【最新】ブロックチェーンを理解するためのおすすめ本 – 入門から活用事例まで

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ブロックチェーンとは?その仕組みは?

ブロックチェーンとは、ビットコインとともに発明された、取引の情報を記録するシステムのことです。現在は、仮想通貨だけでなく、金融、小売、物流、医療など様々な業界で活用されており、今後も活用事例が増えていくと考えられます。そこで今回は、ブロックチェーンについて入門・基礎から学べる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

 

 

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いちばんやさしいブロックチェーンの教本 人気講師が教えるビットコインを支える仕組み (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

ブロックチェーンの特徴をわかりやすく知る

本書は、様々な技術を用いて実現されるブロックチェーンを、技術に詳しくない人でも理解しやすいように解説しています。ブロックチェーンの仕組みについてもわかりやすく解説しており、ブロックチェーンの概要だけでなく、どうして実現できるかについても理解できるようになっています。

著者プロフィール

杉井靖典(すぎいやすのり)
カレンシーポート株式会社 代表取締役
一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC) 副代表理事

商用インターネット黎明期より、Web・IT分野の幅広い事業に携わる。So-net、Usen、NTT-X、サイバード、ザッパラスなど、在籍した企業ではプロデューサー、ディレクターとしてインターネットメディア事業、デジタルコンテンツ事業、EC・流通プラットフォーム事業などの企画開発を手掛ける。その後、EC流通支援事業の会社、デジタルコンテンツ流通事業の会社など複数の起業経験と失敗経験の両方を持ち、紆余曲折を経てカレンシーポートを創業。ブロックチェーンの実装案件では国内トップクラスの実績を持つほか、経済産業省、日本銀行、全国銀行協会などでも有識者としてアドバイスを行っている。

本書は、2017年7月時点での情報を掲載しています。
本文内の製品名およびサービス名は、一般に各開発メーカーおよびサービス提供元の登録商標または商標です。
なお、本文中には™️および®️マークは明記していません。

はじめに

ブロックチェーンとはなにか? これをやさしく解説するのは至難の業といえます。「ブロックチェーンは奥深く難しい」のです。仮想通貨やフィンテックの文脈で語られることが多いので、なんとなく「金融関連の基盤技術だろう」と思っている人もいるでしょう。あるいは「分散台帳技術だ」という人もいそうです。または「ブロックが連なるように情報を記録していくデータベースの一種だ」という人もいるかもしれません。これらは、いずれも正解です。ブロックチェーンは、なにか1つのアプリケーションとか、フレームワークに特化して、その作法を覚えればいい類の技術ではありません。暗号やデータ構造、P2P通信や分散システム、分散合意など、それぞれの要素だけでも専門書が1冊書けるような話が相互に絡まりあい、全体として、たった1つの目的である「取引帳簿の革命」をなす複雑系の話をする必要があるのです。

本書は、この難しい話を、技術畑以外の人でも理解しやすいように「ページの行き来は最小限にして、はじめから順に読んでいける。技術用語にはなるべく解説を入れる」という方針で解説を試みたものです。第1章でブロックチェーンとはなにかを端的に紹介し、第2章でビットコインの体験をします。そして第3章で暗号技術、第4章で分散ネットワークと、少々難しい話が続きます。しかしこれを押さえておかないと、第5章から第7章のブロックチェーン技術の解説が理解不能になるのです。

本書を読めば、ブロックチェーンとはなにかがわかるはずですが、読者の目的によって必要な情報は異なるでしょう。ブロックチェーンの特徴を知り、ビジネスに応用したいという人なら第1章、第2章と第7章、そして活用事例の第8章を読めばいいかもしれません。しかし「なぜそうなるの?」をきちんと知りたい人には、第3章~第6章で解説している暗号やトランザクションの知識が絶対に欠かせません。

超入門書か高度な専門書が多数を占めるブロックチェーン関連書籍市場のなかで、ブロックチェーンの全体像を基礎からしっかり学び、知識体力がつく本としてみなさまのお役に立てれば幸甚です。

2017年夏 杉井靖典

Contents
目次

著者プロフィール
はじめに
索引

Chapter1 ブロックチェーンとはなにかを知ろう
01 [ブロックチェーンのインパクト] なぜブロックチェーンが注目の技術だといわれるのか?
02 [ブロックチェーンの定義] ブロックチェーンの定義を読み解いてみよう
03 [ブロックチェーンの基礎] ブロックチェーンのおおまかな仕組みを知ろう①
04 [ブロックチェーンの基礎] ブロックチェーンのおおまかな仕組みを知ろう②
05 [ブロックチェーンの種類] パブリックチェーンとプライベートチェーン
06 [ブロックチェーンの特徴] ブロックチェーンのメリットとデメリットを知ろう
COLUMN ブロックチェーンと仮想通貨の関係

Chapter2 ビットコインを体験しよう
07 [ブロックと発行計画] ビットコインの生い立ちを知ろう
08 [ビットコインと電子マネー] ビットコインは電子マネーとなにが違うの?
09 [ビットコインのはじめ方] ビットコインをはじめよう①――必要なものを知る
10 [ビットコインのウォレット] ビットコインをはじめよう②――ウォレットの種類を知る
11 [ビットコインの取引口座] ビットコインをはじめよう③――取引口座を開設しよう
12 [ビットコインの入手] ビットコインを入手しよう
13 [ビットコインの送金方法] ビットコインを送金しよう
14 [セキュリティ] ビットコインのリスクを知ろう
15 [ビットコインとブロックチェーン] ビットコインの取引時にブロックチェーンではなにが起きているか?
COLUMN ウォレットの運用レベルはいろいろ

Chapter3 ブロックチェーンを支える暗号技術を学ぼう
16 [暗号技術の目的] 情報システムを支える現代暗号技術
17 [公開鍵と秘密鍵] 特定の人だけが情報にアクセスできる「公開鍵暗号」
18 [暗号の強度] 安全な暗号鍵を生成するために必要な乱数生成法
19 [ハッシュ関数の仕組み] デジタル文書の改ざんを検出する「一方向ハッシュ関数」
20 [ハッシュ関数の弱点] ハッシュ関数の「耐衝突性」
21 [電子署名とは] デジタル文書の作成者を証明する「電子署名」
22 [公開鍵認証基盤・PKI] 電子署名が本物であることを証明する「電子証明書」
23 [タイムスタンプとは] デジタル文書の作成時刻を証明する「タイムスタンプ」
24 [将来有望な暗号関連技術] 未来のブロックチェーンに求められる新暗号技術
COLUMN 誰でも量子コンピューターを使える時代になるとブロックチェーンはどうなる

Chapter4 ブロックチェーンを支える分散システムを学ぼう
25 [ブロックチェーンを支えるネットワーク] P2P分散システムについて知ろう
26 [P2P方式の特徴] P2P分散ネットワークの安全性と信頼性
27 [ブロックチェーンができないこと] CAP定理から見たブロックチェーン
28 [ブロックチェーンのデータストレージ技術] コンテントアドレスの仕組みを理解しよう
29 [ブロックチェーンの分岐] ブロックチェーンは全ノードが同じ計算を行う
30 [合意形成の仕組み] 分散システムにおいて「合意」を形成する方法を知ろう
31 [合意形成と仮想通貨] ブロックチェーンの合意形成方法「Proof of Work」「Proof of Stake」
32 [Proof of Workの合意] ブロックが分岐(フォーク)したときの解決方法
COLUMN ブロックチェーンの一時分岐と恒久的分岐の違い

Chapter5 ウォレットの仕組みを理解しよう
33 [ウォレットとは] 「ウォレット」は手持ちの残高がわかる仕組み
34 [ウォレットアドレス] ウォレットアドレスの導き方
35 [ウォレットアプリ] 取引窓口の役割を果たす「ウォレットアプリ」
36 [効率的なウォレットアドレスの管理方法] 決定性ウォレットアドレスの仕組みを知ろう
37 [ウォレットの種類] ホットウォレットとコールドウォレットの違い
38 [マルチシグネチャアドレス] 取引の署名権限を分散するマルチシグネチャアドレス
COLUMN 送金ができない読み取り専用のウォレット

Chapter6 ブロックチェーンに取引を記録するトランザクションについて学ぼう
39 [トランザクションとは] トランザクションの役割と中身
40 [帳簿の連続性] ウォレットアドレスの未使用残高「UTXO」
41 [合意の仕組み] トランザクションを合意する仕組み
42 [合意の逆転] ブロックチェーンのファイナリティ問題
43 [トランザクションの順序] トランザクションの順序性を担保する仕組み
44 [ブロックの構造] ブロックチェーンの耐改ざん性を担保する仕組み
45 [暗号通貨] コピーされても大丈夫なデジタルマネー「暗号通貨」
46 [ダブルスペンド] 二重送金(ダブルスペント)問題とその対策
COLUMN UTXOの概念は実に奥が深い

Chapter7 スマートコントラクトで契約を執行する仕組みを知ろう
47 [スマートコントラクトとは] 合意内容を自動的に実行する「スマートコントラクト」
48 [ワールドステート] 複雑な条件分岐を含む高度なスマートコントラクト
49 [支配者のいない組織] 自律分散型組織(DAO/DAC)の概念を知ろう
50 [外部データ参照とオラクル] 外部情報を参照して動くスマートコントラクト
51 [P2M・M2M] マシンがスマートコントラクトを利用するとどうなるか?
COLUMN スマートコントラクトでは、時刻による合意はできない

Chapter8 ブロックチェーンが活用される世界を想像してみよう
52 [仮想通貨の取引所] 仮想通貨交換業について知ろう
53 [法定通貨と仮想通貨] 法定通貨を流通させる方法を考えよう
54 [企業通貨の活用] 「ファン作り」や「キャッシュフロー改善」に企業通貨を活用する
55 [地域通貨の活用] インバウンド施策や地域活性化に地域通貨を活用する
56 [証券分野への適用と課題] 証券分野にブロックチェーン技術を適用する
57 [文書の管理] 証憑書類の保管・デジタル文書の真正性証明に活用する
58 [保険分野での活用] IoTとブロックチェーンで大きく変わる保険分野
59 [流通分野での活用] 流通のトラッキングに活用する
60 [エンターテインメント分野での活用] オンラインゲームでトークンを活用する
61 [コンテンツ流通での活用] コンテンツのDRMをブロックチェーンで実現する
62 [広告技術での活用] ブロックチェーンで広告技術が新たな革新を得る
63 [仮想通貨で資金調達] 新しい資金調達方法「ICO」について知ろう
64 [IoTとブロックチェーン] トークンを使ってIoTデバイスを制御する
65 [シェアリングエコノミー] シェアリングエコノミーへのブロックチェーンの応用
66 [電子投票システム] トークンで電子投票システムを実現する
COLUMN 本書から次のステップへ

マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ

マンガでブロックチェーンを学ぶ

ブロックチェーンがかなり注目されていますが、その仕組みやポイントなどは、難しいと思われがちです。そこで本書は、マンガで解説することによって、ブロックチェーンの大まかな仕組みや幅広い可能性をわかりやすく学べるようにしています。活用例も紹介されており、基本的なポイントを掴むことができます。

森 一弥 (著), 佐倉 イサミ (イラスト)
出版社 : 小学館 (2020/7/1)、出典:出版社HP

はじめに

「ブロックチェーンは難しそう」
この本を手にとっていただいた方はそう考えて、できるだけわかりやすい書籍をお探しになっていたのではないでしょうか?本書ではそんなご要望に沿うべくマンガを使って、できるだけ技術用語を減らしてポイントを押さえて解説しています。
ブロックチェーンはビットコインで採用された取引データを保存していく仕組みで、いろいろな場面で応用されることが期待されています。実際ビットコインは10年以上にわたって、世界中の誰もが使うことができるにもかかわらず、一度も止まらず動き続けています。ビットコインを作った人たちの多くは暗号学や数学の専門家ですので、どうしても説明が難しくなりがちです。しかし、ITの世界から見ると90年代にはすでに存在し、広く使われている技術を組み合わせたものなのです。
例えば、ブロックチェーンではP2P(Peer to Peer)という技術が使われ、稼働し続けています。これはコンピューターは必ずいつか壊れることを前提として中央管理するサーバーを持たず、すべてのデータを全員で持つという方法をとった結果です。これもちょっとした発想の転換ですよね。

「ブロックチェーンは確かにすごい技術かもしれないけど、仮想通貨以外に使い道なんてないんでしょ?」という方も、ぜひこの本を読んでください。ブロックチェーンはビットコインのイメージが強く、コインやトークンと呼ばれる使い方しか想像できないワナに陥りがちです。
トークンだけではなく場面にあった使い方が必要ですが、専門家でも発想が凝り固まっている人を多く見かけます。本書ではできるだけ柔軟に考えていただけるよう、金融以外の使い道を取り上げるようにしました。

世の中は今、いろいろな意味で転換期です。これまで取れなかった時間を新しいことの勉強に費やす方もいらっしゃるでしょう。新しいものを知ろうとする時、既存の固定観念が邪魔をしてしまうこともあります。ブロックチェーンを学びたい、使いたいという方もちょっとした発想の切り替えが必要です。本書があなたの新しいアイデアの一助になり、世の中を変えるきっかけになれれば幸いです。

森 一弥

森 一弥 (著), 佐倉 イサミ (イラスト)
出版社 : 小学館 (2020/7/1)、出典:出版社HP

目次
CONTENTS

はじめに

第1話 ブロックチェーンって何?
第2話 ブロックチェーンと仮想通貨
第3話 ブロックチェーンがつながっていく仕組み
第4話 ブロックチェーンを利用した「トレーサビリティ」
第5話 ブロックチェーンが得意なこと、苦手なこと
第6話 ブロックチェーンは世界でどう活用されているか?
第7話 ブロックチェーンとIoTを組み合わせるメリット
第8話 ブロックチェーンを決済サービスで使うには?
第9話 ブロックチェーンで町おこし~スマートシティ(前編)~
第10話 ブロックチェーンで町おこし~スマートシティ(後編)~
第11話 ブロックチェーンで使われる技術のまとめ
第12話 ブロックチェーンでつくる未来
One More Lesson1 ブロックチェーンで「ステーブルコイン」
One More Lesson2 ブロックチェーンで株主総会

COLUMN
①犯罪を防止し、消費者や投資家を守るために必要な「KYC」とは?
②仮想通貨の定義と規制を定めた金融商品取引法とは?
③ブロックチェーン情報の探し方
④ブロックチェーンに必要な合意形成「PoS」「PoW」って何?
⑤日本は今、ブロックチェーンの技術を身につけるチャンス!
⑥ブロックチェーンの活用には発想の転換が必要
⑦ブロックチェーンにおける「ウォレット」は秘密鍵をまとめたもの
⑧中部電力とアステリアによるブロックチェーンを使った電気自動車などの充電サービス

おわりに

森 一弥 (著), 佐倉 イサミ (イラスト)
出版社 : 小学館 (2020/7/1)、出典:出版社HP

ブロックチェーン入門 (ベスト新書)

ブロックチェーンの概要がよくわかる

多くの産業に影響を与えているブロックチェーンについて、一般の人でも手軽に理解できる内容になっています。技術背景やコンセプト、そして実用性など丁寧に解説されています。ブロックチェーンの基本的な技術が体系的にまとめられているため、入門書として最適の1冊です。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP

目次

序章 一躍注目されはじめたブロックチェーン
大きく変化したブロックチェーンを取り巻く世界
ブロックチェーンの持つ最大の魅力
あらゆる産業にイノベーションをもたらすブロックチェーン
今こそブロックチェーンを学ぶ絶好のチャンス

第1章 「信用」とは何か?
信用と信頼とは?
銀行に預けたお金は誰のもの?
中央管理者が富を独占する
中央集権管理の問題点
実は「シェアリングエコノミー」は、シェアしてはいない?

第2章 中央管理型から分散型へ
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンを支える3つの特徴
ブロックの生成とコンセンサスアルゴリズム
プルーフ・オブ・ワークとは?
マイナーは、どうしてマイニングを行うのか?
ブロックチェーンは、安全か?
複数のコンセンサスアルゴリズムが存在
正確性を担保する公開鍵暗号方式とは?
エスクロー取引を自動化する送金手段
パブリックチェーンとプライベートチェーン

第3章 発行主体のいない暗号通貨「ビットコイン」
通貨と貨幣
中央管理されてきた貨幣とその弊害
グローバルな決済手段VISA、Master、PayPalの登場
管理者のいない通貨、ビットコインの誕生へ
P2P送金により国際送金が今までよりも安く速い
取引内容は誰でも閲覧可能
取引がパンクする? ブロックサイズ問題とは?
通貨が分裂する? ハードフォーク問題とは?
取引所で暗号通貨を管理する際の注意点
ビットコイン以外の暗号通貨「アルトコイン」

第4章 スマートコントラクトで人の仕事はなくなる?
スマートコントラクトとは?
これまでの取引形態とスマートコントラクト
ブロックチェーンとスマートコントラクト
スマートコントラクトを拡張する「スマートオラクル」
イーサリアム以外のプラットフォームの登場

第5章 ブロックチェーンが巻き起こす産業改革
ブロックチェーンのもたらすパラダイム変化
ブロックチェーンのプロダクト活用のメリット
デジタル上の資産「スマートプロパティ」
ブロックチェーン普及の4つの波
プロダクト発展の4つのステップ
「国際送金」が変わる
「著作権の管理」が変わる
「制作業界」が変わる
「アート作品の管理」が変わる
「ヘルスケア」が変わる
「エネルギー産業」が変わる
「クラウドソーシング」が変わる
「土地登記」が変わる
「サプライチェーン」が変わる
「シェアリング・エコノミー2・0」

第6章 ブロックチェーンがつくる新たな経済圏とは?
新たな経済圏の可能性
経済圏の条件とは?
ブロックチェーンの生み出すボーダレスな経済
多種多様な経済圏が生まれる
ライターにとっての新たな経済圏「Steem」
クラウドセールという新しい資金創出のカタチ
ブロックチェーンにより、会社はなくなるか?
ブロックチェーンにより、政府はなくなる?

