人にとっても手に取っていただけるよう、話題を厳選するとともに,平易な解説を心がけました。一方で、まだ整理が不十分な点や,私見に基づく不勉強な記述も残されているかと思い、皆様のご批判を得ることで、今後も内容の改善を図っていきたいと考えています。

なお、本書の記載事項には,研究室の代々の学生との取り組みや議論を経て得られた成果も少なくありません。図表の使用許諾を取る作業等では秘書の岡本律子氏のお世話になりました。また、本書が世に出る道筋をつくっていただいた森北出版(株)の石田昇司氏,丁寧な校正,編集をいただいた富井晃氏に巡り合えたことは大きな幸運でした。記して謝意を申し上げます。

2014年9月
つくば市研究学園にて
谷口守

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP

目次

1章 はじめに なぜ都市ができるのか
1.1 競争と安定 ホテリングモデル
1.2 都市の構造
1.3 都心と郊外の成立 アロンゾ付け値地代
1.4 集積の利益と都市
1.5 都市の階層性
1.6 都市のライフサイクル

2章 現代都市の問題
2.1 都市化の実態
2.2 スプロール
2.3 人口減少と高齢化
2.4 リバース・スプロールの時代へ
2.5 社会資本の維持管理

3章 都市の進化とプランニング
3.1 プランニングのはじまり
3.2 都市の展開
3.3 近代化と都市計画
3.4 田園都市とニュータウン
3.5 自動車時代の計画
3.6 競争する世界都市

4章 計画概念とプランナー
4.1 様々な計画概念
4.2 計画をめぐる誤解と課題
4.3 プランナーの役割 都市や地域のドクター
4.4 地域概念
4.5 計画の段階的構成
4.6 上位計画(国土計画,広域計画)を考える

5章 暮らしを支える都市
5.1 施設配置を考える
5.2 「都心」対「郊外」
5.3 交錯する都市
5.4 弱者を支える
5.5 安全な都市

6章 豊かな都市空間を考える
6.1 心休まる空間づくり
6.2 風土と歴史を活かす
6.3 都市デザインと景観を考える
6.4 空間利用の効率化
6.5 生活の質を考える
6.6 選択肢を確保する
6.7 愛着をもてる空間に

7章 持続可能性(サステイナビリティ)に取り組む
7.1 持続可能性とは
7.2 緑を考える
7.3 人口上限を論じる
7.4 環境負荷を測るエコロジカル・フットプリント
7.5損なわれたものを取り戻す
7.6 トレードオフを理解する

8章 都市計画の基本的な制度
8.1 基本的な仕組み
8.2 マスタープランと都市計画区域
8.3 区域区分と地域地区
8.4 地区計画
8.5 市街地開発事業
8.6 容積率と斜線制限

9章 都市の再構築
9.1 都市再構築のポイント
9.2 市街地再開発事業
9.3 民間による再開発
9.4 都市再生特別措置法と都市の再構築
9.5 地方都市で考える
9.6 蘇生する都市
9.7 まちのボリュームを減らす
9.8 多様性の強み

10章 新しい都市の形を考える
10.1 コンパクトシティ
10.2 都市の見かけと中身
10.3 「拠点に集約」から「拠点を集約」へ
10.4 どこに住むべきか
10.5 スマートシティ
10.6 クリエイティブシティ
10.7 サイバーシティ

11章 合意と担い手
11.1 意見を活かす
11.2 合意形成とNIMBY(ニンビー)
11.3 専門家を活かした決定方法
11.4 市民参加のデザイン
11.5 ソーシャル・キャピタルを考える
11.6 行動変容の重要性——競争から協調へ

12章 これからの都市づくり
12.1 好きな都市,嫌いな都市
12.2 思考停止がもたらすこと
12.3 何のための制度か
12.4 次の進化に向けて

索引

谷口守 (著)
森北出版 (2014/10/21)、出典:出版社HP

よくわかる都市計画法 第二次改訂版

都市計画法の基本がわかる!

日本は現在、少子化・高齢化という問題に悩まされ、時代の転換期を迎えようとしています。このような社会経済情勢の変化に伴った的確な対応ができるような人材を育てるため、本書は都市計画法についてわかりやすくまとめています。これからの都市計画に関わる人に参考にしてほしい一冊です。

都市計画法制研究会 (編集)
ぎょうせい; 第二次改訂版 (2018/12/20)、出典:出版社HP

第二次改訂にあたって

平成24年8月に改訂版を刊行して6年余りが経過しました。この間に、都市計画法が度々改正され、例えば、「都市緑地法等の一部を改正する法律(平成29年法律第26号)」では、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護すべく、13種類目の用途地域として新たに「田園住居地域」が創設されました。都市計画法に、新たに用途地域が創設されたのは、四半世紀ぶりのこととなります。

また、「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(平成30年法律第22号)」では、都市に必要な機能・施設や地域住民の日常生活等に必要な身の回りの公共空間等を持続的に確保するための「都市施設等整備協定(第5章)」や「都市計画協力団体(第6章)」に係る制度が創設されました。都市計画法に、新たに章が追加されたのは、この改正がはじめてとなります。

今回の本書の改訂は、これらの都市計画の改正に関する情報の追加を中心としています。現行の都市計画法は、本年で制定50年、また、翌年には旧都市計画法の制定から100年を迎えるところであり、真に豊かな都市の実現に向け着実にその成果を上げておりますが、都市のビジョンを描く都市計画の役割は、ますますその重要性を増しており、都市計画行政の的確な理解と遂行がより強く要請される時代となっております。

本書は、こうした変化を、実務者、研究者、都市計画に関心を有している方々に対し、わかりやすく解説することを目指したものです。本書が読者の 皆様の都市計画に対する理解の一助となれば幸いです。

平成30年11月

はじめに

都市計画法は、わが国における都市計画の基本法であり、その起源は、明 治21年に東京の都市計画を図るために制定された東京市区改正条例、そしてその適用対象を拡大した大正8年の旧都市計画法にまで遡ります。この法律 は、年代が下るにつれて全国にその対象都市を広げ、戦後もしばらくは存続 しましたが、高度経済成長とともに都市への人口流入と無秩序な市街地の拡大が問題となり、昭和43年、それまでの旧都市計画法を廃して新しい都市計画の基本法を制定することとなりました。これが現在に至るまでわが国の都 市計画制度の基礎となっている都市計画法です。

現在、都市計画法の直接の適用対象である都市計画区域は、面積では国土の4分の1強の約10万平方キロメートルに過ぎませんが、区域内の人口は約1億2,000万人、実は日本の全人口の9割以上に達し、ほぼすべての国民生活に多大な影響を有しています。

現行の都市計画法は、本年で制定50年を迎えました。また、翌年には旧都市計画法の制定から100年を迎えます。この間、時代の変化とともに都市計 画法と関連する法制度は様々な変化を経験しています。高度成長期の多様できめ細かい都市整備の需要に応えるための地区計画制度の創設(昭和55年)や地方分権改革による権限移譲等の見直し(平成11年)、都市計画区域マスタープランの創設などを含む抜本改正(平成12年)、大規模集客施設の立地 規制や開発許可制度の見直し(平成18年)といった様々な改正が行われてきました。

わが国は現在、人口減少・超高齢化という時代の転換期を迎え、都市を取り巻く社会経済情勢は大きく変化しつつあり、地域の活力を維持し、誰もが安心して暮らすことができるまちをつくることはより一層重要な課題となっています。都市は、「職・住・遊・学」の機能を備えた人々の暮らしの中心となる場所であり、社会経済情勢の変化への的確な対応が求められています。

本書は、都市計画法がこうした大きな転換点を迎え、社会の様々な角度か ら多大な期待が寄せられている時期にあって、その実務に携わり、研究に励 み、あるいは未来の仕事として興味関心を有している人々に対し、現在の都 市計画法のあらましをわかりやすいよう解説したものです。本書が、都市計画の新しい時代の幕を開く有志の人々にとって、その知識の礎として活用されれば幸いです。

