【最新】エコハウスについて学ぶためのおすすめ本 – 基本知識から建築事例まで

エコハウスとは?住みやすさは?

エコハウスとはエコロジーハウスの略で、環境にやさしい住宅のことを指します。できるだけ環境負荷のかからない建築素材を使っていたり、地域の気候や風土や立地条件に合わせたり、自然エネルギーを活用した生活を提供することができます。エコハウスの普及は、地球温暖化の対策の1つとしても挙げられます。ここでは、これからの環境問題改善や、実際に家を建てるときの設計にも役立つエコハウスについて学ぶのにおすすめの本をご紹介します。

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出典:出版社HP

エコハウス超入門:84の法則ですぐ分かる

難解な内容を噛み砕いて記した入門書

エコハウスとはエコロジーハウスの略称で、住宅が建てられる地域の気候や風土、敷地の条件、住む人の暮らし方に合わせて、自然エネルギーを最大限に活用した生活を実現するものです。本書は、著者の長年の研究と実績に基づく計算された確かな家づくりの基本か記された、エコハウスについての入門書です。

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP

 

CONTENTS 目次

第1章 どんな住まいや室内環境を目指すべきか
METHOD01「頑丈でシックハウスにならない普通の家」がベースになる
METHOD02 冬に暖かく、夏に涼しい家をつくるには計算が欠かせない
METHOD03「普通の家」の温熱環境は劣悪で光熱費が高すぎる
METHOD04 床暖房のコストを窓と無垢フローリングに回す
METHOD05 家を小さくするのも省エネ手法の1つ
METHOD06 冬は21℃・45~50%、夏は27℃・60%を目標にする
METHOD07 絶対湿度と相対湿度の相関で快適性を把握する
METHOD08 周壁平均温が低いと健康的な室内環境にできない
METHOD09 室温22℃、周壁平均温21℃が現実的な目標値
METHOD10 周壁平均温を知る方法は2通りある
METHOD11 日射遮蔽と高い断熱性能が備わった家は夏でも涼しい
METHOD12 梅雨~夏に通風を重視するとカビやダニと共存する家になる
METHOD13 室内の二酸化炭素を1000~1500ppm以下に保つ

第2章 断熱性能はどのように高めるとよいか
METHOD14 国が設定した暖房負荷はあてにならない
METHOD15 HEAT20のG2は欧米の最低基準
METHOD16 真の暖かさの指標はQ値ではなく暖房負荷
METHOD17 賃貸マンションの環境はQ値1.9の戸建て住宅程度
METHOD18 Q値とUA値の関係を知ると両者の概算方法が分かる
METHOD19 費用対効果の高い断熱性能の高め方
METHOD20 裸のグラスウールのほうが合理的に施工でき性能も出る
METHOD21 グラスウールは16K品を用い面材耐力壁にして施工性向上
METHOD22 現場発泡ウレタンでも防湿層が必要な場合がある
METHOD23 湿式外張り断熱はコスパの高い付加断熱工法
METHOD24 コスパなら屋根断熱よりも天井断熱が有利
METHOD25 屋根断熱は厚みを確保する工夫が必要
METHOD26 気密性能を高めるなら基礎断熱が圧倒的に有利
METHOD27 床断熱は熱橋を減らす工夫が必須
METHOD28 基礎断熱を採用するならシロアリ対策は必須
METHOD29 基礎内断熱に100倍発泡品は厳禁
METHOD30 基礎底盤下の断熱材は効果はあるがもとは取れない

第3章 窓に必要な性能をどのように満たすか
METHOD31 窓はU値を確認して性能の高いものを選択する
METHOD32 窓には真冬でも結露しない性能が必要
METHOD33 窓は樹脂サッシを選択するのが基本になる
METHOD34 窓は取り付け位置で性能が変わる
METHOD35 ペアからトリプルにガラスを変えるとどこまで変わるか
METHOD36 断熱ブラインドを付けるとU値が劇的に改善する
METHOD37 シャッターには断熱性能を増す効果もある
METHOD38 シェードがあると配置の自由度が増す

第4章 給湯や冷暖房の熱源をどのように選ぶか
METHOD39 電気、ガス、灯油はどう使い分けるか
METHOD40 一次エネルギー消費量で給湯器を比較する
METHOD41 都市ガスを使うメリットはあるのか
METHOD42 オール電化の電気代は上昇中。それでもコスパは高い
METHOD43 オール電化のコスパはどう変わっていくか
METHOD44 太陽光発電は最高にコスパのよい投資
METHOD45 太陽光発電を自家消費で活用する

第5章 換気量をどう確保して熱損失を抑えるか
METHOD46 そもそも換気量はどのくらい必要なのか
METHOD47「中気密住宅」は新鮮空気が入ってこない
METHOD48 熱交換換気の顕熱/潜熱型の違いをどう評価すればいいか
METHOD49 レンジフードからの熱損失はどのくらいなのか