あとがき

◉イラスト/清水舞子

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP

序章
一躍注目されはじめたブロックチェーン

大きく変化したブロックチェーンを取り巻く世界

ここ1年でブロックチェーン技術を取り巻く社会は大きく変化しました。連日、ニュースの見出しにブロックチェーンおよびビットコインという言葉が踊っています。こんなことは、1年前は想像ができませんでした。フィンテックの一部として語られることの多かったブロックチェーンも、最近はインターネットと同様のインパクトを持った技術革新とも言われています。
確かに、ブロックチェーン技術は破壊的なイノベーションを巻き起こす可能性があります。この本を手に取っている方の大半は5年、いやもっと早くて3年以内には、知らず知らずのうちに生活の一部として、ブロックチェーンに触れることになるでしょう。

その一方で、ブロックチェーンという言葉が独り歩きしていることも否めません。ブロックチェーンという言葉が出てきた時に、それがパブリックブロックチェーンのことを指しているのか、はたまたプライベートチェーンなのか、それともビットコインを指しているのか、分散型台帳のことなのかと、混乱することもしばしばです。本書では読者の方にできる限り誤解を与えないように、用語の使い分けをしていきたいと考えています。

本書では、「ブロックチェーン」と総称する際は、パブリックブロックチェーンのことを指します。
また、ここでブロックチェーンとビットコインについても本書の立場を明確にしておきたいと思います。ブロックチェーンとビットコインの関係性については、鶏が先か卵が先かといった議論が絶えませんが、本書ではあくまでもビットコインは、ブロックチェーンの最初の実用例という位置づけを取りたいと思います。
もちろん、ビットコインがなければブロックチェーンという仕組みが注目されるには、もっと時間がかかったかもしれません。これは、ビットコインの発展に寄与した多くの有志たちの成果でしょう。これまでのブロックチェーンの発展は彼らのものといっても過言ではないでしょう。
ですが、あえてブロックチェーンの今後の発展のため、読者の方々にビットコインのほかにもより多くの可能性や未来を見ていただくために、前述のように、「ブロックチェーンは、ビットコインのような偉大な発明も実現できる技術である」という立場を取りたいと思います。

ブロックチェーンの持つ最大の魅力

さて、ブロックチェーンの話に戻りましょう。ブロックチェーンが注目を浴びているというのは、皆さんもご存じのとおりですが、どうして注目されているのか、また注目に値するのかを、私個人の話を交えながら触れていきたいと思います。

私自身、中高生の頃からヤフーオークションや楽天オークションといったWebサービスをパソコンで利用して、個人同士が商品売買を行うということに慣れ親しんできました。そして、最近ではメルカリやフリルといった消費者C2Cのフリマアプリが登場し、スマホから商品の売買を行うことが可能となりました。C2Cとは、Consumer to Consumerの略で、「一般消費者と一般消費者の間の取引」を意味します。しかし、お金のやり取りだけは以前と同様で、銀行振り込みやクレジットカード決済、はたまたコンビニ支払いのままでした。お金の流れだけが、個人同士では行えないままだったのです。

前述したとおり、ブロックチェーン技術の代表的な実用例は、ビットコインです。ビットコインであれば、銀行などの仲介業者を介することなく、取引することが可能です。
私は、この仲介業者なしに利用者同士が直接取引できる、ピア・ツー・ピア(P2P)という性質に大きな魅力を感じました。これまで変わっていなかったお金の流れを、ついに個人同士にできる技術だとピンときたのです。

既存のビジネスの大半が、仲介業者がいるビジネスモデルであり、最近話題のシェアリングエコノミーですら、仲介業者がいます。現在はまだ、間に立つ仲介業者がお金やその他の富を独占する傾向にあります。
仲介業者も営利的に活動を行う以上、仲介先の双方が儲かるばかりでは、商売になりません。そのため、自ずと仲介業者が得をして、仲介先が多少なりとも搾取されるといった構図にならざるを得ません。
それがブロックチェーンにより、大きく変革する可能性があります。

ブロックチェーンの本質は、中央管理者のいないこと、つまり分散化です。分散化によって、より個人が何者かのルールに縛られることなく自由な選択肢を持つことができるだろうと私は考えています。そのため、ブロックチェーンとは、より個人をエンパワーメントするものと捉えています。
これは、インターネットにより誰もが自由に情報を発信できるようになったことで、個人をエンパワーメントしたことと同様です。
近頃の例で言うと、TwitterやInstagramの「インフルエンサー」と呼ばれるユーザー達や、動画配信サービスYoutubeの人気配信者「Youtuber」といった存在はインターネットによる個人のエンパワーメントの顕著な例でしょう。
ブロックチェーンの分散化という威力が、あらゆる産業にイノベーションをもたらす可能性があるのです。そのため、注目をされていますし、注目に値する技術であると考えています。

あらゆる産業にイノベーションをもたらすブロックチェーン

ブロックチェーンが関係する市場規模は、平成27年度に経産省が提出した「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」の内容によると67兆円と推定されています。
ブロックチェーンの大きな特徴としては、改ざんが非常に困難であること、中央管理者がおらず複数でネットワークを維持するため、実質的に障害が発生することでサービスおよびネットワーク自体が利用できなくなるといったリスクが、限りなくゼロに近いこと(ゼロ・ダウンタイム)があります。

実際に、ブロックチェーン技術を基盤とするビットコインは2009年に始動して以来、一度もダウンしていません。皆さんも、Webサイトにアクセスしようとした際に、そのページが表示されないといったことを経験したことがあるはずです。そのようなことが一度もなかったということです。
これはすごいことで、皆さんが信頼をおいて利用している銀行のシステムでさえ、障害が起きたりシステムダウンをさせないために日々メンテナンスを行っています。
また、ブロックチェーンの具体的な活用例としては、ビットコインとも比較しやすい電子マネーやポイント、地域通貨にはじまり、電子クーポンやEチケットから土地登記、電子カルテまでに及びます。
さらに、スマートコントラクトと呼ばれるブロックチェーン上で自動取引を可能にするコンセプトと組み合わせることで、あらゆる商取引を自動化することが可能です。
これまで仲介業者を必要としていた、業務プロセスのすべてが変わる可能性があるのです。これらは、もしかすると人工知能が人の仕事をなくすことよりも、現実的でよりインパクトがあるかもしれません。
具体的には、銀行が行ってきた送金業務はもちろんのこと、会計業務や国を横断した製品の流通管理まで、自動的に行われる未来が訪れます。
それに加えて、昨今注目を集めているシェアリングエコノミーのビジネスモデルも大きく変化する可能性があります。
シェアリングエコノミーは、企業がサービスを提供するのではなく、個人が直接結びつくことでサービスやモノを提供し、従来企業が管理することでかかっていたコストを削減し、消費者はより安価にサービスを受けれるようにします。
そしてサービス提供者はより多くの収入を上げ、消費者はより安価にサービスを受けることができる、まさにウィン-ウィンな関係を築くことで急速に発展してきました。しかし、それでもシェアリングエコノミーを成り立たせるために仲介に立つC2C企業が富を独占してしまう傾向が起きています。
実際にスマホアプリを使ったタクシー配車サービスのUber(ウーバー)においても急な報酬の減額によって一時期ドライバーたちによる抗議が行われました。
現在、C2C企業が行っている利用者同士のマッチングおよび仲介業者が一時的に代金を預かるエスクロー型の代金支払いですが、ブロックチェーンおよびスマートコントラクトで代用することで、コストを削減し利用者がより恩恵を受けることができるようになるでしょう。

ブロックチェーンは、モノのインターネットと呼ばれるIoTとも相性が良いとされています。むしろ、ブロックチェーンによって、IoTは真価を発揮するとも言われているくらいです。

これまで、IoTにおいて懸念されていた点としてセキュリティ問題が挙げられます。デバイスやセンサーに不正にデータが送信されたり、記録されているデータを改ざんされないかという問題です。ここに改ざんが困難であるブロックチェーンの特徴を活かすことで、解決を図ることができます。
さらに、スマートコントラクトとも関連させることで、デバイスやセンサーで特定のデータを受信した際に、自動的に一連の取引を実行するということも可能になるため、IoTの可能性をさらに拡大できるでしょう。
このようにブロックチェーンの持つ特徴は、様々な分野に応用することが可能です。もちろん、すぐにすべてが変わるというわけではありませんが、着実にブロックチェーンの波は多くの産業を包み込んでいくでしょう。

今こそブロックチェーンを学ぶ絶好のチャンス

さて、改めてになりますが、ビットコインが発明され運用されはじめたのは、2009年です。歴史的には、まだ10年の歴史もありませんが、現在では、ビットコインに勘定機能以外を持たせようとする技術も数々登場しています。これはまさに、インターネットにおけるTCP/IP上に「http, ftp, smtp」など用途別にアプリケーションレイヤーの技術が整備されていった時代と同時期にさしかかっています。
言うなれば、今は1990年代のインターネット黎明期そのものなのです。ここから、ブロックチェーンがあらゆる産業に影響を与え、新しいサービスを生み出していく時代に急速に突入していくでしょう。
その一方でブロックチェーンについて詳しい人間は多くありません。日本国内においてもブロックチェーンを扱えるエンジニアはごく少数です。
それは、ビジネスマンも同様で、ブロックチェーンについて正しく理解しビジネスへの活用までを考えられる人が不足しています。
ブロックチェーンは、これまでのビジネスモデルを変革する可能性を持っているものの、分散化というコンセプトからも理解しにく代物です。逆に言うと、理解しにくいため大半の人が二の足を踏んでいる今が最大のチャンスとも言えます。
実際、私のようにもともと技術畑の人間でなくとも、興味を持って学ぶことでブロックチェーンの知識を持っていると、このように筆をとる立場にもなることが可能です。

本書では、ブロックチェーンとその背景にあるコンセプトや仕組み、そしてビットコインなどの実用性について解説します。そして、できる限り皆さんに、分散化のもたらす可能性について触れていただければと思います。
いち早くみなさんがブロックチェーンの波に飛び込む契機となれば幸いです。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP

図解即戦力 ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書

図解で学ぶ、ブロックチェーンの仕組みと開発

本書は、ブロックチェーンに興味を持ったエンジニアやビジネスパーソンを対象としており、図を多く用いて、ブロックチェーンのコア技術などをわかりやすく解説しています。ビットコインの仕組みやブロックチェーンを支える技術、スマートコントラクトや技術的課題が扱われています。

コンセンサス・ベイス株式会社 (著)
出版社 : 技術評論社 (2019/9/2)、出典:出版社HP

はじめに

日々のニュースや、新聞・雑誌などでよく目にする「ブロックチェーン」は、「インターネット以来の革命的な技術」とも言われ、注目されています。しかし、これを自分の言葉で説明できるエンジニア・ビジネスパーソンは多くはないのではないでしょうか。

さらにブロックチェーン自体もまだまだ発展途上の技術で、幅広く使われているイーサリアムでさえ、今後多くのバージョンアップを予定しています。業界に身をおいている筆者でも、1ヶ月間技術動向を追わなかっただけで、最新情報から取り残されてしまうのです。そして、最新技術動向にキャッチアップするためには、基礎的なブロックチェーンの仕組みの理解が欠かせません。

本書は、ブロックチェーン技術に興味を持ったエンジニアや、その仕組みを学び、自分の仕事に活かしたいビジネスパーソンを対象にして、ブロックチェーンのコア技術とネットワーク維持の仕組みを平易な言葉で解説しています。この本を読んだうえで、実際にコードを書くような専門書、ブロックチェーンビジネスの解説書を読むことで、理解度が飛躍的に高まるでしょう。

本書の執筆に協力してくださった、一山宗太郎さん、姫田樹さん、柳原健志さん、濱田行徳さん、および技術面でアドバイスをくださった加寄長門さんに、この場を借りてお礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。

2019年8月8日 著者

はじめにお読みください
本書に記載された内容は、情報の提供のみを目的としています。したがって、本書を用いた運用は、必ずお客様自身の責任と判断によって行ってください。これらの情報の運用の結果について、技術評論社および著者はいかなる責任も負いません。
本書記載の内容は、第1刷発行時のものを掲載しています。そのため、ご利用時には変更されている場合もあります。また、ソフトウェアはバージョンアップされることがあり、本書の説明とは機能や画面が異なってしまうこともあります。
以上の注意事項をご承諾いただいた上で、本書をご利用願います。これらの注意事項をお読みいただかずにお問い合わせいただいても、技術評論社および著者は対処できません。あらかじめ、ご承知おきください。
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●なお、本文中に™️マーク、®️マーク、©️マークは明記しておりません。

コンセンサス・ベイス株式会社 (著)
出版社 : 技術評論社 (2019/9/2)、出典:出版社HP

目次 Contents

1章 ブロックチェーンの基礎知識
1 ブロックチェーンとは何か
2 ブロックチェーンの特徴
3 ブロックチェーンの歴史
4 プライベートチェーン
5 パブリック・プライベートチェーンの開発方法の違い
6 ブロックチェーンの活用事例

2章 ビットコインブロックチェーンの仕組み
7 ビットコインの動作
8 P2Pネットワーク
~中央管理者のない分散環境のメリット
9 トランザクション
~取引履歴によって通貨を表現
10 ブロック
~取引が記録されたデータの塊
11 ビットコインマイニング
~ビットコインに価値が生まれる理由
12 コンセンサスとフォーク
~P2Pにおける合意形成の仕組み
13 マイニングプールとクラウドマイニング
14 オーファンブロック
~チェーンから外れた孤立ブロック
15 フルノードと軽量クライアント

3章 ビットコインブロックチェーンを支えるコア技術
16 ビットコインネットワーク
17 トランザクションとブロックの伝播
18 メモリープールとペンディングトランザクション
19 公開鍵暗号方式
~分散環境でセキュリティを担保するコア技術
20 デジタル署名
~データが改ざんされていないことを保証する
21 ハッシュ関数
〜元のデータを再現できない特徴を活用
22 ビザンチン将軍問題
~偽の情報伝達の問題と対策
23 reorg
~チェーンを正当な状態に再編成
24 データベースとしてのブロックチェーン
25 電子マネーと仮想通貨は何が違うのか

4章 ブロックチェーンを支える周辺技術
26 ホットウォレットとコールドウォレット
27 マルチシグ
~複数の署名でセキュリティ向上
28 UTXOとアカウントモデル
~残高管理の仕組みとメリット・デメリット
29 PoW (Proof of Work)
~ビットコインのセキュリティを高める仕組み
30 PoS (Proof of Stake)
31 BFT
~合意形成を行う仕組み
32 サイドチェーン
~ブロックチェーンの機能を拡張する技術

5章 スマートコントラクトとDApps
33 スマートコントラクトとは
~分散ネットワーク上での契約締結・自動執行
34 分散型アプリケーションとDAppsブラウザー
35 イーサリアムとEnterprise Ethereum
36 EOS
~イーサリアムの対抗プラットフォーム
37 Hyperledger FabricとCorda
38 オラクル
~現実世界の情報をブロックチェーンに提供
39 スマートコントラクトの応用例

6章 ブロックチェーンの技術的課題
40 スケーラビリティ
~チェーンの負担と拡張性の問題
41 Lightning Network
~ビットコインのスケーラビリティを解決
42 Raiden NetworkとPlasma
~イーサリアムのスケーラビリティを解決
43 CasperとSharding
~その他のスケーラビリティ解決技術に匿名性
44 匿名性
~取引履歴をすべて追跡できる問題
45 51%攻撃
~計算能力の過半を支配することによる弊害
46 シビルアタック
~多数決による合意の危険性
47 Block Withholding Attack
~最長チェーンを隠して不正取引をもくろむ
48 Nothing at Stake
~「何も賭けていない」ことによる問題

7章 ブロックチェーンの最新動向
49 クロスチェーン
~相互運用性を実現する最新技術
50 ブロックチェーンゲーム
~ゲーム分野へのブロックチェーン応用
51 ステーブルコイン
~価格を安定させ、利便性を高めた通貨
52 ICOとSTO
~仮想通貨発行による資金調達
53 トークンエコノミー
トークンを介した新たな経済圏の創出
54 ブロックチェーン学習の手引き

索引

コンセンサス・ベイス株式会社 (著)
出版社 : 技術評論社 (2019/9/2)、出典:出版社HP

堅牢なスマートコントラクト開発のためのブロックチェーン[技術]入門

基本的なブロックチェーン技術とセキュリティの考え方を学ぶ

ブロックチェーンの技術的な理解とセキュリティを意識した開発の仕方がテーマになっている本です。これからブロックチェーンを利用したサービスを開発しようと考えているエンジニア向けの内容となっており、イーサリアムなどの仕組みや脆弱性を減らすためのポイントなどについても書かれています。

田篭 照博 (著)
出版社 : 技術評論社 (2017/10/27)、出典:出版社HP

はじめに

本書は、昨今注目を集めているブロックチェーンを活用して、新たなアプリケーションを開発しようとしているエンジニアを対象としています。ブロックチェーンはまだまだ未成熟な技術が故にセキュリティプラクティスも十分に知れわたっておらず、ちょっとした考慮漏れにより脆弱性を生み出してしまい、多大な被害を受けてしまうリスクがあります。そのため、セキュリティに懸念がありビジネス応用へ踏み出せない企業が多いのも現状です。

ブロックチェーンの仕組みそのものはさまざまな暗号技術の上に成り立っており、従来のアプリケーションよりもセキュリティレベルが高い側面もあります。しかし、ブロックチェーンを活用する場合は、ブロックチェーンの上に独自アプリケーションを開発する必要があり、十分なセキュリティ対策を行わずに、スピード重視でリリースしてしまうと、脆弱性を突かれ多大な被害を生み出してしまう危険性があります。

