【最新】GAFAを知るおすすめ本 – 世界のネット覇権の今と未来

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最新GAFAは今どの位置に?そして未来は?

GAFAについては、Google、Amazon、Facebook、Appleこれらの4社ということは最近のメディアでも既知になりつつあります。和製英語として成り立っていますが、ビッグ・テック(Big Tech)として世界の覇権を目指している会社たちです。検索エンジン、SNS、スマートフォン、オンラインショッピングなどから始まり様々なサービスが身近になっております。

このままこの4社が更に大きくなるのか、また違う新規参入者が牙城を崩すのか、今ホットな話題を集めているGAFAをより知ることができる書籍となります。

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出典:出版社HP

超図解 世界最強4大企業GAFA 「強さの秘密」が1時間でわかる本

IT4大帝国のすべてがわかる

世界のTOP企業であるGAFAについて、「1時間でわかる本」の名前の通り、わかりやすく解説された一冊です。本書は、グラフを多く用いながら解説していてより理解しやすくなっているので、GAFAについて学習する際の最初の一冊としてもおすすめです。

中野 明 (著)
出版社: 学研プラス (2019/10/31)、出典:出版社HP

世界屈指のIT企業GAFA−数字で見るその圧倒的な強さ

はじめに

GAFA(ガーファ)とは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのそれぞれの頭文字を取ったもので、アメリカの超有力IT企業を指す略称だ。前ページでも紹介したように、2019年8月現在、GAFAの株式時価総額は2兆9753億ドル(日本円換算で約315兆円)にものぼる。IMF(国際通貨基金)によると、2018年における世界各国の名目GDP(国内総生産)は、アメリカがトップで20兆4940億ドル、続いて中国が13兆4073億ドル、そして日本の4兆9719億ドルとなった。
それでは、2兆9753億ドルというと、世界各国の名目GDPランキングで何位くらいになるのだろうか。日本に次ぐ第4位はドイツで4兆3億ドル、そして第5位はイギリスで2兆8286億ドルとなっている。つまり、GAFAの時価総額はイギリスのGDPを超えて世界第5位となり、大国並みの実力をもつ存在へと成長しているのだ。
GAFAの強さの源泉は、各社がもつ製品やサービスの圧倒的な市場シェアにある。検索の覇者グーグル、スマートフォンの利益を独り占めするアップル、1億人のSNS帝国を築いたフェイスブック、ライバルを次々と蹴落とすECの巨人アマゾンというように、各社が得意分野で独自のエコシステム(ビジネス生態系)を構築し、プラットフォーマーとしてサイバー空間を寡占的に支配する。

しかもGAFAは、既存のビジネス領域だけでなく、自動車や金融、住宅、医療、宇宙と、新たなフィールドへと貪欲に進出している。そして、従来の業界秩序を乱すディスラプターとして、まったく新たな枠組みを作り上げようとする。そのため多くの企業はGAFAの一挙手一投足に戦々恐々としているのが現状だ。GAFAに強い恐怖心を抱くのは企業ばかりではない。大国並みの経済力と影響力をもつGAFAには、いまや世界の国々でさえ警戒感をあらわにしている。例えばフェイスブックがデジタル通貨の発行を表明したところ、世界各国の首脳や国際機関から一斉に懸念の声が上がったことはいまだ記憶に新しい。
もはやGAFAの動きは、世界の政治にさえ影響を及ぼすようになっているのだ。
本書では、こうした圧倒的な力をもつようになったGAFAについて、そのビジネスモデル や経営戦略、次世代戦略などの観点から解説した。全体の構成は6章からなり、各章の概要は次のようになっている。

Chapter 1
そもそもGAFAとはどのような存在なのか、このシンプルな疑問に答えるのが冒頭の本章にあたる。ここではGAFAそれぞれが得意とするビジネスや4社の稼ぐ力、市場からの評価、相互のライバル関係について解説し、GAFAについてのアウトラインを理解できるようにした。

Chapter 2
この章からChapter 5までは各論で、GAFAそれぞれについて順にふれていく。まずはグーグルで、そもそもグーグルは何で稼いでいるのか、その基本的な疑問に答えた。その上で、グーグルがもつ人材やマネジメント手法、将来の取り組みについて多角的に見ていくことにする。

Chapter 3
アップルの現状と今後について取り上げる。一時は身売り説も噂されたアップルは、共同創設者スティーブ・ジョブズの復帰で劇的に復活した。しかも2018年には世界で初めて株式時価総額が1兆ドルを超えた。アップルの強みがどこにあるのか、この章を通じてそのポイントを押さえてもらいたい。

Chapter 4
GAFAの中で最も若いフェイスブックについて解説する。世界に公億人以上の利用者を抱えるフェイスブックは、名実ともにサイバー空間に姿を現した巨大帝国と言うにふさわしい。SNSを提供するフェイスブックが、そもそもいかにして利益を上げ、何を目指そうとしているのか、度重なる不祥事に問題はないのか、これらの点について検証したい。

Chapter5
GAFAの最後はアマゾンについてだ。EC(電子商取引)の巨人に成長したアマゾンはユニークな顔をいくつももつ。クラウド・コンピューティングのトップ企業であり、いまや物流にも進出する。EC企業としてだけでは括ることのできない謎めいたアマゾンの全貌を明らかにする。

Chapter 6
最終章はGAFAの今後についてふれた。いまGAFA以上に元気なのが意外にもマイクロソフトだ。同社についてふれるほか、GAFAが激しくぶつかり合う対話型AI市場の今後、さらにGAFAと国家の対立などについても、本章で扱うことになるだろう。

IoT(モノのインターネット)の進展やウェアラブル・コンピューティングの普及によりサイバー空間はますます拡大する。加えてそこへ新たな利用者が次々と流入し、「1世紀の石油」とも言われるデータは今後も膨張の一途をたどるだろう。刻々と変貌するサイバー空間において、これからどのような秩序が成立するのか。
その重要な鍵を握るのがやはりGAFAだろう。GAFAの実態を探ることで、その一端を垣間見ることができれば、本書の使命は達成されたことになる。

2019年9月 筆者識す

中野 明 (著)
出版社: 学研プラス (2019/10/31)、出典:出版社HP

CONTENTS

世界屈指のIT企業GAFA――数字で見るその圧倒的な強さ
はじめに

Chapter1 GAFAの競争力・徹底比較
1-1 GAFAの「三つの共通点」とは何か
1-2 GAFAのビジネスにおける「強み」とは何か
1-3 GAFAはどのくらい「稼ぐ力」があるのか
1-4 GAFAで「市場の評価」が最も高いのはどこか
1-5 GAFAは「敵対関係」にあるのか
column GAFAと「体の三つの部位」

Chapter2 Google−検索×広告で世界を制圧
2-1 グーグルの進化のポリシーとは何か
2-2 グーグルは何で儲けているのか
2-3 グーグルが所持する「最強の武器」とは何か
2-4 グーグルの武器は「グーグル広告」だけなのか
2-5 グーグルにはなぜ人格者が多いのか
2-6 グーグルのマネジメント・システムはどこが優れているのか
2-7 グーグルはなぜモバイルからAIにシフトチェンジしたのか
2-8 グーグルが注力する「自動運転」の狙いは何か
history グーグル年表

Chapter3 Apple−世界をデザインするイノベーション企業
3-1 世界初の時価総額1兆ドル企業成長の理由は何か
3-2 アップルは何で儲けているのか
3-3 なぜiPhoneの利益率は高いのか
3-4 卓越したデザインにこだわるのはなぜか
3-5 アップルの収益システムの特徴はどこにあるのか
3-6 アップルはコンテンツ・プラットフォームを独占できるか
3-7 アップルの売りは、製品やサービスだけなのか
3-8 アップルはこれからもイノベーションを起こし続けるのか
history アップル年表

Chapter4 Facebook−世界1億人の承認欲求を支配するSNS帝国
4-1 フェイスブックの利用者数はどこまで増えるのか
4-2 フェイスブックがグーグルに勝る強みとは何か
4-3 フェイスブック広告の仕組みはどこが優れているのか
4-4 インスタグラム、ワッツアップ買収のメリットは何か
4-5 フェイスブックのSNSはなぜ儲かるのか
4-6 フェイスブックがVRに進出した本当の理由とは何か
4-7 フェイスブックが開始するデジタル通貨の戦略は何か
4-8 フェイスブックはなぜ不祥事が後を絶たないのか
history フェイスブック年表

Chapter5 Amazon−ITからリアルへ。進化を続けるプラットフォーマー
5-1 アマゾンはどのような道を経て巨大化したのか
5-2 アマゾンで一番稼いでいるのはどのビジネスか
5-3 アマゾンの経営戦略のポリシーはどこにあるか
5-4 アマゾンが大躍進したきっかけとは何か
5-5 アマゾンは物流業界をどう変えていくのか
5-6 アマゾンがリアル店舗に進出する狙いとは何か
5-7 「アマゾン銀行」は現実のものとなるのか
5-8 ベゾスの野望はどこに向かっているか
history アマゾン年表

Chapter6 GAFAの未来―デジタル界の四騎士は人類の敵か、味方か
6-1 マイクロソフトはGAFAとどう戦うのか
6-2 「しゃべるAI」戦争に勝つのはどの企業か
6-3 GAFAに失敗事業が多いのはなぜか
6-4 大きくなりすぎたGAFAは「人類の敵」なのか
column CAFAを猛追する中国IT企業BATH

参考文献
索引

ブックデザイン/萩原弦一郎(256)
編集協力・DTP/アスラン編集スタジオ
イラスト/ケン・サイトー
校正/東京出版サービスセンター

中野 明 (著)
出版社: 学研プラス (2019/10/31)、出典:出版社HP

GAFAの決算書 超エリート企業の利益構造とビジネスモデルがつかめる

決算分析のコツが掴める

本書では、世界のTOP企業であるGAFAを決算書の観点から分析しています。特に、競合企業の決算書と比較しながら解説されているのでどこが強みなのかよりわかりやすくなっています。また、決算書の読み方についての解説もされているので、初心者の方にもおすすめです。

齋藤 浩史 (著)
出版社: かんき出版 (2020/6/24)、出典:出版社HP

はじめに

GAFAが台頭した平成

1990年代前半、日本はバブルの余韻からアメリカのGDPの7割程度までに迫っていました。しかしなが ら、平成の始まりとなった90年代と比較して、令和になった2020年現在ではアメリカのGDPの3分の1にも 満たない状況です。中国も2000年代に入り、経済成長を続け、2010年には日本を抜き、今ではアメリカに も追いつく勢いです。
次のグラフを見てもわかりますが、日本経済は90年代から成長が止まってしまい、反対にアメリカは年平均5%で成長を続けています。

過去40年間の日米中の名目GDP推移

なぜ、アメリカと日本の経済はここまで乖離してしまったのか?その大きな原因の一つが、互いに先 進国でありながらアメリカは人口が増え続けている一方で、日本は少子高齢化となっていることが考えら れます。経済は、供給と需要の二つの車輪が効率的に回ることで成長していきます。つまり、人口の減少 に伴い需要も減少し、求められる供給も減ってしまう。このようなサイクルが続くと経済は収縮してしま うわけで、日本は、まさに今そのような状況に直面しているのです。

GAFAと日本のトップ企業の時価総額を比較
次の表は、平成元年の世界の時価総額と令和元年の世界の時価総額を比較したものです(令和元年は2019年末基準)。

平成元年と令和元年の世界時価総額ランキングの比較

平成元年
世界時価総額ランキング
順位 企業名 時価総額(億ドル) 国名
1 NTT 1,638.6 日本
2 日本興業銀行 715.9 日本
3 住友銀行 695.9 日本
4 富士銀行 670.8 日本
5 第一勧業銀行 660.9 日本
6 IBM 646.5 米国
7 三菱銀行 592.7 日本
8 エクソン 549.2 米国
9 東京電力 544.6 日本
10 ロイヤル・ダッチ・シェル 543.6 オランダ

 

令和元年
世界時価総額ランキング
順位 企業名 時価総額(億ドル) 国名
1 アップル 13,047.6 米国
2 マイクロソフト 120,303.6 米国
3 アルファベット 9,228.9 米国
4 アマゾン・ドットコム 9,161.5 米国
5 フェイスブック 5,853.2 米国
6 アリババ・グループ・ホールディング 5,690.1 中国
7 バークシャー・ハサウェイ 5,536.1 米国
8 テンセント・ホールディングス 4,606.2 中国
9 JPモルガン・チェース 4,372.3 米国
10 ジョンソン・エンド・ジョンソン 3,839.1 米国

参照:「平成元年」は米ビジネスウィーク誌(1989年7月17号)「THE BUSINESS WEEK GLOBAL1000」。
令和元年は筆者調べ

時価総額とは、株価×発行済み株式数で求めることができ、その企業の市場価値と考えられています。そして現在、時価総額の世界ランクTOPグループには、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を取 ったGAFA(ガーファ)とマイクロソフトが占めています(マイクロソフトを加えてGAFMA(ガフマ)と呼ぶ こともあります)。
これらBIG5の時価総額をすべて足し合わせると、2018年時点では4.1兆ドル(約410兆円、1ドル=100円 で計算)にのぼります。この額はGDP世界4位であるドイツのGDPを超え、さらに日本のGDP5.0兆ドルに もいずれ迫ろうかというレベルです。平成から令和に代わるまでの約30年間で企業の価値は大きく変わっ てしまいました。
最近では、GAFAのライバルは日本企業ではなく、中国IT企業へと変わっています。たとえばこのランキ ングの中にあるAlibaba (アリババ・グループホールディング、もしくは阿里巴巴集団)やTencent(テンセン ト・ホールディングス、もしくは騰訊)、そしてランキング外ですが、Baidu(バイドゥ、もしくは百度)や Huawei (ファーウェイ、もしくは華為)などが競争相手として考えられているのです。
これらが直接的な原因ではありませんが、東大をはじめとする日本のトップランクの大学生が、就職先 としてGAFAを志望するようになりました。学生は企業の業績に敏感です。そのため競争力がある企業に集 まっていくのです。約20年前では、外資系金融かコンサルティング会社に就職先を決める人も多かったの ですが、ここ十数年で就職事情も様変わりしたようです。
さて、平成という30年間で世界経済に何が起こったのでしょうか?そしてGAFAはどうしてここまで 強くなったのでしょうか?
本書では、GAFAのほかマイクロソフト、Netflixなどの「決算書」を分析し、複数の側面からその強さに ついて分析していきます。

決算書の学習革命

「決算書の読み方」はいつの時代も注目を集めるトピックです。
分野を問わずあらゆるビジネスパーソンにとって、決算書(財務諸表)の内容が読めることはキャリアア ップに繋がります。財務知識は、マーケティング・組織・オペレーション・戦略といった経営全般に関わ るため、ビジネスにおける「共通言語」であると言えます。
ところが、それだけ大切なことだとわかっていても、途中で学習を断念してしまう人が後を絶ちませ ん。それはなぜか?