第6章 エアコンはどのように選んで使いこなすか
METHOD50 必要暖房能力を算出すると光熱費が概算できる
METHOD51 ひと月ごとの暖房費の計算方法
METHOD52 暖房費は電気とガス、灯油のどの熱源が安いか
METHOD53 COP3を超えると暖房の熱源は電気が安価
METHOD54 冷暖房を1台でカバーするエアコンが空調の基本
METHOD55 エアコンは運転方法で効率が大きく変わる
METHOD56 各部屋に設置するエアコンは「最大能力×補正係数」で選ぶ
METHOD57 各部屋に設置するエアコンは冷房能力で機種が決まる
METHOD58 エアコンは6、10、14畳用から選択するとコスパが高い
METHOD59 冷房用エアコンは再熱除湿とカビ対策で選ぶ
METHOD60 夏の日射は冷房負荷に大きな影響を与える
METHOD61「日射遮蔽+全館冷房」でカタログ値の3割で冷房できる
METHOD62 風量を生かせるとエアコンの効率は高まる
METHOD63 全館空調の方式は11種類もある
METHOD64 全館空調の各方式のメリット・デメリット
METHOD65 ダクトエアコンを用いた全館空調の特徴
METHOD66 エアコン1台による全館冷暖房の特徴
METHOD67 エアコン2台による全館冷暖房の特徴
METHOD68 床下エアコンは建物全体に暖気を拡散させる
METHOD69 床下エアコンに用いるエアコンはセンサーの位置と横幅に注意
METHOD70 床下エアコンの設置と床下の構造のポイント
METHOD71 床下エアコンの床ガラリや運転方法のポイント
METHOD72 除湿よりも冷房運転のほうが省エネになる
METHOD73 気化式の大型加湿器はすべての要求を満たす

第7章 建物配置や形をどう整えると日射が増すか
METHOD74 方位別の日射の当たり方でガラスを使い分ける
METHOD75 夏には南面の窓と天井から大量の熱が侵入する
METHOD76 南面の窓から得られる日射量は夏より冬のほうが多い
METHOD77 南面の開口部を最大化しシェードで日射遮蔽
METHOD78 日射の多い・少ないは断熱性能より室温に影響する
METHOD79 日射を最大化するための建物計画のセオリー
METHOD80 建物形状や配置で日射取得が変わる
METHOD81 滞在時間が長い部屋の日射を重視して暖房負荷を減らす
METHOD82 敷地、隣家、車庫から1階配置のパターンを読み解く
METHOD83 等時間日影図を作成して日射取得を最大化する
METHOD84 隣家の影を考慮しつつ建物と車配置を考える

COLUMN
1住宅にも燃費表示が必要
2マンションはなぜ暖かいのか
3マンションは中住戸の影響を強く受ける
4 HEAT20G2レベルの温熱環境とは?
5シミュレーションを営業に生かす
6太陽光発電+電気自動車は最高のコスパ
7同時給排気型のレンジフードの優位性
8競合先に勝つシミュレーションの方法
9珪藻土だけでは十分な除湿は行えない
10冷暖房に関する住宅会社の技術水準

はじめに
おわりに

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP

 

はじめに

私が高断熱住宅に目覚めたきっかけは、高校1年生のときに設計者である父親が設計した住宅に暮らすようになったことです。その住宅はそれまで住んでいた県営住宅よりもはるかに暑く、寒かったのです。
見た目はとても美しいのに、とにかく夏は暑く、逆に冬は寒くてたまらない。高校生ながらに「これが本当の豊かさなのだろうか?」と疑問に感じました。そんなときにある新聞広告に目が止まりました。OMソーラーの一面広告でした。「これこそ理想の住宅に違いない」と直感しました。そして、大学でも熱環境の研究室を選択し、OMソーラーに関する研究を行って卒業論文としてまとめました。
大学卒業後、私は住宅メーカーに就職しました。入社直後に作文を発表する機会があり、「これからの住宅は高断熱化しなければならない」と訴えました。しかし、私の主張は会社にはまったく聞き入れてもらえませんでした。

日本の住宅の断熱性能が低いわけ

それから約20年が経ち、世の中は大きく変わりました。最近では「高断熱の話をしてほしい」といろいろな方面から依頼を受けます。住宅メーカーに就職したころとは隔世の感があります。とはいえ、まだまだ日本の住宅の断熱性能は欧米の先進国に比べると大幅に低く、技術的にも遅れをとっています。既存住宅はもちろん、新築住宅においてもそれは同じです。
その理由は大きく2つあります。「つはもともと日本では空間全体を暖める「暖房」の考え方がなく、人がいるところだけを暖める「採暖」の文化であったことです。その代表的な機器がこたつです。室温は低くても、暖かさを直接感じることで寒さをしのいでいたのです。
もう1つの理由は日本のビジネスマン、特に住宅業界には「住宅は寝るための場所」と考えている人が多かったことです。就寝時以外は住宅にいないのですから、暖かさや涼しさの必要性を感じるわけがありません。
この2つが重なった結果、日本全国に夏は暑くて冬は寒く、維持費が高くついて耐久性は低い住宅ばかりがあふれる結果となってしまいました。