そこで、本書ではブロックチェーンを安心に利用できるようにセキュリティに重きを置いた内容になっています。特にセキュリティが懸念されるのがスマートコントラクトと呼ばれる、ブロックチェーン上で実行可能な誰でも自由に開発できるプログラムの脆弱性です。ブロックチェーンを活用したアプリケーションは、スマートコントラクトの開発を伴うのが一般的になると考えられますが、スマートコントラクトは脆弱性を生みやすいうえに、常に攻撃者に晒されるというリスクが付きまといます。

実際に、スマートコントラクトの脆弱性に起因した被害事例は複数あり、例えば、2016年の「The DAO事件」と呼ばれる事例では、当時の価値にして約52億円、2017年7月の「Parityのマルチシグウォレット」と呼ばれるスマートコントラクトの脆弱性では当時の時価にして約34億円の被害がありました。

ブロックチェーンに限りませんが、新しい技術を利用する場合は、表面的な概念だけではなく、それぞれの要素技術の深い知識が要求されます。そのため、本書では紙面が許す限り、個々の要素の詳細を説明することに努めています。

筆者自身、ブロックチェーンを初めて技術レベルで理解した際には、その技術の高さと、ブロックチェーンがもたらすパラダイムシフトの可能性について、技術者として奮い立つほどの衝撃を受けました。しかし、The DAO事件のような事例によって、ブロックチェーンそのものが「危険なもの」として扱われ、せっかくの素晴らしい技術が敬遠されてしまうのは看過できません。

そこで、このような被害を防ぎ、ブロックチェーンの普及に少しでも貢献したいと考え、本書を執筆するに至りました。本書がブロックチェーンの理解と、ブロックチェーンを活用したセキュアなアプリケーション開発の一助になればと願います。

2017年7月
田篭照博

田篭 照博 (著)
出版社 : 技術評論社 (2017/10/27)、出典:出版社HP

本書の構成

本書の目的は、単に動くスマートコントラクトを開発するだけではなく、セキュリティレベルの高い堅牢なスマートコントラクトの開発ができるようになることです。実際に、Part3とPart4でスマートコントラクトを開発していますが、前提としてブロックチェーンに関する一定レベルの知識も必要になってきます。そのため、本書の構成はブロックチェーンそのものを理解したうえで、堅牢なスマートコントラクトの開発手法について学ぶ流れになっています。

Part1: ブロックチェーンと関連技術
ブロックチェーンの概要を説明して、全体像を把握できるようにしています。また、ブロックチェーンの理解に欠かせない、暗号技術も簡単に説明しています。

Part2: ビットコインネットワーク
ビットコインネットワークの仕組みについて、「ウォレット」「トランザクション」「ブロック」「コンセンサスアルゴリズム」といった構成要素に分解し、仕様レベルまで踏み込んで説明します。すでに多くのブロックチェーンネットワークが存在していますが、ビットコインネットワークを理解することは非常に重要です。本Partでブロックチェーンの基礎力をつけてください。

Part3: Ethereumとスマートコントラクト開発
ブロックチェーンネットワークのEthereum(イーサリアム)の仕組みを説明します。基本的な概念はビットコインネットワークと同じところも多いので、主にその違いを説明しています。また、Ethereumを実際にコマンドを介して操作することで、ここまで説明してきたブロックチェーンの知識についてさらに深く理解できるはずです。さらに本PartではEthereum上で動くサンプルプログラムをいくつか用意しています。

Part4: スマートコントラクトのセキュリティ
堅牢なスマートコントラクトを開発するためのセキュリティプラクティスと、脆弱性の仕組みや攻撃手法についてサンプルを通じて説明します。脆弱なコード例、攻撃方法、コードの修正という構成になっていて、実際に体験いただくことで深い理解を得られるでしょう。最後の章では実際にブロックチェーン関連で過去にあった脆弱性の事例を紹介し、ブロックチェーンを活用したサービスのセキュリティ対策について考察しています。

なお、本書に掲載したサンプルソースは、本書のサポートページよりダウンロードできますので、ご利用ください。
URL http://gihyo.jp/book/2017/978-4-7741-9353-3

田篭 照博 (著)
出版社 : 技術評論社 (2017/10/27)、出典:出版社HP

堅牢なスマートコントラクト開発のためのブロックチェーン[技術] 入門◉目次

はじめに
本書の構成

Part1 : ブロックチェーンと関連技術
Chapter1 ブロックチェーンの全体像
1.1 : ブロックチェーン
ブロックチェーンとは
ビットコインとは
1.2 : ビットコインネットワーク
1.3 : Ethereum
1.4 : ブロックチェーンネットワークの構成要素
P2P(ピア・ツー・ピア)
参加者
トランザクション(取引)
ブロック
分散台帳
マイニング

Chapter2 ブロックチェーンを理解するための暗号技術
2.1 : ハッシュ関数
SHA-256
RIPEMD-160
HASH160
2.2 : 公開鍵暗号
2.3 : 楕円曲線暗号
楕円曲線
加算
倍算
秘密鍵と公開鍵の生成方法
2.4 : デジタル署名
デジタル署名と検証の流れ

Part2 : ビットコインネットワーク
Chapter3 お金のように扱える仕組み
3.1 : 所有者を特定する「鍵」と「錠」
3.2 : 送金先となる「アドレス」
Base58Checkエンコード
アドレスを生成する流れ
3.3 : 鍵を管理する「ウォレット」
3.4 : ウォレットの種類
パソコン上のウォレット
モバイルウォレット
取引所のウォレット
ペーパーウォレット
ハードウェアウォレット

Chapter4 トランザクション
4.1 : トランザクションのライフサイクル
4.2 : トランザクションの概要
送金の流れ(例)
4.3 : トランザクションの構造
Locktimeフィールド
4.4 : UTXOと残高
4.5 : Locking ScriptとUnlocking Script
スクリプトの検証の仕組み
トランザクションの一部に署名する
Pay to Pubkey
MultiSig (Pay to MultiSig)
Pay to Script Hash (P2SH)
OP_RETURN

Chapter5 ブロックとブロックチェーン
5.1 : ブロックの構造と識別子
5.2 : ブロックからトランザクションを検索する(マークルツリー)
マークルツリー

Chapter6 マイニングとコンセンサスアルゴリズム
6.1 : ビザンチン将軍問題と分散型コンセンサス
6.2 : Proof-Of-Work
問題を解く=Nonceを見つけること
総当たりでNonceを試す
検証する
改ざんが極めて困難な理由
6.3 : トランザクションの集積
6.4 : マイナーの報酬トランザクション(coinbaseトランザクション)
6.5 : チェーンの分岐(フォーク)
トランザクションが同時に発行された場合
6.6 : 51%攻撃

Part3 : Ethereumとスマートコントラクト開発
Chapter7 Ethereumとビットコインネットワークの主な違い
7.1 : Ethereumの特徴
流通通貨
スマートコントラクト
アカウント
ブロックのデータ構造
ステート(状態)の遷移
アカウントに紐づく情報
トランザクション、メッセージ、コール
Gas
7.2 : ネットワークの種類
パブリックネット
プライベートネット
テストネット

Chapter8 スマートコントラクト開発の準備とSolidityの基本文法
8.1 : 環境構築
gethのインストール
Genesisブロックの作成とgethの起動
アカウントの作成
gethコンソールでよく使うコマンド
8.2 : Ethereumの公式ウォレット(Mist Wallet)
インストールと起動(Windowsの場合)
インストールと起動(macOSの場合)
Mist Walletアプリケーション
8.3 : Remix-Solidity IDE
8.4 : Solidity言語仕様
アクセス修飾子

Chapter9 スマートコントラクトの用途別サンプル
9.1 : サンプル(その1)―HelloEthereum
新しいコントラクトをデプロイする
ソースコードを記述してコントラクトを指定する
コントラクトを生成する
Provide maximum feeとパスワードの設定
CONTRACTS画面から遷移する
トランザクションを発行する
コントラクトの情報を表示する
トランザクションを実行する
Mist Wallet上でトランザクションの変更結果を確認する
9.2 : サンプル(その2)―クラウドファンディング用のコントラクト
コントラクトを生成する
キャンペーンに成功するケース
キャンペーンに失敗するケース
9.3 : サンプル(その3)―名前とアドレスを管理するコントラクト
動作を確認する
9.4 : サンプル(その4)―IoTで利用するスイッチを制御するコントラクト
コントラクトの利用の流れ
動作を確認する
9.5 : サンプル(その5)―ECサイトで利用するコントラクト
9.6 : サンプル(その6)―オークションサービスで利用するコントラクト
9.7 : サンプル(その7)―抽選会で利用するコントラクト

Part4 : スマートコントラクトのセキュリティ
Chapter10 スマートコントラクトのセキュリティプラクティス
10.1 : Condition-Effects-Interactionパターン
10.2 : Withdrawパターン(push vs pull)
push型のパターン
pull型のパターン
10.3 : Access Restrictionパターン
事例
10.4 : Mortalパターン
10.5 : Circuit Breakerパターン

Chapter11 スマートコントラクトの脆弱性の仕組みと攻撃
11.1 : Reentrancy問題
攻撃を受ける側のコントラクト
攻撃する側のコントラクト
一連の流れ
割り当てるアドレス
Reentrancy問題を体験する
イベントを確認する
修正後の結果
11.2 : Transaction-Ordering Dependence (TOD)
11.3 : Timestamp Dependence
11.4 : 重要情報の取り扱い
11.5 : オーバーフロー

Chapter12 事例から学ぶブロックチェーンのセキュリティ
12.1 : サードパーティの脆弱性(Solidity脆弱性)
12.2 : クライアントアプリの脆弱性と鍵管理(Jaxx脆弱性)
注意点

おわりに
参考図書
索引

田篭 照博 (著)
出版社 : 技術評論社 (2017/10/27)、出典:出版社HP

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン

ビットコインの基礎がわかる

本書は、ビットコインについて解説している本です。ビットコインの何が画期的で、どのような性質を持っているのか、どのような仕組みなのか、といった基本的な内容が多くなっています。ブロックチェーンの説明は大まかなもので、ビットコインにまつわる内容が多いと思います。

大塚 雄介 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2017/3/24)、出典:出版社HP

はじめに

ビットコイン・ブームが起きています。
本書執筆時点(2017年2月)のビットコインの時価総額は169億ドル。1ドル=110円で計算すると、1兆8590万円になります。驚くべきはその伸び率で、1年前の57億ドルのおよそ3倍にまで膨らんでいます。2年前は30億ドルですから、この1年で急成長したことがわかります(図1)。

また、ビットコインのユーザー数も拡大の一途をたどっています。2017年2月時点のユーザー数は世界で1186万人。1年前は580万人ですから、およそ2倍。2年前は290万人なので、倍々ゲームで増えてきているわけです(図2)。

世界中から熱い視線が注がれているビットコインですが、はたしてそれがどんなものなのか、よくわからないという人が多いのが現状ではないでしょうか。ビットコインは仮想通貨(バーチャル・カレンシー)といわれますが、バーチャルなだけに手に取って触ることができないため、それがどんなものか、意外と知られていないようです。
これからくわしく説明しますが、ビットコインは、ブロックチェーンという新技術によって生まれた「仮想通貨」であり、電子データで表される「デジタル通貨」であり、高度な暗号セキュリティに守られた「暗号通貨」であり、特定の国に属さない「国際通貨」であり、分散型ネットワークに支えられた「民主的な通貨」でもあるという、きわめて複雑な特徴を持っています。
でも、使い方はごく簡単。スマートフォンに専用アプリをインストールして、必要事項を入力。本人確認書類を送って承認されれば、すぐにはじめることができます(使い方はAページ参照)。そして、実際に使ってみれば、直感的に「ああ、こういうことか」とわかるはずです。

本書は、デジタル時代に新しく生まれたビットコインと、それを支えるブロックチェーン、さらに大きなフィンテック(ファイナンシャルテクノロジーの略)の広がりについて、みなさんに身近に感じてもらうことを目的に書かれています。そのため、三つの円の内側(ビットコイン)から外側(フィンテック)へと、順番に解説していきます(図3)。

PART1では、ビットコインとはいったい何なのか、を丁寧に説明します。円やドルとどう違うのか。クレジットカードや電子マネー、ポイントカードとはどう違うのか。どこで手に入れて、何のために使うのか。みなさんの素朴な疑問に一から答えます。
PART2では、ビットコインの仕組みを掘り下げます。なぜ実体のないバーチャルなお金に価値があるのか。ブロックチェーンやマイニング、ハッシュ関数など、ビットコインのことを調べると必ず出てくるキーワードについて、理解を深めていただきます。
PART3では、ビットコインの安全性とルールについてまとめます。新しい技術には不安がつきものです。デジタルデータなだけに、コピーされたり、改ざんされたり、盗まれたりする心配はないのか。マネーロンダリング(資金洗浄)など不正に利用される心配はないのか。技術的な説明と、ルールづくりの状況をあわせて紹介します。
PART4では、ビットコイン以外の仮想通貨を紹介します。ブロックチェーンという画期的な技術によって、さまざまな仮想通貨が登場しています。その中から代表的なものをいくつか取り上げます。
そして、最後のPART5では、フィンテックというより大きな枠組みで見たときに、どんなサービスがあるのかを紹介します。ブロックチェーン以外の技術をベースにした、スタートアップが牽引する新しい金融サービスの中で、既存の金融機関はどんな役割を果たすのか。そうしたことも述べてみたいと思います。

本書を読み終えた頃には、みなさんはきっと、ビットコインやブロックチェーン、フィンテックについて、誰かに語れるだけの知識を身につけているはずです。
テクノロジーによって、世の中はどんどん便利になります。本書をきっかけに、ひとりでも多くのみなさんが、実際に仮想通貨を使ってみたり、各種サービスを利用したりして、その効果を実感してほしいと願っています。

2017年2月
大塚 雄介

大塚 雄介 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2017/3/24)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

プロローグ
今日からはじめるビットコイン入門

PART1 ビットコインって何なの?
ビットコインは現金とどう違うの?
ビットコインはクレジットカードとどう違うの?
ビットコインは電子マネーとどう違うの?
ビットコインはポイントやゲーム内通貨とどう違うの?
ビットコインはどうやって手に入れるの?
ビットコインを使うメリットは?①投資対象として
ビットコイン価格はどうやって決まるの?
ビットコインを使うメリットは?②送金手段として
海外送金ってどんなときに必要なの?
ビットコインで買い物ができるって本当なの?

PART2 ビットコインの仕組みはどうなっているの?
バーチャルなお金にどうして価値が生じるの?
ビットコインは誰がつくっているの?
ビットコインの最初の取引は?
ブロックチェーンってどんな技術?
マイニングって具体的に何をしているの?
ビットコインには終わりがある?
ビットコインに死角はないの?

PART3 ビットコインの安全性や法整備はどうなっているの?
ビットコインがコピーや改ざんされる心配はないの?
ビットコインが盗まれる心配はないの?
送金中に誰かに抜き取られる心配はないの?
マネーロンダリングに利用される心配はないの?
ビットコインの法整備、会計ルール、消費税の扱いは?

PART4 仮想通貨とブロックチェーンはどこまで広がるの?
仮想通貨にはどんな種類があるの?
ナンバー2の仮想通貨「イーサリアム」の特徴は?
イーサリアムの分裂騒動って何なの?
オンライン賭け市場の専用チップ「オーガー」って?

PART5 フィンテックが実現する未来とは?
フィンテックっていったい何なの?
次にどんなサービスが登場するかは予測できる?
フィンテックにはどんな種類があるの?
銀行間送金サービスの三つ巴の戦いとは?

大塚 雄介 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2017/3/24)、出典:出版社HP

今日からはじめるビットコイン入門

ビットコインの使い方はとても簡単。現金を「入金する」「出金する」、ビットコインを「売る」「買う」、ビットコインを「送る」「受け取る」の6つの操作がわかれば、いますぐはじめることができます!