平成30年11月

都市計画法制研究会 (編集)
ぎょうせい; 第二次改訂版 (2018/12/20)、出典:出版社HP

目次

凡例
最近の都市計画法改正の概要

第1章 都市計画法の位置づけと概要
1 都市計画法の位置づけと趣旨
(1) 都市計画法の位置づけ
(2) 都市計画の基本理念
(3) 国、地方公共団体及び住民の責務

2 都市計画が定めるもの

3 都市計画法の規制を受ける土地
(1) 都市計画区域
(2)準都市計画区域

4 都市計画に関する基礎調査

第2章 都市計画の内容
1 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
(1) 都市計画区域マスタープランとは
(2) 都市計画区域マスタープランの記載事項

2 区域区分
(1) 区域区分制度を設けた趣旨
(2) 区域区分を行った場合に生ずる法的効果
(3) 区域区分と開発許可の関係
(4) 区域区分と都市計画区域との関係
(5) すでに市街地を形成している区域
(6)おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
(7)昭和42年宅地審議会第6次答申
(8) 農林漁業との調整
(9) 農業振興地域との関係

3 都市再開発方針等
(1) 都市再開発方針等
(2) 都市再開発方針等をそれぞれ独立させる理由

4 地域地区
(1)地域地区とは
(2)地域地区の規制の概要
(3) 地域地区内の制限に関する法律

5 用途地域
(1)用途地域における規制
(2)用途地域における制限の目的、内容、根拠

6 特別用途地区
7 特定用途制限地域

8 特例容積率適用地区
(1)特例容積率適用地区制度とは
(2)特例容積率適用地区制度における敷地間の容積の移転
(3)特例容積率適用地区の特徴

9 高層住居誘導地区
(1) 高層住居誘導地区の規制内容
(2) 高層住居誘導地区において定める建蔽率の最高限度と敷地面積の最低限度

10 高度地区
11 高度利用地区
12 特定街区

13 都市再生特別地区
(1) 都市再生特別地区とは
(2) 都市再生特別地区に定める事項
(3) 都市再生特別地区内の建築制限

14 居住調整地域
(1) 居住調整地域とは
(2) 居住調整地域内の開発行為等の規制

15 特定用途誘導地区
(1) 特定用途誘導地区とは
(2)特定用途誘導地区に定める事項
(3) 特定用途誘導地区内の建築制限

16 防火地域及び準防火地域
17 景観地区
18 風致地区
19 駐車場整備地区

20 臨港地区
(1)法第8条の臨港地区と港湾法第38条の臨港地区との関系
(2) 臨港地区の規制内容

21 歴史的風土特別保存地区等

22 特別緑地保全地区、緑地保全地域及び緑化地域
(1) 特別緑地保全地区
(2)緑地保全地域
(3) 緑化地域

23 生産緑地地区の規制内容等
24 流通業務地区
25 伝統的建造物群保存地区
26 航空機騒音障害防止地区等

27 促進区域
(1)促進区域とは
(2)促進区域の実現
(3)促進区域内の制限に関する法律

28 遊休土地転換利用促進地区
(1) 遊休土地転換利用促進地区制度の創設
(2) 遊休土地の認定基準

29 被災市街地復興推進地域
(1)被災市街地復興推進地域を都市計画に定めるための要件
(2) 被災市街地復興推進地域の効果
(3)被災市街地復興推進地域内の制限に関する法律

30 都市施設
(1) 都市施設と都市計画施設
(2) 法第11条における都市施設の列挙の趣旨
(3) その他の交通施設の例示
(4)当該都市計画区域外における都市施設
(5)自動車専用道路、幹線街路、区画街路又は特殊街路

(6) トラックターミナル等
(7) 街区公園等
(8) 立体都市計画
(9) 流通業務団地
(10) 一団地の津波防災拠点市街地形成施設
(11) 一団地の復興拠点市街地形成施設の都市計画
(12) 予定区域制度の対象となる3つの都市施設

31 市街地開発事業
(1)市街地開発事業
(2)市街地開発事業等予定区域
(3)他の都市計画区域等における市街地開発事業
(4)2以上の都市計画区域にまたがる市街地開発事業
(5) 公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項

(6)新住宅市街地開発事業に関する都市計画の内容
(7) 工業団地造成事業に関する都市計画の内容
(8) 市街地再開発事業に関する都市計画の内容
(9) 予定区域制度の対象となる3つの市街地開発事業
(10) 事業完了後における市街地開発事業の都市計画

32 市街地開発事業等予定区域
(1)市街地開発事業等予定区域
(2) 市街地開発事業等予定区域の種類
(3)市街地開発事業等予定区域に関する都市計画の効果
(4) 市街地開発事業又は都市施設に関する都市計画に定める事項

33 地区計画
(1)地区計画等
(2) 地区計画の趣旨
(3) 地区計画等の規制内容
(4) 防災街区整備地区計画の趣旨
(5)歴史的風致維持向上地区計画の趣旨

(6) 沿道地区計画の趣旨
(7) 集落地区計画の趣旨
(8) 地区計画の策定される土地の区域
(9) 地区計画等の計画事項
(10) 建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限

(11) 地区整備計画等の計画事項
(12) 再開発等促進区・沿道再開発等促進区
(13) 再開発等促進区・沿道再開発等促進区が定められる土地の区域
(14) 開発整備促進区を定める地区計画制度
(15) 開発整備促進区の効果

(16)開発整備促進区を定める地区計画を定めることができいる区域
(17) 地区施設と都市計画施設の関係
(18) 1号施設
(19) 特定建築物地区整備計画
(20) 地区整備計画を定めなくてもよい場合

34 誘導容積型地区計画等
(1) 誘導容積型地区計画
(2) 容積適正配分型地区計画
(3) 高度利用型地区計画
(4)用途別容積型地区計画
(5) 街並み誘導型地区計画
(6) 誘導容積型地区計画等の適用関係
(7) 立体道路制度

35 都市計画基準
(1) 市街化調整区域内における地域地区
(2) 市街化調整区域内における都市施設.
(3) 市街化調整区域内等における市街地開発事業

36 都市計画の図書
(1)総括図
(2)計画図
(3)計画書

第3章 都市計画の決定及び変更
1 都市計画決定権者
(1) 都道府県又は市町村とした趣旨
(2)都道府県及び市町村が定める都市計画の範囲等
(3) 都市計画と行政争訟
(4) 都市計画の決定手続

2 都市計画の案の作成
(1)都道府県が定める都市計画の案の作成
(2)市町村が申し出た都市計画の案
(3)都道府県の関与

3 公聴会等の開催
(1)公聴会の開催等が必要とされる趣旨
(2)公聴会の開催手続
(3)住民の意見を反映させるための措置
(4) 地区計画等の案の作成
(5) 地区計画等に関する住民又は利害関係人からの申し出を認める趣旨

4 都市計画の案の縦覧等
(1) 都市計画の案の縦覧等の目的
(2) 都市計画の案の理由書
(3)利害関係人
(4) 縦覧場所の範囲
(5) 公告・縦覧をすべき「関係市町村」の範囲
(6) 特定街区の都市計画決定
(7) 遊休土地転換利用促進地区の都市計画決定
(8)施行予定者を定める都市計画の案
(9) 条例との関係を明示する趣旨

5 都道府県の都市計画の決定
(1) 関係市町村の範囲
(2) 都道府県都市計画審議会の議を経る趣旨
(3) 国土交通大臣同意の趣旨

6 市町村の都市計画に関する基本的な方針
(1)市町村の都市計画に関する基本的な方針を設けた趣旨
(2)市町村の都市計画に関する基本的な方針の内容
(3)都市計画区域の整備、開発及び保全に関する方針との関係
(4)具体の都市計画との関係
(5) 基本的な方針を定めるための手続