高断熱化は生き残りの必須条件

昨今の世の中の風潮に乗って高断熱化を進めることは悪いことではありませんが、心の底からその必要性を感じた上で高断熱化に取り組むほうが、技術的な進化も早く、建て主に対しても何倍も説得力があります。
折しも新型コロナウイルスが流行した影響で、戦後はじめて、大多数の日本人が長時間を家で過ごすという体験をしました。これをきっかけに、暖かさや涼しさを含め、住宅の居心地のよさを追求する傾向が強まってくるでしょう。
その流れを加速するためには、本来は国が断熱性能の表示を義務付けるべきでした。実際2019年にそのような法改正が行われるはずでしたが、直前になって国の方針が変わり、この話は泡のごとく消えてしまいました。
こうなってしまった以上、実務者がみずからの意思で断熱性能を高めていくしかありません。そして、断熱性能の高い住宅をつくれる技術力の高い会社でなければ生き残れないという状況をつくっていく必要があると考えています。
そんな考えから、私はメディアや建材メーカーなどを通じ、業界に対して高断熱化の啓蒙活動を10年以上行ってきました。それでもいまだに高断熱化に取り組もうとしない住宅会社は少なくありません。これ以上、業界に対して啓蒙活動を行っても、こうした住宅会社は動かないと感じています。
では、これ以上の高断熱化を推進するにはどうすればよいか。建て主が高い性能を担保できる住宅会社しか選ばないという状況をつくるしかないと考えました。そうなれば、高い断熱性能を担保できない住宅会社は自然と淘汰されます。
そこで、一般の方に向けてYouTubeチャンネルで情報発信を始めることにしました。きちんとした性能を担保できる住宅会社を選択するための指針を分かりやすく説明することを心がけて配信しています。2020年7月3日現在で2万4000人がチャンネル登録をしてくれました。
私のYouTubeチャンネル以外にも、最近はインターネット上に正確な情報が増えてきており、建て主がそれらにアクセスしやすくなりました。
これまで住宅業界では「○○工法だから暖かい」といった信憑性に乏しい性能競争が続けられてきましたが、高い断熱性能を担保できない会社は生き残れない状況になってきています。
2020年は日本の住宅の高断熱化を進める上で大きな転換期だと思います。次の10年に向けて、これまでよりさらに早いスピードで高断熱化が進むことを期待しています。本書がその一助となれば幸いです。
松尾和也

松尾和也 (著)
出版社 : 新建新聞社 (2020/8/6)、出典:出版社HP

 

ホントは安いエコハウス

詳細なデータに基づくエコハウスの考え方

本当のエコハウスは素材や設備云々ではなく、優れた住環境から生み出される健康・経済性をもたらせてくれる家であり、その為の事例やデータ解説が分かりやすく書かれています。住宅業界関係者だけでなく、施主側も知っておくべき事実が溢れています。

松尾 和也 (著), 日経ホームビルダー (編集)
出版社 : 日経BP (2017/7/21)、出典:出版社HP

 