2017年は、ビットコイン関係者の歓喜と悲鳴とともに幕を開けました。
2016年の後半はだいたい「1BTC(ビットコインの単位です)=6万円台」で落ち着いていたビットコイン相場(ビットコインと円の交換レート)が、1月あたりからジリジリと上がりはじめ、2016年末に一時12万円台に達します。
年が明けてからもその勢いはとまらず、1月5日にはついに15万円を突破して大騒ぎになりますが、その日の夜から突然急落し、日付が変わる頃には一時11万円を割り込むところまで落ち込みます(ちなみに、ビットコインの取引は24時間365日可能です。クリスマスや年末年始も休みはありません)。
ビットコイン価格が急落したのは、相場に大きな影響を持つ中国で資本規制が強化され情報が流れたからですが、1月6日の明け方には早くも持ち直し、昼頃までには13万円台まで回復して、その後10万円前後で落ち着きました。まるでジェットコースターのような値動きです(図4)。

これだけ価格変動が激しいのは、ビットコインに対する「期待」と「不安」が高まっている証拠です。そして、これだけボラティリティ(変動幅の比率)が高いということは、投資対象としては、リスクはそれなりにあるものの、その分、魅力も大きいということになります。あらゆる投資の基本は、安く買って高く売ることだからです。
このように、仮想通貨のビットコインはいまやブームの様相を呈しています。
これから、ビットコインはどんなものか、どんなときに使えるのか、くわしく解説していきますが、お金の価値は、使ってみてはじめて実感できるものです。
ごく簡単な手続きだけではじめることができるので、とにかく試しに使ってみたいという人のために、PART1に入る前に「ビットコインの使い方」をひと通り紹介します(もちろん、PART1以降を先に読んで、ビットコインを買うメリットやリスクをきちんと理解してからはじめられてもかまいません)。
ビットコインを入手する方法はいくつかありますが、いちばん手っ取り早いのは、ビットコインのアプリを手に入れ、ビットコインを扱っている取引所から「買う」ことです。
現在、日本でビットコインを扱っている主な取引所を次ページの図5にまとめました。この中から好きなところを選んで取引をはじめることができます。

ウェブサイトやアプリのインターフェイスは常に更新されるので、ここでは操作画面を記載せず、操作方法の概略だけを説明しますが、私たちが運営している「コインチェック」のウェブサイト(https://coincheck.com/)やアプリ画面を見ながら次の説明を読んでいただくと、わかりやすいと思います。

写真入り身分証明書と、証明書と一緒に写った本人写真の提出が必要

ビットコインの取引を行うには、本人確認書類の提出が必要です(マネーロンダリングなどの不正利用を防ぐためです)。
はじめてコインチェックのウェブサイトにアクセスすると、メールアドレスの登録が求められます。スマホの人は、iPhoneのApp StoreやGoogle Play からコインチェックのアプリをインストールしてください。メアドを登録すると、折り返し確認メールが届くので、それをクリックして本人確認画面にアクセスします。
フェイスブックのアカウントを持っている人は、フェイスブックで登録することができますが、実際に取引をはじめるには、本人確認書類の提出が必要です。
本人確認画面では、住所・氏名・生年月日など、必要事項を入力のうえ、運転免許証やパスポートなど、本人写真入りの身分証明書の画像(免許証の場合は、住所変更の有無を確認するため裏面の画像も)と、提出された身分証と本人が一緒に写っている写真(写真入りの面を表に向けた免許証やパスポートを手に持った自撮り写真)を画面上の指示に従ってアップロードします。スマホの場合は、その場で自撮りして、それらの写真を送ることができます。
登録後しばらくすると、「本人確認終了」のメールが届きます。さらに数日後、住所確認のための書類が簡易書留で登録住所に送られてきます。それを受け取り、登録住所違いないことが確認できたら、登録完了です。
これでビットコインの取引をはじめることができます。

主な操作は6つだけ

コインチェックのウェブサイト(またはアプリ)にログインすると、「ウォレット」画面が現れます。ウォレットはビットコインを入れておく「あなた専用の銀行口座」のようなものです。
いくつかメニューが並んでいますが、これらは大きく6つの操作に分けることができます。「①入金する」と「②出金する」、「③コインを買う」と「④コインを売る」、「⑤コインを送る」と「⑥コインを受け取る」をセットで考えると、わかりやすいはずです。

①入金する
現金の出し入れに関するメニューです。先に円やドルなどの現金を取引所の指定口座に預けておいて、その金額の範囲内でビットコインを買うことができます(預けた金額を証拠金としてレバレッジ取引することもできます)。
入金のしかたは、①銀行振込で入金する、②コンビニで入金する、③提携金融機関から最大1億円までクイック入金する(24時間365日対応)、の三つです。それぞれメニュー画面の指示に従って入金してください。

②出金する
現金の出し入れに関するメニューです。ビットコインを売った代金を受け取りたいときは、あなたの銀行口座を登録します。取引所に預けている円やドルのうち、現金で引き出したい金額を指定すれば、その金額があなたの銀行口座に振り込まれます。

③コインを買う
ビットコインの売買に関するメニューです。円やドルを支払ってビットコインを受け取ることを「ビットコインを買う」といい、ビットコインを支払って円やドルを受け取ることを「ビットコインを売る」といいます。
「コインを買う」で、買いたいビットコインの額を入力すると、必要な日本円が自動的に表示されます。たとえば、「1BTC=10万円」のときに「0・1BTC」と入力すれば「1万円」、「0・01BTC」と入力すれば「1000円」と表示されるので、その金額でよければ「購入する」をクリックします。これでビットコインの購入が完了です。
ウォレットで残高を確認すると、あなたが買った「ビットコイン」が「日本円」と置いていることがわかります。
「コインを買う」のオプションとして、「クレジットカードで買う」方法もあります。現金を入金してからビットコインを買うのではなく、クレジットカードで直接買うわけです。

④コインを売る
ビットコインの売買に関するメニューです。あなたが買ったビットコインは、あなたのパソコンやスマホにダウンロードされるのではなく、コインチェックのサーバーに置いてあります。将来の値上げに備えてそのままずっと持っていてもいいですし、現金化したくなったら売ることもできます。
「コインを売る」画面で、売りたいビットコインの額を入力すると、売却代金の日本円が自動的に表示されるので、その金額でよければ「売却する」をクリックします。これでビットコインの売却が完了です。
ウォレットで残高を確認すると、あなたが売った「ビットコイン」が「日本円」に置き換わっていることがわかります。売却代金はそのままプールしておいてもいいですし、現金化したければ、②の「出金する」メニューに進んでください。

⑤コインを送る
ビットコインの送金と支払いに関するメニューです。自分が持っているビットコインを誰かに送ったり、お店で支払ったりするときは、「コインを送る」のメニューを開きます。つまり、送金も支払いも操作としては同じで、たとえばXさんに0・1BTC送りたいとは、Xさんから送り先のアドレスを教えてもらって、そのアドレス宛に0・1BTCを送るだけです。
ビットコインを送るには、送る相手が指定したビットコインアドレス宛に送る方法と、相手のメールアドレス宛に送る方法があります。ビットコインアドレスというのは、たとえば「1AavpCP7jHKFYXb7NP9p5naflFQ1SZ7Zxw」のような、27~34ケタのランダムな文字列です。ビットコイン専用のメールアドレスのようなものだと考えてください。普通のメールアドレスと違うのは、送るたびに毎回別々のアドレスが発行されるところです。
ビットコインアドレスはQRコードで読み込むことができます。お店やオンラインショップで支払うときも、お店が発行するQRコードをスマホで読み込めば、いちいちビットコインアドレスを入力しなくてもいいので便利です。

⑥コインを受け取る
自分からビットコインを送るだけでなく、誰かが送ってくれたビットコインを受け取ることもできます。何かを売った代金としてビットコインを受け取ったり、銀行振込などの代わりに送ってもらったビットコインを受け取ったりするシーンが考えられます。
「コインを受け取る」のメニューを開くと、入金用のビットコインアドレスが表示されるので、それを送ってくれる相手に知らせます。QRコードも自動で取得できるので、それを相手に教えれば、アドレスを入力する手間が省けます。
ビットコインを送ったり受け取ったりしたら、ウォレットで残高を確認しておきましょう。

ビットコインの使い方の説明は以上です。「仮想通貨」と聞くとむずかしい感じがするかもしれませんが、実際に使ってもらえば、ビックリするほど簡単だとわかってもらえるはずです。

ここまでの説明をまとめたのが、前ページの図6です。お金の移動とビットコインの移動を分けて考えると、理解しやすいかもしれません。
さっと概要をつかんでいただいたところで、次からはいよいよ中身の説明に入ります。ビットコインとはいったい何なのでしょうか。

大塚 雄介 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2017/3/24)、出典:出版社HP

ブロックチェーン 仕組みと理論 増補改訂版

ブロックチェーンを実際に動かして学ぶ

本書は、ブロックチェーンの仕組みについて豊富な内容を含めながら解説している本です。ブロックチェーンの経緯から始まり、ブロックチェーンを構成する要素、動向、システムの技術的な解説、ブロックチェーンをサンプルコードで動かすための説明など、ブロックチェーンに関する内容が多くまとめられています。

赤羽 喜治 編著 (著), 愛敬 真生 編著 (著)
出版社 : リックテレコム (2019/7/27)、出典:出版社HP

はじめに

専有から共有へ
そもそもブロックチェーンという技術は、なぜここまで注目を浴びているのでしょうか。
近年、ゴールドマンサックスやBBVA等著名な金融機関のトップが相次いで「われわれのコアコンピタンスはテクノロジーである」と発言しています。これらの発言には、金融機関自身が既存のビジネスフローや“金融機関”という役割領域までを急速に変えていこうとする中で、そのためには既存のモノリシックなシステムではもはや限界があり、その限界を新しい技術によって乗り越えていこうとする強い意志をうかがうことができます。

図 金融機関の変化

上の図は、起こりつつある変化を表現したものです。左は従来型のシステムであり、高い信頼性とセキュリティの高い壁の中にすべての業務アプリケーション、すべてのデータを格納し、自前ですべてを管理し、維持改修するというパラダイムに基づいています。これに対してFinTech時代のシステムでは、図の右側のように、外部に優れたアプリケーションがあればAPIを通じてそれを使い、一方で社の業務アプリケーションで商品性のあるものについては、他社にAPIで公開して使用料を得るといった、有機的なつながりが出てきます。「金融機能のアンバンドリング」と呼ばれる動きがこれにあたります。
データについても同様です。すべてを自前で囲い込むのではなく、他社と共有した方がよいものは公開・共有して、共同でメンテナンスを行っていくことが考えられており、ここで使われるのが分散台帳技術、ブロックチェーンというわけです。従来のモノリシックなシステムから、こうしたシステム間の境界もあいまいな、エコシステム的な在りようになることで、環境変化への即応性を向上させていくという大きな潮流が背景にあることを意識する必要があります。
アプリケーションにしろ、データにしろ、すべてを専有することが前提だった時代は終わろうとしています。「共有すべきものは共有していく」という方向へ、システム作りの考え方総体が大きく変化しており、そのひとつの顕れが分散型台帳なのだと言えるでしょう。

本書の狙いと構成
本書は、2016年10月に刊行して好評を博した『ブロックチェーン 仕組みと理論――サンプルで学ぶFinTechのコア技術』(ISBN978-4-86594-040-4)の増補改訂版です。
旧版以来この書籍では、非常に動きの速いFinTechの世界の中でも特にブロックチェーン技術を取り上げて、そのビジネス動向も踏まえつつ、技術的な内容に踏み込んでいきます。
本書の構成と狙いは次のようになっています。

【基礎編】ブロックチェーン技術を取り巻く世の中の動向を取り上げます
【理論編】ブロックチェーン技術を構成する諸技術を挙げ、それぞれがどのようなものであるかを解説します
【実装編】ブロックチェーン技術として代表的なプラットフォーム(ブロックチェーン基盤製品)をいくつか取り上げ、開発を行うために必要な基本的な事柄について、サンプルを交えて説明します

増補改訂の骨子
今回、増補改訂に至った背景には、ブロックチェーン技術そのものの発展もさることながら、技術を取り巻く状況の大きな変化があります。旧版執筆時の3年前は、ビットコインや抽象的な夢を語るビジネス書は数あれど、モノづくりの立場に必要な、手触り感のある技術書は皆無でした。幻想を打ち破り最初の一歩を刻むための“礎”が必要だったのです。
あれから3年、基礎から個別のテーマまで、扱うテーマの異なる多様な技術書が巷にあふれるようになりました。一方、仮想通貨界隈で起こった様々なトラブルや相場の暴落、実証実験疲れなどの要因から、「ブロックチェーンは“幻滅期”に入った」と言われるようになりました。その間、技術やユースケースについて地に足の着いた議論が進んだかと問われると、それが十分に進まないうちに、技術適用への温度が下がりつつあるように感じられます。せっかく技術自体は非常にはやい速度で進化を続けているのに、もったいないことです。「今度はこの幻滅を打ち破るための“礎”が必要である」との強い思いに至り、増補改訂を行うことにしました。

そのためこの増補改訂版では、次のような情報の更新を行うとともに、新たに以下のような情報を盛り込みました。

●応用事例や業界動向の最新化
●従来の3つのブロックチェーン基盤製品 (Bitcoin Core、Ethereum、Hyperledger Fabric) の情報最新化に加え、Lightning Network、Quorum、Cordaを追加。ユースケースに即して、各製品の属性をより理解しやすく、選択しやすくなるように解説
●商用プラットフォームを構築する際に考慮すべき事柄について追加

これらの作業を通じ、本書が旧版にも増してブロックチェーン技術の普及と成熟にいささかの貢献ができれば幸いです。

2019年1月
執筆者を代表して (株)NTTデータ 金融事業推進部 赤羽喜治

赤羽 喜治 編著 (著), 愛敬 真生 編著 (著)
出版社 : リックテレコム (2019/7/27)、出典:出版社HP

増補改訂版の刊行に寄せて

2019年6月、G20「財務相・中央銀行総裁会議」併催のハイレベルセミナーでは、フィンテックとブロックチェーンがテーマとなった。仮想通貨(現在は暗号資産と呼ぶ)の価格高騰から1年半が過ぎ、G20関係者の関心も、ビットコインの相場から技術へと移っていた。議長国の麻生副総理・財務大臣は英語のスピーチの中で、ブロックチェーンとDLT(分散型台帳技術)という言葉を繰り返すなど、時代の変節が実感された。

金融や情報技術の専門家でも、未だに仮想通貨とブロックチェーンの区別がつかない人は少なくない。歴史的に見れば先にビットコインが登場し、他分野への応用が図られる中で、技術に対する呼称としてブロックチェーンやDLTという語が使われるようになった。かつての適用業務分野は仮想通貨しかなかったので、両者を混同してもやむをえないが、時代は変わり、もはやそのような混同は許されない。

この本は、ブロックチェーンという技術を正確かつ分かりやすく解説した書物の最新改訂版である。仮想通貨の相場が下落して人々の過度な期待が幻滅に転じても、それを支える技術には希望が満ちている。この本はそうした技術が描き出す未来を、豊富な実例と詳しい図表とで丁寧に紹介している。読者は、ブロックチェーンが億り人(および億り人になれなかった多くの投資家)を作り出すルーレットなどではなく、産業や行政の新しい基盤になりうる技術だと理解するだろう。

とはいえ、新しい分野への応用事例はまだ限られているし、規模も大きくない。大切な情報を扱う業務システムのオーナーが慎重になるのは当然だし、技術体系の移行は簡単ではないからだ。しかし幸いなことに、仮想通貨という世界規模の巨大な実証実験は継続しており、そこからリスクや課題を学ぶことができる。ビットコインのスケーラビリティ問題や、アルトコインに対する51%攻撃など、かつては想像でしか語られなかったことが、次々と現実に起こっている。その意味では、仮想通貨の実装が大規模に行われ、様々な攻撃や改変が試行されたことは、課題を明確にし、技術を研ぎ澄ますための貴重な糧となった。この本が仮想通貨の最新動向も詳述しているのは、そうした事情からである。

読者は、仮想通貨の世界での出来事を学ぶことで、ブロックチェーンの可能性と限界を実感できるだろう。そのことは、他の分野へ応用を考える際の重要な材料になる。ブロックチェーンは「何でも解決してくれる魔法の杖」ではないし、杖を働かせるには正しい振り方をしなければならない。ブロックしい。チェーンの可能性に賭けてみようと思う人は是非、この本に描かれた未来の姿をしっかりと見届けてほしい。

京都大学 公共政策大学院教授 岩下直行

赤羽 喜治 編著 (著), 愛敬 真生 編著 (著)
出版社 : リックテレコム (2019/7/27)、出典:出版社HP

開発環境・動作検証環境

本書に記載されているプログラムは、各ブロックチェーン基盤に応じ、下記の環境において開発および動作検証を実施しました。

Contents 目次

はじめに

基礎編

第1章 プロローグ 赤羽 喜治
1 世の眼差しの変化
2 幻滅期に入ったブロックチェーン技術
3 仮想通貨は死んだのか?
3.1 「仮想通貨はもう買うな」
3.2 採算ラインとハッシュレート
3.3 ビットコインの価値
3.4 サトシ・ナカモトの見ていたもの
4 正しい理解のために

第2章 ブロックチェーンに至る流れ 大綱 恵一
1 起点はビットコイン
1.1 ビットコインの誕生
1.2 ビットコインの毀誉褒貶
1.3 ブロックチェーン技術への注目
2 「ビットコインの技術」から分散型台帳技術へ
2.1 FinTechとしてのブロックチェーン技術
2.2 広がりを見せるブロックチェーン技術
3 ブロックチェーン技術の今後
3.1 システム開発技術としてのブロックチェーン
3.2 価値交換におけるブロックチェーン技術

第3章 ブロックチェーン技術とは? 山本 英司
1 ブロックチェーン技術考案の背景
1.1 サトシ・ナカモトの問題意識
1.2 解決策としての「分散」
2 分散型台帳を支える技術
2.1 分散型台帳とは何か?
2.2 分散型台帳のメリット
2.3 分散型台帳のデメリット
3 ブロックチェーンが広げる可能性
4 ブロックチェーンの社会実装

第4章 ブロックチェーン技術の応用 大綱 恵一、大守 由貴、山本享穂
1 応用が期待される領域
1.1 ブロックチェーン市場と活用への期待
1.2 応用が期待される産業分野
2 各産業分野の適用事例
2.1 Agriculture ~IBM Food Trust
2.2 Automotive ~自動運転車両への適用
2.3 Financial Service ~新たな決済ネットワークのサービス提供
2.4 Healthcare ~医薬品サプライチェーンへの適用
2.5 Insurance ~外航貨物海上保険における保険金支払いへの適用
2.6 Property ~転売防止機能を備えるチケット発行管理のサービス
2.7 Public Service ~ネット投票
2.8 Retail ~携帯電話の店頭修理プロセスへの適用
2.9 Technology/Media/Telecommunications ~デジタルコンテンツの著作権とロイヤリティ管理への活用
2.10 Transport and Logistics ~貿易情報連携基盤の実現に向けた取り組み
2.11 Utilities ~再エネCO2削減価値創出モデル事業

第5章 ブロックチェーンの業界動向 宇津木 太郎
1 ブロックチェーン基盤の動向
2 Finance Service
2.1 仮想通貨の動向
2.2 日本国内の金融業界動向
2.3 証券取引に関する動向
3 Property
3.1 不動産コンソーシアム事例
3.2 不動産登記簿の事例
4 Public
4.1 日本の中央省庁の取り組み状況
4.2 選挙への利用
5 Healthcare
5.1 エストニアの健康情報システム
5.2 日本医師会のJ-DOME