7 市町村の都市計画決定
(1)都道府県知事の協議又は同意の趣旨
(2) 資料の提出、意見の開陳等の協力

8 都市計画の変更
(1) 都市計画の変更
(2) 都市計画の変更の主体
(3) 都市計画の変更時における公聴会の開催等

9 都市計画の提案制度
(1) 都市計画の提案制度の趣旨
(2) 提案をする際の要件
(3) 提案の対象となる都市計画
(4) 都市再生特別措置法等による都市計画の提案制度との違い
(5) 都市計画の決定等の提案の処理に係る期間
(6) 都市計画の決定等の提案の主体

10 国土交通大臣の定める都市計画
11 他の行政機関等との調整等
12 国土交通大臣の指示等

13 調査のための立入り等
(1) 都市計画事業の準備等のための調査についての法第25条の適用
(2) 都道府県の決定に係る都市計画についての市町村の立 ” 入り等

第4章 都市計画制限等
1 開発行為等の規制
(1)開発行為
(2) 開発行為の許可
(3) 許可申請の手続
(4)設計者の資格
(5)公共施設の管理者の同意等

(6) 技術基準
(7)立地基準
(8)開発行為の変更の許可
(9) 工事完了の検査
(10) 建築制限等

(11) 開発行為等により設置された公共施設の管理
(12) 公共施設の用に供する土地
(13) 建築物の建蔽率等の指定
(14) 開発許可を受けた土地における建築等の制限
(15)開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制

(16)許可に基づく地位
(17) 開発登録簿
(18) 不服申立て

2 田園住居地域内における建築等の規制
(1) 法第52条に定める建築等の制限
(2) 建築等の規制の目的
(3)許可制度の運用

3 市街地開発事業等予定区域の区域内における建築等の規制
(1)法第52条の2に定める建築等の制限
(2) 土地建物等の先買い等
(3) 土地の買取請求
(4)損失の補償

4 都市計画施設等の区域内における建築の規制
(1) 建築の許可
(2)許可の基準

5 許可の基準の特例等
(1) 都市計画制限を特定の場合に限って強化する趣旨
(2) 土地の買取り
(3) 土地の先買い等

6 風致地区内における建築等の規制

7 地区計画等の区域内における建築等の規制
(1) 建築等の届出等
(2)他の法律による建築等の規制

8 遊休土地転換利用促進地区内における土地利用に関する措置等
(1) 土地所有者等の責務
(2) 都市計画決定から2年経過後に遊休土地の通知をする理由
(3) 市町村長に届け出なければならない利用又は処分に関する計画
(4) 市町村長が勧告する計画
(5)被勧告者の報告
(6) 買取りの強制力
(7) 買取り価格

第5章 都市計画事業
1 都市計画事業の認可等
(1) 都市計画事業の施行者の種類
(2)国の機関
(3) 特許事業者の認可の方針
(4) 都市施設についての都市計画と都市計画事業の関係
(5)市街地開発事業と都市計画事業の関係

(6)都市計画事業の認可後の手続
(7)第7項の趣旨
(8) 都市計画施設の区域外で事業を施行する場合
(9)第60条の2の趣旨
(10)第60条の3の趣旨

(11) 行政機関の免許、許可、認可等
(12) 都市計画事業の認可等の効果
(13)現に施行中の都市計画事業の施行区域の拡大
(14)施行者の変更
(15) 都市計画事業の名称の変更

2 都市計画事業の施行
(1) 都市計画事業の施行の障害となるおそれがある
(2) 工作物の建築等についての許可があった場合の損失の補償
(3)他の都道府県の区域内での都市計画事業における許可権者
(4)許可基準
(5)第66条の趣旨

(6)第67条の趣旨
(7)第68条の趣旨
(8)第69条の趣旨
(9)都市計画事業に関する土地収用の手続
(10)第70条の趣旨
(11) 都市計画事業の認可等の土地収用法上の効果
(12) 手続開始の手続

第6章 都市施設等整備協定
(1) 都市施設等整備協定の趣旨
(2) 都市施設等の整備を行うと見込まれる者
(3) 都市施設等整備協定の記載事項
(4) 法第75条の3の趣旨
(5)法第75条の4の趣旨

第7章 都市計画協力団体
(1) 都市計画協力団体の趣旨
(2) 都市計画協力団体の対象となる者
(3) 都市計画協力団体の業務
(4) 改善命令等
(5) 都市計画協力団体と都市再生推進法人との違い

第8章 社会資本整備審議会
(1) 社会資本整備審議会の職務
(2) 都道府県都市計画審議会の職務
(3)市町村都市計画審議会の設置
(4) 市町村都市計画審議会の権限
(5)開発審査会の職務

第9章 その他
(1)第80条の趣旨
(2)第81条の趣旨
(3)指定都市に移譲される都道府県の都市計画決定権限の範囲
(4)指定都市による都市計画の決定手続
(5) 指定都市等が処理し、又は指定都市等の長が行う事務

都市計画法制研究会 (編集)
ぎょうせい; 第二次改訂版 (2018/12/20)、出典:出版社HP

都市計画学: 変化に対応するプランニング

何年も使える都市計画の教科書

本書は、成長時代の都市計画を学んだ著者たちが試行錯誤中の低成長時代の都市計画をまとめたものです。変化の時代を体験した著者だからこそ、広い視野を持って今後の展望について解説しています。どのように都市計画学が変化をしていったのか知りたい人はぜひ本書を読んでください。

中島 直人 (著), 村山 顕人 (著), 髙見 淳史 (著), 樋野 公宏 (著), 寺田 徹 (著), 廣井 悠 (著), 瀬田 史彦 (著)
学芸出版社 (2018/9/20)、出典:出版社HP

まえがき

本書の著者7人のうち6人(中島・村山・高見・樋野・廣井・瀬田)は、1970年代に生まれ、1990年代から2000年代前半に東京大学工学部都市工学 科/大学院工学系研究科都市工学専攻(以下、「都市工」)の都市計画コース に学生として在籍し、その後、他の大学や研究機関を経て、2010年代になって都市工で教鞭を取るようになった中堅の教員である。寺田は、もう少し若く経歴も異なるが、他の著者が学生の頃には都市工になかったランドスケープ系の専門家で、本書の準備を始めた頃、都市工に特任講師として在籍していた。

都市計画の新しい教科書をつくってほしいというリクエストは、これまで も多方面から頂いており、既に体系的に整理された都市計画の教科書が多く 存在する中、何か特徴的な教科書をつくらなければという気持ちはあったが、 都市工に着任して担当することになった自分たちの講義や演習を準備・実施 するので精一杯だった。

なぜ自分たちの授業だけで大変かと言うと、都市工は、建築系学科や土木系学科の都市計画とは異なり、都市計画コースだけでも、研究室・研究グループ毎の系列を持った講義が多数あり、一つひとつの1日は、講義の内容が狭く深いからである。また、敷地・地区・都市・広域の各スケールの空間計画・デザインを扱う演習は、学生との対話が重要なので、多くの時間を要する。

それよりも大きな問題は、自分たちは基本的に成長時代の都市計画を習ったにもかかわらず、自分たちが教鞭をとる頃までには社会経済状況が大きく変わっており、試行錯誤中の低成長時代・成熟時代の都市計画をも学生に教 えなければならないことである。そして、大げさに言えば、「都市計画学」を 成長時代・低成長時代・成熟時代という変化に対応するプランニングの学問 として再構築する必要があることである。

本書は、現在の都市工の研究室・研究グループや中堅教員の構成に基づき、シンプルに「1章 土地利用と施設配置」「2章 都市交通」「3章 住環境」「4章 都市デザイン」「5章 都市緑地」「6章 都市防災」「7章 広域計画」とし、これに都市工の教育の要である演習の内容に関連した「8章 計画策定 技法」「9章 職能論」を加えた。「序章」は1章から7章までの内容を時代区分によって体系的に整理したものである。