「決算書の読み方は理解したけど、面白さを感じることができない」
「売上や利益は見ることができるから、それ以上深く読む必要性を感じない」
といった意見があるようです。

たしかに、決算書の構造自体は細かく見なければ、決して難しいものではありません。だから単調な数 字の羅列に疲れてしまっているのではないでしょうか?
「売上が高い=良い会社」「利益率が低い=悪い会社」と考えるのはあまりにも短絡的です。そのような判 断が、果たして企業を正しく評価していることになるのでしょうか? 企業には様々な業種があり、ビジ ネスモデルがあり、マーケット規模の大小もあるはずです。
企業の評価を売上や利益の高低だけで決めることは、あまりスマートとは言えません。
企業は、経営のために銀行や株主からお金を調達します(負債や自己資本)。調達したお金を資産(現金 や在庫等)や費用(人件費やマーケティング費用等)に使って売上や利益を出していくわけです。この一連の サイクルには、それぞれの企業が持つ特色があるはずです。
たとえば、本書で取り上げるGAFAの一つ“アマゾン”はキャッシュフローを最も重視している企業である のに対し、成熟企業の多くは利益の額と率に重点を置く傾向があります。また、多くのベンチャー企業は 赤字解消よりも売上高の増加を目指すというように、それぞれ特色が違うのです。
人に置き換えて考えてみた場合、出身大学の“偏差値”はその人の特徴を評価する一つの基準とはなるで しょうが、それだけでは評価や判断をすることはできません。だからこそ、それ以外の基準も考慮に入れ て立体的・多面的に評価することが大切になるのです。
そして企業の場合、「決算書を読む視点」を複数持つことで、多くの情報を読み取ることができ、より 正当な評価をすることが可能になるのです。
もちろん、学習の初期段階ではこの意識改革は苦痛かもしれませんし、我慢強さも必要になってくると 思います。そこで読者の皆さんのモチベーション維持のため、本書で取り上げる題材をGAFAをはじめとする注目度の高い企業に絞って執筆しました。ぜひ好奇心を持って挑戦していただければと思います。

本書執筆の背景

私は、かつてゴールドマンサックス証券をはじめ、複数の外資系金融機関でのトレーダーや投資銀行 業務の経験をしてきました。しかし、これらの経験だけで本書執筆の決断をしたわけではありません。
というのも決算書に関する書籍は、会計士やコンサルをされている方が出版するケースが多く、自身が 決算書の本を出す意味や価値を見いだすことができなかったためです。

私の気持ちを前向きに変えてくれたのは、現在教鞭をとっているマサチューセッツ州立大学MBAの生徒 たちでした。
彼らは、昼間はバリバリのビジネスパーソンである一方、寝る間を惜しんでビジネススクールに通い、 勉強をしている強者たちです。そして、キャリアアップのために必要であれば、何でも吸収していこうと するアグレッシブさを持っているのです。

私はここに自分が執筆をする価値を感じました。
つまり、これまでの決算書に関する書籍のような、広すぎる読者層に向けたぼんやりしたものではなく、MBAの生徒を代表とするキャリアアップや起業を目指す人材に必要になる「決算書の読み方」を提供 する。そして、そのMBAの生徒達からのフィードバックを織り交ぜながら作る「決算書の読み方」は、他 にはない価値があるものと考え、本書執筆を決意したのです。
また、仕事で決算書を読む必要がなくても、「自身のキャリアをワンランク上げたい」と思うなら、決 算書を読むスキルは役立ちます。
実際に、私が教えるMBAの生徒たちのなかには、決算書の読み方を全く知らない人も数多くいました。 しかし、決算書が読めるようになって、仕事の幅が広がり、キャリアチェンジをしていった方はたくさん います。かく言う私も、海外決算書の読み方を身につけたことで、海外企業への提案やロードショー(IR活 動)の同伴など、当時としては「花形」の仕事でキャリアを積むことができたと自負しています。
本書の想定している読者は次の方々です。

●海外の最先端企業の財務および戦略を詳しく知りたい方
●外資系企業で働いている方もしくは外資系企業への転職を考えている方
●グローバルなコンサルティング業務に従事している社会人や学生
●海外でのビジネス展開を計画している経営者

皆さんのキャリアアップやビジネス推進のお役に立てることができれば幸いです。
最後になりますが、本書執筆のうえで、同じマサチューセッツ州立大学MBA講師の椎名則夫氏、大前和 徳氏、加藤千晶氏には貴重なアドバイスをいただきました。また、データ収集と確認の協力をしてくれた 望月晃氏とCPAの伊藤勝幸氏、MBAの生徒であり良き仲間である内田圭亮、大内悠芳貴、山本修平、塚元 啓介、鈴木達也、渡辺鉄平、米田和弘、河合真弓、佐藤丈広、滝波由梨子の各氏にはこの本を書く上で 様々なアイデアやフィードバックをいただきました 。そして、今回かんき出版の米田寛司氏には出版に際 し、色々とサポートをしていただき大変感謝しております。皆さん、本当にありがとうございました。

2020年5月 齋藤浩史

齋藤 浩史 (著)
出版社: かんき出版 (2020/6/24)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに―GAFAが台頭した平成
GAFAと日本のトップ企業の時価総額を比較
決算書の学習革命
本書執筆の背景

第1章 GAFAを分析する
GAFAの正体
GAEAのすごさ
プラットフォーマーになったことがすごい
市場シェアがすごい
時価総額がすごい
売上高がすごい
営業利益がすごい
買収(M&A)額がすごい
研究開発費用がすごい
GAFAのビジネス領域
GAFA vs. 類似企業

第2章 海外決算書を読むコツ
決算書を読む前に知っておきたいこと
[セグメント売上クイズ」 東急電鉄は、どの事業が稼ぎ頭なのか?
決算書学習の基本と決算クイズに挑戦
貸借対照表(Balance Sheets)
COLUMN 正常営業循環基準とは
[BSクイズ] 土地や建物、機械設備が売上をつくる企業とは
損益計算書(Income Statements)
[PLクイズ] 飲食店なのに原価が低いカラクリとは
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statements)
[CFSクイズ] 本業が赤字なのに巨額の投資をしている企業は?
まとめ 財務比率を手掛かりに業界と企業を推測してみる
クイズ 9つの企業の正体は?
クイズに答えるための9つの財務指標
COLUMN アメリカ企業にとっての重要指標
クイズの解法
COLUMN 債務超過を気にしないアメリカ企業

第3章 Apple VS. SONY
AppleとSONYのサマリー
Appleのストーリー
SONYのストーリー
仮説を立てる AppleとSONYの利益構造
COLUMN SONYになりたかったジョブズ
AppleとSONYのパフォーマンス
Appleの決算書
Appleの特徴1 証券投資の大きさ
Appleの特徴2 利益額は世界一
Appleの特徴3 在庫が極端に少ない
Appleの特徴3 ファブレスから設備投資型への変化
SONYの決算書
SONYの特徴1 多角化戦略を適用している
SONYの特徴2 借金をテコに資産投資
SONYの特徴3 売上は頭打ち傾向でも利益率は改善
COLUMN 10Kの内容に挑戦してみる
Appleに競合するもう一つの企業 Huawei

第4章 Amazon VS. 楽天
Amazonと楽天のサマリー
Amazonのストーリー
楽天のストーリー
仮説を立てる Amazonと楽天の利益構造
Amazonと楽天のパフォーマンス
Amazonの決算書
Amazonの特徴1 多い売上・少ない利益
Amazonの特徴2 R&D費用が世界一
Amazonの特徴3 収益源はAWS
Amazonの特徴5 高い資金効率
Amazonの特徴6 労働集約型ビジネス
楽天の決算書
楽天の特徴1 フィンテック事業の拡大
楽天の特徴2 実は資産効率がよくない
楽天の特徴3 少なめの研究開発費用
楽天の特徴積極的なM&A
COLUMN 無形資産とは
Amazonに競合するもう一つの企業 Alibaba

第5章 Google VS.Yahoo! Japan
GoogleとYahoo! Japanのサマリー
広告事業のビジネスモデルとは
Googleのストーリー
Yahoo! Japanのストーリー
COLUMN GoogleとYahoo! Japanの検索結果の違いとは
仮説を立てる GoogleとYahoo! Japanの利益構造
GoogleとYahoo! Japanのパフォーマンス
Googleの決算書 Googleの特徴1 10兆円のキャッシュを使う投資会社
Googleの特徴2 約9割の売上が広告収入
Googleの特徴3 広告ビジネスの開発力
Googleの特徴4 10億人が使う8つのプロダクト
Googleの特徴5 多額の研究開発費を投入
COLUMN Googleのリスク管理
Yahoo! Japanの決算書
Yahool Japanの特徴1 トータルデジタル利用者がトップ
Yahool Japanの特徴2 ARPUの改善
Yahoo! Japanの特徴3 国内最大のプラットフォーマーと買収戦略
Googleに競合するもう一つの企業 Baidu
第6章 Facebook VS.LINE
FacebookとLINEのサマリー
Facebook VS. LINE VS. 他SNS
Facebookのストーリー
LINEのストーリー
COLUMN 始まるGAFA対策
仮説を立てる FacebookとLINEの利益構造
FacebookとLINEのパフォーマンス
Facebookの決算書
Facebookの特徴1 少ない負債
Facebookの特徴2 売上の99%が広告収入
Facebookの特徴3 売上と幅広いユーザー層
Facebookの特徴4 ユーザー数が高く推移
Facebookの特徴5 高い営業利益率
Facebookの特徴6 売上高対R&D投資比率の高さ
LINEの決算書
LINEの特徴1 伸びる広告とフィンテック事業
COLUMN LINEの収益認識とは
LINEの特徴2 ユーザー数の伸び
LINEの特徴3 社債での資金調達
LINEの特徴4 効率的経営
Facebookに競合するもう一つの企業 Tencet
第7章 ―Next GAFA 1 — Microsoft
Microsoft
Microsoftのサマリー
仮説を立てる Microsoftの利益構造
Microsoftのパフォーマンス
Microsoftの決算書
Microsoftの特徴1 バランス型売上割合
Microsoftの特徴2 SaaSの特殊な計上
Microsoftの特徴3 高い割合の米国債投資
Microsoftの特徴4 改善してきた売上と利益率
Microsoftの特徴5 上昇する純利益とFCF
Microsoftの特徴6 買収攻勢

第8章 ―Next GAFA 2 — Netflix
Netflixのサマリー
仮説を立てる Netflixの利益構造
Netflixのパフォーマンス
Netflixの決算書
Netflixの特徴1 上昇し続ける売上と利益
Netflixの特徴2 会員数は世界一
Netflixの特徴3 増加する顧客単価と視聴時間
Netflixの特徴4 資金調達の変化とコンテンツの爆買い

付録 決算書を取得するには
決算書を取得するには
簡易版決算書
公式版決算書
おわりに

装丁:小口翔平(tobufune)
本文デザイン:喜來詩織(tobufune)
図表:小林祐司

齋藤 浩史 (著)
出版社: かんき出版 (2020/6/24)、出典:出版社HP

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

この8社なしにビジネスは語れない

GAFA、BATHとして挙げられる米中メガテック企業8社を分類、比較、分析しています。特に分析に関しては、孫氏の兵法の五事に基づく、筆者独自の「5ファクターメゾット」という観点でまとめられていて興味深い一冊です。

田中 道昭 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/10)、出典:出版社HP

はじめに

◎GAFAとBATHなしに未来は語れない

GAFA (米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)とBATH (中国のバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)を代表とする米中の巨大テクノロジー(メガテック)企業の動向が、今グローバル 経済に大きな影響を与えています。それぞれの戦略や最新技術が産業を牽引し、各社に不祥事”が生じれば「○○ショック」として世界同時株安を招きもする……これらメガテック企業の影響を受けない人も国家も存在しないといっていいほどです。
当初は米国企業が先駆者利益を確保し、それを模倣する格好で中国企業が事業展開してきました。しかし、もはや多くの分野において、中国メガテック企業が技術そのものやその社会実装という点で「本家」の地位を脅かしています。

2018年春頃から一気に顕在化してきた米中貿易戦争。私は、その本質を「貿易×テクノロジー覇権×安全保障」の戦いであると見ています。資易戦争自体は表面的には比較的早期に収束する可能性がある一方、テクノロジー覇権と安全 保障に関する戦いは長きにわたると予測されます。これらについては後述しますが、中国企業が最先端テクノロジーを巡って米国の大きな脅威となったからこそ、この戦いが一気に顕在化したといえるでしょう。

◎8社を分類し比較する

本書はGAFAとBATHという米中メガテック企業8社の分析をテーマとしていますが、分析にあたっては、そもそ もの事業ドメインから次のように分類し、比較していきます。

・アマゾン×アリババ(Eコマースからスタートした2社)
・アップル×ファーウェイ(「メーカー」[ものづくり」からスタートした2社)
・フェイスブック×テンセント(SNSからスタートした2社)
・グーグル×バイドゥ(検索サービスからスタートした2社)

分類し、比較するということが、本書の大きな特徴の1つです。分析の本質である「比較すること」によって、今もっともベンチマークすべき米中メガテック企業8社をより深く包括的に理解することができます。8社間比較、4社間比較、3社間比較、2社間比較などを縦横無尽に行うことで初めて見えてくるものが少なくありません。
GAFAとBATHについては、「存在はもちろん知っているけれど、何が本業なのか、何がすごいのか、正直、キャッチアップできていない」という方もいるでしょう。
そのため、本書では、分析に際して、まずは知っているようで実は知らない。各企業の基本的な事業構造などを平易に解説、次に「5ファクターメソッド」という筆者独自のアプローチでそれぞれの戦略を読み解いていきます。このメソッドは、中国の古典的な戦略論「孫子の兵法」の中でも特に重要な要素である「五事」(「道」「天」「地」「将」「法」)を筆者なりにアレンジし、現代マネジメントの視点から再構築したものです。これは序章で詳しく説明します。その後、第1章~第4章で最新動向を交えて各企業・産業の今後を考察していきます。

第5章においては、「ROAマップ」を用いた8社の総合的な分析と共に米中新冷戦の分析も行います。通常のビジネスに従事する者にとって、米中新冷戦がプラスになることはないといっていいでしょう。米中新冷戦に勝者はいないはずなのです。それでも、戦いの構図を丁寧に分析していくと、国と国がつながり、産業と産業がつながり、企業と企業がつながり、人と人がつながってきたからこそ分断化の流れが起きていることがわかります。こうした問題意識から、8社の分析と政治・経済・社会・技術の4分野を同時に戦略分析(PEST分析)していきます。そして、終章で日本への示唆 に言及していきます。ここでキーワードとなるのは目的設定のリセットと戦略の要諦です。

◎8社の分析で何が見えてくるのか

米中メガテック企業8社を分析する意義はどこにあるのか。私は、それを以下の5つと考えています。
①「プラットフォーマーの覇権争い」が読める
8社のほとんどは「プラットフォーマー」とも呼ばれ、それぞれの領域で独自の経済圏を拡大しています。プラットフォームとはもともとは台、土台、基盤などの意味。プラットフォーマーとは、「ビジネスや情報配信を行うに際して基盤となるような製品・サービス・システムを、第三者に提供する事業者」です。いわば今後のビジネスの最重要となる部分を担う事業者であり、日本のみならずグローバルなレベルでの産業変革を知るためにこの8社の分析が重要なのは論をまたないでしょう。
②「先駆者利益を創造する存在となった中国勢の動向」が読める
模倣からスタートした中国メガテック企業が、今や独自でイノベーションを起こし、新たな価値を創造しています。後発者利益を獲得し、先駆者利益を創造するようになってきた中国勢の一連の流れには大いに注目する必要があります。
③「同じ事業ドメインから異なる進化を遂げる理由」が読める
前述したように本書では、「同じ事業ドメインからスタート」という括りで米中の企業を2社ずつ分類しています。たとえば、フェイスブックと同様にSNSからスタートしたものの、多くの産業に進出し大きな存在感を示しているテンセントなど、同じ種から、異なる果実が実ることがあるのはなぜか。事業展開の方向性やスピードを左右する根底にあるものを考察する意義は大きいと思います。
④「産業・社会・テクノロジー・あるべき企業の未来」が読める
8社の分析から主要産業の動向や近未来の姿が読み解けます。電機、電子、通信、電力、エネルギー、自動車、エンターテインメント……今や、主要産業の動向とGAFA、BATHの動向とは表裏一体であり、主要産業の近未来予測を行う上でも、本書の分析は不可欠なプロセスなのです。
さらに、社会全体の動向や近未来の姿も読み解くことができます。それぞれの分野において、自らの事業を通じて社会的問題と対時し、新たな価値を生み出してきた8社。「自由か統制か」「所有かシェアか」「開放か閉鎖か」など、社会の方向性や価値観を占う意味でも、この分析は重要です。
もちろん、テクノロジーの動向や近未来の姿を読み解く意義もあります。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、5G(第5世代通信)、VR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)/AR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)などです。特にAIという最重要テクノロジーにおいては、すでに普及段階に入ってきた音声AIアシスタ ントやAIの応用としての自動運転など、8社の動向が最先端テクノロジーの動向とほぼイコールといえるでしょう。
もう1つ重要なことは、この8社の分析から、企業の動向や近未来の姿が読み解けることです。大胆なビジョンを掲げ、高速でPDCAを回していくこと、プラットフォーマーが独占しつつあるビッグデータとプライバシー問題への意識の高まりなど、それぞれの企業の戦略や抱えている課題は、業種・規模を問わず、すべての企業に大きな示唆を提供してくれると確信しています。
⑤「日本の未来」が読める
最後に、GAFA、BATHの分析を踏まえて、日本や日本企業の活路を見出すという意義があります。かつて日本という国はテクノロジーの代名詞ともなっていました。「電機・電子立国」が崩れたといわれる中で、自動 車産業は日本の最後の砦となっています。そんな自動車産業も、異業種間戦争に突入し、全産業の秩序を激変させる戦いが起こっているのです。そこで、日本や日本企業の活路を見出すためには8社の分析は不可欠です。たとえば、米国テクノロジー企業が従事している産業での国際的なルールのできあがり方を観察すると、「はじめにルールありき」ではないことがわかります。
米国のプラットフォーム企業は、まずは自らが事業を通じて対峙したい社会的な問題を定義し、その問題に対する解決 策を自社の商品・サービスを通じて提示することを徹底的に考えます。そして自らの新たな事業や商品が提供されること でどのような問題が解決され、どのような価値が新たに生まれるかを顧客や社会に対して提示していきます。もし既存の 法律やルールの中で実現困難であれば、自主的に必要なルールを考え、業界内でルール化し、政府に働きかけ、さらに他の国にも働きかけていく――これが、たとえば現在の自動運転を巡る米国でのルールづくりの流れなのです。日本企業はこのようなやり方を米中メガテック企業から学ぶ必要があるでしょう。以上の5つの意義を念頭に、