理論編

第6章 ブロックチェーンの仕組み 愛敬 真生
1 ビットコインの仕組み
1.1 ビットコインの目的
1.2 ビットコイン実現の手段
1.3 ビザンチン将軍問題
1.4 ビットコインの処理の流れ
2 ブロックチェーン技術の構成要素と分類
2.1 ビットコイン以外のブロックチェーン基盤
2.2 ブロックチェーン技術の構成要素
2.3 ブロックチェーン基盤の分類
3 ブロックチェーン基盤の比較
3.1 アーキテクチャの比較
3.2 データ構造の比較
3.3 合意形成の仕組み
3.4 システム構成
3.5 プライバシー(秘匿化・情報共有範囲)

第7章 P2Pネットワーク 鬼澤 文人、北條 真史
1 P2Pネットワークの概要
2 P2Pネットワークの設計
2.1 ピュアP2PとハイブリッドP2P
2.2 非構造化オーバレイと構造化オーバレイ
2.3 ブロックチェーン基盤の分類
3 P2Pネットワークにおけるブロックチェーンの動き(概要)
4 P2Pネットワークにおけるブロックチェーンの動き(詳細)
4.1 P2Pネットワーク上の他ノードとの連携
4.2 データ(ブロック)の送受信
5 今後の課題

第8章 コンセンサスアルゴリズム 富田 京志
1 コンセンサスアルゴリズムとは?
2 プルーフ・オブ・ワークの問題点
2.1 51%攻撃
2.2 ファイナリティの不確実性
2.3 性能限界
2.4 ブロックチェーンの容量
3 コンセンサスアルゴリズムの種類
3.1 代表的なコンセンサスアルゴリズム
3.2 分散システムにおける障害モデル
4 各コンセンサスアルゴリズムの特徴
4.1 PoW (Proof of Work)
4.2 PoS (Proof of Stake)
4.3 PoA (Proof of Authority)
4.4 PBFT (Practical Byzantine Fault Tolerance)
4.5 Endorsement-Ordering-Validation
4.6 IBFT (Istanbul BFT)
4.7 Paxos
4.8 Raft今後の課題

第9章 電子署名とハッシュ 愛敬 真生、山本英司
1 電子署名による改ざん防止
1.1 電子署名の概要
1.2 ブロックチェーンにおける電子署名の利用
2 ハッシュによる改ざん防止
2.1 ハッシュの概要
2.2 ブロックチェーンにおけるハッシュの利用
3 今後の課題
3.1 暗号技術の適切な実装
3.2 署名のデータ量とスケーラビリティ問題
3.3 データの秘匿化
3.4 行き過ぎた秘匿化の問題点

第10章 利用にあたっての課題 愛敬 真生
1 適用領域の拡大と基盤の進化
2 ブロックチェーンの課題と現状
2.1 パフォーマンスとスケーラビリティ
2.2 セキュリティとプライバシー
2.3 データの容量や共有範囲の制御
3 ブロックチェーンを活用する際の考慮事項
3.1 共通的な考慮点
3.2 パブリック型を採用する際の考慮点
3.3 コンソーシアム/プライベート型での考慮点

実践編

第11章 Bitcoin Core 高坂 大介
1 ビットコインとBitcoin Core
1.1 Bitcoin Coreとは?
1.2 Bitcoin Coreの追加機能
1.3 Bitcoin Coreを動かす
2 インストールから起動まで
2.1 Bitcoin Coreのインストール
2.2 テストネットでの起動
3 Bitcoin Coreを操作する
3.1 ブロックの生成
3.2 送金アドレスの生成
3.3 残高の確認
3.4 送金(その1)
3.5 マイニング(その1)
3.6 送金の確認(その1)
3.7 送金(その2)
3.8 マイニング(その2)
3.9 送金の確認(その2)

第12章 Lightning Network 宮下 哲
1 Lightning Networkの概要
1.1 Lightning Networkとは?
1.2 Payment ChannelとHTLCを使用した送金例
2 Lightning Networkを動かす
2.1 lnd開発環境のセットアップ
2.2 simnetでの起動
2.3 送金の実施

第13章 Ethereum 宮下 哲
1 Ethereumとは?
2 Ethereumを動かす
2.1 Ethereumのインストール
2.2 プライベートネットワークの構築
2.3 アカウントの作成
2.4 残高の確認
2.5 ブロック数の確認
2.6 送金
2.7 送金の確認
2.8 gethの停止
3 Contractを使ったサンプル開発.
3.1 Ethereumの拡張機能
3.2 Ethereumのプログラミング
3.3 ディレクトリ構成
3.4 開発ツールの準備
3.5 Remixの起動
3.6 Contractの作成
3.7 Contractのデプロイ
3.8 bc_accessor.jsファイルの作成
3.9 サンプルアプリケーションの実行
3.10 ブロック状態のモニタリングツールの実行

第14章 Quorum 宮下 哲
1 Quorumの概要
1.1 Quorumとは?
1.2 メンバーシップサービス
1.3 コンセンサスアルゴリズム
1.4 トランザクションのプライバシー管理
1.5 QuorumとEthereumの違い
2 Quorumを動かす
2.1 Quorum Makerのインストール
2.2 Quorum Makerの起動
3 Contractを使ったサンプル開発
3.1 ディレクトリ構成
3.2 Quorum Maker UIツールによるデプロイ手順
3.3 bc_accessor.jsのプログラミング
3.4 サンプルアプリケーションの実行
3.5 ブロック状態のモニタリングツールの実行

第15章 Hyperledger Fabric 寺沢 賢司
1 Hyperledger Fabricの概要
1.1. Hyperledger Fabricとは?
1.2 パーミッション型ネットワーク
1.3 Peer
1.4 Ordering Service
1.5 トランザクションワークフロー
1.6 Fabricの「台帳」
1.7 チェーンコード
1.8 Fabric SDK
2 Hyperledger Fabricを動かす
2.1 開発環境のセットアップ
2.2 Fabric資材のダウンロード
2.3 Fabricネットワークを開始する
2.4 チェーンコードを呼び出す
3 チェーンコードを使ったサンプル開発
3.1 開発環境のセットアップ
3.2 チェーンコードの作成
3.3 APサーバ機能の作成
3.4 チェーンコードのインストールとインスタンス化
3.5 サンプルアプリケーションの実行

第16章 Corda 斎藤 宗範、富田 京志
1 Cordaの概要
1.1 R3とCorda
1.2 Cordaの特徴
1.3 Cordaネットワークの構成要素
1.4 台帳の正当性
1.5 台帳の共有
1.6 Cordaのトランザクション
2 Cordaを動かす
2.1 実行環境のセットアップ
2.2 サンプルプロジェクトの取得
2.3 Cordaのビルド
2.4 Cordaの起動
2.5 ブラウザからのアクセス
2.6 CorDappの停止
3 CorDappの作成
3.1 テンプレートプロジェクトを取得
3.2 CorDappの作成
3.3 CorDappのビルド
3.4 CorDappの起動
3.5 CorDappの画面表示と操作
3.6 初期データの登録
3.7 画面操作
3.8 モニタリングツール表示
3.9 CorDappの停止

第17章 エピローグ 赤羽 喜治
1 導入にあたっての留意点
2 コンソーシアム型におけるスキームの課題
3 プライベート型におけるスキームの課題
4 パブリック型におけるスキームの課題
5 法的な課題
6 データフォーマット
7 進化し続けるブロックチェーン

Appendix 付録 平井 識章
1 仮想マシン環境の設定
1.1 必要なソフトウェア
1.2 Ubuntu Serverへのアクセス方法
2 各ソフトウェアの操作方法.
2.1 必要パッケージのインストール
2.2 Docker / Docker-Compose
2.3 Python
2.4 Node.js + npm
3 サンプルアプリケーション開発の準備
3.1 サンプルアプリケーション構成
3.2 サンプルのディレクトリ構成
3.3 共通部品の作成(カウンタ画面)
3.4 共通部品の作成(モニタリング画面)
3.5 共通部品の作成(REST API部)

あとがき
参考文献
執筆者一覽
索引

赤羽 喜治 編著 (著), 愛敬 真生 編著 (著)
出版社 : リックテレコム (2019/7/27)、出典:出版社HP

徹底理解ブロックチェーン ゼロから着実にわかる次世代技術の原則(impress top gear)

ブロックチェーンの一般的な概念と技術的なパターンの基本がわかる

本書は、ブロックチェーンの存在意義から全体的な技術の解説、ブロックチェーンのシステムの流れとポイント、ブロックチェーンの活用など様々な内容がまとめられています。プログラムに関する解説はなく、技術的すぎず、かといって初歩的すぎないレベルに仕上げています。

Daniel Drescher (著), 株式会社クイープ (翻訳)
出版社 : インプレス (2018/6/28)、出典:出版社HP

著者紹介

Daniel Drescher (ダニエル・ドレシャー)
金融業界の専門家として複数の銀行で電子セキュリティ取引を担当してきた経験を持つ。最近では、セキュリティ取引におけるオートメーション(自動化)、機械学習、ビッグデータに取り組んでいる。オックスフォード大学でソフトウェアエンジニアリングの修士号、ベルリン工科大学で計量経済学の博士号を取得している。

レビュー担当者紹介

Laurence Kirk (ローレンス・カーク)

シティ・オブ・ロンドンで低遅延金融アプリケーションを開発した後、分散台帳テクノロジの可能性に魅了される。修士号を取得するためにオックスフォードに移り、Extropy.ioというスタートアップの設立に携わる。Extropy.ioは、Ethereumプラットフォームでのアプリケーション開発を手掛けるブロックチェーンコンサルティング会社である。分散テクノロジに情熱を注ぐLaurenceは、Ethereumの開発者、エバンジェリスト、教育者として活動している。

Daniel Drescher (著), 株式会社クイープ (翻訳)
出版社 : インプレス (2018/6/28)、出典:出版社HP

はじめに

ここでは、すべての著者が答えなければならない重要な質問に答えたいと思う。本書を読むべきなのはなぜだろうか。より具体的には、ブロックチェーンの本を読むべきなのはなぜだろうか。なぜ本書が書かれたのか、本書から得られると期待できるものは何か、期待できないものは何か、本書は誰のために書かれたのか、本書はどのような構成になっているのか——これらのことを知りたい場合は、このまま読み進めよう。

なぜまたブロックチェーン本なのか

ブロックチェーンは公的な場での討論やメディアにおいて大きな注目を集めてきた。ブロックチェーンはインターネットの登場以来最大の発明であると主張するエンスージアスト(熱狂的な支持者)もいるほどだ。ブロックチェーンについては、この数年間、多くの本や記事が書かれてきた。しかし、ブロックチェーンの仕組みを理解したい人は、本の山を目の前にして途方に暮れることになるかもしれない。そうした本は、技術的な部分をざっと紹介するだけであるか、技術的な概念を俯瞰的なレベルで説明しているかである。前者は、ブロックチェーンを理解するのに必要な技術的な詳細を含んでいないため、物足りない感じがするかもしれない。後者は、まだ理解していない内容に関する知識を持っていることが前提となるため、やはり不満が残るかもしれない。
ブロックチェーンに関する純粋に技術的な本と、ブロックチェーンに期待される経済的効果やブロックチェーンの未来像を説明し、具体的な応用例を紹介する文献との間には、そもそもギャップがある。本書はそのギャップを埋めるものである。
本書を執筆したのには、次のような目的がある。具体的なブロックチェーンアプリを理解し、ブロックチェーンのスタートアップのビジネスケースを評価し、ブロックチェーンに期待される経済的効果に関する議論に注目するには、ブロックチェーンの技術的な土台を概念的に理解している必要がある。ブロックチェーンのベースとなっている概念を理解していなければ、ブロックチェーン全体の価値や潜在的効果を評価することも、特定のブロックチェーンアプリの付加価値を理解することも不可能である。本書では、ブロックチェーンのベースとなっている概念に焦点を合わせている。というのも、新しいテクノロジがきちんと理解されていないと、非現実的で根拠のない期待のせいで、さんざんもてはやされた挙げ句、失望に終わることがあるからだ。
本書では、ブロックチェーンを構成している概念を簡潔に理解しやすく説明する。新しいテクノロジが登場するときには、「それはどのようなものか」、「なぜ必要か」、「どのような仕組みで動作するのか」という3つの質問が浮上する。ここでは、それらの質問に答えたいと思う。

本書から期待できないものは何か

本書では、ブロックチェーンのアプリケーションを意図的に取り上げていない。一般的なクリプトカレンシー、特にビットコインが、ブロックチェーンの顕著なアプリケーションであることは確かだが、本書ではブロックチェーンを一般的なテクノロジとして説明する。このアプローチを選択したのは、ブロックチェーンの具体的な応用事例に的を絞るのではなく、ブロックチェーンの一般的な概念と技術的なパターンを明らかにするためである。このため、以下の内容は含まれていない。

●ビットコインをはじめとするクリプトカレンシーに関する内容
●特定のブロックチェーンアプリを対象とした内容
●ブロックチェーンの数学的な要素の証明に関する内容
●ブロックチェーンのプログラミングに関する内容
●ブロックチェーンの法的な位置付けと意味合いに関する内容
●社会または人類全体に対するブロックチェーンの社会的、経済的、または倫理的な影響に関する内容

ただし、説明上適切であると判断すれば、無理のない範囲で取り上げることがある。

本書から期待できるものは何か

本書では、ブロックチェーンの技術的な概念を説明する。これには、トランザクション、ハッシュ値、暗号化、データ構造、P2P(Peer-to-Peer)システム、分散システム、システムの完全性、分散コンセンサスを概念的に説明することが含まれる。本書の説明は、次の4つの要素に基づいている。

●対話レベルの解説
●数学や数式は含まない
●問題領域を段階的に解説
●比喩と例え

▶︎対話レベルの解説
本書は意図的に対話レベルの内容の深さで書かれている。技術的な知識がなくても読んでいけるよう、数学やコンピュータサイエンスの用語は使わない。ただし、ブロックチェーンに関する議論に参加し、他の文献を理解するために必要な用語については説明が含まれている。

▶︎数学や数式は含まない
暗号化やアルゴリズムといったブロックチェーンの主要な要素は、複雑な数学的概念に基づいている。それらの概念を理解するには、ゾッとするような数学的な表記や数式の知識が要求されることがある。だが本書では、技術的な知識がなければ読めないほど複雑な内容になるのを避けるために、数学的な表記や数式は示さない。

▶︎問題領域を段階的に解説
本書では、各章をステップと呼んでいる。これには次のような理由がある。これらのステップは、ブロックチェーンに関する知識を段階的に養っていくラーニングパスを形成している。これらのステップの順番は慎重に選択されている。各ステップでは、ソフトウェアエンジニアリングの基礎、用語の説明、ブロックチェーンが必要な理由、ブロックチェーンを構成している個々の概念とそれらの相互関係をカバーしている。各章を「ステップ」と呼ぶことにより、それらが依存関係にあることと、それらの説明上の目的が明白になる。個別に読むことができる「章」とは異なり、「ステップ」は論理的な順序に従って読んでいく必要がある。

▶︎比喩と例え
新しい概念を紹介する各ステップは、現実の状況に例えた説明で始まる。こうした比喩には、主に4つの目的がある。1つ目は、新しい技術的な概念を紹介するための準備をすることである。2つ目は、技術的な概念を理解しやすい現実のシナリオに結び付けることで、新しい領域を開拓するときの思考上のハードルを下げることである。3つ目は、類似性と例えを利用することで、新しい概念の習得を可能にすることである。4つ目は、新しい概念を覚えるための大まかなルールを提供することである。

本書の構成

本書は25のステップで構成されている。これらのステップは、5つのステージに分かれている。これらのステージは、ブロックチェーンに関する知識を段階的に養っていくラーニングパスを形成する。これらのステップでは、ソフトウェアエンジニアリングの基礎、必要な用語の説明、ブロックチェーンが必要な理由、ブロックチェーンを構成している個々の概念とそれらの相互関係、ブロックチェーンの使用パターン、そして研究開発が活発な分野を
カバーしている。

▶︎ステージ1:ブロックチェーンの目的と可能性を知る
ステップ1からステップ3では、ソフトウェアエンジニアリングの主要な概念を取り上げ、これ以降のステップの内容を理解するのに必要な用語を紹介する。このステージを最後まで読めば、ブロックチェーンの基本的な概念を理解できるはずだ。そして、ブロックチェーンを俯瞰的に捉えられるようになるだろう。

▶︎ステージ2:ブロックチェーンはなぜ必要か
ステップ4からステップ7では、ブロックチェーンはなぜ必要か、ブロックチェーンはどのような問題を解決するか、この問題を解決することはなぜ重要か、ブロックチェーンはどのような可能性を秘めているかについて説明する。このステージを最後まで読めば、ブロックチェーンが属している問題領域、ブロックチェーンが最も価値をもたらす環境、そしてブロックチェーンが必要な理由をしっかり理解できるだろう。

▶︎ステージ3:ブロックチェーンはどう機能するか
3つ目のステージは本書の目玉である。というのも、ブロックチェーンの内部の仕組みを説明するからだ。ステップ8からステップ21では、ブロックチェーンを構成している15種類の技術的概念を取り上げる。このステージを最後まで読めば、ブロックチェーンの主要な概念、それぞれの要素の仕組み、ブロックチェーンと呼ばれる大きな機械を生み出すためにそれらの要素がどのようにやり取りするかをすべて理解できるだろう。