企画の段階では、例えば、「土地利用と交通を統合したプランニング」など従来の分野を融合した内容を共著で執筆する、「低炭素社会・脱炭素社会」という枠組みの下で各分野の内容を関連づけながら執筆する、分野融合的な「地区の計画とデザイン」の章をつくるなどのアイディアもあったが、教科書としての網羅性を維持しながら分野を大きく再構成することは無謀であることが分かった。

従来の縦割りから何ら変わっていないとの批判を受けるかも知れないが、各執筆者は、現在の都市を取り巻く環境を幅広い視野で捉えた上で、それぞれの分野を核に分野融合を図ろうとしているし、都市計画の入門書としては、これまでに確立された分野の構成を尊重する方がむしろ良いとも考えた。

執筆にあたり、自分の研究室・研究グループが取り扱う講義の入門的内容を体系的に整理することが求められた。しかも、成長時代から低成長・成熟時代への接続、今後の展望についても考える必要があった。「一体自分たち は何を学生に教えているのだろう。これで良いのか」と落ち込み、執筆作業 が長期に渡ってストップすることもあった。

学芸出版社の井口夏実さんの後 押しもあって、一応、教科書としての体裁は何とか整えることができたが、正直、これで良かったのかとの不安も残る。時代の大きな転換期に学生から教員になってしまった1970年代以降生まれの都市計画専門家が試行錯誤しながら今の学生に教えている内容が本書にまとめられている。10年後にはもっとまともな切り口の「都市計画学」ができると良いが、そのような学の発展の足がかりとして、思い切って、本書を世に出すこととした。

2018年8月
著者一同

目次

まえがき
カラー口絵

序章 時代認識 都市計画はどこから来て、どこに向かっているのか
1 なぜ、時代認識なのか?
2 「「つくる都市」から「できる都市」への転換
3 「ともにいとなむ都市」の時代へ

1章 土地利用と施設配置 都市の構造をつくり、都市の変容をマネジメントする
1 「都市を構成する要素と都市計画の基本的枠組み
都市の構成要素/「構想 – 計画 – 実現手段」という捉え方

2 都市計画図 土地利用と施設配置の計画を示す図
事例1:名古屋市(日本)/事例2:デトロイト市(米国)/事例3:ポートランド都心部(米国)

3 なぜ土地利用や施設配置の計画が必要なのか
都市計画法の目的と理念/土地利用の「自然性」と「社会性」/建築規制から施設配置・土地利用計画へ

4 日本の土地利用・施設配置計画の歴史
都市の骨格となる施設をつくる/市街地の拡大・拡散を抑えながら市街地を更新する/都市再生と都市構造再編を進める

5 日本における現行の土地利用・施設配置計画制度
日本の都市計画制度の枠組み/都市計画制度の中心を担う土地利用計画/土地利用計画の構成/都市計画事業/都市計画の手 続きと財源

6 マスタープランの策定を通じた都市構造の再構築とマネジメント
マスタープランの都市計画制度への導入/低成長時代のマスタープランの事例/三重県都市計画方針(2017 年策定)/三重県 北勢圏域マスタープラン(2018年策定)/鈴鹿都市計画区域マスタープラン(2012年策定)/鈴鹿市都市マスタープラン (2016年策定)

7 目指す都市の構造に関する論点
「コンパクトシティ」や「集約型都市構造」の流行/「コンパクトシティ」と「間にある都市」

8 これからの土地利用計画:地区スケールの都市再生とそれを編集する都市のプランニング

2章 都市交通 都市の機能と暮らしを支える
1 都市交通の計画とは
都市における交通の基本的な捉え方/都市交通計画の施策ツールと目標

2 「トラディショナルな目標と計画
同吸収長期からの主要な目標と供給側の交通施管 /都市道路網の計画/公共交通の計画/都市父通計画の立案のための調査・分析手法

3 需要追随型アプローチからのパラダイムシフト 都市交通施策のパラダイムシフト/交通需要マネジメント/長期的な TDM 他東と交通需要マネジメント/長期的な TDM 施策としての都市計画

4 都市交通計画のこれから
低灰素社会、超少子高齢・人口減少社会における課題と目標/都市交通のユニバーサルデザイン/コンパクトシティ・プラス・ネットワークを支える公共交通/新しい交通手段と交通サービス/交通まちづくり

3章 住環境 都市居住の礎を築く
1 住宅政策と人々の住まい
住宅の大量供給と「量から質」への転換/ストック重視の住宅政策へ/多様化する住まい方

2 住環境の理念とマネジメント
住環境の理念/防犯性/買い物の利便性/ウォーカビリティ/住環境マネジメント

3 超高齢化・人口減少時代の住環境
郊外ニュータウンの衰退/空き家問題/高齢者の安定居住/高齢者の地域参加

4章 都市デザイン 魅力的な都市空間をつくる
1 都市デザインとは何か?

2 都市デザイン思潮の歴史的展開
源流としてのシビックアートとモダニズム/アーバンデザインの誕生と都市デザイン論の展開/公共政策としてのアーバンデザイン/現代の都市デザインへ

3 関係性のデザインとしての都市デザイン
空間の関係性/時間の関係性/主体の関係性

4 近年の都市デザインの課題と動向
景観の創造的コントロール/公共空間の再編成とリノベーション/アーバンデザインセンターの展開

5章 都市緑地 都市と自然を接続する
1 都市・自然・ランドスケープ

2 都市緑地計画の展開
①公園からグリーンベルトへ (1870 – 1940 年代)/②市街地の拡大と緑地保全(1950 – 1970年代)/③環境保全・グローバル化と緑地(1970-1990年代)

3 都市緑地計画の現在とこれから
①人間と緑地−マネジメントの時代へ(2000 年代 – )/②これからの都市緑地計画

6章 都市防災 都市災害を軽減し、安全で快適な都市を創造する
1 都市防災の概念整理
都市防災の定義/都市防災を計画する基本的アプローチ/都市防災の三つの特徴/都市防災の計画体系と方法

2 都市防災の文化と思想
江戸の大火対策/基盤整備としての都市防災/相次ぐ風水害と都市不燃化の希求/地震火災対策の進展/建物の耐震化と地域 防災/これからの都市防災–ハードとソフトの連携

3 都市防災の課題対応
建物倒壊/市街地火災/避難行動/帰宅困難者対策/地下街の防災対策

4 都市防災の将来ビジョン
都市防災マネジメント/複合災害リスクへの対処/巨大災害リスクと大都市防災/都市の復興とレジリエンス

7章 広域計画 拡大・変化する都市圏の一体的な発展のために
1 広域計画の基本概念
広域計画の意義/広域計画の役割・機能/広域計画の要素と構成

2 広域計画の歴史と変遷
広域計画の歴史を学ぶ意義/戦前までの広域計画/高度成長期の広域計画/安定成長期の広域計画/低成長・成熟期の広域計

3 広域計画の成果と課題
広域計画の評価の難しさ/国土計画と人口動態/広域計画の現代的課題

8章 計画策定技法 都市計画はどのような方法や技術に支えられているのか
1 計画策定技法を捉える視点
計画策定への期待/計画策定の三つの側面とそれを支える技法/計画策定技法の研究・開発の経緯

2 事例に見る成熟都市の計画策定技法
1980年代の米国諸都市のダウンタウン・プラン策定/ポートランド・セントラル・シティ・プラン (1988年)/ダウンタウ ン・シアトル土地利用・交通計画(1985年)

3 米国におけるプランニングの定義とプランナーに求められる技師
プランニングの定義とプランナー/プランナーに求められる技術/都市プランナーに求められる技術に関する美歌

4 計画策定技法の日本の都市計画への適用
日本の都市マスタープランの計画策定技法/克服すべき日本の計画策定の現実

9章 職能論 都市計画マインドを育む
1 都市計画家という職業
国と自治体の都市計画職/民間の都市計画職

2 都市計画家を育成する教育
大学・大学院での都市計画の専門教育/マルチスケールの都市工学演習/社会人向けの大学・大学院/さまざまな都市計画の 学びの場

3 先人たちにみる都市計画への志
草創期の都市計画技師たちの志/民間都市計画家のパイオニアたちの志/都市計画家に必要なものは何か

10章 ブックガイド 都市計画を学ぶための72冊

索引

中島 直人 (著), 村山 顕人 (著), 髙見 淳史 (著), 樋野 公宏 (著), 寺田 徹 (著), 廣井 悠 (著), 瀬田 史彦 (著)
学芸出版社 (2018/9/20)、出典:出版社HP

序章 時代認識——都市計画はどこから来て、どこに向かっているのか

中島直人

1 なぜ、時代認識なのか?