・米中メガテック企業8社をベンチマークする(分析し、参考にする)
・8社と直接競合する企業は対策を考える
・8社の分析を踏まえて自社の戦略を研ぎ澄ませる

という3つの視点を持って、本書を読み進めていただければと思います。

◎戦略やリーダーシップの「教科書」にも

私は、2017年に「アマゾンが描く2022年の世界』、2018年に『2022年の次世代自動車産業』(ともにPHPビジネス新書)を上梓しました。前者では、国家や社会に大きな影響を与えているアマゾンという企業の戦略を筆者の専門である「ストラテジー&マーケティング」と「リーダーシップ&ミッションマネジメント」という視点から分析、さらには同社を通じて近未来の予測を行いました。後者では、次世代自動車産業における戦いの構図を分析し、主要各社の戦略を読み解き、関連するテクノロジーを解説、日本の活路について考察しました。2作ともにそれぞれのテーマに興味をお持ちの方はもとより、登場する企業と競合する企業の方々、さらにまったく異業種の企業経営者やビジネスパーソンにも広く読まれました。

本書も、幅広い業種における幅広い職種の方々や学生の方などに向けて、GAFA、BATHを題材とする「ストラテジー&マーケティング」と「リーダーシップ&ミッションマネジメント」の教材としてもお読みいただけるものとなるよう腐心しました。米中メガテック企業8社の分析は、企業戦略やリーダーシップ、ミッションマネジメントの「教科書」であり、本書もそれを重要な目的の1つとしています。
冒頭で述べたように、今やGAFAとBATHなしに未来は語れません。8社を同時に見ていくことで、いろいろな問題意識を持ち、さらには自分自身の使命感を新たにすることができるのではないかと思います。
本書が、読者の皆さんの学びの気持ちや日々のビジネスに貢献するだけでなく、日本や日本企業の活路に少しでも貢献するものになることを切望しています。

2019年3月
田中道昭

田中 道昭 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/10)、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章
「5ファクターメソッド」でメガテックを分析する
全体像の把握に最適なアプローチ
“知っているようで知らない”メガテックの全体像
既存のフレームワークだけではメガテックは分析できない
「孫子の兵法」を戦略分析に応用する「5ファクターメソッド」

第1章 アマゾン メアリババ
アマゾン経済圏とアリババ経済圏の戦い
本章の狙い

amazon
01 アマゾンの事業の実態は?
ECから「エブリシングカンパニー」へ
近年の注目サービスから見えてくるもの
「君の仕事は、いままでしてきた事業をぶちのめすことだ」
プラットフォーム構築で独占状態をつくり出す
02 アマゾンの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
03 アマゾンの進化を読み解く3つのカギ
①顧客第一主義
②高度化するニーズへの対応
③大胆なビジョン×高速PDCA
04 「マーケティング4・0」とアマゾン
オンラインとオフラインの完全統合

Alibaba
05 アリババの事業の実態は?
中国の新たな社会インフラ企業
06 アリババの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
07 “神様”ジャック・マーの退任の意味
中国政府との蜜月の終わり?
08 アリババが先行するOMOを深く読み解く
アマゾン以上の先進性

第2章 アップル×ファーウェイ
プラットフォーマーとハードウエアメーカー。「ショック」をどう越えるか
本章の狙い

Apple
01 アップルの事業の実態は?
ものづくり+プラットフォームの構築者
02 アップルの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
03 「ブランド論」としてのアップル
プレミアムブランドとしてのずば抜けた価値
04 プライバシー重視への強いこだわり
「アップルはAIにおいて出遅れている」?
05 メディカルビジネスのプラットフォーマーに
アップルウォッチはもはや医療機器

HUAWEI
06 ファーウェイの事業の実態は?
「ファーウェイ・ショック」だけでは見えないもの
07 ファーウェイの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
08 他社にはない3つの特徴
09 メガテックの争いの中で今後の立ち位置は?
プラットフォームビジネスのレイヤー構造から分析
10 チャイナリスクと「ファーウェイ・ショック」後の世界
熱心な情報開示の意図「ファーウェイ・ショック」の根底にあるもの

第3章 フェイスブック×テンセント
目的としてのSNSか、手段としてのSNSか
本章の狙い

Facebook
01 フェイスブックの事業の実態は?
把握しづらい企業の全体像
マーケティング・プラットフォームとしての圧倒的存在を目指す
02 フェイスブックの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
03 「ハッカーウエー」を標榜する理由
経営者の大胆さを具現
04 メディアとしてのフェイスブック
米大統領選挙の結果を左右した?
05 相次ぐ個人情報漏洩問題。打開策は?
「つながる時代」から「データの時代」への対応

Tencent
06 テンセントの事業の実態は?
テクノロジーの総合百貨店
07 テンセントの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
08 テンセントのAI戦略
「AI×医療」「AI×自動運転」に注力
09 テンセントをプラットフォーマーにする「ミニプログラム」
スマホアプリの概念を変える存在に?
使用頻度と顧客接点が勝者の条件
10 「新小売」におけるアリババとテンセントの戦い
「ニューリテール」か「スマート・リテール」か

第4章 グーグル メバイドゥ
検索サービスから事業を拡大。狙うはAIの社会実装
本章の狙い

Google
01 グーグルの事業の実態は?
「検索の会社」からさまざまに事業を拡大
02 グーグルの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
03 存在価値を定義した「Googleが掲げる10の事実」―強さの源泉①
「どのような存在を目指すのか」の行動指針
04 グーグルの開発力の秘密「OKR」―強さの源泉②
「さまざまな組織が目標に向かって前進するのに役立つシンプルなプロセス」
05 グーグルの価値観の象徴「マインドフルネス」―強さの源泉③
「サーチ・インサイド・ユアセルフ」

Baidu
06 バイドゥの事業の実態は?
中国の検索市場で一人勝ちではあるが
07 バイドゥの5ファクターは?
「道」「天」「地」「将」「法」で戦略分析
08 「デュアーOS」によるエコシステム形成、そしてスマートシティヘ
「人々の生活にAIを」がコンセプト
大きなエコシステムを形成していく
スマートシティ建設について各地方政府と協力
09 世界でもっとも自動運転車の社会実装を進めている会社
中国政府から「AI×自動運転」事業を国策として受託
自動運転バスを2018年から社会実装化

第5章 GAFA ×BATHの総合分析と米中の新冷戦
01「5ファクターメソッド」による分析のまとめ
「ミッションが事業を定義し、イノベーションを起こす」
02 「ROAマップ」による分析
業種や企業の特徴を端的に表す手法
ROAマップ全体から8社を総合分析する
03 8社への強い逆風は今後どう影響するか
対応次第では存亡の危機も?
04 世界が米中で分断されるとどうなるか―新冷戦の本質
今後を占うもっとも重要な要素
米中で二極化され分断した世界はどのようになっていくか
存亡の危機のカギを握るもの

終章 GAFA ×BATH時代、日本への示唆
日本に求められる目的設定のリセット
戦略の要諦

装幀○小口翔平+岩永香穂 (tobufune)
本文設計・DTP○ホリウチミホ (nixinc)
編集協力○千葉はるか(株式会社パンクロ)
取材協力○村上利弘
校正○内田翔

田中 道昭 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/10)、出典:出版社HP

序章 「5ファクターメソッド」で メガテックを分析する

全体像の把握に最適なアプローチ

“知っているようで知らない”メガテックの全体像

本書の目的は、メガテック企業8社の戦略について知ること、そして8社を分類し適切な軸を置いて比較することにより、企業戦略やリーダーシップ、ミッションマネジメントについて学ぶことにあります。しかし、メガテック企業について全体像を知り、適切な軸で比較するというのは、そう簡単ではありません。当然のことながらどの企業も事業領域は幅 広く、すべてを仔細に理解するのは困難ですし、新たにリリースされた製品やサービスばかり追っていても「実際のところは何で稼いでいる企業なのか」「どんなところに強みがあるのか」「今後の注力事業は何なのか」といったことは見えてきません。「どの会社も名前は知っている」「何をやっている会社なのか、なんとなくイメージは持っている」という人でも、「全体像を説明してほしい」といわれれば言葉に詰まるかもしれません。

また、メガテック各社の事業を見ていくと、その一部では非常に似た製品やサービスを展開していることがわかります。たとえば音声AIアシスタントではアマゾンの「アマゾン・アレクサ」、グーグルの「グーグルアシスタント」、アップルの「シリ」、バイドゥの「デュアーOS」、アリババの「アリOS」というように各社が類似のコンセプトでサー ビスを展開してしのぎを削っています。これはクラウドサービスや決済サービスについても同様です。こうした類似サービスを持つ各社の位置づけや現在の状況はなかなか把握しきれるものではないでしょう。一方、近年はメガテック企業の間で「ビッグデータ×AI」により自社サービスの先鋭化をはかる動きが顕著ですが、具体的にどのように「ビッグデータ×AI」の活用を進めているのか、その方向性には違いがあります。各社の取り組みについておぼろげに知っているという人でも、「なぜ違いが生じているのか」「各社の方向性をどう読み解くべきなのか」と問われれば、すぐには答えられないのではないでしょうか。

既存のフレームワークだけではメガテックは分析できない

通常、企業の戦略を分析する際にはさまざまなフレームワークが用いられます。皆さんも、ビジネスの現場でフレームワークを活用することが多いでしょう。たとえば「SWOT分析」では、「外部環境」「内部環境」という軸を置き、「強み」「弱み」「機会」「脅威」について考察しますし、企業を取り巻くマクロ環境を見たい場合は「政治」「経済」「社会」「技術」の4つについて洗い出す「PEST分析」を行ったりします。マーケティングについては「カスタマー(顧客)」「コンペティター(競合)」「カンパニー(自社)」を調査する「3C分析」がよく知られています。しかし国家にも匹敵するような規模のメガテックについて理解しようとする場合、既存のフレームワークをいくつか活用する程度ではとても全体像を押さえることはできません。そこで私は、国家レベルの企業を網羅的に分析することを目的としたメソッドを考案しました。それが、先に少し触れた「5ファクターメソッド」です。

「孫子の兵法」を戦略分析に応用する「5ファクターメソッド」

5ファクターメソッドは、中国の古典的な戦略論である「孫子の兵法」に基づいたものです。「そんなに古いものがメガテックの分析に役立つのか」と疑問に思われるかもしれませんが、「孫子の兵法」は今なお軍事戦略や企業戦略に活用されており、ビジネスの世界ではソフトバンクグループ会長の孫正義氏も影響を受けているといわれています。
孫子は「一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり」と述べ、戦いをデザインするにあたってこの5項目が戦力の優劣を判定するカギであるとしています。この孫子の考え方は、現代の企業経営戦略にそのまま応用できるものです。そこで5ファクターメソッドではこの「五事」、つまり「道」「天」「地」「将」「法」を現代経営学の視点でアレンジしています。孫子のいう「道」「天」「地」「将」「法」を企業経営に置き換えるかたちで、1つずつ見ていくことにしましょう。

「道」とは「企業としてどのようにあるべきか」というグランドデザインのことです。それを具体的に言語化した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「戦略」といったものを包括しています。このうち特に重要なのは企業の「ミッション(使命)」です。企業が何を使命としているのか、企業として自社の存在意義がどこにあると考えているのかを知ることは、企業のこれまでの歩みを分析したり今後の方向性を予測したりする上で欠かせないポイントといえます。また、ミッションが明確であるか、ミッションが製品やサービスに練り込まれているか、企業トップから従業員まで全員がミッションを果たすことを常に念頭に置いているかといった点をチェックすると、その企業の強みや弱みも見えてきます。
そして優れた組織は、戦略を支える「天」と「地」を備えています。「天」とは、外部環境を踏まえた「タイミング戦略」のことです。中長期的な世の中の変化を競合に先んじて予測し、計画的に大きな目標を実現していくことが求められます。企業分析においては、「どれだけ時流に即してスピードをもって変化できるか」に注目したいところです。

なお、一般的なフレームワークの中では、SWOT分析やPEST分析が外部環境の分析ツールとして活用可能です。「地」とは、「地の利」を指しています。孫子は、戦地が自陣から遠いのか近いのか、広いのか狭いのか、山地なのか平 地なのか、自軍の強みを活かせるのか活かせないのか、そういった環境に応じて戦い方を変えるべきだと述べています。
つまり有利な環境を活かし、不利な環境をカバーする戦略です。企業分析においては、業界構造や競争優位性、立地戦略などの「地の利」を見極め、それに応じてどう戦っているのか、どのような事業領域でビジネスを展開しているのかに注目します。一般的なフレームワークの中では、3C分析のほか、経営学者マイケル・ポーターが提唱する業界構造分析の手法で「参入障壁、買い手の力、供給者の力、代替品の力、競合」について把握する「5フォース分析」などが活用可能です。
「将」と「法」は、戦略を実行に移す際の両輪です。経営学でいえば、それぞれが「リーダーシップ」と「マネジメント」の関係にあたります。どちらも人や組織を動かす手段である点は共通していますが、リーダーシップは「人対人」のコミュニケーションでモチベーションを上げて人や組織を動かしていくものであり、マネジメントは仕組みで人や組織を 動かすものという違いがあります。リーダーシップについては企業トップがどのようなリーダーシップを発揮しているか、組織として期待されるリーダーシップがどのようなものかという観点で見ていきます。マネジメントについては、事業構造、収益構造、ビジネスモデルのほか、企業が構築しているプラットフォームやエコシステムなどを確認します。