▶︎ステージ4:制限とその克服方法
ステップ22とステップ23では、ブロックチェーンの主な制限、それらの制限が発生する理由、それらの制限を克服する方法として何が考えられるかに焦点を合わせる。このステージを最後まで読めば、ここまでのステップで説明してきたブロックチェーンの当初のアイデアが大規模な商用アプリケーションに必ずしも適していない理由と、そうした制限を克服するために提案されてきた変更について理解できるだろう。また、そうした変更によってブロックチェーンの特性がどのように変化したのかもわかるだろう。

▶︎ステージ5:ブロックチェーンの活用とまとめ
ステップ24とステップ25では、ブロックチェーンを実際にどのように理解できるか、そしてブロックチェーンアプリを選択するときに答えなければならない質問は何かについて検討する。このステージでは、研究が活発に行われている分野と今後の発展が期待される分野も紹介する。このステージを最後まで読めば、ブロックチェーンの主なアプリケーションシナリオ、その最も重要な進展、そして長期的な成果や欠点として何が考えられるかをしっかり理解できるだろう。

本書のWebサイト
本書のWebサイトでは、本書の一部のステップで使用しているハッシュ関数やハッシュパズルにアクセスできる。

http://www.blockchain-basics.com

Daniel Drescher (著), 株式会社クイープ (翻訳)
出版社 : インプレス (2018/6/28)、出典:出版社HP

CONTENTS

著者紹介
はじめに

Stage1 ブロックチェーンの目的と可能性を知る

STEP1 レイヤと機能面/非機能面について考える
1.1 比喩:共通の認識を持つ
1.2 ソフトウェアシステムのレイヤ
1.3 2つのレイヤを同時に考察する
1.4 完全性
1.5 次のステップ
1.6 まとめ

STEP2 全体像を把握する
2.1 エンジンという比喩
2.2 決済システムのレイヤ化
2.3 2種類のソフトウェアアーキテクチャ
2.4 分散システムの利点
2.5 分散システムの欠点
2.6 分散型のP2Pシステム
2.7 集中システムと分散システムの組み合わせ
2.8 分散システムの識別
2.9 ブロックチェーンの目的
2.10 次のステップ
2.11 まとめ

STEP3 可能性を認識する
3.1 P2Pと音楽の比喩
3.2 P2Pシステムは音楽業界全体をどのように変えたか
3.3 P2Pシステムの可能性
3.4 用語の定義とブロックチェーンとの関係
3.5 ブロックチェーンの可能性
3.6 次のステップ
3.7 まとめ

Stage2 ブロックチェーンはなぜ必要か

STEP4 問題の核心を明らかにする
4.1 「猫の群れの番」という比喩
4.2 P2Pシステムでの信用と完全性
4.3 P2Pシステムの完全性に対する脅威
4.4 ブロックチェーンによって解決される主要な問題
4.5 次のステップ
4.6 まとめ

STEP5 用語の定義を明確にする
5.1 用語の定義
5.2 暫定的な定義
5.3 所有権の管理という役割
5.4 本書で取り上げるブロックチェーンの応用領域
5.5 次のステップ
5.6 まとめ

STEP6 所有権の性質を理解する
6.1 「カバンの中のリンゴ」という比喩
6.2 所有権と証人
6.3 所有権の基礎
6.4 セキュリティについて
6.5 台帳の目的と特性
6.6 所有権とブロックチェーン
6.7 次のステップ
6.8 まとめ

STEP7 二重支払い問題とは
7.1 紙幣偽造とシステム脆弱性
7.2 二重支払い問題
7.3 用語の定義
7.4 二重支払い問題の解決方法
7.5 本書での二重支払い問題の使用法
7.6 次のステップ
7.7 まとめ

Stage3 ブロックチェーンはどう機能するか

STEP8 ブロックチェーンの設計を考える
8.1 目標:概念の理解
8.2 出発点:システムの特徴
8.3 対処すべきタスク
8.4 次のステップ
8.5 まとめ

STEP9 所有権の文書化
9.1 「リレー競走のバトン」という比喩
9.2 目標:所有権の文書化
9.3 課題:記録を見つけ出す
9.4 トランザクションデータの考え方
9.5 インベントリデータとトランザクションデータについて
9.6 所有権の文書化の仕組み
9.7 この仕組みはなぜうまくいくのか
9.8 順序の重要性
9.9 トランザクション履歴の完全性
9.10 次のステップ
9.11 まとめ

STEP10 データのハッシュ化
10.1 皮膚紋理という比喩
10.2 目標:トランザクションデータの識別
10.3 ハッシュ関数の特性
10.4 実際に試してみる
10.5 データハッシュ化のパターン
10.6 次のステップ
10.7 まとめ

STEP11 ハッシュ化の使用パターン
11.1 データを比較する
11.2 データの変化を検知する
11.3 変化に敏感な方法でデータを参照する
11.4 変化に敏感な方法でデータを格納する
11.5 時間のかかる計算を行わせる
11.6 ブロックチェーンでのハッシュの使用法
11.7 次のステップ
11.8 まとめ

STEP12 ユーザーアカウントの識別と保護
12.1 メールボックスという比喩
12.2 目標:資産へのアクセス
12.3 アカウントの課題
12.4 アカウントの考え方
12.5 暗号学について
12.6 現実世界での非対称鍵暗号
12.7 ブロックチェーンでの非対称鍵暗号
12.8 次のステップ
12.9 まとめ

STEP13 トランザクションの承認
13.1 手書きの署名という比喩
13.2 目標:資産譲渡の可否
13.3 課題:開放性と譲渡制限
13.4 承認の考え方
13.5 デジタル署名について
13.6 ブロックチェーンでのデジタル署名の仕組み
13.7 なぜうまくいくのか
13.8 次のステップ
13.9 まとめ

STEP14 トランザクション格納の仕組み
14.1 図書カード目録という比喩
14.2 目標:履歴の整理
14.3 課題:格納のあり方
14.4 考え方:トランザクションデータと図書館
14.5 本をブロックチェーンデータ構造に変換する
14.6 ブロックチェーンデータ構造
14.7 ブロックチェーンデータ構造にトランザクションを格納する
14.8 次のステップ
14.9 まとめ

STEP15 データの追加と変更の仕組み
15.1 編み物という比喩
15.2 新しいトランザクションを追加する
15.3 変更を検知する
15.4 データを正しい順序で変更する
15.5 意図的な変更と意図しない変更
15.6 次のステップ
15.7 まとめ

STEP16 追加専用のデータストアにする
16.1 「偽りの家系」の比喩
16.2 目標:信頼できるデータ
16.3 課題:データの保護
16.4 考え方:公開と保護
16.5 不変性について
16.6 全体的な仕組み
16.7 仕組みの詳細
16.8 なぜうまくいくのか
16.9 ブロックチェーンデータ構造の改ざんのコスト
16.10 現実のイミュータブルなデータストア
16.11 次のステップ
16.12 まとめ

STEP17 データストア分散の仕組み
17.1 「社内の情報共有」という比喩
17.2 目標:各コンピュータによる管理
17.3 課題:情報の伝播
17.4 考え方:社内グループでの会話
17.5 全体的な仕組み
17.6 仕組みの詳細
17.7 なぜうまくいくのか
17.8 次のステップ
17.9 まとめ

STEP18 トランザクションの検証と追加
18.1 報酬と査定の比喩
18.2 目標:追加と完全性の両立
18.3 課題:有効なトランザクションだけの追加
18.4 考え方:監視と報酬
18.5 構成要素
18.6 全体的な仕組み
18.7 仕組みの詳細:ルール1~13
18.8 なぜうまくいくのか
18.9 不誠実な振る舞いに対処する
18.10 次のステップ
18.11 まとめ

STEP19 トランザクション履歴の選択
19.1 「人が歩いてできる道」の比喩
19.2 目標:1つのトランザクション履歴の維持
19.3 課題:ノードが持つ情報と作業フェーズ
19.4 考え方:履歴を確定するための合意
19.5 仕組み:トランザクション履歴の選択
19.6 チェーンの選択がもたらす影響
19.7 投票方式への脅威
19.8 ハッシュパズルの役割
19.9 なぜうまくいくのか
19.10 次のステップ
19.11 まとめ

STEP20 完全性の代価
20.1 「仕事の成果物と報酬」の比喩
20.2 ブロックチェーンでの手数料の役割
20.3 報酬の支払い手段の望ましい特性
20.4 暗号通貨の登場について
20.5 次のステップ
20.6 まとめ

STEP21 すべてのピースをつなぎ合わせる
21.1 概念とテクノロジを復習する
21.2 ブロックチェーンとは何か
21.3 ブロックチェーンの目的:アプリケーション層の機能面
21.4 ブロックチェーンの特性:非機能面
21.5 ブロックチェーンの内部機能:実装層の機能面
21.6 抽象性の獲得
21.7 次のステップ
21.8 まとめ

Stage4 制限とその克服方法

STEP22 制限を明らかにする
22.1 課題:制限と克服
22.2 ブロックチェーンの技術的制限
22.3 ブロックチェーンの非技術的制限
22.4 制限を克服する
22.5 次のステップ
22.6 まとめ

STEP23 ブロックチェーンを見直す
23.1 「目的の両立」という比喩
23.2 ブロックチェーンの競合する目的
23.3 競合の根本原因
23.4 競合を解決する
23.5 4つの異なるブロックチェーン
23.6 読み取り/書き込みアクセスの制限がもたらす影響
23.7 ブロックチェーンの目的を見直す
23.8 本書での「ブロックチェーン」の意味
23.9 次のステップ
23.10 まとめ

Stage5 ブロックチェーンの活用とまとめ

STEP24 ブロックチェーンを利用する
24.1 収納の比喩
24.2 ブロックチェーンの特性
24.3 一般的な使用パターン
24.4 具体的な使用パターン
24.5 ブロックチェーンアプリを分析する
24.6 次のステップ
24.7 まとめ

STEP25 本書のまとめ、そしてその先の向こうへ
25.1 ブロックチェーンの比喩
25.2 今後の発展とブロックチェーンに代わる選択肢
25.3 ブロックチェーンの主要な成果
25.4 欠点として何が考えられるか
25.5 ブロックチェーンの未来
25.6 次のステップ
25.7 まとめ

Daniel Drescher (著), 株式会社クイープ (翻訳)
出版社 : インプレス (2018/6/28)、出典:出版社HP

あなたの会社もブロックチェーンを始めませんか?

ブロックチェーンの事例からプロジェクトの進め方を学ぶ

ブロックチェーン・ビジネス最前線に立つコンサルタントが、自らが推進する国内外のプロジェクトの詳細や知見を紹介しています。国際貿易プロセスのデジタル化、分散アイデンティティ管理など、実際に活用されている17の事例を通して、ブロックチェーンの知識を深めることができます。

日本アイ・ビー・エム株式会社 ブロックチェーンチーム (編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/5/26)、出典:出版社HP

はじめに

本書の執筆依頼をいただいたのは2019年の初めであるが,当時を振り返るとビジネスにおけるブロックチェーンの活用に懐疑的な意見が出始め,既存技術に対するブロックチェーンの必然性に疑問を呈する声も多かったように記憶している。これは,黎明期からブロックチェーンのビジネス利用を牽引してきた金融業界における技術検証がひと段落し,いわゆる熱狂期から幻滅期に差し掛かったことが大きく影響したと捉えている。一方,金融業界以外ではサプライチェーンにおけるトレーサビリティーなどでブロックチェーン活用を検討してみようという機運は高まりつつあったものの国内ではまだまだ実証実験にとどまっていた。

このように日本におけるブロックチェーン業界はまさに冷却期に差し掛かっていた状況に,外資系IT企業である日本アイ・ビー・エム株式会社(以下,日本IBM)でブロックチェーン事業を預かる筆者は大きな焦りを感じていた。それは「ブロックチェーン技術を核とした業界プラットフォーム」という複数の黒船が日本近海に浮かんでいるのを生々しく感じていたからである。例えば,世界最大のコンテナ船事業者であるマースク社(デンマーク)とIBMとの共同事業である国際貿易デジタル化プラットフォーム「TradeLens」は,2018年12月に日本を含む全世界で商用サービスを開始し,競合するコンテナ船事業者や世界中のターミナル事業者・港湾・税関当局などの参加を推し進め本格的に始動していた。また,食の信頼構築を目指してウォルマート,カルフール,ネスレなど世界的な食品事業者が主導するプラットフォーム「IBM Food Trust」も2018年10月より同じく全世界で商用サービスを開始し,リコール対策,プライベート商品のブランド力強化,サプライチェーン高度化,持続可能な水産資源の管理,フェアトレードなど幅広い用途に拡がっていた。これらのプラットフォーム上では競合関係にある企業同士が非競争領域で協業し,業界における積年の課題にチャレンジしたり,新たなビジネスモデルを構築したりしながら社会実装が進んでいたのである。世界ではまさに業界をリードする企業群がブロックチェーンという新たな分散コンピューティング技術の可能性に果敢に賭けていた。このままでは日本はまたもや取り残されてしまうという大きな危機感を感じていた。

そのような中でも明らかな変化の兆しがあった。長らく仲介機能を担ってきた商社などがブロックチェーン技術に抗うのではなく,新たなプラットフォーム基盤として積極的に取り入れて新規ビジネスを起こしたり,中堅企業が社会課題の解決を目指すデジタルプラットフォームを興し業界秩序に挑んだりするなど,複数のプロジェクトが本格展開を始めていた。実際,2019年には日本IBMが関与するだけでも10を超えるブロックチェーン・プロジェクトを公表する結果となり,2018年と比較して大きな飛躍を見せた。是非このダイナミズムを読者の皆様に伝えたく,日本IBMの専門家が業務の合間を縫い書き下ろしたのが本書である。なお,本書での紹介には間に合わなかったが,新たな事例,例えばソフトバンク社とのキャリア間ブロックチェーン・ソリューションの取組み1,オートバックスセブン社との消費者間による中古車市場プラットフォームの取組み2などが続々と生まれている。是非とも脚注の情報を参照いただきたい。加えて,新たな資金調達の可能性を広げるセキュリティトークンオファリング(STO: Security Token Offering)や中央銀行デジタル通貨(CBDC: Central Bankd Digital Currency)など,2019年後半から金融分野においても再びブロックチェーンへの注目が高まっている。

これまでブロックチェーンに関する書籍は数多く出版され,暗号資産,ブロックチェーン技術の概要,想定される利用シーンについて紹介されてきた。しかし,ブロックチェーン・ビジネスの最前線に立つ営業,コンサルタント,技術者が一堂に会し,自らが推進する国内外のプロジェクトの詳細や,そこから得られた知見をふんだんに盛り込んだ書籍は本書が初めてではないかと自負している。読者の皆様には,自社でブロックチェーン・プロジェクトを適用できる領域はあるか,誰と協業すべきか,どの技術を採用すべきか,どのように投資を回収できるかなどを想像しながら,本書を読み進めていただきたい。

本書を出版する最終局面において新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威をふるい,多くの方が生活・仕事の両面で甚大な影響を受けている。物の需給や流れは予測困難となり,医療や生活における必需品がどこにどれぐらいの在庫があるかもわからない状況である。また,人との接触を可能な限り減らすべく在宅勤務が推奨されるものの,契約処理はいまだ書類と印鑑に頼っており,出勤せざるえない方も多い。私たちはポストCOVID-19に備え,サプライチェーン管理や契約管理のあり方を抜本的に見直すことは不可避であり,本書でも紹介するブロックチェーンを活用したトレーサビリティーやスマートコントラクトの取組みは大いに参考になるものと確信している。

最後に事例紹介に賛同いただき,内容の精査にもご協力いただいた関係企業の皆様方にこの場を借りて厚く御礼を申し上げたい。

本書を読み終わった後,読書の皆様にこう問いたい。

あなたの会社もブロックチェーンを始めませんか?