「都市計画は単なる計画では意味がない、単なる青写真では正に絵に描いた餅である。都市計画の実施は、その本質からして通常長年月を要するのは当然であるが、それだけに自分で樹てた計画の実現した姿を自分の目で確かめることが、City Planner の秘かな願望である。いわんや自分で発想し、自分で樹てた計画が、自分の在職 中に次から次へと実現できたということは、City Planner である私にとってはこの上もない歓びである。こんなことは、いつの世でも誰でもできるということではない。たまたま私が、日本の歴史が、そして日本の都 市の歴史が急速に転回した35年の間に、それぞれのポ ストでそれぞれの任務に巡りあわせたに過ぎないが、この意味において、私は City Plannerとして誠に幸運であったといわざるを得ない」
(山田正男(1973) 『時の流れ都市の流れ』*)

都市計画が対象とする都市をとりまく状況は、時代によって変化していく。政治、経済、社会、科学・技術、環境など、いずれの分野においても、10年ひと昔といってもよいような速さで、時代の相は移り変わっていく。都市の実際の姿はもちろん、そこに見出される課題、その前提にある「望ましい都市」に関する価値観も、時代 による遷移の中にある。

都市計画が、都市の現実と都市に対する価値観との相互作用の中からかたちつくられるものだとすれば、都市計画を学ぶ、あるいは都市計画を 学術的に議論するためには、まずは時代の変化を捉える歴史観、これからの都市のありようを展望していくための時代認識が必要となる。一方で、変化だけでなく、持続や継承、蓄積に着目することで見えてくるものがある。

というのも、現実の都市 も都市に関する価値観も歴史的な生成物だからである。 過去の都市の姿を前提として、現在の都市がある。これまでの都市に対する価値観の蓄積の先に、現在の都市に 対する価値観がある。未来も同様である。現在の都市計画も、都市計画自体の経験の積み重ねがあって初めて存 在している。都市計画を理解するための最も素直なアプーチは、都市計画の来歴を理解することである。

つまり、都市計画はどこから来て、どこへ向かっているのかについての考えを整理し、現代という時代に対する共通の認識を探ることから、この都市計画学を始めたい。

2 「つくる都市」から「できる都市」への転換

わが国の都市計画の起点は、法制度の整備を重視すれば、都市計画法(旧法)が制定された1919年となる。欧州を中心とした第一次世界大戦の勃発に伴う大戦景気の 中での重化学工業の進展を背景として、東京や大阪、名古屋といった大都市への人口集中、結果としての郊外部 での無秩序な都市化が顕在化し始めた時期であった。

1919年に制定された旧法は都市計画を「交通、衛生、保安、防空、経済等ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ福利ヲ増進スル為ノ重要施設ノ計画」と定義し、都市計画事業を実施する都市計画区域の設定、道路や公園といった都市施設、土地区画整理事業などを規定した。

建築物の用途や高さを規制する地域地区は、同時に制定された市街地建築物法で規定されることになった。この旧 法を軸とした都市計画は、「重要施設ノ計画」という定義に端的に示されているとおり、都市の近代化を目指して、道路網をはじめとする都市施設を計画的に建設していくというものであった。旧城下町を初めとして近世以来の 都市基盤を継承していた各地の都市の中心部や、まさに 都市化の波にさらわれる前夜にあった周辺農村部に、近 代都市の基盤としての都市施設が建設されていった。

旧法は、第二次世界大戦後の憲法改正を中心とした社会制度改革期においても、大幅に改正されることはなかった。しかし、高度経済成長を背景として、戦前をはるかに凌駕する急激な都市人口の増加によって都市問題 の深刻度が次第に増していく中、郊外のスプロール化の 抑止、既成市街地の更新等の必要性が強く認識されることになった。

そして、1968年に都市計画法は全面的に改定された。都市計画法(新法)では、都市計画の基本理 念として「農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で 文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的 な利用が図られるべきこと」を謳った。

旧法から引き継いだ都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分し、後者での開発事業を抑制する線引き制度の設定や従来の建物の高さ規制に替えて、開発量=都市活動量を直接反映する容積率による形態規制への移行などがこの全面改訂で実現した。新法を軸とした都市計画は民間の旺盛な建設行為をコントロールし、合理的な土地利用を目指すものであった。

そして建設局長(1967 – 70)として辣腕を振るい、その権力の集中 ぶりから時に「山田天皇」とも呼ばれた都市計画家の山田正男 (1913 – 1995)は、都市は「つくる」ものではなくなり、「できる」ものになったという時代認識を示した。高度経済成長にともなう民間企業の活発な投資を背得として、都市空間形成、開発の主導力が官から民へと移行していることを感じ取った。そして、道路や公園などの公共施設計画に傾注していた従来の「つくる都市」での都市計画は、民間建設という需要=中身を調整し、その需要に対応する受け皿として公共施設を供給していくという、「できる都市」に対応したコントロール型の都市計 画へ転換していくべきだと説いたのである。

COLUMN 都市計画の時代区分

都市計画はどこから来て、どこへ向かっているのか、その問いに直接向き合う研究分野は都市計画史である。都市計画の誕生から現在までの歴史的な展開を記述した通史は都市計画史研究の骨格をなすものであるが、わが国では都市計画史の通史と呼べる書籍は、石田頼房『日本近現代都市計画の展開1868-2003』 *2がほぼ唯一である。

石田はこの書籍において、日本の都市計画の展開を計画制度の確立への道程として捉え、 1)欧風化都市改造期(1868 – 1887)、2)市区改正期 (1880-1918)、3)都市計画制度確立期(1910-1935)、4) 戦時下都市計画期(1931-1945)、5)戦後復興都市計画期(1945-1954)、6)基本法不在・都市開発期(19551968)、7)新基本法期(1868-1985)、8)反計画・バブル経済期(1982-1992)、9)住民主体・地方分権期(1992-) という九つの時代に画期して論じている。

本書では、「つくる都市」、「できる都市」、「ともにいとなむ都市」というかたちで都市計画の歴史的展開を大掴みしてみるが、おおまかにいえば、「つくる都市」は石田の時代区分では1)~5)、「できる都市」は6)~9)、そして、「ともにいとなむ都市」は石田の通史(- 2003)が対象とした時代以降に対応している。

3 「ともにいとなむ都市」の時代へ

山田の「つくる都市」から「できる都市」へという見 立ては、確かにわが国の都市計画の来し方を説明してくれる。そして、現在もコントロール型の「できる都市」の都市計画は健在である。むしろ、経済のグローバル化 の進行を背景とした、2001年の日本版 REIT(建築の金 融商品化)や翌2002年の都市再生特別措置法に基づく都 市再生特区の導入(大幅な容積率緩和が可能)により、一つの極点に達しているといってもよい。