■序―1
分析手法「5ファクターメソッド」

このように「道」「天」「地」「将」「法」という5つの要素で分析していくと、企業をさまざまな角度からマクロ・ミクロの両面でチェックすることができ、メガテックのように規模が大きく事業領域も広い企業であっても全体像と部分を把握しやすくなります。
なお、5ファクターメソッドを使ってメガテックを仔細に分析しレポートをまとめれば、1社だけでも書籍1冊分を超えるボリュームになります。実際に、アマゾンを対象に同メソッドを使って分析を行ったのが既刊「アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)でした。
一方、本書では米中のメガテック8社をまとめて取り上げ、各社の大枠をつかんで重要なポイントを理解した上で、最新情報を交えて比較・分析することを主眼とするため、「道」についてはもっとも重要な「ミッション」を、「天」については「道(ミッション)を実現するためのタイミング戦略」を、「地」については各社の「事業領域」を、「将」につ いては「各社トップのリーダーシップ」を、「法」については「事業構造、収益構造」を主に取り上げて解説します。5ファクターメソッドによる仔細な分析結果については図序―1のフォーマットで1社ずつ図示しますので、参考にしていただければと思います。では、いよいよ米中メガテック8社の分析を進めていきましょう。

田中 道昭 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/4/10)、出典:出版社HP

邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った

「巨大ITへの規制強化」の流れがわかる

ビッグテックが市場を独占するに至った過程が詳しく解説され、その上で今後とるべき方針が記された一冊です。便利で、我々の生活の一部となっているITの負の側面を知り、対策していく上でおすすめです。

ラナ・フォルーハー (著), 長谷川 圭 (翻訳)
出版社: 日経BP (2020/7/16)、出典:出版社HP

アレックスとダリアへ
私は命をもたない体に生命を吹き込むためだけに、およそ二年ものあいだ懸命な努力を続けてき た。そのためなら、睡眠も健康も犠牲にした。並々ならぬ情熱でそれを望んでいた。でも、いざ完 成してみると、美しかった夢は砕け散り、息が詰まるような恐怖と嫌悪が私の心を満たしたのだった。
メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」

まえがき

本というものは、大きくて抽象的な思考から生まれることもあれば、現実的な生活に根ざして書かれる場合もある。私 の前回の著書『Makers and Takers (メーカーとテイカー)」は金融業界に関する高度に政策的な討論から生まれたのだ った。一方、本書はテクノロジー業界が過去二〇年でもたらした経済や政治への被害、あるいは人々の意識や精神への影 響について調べるのが目的で、いわば大きなレンズをもっていると言える。しかし、執筆の動機はとても個人的な出来事 だった。
始まりは二〇一七年の四月が終わろうとしていたころ。ある日の午後、帰宅した私はクレジットカードの明細書を開 き、大きなショックを受ける。身に覚えのない九〇〇ドルもの額が、アップル(Apple)のアップストアから請求さ れていたのだ。「ハッキングされた」が最初の考えだった。だが少し調べてみると、当時一〇歳の息子が原因だったこと がわかった。大好きなオンライン・サッカーゲームの仮想選手を、息子が購入していたのだ。
当然ながら、私は息子からデバイスを取り上げて、すぐにパスワードを変更した。しかしちょうどそのころ、この出来 事がきっかけとなって、より大きな問題が私の時間と関心を奪いはじめる。私は新しい仕事として、世界最大のビジネス 紙として知られる『フィナンシャル・タイムズ」のグローバル・ビジネス・コラムニストとしての活動をはじめたばかり だった。任務は、その日起こった最大の出来事について、経済の観点から週に一回コラムを書くことだったのだが、ほと んどの場合で「ビッグテック」と呼ばれる現代を代表する巨大企業―グーグル(Google)、フェイスブック(F acebook)、アマゾン(Amazon)、そしてアップル―が関係していた。
過去数十年にわたって、ごく一部の企業が市場を独占するという現象が数多くの業界で観察されてきた。それが収入の 不均衡や経済成長の停滞、あるいは政治の世界におけるポピュリズムの台頭など、さまざまな問題と関連していることも わかっていた。わかっていたはずなのに、それでも私は『フィナンシャル・タイムズ」紙のコラムニストとして経済関連 の情報を集めはじめたとき、驚いてしまった。企業総資産のじつに八〇パーセントを、全体のわずか一〇パーセントの企業が占有していたのである[注1]。しかも、この一〇パーセントに属する会社はゼネラル・エレクトリックやトヨタ、あ るいはエクソンモービルなどのような、物理的な資産や商品を有している企業ですらなかった。そうではなくて、現代の 経済においてかつての“石油”に取って代わる存在、すなわち情報とネットワークを活用する術を見つけた企業だったの だ。

それら新星の多くはテクノロジー企業だった。現代社会において、テクノロジー業界ほど一気に独占的地位に駆け上っ た例はほかにない。何しろ、現在全世界で行われているウェブ検索は、たった一つの検索エンジン上で行われているので ある。グーグルだ[注2]。インターネットを利用する三〇歳未満の成人の九五パーセントがフェイスブックまたは二〇一 二年にフェイスブックに買収されたインスタグラム(Instagram)、あるいはその両方にアカウントをもってい る[注3]。ミレニアル世代の人々がネットでビデオを視聴する場合、ほとんどの時間でユーチューブ(YouTube) を利用する。ほかのストリーミングサービスを使う時間をすべて足し合わせても、ユーチューブを眺めている時間の半分 にも満たない[注4]。全世界の新規広告費のおよそ九〇パーセントがグーグルとフェイスブックに集まり、携帯電話の九 九パーセントにグーグルまたはアップルのオペレーティングシステム (OS)が搭載されている[注5]。デスクトップの OSでは、アップルとマイクロソフト (Microsoft)の二社が世界で九五パーセントのシェアを占めている[注 6]。全米におけるEコマース(電子商取引)の売上の半分がアマゾンによるものだ [注7]。以上のような項目は、挙げよ うと思えばまだまだ挙げることができる。ビッグテックの場合、やることなすことのすべてにおいて、大成功するか大失 敗に終わるかの二通りしかないようだ。そしていったん成功すれば、どんどん大きくなっていく確率が高い。

デジタル界の巨人たちが手に入れた富は計り知れない。いわゆるFAANG―フェイスブック、アップル、アマゾ ン、ネットフリックス(Netflix)、グーグル―の時価総額だけで、フランス一国の経済を超えるのである。ユ ーザー数で言うと、フェイスブックは世界最大の人口を誇る中国よりも大きい[注8]。しかし、すでに大きな企業がさら に大きくなっていく陰で、残りの経済は苦しんでいる。ビッグテックが成長を遂げた過去二〇年で、公開会社の半数以上 が消滅した[注9]。経済の一極集中が進むにともない、ビジネスのダイナミズムや起業家精神が低下しつつある [注10 ]。 このような問題点について『フィナンシャル・タイムズ』紙に記事を書いていくうちに、私は数多くの人―労働者、消費者、親、投資家―から耳にした話に不安を覚えるようになっていった。彼らは、ビッグテックが彼らの(そして愛 する人々の)生活を、いやそれどころか命までも危険にさらしていると感じているのである。テクノロジー中毒になって しまった子供を何とか救おうと奮闘する母親や父親がいる。アマゾンに立ち向かおうとしたものの、倒産してしまった会 社に務めていた社員もいる。アイデアと知的財産をライバルに盗まれた起業家には、相手を裁判に訴える費用もない。不 動産保険の契約を結んでもらえなかった住宅所有者もいた。保険会社が彼のことをリスクが高すぎるとみなしたのだ。も ちろん純粋に、「テクノロジー業界は富を公正に分け合っていない」と考える者もいる。

それにしても、その富の大きさたるやすさまじい。現在、地球上で最も裕福で強力な会社がビッグテック企業なのだ。 扱う製品やプラットフォームはどれも、それ自体が魅力的なものであることに加え、利用者が増えれば増えるほど、さら なる利用者の増加を促し、その結果としてより多くのデータを集めることができる―いわゆる「ネットワーク効果」が 働く―ため、ビッグテックは想像を絶する規模に巨大化した。そしてその巨大さを利用して競合を押しつぶし、あるい は吸収し、ユーザーの個人情報を集め、さらには―グーグルとフェイスブックとアマゾンの場合は―集めた情報を利 用して高度に対象を絞った広告(ターゲティング広告)を行うのである。また、彼らだけでなくほかのビッグテック企業 も途方もない利益のかなりの部分を、税的に有利な外国へ持ち出している。クレディ・スイス社が二〇一九年に行った調 査によると、外国へ資産を持ち出している企業のトップ10にはアップル、マイクロソフト、オラクル(Oracle)、 グーグルの親会社のアルファベット(Alphabet)、クアルコム(Qualcomm)が含まれ、六〇〇〇億ドルを 海外の口座で管理している[注11]。一般の人々が嫌でも受け入れなければならない法や規制を、最大級の企業は合法的に 逃れているのだ。それを可能にしている税法の抜け穴を維持するために、シリコンバレーは「経済的な利害が政治を支配 する文明は衰退する」という経済学者マンサー・オルソンの言葉を引用しながら、熱心にロビー活動を続けている[注12]。

確かに、公務員の多くも私と同じような懸念を口にする。結局のところ、シリコンバレーは政府が資金を提供して―要するに、国民の税金を使って―開発が進められた新技術を中心にできあがったと言えるのだから。GPSマッピン グ、タッチスクリーン、インターネットなど、あらゆるものが、最初は国防総省の資金で研究開発されたのである。それ らがのちにシリコンバレーによって商業化された。それなのに、フィンランドやイスラエルのような繁栄している自由市場を含むほかの多くの国々とは違って、アメリカの場合は税金を使って開発された技術がもたらす利益が納税者にまった く還元されていない[注 13]。その代わりに、企業は資金だけでなく労働者も外国に移管、つまり*オフショアリング”し ている。しかもそれと同時に、二一世紀の労働力をデジタルに精通させろ、そのための教育改革にもっと予算を投じろ、 と政府に働きかけているのだ。これは経済だけでなく、政治にも大いに影響している。というのも、ビッグテックの態度 が、資本主義やリベラルな民主主義に対するポピュリストたちの不満の火に油を注いでいるのである。

二〇〇七年以降、金融業界に注目してきた人は、当時と今の状況がとてもよく似ていることに気づくだろう。みるみる うちに、排除するには大きすぎ、管理するには複雑すぎる、新たな業界が発生した。その業界は歴史上のどの業種よりも 富を集め、高い時価総額を誇る一方で、過去のどの巨大企業よりも雇用機会を減らしつづけた。私たちの経済と労働を根 本からつくりかえたと言える。何しろ、人々の個人データを集めてそれを売り物にすることで、いわば人間を商品にする ことに成功したのだから。それなのに、事実上まったく規制を受けずにきたのである。そして、二〇〇八年ごろの金融業 界と同じで、この業界も、今の状態が続くように、政治と経済の分野に大いに口出ししているのだ。
二〇一六年の大統領選で予想外の結果が出たことをきっかけに、これらの企業に批判が集まりだした。そこで私はビッ グテックについて詳しく調べてみることした。すると、いろいろなことがわかってきた。今では誰もが知っているよう に、フェイスブック、グーグル、ツイッター(Twitter)をはじめとする世界最大級のテクノロジー・プラットフ ォーム企業が、ドナルド・J・トランプを大統領選で勝たせようとするロシアの工作員によって悪用されていたのだ。つ まり、これらの企業が提供するプラットフォームは、もはや格安航空券を探したり、旅行の写真を投稿したり、離ればな れになった家族や友人と連絡したりする場所ではなくなっていた、ということだ。代わりに、国際政治を意のままに操 り、国家の運命を揺さぶるための手段になっていた―しかも、そのように利用されることを通じて、経営陣や株主は財 をなしていたのである。純真だった時代は過ぎ去ったのだ。

この点は大切なので忘れないでおこう。なぜならテクノロジー業界は、これまでずっと金銭的な利益だけを追求してき たというわけではないからだ。実際のところ、シリコンバレーは一九六〇年代の反体制運動の影響を大いに受けていて、
事業を立ち上げた人の多くは、テクノロジーが世界をよりよく、より安全に、より豊かにする未来を夢みていたのであ る。デジタルの世界に理想郷を求めた人々は、自らのビジョンを人々に伝えながら、まるで福音のように、こう繰り返した。情報は無料であるべきで、インターネットは民主化を推し進める力であり、私たちのすべてにとって公平な場所だ、 と。かつて、インターネットの教祖たちが『フォーブス』誌の世界で最も裕福な人物のリストに載っていない時代があっ た。代わりに、彼らは新興のブロゴスフィア(ブログのネットワーク)上でリナックスの、ウィキペディアの、あるいはほ かのオープンソースプラットフォームの創造主として紹介されていた。欲望や利益よりも信頼や透明性が重視されるコミ ュニティの創始者として。
だからこそ、問わずにはいられない。どうして今のように状況になってしまったのだろうか、と。かつては野心的で、 革新的で、楽観的だった業界が、わずか数十年のあいだに、欲深くて、閉鎖的で、尊大になってしまったのはなぜだろう か? 私たちはどうやって「情報は無料であるべき」だった世界を、データが金儲けの手段になった世界に変えてしまっ たのだろう? 情報を民主化することを目指していた運動が、民主主義の構造そのものを壊しているのはなぜ? そし て、地下室でマザーボードをいじくり回していたリーダーたちは、どんな理由があって政治経済の世界を支配する気にな ったのだろうか?
その答えは、ある時期を境に、最大級のテクノロジー企業と、それらが奉仕する相手である顧客や一般人の利害が一致 しなくなったことにあると、私は調査を始めてまもなく確信するようになった。過去二〇年以上、検索に始まり、ソーシ ャルメディア、あるいは優れた演算能力をもつポータブル・デバイスなど、シリコンバレーは私たちにすばらしいモノを もたらしてくれた。現在の私たちは、一世代前なら一つの企業全体が有していたよりも優れたコンピュータ技術をポケッ トに入れて持ち運んでいる。ところが、便利にはなったものの、まるで中毒のようにテクノロジーにのめり込むあまり に、時間が奪われて生産性が下がってしまった。さらには誤った情報やヘイトスピーチの拡散、弱者や不利な立場にある 人を食い物にしようとするアルゴリズム、個人のプライバシーの完全な喪失など、多大な代償がともなっていた。また、 社会が数多くの小さなグループに分断されるため、富が国家に集中するようにもなった。