2020年4月
日本アイ・ビー・エム株式会社
ブロックチェーン事業部長
高田 充康

1 https://ibm.ent.box.com/notes/617606742032
2 https://www.autobacs.co.jp/ja/news/news-20191003140002.html

日本アイ・ビー・エム株式会社 ブロックチェーンチーム (編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/5/26)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書を理解するための用語集

第1章 いまなぜブロックチェーンが注目されるのか?
1 デジタルトランスフォーメーションの時代
2 プラットフォーマーの台頭
3 情報利用に対する懸念
4 信頼を生み出す技術・ブロックチェーンの登場
5 仮想通貨・フィンテックから全産業に利用が拡大
6 ブロックチェーンを活用したプラットフォームの商用化が進む欧米
7 今こそ進めたいブロックチェーンの戦略的な活用

第2章 ブロックチェーンとは何か
1 Bitcoin すべてはここからはじまる
2 Ethereum ブロックチェーンの可能性を拡げる
3 ビジネス利用におけるパブリック型ブロックチェーンの限界
4 エンタープライズブロックチェーンの登場
5 主要なエンタープライズブロックチェーン技術
6 Hyperledger プロジェクトの概要
7 Hyperledger Fabric の詳細
8 アプリケーション開発

第3章 代表的なブロックチェーンの活用事例
1 食の信頼向上を目指すトレーサビリティー
2 国際貿易プロセスのデジタル化
3 欧州域内における中小企業向け貿易金融サービス
4 地方発金融サービスプラットフォーム
5 国際決済の効率化
6 責任ある原材料調達のためのトレーサビリティー
7 ブロックチェーンによる分散アイデンティティ管理
8 ポイントプログラム
9 医療・健康データ交換
10 ピア・ツー・ピアでの電力取引
11 次世代の成績証明プラットフォーム
12 音楽著作権管理の透明性向上
13 次世代の不動産デジタルプラットフォーム
14 シェアードサービスセンター
15 IoTデバイス向けセキュリティ管理
16 災害時の情報共有インフラー
17 サプライヤー管理デジタルプラットフォーム

第4章 ブロックチェーンプロジェクトの進め方
1 典型的な4つのステップ
2 ネットワーク構築の進め方
3 構想の具体化
4 インセンティブ設計
5 ブロックチェーンサービスの種類
6 ブロックチェーンの技術的な課題や考慮点
7 Blockchain as a Serviceの概要
8 あらためてブロックチェーンである理由

第5章 日本発の業界プラットフォームを目指して
1 ビジネスの観点でのブロックチェーンとは?(これまでの振り返り)
2 では,あなたの会社はブロックチェーンを進めるべきか?
3 途中で頓挫しないためのポイントは何か?―2つの要諦
4 結びに代えて―DXへの挑戦

付録 PaperNetのプログラム開発

日本アイ・ビー・エム株式会社 ブロックチェーンチーム (編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/5/26)、出典:出版社HP

新事業企画・起業のための 実践ブロックチェーン・ビジネス

ブロックチェーン・ビジネスの全容がわかる

ブロックチェーンとは何かを紐解きながら、金融・製造・サービス業、さらに政府や自治体でその技術をどう活用していくか、実際にどのようなビジネスが始まっているのか、豊富な事例と図解を使って紹介しています。技術の観点だけでなく実践的なビジネスの観点も分かるので、視野を広げるのに有用な1冊です。

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP

はじめに

ブロックチェーンはインターネットに次ぐ革命と称されます。
本書の中でも述べていますが、インターネットは「情報交換のネットワーク」であり、ブロックチェーンは「価値交換のネットワーク」です。
分散型で透明性にすぐれ、改竄や二重支払いを防ぐことができ、中央管理者が不要なブロックチェーンは、ビジネスの可能性を広げ、社会をより良く変える期待があります。
ブロックチェーンが特に刺激的なのは、特定の誰かを信頼の基点にする必要がないため、「信用に関する問題」を解決する技術だからです。そして、取引のベースである「信用」が、ブロックチェーンの普及により、ビジネスの場においてどのように変わり、産業・社会をどのように変えるのか、未だ全貌が見えないワクワクするテーマだからです。

ところで、ブロックチェーンは、私にとってある意味デジャブーの感じがあります。
ブロックチェーンがインターネット革命に次ぐ革命と考えたとき、1995年から1997年頃にかけてのインターネットビジネス勃興期を思い起こします。
特に、1997年5月に翻訳刊行されたロバート・リード著『インターネット激動の1000日』を読んだとき、アメリカのインターネットビジネス草創期の群像を知り、血沸き肉躍る気持ちを持ったことを思い出します。同書により、1994年2月にマーク・アンドリーセンに、ジム・クラークから「ご存じないかもしれませんが、わたしはシリコン・グラフィックスの創業者です…」というeメールが届き、ふたりは翌朝午前7時30分にパロアルトのカフェ・ベローチで会ったことを知りました。そしてネットスケープ社が産みだされ、激動の1000日が始まります。本の中の登場人物たちの、新しい時代を創るという強烈な思いに圧倒されたものです。
また、1997年9月に邦訳が出たアンドリュー・グローブの『インテル戦略転換』では、競争構造を根本的に変える破壊的な環境変化のシグナルを見極めようとする、変質狂とさえいえる著者の迫力に衝撃を受けました。

当時私は、銀行の総合企画部に勤務し、「インターネットが金融をどう変えるか」という、頭取向けの報告書を書いていました。この2冊を読み、創業者の強烈な思い、インターネットの破壊力、産業の変革を身に染みるように感じ、インターネット革命に参加したいと思ったものでした。この思いが募り、その後、銀行を退職し、ベンチャーの世界に飛び込むことになりました。それから10社超の様々なハイテクベンチャーを創業することになったのは、大変感慨深いものがあります。
1997年の話を持ち出したのは、現在のブロックチェーン革命にインターネット革命と同じ大変革の匂いを感じるからです。デジャブーの感覚です。

2014年にビットコインを知り、2015年にブロックチェーン関連ビジネスに乗り出そうと決意し、2016年1月7日に株式会社ブロックチェーンハブ(略称:BcH、HP: https://www.blockchainhub.co.jp/)を創業しました。株式会社ブロックチェーハブは、1年目には、ブロックチェーンに関する教育とコミュニティー作りから始め、2年目の2017年からは、創業前から起業家と共に歩む、創業仲間としてのベンチャーインキュベーション事業に乗り出しています。
そして2018年4月現在、BcHスタートアップは7社になっています。まだ、よちよち歩きの会社が多いのですが、これらの会社がブロックチェーン革命の大波の中で産業変革に寄与することを心から祈ります。

ブロックチェーンの始まりは、2008年にサトシ・ナカモトという謎の人物が発表した10ページに満たないビットコインに関する論文でした。それから10年経過し、ブロックチェーンの真価が理解されてきました。今後、ブロックチェーン革命にこの本の読者を含め、多くの仲間が参加し、新しい産業を興していくことを期待します。

本書は、第1章から第6章までと第9章を増田一之が執筆し、第7章は新日本有限責任監査法人の榊正壽シニアパートナー、第8章はTMI総合法律事務所の北島隆次弁護士が執筆しています。北島、榊両氏は増田一之が早稲田大学大学院経営管理研究科で行っている講義「ブロックチェーンによるビジネス変革」の中で講義された内容に即し、執筆しています。
増田一之が執筆するにあたっては、株式会社ブロックチェーンハブの仲間たちとの常日頃のディスカッションが背景になっています。特に、斉藤賢爾、久保健、谷口勝男、堀鉄彦の各氏とは頻繁でオープンな議論をしてきました。今後もこれらの仲間たちと、まだ見ぬ未来を見通すための努力を継続したいと思います。
また、本書執筆には、日本能率協会マネジメントセンター出版事業本部の根本浩美氏に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

2018年4月
移転したての株式会社ブロックチェーンハブの日本橋本町事務所にて
増田一之

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 ブロックチェーンの基礎知識とビジネス活用の可能性
1 仮想通貨を支える技術
●ブロックチェーンはビットコインの基盤技術
●ビットコインとブロックチェーンの関係
2 ブロックチェーン技術の基礎知識
●ブロックチェーン技術の特徴① 改竄の難しさ
●ブロックチェーン技術の特徴② 二重支払いの防止
●ブロックチェーン技術の長所
●ブロックチェーン技術の三大機能
3 インターネット革命、そしてブロックチェーン革命
●インターネット発明以来の産業革命
●ブロックチェーン技術を使う意味

第2章 ブロックチェーン技術の基本
1 ブロックチェーン技術の概要と特徴
●ビットコインの基盤技術
●ブロックチェーンの仕組み
●P2Pネットワーク
●二重支払いの防止
2 ビットコインの概要
●ビットコインの発行上限
●トランザクションの概要
●マイナーの役割とインセンティブ
●ブロックチェーンの仕組みのユニークさ
3 イーサリアムの概要
●スマートコントラクトを実現するプラットフォーム
●活用が期待される用途例
4 ブロックチェーンの課題
●技術的課題
●持続性に関する課題
5 派生技術
●アルトコインを生み出す技術
●サイドチェーン
●パブリック型とプライベート型/コンソーシアム型
●コンソーシアム型の事例
●ブロックチェーン以外のプラットフォーム

第3章 仮想通貨にかかわるビジネス
1 仮想通貨のプレイヤーたち
●市場拡大により登場したプレイヤー
●マイナー
●取引所・販売所・交換所
●ウォレットサービス
●ペイメントプロセッサー
●金融サービス
●インフラツール提供会社
2 仮想通貨を取り巻く政策課題

第4章 金融分野のブロックチェーン・ビジネス
1 ブロックチェーンアプリケーションの概観
●金融系
●非金融系
2 ブロックチェーンの金融分野への活用
●海外のケース
* R3コンソーシアム
* リップル
* UBS
* アブラ
* サトシペイ
* ファンダービーム
* スキューチェーン
* タリースティックス
* テザー
* ファルコンプライベートバンク
国内のケース
* 三菱UFJ銀行
* 一般社団法人ブロックチェーン推進協会
* みずほフィナンシャルグループ
* SBIホールディングス
* 日本取引所グループ
3 金融分野への影響
●通貨
●送金
●決済
* クレジットカード
* 銀行口座不要の場合
●資金調達
●運用
●商業銀行
●中央銀行
* 日本銀行
* 海外の中央銀行
* 中央銀行が発行する法定デジタル通貨のメリット
* 中央銀行が発行する法定デジタル通貨のデメリット
●保険業
●新しいタイプの銀行—マーケットプレイス銀行—はどうなるか

第5章 非金融分野のブロックチェーン・ビジネス
1 ブロックチェーンの非金融分野への応用
●三大機能をどう活かすか
●経済産業省による5つの分類
2 産業分野への応用
●地域通貨
* 飛騨信用組合
* 近鉄グループホールディングス
●ポイントプログラム
* ロイヤル
* 国内企業
●デジタルコンテンツ所有権管理
* アスクライブ
* その他の海外事例
●音楽著作権
●所有権管理
* エバーレジャー
●トレーサビリティ
●サプライチェーン
* プロビナンス
●電力取引
* パワーレジャー
* 日本の事例
●シェアリングエコノミー
* コミューターズ
* アーケードシティー
●シェアリング兼IoT
●IoT
●個人間取引マーケットプレイス
●本人確認
●教育
●予測市場
●エシカル消費推進
●旅行業
●データ流通
3 公共分野への応用
●デジタル政府
●法人登記
●土地登記
●その他
4 DAOによる自律分散型組織
5 世の中の変化への影響
●トラストレスな社会の到来
●通貨の概念の変化
●売買活動の効率化
●企業グループ内の効率化
●プロシューマーの増加
●仕事はどう変わる?

第6章 ブロックチェーン・ビジネスの投資動向
1 ブロックチェーン分野への投資動向
●ベンチャーキャピタルの投資動向
●インベスターの投資動向
●仮想通貨の投資ツール
2 ICOの動向
●ICOの3つの目的と他の資金調達手段との違い
●ICOのメリットとデメリット
●ICOで使われるトークン
●ICOのフロー
●ICOへの投資動向
●ICOの問題点
●政府対応
* エストニア
* アメリカ
* 中国
* 韓国
* 日本

第7章 ブロックチェーン・ビジネスの会計と税務
1 会計基準等の制度整備の動向
●企業会計基準委員会による会計基準の整備
2 仮想通貨にかかわる会計上の論点
●棚卸資産としての評価
3 企業会計基準委員会による会計基準検討
●ビットコインを前提にした基準の開発
●仮想通貨の利用者に必要とされる処理についての検討事項
●ASBJによる会計基準の検討ポイント
●ASBJと業界団体との意見交換
●「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」の概要
●仮想通貨分別管理に関する基準
●仮想通貨交換業者の財務諸表監査
●ICOと規制
●ブロックチェーン技術のビジネス適用とリスク・内部統制

第8章 ブロックチェーン・ビジネスの法務と知財
1 ブロックチェーン・ビジネスの法務
●関係する法律
2 実務に必要な法律知識
●仮想通貨
●ICO
●権利証明
●スマートコントラクト
●その他の法的論点
3 ブロックチェーンと知財
●オープンイノベーションであることの考え方
●特許出願と特許紛争の状況
●商標についての考え方

第9章 ブロックチェーン・ビジネスのつくり方
1 ビジネスを考えるポイント
●現状認識
●ブロックチェーン技術の特性レビュー
●ビジネス企画の留意点
●ブロックチェーン技術の定着パターン
●当面狙うべき4つのユースケース
●長所活用と短所補完のユースケースの検討
●短期・中期・長期それぞれの検討
2 スタートアップのポイント
●起業を考える目安
●ビジネスモデルを考える
●ビジネスプランを立てる
●マーケティングを考える
●リスクを考える
●組織の考え方
3 ベンチャーのファイナンスの留意点
●資金繰りの考え方
●エンジェルとベンチャーキャピタルについて知っておくこと
●ストックオプションについて
●資本政策について

おわりに

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP

WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?

ブロックチェーンとは何か

本書は、ブロックチェーンの仕組みと現状、そして将来性について一通り解説している本です。ブロックチェーンは社会に大きな影響を与えるポテンシャルがありますが、その性質の背景や、ブロックチェーンによって、社会が今後どのように発展する可能性があるのかを学べます。

坪井 大輔 (著)
出版社 : 翔泳社 (2019/7/12)、出典:出版社HP

CONTENTS

序章 ブロックチェーンのいま

第1章 ITの進化
企業から個人へ
PCと携帯電話、個人に近づくIT
3G通信の時代
ポスト携帯電話時代
4Gとポストスマートフォン
「人の機能」に近づくIT
データ収集装置としてのデバイス
人の機能×IoT
5Gは何を変えるか
「四種の神器」とは
レガシー産業に参入していくIT
Amazon GOやメルカリ
ものづくりは足かせ
既存産業とIT

第2章 ブロックチェーンの正体
ブロックチェーンの誕生と4つの技術
ブロックチェーンは「信用」をもたらす
ブロックチェーンの最大の運用例「ビットコイン」
ビットコインブームと「大馬鹿理論」
値上がりする設計
ビットコインは「通貨」になるか
犯人捜しはブロックチェーンの仕事ではない
バンドル/アンバンドル
パブリック/プライベートの違い
ブロックチェーンの認知拡大
「仮想通貨派」と「テクノロジー派」
ブロックチェーンは落ち込み知らず

第3章 普及を阻むもの
ブロックチェーンはビジネスになっていない
Whyブロックチェーン?
法律は超えられない
ブロックチェーンに向かないこと
経営幹部と現場のギャップ
リアルマネーの代替でよいか
既得権益の強さ
売りが「堅牢性」であること
トラブルゼロと言えるか

第4章 ブロックチェーンが拓く未来
ブロックチェーンが国家を消す?
自律分散型組織(DAO)とは
スマートコントラクト
RPAがあらわすもの
イメージ例としてのEU
組織はヒエラルキーからホラクラシーへ
DAOにおける「マネージャー役の人間」
トークン=仮想通貨ではない
トークンがつくる「社会」
なぜ「国づくり」をやるのか
コミュニティは「同好会」だけにあらず
SDGsとの親和性
超競争社会の可能性
都市と地方で社会制度を変える
第3レイヤーのエコノミー

第5章 実験例と想定ケース
ケース1 医薬品の在庫販売プラットフォーム
ケース2 (アイデア)テレビ視聴をネットワーク化する
ケース3 EV充電スタンドをネットワーク化する
EVと日本メーカー
クラウドファンディングとブロックチェーン
情報を仲介するブロックチェーン
台帳を見るビジネス

おわりに
ブロックチェーンは社会インフラ
地域で立ち上げた推進団体
「未来志向」に理解者は少ない

坪井 大輔 (著)
出版社 : 翔泳社 (2019/7/12)、出典:出版社HP

序章 ブロックチェーンのいま

ブロックチェーンの本質は、技術にはありません。その思想にあります。

今まで多くの方がブロックチェーンの技術を語ってきました。システム会社が最新のテクノロジーだと宣伝し、新しもの好きの人々はバズワードとしてのブロックチェーンを追いかけました。仮想通貨を入口に、金融システムの技術として注目する人が増え、一時はマスコミも競うように技術名ばかりを伝えました。でも、なかなか本質的な議論は聞こえてきません。この技術が結果的にもたらす、社会思想についての議論です。

結論を申し上げます。ブロックチェーンは人類に、管理者のいない社会をもたらします。それは、私たちがまだ見たことのない世界です。これまでのような、特定のボスを中心とした中央集権型1の組織が崩れ、個々の人間は自律した存在となります。

このうねりはブロックチェーンの登場と同時に始まりました。もう止まることはありません。

ここしばらく、ブロックチェーンのことを忘れかけていた方もたくさんいるでしょう。「ブロックチェーン? ビットコインブームが過ぎてからはあまり名前も聞かなくなっていたけど」――そんな声があちこちから聞こえてきそうです。

確かにブロックチェーンは、ビットコインという仮想通貨を実現させる基盤技術として世に出てきました。本書を手に取ってくださっている皆さんなら、2016年から7年末にかけての「バブル」をすぐ思い出せるのではないでしょうか。

もともとブロックチェーンもビットコインも、誕生から数年の間、エンジニアや技術ウォッチャーにしか知られていませんでした。それが少しずつ、ビットコイン価格の上昇が話題となり、一般の方々にも認知されるようになっていきました。

2016年後半あたりから徐々に投機的な動きが大きくなってきて、2017年2月には1ビットコイン=230万円を超える水準に急騰します。ところがそれから2カ月足らずで価格が3分の1に暴落。「おいしい儲け話」としてのビットコインに吸い寄せられ、そして失望した人びとは、あっという間に去っていきました。ブームが下火になるに従い、その基盤技術であるブロックチェーンも世の中から存在感を失っていったように感じている方も多いと思います。

でもちょっと待ってください。ブロックチェーンは、単に仮想通貨を運用するためだけの技術なのでしょうか。冒頭で述べたように、そうではありません。本書を通して詳しくご説明していきますが、社会の仕組みや国のあり方、人の生き方、いろいろなものを変える力を持った、流行では収まらないテクノロジーです。ビットコインブームが去ろうが、その潜在力はまったく変わっていません。それどころか、いよいよ上昇気流に乗り始めている。私はそれを確信しています。

ここで簡単に自己紹介をさせてください。私は、北海道札幌市に本社を置く「INDETAIL(インディテール)」という企業を経営しています。当社は、ブロックチェーン技術でこれまで世の中になかったビジネスや事業を生み出していく、全国的にも類のない企業です。さまざまな業界のさまざまなプレーヤーと手を結んで、誰も考えつかなかったような事業モデルの実証実験を次々とやり遂げ、この中のいくつかを大手企業さんなどに売却して利益を得るモデルです。(図0-1)