しかし一方で、こうした「できる都市」の都市計画が必要とされる地域 は、かなり限定的になっていることに注意したい。すでに人口減少、都市縮退の局面に入ったわが国では、都市 に対する積極的、前向きな民間投資、開発需要が全国に 満遍なく存在している状況ではない。大都市圏でも都心を離れた周辺商業・業務地や郊外部、そして地方中小都 市では、もはや民間の開発需要を前提に受け皿を用意する「できる都市」の発想は有効ではない。

基本的には新しい都市開発や新たな建築物の建設が自ずと次々と生じる状況ではない、つまり「できない都市」の時代に突入している地域が多い。都市拡張のフェーズから都市縮退のフェーズに移行しているのである。

なお、「つくる都市」にせよ、「できる都市」にせよ、その背後には近代化、あるいはそれを支える近代的価値への素朴とも言える信頼があった。技術の進展が都市の発展をもたらすというもので、その際には過去との切 断、変化が最も望まれるものであった。そして、そうした技術を独占的に扱うのは専門家であるという合意もあった。

しかし、1960年代には全国規模での工業開発の結果として公害問題が生じ、生活環境を脅かす事態が到来していたし、1970年代には「成長の限界」*3が指摘され、科学技術が包含する普遍性や専門家のありかたに対 する疑義も呈されるようになった。都市計画においても合理性の再検討が行われ、抵抗的な市民運動や市民参加 の取り組みが登場するようになった。

そうした流れが次第に浸透していき、都市や環境を巡る価値観も大きく更新されてきた。とりわけ、環境、経 済、社会のいずれの側面においても持続可能性が重視されるようになっている。地球環境問題に対応して、スマートなエネルギー、低炭素化が都市開発の主要なテーマとなり、全地球的な都市化にともなう災害リスクの増加を背景として、わが国ではとりわけ東日本大震災を経て、都市の回復力、復元力という意味でのレジリエンスが基本的な都市の要件として認識されるようになった。

都市の交通手段という面では、もはや個々の自家用車一 辺倒ではなく、公共交通、そして何よりも歩行者のための、歩ける都市のための環境整備がごく当たり前に目指 されるようになった。この未来志向の回帰は、超高齢化 社会において都市環境と健康との(ポジティブな)関係の構築がますます重視されてきていることとも関係している。

一方で、都市づくりの主体は、国や自治体、あるいはこれまで都市開発を主導してきた大手デベロッパーだけ でなく、住民・市民組織やNPO、多様な規模の企業群や大学をはじめとする研究機関などがそれぞれの得意分野 を活かして地域に参入するようになった。それらの連携のありかたが公民連携、あるいは公民学連携という枠組みのもとで実践的に模索され、都市の空間や土地、施設の管理・運営に関するイノベーションが強く求められる ようになった。

新たな公共インフラの整備や容積率などの開発量規制 の緩和よりも、既存の公共インフラを公民連携の枠組みのもとで再編・再生させることで、サービス水準を維持、向上させていき、それを周辺の既存の民間建物ストック のリノベーションにつなげ、地域・都市の課題を解決していく、そうした地域・都市経営の感覚が都市計画を基礎づけるようになっている。

個々の都市開発プロジェクトも、単に高容積を探求することはリスクに過ぎず、むしろ質的にマネジメント可能な適正規模に収斂させていくことを前提とする。また、公民学連携といっても、行政や民間企業、大学研究室が単に寄り合うのではなく、地域共同体に根差した事業体を立ち上げ、新たな生活サービスの担い手として信頼を得ている。そもそも多くの自治体では市計画以前に都市財政の逼迫した状況があり、高度経済成長期に整備された公共施設と公共サービスの再編が求められている。

そして、各地で爆発的に増加している空き地であり、かつて市街地が蚕食状にスプロールしていったのとは異なり、既成市街地に散在的に穴が開き、スポンジ化していくその現象、動態の背後にある構造に介入する組立てと、個々の低未利用地を意味のある場いく手立てが模索されている。

以上のような状況に置かれている現代の都市計画を、山田の「つくる都市」「できる都市」という見立てを敷衍して表現するとすれば、「ともにいとなむ都市」における都市計画と呼ぶことができるのではないか。多様な主体の連携のもとで、従来的な建設でもコントロールでもなく、「いとなむ」という連続性のある時間軸を匂含した持続に価値を置く都市計画である。

とはいえ、「つくる都市」や「できる都市」の都市計画が必要とされる局面が失われてしまったわけではないし、都市計画という社会技術は「つくる都市」「できる都市」それぞれに対応するかたちで発展してきており、「ともにいとなあ 都市」の都市計画もその発展の経路と深く関係しながら かたちづくられようとしている(表1)。

以下、1章から7章にかけては、「つくる都市」「できる都市」、そして「ともにいとなむ都市」へという歴史観、時代認識を共通の緩やかな枠組みとして用いながら、都 市計画が対象とする各課題、都市計画学を構成する各分 野の歴史的展開と現代的展望について、それぞれ解説を加えていく。そして、8章で社会技術としての都市計画の技法的な側面を解説、展望したのち、9章において、再び都市計画の全体性、総合性に立ち戻り、都市計画の職能や教育について講じることにする。10章では、読者の方々の継続的な学探究の手引きとして、ブックガイドを提供する。

中島 直人 (著), 村山 顕人 (著), 髙見 淳史 (著), 樋野 公宏 (著), 寺田 徹 (著), 廣井 悠 (著), 瀬田 史彦 (著)
学芸出版社 (2018/9/20)、出典:出版社HP

図解入門 よくわかる最新都市計画の基本と仕組み

都市計画やまちづくりまで幅広く学べる入門書

高度経済成長期での人口増加と施設の増加に対する都市計画。1980年の都市計画法の改正による地域視点でのまちづくりの増加。21世紀での市民による地域主体のまちづくりの活動。本書は、このように変化を続ける都市計画やまちづくりを学ぶ学生や関心のある一般の方に向けた入門書です。

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP

はじめに

都市計画とは、旧来のとらえ方からすれば、全国で統一的な開発、土地利用規制のルールや誘導計画によって実施される都市づくりです。この意味から「都市計画」は、都市計画法、およびその関連法を根拠とした「法定都市計画」であり、都市計画行政制度の体系といえます。

戦後、高度経済成長期における急増する都市人口とそれによる住宅、道路をはじめ、各種の都市施設の拡大に対し、「都市計画」は、課題を残しつつも応えてきました。その後、ポスト高度経済成長の中で、都市における人々の生活や活動が複雑化、多様化するにしたがって転換点を迎えました。

1980(昭和55)年の都市計画法の改正では、全国一律、統一的な規制から、地区の状況に応じてメリハリをつける地区計画制度が導入されました。また、神戸市をはじめとする都市景観条例や、まちづくり条例の制定がされはじめ、地域の視点による「まちづくり」の傾向が出てきました。

電信電話公社、国有鉄道の民営化をはじとした公共事業への民間活力導入などとともに、国家主導、中央集権から地域主義の傾向も出始めました。世紀末に新たな世紀へ向けて出された展望では、かつて経験したことのない人口減少・超高齢化社会の課題が数多く取り上げられました。

一方、阪神淡路大震災後の復興まちづくりでは、行政だけではなく地域住民、あるいは一般市民が果たす役割が認識されました。今世紀に入ると、地域における市民の視点を重視し、ハードを主体とする都市計画から、より広範な領域を対象に含む、市民による地域主体の「まちづくり」の活動が一般化されてきました。

本書は、このような経過をたどり今も変化を続ける「都市計画」および「まちづくり」を学ぶ大学や工業高等専門学校の学生、あるいは都市計画、まちづくりに関心のある一般の方々を読者層に想定した入門書として執筆しました。

都市計画が経てきた流れから、本書は、「都市計画&まちづくり」として、法定都市計画に相当する部分を中心とする「第I部 都市計画の基本」と、まちづくりの新たな課題について述べる「第II部まちづくりの課題と取り組み」の2部構成としています。