これらの問題については、個別で論じられることは多いものの、実際にはすべてが複雑に絡み合っていて、その根底に は一つの避けられない問題が潜んでいる。シリコンバレーの人々の多くは認めようとしないだろうが、「人々をできるだ け長い時間オンラインに釘付けにして、彼らの関心を利益に変える」ことがビジネスモデルになっている、という問題
だ。コロンビア大学のティム・ウーはビッグテック企業を「関心の商人」 と呼んだ。関心の商人は行動信念、大量の個人データ、そしてネットワーク効果を利用して、独占的な力を手に入れようとする。独占的な地位を得ることができた 企業は政治的な力も手に入れ、それがまた、独占を維持する力に変わる。
過去、フェイスブック、グーグル、アマゾンの三社が規制上何をやっても自由でおとがめなし 権を手に入れた。結 局のところ、この論理の延長線上で、グーグルは検索を”無料”で提供するし、フェイスブックは“無料”でメンバーに なれる。アマゾンは価格を切り下げ、製品を無料に近い値段でたたき売る。これは、消費者にとってありがたい、こと なのだろうか? 問題は、ここで言う「フリー」は実際にはフリーでも何でもないことだ。確かに、デジタルサービスの ほとんどで私たちは現金を支払わないが、その代わりにデータや関心を大いに差し出している。 ”人間”が金儲けの手段 なのだ。私たちは、自分のことを消費者だと考えている。だが実際には、私たちこそが製品なのである。
もちろん、そうした問題をシリコンバレーの大物たちの多くは隠そうとする。あまりにも多くの権力者たちが身勝手な 考えを捨てようとせず、人々の正当な懸念に対して誠心誠意かつ透明に対応することを拒みつづけている。人々は、デー タは安全に守られているのか、人工知能と自動化によって多くの仕事がなくなるのではないか、プライバシーが失われ、 位置情報が数多くのアプリを通じて一秒一秒追跡されるのではないか、選挙結果が操作されているのではないか、あるい は、私たちの生活のあらゆる側面に浸透している輝かしいデバイスが脳にどんな影響を与えているのだろうか 、など数多 くの不安を覚えているのである。私がハイテク関連の人々にこれらの不安について質問すると、自己弁護から知らんふり まで、さまざまな反応が返ってくるが、なかでも最もひどいのは、偉そうににやけながら、あるいは憤慨した表情で「あ なたはテクノロジーのインサイダーではないから、何もわかっていない」と反論する態度だろう。
しかし、わかっていないのはテクノロジー業界の大御所たちのほうである。『ワイアード』誌の創刊を手がけたジョ ン・バッテルはかつて私にこう言ったことがある。「テクノロジー界は自分を高く買っていない。自分たちは人道主義者 でも哲学者でもない。エンジニアだ。グーグルやフェイスブックにとって、人々はアルゴリズムなのだ」 [注14] この考え方は、意外でも何でもない。年齢的に、私はテクノロジー業界の好況も不況も経験した。一九九九年から二○〇〇までは、ロンドンにあるハイテク関連のインキュベーター企業(訳注 : ベンチャー企業に経営のノウハウなどを提供する 会社)に勤めてもいた。そのときの経験については、本書内で詳しく述べるつもりだ。今と同じで、そのころも業界は閉鎖的だった。彼らの見せる不遜な態度は、ドットコムバブルの崩壊以来ずっと高まりつづけ、今や最高レベルに達してい る。アマゾンやアップルが基本的にアメリカの全家庭に浸透しているという事実を考えると、今の状況はかつてないほど 有害だと言える。ウォール街の銀行と同じで、ビッグテック企業も莫大な資金と権力を得たことに加え、膨大な量のデー タも手中に収めているのだ。しかも、ゴールドマン・サックスの最高経営責任者 (訳注 : 二〇一八年一二月に退任)のロイ ド・ブランクファインとは違って、ビッグテックは冗談抜きに本気で、自分たちは神の仕事を代行していると考えてい る。テック・カンファレンスに参加すると誰もが気づくように、シリコンバレーの面々の多くはいまだに、彼らは世界を もっと自由に、もっとオープンにするために働いているのだと誇示する。実際はその逆である証拠がたくさん見つかって いるにもかかわらず、だ。

ヒッピー的な起業家精神が旺盛だったシリコンバレーは、すっかり様変わりしてしまった。ビッグテックの経営者たち をたとえるなら、金融関係者と同じぐらい強欲な資本家でありながら、それに加えて自由主義的な傾向も持ち合わせてい る人々と言えるだろう。彼らはすべてが、政府、政治、市民社会、法律など、本当にすべてが破壊されうるし、破壊され るべきだという世界観をもっている。ビッグテック評論家のジョナサン・タプリンはかつて私にこう説明したことがあ る。「民衆が―社会そのものが―頻繁に“邪魔者”とみなされる」[注15] それではなぜ、政治家たちはそのような欲望を抑え込むための規制を行わないのだろうか? 金の流れを見てみよう。 昨今、ビッグテックがウォール街や巨大製薬会社を政治的なロビー活動における最大の出資者とみなしているのは理由の ないことではない。二〇〇八年の金融危機以前、世界の主要銀行はワシントンやロンドン、あるいはブリュッセルに代理 人を送り込んでいた。銀行を規制する当事者たちの近くにいて、ロビー活動を円滑に行うためだ。それがここ一〇年で様 変わりして、金融の中心地でシリコンバレーの代表者たちが見られることが日常になった。グーグルにいたっては、あま りに多くの使者をワシントンに送り込んでいるため、彼らの拠点として、ホワイトハウスと同じぐらい大きなオフィスが 必要なほどだ[注16]。
しかし、シリコンバレーがどれほど多くのロビイストやPRチームを送り込んで努力させたところで、人々はテクノロ ジーが社会と経済に与える影響を心配しているし、その心配は減ってもいない[注17]。それどころか、技術が経済と政治 と文化に深く行き渡るにつれて、不安は増すばかりだ。ビッグテックが新しいウォール街になったと言える。そしてそのような存在こそが、経済的にも社会的にもますます分断されつつある世界において、反動的なポピュリストが最も目の敵にする相手なのだ。
ビッグテックがもたらした変化が、現在の経済を圧迫する最大の要因になっている。ハーバード・ビジネス・スクール の名誉教授であるショシャナ・ズボフをはじめとして、数多くの学者が「監視資本主義」の出現を非難している。ズボフ によると監視資本主義は「人の経験を隠れた商業目的のための自由素材として選別、予測、あるいは販売する新たな経済 秩序」であり、デジタル監視技術を通じて「製品とサービスの創出に代わって行動変容という新しいグローバルアーキテ クチャが主役の座を占める寄生経済的ロジック」を意味している[注18]。ズボフは(そして私も)、監視資本主義は現在 の経済と政治にとって大きな脅威であり、社会を支配する強力な道具になっていると確信している[注19]。加えて私は、 ある有力な民主党議員が話したように、シリコンバレーの悪影響の広がりを食い止めることが、「自動化が進み、シリコ ンバレーがほかの経済分野にも投資を行っている現状において、[立法府にとって]今後の五年間で最重要な経済課題に なるだろう」と考えている。
しかし、こうした動きはビジネス紙だけの関心事にとどまらない。実際のところ、現在報道されているニュースのほと んどがビッグテックにまつわる話題だ。ビッグテックよりも頻繁に記事になっているのはドナルド・トランプぐらいだろ う。とは言え、トランプ大統領はそのうちいつか去っていくが、ビッグテックは存在しつづける。技術の根を経済、政 治、文化に深く食い込ませ、私たちの経験を毎日少しずつ変えていきながら。まるで錬金術だ。しかも、まだ始まったば かり。これまでの二〇年の変化は驚くべきものだったが、この歳月は今後何十年もかけて行われるであろうデジタル経済 への改革の第一段階に過ぎない。その影響力はかつての産業革命に引けを取らないだろう。デジタル経済への移行が終わ ったとき、その影響は産業革命よりも広範囲にわたり、自由民主主義の、資本主義の、それどころか人類そのものの性質 さえ変えてしまう力をもっている。

ビッグテックがやっていることは「巨大」の一言に尽きる。確かに、私はこれまで多くの点でデジタル改革に否定的な 立場をとってきたが、この改革には大きな利点もあることを否定するつもりはない。シリコンバレーは歴史上、単独にし て最大の企業資産の創出源として機能してきた。世界をつなぎ、圧政に抵抗する革命の火付け役になり(抑圧の手段とし て使われることもあったが)、発明やイノベーションの新しい方法を生み出してきた。プラットフォーム技術のおかげで、私たちはそれぞれ遠く離れた場所で仕事ができるようになったし、遠くの人々とも関係を維持できるようになった。新し い才能の発展、ビジネスのマーケティング、考え方の共有、独創的な表現の発表、全世界の人々へ向けた製品の販売など も利点に数えられる。ビッグテックのツールを使えば、食品の配達から医療介護まで、さまざまな製品やサービスを必要 なときに呼び出すことができる。要するに、かつてのどの時代よりも便利に苦労なく生活できるようになった。
列挙しただけでなくほかの多くの意味でも、デジタル革命は奇跡的な発展であり、歓迎すべきことだろう。しかし、テ クノロジーの恩恵を本当に幅広く受けるためには、公平な競争の場が欠かせない。それがなければ、次世代のイノベータ ーたちに繁栄するチャンスがなくなってしまう。
しかし、世界はそうなっていない。ビッグテックが労働市場を作り替え、所得のバランスを崩してしまった。さらに は、私たちが気に入るであろう情報ばかりを選別する。言い換えれば、私たちは自分がすでにもっている意見や先入観を 強める情報だけを提示するフィルターバブルに押し入れられてしまった。しかし、そのような問題に対する解決策を、ビッグテックが提案することはない。私たちを賢くするのではなく、視野を狭めている。団結をもたらす代わりに、ばらばらにしてしまった。
電話がピッと鳴るたびに、ビデオデータが自動でダウンロードされるたびに、デジタルネットワークに新規コンタクト がポップアップするたびに、私たちは広大な新世界―情報と偽情報、トレンドとツイート、そして次第に当たり前のよ うになりつつある高速監視技術で成り立つ、ほとんどすべての人間の理解を超える奇怪な世界―のほんの一部だけを目 の当たりにする。ロシアによる選挙戦への介入、悪意に満ちたツイート、個人情報の盗用、ビッグデータ、フェイクニ ュース、オンライン詐欺、デジタル中毒、全自動運転車の事故、ロボットの台頭、顔認証技術の不気味さ、私たちの会話 のすべてを盗み聞きするアレクサ(Alexa)、私たちの仕事と遊びと睡眠を監視するアルゴリズム、私たちをコント ロールする企業や政府。最新技術が社会にもたらす混乱は数限りない―それらのすべてが過去わずか数年のうちに生じ た問題なのである。個別に見ればどれも小さな問題に過ぎないが、それらが集まれば大吹雪になり、私たちの視界を真っ 白に閉ざして感覚を鈍らせてしまう。現代は不安の霧に包まれてしまった。

問題は、技術が大きく変革する時代は大きな混乱もともなうという点にある。だからこそ、社会全体のためにうまく対 処しなければならない。失敗すれば、一六世紀や一七世紀の宗教戦争のような事態につながるだろう。『スクエア・アンド・タワー』を書いた歴史家のニーアル・ファーガソンの意見に従うと、印刷機など大きな新規技術が現れなければ宗教 戦争は起こっていなかったと考えられる。印刷機が古い秩序をかき乱し、結果として啓蒙時代をもたらしたのだ。それと 同じように、インターネットとソーシャルメディアも現代の社会をひっくり返してしまった[注20]。

誰にもテクノロジーの進化を止めることはできないし、止めるべきでもない。しかし、生じてしまった混乱に過去よりもうまく対処できるはずだ。そのためのツールもすでに存在している。今の私たちの課題は、国家よりも大きな力を手に入れたテクノロジー企業をどのような形で規制するか、その境界を見極めることにある。デジタル技術の暗黒面から人々を守りながらも、イノベーションをさらに促し、恩恵を広く分け合う仕組みをつくることができれば、これからの数十年 は世界成長の黄金時代になるだろう。

本書の目的は、私たちを悩ませるビッグテックの問題に光を当て、それを解決する手段を探すことにある。ビッグテックの経営者や政治家だけでなく、イノベーションと技術発展が個人や社会に犠牲よりもはるかに多くの恩恵をもたらす未来を信じているすべての人に関心をもっていただくきっかけになればいいと願っている。そのような未来をつくることが できると信じることは、誰にとっても有意義なはずだ。なぜなら、過去数年にわたって明らかになったように、人々が信じるのをやめたとき、体制は崩壊するのだから。

ラナ・フォルーハー (著), 長谷川 圭 (翻訳)
出版社: 日経BP (2020/7/16)、出典:出版社HP

目次

まえがき

第1章 概説
A SUMMARY OF THE CASE
世界の崩壊――ビッグテックが政治に与える影響
新たな独占 : ビッグテックと経済
人々を中毒に陥れるビッグテックの魔力
これからどこへ向かう?

第2章 王家の谷
THE VALLEY OF THE KINGS
ヒーローの登場
人間のもとに舞い降りた神々

第3章 広告への不満
ADVERTISING AND ITS DISCONTENTS
データ産業複合体
科学のオーラ
クリック一日一〇〇万回

第4章 1999年のパーティ
PARTY IKE IT’S 1999
フェラーリとドットコムパブル
ドットコムの破滅を扱うドットコム
今回は違う?

第5章 広がる暗闇
DARKNESS RISES
ミスター・シュミット、ワシントンへ行く つくる者と使う者
情報は“無料”であるべき
流れが変わった?
カルテルと談合

第6章 ポケットのなかのスロットマシン
A SLOT MACHINE IN YOUR POCKET
“説得”の技術
スマホに潜む悪魔
大覚醒?
人道的技術?

第7章 ネットワーク効果
THE NETWORK EFFECT
生活のためのオペレーティングシステム
エコシステムの力
ドーピングを得たネオリベラリズム
大きなものがさらに大きくなる仕組み
信頼の管理人?

第8章 あらゆるものの、ウーバー化”
THE UBERIZATION OF EVERYTHING
「いつもハッスル」
ギグワーカーの苦悩
アルゴリズムが仕事を破壊する
スーパースターの一人勝ち
労働者の逆襲

第9章 新しい独占企業
THE NEW MONOPOLISTS
「安さ」の幻想
反トラストのパラドックス
データの値段?

第10章 失敗するには速すぎる
TOO FAST TO FAIL
新しい“つぶすには大きすぎる”会社
ガバナンスよりも成長を優先
貪欲の世代
監視資本主義の犠牲
必ず勝つ
規制するには大きすぎる?
第11章 泥沼のなかで
IN THE SWAMP
グーグルの“シリコンタワー”
金の流れを追え
「地球最大の黒幕」

第12章 2016年、すべてが変わった
2016: THE YEAR IT ALL CHANGED
度を超した監視資本主義

第13章 新たな世界大戦
A NEW WORLD WAR
テクノナショナリズムの台頭
トップダウンとボトムアップ
アメリカの“ナショナル・チャンピオン”?
よりよいシステムの構築

第14章 邪悪にならない方法
HOW TO NOT BE EVIL
ビッグテックに制限を
私たちのデータで利益を得る者と利益をよりよく分配する方法
デジタル時代の公正な税制
デジタル・ニューディール
デジタル世界における健康とウェルネス

謝辞
参考文献
注釈

ラナ・フォルーハー (著), 長谷川 圭 (翻訳)
出版社: 日経BP (2020/7/16)、出典:出版社HP

10年後のGAFAを探せ 世界を変える100社

世界の最先端がわかる

現在世界中の企業のTOPに立つGAFAに続き、10年後に派遣を握っている可能性のある、「ポストGAFA」となりそうな100社が挙げられています。分野も、ITからヘルスケア、食品に宇宙開発まで多岐にわたっているので、様々な分野の将来性について知ることができる一冊です。

日経ビジネス (編集)
出版社: 日経BP (2019/6/20)、出典:出版社HP

はじめに

その“予言”は、今振り返っても正鵠を射たものだった。
グーグルとアマゾン・ドット・コムが合併して「グーグルゾン」が誕生し、膨大なデータを分析することで、世界中の人々の思想から消費行動まで詳細に把握して、メディア、そして社会を実質的に支配するー。

2004年に公開されたフラッシュムービー「EPIC2014」が描いた世界だ。現実にはグーグルとアマゾンは合併しておらず、空想の物語だが、「データを握るものが世界を支配する」という鮮烈なメッセージは、核心を突いたものだった。
今、世界に君臨するテクノロジーの巨人たちは、まさに大量の個人情報を手中にして、強大な支配力を持つようになっている。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル。4社の頭文字を取って「GAFA」とも呼ばれる。
地球上でインターネットを利用する何十億もの人は、毎日のようにGAFAの製品やサービスに触れている。それはもはや電気や水道のように生活に欠かせないインフラになった。
グーグルの検索や電子メールの「Gmail」は老若男女を問わず、多くの人が毎日使う。スマートフォンやテレビも、同社のOS(基本ソフト)「アンドロイド」を採用する製品が多い。

アマゾンでオムツや飲料水を注文すれば、早ければその日のうちに届き、同社のAIスピーカー「アレクサ」に分からないことを質問すると、すぐに答えを教えてくれる。フェイスブックに、今日の出来事を書き込んで友達と交流したり、アップルの「iPhone」の画面を1日に何時間も眺め、AIの「Siri」やスマホ決済の「アップルペイ」を使ったりする人も多いことだろう。
だが、こうした便利さはGAFAの「表の顔」だ。その裏側では、気持ち悪いほど詳細に、ユーザーの行動を把握している。大量のデータをAIで解析して、消費者が興味を持ちそうな広告を表示したり、商品をお勧めしたりするのは序の口で、水面下で集めた個人情報を他社に販売していることも明るみにでている。