まえがき

断熱性能に見向きもしなかった意匠系の建築設計者が断熱に取り組むようになり、高断熱を大きな売りにしてきた工務店は、設計力も向上させなければ住宅が売れない時代になりつつあります。
住宅メーカーでも、環境性能の高い住宅をつくる会社が競争力をつけています。大手住宅メーカーで圧倒的に高い断熱性能を売りにする一条工務店が、着工棟数でトップを走ってきた積水ハウスと肩を並べつつあるのです。
一条工務店は建材の8割以上をフィリピンの自社工場で製造しており、非常に高い性能を安いコストで実現しています。つまり、費用対効果が高いのです。売れるのは至極当たり前でしょう。高い断熱性能を持つ住宅は、燃費の良い車のようなものです。
一口に燃費の良い車と言っても、燃料1リットル当たり17kmといったレベルのものから、40km程度のプリウスまでさまざまです。「一条工務店の家は、住宅業界におけるプリウス」と表現すれば、分かりやすいかと思います。
2020年に、これまで住宅業界で「次世代省エネ基準」(平成11年基準)と呼ばれてきた基準が義務化されます。この基準は、車に例えれば、燃費が1リットル当たり17kmの水準です。特別に自慢できるような水準とは言い難いのです。
ちなみに、プリウスで年間1万kmを走った際の一次エネルギー消費量を実燃費である1リットル当たり26kmで計算すると、年間で13.5GJ程度を消費することになります。1リットル当たり13kmの一般的な燃費の車なら、年間で27GJに相当します。
一方、一般的な住宅で消費する一次エネルギーは大体、平均で年間75GJとなります。平均的なケースでは、住宅が車の3倍のエネルギーを消費すると言えるのです。車は約10年ごとに乗り替えますし、燃費はそのたびに大幅に向上しています。
ところが、その3倍のエネルギーを消費する住宅は、30年以上使われるにもかかわらず、断熱性能のような基本的な構成要素は完成時の性能が続きます。住む期間全体に要する光熱費と工事費の合計を安くしなければ、いくら工事費が安くても「安物買いの銭失い」になりかねません。
平均世帯年収が410万円程度にまで落ち込んだ日本。限られたお金の使い方を指南するファイナンシャルプランナーが活躍しています。住宅ローンと保険、教育費は、ファイナンシャルプランナーがよく取り上げる項目です。最近では、携帯電話代も助言の対象となっています。
半面、光熱費についての詳しい言及はあまりありません。指摘しても「できるだけ冷暖房は使わないようにしましょう」という助言で終わるケースが多いようです。
しかし高齢者の場合、温熱環境で我慢を強いれば、脳血管疾患、心疾患のリスクを高めます。若い人であっても、さまざまな病気の疾患リスクは上がります。健康は、経済性だけでは測れない生きるうえでの重要な目標です。健康リスクを犯してまで冷暖房コストを節約するという選択肢はあり得ないと考えます。
エアコンは光熱費や快適性などの面から嫌われ者の代名詞となっているきらいがあります。しかし、それは住宅の性能が低いことで生じる問題をエアコンのせいにしているからです。エアコンほど高性能かつ費用対効果が高い機器は存在しません。
ただし、機器の選択、設置場所、利用方法によってエアコンの実際の効率は大きく異なります。車に例えるなら、たとえプリウスでも、ベテランドライバーのような丁寧な運転と、アクセルとブレーキをベタ踏みするような雑な運転とでは、実燃費に大きな差が生じることと似ています。
日本には家電評論家というような肩書きの人も存在します。ところが、こうした専門家を自負する人たちが発信する情報を見ても、エアコンについては「お掃除機能がついているか」「人を感知するセンサーがついているか」「カタログ上の性能値」といった程度のことしか評価されていません。
評論家だけでなく、家電量販店の営業マン、一級建築士のほとんどが「その部屋または住宅にどの程度の容量のエアコンを設置すれば理想的か」という問いに対して、明確に回答できないのが実情です。その結果、ほぼ100%の新築住宅において、部屋に必要な容量の何倍もの容量を持つ過剰仕様のエアコンが設置されています。
結果として、イニシャルコストや冷暖房費、交換のたびに必要な費用が高くつく事態を招いています。喜ぶのはエアコンメーカーだけという状況なのです。ようやく最近になって、部屋に合った適切なエアコンを選定するための情報を提供するウェブサイト(http://criepi.denken.or.jp/asst/)が表れました。一度参考にしてみていただければと思います。
最後になりましたが、1人でも多くの方がこの本を読んで住宅会社の選定に役立てたり、住宅設計や建設に関する思い込みを正したりして、本当に良い家をつくってほしいと考えています。そのような住宅が当たり前となることで、そうした住宅を建てられない会社が淘汰されることも望んでいます。「家は3回建てないと満足できるものにならない」という悲しい日本の現実から、一刻も早く脱却することに本書を役立てていただければ幸いです。
松尾和也

松尾 和也 (著), 日経ホームビルダー (編集)
出版社 : 日経BP (2017/7/21)、出典:出版社HP

 

ホントは安い エコハウス contents

Part.1 エコハウスを知る
勘違い01 自然素材≠エコ
自然素材住宅はエコハウスにあらず
勘違い02 工事費減≠経済性
「住宅貧乏」から脱する6項目
勘違い03 省エネ改修≠大変
すぐできる!既存住宅の省エネ策
勘違い04 暖かさ≠プロは皆知っている
暖かい住宅を知る人が少ない理由
勘違い05 インフラ≠頼れる
災害時にシェルターになる家

Part.2 エアコンの実力を知る
勘違い06 エアコン≠高い
断熱性能が低いとエアコン嫌いに
勘違い07 ドライ運転≠高い
激減するエアコンの「再熱除湿」
勘違い08 空調運転は間欠≠連続
エアコンの連続運転vs間欠運転
勘違い09 エアコン選び≠畳数
畳数だけでは駄目なエアコン選び
勘違い10 エアコンの容量種別≠多すぎる
4社のエアコンから選び方を知る
勘違い11 湿度≠年中40~60%
大阪は東京よりも蒸し暑いって本当?

Part.3 窓の強みと弱みを知る
勘違い12 日本の窓≠高性能
世界に劣る「窓」後進国ニッポン
勘違い13 ビル用窓≠戸建て用窓
住宅用サッシは費用対効果が大
勘違い14 パッシブデザイン≠風
パッシブは風より太陽を旨とすべし

Part.4 改修に効く断熱と住宅設備を知る
勘違い15 リフォーム≠見栄え優先
断熱リフォームが高齢者を救う
勘違い16 電気温水器≠省エネ
電気温水器をなくして節電しよう
勘違い17 24時間換気≠レンジフード選び
レンジフードで月4000円の損失
勘違い18 家事≠住人にお任せ
家事の時間を短縮して豊かな生活を