ゼロを1にすることに特化した企業ともいえます。私たち自身がベンチャー企業ですから、「ベンチャーを生み出すことを事業とするベンチャー」と言ってもいいかもしれません。

ここに至るまでにはもちろん企業としての歩みがあります。当社は2009年創業で、今年ちょうど10年を迎えました。当社のように地方を拠点とするIT企業に多いのは、地元の有力企業や団体からの受注、また、東京をはじめとする大都市圏のIT企業からの受託開発で経営を成り立たせるパターンで、私たちも最初はこの例に漏れませんでした。

存在感を強く出せるようになったのは、2011年に、北海道企業として初めて本格的にスマートフォンアプリ開発を始めたころからです。ちょうど全国的なスマホの普及とアプリ開発の市場拡大にタイミングを合わせることができ、業績を伸ばすことができました。

その後、スマートフォンでのeコマース2の拡大を見越して2013年夏にスマホ向けECモール事業を立ち上げ、成長したところで2017年に売却しました。

創業直後から続けてきたビジネスソリューション事業、2016年に立ち上げたゲーム事業も、順調な状態で友好企業に譲渡、イグジットしました。こうして会社の体制を一新し、この春、ブロックチェーンに特化した企業として再スタートを切りました。

経営者として数年先の世の中を予測し、成長しそうなビジネス分野で事業を組み立て、投資する。そして事業を軌道に乗せたら、これをより発展させてくれるパートナーに引き継いでいく。これが、私がこの10年やってきたことです。一言で表すなら「シリアルアントレプレナー3」、連続起業家と呼ばれるタイプの経営者だと自己分析しています。

私がブロックチェーンの潜在力を確信し、企業として本格的にこの分野に取り組むようになったのは2016年後半からです。3年近く全力でブロックチェーンと向き合ってきた中、先端のエンジニアやキーパーソンと話し合ったり、各地で一般の方々向けに講演をさせてもらったりする機会に恵まれました。

講演は2017年後半あたりから声をかけていただくことが増え、現在に至るまで毎月2、3回程度のペースでやらせてもらっています。お訪ねする先はIT系ばかりでなく、金融、会計、証券、医療、宇宙開発、新聞、行政、中小企業団体など実にさまざまです。特段IT投資に積極的と思われている業界ではなくても、それぞれの課題の解決方法としてブロックチェーンが注目されています。多くの分野の専門家とブロックチェーンについて意見交換させていただいた経験に関しては、誰にも引けをとらないつもりです。

さて話を戻します。ブロックチェーンはビットコインブームとともに忘れられつつあるのでしょうか。

札幌市内で2019年3月、ブロックチェーンの未来を語るイベント「ブロックチェーンフェスティバル2019」が開かれました。詳しくは後の章でご説明しますが、これは「ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム」(BHIP)という、私たちインディテールを含め40を超える企業・団体が名を連ねる組織が主催したものです。(図0-2)

実は私たちはこの約1年前にも、同様のイベントを開いています。そのときも当初予定の100席では足りなくなって、急きょ50席増やしたほどだったのですが、今回は、あらかじめ200席用意したのに参加募集の締切を待たずして登録で満席となりました。

1年前は、ブロックチェーンとはそもそも何か、という入門的な要素をかなり意識した内容でしたが、2019年はブロックチェーンを地域でどう活用するかという、やや応用編のテーマを中心に据えました。それでも参加者は増えたのです。

当日、前年以上の熱気が会場に溢れていたのはいうまでもありません。都合で来場できなかった方々のためにネット生中継も実施し、これも多くの方にご覧いただきました。このイベント後も、講演の依頼などをたくさんいただいています。

ビットコイン価格が低迷しているのとは対照的に、実際には、世の中のブロックチェーンへの関心はまったく弱まっていない、私はそう実感しています。
昨今、IT大手企業に人々の情報が集約されていることに対して、問題意識が高まってきています。いわゆるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)にがっちりと管理されたネットワークの中で私たちが生活しているという、その事実に対する違和感=危機感です。

一方でブロックチェーンは、「誰も管理していないのに自律的に機能するネットワーク」を実現します。GAFAのあり方を中央集権型のネットワークとすれば、ブロックチェーンは分散型、または非中央集権型のネットワークであり、大きく異なる世界観です。ブロックチェーンは本質的に、GAFAのような大プレーヤーによる支配の構造を崩していく作用を持っているのです。

GAFAの良しあしをここで論じるつもりはありません。ただ、歴史というものは振り子のように、時代がある方向に動いたらその次にはまた違う方向へ、ときとしてまったく逆方向へと向かう力が働くものです。
私が申し上げたいことは極めてシンプルです。大きなプレーヤーが中央集権型のネットワークをつくってきた時代が今で、これから世界は分散型、非中央集権型へと動こうとしている。この人類史的な変化のきっかけとなっているのが、現時点では単なる仮想通貨技術と見られることの多いブロックチェーン、ということです。ここから先、会社組織もビジネスのあり方も、強固な管理主体が存在しない、自律分散的な姿が増えていきます。

私は時代の変化を感じています。ブロックチェーンがその扉を開け、世の中の感度の高い人たちがこれに気付き始めているのではないでしょうか。

ブロックチェーンの潜在力は、万人がすぐに感じ取れるものではありません。この一因は、これまでブロックチェーンがあまりにも金融の文脈でばかり語られてきたからです。

繰り返しますが、ブロックチェーンが誕生したのは仮想通貨のプラットフォームとしてでした。ですから、少なくとも始まりの時点で、世間的な見え方のことだけをいえば、ブロックチェーンと仮想通貨はイコールでした。このため、技術者コミュニティ以外で最初にブロックチェーンに反応したのは金融業界やその周辺の方々でした。流れとしては当然ともいえるでしょう。

その流れが今どこに行き着いているか。ブロックチェーン本を探すと、ネットの書籍販売でも、リアルな本屋さんでも、大半が金融系であることに気がつくでしょう。一時の仮想通貨ブームに便乗するような本も少なからず見られます。

ただ、ビットコインバブルがはじけて1年以上が過ぎ、金融分野での論議はもう落ち着きました。今こそ、より大局に目を向けて、ブロックチェーンがもたらす非中央集権型社会、分散型社会について考えるときです。こうした文脈の中で、一つの思想をお示ししたい。それが、私がこの本を書こうと考えた最大の動機です。

私がこれから書くことは、必ずしも、今の一般的な会社組織や社会のあり方にフィットする考え方ではないかもしれません。むしろ否定されたり、机上の空論として一蹴されたりするものかもしれません。

ただ、私のような起業家、またベンチャー企業というものは、これまでの秩序を壊すというところに本質的な役割があります。

こうあるべき社会の姿、こうありたい社会の姿を示し、それを実現させない現行の利害関係に挑戦していく役目です。その手段として、ITというテクノロジー、もしくは事業のビジョンがあります。そうして既得権益を壊したところに、イノベーションと呼ばれる状況が生じる。ブロックチェーンはこの破壊に大いにリンクするテクノロジーなのです。

本書は仮想通貨取引で大儲けするための本でも、金融業界の再編を論じる本でもありません。極論ですが、この本を読んだ半年後にあなたの資産が増えることはないと思ってください。目先のお金の話ではなく、ブロックチェーンが私たちに何をもたらすのかを考える思想の本です。

もちろんブロックチェーンはまだ新しい技術であり、今もその進化を止めていません。世界中の技術者たちが現在進行形で改良・改善を重ねている結果として、バリエーションが急速に増え続け、時間を追うごとに簡潔な解説が難しくなっています。エンジニア向けの最新技術情報に一つ一つ触れていくとキリがありません。

ですから本書では、主に前半部分を使って、ブロックチェーンを理解するための必要最低限の知識を整理していきます。基本に立ち返り、難しそうな専門用語や数式をできるだけ避け、わかりやすく解説するつもりです。

そして本の後半で、今の社会におけるブロックチェーン、そして未来の社会、組織について述べていきます。最後に、社会でこんなふうに応用できるというアイデアや事例をご紹介します。

今、人類史的な大変化が始まったところです。私たちは偶然、そのスタートラインにあたる時期を生きています。ビジネスパーソンはこの変化をいち早く感じ取って仕事をしていかなければ、早晩、時代の動きに振り落とされることになります。未来に勝つために、ブロックチェーンの本質を一緒に見ていきましょう。

本書を執筆するにあたり、関係する各方面からのご指導・ご支援を頂戴しました。お力添えをくださった方々、また、公私を問わずこれまで私を支えていただいた多くの方々に、心から感謝を申し上げます。

令和元年 初夏 坪井大輔

1 中央集権型情報や権限や責任が一カ所に集まっている状態。国家公務員における東京・霞ヶ関の本省や、全国に支社を持つ大企業の本社をイメージするとわかりやすい。小さな企業でも、社長や役員などに権限・情報が集中している場合も当てはまる。すべてが集まる中心部にいるのが管理者で、それ以外の部分は管理者に従属する立場となる。

2 eコマース/EC
electronic commerceの略。インターネット上で商品を売買すること。

3 シリアルアントレブレナー
新規事業立ち上げを繰り返すタイプの起業家。連続起業家と訳される。従来、経営者というと、自ら始めた事業を育てていく、または誰かから引き継いだ事業を運営していくイメージが多い。シリアルアントレプレナーは、新事業をスタートさせ、軌道に乗りそうな段階まで育てると大企業などに売却し、別の新事業を立ち上げていく。

坪井 大輔 (著)
出版社 : 翔泳社 (2019/7/12)、出典:出版社HP

未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス

ブロックチェーンの概要を理解する

本書は、ブロックチェーンの直感的なイメージを共有することを目的として書かれています。技術の進化やブロックチェーンの歴史から始まり、具体的な事例の紹介、そして将来的な展望についてまとめています。図が多く掲載されているため、視覚的な概要の把握ができるようになっています。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : エムディエヌコーポレーション (2018/10/30)、出典:出版社HP

はじめに

本書を手に取られた方で、「ブロックチェーン」という言葉を聞いたことがない方はいないと思います。ところが「ブロックチェーンとはどういった技術ですか?」という問いに、スパッと答えられる方は少ないかもしれません。

というのも、私でさえこの質問にはいつも悩まされています。なぜなら、ブロックチェーン技術には以下の3つの困った点があるからです。

第1に、ブロックチェーンは技術革新がめざましく、状況が目まぐるしく変化してきたという点です。ビットコインとともにブロックチェーン技術が誕生してからたった10年の間に、この技術は試行錯誤をくり返し、多種多様で複雑な技術体系となりつつあります。

第2に、目に見えるモノや実際に使えるサービスとしての体感が欠けている点です。実態として実用に耐えうるレベルに近づいたのはここ数年のことであるにもかかわらず、投機の対象として黎明期から人々の期待を集め取引がくり返されてきたことで、本来あるべきはずの「技術に触れる体験」がごっそり抜け落ちています。

第3に、ブロックチェーン技術全般を視覚的に表現することが難しい点です。ブロックチェーンは暗号技術と経済モデルを組み合わせた仕組みのため、数式や文章で表現することはできてもビジュアルイメージに落とし込むことは困難です。また、ありとあらゆる業界のさまざまなプレイヤーを巻き込んでいくブロックチェーンのエコシステムは、どうしても複雑になってしまいがちです。

本書では、この3つのポイントに注力してみなさんと「ブロックチェーンの直感的イメージ」を共有していきたいと思います。PART1で技術全体の進化と変遷をたどりながら、PART2で具体的な事例をもとにユースケースを解説し、PART3では今後の未来を予測していきます。また、全編を通じてモデル図を多用することで、ブロックチェーンを用いたビジネスモデルを可視化していきます。

本書を通じてブロックチェーンへの理解がより深まり、ビジネスへの活用のヒントとなれば幸甚です。

森川夢佑斗

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : エムディエヌコーポレーション (2018/10/30)、出典:出版社HP

INTRODUCTION
ブロックチェーンで世界がこう変わる!

仮想通貨が広く認知され、その基盤となるブロックチェーンも、最近では「世の中を変える」「ビジネスを変える」インパクトを持った技術革新として捉えられるようになり、活用したサービスが登場しています。
本書では、ブロックチェーンの広がりがあなたの生き方にどう影響を与え、何をもたらすかを解説しています。
その中でも、とくに重要なトピックを6つピックアップしました。

P2P通信を用いた分散型のネットワークへ!
お金の流れや価値観が変わる!
最先端技術の活用範囲が広がる!
ビジネスが会社中心から個人中心に!
情報を自分で活用し、多様な暮らしを可能に!
個人間取引のマーケットが活性化する!

P2P通信を用いた分散型のネットワークへ!
従来のコンピューターネットワークは、サービスを提供する中央管理サーバーが存在するクライアントバーシステムでした。しかし、ブロックチェーンではネットワーク上に存在するコンピューターが1対1で直接やり取りするP2Pが基本で、そのシステムを中心としたネットワーク環境が広がっていきます。

お金の流れや価値観が変わる!
ブロックチェーンは金融システム全体に影響を与えます。円やドルなどを中心とするお金の流れがすべてではなくなり、お金をたくさん持つ人が偉いという価値観は薄れていきます。あなた自身が持つデータすべてに資産的価値が認められ、仮想通貨やトークンといった報酬を得られる仕組みが生まれていきます。

最先端技術の活用範囲が広がる!
AIやVR、ドローンなど、注目されている未来の技術はブロックチェーンとの相性が良く、その活用範囲を広げる役割を果たします。これらの技術は大企業が独占的に開発を進めるイメージが強いのですが、資本を持たない個人のアイデアが活かせる環境が整えられ、身近な場面での活用が現実味を帯びてきます。

ビジネスが会社中心から個人中心に!
私たちは「高い給料と安定した暮らしを求めるなら大企業」「一発当てるならベンチャー企業」というような仕事選びをしてきました。しかし、ブロックチェーンは、そもそも「会社に勤める」という常識を覆します。個人の能力や嗜好に基づいて、働き場所はもちろん職種さえも複数選ぶことができるようになります。

情報を自分で活用し多様な暮らしを可能に!
従来のインターネットでは、個人情報や貢献度、人とのつながりに至るまで、あらゆる情報がサービス事業者の手元で管理されてきました。しかし、ブロックチェーンでは、ありとあらゆる情報の所有権が、ユーザーひとりひとりの手元へ戻り、自分の情報を価値として取り扱うことができるようになります。

個人間取引のマーケットが活性化する!
インターネットの普及によって、個人間で行う情報通信とそれを利用した取引は拡大し続けています。ところが、取引が行われる場所を事業者が提供してきたために、中間の手数料などが発生せざるをえませんでした。ブロックチェーンによって、どんな立場の人とでも、手数料を気にせず確実に取引が可能になります。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : エムディエヌコーポレーション (2018/10/30)、出典:出版社HP

目次

ブロックチェーンで世界がこう変わる!

PART1 ブロックチェーンと仮想通貨の今
01 ブロックチェーン誕生までの経緯
02 ビットコインのしくみとブロックチェーンの基本形
03 ビットコイン取引の6つの流れ
04 一方向ハッシュ関数と公開鍵暗号方式
05 トランザクションのブロードキャスト
06 ハッシュ関数を用いた入れ子型のデータ構造
07 ブロックチェーンの基本的な特徴
08 イーサリアムとスマートコントラクト
09 ブロックチェーン上のトークン(代替通貨)
10 スマートコントラクトでトークンを発行する「ICO」
11 DAppsとWeb3.0の到来
12 ブロックチェーン技術の進展と階層化
13 多様化していくブロックチェーン
14 ブロックチェーンを取り巻く問題
15 期待を集める第3世代ブロックチェーン
16 ブロックチェーンを取り巻く世界の規制
17 ブロックチェーンの実用化に向けての動向
[まとめ]ブロックチェーンとはどういうものか
[COLUMN]サトシ・ナカモトとは何者なのか?

PART2 応用されるブロックチェーン
01 ブロックチェーンの活用範囲と分類
02 ブロックチェーンが実現する新たなビジネスと社会
03 金融業界~「資産」が流動化し金融商品化
04 不動産業界~国境を越えた自由な取引
05 動産(アート・貴重品)業界~著作権の証明がオンラインで可能に
06 サプライチェーン(製造・小売・物流業界)~手にするまでの流れがすべて可視化
07 メディア・広告業界~管理者不在で記事公開が可能
08 音楽・コンテンツ業界~不正アップロードを防ぐ
09 娯楽・ゲーム業界~アイテムやキャラクターをゲーム外で売買
10 医療・福祉業界〜データベースの統合によるヘルスケア
11 人材採用業界~学歴や職歴の公共データベース化
12 エネルギー業界~スマートコントラクトでP2P取引
13 官公庁~分散型の公証プラットフォーム
14 気象・環境業界(ビッグデータ)~個人や企業の参入により、研究が進む
15 シェアリング業界~ポストAirbnbやUber
16 派遣業界~P2Pでマッチングするクラウドソーシング
[まとめ]ブロックチェーンでビジネスのあり方はどうなるか
[COLUMN]ビットコインで億万長者となったウィンクルボス兄弟の野望

PART3 ブロックチェーンがもたらす未来
01 未来の技術とブロックチェーン
02 AI(人工知能)とブロックチェーン
03 生体認証とブロックチェーン
04 VR(仮想現実)とブロックチェーン
05 ドローン(小型無人機)とブロックチェーン
06 IoTとブロックチェーン
07 インターネットとブロックチェーンの未来
08 ブロックチェーンで変化する個人の行動
09 ブロックチェーンで変化する組織
10 ブロックチェーンで変化する経済圏
11 ブロックチェーンで変化する価値観
12 ブロックチェーンが実現する社会と人々の関係性
13 ブロックチェーンの未来に向けGincoは何をしているか
[まとめ]ブロックチェーンは未来をどう変えるか

補注
索引

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : エムディエヌコーポレーション (2018/10/30)、出典:出版社HP