IPOについてもっと知ろう – おすすめIPO書籍5冊

IPO(新規公開株)にどのような印象をお持ちでしょうか。

簡単に利益を出しやすい、なかなか当たらない、以前痛い目にあったために印象が悪い、などいろいろな思いがあるでしょう。近年では、ユニコーン企業のIPOについても話題になっております。

2019年の国内では、Chatworkやステムリムの公募割れもフォーカスされることが多いですが、ブシロードなど公募後高騰する銘柄も多く存在します。これらの見方は、投資家からの視点ですが、その他の視点からIPOを見るとどうなるのでしょうか。

IPOの書籍は、個人投資家向けの本だけでなく、経営者からの視点のものもあります。IPOを行う目的や、行なった結果、企業にどのようなメリットがもたらされるのかを確認できます。IPOについて多角的に考えるきっかけとして、IPOに関する書籍を読んでみてはいかがでしょうか。

改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ

西堀 敬 (著)
出版社: すばる舎 (2017/10/14)、出典:出版社HP

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本書は、IPO(新規株式公開)株への投資法について書かれています。IPOと聞くと、初値で売って、利益を上げるイメージが一般的になっています。しかし、本書では、公募株の少なさや、当選した場合でも1単元では利益が限られるという、個人投資家にとってのIPOの課題点に注目して、セカンダリーのIPO投資についても解説しています。さらに、短期から超長期までの多様な投資をサポートするために、10年間にIPOした企業の業績変化と株価動向を俯瞰して書いています。

第1章では、IPOの仕組みやメリット、デメリットなど基本的な説明から行なっています。第2章では、IPOの買い方がテーマになっています。しかし、IPOが行われる際の手続きや証券会社の役割、実際にIPO株を購入する際の流れや注意点なども解説しており、様々な立場からIPO見ることができます。第3章では、IPOの情報の集め方と目論見書の読み方の解説を行なっています。目論見書とは、投資家が投資を行うか判断するための情報を掲載した書類ですが、量が多く、専門的な資料であるために、本書では、著者が目を通してほしいポイントを解説しています。

第4章では、超短期の投資の仕方を解説しています。初値のつき方の説明をデータを示して説明したり、どのような銘柄を狙うかなど、実践的な解説がされています。第5章は、上場後に買うと題し、上場した後にどのような銘柄をいつ購入すべきかについて実例を用いて説明しています。第6章では、超長期投資についてまとめています。基本的な内容から投資のタイプに合わせた作戦まで、IPOを様々な視点から見るきっかけになる本です。

IPOは野村にきいてみよう

野村證券 公開引受部 (著)
出版社: ダイヤモンド社; 1版 (2018/1/17)、出典:出版社HP

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「それ、野村に聞いてみよう」というフレーズを、テレビCMなどで、誰でも一度は耳にしたことがあるでしょう。本書は、そのCMでお馴染みの野村證券の公開引受部が、IPOの実務や意義について解説している本です。野村証券は、日本を代表する証券会社の一つですが、IPOの分野でも存在感があります。

実際、主幹事を務めるケースが多く、IPO投資に関心のある方で、口座を開設している方も多いのではないでしょうか。本書の構成は、第1章で、IPOを実施した企業のCEOにインタビューを行い、彼らがIPOをどのように考え、IPOによってどのような成果が得られたかが書かれています。IPOがそれぞれの会社の経営目標を実現するために、如何に大切な手段であるかが、実体験を通して語られています。

第2章は、IPOまでのスケジュールと実務のプロセスについて解説されています。IPOを行うまでの手順がわかります。第3章は、野村證券がこれまで関わってきた実例を挙げて、実際に起こったIPOまでの困難や課題について紹介されています。上場までのプロセスに加えて、その途中で発生する問題が具体的に説明されているため、IPOの裏側がより身近に感じられます。第4章では、IPOの意義について解説しています。

本書は、IPOをサポートする野村證券の本であるため、停滞した事例も扱われているものの、IPOの輝かしい面が大きく扱われています。そのため、IPOで、苦い経験をされた方や、IPOの現状を評価していない方にとっては、賛同できない部分があると思います。しかし、IPOの具体的な成功事例や証券会社のIPOへの姿勢を確認できる本として、参考になる一冊だと思います。