Part.5 設計の本質を知る
勘違い19 工務店≠省エネのプロ
断熱~気密~パッシブへのステップ
勘違い20 次世代省エネ基準≠万全
断熱はコスパと快適性から考える
勘違い21 プレゼン≠数勝負
受注増につながるパッシブ手法
勘違い22 熱損失≠日射取得
ローコスト住宅ほど「太陽に素直な設計」
勘違い23 設計≠変更が当たり前
パッシブで無駄な仕事を減らす
勘違い24 寒冷地≠暖かい設計は無理
コストを抑え冬に暖かい家をつくる
勘違い25 高断熱≠オーバーヒート
洞窟みたいにオーバーヒートしない

Part.6 対策の効果を確かめる
最新のソフトで有効性を確認

著者紹介

松尾 和也 (著), 日経ホームビルダー (編集)
出版社 : 日経BP (2017/7/21)、出典:出版社HP

 

エコハウスのウソ2

家を建てる際の注意点が網羅された一冊

断熱、日射遮蔽、電力、冷暖房、給湯、換気等の個々の対策で注意すべき点をひとつひとつ科学的なデータに基づいて丁寧に解説してあります。また、情報量が多いだけでなく、挿絵や画像が活用されており、視覚的にも理解しやすくなっています。

前 真之 (著)
出版社 : 日経BP (2020/8/27)、出典:出版社HP

 

エコハウスのウソ2 目次

はじめに

PART1変わる常識
第1章 環境・エネルギー
Q.1地球の温暖化はウソだよね?
Q.2住宅のCO2削減は他人ごと?
Q.3安い電気は良い電気?
Q.4電気代はずっと上がらない?

第2章 健康
Q.5汚れた空気は健康とは無関係?
Q.6ウイルス対策は加湿でバッチリ?

第3章 家電
Q.7最新家電ならどれでも省エネ?
Q.8エアコンを買い替えれば節電に?

第4章 太陽光発電
Q.9太陽光発電はもう載せなくていい?
Q.10太陽光発電は売電で大儲け?
Q.11蓄電池で停電とアフターFIT対応は万全?

第5章 エコハウスの目標
Q.12省エネの義務化なんて必要ないよね?
Q.13ZEHは究極のエコハウス?
Q.14エネルギーコストゼロで快適な生活は無理?

PART2変わらない真実―対策編
第6章 冬の備え
Q.15空気温度さえ高ければ冬も快適?
Q.16ポツ窓住宅は省エネ?
Q.17 UA値さえ小さければ気密なんて気にしなくていい?
Q.18健康・快適な全館24時間暖房は高くつく?
Q.19冬の無暖房なんて絶対無理?
Q.20部分リフォームでは寒くても仕方ない?

第7章 夏の備え
Q.21冷房はギリギリまでガマン?
Q.22日射遮蔽は軒や庇で安心?
Q.23全館24時間冷房は電気代が高い?

第8章 空気とお湯
Q.24花粉対策は空気清浄機が1番?
Q.25換気設備は設置さえすればOK?
Q.26換気をしたら寒くなる?
Q.27給湯は湯水のごとく?

エピローグ
Q.28みんなエコハウスに住めるかな?

イラスト:ナカニシミエ
図版作成:村上総(カミグラフデザイン)
写真・資料:特記以外は前真之

前 真之 (著)
出版社 : 日経BP (2020/8/27)、出典:出版社HP

 

はじめに

みんながエコハウスで暮らせるために

本書「エコハウスのウソ」は、2012年の「初版」、15年の「増補改訂版」に続く3冊目である。初版では、冬は寒く、夏は暑い、そして電気代も高い―そんな「ウソのエコハウス」がたくさんあることを示し、その「ウソ」を暴くことが主たる目的であった。「増補改訂版」では初版を踏襲しながら、もう1歩踏み込んで、エコハウスの設計に必要な気候や建物外皮・設備の理論・知識をできる限り網羅した。
3冊目の本書はいわば「実践編」。健康・快適な暮らしを未来永劫、エネルギーコストゼロで実現する。そんな究極のエコハウスづくりについて、ぜひ知っておいていただきたい最新の情報を、25年間にわたって住宅のエネルギーを専門に研究してきた筆者の知見の及ぶ限り、厳選してまとめている。前作の「増補改訂版」も併読いただければ、より理解が深まると思う。

健康・快適な室内環境が家づくりの最重要課題に

本書で取り上げるエコハウスの究極目標はただ1つ。「暖かく涼しい健康・快適な暮らし」を「いつまでも最小のエネルギーコスト」で「全ての人」に届けることである。

大前提として、家づくりで最も重視するべきは、建て主の「生活」。これはずっと昔から変わらない。苦労してお金を工面し実際に家を建てるのは建て主なのだ。
一方で、家づくりを取り巻く状況は、刻一刻と変化している。増補改定版の発行から5年がたち、近年のヒートショック問題や2020年冬からの新型コロナウイルス問題をきっかけに、住環境が健康にもたらす悪影響の深刻さは広く知られるようになった。
もはや、不健康・不快な室内環境を「ガマンしてはいけない時代」に入っているのだ。家族みんなが健康・快適に暮らせるよう、室内の温熱環境や空気質を上手に整えることが、住宅の最優先事項の1つであることをくれぐれもお忘れなく。