都市計画の初学者にとって法定都市計画に相当する部分は、基本として押さえておく必要があります。これが「第I部 都市計画の基本」です。「第Ⅱ部 まちづくりの課題と取り組み」では、環境、防災、歴史、A I、情報化、市民参加など、都市にとっての新しい課題を扱っています。この「まちづくり」の部分には、変革期を迎える現社会において、従来の枠組みを超えて、変化して行く新しい傾向が含まれます。これは新型コロナウイルス(COVID-19)など未知のウイルスや細菌による感染症に対するまちづくりの備えにも通じます。

まちづくりにおけるそれぞれの課題の背後には、それらの施策決定のメカニズムに着目する必要があります。まちづくりに限らず公共的な施策の意思決定に共通する関係者間の課題です。情報オリエンテッドのまちづくりは、AI情報技術の進化で今後その方向性は予測しがたい面もありますが、社会的により望ましい施策の意思決定の可能性は、関係者の良識にかかっていることは確かです。

自動車から公共交通への転換、コンパクトなまちづくり、カーボンフリーのまちづくりなどから、地域住民の相互扶助による防災、地域の公園、緑道、ごみ収集場の清掃などの身近な活動まで、個人の利益と公共の利益のはざまにあって社会的に最良の選択には、協調を生み出す地域、関係者間の信頼性が鍵となります。競合ではなく協調によって全体として利益を得ることはゲーム理論でも説明されてきましたが、協調を促すための良識の醸成は、関係者の意識の変換なしには超えることができません。

防災まちづくりの面では、高潮、津波、地震、台風、豪雨などに対するハードの防災施設、あるいはソフトの仕組み、制度などは「その時」以外は本来の役割を果たしませんが、常に存在しつづけ、日々の人々の日常の場を構成する要系として大きく影響します。かつて青松白砂であった海辺の視界を延々と覆い尽くす10メートル超えの防波堤に置き変えることが、将来のために社会的に最良の選択であるかを含め、今後も「まちづくり」において議論の余地の残るところです。

以上のように、都市計画&まちづくりは、今後その領域を必然的に拡大せざるを得ない分野がいろいろと含まれると思われます。本書が、はじめて都市計画を学ぶ方々にとって、都市計画の基本についての情報提供と同時に、まちづくりの新たな課題について考えるきっかけとなれば、かつて大学学部生の都市計画入門科目を担当していた著者としては、望外の喜びです。

令和2年5月
五十畑 弘

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第I部 都市計画の基本
第1章 都市計画とは?
1-1 都市の意義と分類
コラム 古代ギリシャの都市国家 アテネ

1-2 都市の起源と歴史
コラム ケンブリッジ大学の木組み建物

1- 3 20世紀以後の都市計画思想の流れ
コラム初期の鉄道駅舎ヨーク駅(イギリス)

1- 4 わが国の近代以降の都市計画

第2章 都市計画法と関連法規
2-1 法定都市計画の概要
2-2 都市計画法
2-3 都市計画の関連法

第3章 都市計画の調査と立案
3-1 都市計画の立案の手順と項目
3-2 都市計画のための調査
3-3 都市計画区域の指定

第4章 土地利用
4-1 地域地区
4-2 用途地域の建築規制

第5章 都市交通と交通施設
5-1 都市交通の特質と課題
5-2 人の動きと都市交通
5-3 都市交通施設
5-4 都市交通計画
コラム ベルリン中央駅(ドイツ)

第6章 供給・処理施設
6-1 上水道
コラム チェスター配水塔(イギリス)
コラム 栗山配水塔 (千葉)
6-2 下水道
6-3 廃棄物処理

第7章 都市再開発
7-1 市街地開発
7-2 土地区画整理事業
7-3 市街地再開発事業
7-4 その他の市街地再開発事業
7-5 地区計画
コラム再開発されたビルバオ(スペイン)

第II部 まちづくりの課題と取り組み
第8章 環境とまちづくり
8-1 まちづくりにおける自然環境
8-2 地球環境

第9章 防災とまちづくり
9-1 近年の防災意識の変化
9-2 戦後の災害と防災への取り組み
9-3 都市防災対策の考え方
9-4 災害リスクごとの対策
9-5 防災まちづくりの課題と新たな傾向
コラムロンドンのテムズ川防潮堤

第10章 歴史とまちづくり
10-1 なぜまちづくりに歴史か?
10-2 まちづくりにかかわる文化財
コラム 山口県萩城下町
10-3 歴史まちづくり法の制定
10-4 歴史を活かしたまちなみの事例
コラム 世界遺産リドー運河(カナダ)
コラム 復元されたドレスデン聖母教会(ドイツ)

第11章 新たなまちのかたち
11-1 住みやすいまち
11-2 バリアフリーとユニバーサルデザイン
11-3 ウォーカブルタウン
11-4 コンパクトシティ
コラム リスボンの路面電車(ポルトガル)
11-5 スマートシティ
11-6 サイバーシティ

第12章 まちづくりと市民参加
12-1 法定都市計画からまちづくりへ
12-2 法定都市計画に組み込まれた市民参加
12-3 市民参加の手法
12-4 市民参加の新たな役割

参考文献
索引

五十畑 弘 (著)
秀和システム (2020/6/5)、出典:出版社HP

いちからわかる知識&雑学シリーズ 都市計画のキホン

都市計画やまちづくりに関心のある人におすすめ

本書は、法律学の観点から都市計画を定める仕組みと使い方についての全体像を理解するためのものです。実際に定められている都市計画やこれらか定める都市計画から学んでいく本が多いため、法律学の観点から学べる本は貴重です。都市計画の基本をいちから学びたい人、新しい観点から都市計画を学びたい人におすすめです。

佐々木晶二 (著)
ぎょうせい (2017/6/18)、出典:出版社HP

まえがき

この本は、「都市計画のキホン」をいちから学びたい人のための本です。本文でも説明しますが、都市計画は、国民に安全、健康で、文化 的な生活ができるようにつくり、改善していく仕組みです。

この都市計画の学び方としては、「実際に定められている都市計画、これから定める都市計画といった都市計画の定め方」から学んでいく方法と、「そもそも都市計画を定める仕組み」から学んでいく方法が あります。前者は、「都市工学」、後者は「法律学」の観点といってもいいと思います。

現在、大学生や地方公共団体の職員、都市計画コンサルタントなどの方々は、「都市工学」の観点から学ぶ機会が多いと思いますが、都市計画の車の両輪である「法律学」の観点から学ぶ、わかりやすい本が現在ありません。

この本では、「法律学」の立場から、都市計画を定める仕組みとその使い方について皆さんに全体像を理解していただくことも目的としています。また、現在、日本は、人口減少社会への突入という転換期にいることから、都市計画のうち、今後の都市政策、国土政策にとって役立つ部分に重点をおいて記述します。なお、都市計画の概要をざっくりお知りになりたい方は、応用編 を飛ばしてお読みください。

また、都市計画に関心をもった方は、この本に続いて、拙著『政策課題別都市計画制度徹底活用法』(ぎょうせい、2015)を読み 進めてみてください。

2017年5月
佐々木 晶二

目次

まえがき

第1部 都市計画の基礎知識

第1章 都市計画の基本的枠組み
Q1 都市計画とは、そもそもどういう意味ですか?
Q2 「都市計画」と「まちづくり」はどう違うのですか?」
Q3 日本の都市計画を理解する上で、最低限押さえておくべき法律は何ですか?
Q4 海外の都市計画で最低限知っておくべきことは何ですか?
Q5 都市計画理論で最低限知っておくべきことは何ですか?

第2章 都市計画の歴史
1 第二次世界大戦までの都市計画の時代
Q6 日本で最初の都市計画は何ですか?
Q7 日本で最初の都市計画法はいつ制定されたのですか?
Q8 関東大震災では都市計画はどのように役立ったのですか?