世界中で強まる規制圧力

「4世紀の石油」とも言われるデータは金の生る木、だ。
それを武器に成長を続ける4社の株式時価総額は天文学的な数字になっている。2年5月時点で、それぞれ5000億ドル(約5兆円)から1兆ドル(約110兆円)に達しており、世界のトップ5に君臨する。

だが、そんなGAFAも踊り場に立つ。「取得したデータを好き勝手に使って金儲けしている」と批判され、規制する動きが世界で野火のように広がっている。
急先鋒はEU(欧州連合)。8年5月に個人情報を保護する「一般データ保護規則(GDPR)」を施行した。ターゲットはもちろん大量の個人情報を保有するGAFA。2年1月、グーグルは同法に違反したとされ、5000万ユーロ(約5億円)の制裁金を課せられた。フェイスブックもGDPR法違反で訴えられている。GAFAは独占禁止法でも罪に問われている。EUの執行機関である欧州委員会は、10年3月、ネット広告事業で競争を制限する契約を結んでいたとして、グーグルに1億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を課した。フェイスブックやアマゾン、アップルに対する調査も始まろうとする。

米当局も動いた。司法省や米連邦取引委員会(FTC)が、GAFAを独禁法違反で調査する方向だ。日本やインドで もGAFAを規制する動きが広がる。
「私が米国の大統領になったら、GAFAを解体する」。そんな公約を掲げる政治家まで登場した。米民主党のエリザベ ス・ウォーレン上院議員だ。「解体論」まで飛び出す状況では、4社の行動は制約を受け、勢いは間違いなくそがれるだろう。
GAFAの姿は3年前のマイクロソフトにも似る。OS市場での圧倒的なシェアを背景に競争を阻害した、と米司法省に訴えられた。2年続いた訴訟への対応に追われる中で、同社は勢いを失い、IT業界のリーダーの地位をGAFAに明け渡す。マイクロソフトの株価は10年以上低迷し、復活を遂げたのは最近のことだ。GAFAも同じ轍を踏まないとは限らない。

そんな中、新たなイノベーションを生み出す次のベンチャーに対する関心が高まっている。GAFAが身動きを取りにくい状況は、新興勢力にとって追い風になるからだ。

勃興する次世代のイノベーターたち

AIやソフトウエアを活用したイノベーションは、コミュニケーション、モビリティー、マネー、ロボット、ヘルスケア、フード、エンターテインメントなど多様な分野で同時多発的に起きようとしている。従来のビジネス、生活、インフラのあり方を劇的に変えかねないものだ。
空飛ぶクルマ、宇宙開発、量子コンピューター、ライドシェア、ビッグデータ解析、ホワイトカラーの仕事を代替するソフトウエアロボット、がん治療……。
世界を見渡せば、多様なイノベーションを生み出すユニークなスタートアップが続々と出現している。その企業価値は、すでに数千億円から数兆円規模に達しているケースも目立つ。

勃興している場所は、米シリコンバレーに限らない。中国、インド、イスラエル、英国、ドイツ、シンガポール、日本など、世界各地に広がっている。
今後、どんな企業が台頭し、10年後にGAFAに取って代わるような存在になるのか。本書では「世界を変える100社」の実像に迫る。

2019年6月 日経ビジネス編集部

日経ビジネス (編集)
出版社: 日経BP (2019/6/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 次のフロンティアはここだ
1 「新興国のアマゾン目指す越境EC」
ビィ・フォアード(中古車輸出)

第2章 ビジネスの常識を破壊する
2 「非効率なオフィスを変えるプラットフォーム」
ウィーワーク(シェアオフィス)
3 「急増するスマホアプリの開発を支える“黒子”」
インビジョン(アプリ試作ツール)
4 「800万人以上が使うビジネスチャット」
スラック・テクノロジーズ(ビジネスチャット)
5 「R兆円の国際送金市場に殴り込む」
トランスファーワイズ(国際送金)
6 「産業用ロボットのウィンドウズ”を狙う」
MUJIN(ロボット制御ソフトウエア)
7 「から揚げをつかめる知性派ロボット」
オサロ(ロボット制御ソフトウエア)
8 「ビルや病院で活躍するお手伝いさんロボット」
サビオーク(サービスロボット)

第3章 生活を革新する
9 「スマート家電で一流シェフの料理再現」
イニット(キッチン家電の調理プラットフォーム)
10 「野菜や果物の劣化を防ぐ“魔法の粉”」
アピール・サイエンシーズ(野菜や果物の劣化を防ぐコーティング剤)
11 「タンパク質危機を「ウジ虫」で救う」
ムスカ(昆虫技術を使うバイオマス処理プラント)
12 「東南アジアのラストワンマイル物流の雄」
ニンジャバン(宅配サービス)
13 「スマホアプリで農家の物流の悩み解消」
8アイデアズ・インフォラボズ(農産物の物流サービス)
14 「自動運転車用3Dマップの“標準”狙う」
マッパー(3Dマップ)

第4章 ネットとリアルを融合
15 「リアルとネットを融合させた生鮮スーパー」
盒馬鮮生(スーパーマーケット)
16 「ウォルマートを魅了したインドの通販大手」
フリップカート(インターネット通販)
17 「ショールーミングを逆手に、データで稼ぐ」
ベータ(体験型テクノロジーショップ)
18 「オンライン診療の“ディファクト”狙う」
タイトケア(家庭向け診療デバイス)
19 「文字を読み上げるメガネ装着デバイス」
オーカム(視覚障害者向け画像認識デバイス)
20 「がんの見逃しゼロ目指すAIベンチャー」
AIメディカルサービス(内視鏡の画像解析)

第5章 ビジネス・コミュニケーション
21 「ホワイトカラー」の仕事をロボットで自動化」
オートメーション・エニウェア(RPA)
22 「ヘッドハンティング型転職サービスで旋風」
ビズリーチ(転職情報)
23 「3100万人の開発者向けプラットフォーム」
ギットハブ(ソースコード管理サイト)
24 「世界中の特許・商標をデータベース化」
パットスナップ(特許データベース)
25 「名刺情報を会社で共有、営業を効率化」
Sansan(名刺の共有・管理サービス)
26 「世界最大級のオンライン学習プラットフォーム」
ユーデミー(オンライン学習)
27 「3DのCG開発ツールで仮想世界を創造」
ユニティ・テクノロジーズ(3次元CG開発ツール)

第6章 エンターテインメント/宿泊サービス
28 「動画共有アプリ「TikTok」で世界を席捲」
字節跳動科技(動画共有アプリ)
29 「『ポケモンGO」の次は『ハリー・ポッター』」
ナイアンティック(ARゲームアプリ)
30 「東南アジア発の電子書籍プラットフォーム」
ウークビー(電子書籍プラットフォーム)
31 「気に入った写真をピンボード上で共有」
ピンタレスト(写真共有サイト)
32 「“民泊”で旅行の常識を激変させる」
エアビーアンドビー(民泊仲介)
33 「安かろう、悪かろうを覆した格安ホテル」
オヨ・ホテルズアンドホームズ(ホテルチェーン)
34 「中国発の民泊の巨人、日本にも進出」
途家(民泊仲介)

第7章 フィンテック
35 「ビットコインの「採掘装置」の覇者」
比特大陸科技(ビットメイン、仮想通貨の採掘装置)
36 「個人の信用力をスコア化して急成長」
クレジット・カルマ(信用情報サービス)
37 「株アプリと金融情報のビッグデータ解析」
フィナテキスト(金融情報サービス)
38 「クラウド時代の「会計エコシステム」を創造」
freee(クラウド会計サービス)
39 「ネットで資金の貸し手と借り手をマッチング」
陸金所(Lufax、金融仲介サービス)
40 「支店を持たない「デジタル銀行」」
モンゾ(モバイル銀行)
41 「競争激化するスマホ決済の先駆者」
Origami(オリガミ、スマホ決済)
42 「インドの露店でも使えるスマホ決済」
ペイティーエム(スマホ決済)
43 外貨両替の手数料で「価格破壊』
レボリュート(スマホアプリ銀行)
44 「世界で脚光浴びるネット決済の“黒子”」
ストライプ(決済プラットフォーム)

第8章 ロボット・IoT
45 「Alで産業機器のデータを解析し、効率改善」
C3 IoT(産業向けIoTソフトウエア)
46 「アディダスを魅了する超高速3Dプリンター」
カーボン(3Dプリンター)
47 「ドローンの世界を支配する中国の王者」
大館創新科技(DJI、ドローン)
48 「仮想現実でも「触感」を得られる技術」
H2L(ボディシェアリング技術)
49 「体温で発電するスマートウォッチ」
マトリックス・インダストリーズ(温度差発電)
50 「「ウェアラブル」を支える基盤技術」
ミツフジ(ウェアラブルIoT)
51 「トヨタを魅了したAIの『小さな巨人」」
プリファード・ネットワークス(AIソフトウエア)
52 「人間のように思考・学習するロボット」
ヴィカリアス(ロボットの知能化ソフトウエア)

第9章 ライドシェア
53 「日本を攻める中国配車サービスの巨人」
滴滴出行(配車サービス)
54 「『パイクが1日320円」インド発カーシェア」
ドライブジー(カーシェアリング)
55 「マッサージ師も修理工も宅配」
ゴジェック(配車・宅配サービス)
56 「タクシーや自転車もシェア、決済も提供」
グラブ(配車・決済サービス)
57 「米国でウーパーを猛追するライパル」
リフト(配車サービス)
58 「三輪タクシーを配車する庶民派ライドシェア」
オラ(三輪タクシー配車サービス)
59 「空飛ぶクルマにも注力する配車サービスの王者」
ウーバーテクノロジーズ(配車・宅配サービス)

第10章 モビリティー
60 「EVの“黒子”目指す京大発ベンチャー」
GLM(EVメーカー)
61 「中国発のEVスーパーカー」
蔚来汽車(EVメーカー)
62 「つながるクルマの「データ取引所」」
オトノモ・テクノロジーズ(クルマのデータ取引所)
63 「電気で動く『空飛ぶクルマ」」
ボロコプター(空飛ぶクルマメーカー)
64 「テスラが警戒する中国の新興メーカー」
小鵬汽車(EVメーカー)

第11章 物流
65 「必要な時だけ使える「オンデマンド倉庫」」
フロースペース(倉庫サービス)
66 「『陸』『海」「空」で物流の“最適解”を提供」
フライトハブ(貨物輸送サービス)
67 「世界で急拡大、物流施設のモンスター企業」
GLP(物流施設)

第12章 ヘルスケア
68 「がん細胞のDNAを『アルファ粒子」で破壊」
アルファ・タウ・メディカル(医療機器)
69 「貧困層を失明から救うインドの医療機関」
アラビンド・アイ・ホスピタル(医療機関)
70 「グーグル発の“不老不死”ベンチャー」
カリコ(不老不死研究)
71 「パーソナルAIで予防医療を支援」
FiNCテクノロジーズ(ヘルステック)
72 「医用画像のAI解析で、がんの誤診を激減」
推想科技(医用画像のAI解析)
73 「AIを使う在宅尿検査で、腎臓病を予防」
ヘルシーio(在宅尿検査)
74 「患者の体で生み出す“がん治療薬”」
モデルナ・セラビューティクス(抗がん剤)

第13章 流通・食事宅配・食品
75 「欧州ナンパーワンの「フード宅配」」
デリバルー(食事宅配)
76 「中国発「出前サービス」のガリパー」
上海拉扎斯信息科技(食事宅配)
77 「食料品の買い物代行サービス」
インスタカート(食料品買い物代行)
78 「1億人の胃袋狙うプラットフォーム」
美団点評(口コミ投稿と出前サービス)
79 「どん底から復活したインドの仮想商店街」
スナップディール(仮想商店街)
80 「コンビニ・外食支える「食のインテル」」
アリアケジャパン(調味料)
81 「ムダな食品廃棄を減らすスマホアプリ」
カルマ(食品販売アプリ)
82 「ITで持続可能な水産養殖を実現」
ウミトロン(養殖技術)

第11章 コンピューター・AI
83 「人間の感情を認識する「空気を読むAI」」
アフェクティバ(感情認識AI)
84 「量子コンピューターで常識を破壊」
Dウエーブ・システムズ(量子コンピューター)
85 「秘密のベールを脱いだ複合現実のイノベーター」
マジック・リープ(ウェアラブル・コンピューター)
86 「双子も見分けられる顔認証技術の雄」
幌視科技(メグビー、顔認証技術)
87 「スマホカメラの画像から位置を特定」
光禾感知科技(コンピュータービジョン)
88 「CIAも頼るビッグデータ解析の巨人」
パランティア・テクノロジーズ(ビッグデータ解析)
89 「量子コンピューター向けソフトの新鋭」
QCウェア(量子コンピューター向けソフトウエア)

第15章 宇宙開発
90 「巨大ロケットで月を目指すアマゾンCEO」
ブルー・オリジン(宇宙開発)
91 「人工衛星用の地上アンテナをシェアリング」
インフォステラ(衛星アンテナシェアリング)
92 「宇宙から原油貯蔵量や店舗売上高を解析」
オービタル・インサイト(衛星画像解析)
93 「宇宙ビジネスを支援する「宇宙商社」」
スペースBD(宇宙商社)
94 「テスラCEOが宇宙でも狙う革命」
スペースX(宇宙開発)

第16章 データ分析・エネルギー・素材
95 「データ解析で、現場力』を向上」
アベジャ(データ解析)
96 「電力を、貯蔵し、エネルギーを有効活用」
エリーパワー(蓄電システム)
97 「AIとビッグデータで、電力流通コストを削減」
パネイル(電力小売り向けプラットフォーム)
98 「興味があるニュースをAIが選んで表示」
スマートニュース(ニュースアプリ)
99 「環境負荷が小さい新素材で、プラスチック代替」
TBM(新素材)
100 「“宝の山”のデータから顧客を解析」
トレジャーデータ(ビッグデータ解析)

おわりに

日経ビジネス (編集)
出版社: 日経BP (2019/6/20)、出典:出版社HP

001 ビィ・フォアード Be Forward 中古車輸出

新興国のアマゾン、目指す越境EC

手元の温度計は、氷点下20度を示していた。2018年2月中旬、モンゴルの首都ウランバートル近郊の貨物ターミナル。吐いた息がそのまま凍り付きそうな極寒の季節だが、モンゴル人たちは何食わぬ顔で、コンテナの荷降ろし作業を黙々とこなしている。
神奈川県の川崎港から海路で中国・天津へ、そこから鉄道に載せ替えての計3日間。

約3500kmの長旅を終えたコンテナから降ろされているのは日本の中古車だ。これだけなら中古車輸入の現場では珍しくない光景だが、このあと作業員たちがトランクを開けると、段ボール箱が姿を現した。印刷されているのは花王の紙おむつ「メリーズ」のロゴ。前のオーナーの忘れ物?いや違う。

海外の消費者向けに中古車販売サイトを運営する、ビィ・フォアード(東京・調布)が積んだ荷物だ。同社は「輸出する車両の空きスペースを有効活用する」という秘策を武器に、越境EC(ネット通販)世界大手への変貌をもくろむ日本企業なのだ。
「新興国のアマゾン・ドット・コムになる」と真顔で話すのは山川博功社長。大言壮語に聞こえるかもしれないが、思い返してほしい。グーグルにアマゾン、フェイスブック、アップル。各社の頭文字から「GAFA」と称される米巨大IT (情報技術)企業の成長を、ほんの十数年前にどれだけの人が予測できていただろうか。

「後発」の新興国で存在感

ビィ・フォアードの強みはアフリカやカリブ諸国といった、新興国のなかでも比較的「後発」とされる国々にある。設立は1年、売上高は8年6月期に570億円。アマゾンより規模は小さいが、これら後発の新興国ではアマゾンを圧倒する物流網を持つ。