新型コロナ問題で生活の中心は再び住宅に

最近まで、住宅はコンパクト化が進んでいた。共働きが増えて交通の便利さが重視され、都心に近い高額な狭い敷地にコンパクトな住宅を建てることが主流となった。日中は家族全員が外出し、家では食事や団らん、就寝がもっぱらのライフスタイルであれば、狭い住宅でもさして問題なかった。
しかし、新型コロナ問題により、感染拡大予防のために在宅勤務が増加した。それまで受け入れられていたコンパクトでオープンな住宅プランでは、ウェブ会議をするにもプライバシーの確保が困難。在宅勤務なら利便性の高い場所にこだわる理由もなくなるのだから、郊外の割安な広めの土地に、プライバシーを確保しつつ長時間過ごすためのゆとりのある家づくりを希望する人も増えると予想される。
再び生活の中心舞台となる住宅では、長時間在室しても電気代の心配がいらないよう、しっかりしたエネルギー計画も必要となる。エコハウスの重要性は、ますます高まっているのだ。

エコハウスを実現できなかった住宅・エネルギー業界

こうしたエコハウスは、住む人のためにあり、また、みんなが住めないと意味がない。お金持ちだけが健康・快適に安い電気代で暮らせるというのでは、まさに「最悪の格差社会」である。これには、住宅やエネルギーを取り巻く政策や産業界の動きが深く関係してくる。
残念ながら、誰でも当たり前にエコハウスが建てられるようになることを、つくり手である住宅産業に丸投げしていては、エコハウスに住める可能性は低い。建て主みんながしっかり勉強して、エコハウスを確実に建ててくれる設計者・施工者を見つけ出す努力が不可欠なのだ。

本書では、家づくりに関係する制度やその背景、歴史などを踏まえながら、業界に付度しない中立的な視点でエコハウスを考えているので、安心してお読みいただきたい。
なお、本書はこの思い切った(?)タイトルから、「エコハウスなんかいらない」と主張するトンデモ本の類と誤解されることも少なくない。しかし、科学的にエコハウスを考える至って真面目な本なので、くれぐれもお間違えなく!

全ての人がエコハウスで暮らせる幸せな時代

近年の住宅の進歩は急速である。高性能部材の低廉化と設計手法の高度化によって、低コストで健康・快適な家をリーズナブルに建てることは十分に可能になっている。
住宅産業の「ウソ」に惑わされることなく、優良な住宅設計者・施工者と巡り合うことができれば、かつては理想でしかなかったエコハウスを「ホント」にできる、素晴らしい時代なのだ。この素晴らしい時代に家づくりができる幸運を最大限に生かし、理想の生活を手に入れていただきたい。本書がそのお役に立てることを、心より祈念する。
前真之

予備知識1
サーモ画像の見方
「サーモ画像」は物体表面から放出される遠赤外線を可視化したもので、表面温度分布を分かりやすく見せてくれる。ただし印象的な分、いいかげんな比較がされている場合も多い。本書では冬・夏ごとに温度レンジをそろえて温度線形処理を行うことで、異なる画像でも季節ごとに同じ色が同じ表面温度となるよう工夫している。

(使用機材:FLIRT62080度超広角レンズ)
冬温度レンジ5~35°C
夏温度レンジ10~40°C

予備知識2
エネルギーと熱は同じ単位
住宅の周りでは、様々な種類のエネルギーが互いに変換され、人が必要とする用途に活用されている。原子力を除く全エネルギーの大元は、地表に降り注ぐ「太陽エネルギー」である。これを過去の植物が光合成で固定化し、地中に埋没していたものが「化石燃料」である。
様々な種類のエネルギーや熱は相互に変換が可能であり本質的に同じなので、エネルギー量と熱量は同じ単位となる(熱エネルギーという呼び方は物理的に不適切なので、本書では単に熱と呼称する)。本書では、エネルギー・熱の単位としてkWh(キロワットアワー)を基本として用いている。

予備知識3
エネルギー量の単位Wh/Jとパワーの単位W
1kWh(キロワットアワー)は、1kW(キロワット)のパワーの「電力」を1時間だけ流した場合に消費されるエネルギーの量「電力量」を表す。
エネルギー量・熱量の単位には、他にJ(ジュール)がある。建築物省エネ法やZEH(ゼッチ)では、一次エネルギー量の単位としてMJ(メガジュール)を用いている。ガスや石油などの化石燃料を3.6MJ分燃やすと、1kWhの熱を得られるが、発電所はその熱の一部(約37%)しか電気に変換できないため、9.76MJの一次エネルギーが消費してようやく1kWhの電気がつくれることになる。
本書ではなるべく分かりやすくするため、消費電力量や熱量をWh、一次エネルギー量をJで表記した。1W(ワット)は1秒に1Jを消費することなので、1kWh=1kW×3600秒/h=3.6MJ(メガジュール)と換算できる。
※1G(ギガ)=1,000M(メガ)=1,000,000k(キロ)=1,000,000,000

エネルギーの量=J(ジュール)またはWh(ワットアワー)
ジュールは石油やガスの熱量(一次エネルギー)、ワットアワーは電気の量に用いられることが多いです。
いずれも同じくエネルギーの量を表します。
1Wh=3.6kJ、1kJ=0.28Whで換算ができます!