2 第二次世界大戦後の都市計画(現行都市計画法制定前まで) の時代
Q10 戦災復興事業の都市計画はどうでしたか?
Q11 今の都市計画法が制定されるまでの都市計画はどうだったのですか?

3 現行都市計画法の制定時の都市計画の時代
Q12 現行都市計画法の特徴は何ですか?
Q13 都市計画法に対応して整備された法律は何ですか?

4 地区計画の時代
Q14 地区計画とは何ですか?
Q15 地区計画はどのような形で、進化していったのですか?

5 規制緩和の時代
Q16 都市計画法に基づく規制緩和措置の最初は何ですか?
Q17 その後の都市計画法の規制緩和措置はどのようなものができたのですか?

6 コンパクトシティの時代
Q18 最初に郊外の開発を規制したのはいつですか?
Q19 立地適正化計画とは何ですか?

第3章 これだけは知っておきたい都市計画用語
Q20 「容積率」とはどういう意味ですか?
Q21 「前面道路の容積率制限」とはどういう意味ですか?
Q22 「建ぺい率」とはどういう意味ですか?
Q23 「絶対高さ制限」とはどういう意味ですか?
Q24 「斜線制限」とはどういう意味ですか?
Q25 「日影規制」とはどういう意味ですか?

Q26 「整開保」とはどういう意味ですか?
Q27 「都市マス」、「市町村マス」とはどういう意味ですか?
Q28 「立体道路」、「立体都市計画」とはどういう意味ですか?
Q29 「開発行為」とはどういう意味ですか?
Q30 「建築物」とはどういう意味ですか?また、「建築行為」とはどういう意味ですか?

Q31 「特定行政庁」とはどういう意味ですか?
Q32 「スプロール」とはどういう意味ですか?
Q33 「駅広」とは何ですか?
Q34 「連立」とは何ですか?
Q35 「開発利益」とは何ですか?

Q36 「受益者負担金」とは何ですか?
Q37 「社会資本整備総合交付金」とは何ですか?
Q38 「間接補助」とは何ですか?
Q39 「都市計画運用指針」とは何ですか?

第4章 都市計画図書の見方
Q40 都市計画の図書はどういう内容なのですか?
Q41 都市計画図書の入手方法はどうしたらいいですか?

第2部 ざっくり都市計画関連法
第1章 都市計画法
1-1 都市計画区域のポイント(基礎編)
Q42 都市計画区域とは何ですか?
Q43 都市計画区域は誰がどのようにして指定するのですか?
Q44 都市計画区域の効果は何ですか?

1-2 都市計画区域をもっと詳しく(応用編)
1-2-1 都市計画区域の指定要件
1-2-2 都市計画区域の変更にあたっての留意点

2-1 都市計画の内容のポイント(基礎編)
Q45 都市計画区域で定める都市計画とは何ですか?
Q46 線引きはどのような効果があるのですか?
Q47 用途地域とはどのような効果があるのですか?
Q48 地区計画とはどのような計画ですか?
Q49 道路や公園などの都市施設の計画とはどのような計画ですか?
Q50 土地区画整理事業、市街地再開発事業などの市街地開発事業の計画とはどのような計画ですか?

2-2 都市計画の内容をもっと詳しく(応用編)
2-2-1 マスタープラン
2-2-2 線引き(市街化区域と市街化調整区域の区分)と用途地域
2-2-3 特定街区、高度利用地区、再開発等促進区を定めた地区計画、機能更新型地区計画、都市再生特別地区など規制緩和措置
2-2-4 地区計画
2-2-5 都市施設
2-2-6 土地区画整理事業、市街地再開発事業の都市計画

3-1 都市計画の決定主体と手続きのポイント(基礎編)
Q51 都市計画は誰が決定するのですか?
Q52 都市計画を定める手続きはどうなっているのですか?
Q53 都市計画を定めるときに議会の議決は必要ですか?
Q54 都市計画を定めるときに土地所有者などの全員同意を
求める場合がありますか?

3-2 都市計画の決定主体と手続きをもっと詳しく(応用編)
3-2-1 都市計画の決定主体
3-2-2 都市計画の決定手続き

4 土地利用に関する都市計画の実現手法
Q55 土地利用に関する都市計画の実現手法とは何ですか?
Q56 建築確認とは何を確認するのですか?
Q57 開発許可は何を基準にして行うのですか?

5 都市施設に関する都市計画の実現手法
Q58 都市施設に関する都市計画の実現手法とは何ですか?
Q59 道路に関する都市計画の具体的な実現手法は何ですか?

6 市街地開発事業に関する都市計画の実現手法
Q60 土地区画整理事業の都市計画の実現手法は何ですか?
Q61 市街地再開発事業に関する都市計画の実現手法は何ですか?
Q62 土地区画整理事業や都市計画事業の財源にあてる都市計画税とは何ですか?

第2章 景観法
1 景観法のポイント
Q63 景観法の特徴は何ですか?
Q64 地方公共団体の定めた景観条例と景観法はどういう関係ですか?
Q65 景観行政は、従来から県レベルと市町村レベルの双方で行われていましたが、
景観法はどう整理しているのですか?

2 景観法の基本的枠組み
Q66 景観法の基本的枠組みはどうなっていますか?
Q67 景観計画とそれに伴う規制手法は何ですか?
Q68 景観地区と、それに伴う規制・誘導手法は何ですか?

第3章 都市再生特別措置法
1 都市再生特別措置法のポイント
Q69 都市再生特別措置法の特徴は何ですか?
Q70 都市再生が国全体の政策と位置づけられたのはなぜですか?
Q71 都市再生の政策のなかで、地方再生はどのように位置づけられているのですか?

2 都市再生特別措置法の基本的枠組の基本的枠組み
Q72 都市再生特別措置法の基本的枠組みはどのようになっているのですか?
Q73 都市再生緊急整備地域とはどのような地域ですか?
Q74 都市再生緊急整備地域における民間都市開発事業に対する政策金融などの支援措置はどうなっていますか?
Q75 都市再生整備計画とはどのような計画ですか?

Q76 都市再生整備計画に基づく交付金とはどういうものですか?
Q77 都市再生整備計画に基づく道路占用の特例、都市公園の特例とはどのようなものですか?
Q78 都市再生整備計画の区域内における民間都市開発事業に対する政策金融の支援措置はどのようなものですか?

第4章 被災市街地復興特別措置法
1 被災市街地復興特別措置法のポイント
Q79 被災市街地復興特別措置法の特徴は何ですか?
Q80 被災市街地復興特別措置法の制定経緯で際立った点は何ですか?

2 被災市街地復興特別措置法の基本的枠組み
Q81 被災市街地復興特別措置法の基本的枠組みはどのようになっていますか?
Q82 被災市街地復興推進地域とは何ですか?
Q83 被災市街地復興推進地域における土地区画整理事業の特例とは何ですか?
Q84 公営住宅の入居要件の特例とは何ですか?
Q85 UR都市機構の特例とは何ですか?

第5章 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律
1 密集法のポイント
Q86 密集法の特徴は何ですか?
Q87 密集市街地の現状はどうなっていますか?
Q88 密集市街地の整備について、国はどういう目標を掲げていますか?
Q89 密集市街地の整備の基本的な考え方はどういうものですか?

2 密集法の基本的枠組み
Q90 密集法の基本的枠組みはどのようになっていますか?
Q91 防災街区整備地区計画とはどのような計画なのですか?
Q92 防災街区整備事業とはどのような事業ですか?
Q93 防災都市施設の整備のための特例措置とはどのような内容ですか?
Q94 避難経路協定とは何ですか?

最後に
索引

佐々木晶二 (著)
ぎょうせい (2017/6/18)、出典:出版社HP