そのネットワークはコンテナ船が接岸できる港湾付近に限らない。クリック一つで我が街まで質の高い日本車を届けてくれる。そんなサービスを実現すべく、現地のパートナー企業を開拓。モンゴルのような内陸国なら鉄道に載せ替えて運び、道路事情が悪くキャリアカーを運行できないアフリカなら隊列走行するドライバーを手配する。提携するパートナー 企業は世界で9社を数え、販売実績は153カ国に及ぶ。

日経ビジネス (編集)
出版社: 日経BP (2019/6/20)、出典:出版社HP

After GAFA 分散化する世界の未来地図

「After GAFA」の世界がよくわかる

本書では、現在のTOP企業であるGAFAが岐路に立たされている状況を踏まえて、今後どのように展開していくのかを解説しています。GAFAの今後の展望というよりも、テクノロジーの分散化に焦点を当てて書かれた一冊です。

小林 弘人 (著)
出版社: KADOKAWA (2020/2/29)、出典:出版社HP

まえがき

「ツァイトガイスト」という言葉をご存じだろうか。「時代精神」という意味のドイツ 語で、特定の時代を特徴づける思想や理念のことを指す。本書は、とくに二〇一七年以 降から現在までのテクノロジー界や社会で起きている事象から、その「ツァイトガイス ト」を自分なりに読み解いてみたものだ。
まだインターネットとそれが実現する世界観が広く知られる前の一九九四年、私は 『WIRED(ワイアード)』という世界で最初にデジタルによる社会変革を報じる月刊 誌の日本版を創刊した。それ以来、それまで半導体産業が中心であったシリコンバレー の変貌ぶりはもちろん、世界がインターネットというテクノロジーによってどう進化し、 社会にどのような変化がもたらされたのか、という歴史を今日に至るまで、目撃してきた。

そしていま、この世界には密かな変革の波が訪れている。アメリカが主導してきたイ ンターネットテクノロジーと、その象徴であるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイス ブック、アップル)という強者を擁する「ツァイトガイスト」が、岐路に差し掛かってい るのだ。テクノロジー楽観主義が覆っていたテキサス州オースティンで開催される世界的イベントSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で、二〇一九年三月、GAFAへの 反発が顕在化したことは本書に記載している。フェイクニュースから情報漏洩、はては 「監視資本主義」といわれる統治と経済活動を含む資本主義のシステムのあり方にまで、 さまざまな議論や反対運動が世界各地で繰り広げられているのだ。
インターネットはその出自から「分散」に向かって進んできた。私がインターネット 勃興時に知った「サイファーパンク(暗号パンク)」という思想のコアは、国家権力や企 業から「暗号」によっていかに自由を守るか、というところにあった。しかしそこから 時代を経て、GAFAに代表される中央集権的なプラットフォーマーが登場し、彼らの おかげで私たちは多大な利便性を享受した一方、自由なはずのインターネットから「信 頼(トラスト)」が失われ、もてる者ともたざる者との経済および技術的な格差や、情報 の不均衡、思想の対立構造が広がりつつある。

GAFA的なビジネスモデルに抗う手段であり、インターネットに「信頼」を取り戻 せる可能性のある技術として、ブロックチェーンが存在する。日本ではいまだに仮想通 貨の基盤技術として認知され、「投機対象」と見なす向きもあるが、その本質は、中央 集権的な存在に頼ることなくシステムとしての「信頼」を担保できることにある。これ は、かつて「サイファーパンク」たちが夢見た世界そのものだ。
ブロックチェーンは期待に比して、誰もが体験できる社会実感が少ないので「幻滅 期」だといわれるが、その裏では巨大な胎動が起きている。足しげく欧米、アジアに足 を運んでいる私は、とくにヨーロッパとアジアのブロックチェーンコミュニティと交流 をもつなかで、日本も含め、かつてならGAFAで働いていてもおかしくない天才たち が、社会変革を進めていることを知った。

あるいは日本でも自治体と企業によるブロックチェーンの社会実装プログラムの開催 やプログラマ向けの勉強会を実施しているが、国内外では多くの実証実験が行なわれて いる。これらが花開くとき、私たちが生きるこの世界はどんなかたちになっているの か?
インターネットの歴史に学び、多くの新規事業を立ち上げ、スタートアップの育成支 援や大企業・自治体のインキュベーションを行なってきた身として、本書ではその未来 地図を描いてみたいと思う。
これから私たちが迎えるのは、「ビッグ・アンバンドル(大いなる解体)」という新しい 転換期だ。それは長く続き、いまよりもさらに混沌を肥やしとするだろう。いま語られ る「アンバンドル」はビジネスに関する話題が多いが、今後、それはライフスタイルや 働き方、社会のあり方にまで及ぶ。本書でその世界観と、裏側で駆動するテクノロジーのダイナミズムを知ってほしい。そして、読者の方のビジネスやライフスタイルに重ね てほしい。さらに、そうした世界観のなかで、日本はどうすべきか、ということにも目 を向けてみたいと思う。
誰もまだ見ぬ世界、しかしそれほど遠くはない世界の「ツァイトガイスト」として、 新しい議論を生み出す土壌に本書がなれるなら、筆者として望外の喜びだ。

小林 弘人 (著)
出版社: KADOKAWA (2020/2/29)、出典:出版社HP

目次

まえがき

第1章 「信頼」が失われたインターネット
ドイツでのキャンパス建設を諦めたグーグル
なぜSXSWは急に内省的になったのか
頓挫したアマゾンのNY第二本社建設計画
「GAF」に比べればアップルは無辜?
インターネット黎明期に存在した理想主義
シェアリングエコノミーの「シェア」を問う
一三億ドルを集めた「詐欺スタートアップ」
「エコーチェンバー」で思想の偏りが増幅される
ドットコムバブルと時価総額至上主義の誕生
消費者自らがコンテンツを生み出す時代へ
iPhoneが加速させた「リアルタイム化」
アメリカの国策がGAFAの巨大化を促した
プラットフォーム企業の「錬金術」とは?
世界を牛耳るテクノクラティック・エリート
私たちの時間を侵襲する「マイクロ遮断」

第2章 ブロックチェーンの本質を見誤るな
中央集権化と分散化を繰り返したIT技術
重要なのはブロックチェーン技術そのもの
「サイファーパンク」特集なる予言の書
「公開鍵暗号」こそ世紀のイノベーション
新たに開発された暗号ソフトウェア「PGP」
「反逆者」たちが不可欠な技術を生み出した
わずか九ページだけのサトシ・ナカモト論文
人間抜きで「信頼」が成立する仕組み
量子コンピュータの量子超越性について
イーサリアムとスマートコントラクトの衝撃
「サイファーパンク」の精神はまだ健在だ

第3章 After GAFAのビジネスモデル
大成功したチャレンジャーバンク「N26」
銀行がGAFAに勝っている部分とは?
デジタルIDは「次世代の身分証明書」
群雄割拠するヨーロッパのインシュアテック
保険に組み込まれるスマートコントラクト
分散型予測市場が新しいマーケットを拓く
dAppsで役所のサービスも一気に効率化?
あらゆるモノやコトが「証券化」される時代
ICOで大きく変わった資金調達の流れ
ブロックチェーンで未公開株の入手も
不動産業はもっとスマートなビジネスへ
高額商品のトレーサビリティにも力を発揮
音楽、アート業界もブロックチェーンで変わる
映画製作でのブロックチェーン活用例
なぜベルリン、香港、ツークが「熱い」のか

第4章 デジタルはすでにピークアウトした
幻滅期を迎えたブロックチェーン
「ゼロ知識証明」による情報の秘匿
標準化問題とインターオペラビリティ
エンドユーザー向けキラーアプリの不在
「デジタルのピークは二〇一七年だった」
「ポスト・デジタル」時代の価値を考える
「リバースエクスペリエンス」の重要性
「インターネット以前」に目を向けよう
リアル社会の構造がウェブに投影される?
人類は「分散化」に向かって進んできた
これからの最重要課題は「合意形成」
国家とコミュニティはどう変わっていくのか
「ワカンダ」事件はすでに起きた未来?

第5章 「オルタナティブな価値」のつくり方
現代社会は「なぜ?」こうなっているのか
中世まで存在しなかった「子ども」の概念
社会のフォーマットを「リフレーム」せよ
企業の存在意義が曖昧になっている理由
N26の理念は「世界で一番最初に愛される銀行」
明確なビジョンをもつヨーロッパの先端企業
ESG投資は新しいビジネスのガイドライン
哲学からテクノロジーを見直す機運の高まり
マルクスがブロックチェーンに出合っていたら
新しい『資本論』と称される「監視資本主義」
トークンエコノミーで互酬経済を「見える化」
ウェブを通じて個人に投資が行なわれる時代
プラットフォーマーにいま要求すべきこと

第6章 「重ねる革命」と日本の選択
日本企業のSXSWへの参加と課題
トレードショーから「イノベンション」へ
盲目的にシリコンバレー詣でを続ける日本
新規事業開発で刷新すべきはバックヤード
オムロン創業者の「SINIC理論」の凄さ
ドットコムバブル時代と異なるミレニアル世代
新家電「デリソフター」が誕生するまで
コミュニティを修復しようとする人たち
テンプレコピーキャットにもはや価値はない
「課題先進国」だから拓ける活路がある
「日本で最も美しい村」新庄村の挑戦
無数にあるオルタナティブな生き方のヒント
テクノロジーで「食品ロス」は撲滅できるか
価値のインターネットと「重ねる革命」

あとがき

小林 弘人 (著)
出版社: KADOKAWA (2020/2/29)、出典:出版社HP

GAFAに克つデジタルシフト 経営者のためのデジタル人材革命

デジタル最前線のノウハウとエッセンス指南書

本書は、GAFAの強さを解説した上で、企業へのデジタルシフトの重要性を訴え、デジタルシフトしていく上で重要になるポイントを記しています。デジタルシフトを成功させるポイント、失敗するポイントともに解説されているので、よりわかりやすくなっています。

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP

はじめに

「アマゾンなんて、Eコマースの会社でしょう?うちの会社にはあまり関係ないんだよね」。 ある社長のこの言葉に私はこう答えた。「いえいえ、違います。アマゾンはあらゆる企業に影 響を及ぼすのです!」と。ここからアマゾンをはじめとするGAFA(ガーファ : 米グーグル、 アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や中国BAT(バット : バイドゥ、アリ ババ、テンセント)などの話を詳説すると、その社長はみるみる真剣な表情になった。「うちも デジタルシフトしなければ、生き残れない!」と。

百年に一度の大きな波、デジタル産業革命(第4次産業革命)。デジタル技術が社会を劇的に 変えている姿を描写した言葉だが、このデジタル産業革命の最中において、私は「デジタルシ フト」という言葉を使って、経営者の方々にデジタルの重要性を語っている。
デジタルシフトとは、デジタル技術の活用を前提に、企業の在り方すべてを変革させること を指す。デジタル技術が世界を覆うこの時代、企業組織の存続は「デジタルであること」が前提となる。ビジネスの企画構想から始まり、研究、マーケティング、開発・設計・製造、品質 管理、販売、顧客サポート、また人事・経理・福利厚生・社員教育などのバックオフィス業務 に至るまで、企業のすべての業務、すべてのビジネスモデルを、デジタル技術の存在を前提に 組み替えなければならない。
先日、私は日本を代表する自動車メーカーの技術幹部の方に、「近い将来、電気自動車の時 代になると思う。そんな時代になっても、日本人としては日本の自動車メーカーに今と同様に、 世界で勝ち続けてほしい」と伝えた。するとその幹部は「電気自動車は蓄電技術が相当発展し ないと普及しないと思いますよ」と答えた。私は愕然とした。本当なのだろうか?
中国の深圳では従来、日本製のガソリンタクシー車が9割以上を占めていたが、今や2万台 以上のタクシーの9%がBYDという中国企業が製造する電気自動車にリプレースされている。 2019年3月に日本の自動車関係会社の方々をオプトグループの中国事業幹部がお連れし、 中国の新興4大自動車メーカーなどを訪れた。皆さん一様に中国の先行事情や規模の大きさに 驚き、「本気で電気自動車や自動運転車に取り組まねば置いていかれる」と、気付きを得て帰 国されたそうだ。
私は仕事柄、企業の幹部と会うことが多い。その経験から言うと、大企業のトップは皆デジタルシフトの必要性を感じているものの、実感が湧いておらず、具体的な実行方法も模索状態 だ。一方、地方の中小企業の社長はまだ自社への影響に本気で気付いていない状態である。G AFAやBATをはじめとした、ネットの巨大プラットフォーマーの強さの源泉とその影響を 軽く見てはいけない。一刻も早くデジタルシフトしなければ、自社存亡の危機であると強く警 告し、デジタルシフトへの実践法をお伝えしたい。

デジタルシフトはすべての企業に急務

私が経営するオプトグループでは、今からさかのぼること十数年前に、日本を代表する大手 広告代理店の電通と資本業務提携を結んだ。多いときは100人以上のデジタル人材を送り込 み、電通のデジタルシフトを支援した経験を持つ。その後も「TSUTAYA」を擁するカル チュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)やソフトバンク、日本経済新聞社など数々の大手企 業のデジタルシフトを支援してきた。これらの企業は日本の中ではいち早くデジタルシフトに 着手した企業群であり、その先見性や行動に移すスピードは注目に値すると言って良いだろう。
彼らとデジタルシフト実践を通じて、私たちは数々の学びを得た。そして、特にここ数年、企業からのデジタルシフトに関する「本気の依頼」が殺到し始めている。
本書では机上の空論ではなく、デジタルシフトを成し遂げるにはどうしたら良いのか、その ノウハウとエッセンスを余すところなくお伝えしたい。第1章で紹介するGAFAの脅威は凄 まじいものがある。デジタルの最前線で働く私が最も実感していると言って良いだろう。一刻 も早くデジタルシフトをしなければ、多くの企業が衰退の憂き目にあうことを確信する。

私自身、まだすべての組織に通用するデジタルシフトの方法が分かっているわけではない。 ただ、過去の自らの実践体験や様々な企業のデジタルシフトの成功例・失敗例を通して得た、 現時点における最良の方法はお伝えできる。本気でデジタルシフトに向かおうとしている経営 者・企業であれば、本書に記載した人と組織に関するノウハウとエッセンスは十分に活用して いただけることと思う。
思えば、私も1994年に創業し四半世紀が経ったが、常に企業に対し、デジタルの提案を し続け、否定され続けた歴史と言える。2000年代前半は「ネット広告をやりましょう!」「効 果測定しましょう!」と提案するものの、ほとんどの企業が「うちは大手総合広告代理店と付 き合ってるから大丈夫」「マス広告で十分」などと門前払い。その中でも実施してくださった 企業が大きく成功し、業界他社が追随した。その後もソーシャルメディア、動画など次から次に新しいメディア、手法が出るたびに提案に伺うも、最初は否定の連続。今回のデジタルシフ トもまさにその繰り返しである。「貴社にも必ずGAFAの影響が及びます」「一刻も早くデジ タルシフトすべきです」と唱えても、大半の経営者や企業は、「うちには関係ないからね」と いう感じである。しかし、必ず数社に1社は応えてくれる。私はその会社を必死で成功させる。 すると、他社も気付いて実行に移してくれるのだ。

18世紀の産業革命も最初の発明から、世の中に浸透し、人々の暮らしや社会が変わるのに 150年もかかっている。インターネットの民間利用が始まった時期をおおよそ1990年と すれば、今はデジタル産業革命が始まってまだ30年しか経っていないわけで、本番はまさにこ れからである。30年後、50年後の社会は今からでは想像もできないほど大きく変わっているこ とだろう。日本企業が1社でも多く、デジタルシフトを成し遂げ、今と変わらず未来も繁栄し 続けていることを心の底から願ってやまない。