仕事率W(ワット)=J(ジュール):秒
ワットは1秒間に消費されるエネルギーの量を表します。
仕事率というとピンときませんが瞬発力・パワーのようなものと考えてください。
能力のワットの値が大きい機器は、強力に暖冷房や給湯を行うパワーがありますが、電気やガスのエネルギー供給に必要なワットも大きくなります。

仕事率W(ワット)×時間=エネルギーの量Wh(ワットアワー)
ワットに時間をかけると、またエネルギーの量に戻ります。
100Wの電気を消費するテレビを1時間見るには、100W×1h=100Whの電力量が必要になります。
本書での1kWh当たりの買電単価は28円(2019年全国平均)。
電気をためるバッテリーの容量もWhで表すのが一般的です。

前 真之 (著)
出版社 : 日経BP (2020/8/27)、出典:出版社HP

 

エコハウスのウソ 増補改訂版

扱うテーマが増えた増補改訂版

扱っているテーマ数が13も増加し、データの充実や視覚的理解を補助するカラー画像の積極的利用など、初版に比べて大きくパワーアップしています。エコハウスについて理解し、「いい家を建てる」ためには読んでおきたい内容となっています。

前 真之 (著)
出版社 : 日経BP; 増補改訂版;第2 (2015/12/8)、出典:出版社HP

 

エコハウスのウソ [増補改訂版] 目次

はじめに

プロローグ 省エネ基準義務化
Q.1 2020年以降、全ての家がエコハウスに?
Q.2 新省エネ基準を守るだけで暖かい家になる?
Q.3 地域の気候は「8区分」でバッチリ?
Q.4 家なんてどこに頼んでも同じ?

第1章 人と気候
Q.5 人間は暑さに弱い?
Q.6 湿度はパーセント(%)が当たり前?
Q.7 エアコンなしでも日本の夏は大丈夫?
Q.8 温暖地は冬の朝も温暖?
Q.9 日ノ本の国はどこでも太陽サンサン?
Q.10 結局、住まいは夏を旨とすべし?

第2章 建物の外皮性能
Q.11 離れた壁や窓、天井の温度は快適性に無関係?
Q.12 ローイーガラスって日射を遮蔽するガラスでしょ?
Q.13 日本の窓はずっと世界サイテー?
Q.14 断熱材と構法にこだわれば断熱はバッチリ?

第3章 冷房
Q.15 家のエアコンは節電の敵?
Q.16 冷房が最大?
Q.17 選ぶならハイパワーのエアコン?
Q.18 除湿は冷房よりもエコ?

第4章 夏への備え
Q.19 通風はクール?
Q.20 卓越風を信じよ?
Q.21 暑さ対策は夏専用のやり方でないとダメ?
Q.22 夜間放射で夏の夜もヒンヤリ?

第5章 吹き抜け・大開口
Q.23 吹き抜けは最高?
Q.24 気密は息が詰まる?
Q.25 もっと光を?
Q.26 大窓でダイレクトゲイン?

第6章 暖房
Q.27 暖房で体を温めよう?
Q.28 エアコンは暖房に向かない?
Q.29 空気は働き者?
Q.30 隠せばハッピー?
Q.31 放射は暖房の救世主?
Q.32 薪ストーブは原始的?

第7章 再生可能エネルギー
Q.33 エネルギーは創り出せる?
Q.34 ソーラー=太陽光発電?
Q.35 太陽光発電が日本を救う?
Q.36 平時でも蓄電は美徳?

第8章 電気
Q.37 HEMSは最強の節電ツール?
Q.38 省エネよりゼロエネ?
Q.39 目指せCO2削減?
Q.40 オール電化はオールエコ?

エピローグ
Q.41 結局、エコハウスは必要なの?