IPOビジネスの本質

谷間 真 (著)
出版社: リスナーズ株式会社; 初版版 (2016/11/3)、出典:出版社HP

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本書は、IPOに成功する企業が少ない現状を改善していくために、ベンチャー企業などの経営に携わる人々がどのように対処すべきかを記した本です。著者は、これまで何社かIPOのプロジェクトを推進してきましたが、IPOを俯瞰的に見渡せる人材の少なさがIPOの成功率の低さを招いていると指摘しています。

IPOを目指し、社内の管理体制を整理したにも関わらず、IPOができなかった場合、企業にとっては大きなダメージを受けることとなります。そこで、これまで著者が培ってきたノウハウや考え方がかなり具体的に書かれています。第1章では、そもそもIPOとは企業にとってどのようなものかを説明しています。IPOの本質について書かれているため、非常に参考になります。第2章は、IPOの成功に重要となるコーポレートストーリーをテーマにしています。第3章は、IPOプロジェクトチームの編成の方法を具体的に解説しています。

第4章では、IPOプロジェクトの具体的なプランニングについて書かれています。第5章では、実際にIPOを準備し、審査まで漕ぎつけるまでの過程について解説しています。第6章は、株の売り出し価格がどのように決められていくのかが説明されています。よりよい株価形成を行うためのプロセスが指南されています。第7章は、IPOが目前となった際のプロセスについて書かれています。第8章では、IPOの情報が発表されてから、上場日の様子までを説明しています。IPOを目指している方に加えて、IPOが実施されるまでの過程に興味がある方は、参考になると思います。

IPOをやさしく解説! 上場準備ガイドブック(第3版)

新日本有限責任監査法人 (編集)
出版社: 同文舘出版; 第3版 (2018/5/11)、出典:出版社HP

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本書は、IPOを行うために必要となる知識について、全体像を把握することを主眼に置いて解説をした、IPOを行うためのガイドブックです。リーマンショックでいったん落ち込んだ新規上場市場は徐々に回復しており、近年では、若くて成長性の高い会社の上場が続いています。そのような会社の上場は日本経済の発展に寄与しますが、

その一方で、設立から日の浅い会社は内部管理体制の整備が後回しになる傾向があり、上場に失敗してしまうケースもあります。上場することで、一般投資家や株式市場に対する一定の責任を負うことになるため、IPOでは、業績の拡大と内部管理体制の整備・運用の両面が求められます。そこで、本書は、IPOを行うために必要となる知識を簡潔にまとめ、IPOの準備段階から参考となる1冊となっています。

本書は、IPOの全体像を概観するところから始まり、事業計画や資本政策の策定、税金、経営管理体制、業務管理体制などについて解説するほか、上場をするために必要となる資料の説明、上場審査についての解説もしています。トピックごとに独立して解説がなされているうえ、各解説が見開きページでまとまっているため、詳しく知りたい箇所から読むことができる構成となっています。

簡潔な説明であるため、各書類の詳細などについて知りたい方には物足りない内容かもしれません。一方で、IPOに関して最低限知っておきたい知識がわかりやすくまとまっているため、IPOを行おうか検討している、IPOに関心があるという方にはおすすめできるものとなっています。

IPOの経済分析: 過小値付けの謎を解く

金子 隆 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

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本書は、IPOの値付け(いくらで株式を発行するか)に焦点を絞った研究書です。著者は、慶応大学名誉教授で、ファイナンス(特に企業金融論)を専門とする金子隆氏です。本書の執筆において著者は、いまの日本におけるIPOの値付けのあり方がいかに異常なものであるかを指摘し、その現象がなぜ起きているのかを解明し、正常な姿に戻すための制度の改善策の提言を行うことを、主たる目的としています。

本書は全体として、日本のIPOに関する2つの謎を提示し、その謎を解明するという構造になっています。1つ目の謎は、値付けと配分に関し、かつて導入されていた入札方式のもとで、平均10%台という高い初期収益率(株式の初値が公開価格をどれだけ上回ったかを示す比率)がなぜ発生しているのかということ、2つ目の謎は、ブックビルディング方式に移行してから、平均60%台後半という以上に高い初期収益率が発生しているのはなぜかということです。

これらの謎を解明するための前提知識として、入札方式・BB方式の解説や、過小値付け現象に関する先行研究などを紹介した後、2つの謎を解明していき、最後に著者が制度改善のための提言を行います。