イラスト:ナカニシミエ
図版作成:村上総(カミグラフデザイン)
写真・資料:特記以外は前真之

はじめに

本書は、「エコハウス」をめぐる様々なテーマを検証する試みである。東日本大震災後のエネルギー事情激変のなかで、ちまたには「省エネ」「省CO2」「環境」「節電」「スマート」「安心」をうたった様々な住宅、いわゆるエコハウスがあふれている。
エコハウスはみな、快適で地球環境に優しいことを主張している。しかし、その手法はみな似たり寄ったり。つまり「定石」があるのだ。壁を埋め尽くす「大きな窓」に、開放的な「吹き抜け空間」。通風バッチリで暑い夏も風だけでしのげるから、憎きエアコンはもういらない。そう、かの吉田兼好も言っていたではないか。「住まいは夏を旨とすべし」と……。
こうした「定石」に彩られたエコハウスが、今日も建築雑誌のグラビアを飾っている。確かに美しく涼しげな写真を眺めるのは楽しいことだが、エコハウスと名乗るからにはそのホントのところが気になってくる。エコハウスは本当にエコなのか。その現実は、さるエコハウスに常駐する説明員の漏らしたひと言が象徴している。
「この家はエコということで設計されたと聞かされている。だけど、いつもここにいる自分には不便で全然快適ではないし、省エネになっている気もしない。わざわざ見に来てくれた人に、この家を薦めてよいものかどうか悩んでいる……」
筆者が何者であるかといえば、ひと言でいうと「建築環境」の研究者である。筆者と研究室の学生は、かなりの数のエコハウスを実地に計測してきている。そして、その多くが「残念」であり、定石の大部分が「ウソ」であることに気付いた。
筆者は「建築環境」を生業としているが、建築の各要素を総合的にまとめ上げる「建築家」の努力と苦労に、いつも敬意を持っている。彼らの多くが、住む人の幸せを真剣に願い心を砕いていることも知っている。
しかし建築というものは、人間の都合だけでは完成しない。工事が終わって構造と外皮ができたからといって、建築はまだ完成していないのだ。大地に産み落とされたそれは、土地の気候と共鳴し合いながら、その周辺と内部に環境を形成していく。そして、その過程を支配するのは、自然界を支配する「物理の法則」なのである。
人間はいま一度、自分たちのチカラの限界を思い知る必要がある。我々が図面に風の流れるイメージをいくら描き込んだところで、空気の分子1つさえも動かすことはできないのだ。物理の原則を無視した人間都合のイデオロギーは、人の住めないような内部空間を容易に生み出してしまう。その傲慢の辻つま合わせに、膨大な化石エネルギーが浪費されている。こうした悲劇を生み出す工コハウスの定石とは一体何なのか。本当のところは、エコなどどうでもいい、単に「写真写りが良い空間」が欲しいだけなのでは……。邪推の一つもしたくなる。

しかし、悲観することはない。謙虚な気持ちを持って物理の法則を理解すれば、道はおのずと明らかになる。難解な数式を出すまでもない。「言われてみれば当たり前」の常識をちょっと意識するだけで、多くの問題は解消できるのだ。
本書はエコハウスを主たるターゲットにしているが、エコハウスといえど住宅のひとつのカタチ。エコハウスに関連したテーマのほとんどは、普通の住宅に住んでいる、あるいは普通の住宅を建てようという普通の人にも、ぜひ知っておいていただきたい内容である。「エコハウスのウソ」というタイトルだけで「キワモノ」と思わずに、お付き合いいただければ幸いである。
――と、ここまでが2012年の初版の出だしである。
初版で関心を持っていただいたことで、筆者も様々な場所へ呼んでいただき、各地の実情や実住宅を見せていただく機会が得られたのは、他に代えがたいありがたい経験であった。
こうした経験を通し、各地で熱心に勉強し真摯に良い家をつくられている、素晴らしい設計者や施工者の方々にたくさんお会いすることができた。筆者の現地調査の場数も増え、経験値も大きく増やすことができた。
この3年の間でも、住宅の性能は大きく進歩したのは間違いない。行政の方でも省エネ基準義務化、ゼロエネルギー住宅の推進など、従来よりも普及に力が入りつつある。エコハウスが必ずしも特殊な家ではない、誰でも住めるものになりつつあることを筆者も肌で感じている。
初版においては、エコハウスの28のテーマに触れていた。今回の改訂では全部で41のテーマについて扱っている。初版でも触れていた内容については稚拙な文章を削るとともに、データの充実を図った。初版当時から比べても社会の変化がはっきりと感じられ、本当に世の中は変わっているんだ、と実感することになった。
また、ビジュアル的に容易に理解できるカラー画像を積極的に追加した。新たに追加したテーマは、気候や快適性に関するものが多い。本物のエコハウスが普及しない理由の1つに、気候に関する思い込み・誤解があると感じたためである。快適性も旧版のオルゲーの気候図に代わり、世界的にオーソライズされたPMVモデルを利用した。様々なケースで詳細な検討ができるため、快適性の分析はかなり幅が広がったと思う。
初版は冬の問題を重点的に取り上げていたが、本書では夏の問題も積極的に取り上げている。ただし、いわゆる「夏旨」とは異なった結論になっているので、それはお楽しみに。
本書におけるデータや数理モデルは、できる限り普通の標準的なものにとどめ、オーソライズされていない「独自研究」は控えている。誰もが入手できるごく当たり前のデータから一見意外な結果が出てきて、でも考えてみると確かにそうだ、というのがデータ分析の醍醐味である。ぜひ読者の皆さんにも、ご自分の周りのことについて、思い込みや決めつけを取り除き、真実に近づいてみる楽しさを体験していただければと思う。
前真之

本書の遠赤外線画像(サーモカメラ)の見方

前 真之 (著)
出版社 : 日経BP; 増補改訂版;第2 (2015/12/8)、出典:出版社HP