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに
デジタルシフトはすべての企業に急務

第1章 デジタルシフトしない企業は消え去る
GAFAの影響が自社にも及ぶことに気付いてほしい
時価総額ランキングの上位を独占するGAFAとBAT
トヨタのライバルはもはや自動車メーカーではない
パナソニックはメーカーから「ソフトウエア企業」へ
ユニクロの敵もアマゾンに
現場で体感したGAFAの圧倒的凄さ
日本のネット企業が世界的企業になれない構造的な理由
世界の「ネット広告」はGAFAが独占
位置情報はグーグルが独占
スマホ検索は集合サイトからダイレクトサーチへ
未来の主戦場「AI」もGAFA
テレビもネット新興企業に主役交代
次世代自動車もGAFA色が強まる
アマゾンの影響をさらに深掘りしてみる
アマゾンがオンライン書店と侮ったら倒産
アマゾンがEコマースモールだと思ったら大間違い
倒産、大量閉店に追い込まれた企業
ネットからリアルに本格展開し始めたアマゾン
高級スーパーのホールフーズを買収した理由
アマゾンが「家庭内店舗」にも進出
動車の中にも店舗を出店
研究開発投資は世界
デジタル社会の未来を読み解くヒント
歴史上の「産業革命」に共通する3要素
次世代自動車トレンド「CASE」から見えてくること
テスラのエネルギー投資の考え方
エネルギー業界のメガトレンドは「3D」
次世代のAIを読み解く

第2章 デジタルシフトを成功に導く方法
デジタルシフトに取り組む経営者の悩み
世界で最もデジタルシフトに成功した企業、DBS銀行
日本で最もデジタルシフトに成功した企業、リクルート
デジタルシフトに失敗する企業の共通する5つの理由
1 トップに、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がない
2 デジタルを分かっていない人が、デジタルシフトの責任者になる
3 既存事業を優先させ、デジタルをないがしろにする
4 デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与えられていない
5 デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語れない
デジタルシフトの注意点
ベンチャーへの出向・人材交流だけでは何も起きない
エース社員を配置する
既存の人事制度でデジタル責任者を異動させない
デジタルシフトを成功させる10方法
1 トップが、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟を持つ
2 デジタルが分かっている人を、デジタルシフトの責任者に置く
3 デジタル事業を既存事業より優先させる
4 デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与える
5 デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語る
6 組織を分ける
7 デジタルシフト経営チームを組成する(CDO+CMO+CTO+cco)
8 デジタル人材で固める
9 経営者がデジタルを学ぶ
10 社内の人材をデジタルシフトさせる

第3章 まずは経営者のデジタルシフトから始めよ
経営者の年齢に反比例するデジタル力
経営者の「デジタルカ」を自己診断する
★経営者のデジタルカパーソナルチェックリスト : 基本編
★経営者のデジタルカパーソナルチェックリスト : 応用編
「デジタル力」をアップさせる3つの習得法
習得法その1:「テックタッチ」を日々心がける
・ニュースアプリを購読する
・エアビーアンドビーで宿泊予約してみる
・ウーバー、リフトを使ってみる
・フリマアプリを使ってみる
・ウーバーイーツ、出前館で食事を届けてもらう
・ARやVRを体験する
・ウィーワーク(WeWork)のシェアオフィスを訪問する
・スマートウォッチを使ってみる
習得法その2 : 自分の目、耳、足で確かめる
・ネット分野の主要イベントに足を運ぶ
・海外の大規模イベントに自ら足を運ぶ
・自分の疑問を起業家やベンチャーキャピタリストにぶつける
習得法その3 : 情報を常にアップデートし続ける
★デジタルシフト時代を理解するための推薦図書〈1〉〈2〉
・「任せる」ための基礎力となるのがデジタルカーS

第4章 デジタルシフトに必須の「デジタル人材」4職種
デジタルシフト時代に求められる社員のスキルセット
全社員に必要な「デジタル力」とは何か
デジタル力の有無で収入に差
デジタルシフトを実現する「デジタル人材」4職種とは
顧客ニーズと行動を捉え、自社収益に変換する: マーケター
顧客ニーズを直接吸い上げ、デジタル技術で価値を生み出す: テクノロジスト
ユーザーとの接点の品質や魅力を上げる: クリエイター
デジタル時代の収益構造を設計する: ビジネスプロデューサー
オプトがテクノロジストとクリエイターの確保に成功した理由
オプトが手がけた2つの策
ギークナイトを通じてエンジニア同士のつながりを広げた
エンジニアの自主独立組織を用意
デジタルエンジニア拡充の必要性を痛感
営業が強すぎてエンジニアが定着しなかった
成功の秘訣は方向性を示し、現場に任せたこと
現場のエンジニアチームを「治外法権」とした
これからの事業体は「ミドルアップダウン」が理想的
社内におけるエンジニアとの協働を支援
クリエイターがいなければ始まらない
人材とプロジェクトのマッチング・プラットフォームに
事業の幅が広がり、案件の質が変わってきた
デジタル人材が企業の成長を支えている

第5章 実践デジタルシフト人材育成プログラム
1 ビジネスプロデューサー向け教育プログラム
中国視察ツアー
デジタルシフトアカデミー
2 マーケター向け教育プログラムーク
Eラーニングプログラム「ジッセン!」
HRDCコンピテンシー人材育成プログラム
3 テクノロジスト向け教育プログラム
SIGNATE QUEST
4 クリエイター向け教育プログラム
OPT HRDCラーニングポータル
オンラインメディア「デジタルシフトタイムズ」
ビジネスの共同構築

特別対談
立教大学ビジネススクール教授・田中道昭が切り込む、 筆者・鉢嶺登の「思い」と「覚悟」の実像
オプトが日本企業にデジタルシフトを問う理由

あとがき

装幀 : 小口翔平 + 岩永香穂(tobufune)
本文DTP:阿部克也
編集協力:高下義弘

鉢嶺 登 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2019/9/21)、出典:出版社HP

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

GAFAが生み出した、次の10年を支配するルールがわかる

世界のTOP企業であるGAFAの強みを1企業ずつ詳しく解説した上で、影響力の大きい4企業が持つ負の側面についても触れています。GAFAについて多角的に知りたいという方におすすめの一冊です。

スコット・ギャロウェイ (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/7/27)
、出典:出版社HP

四騎士
ヨハネの黙示録の四騎士。 地上の4分の1を支配し、 剣、飢饉、悪疫、獣によって 「地上の人間を殺す権威」を与えられている。


『黙示録の四騎士』
(Four Horsemen of Apocalypse, by Viktor Vasnetsov. Painted in 1887.)

ノランとアレクに
私は視線を上げ、星を見て、疑問を持つ。
私は視線を下げ、息子たちを見て、答えを知る。
the four by Scott Galloway
Copyright © 2017 by Scott Galloway
Japanese translation published by arrangement with L2 Inc.
c/o Levine Greenberg Rostan Literary Agency through The English Agency (Japan) Ltd.

スコット・ギャロウェイ (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/7/27)
、出典:出版社HP

目次

第1章 GAFA―世界を創り変えた四騎士
ディスラプションの四騎士
四騎士のいま
1兆ドルを達成するのはどの企業なのか
対立がもたらすバランス
本書の構成
私と四騎士の関係
GAFA以後の世界は現代の必修科目だ

第2章 アマゾン―1兆ドルに最も近い巨人
狩猟と採集
消費は本能だ
小売業の歴史的
まもなく世界一裕福になる男
アマゾンの本質
ゼロサム・ゲーム
ゼロ・クリック・オーダーへの野心
ストーリーテリングで安い資本を得る
アマゾンがウォール・ストリートの「常識」を変えた
安い資本で小さく始めまくる
おとなしさには代償がともなう
「安い資本」という武器
挑戦を支えるアメリカ文化
小売りはさほど儲からない
存在感を増すAWS
運輸業への参入
最後のカギは店舗
マルチチャンネルの時代
ジェット・ドットコム
アマゾンがマルチチャンネルに参入する理由
莫大なマルチチャンネルへの投資
「アレクサ、ブランドを殺すのは誰?」
破壊者アマゾン
世界制覇
1兆ドル企業への競争
大物が負け組になる。
その他の負け組:凡人
すべての小売企業(とその社員)に希望はないのか

第3章 アップル―ジョブスという教祖を崇める宗教
ダブルスタンダード
聖と俗と
神がかったアップルの10年
より神に近く
「神」と「セックス」に近づくためのぜいたく品
最高の地域の最高の家
セクシーな戦略
超レア感
高級ブランドの5条件
高級ブランドは長生きする
アップルはテクノロジー企業ではない
最高の商売人、ジョブズ
参入障壁は越えられる
深い堀を張りめぐらす
次に来るもの
世界をへこませる

第4章 フェイスブック―人類の1/4をつなげた怪物
欲しいもの
つながることと愛すること
マーケターの楽園
フェイスブックは「気持ち悪い」
プライバシーと関連づけの冷戦
ベンジャミン・バトン経済
150回の「いいね」で、あなたは丸裸になる
最高の人材
vs.スナップチャット
スピードと順応力
2社による覇権
肩透かし
飽くなき欲望
個人情報という石油
そして社会は分断される
クリックvs.責任
プラットフォーム
人は無意識にクリックする
ユートピアかディストピアか

第5章 グーグル―全知全能で無慈悲な神
知ることはよきこと
祈り
信頼
グーグルと「グーグル以前」との違い
神を理解するのは難しい
マイノリティ・リポート
神の逆鱗
マーケティングの常識が変わった
昔の神
滅びゆく『ニューヨーク・タイムズ』
About.com
神と寝た代償
新たな神
ドント・ビー・イーヴル
グーグルが抱えるリスク

第6章 四騎士は「ペテン師」から成り上がった
ペテン1 盗みと保護
ペテン2 盗んだのではなく、ただ借りただけ
情報の値段
「引っ張り合い」を利用する
偉大なるペテンは犠牲者を欺く
法よりもイノベーション

第7章 脳・心・性器を標的にする四騎士


性器
四騎士はどこを攻めてくるのか
ビジネスの成長と生物

第8章 四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
1 商品の差別化
2 ビジョンへの投資
3 世界展開
4 好感度
5 垂直統合
6 Al
7 キャリアの箔づけになる
8 地の利

第9章 NEXT GAFA―第五の騎士は誰なのか
アリババ
テスラ
ウーバー
ウォルマート
マイクロソフト
エアビーアンドビー(Airbnb)
IBM
ベライゾン/AT&T/コムキャスト/タイム・ワーナー

第10章 GAFA「以後」の世界で生きるための武器
成功と不安定な経済
個人が成功するために必要な内面的要素
大学に行く
資格・証明
何かをなしとげた経験
都市に出よ
自分のキャリアをよく見せる
新しいものを受け入れる
株と計画
会社とは「連続的単婚」を心がける
組織ではなく人に誠実に
好きなことではなく得意なことでキャリアを築く
不満を口にしない
平均に回帰することを覚悟する
あなたのスキルを評価してくれるところへ行く
セクシーな仕事は儲けが少ない
頑強さ
助けを求める
アルファベットのどの段階にいるか
ボトックス
ロングテール・ショートテール
バランス神話
あなたは起業家向きか

第11章 少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
四騎士の目的

謝辞

図表出所

スコット・ギャロウェイ (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2018/7/27)
出典:出版社HP

BIG NINE 巨大ハイテク企業とAIが支配する人類の未来

ビッグナインのAIビジネスがよくわかる

前半では、GoogleをはじめとするビッグナインがAI開発にどのように携わってきたのかがわかります。後半では、日々進化を遂げていくAIのこれからの50年を想定した未来が描かれ、私たちがどのような行動を起こすべきかの提案がされています。

エイミー・ウェブ (著), 稲垣みどり (翻訳)
出版社 : 光文社 (2020/1/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに 手遅れになる前に

第一部 機械の中のお化け
第一章 心と機械AIの簡単な歴史
第二章 限られた人々からなるAIの種族
第三章 1000もの切り傷|AIが意図しない結果

第二部 私たちの未来
第四章 人工超知能までの道のり 警告
第五章 コンピューターの第三世代で成功する 楽観的なシナリオ
第六章 1000の切り傷とともに生きる 現実的なシナリオ
第七章 人工知能王朝 悲劇的なシナリオ

第三部 問題を解決する
第八章 小石と岩 AIの未来をよくする方法

謝辞
参考文献
原注

エイミー・ウェブ (著), 稲垣みどり (翻訳)
出版社 : 光文社 (2020/1/15)、出典:出版社HP

はじめに

手遅れになる前に
人工知能(AI=ArtificialIntelligence)は、すでに私たちの生活の中に入り込んでいるが、私たちが予想していたとおりに表舞台に登場したわけではない。AIは私たちの金融システム、送電網、小売り業のサプライチェーンなどを目立たないところで支えている。私たちが移動するときに道案内をし、打ち間違った単語を解読し、何を買い、聴き、観て、読めばいいのかを教えてくれる。いわば、目には見えない生活基盤だ。健康、医療、農業、交通、スポーツ、さらには恋愛やセックスや死など、いまやあらゆる場面にかかわっている。そういう意味でAIは、私たちの未来を形づくるテクノロジーだといえる。

AIは、テクノロジーにおける単なるトレンドや流行語でもなければ、一時的な娯楽でもない。AIはコンピューターの第三世代のテクノロジーだ。私たちは大きな変化のただ中にいる。その状況は産業革命の時代を生きた人々の状況と似ていなくもない。最初は誰も変化に気づかなかった。認識できないほど少しずつ変化していたからだ。だが最終的に、世界は様変わりした。次の世紀の道筋を形づくるのに十分な産業、軍事、政治資本を持つイギリスとアメリカが世界の二大勢力になったのである。

誰もがAIについて、私たちの未来にどんな影響を及ぼすのかを議論している。「ロボットに仕事を奪われる」「ロボットが経済を一変させる」「しまいにはロボットが人を殺しはじめる」といった説を耳にしたことがある人も多いだろう。「ロボット」を「機械」に置き換えれば、二〇〇年前に人々が話していたことと変わらなくなる。AIについて考えるとき、私たちは『2001年宇宙の旅』のHAL9000や、「ウォー・ゲーム」のウォーパー、『ターミネーター』のスカイネット、「宇宙家族ジェットソン』のロジー【訳注/アメリカ・カナダのアニメ。ロジーはメイドロボット】、『ウエストワールド」のドロレス【訳注/アメリカ西部開拓時代を再現したテーマパークを舞台とするドラマに登場するロボット】といった、大衆文化に見られる擬人化されたAIを連想しがちだ。AIを取り巻く生態系の内部で仕事をしている一部の人々以外は、誤った根拠のせいで、未来を夢のような世界――あるいは恐ろしい世界――だと思ってしまうかもしれない。

日頃からAIの研究や発展にかかわっている人でないと、未来を予測するのに必要なサインに気づくことはできない。そのため一般の人々は、映画で観た「ロボットが支配する世界」を引き合いに出してAIを語るか、反対に、きわめて楽観的な未来を思い描くかのどちらかになる。このような極端な見方は、AIの創成期からいわれてきた問題の一つである。AIの能力について過大な期待を寄せる人もいれば、制御不能な武器になるのではないかと危惧する人もいる。私がこの問題について多少なりとも詳しいとするなら、それは、過去一〇年間にわたって、AIの研究とその生態系内外の組織にいる人たちと過ごしてきたからだ。

私は、マイクロソフトやIBMをはじめとする数々の企業に助言し、AIとは直接関係のない組織の人たちとも何度も会ってきた。ベンチャー投資家やプライベート・エクイティ【訳注/未上場企業の株式】投資家、国防総省や国務省内のリーダー、それに規則をつくることが前進の唯一の道だと考えている立法者といった人たちだ。さらに私は、学術研究者や技術者たちと何百回もミーティングを重ねてきた。そこからわかったのは、AIに直接かかわる仕事をしている人たちは、ニュースでよく見聞きするような極端な考え方は持っていないということだ。

他の分野の研究者もそうだが、実際にAIの未来をつくっている人たちは未来への過度の期待をやわらげようという意識を持っている。彼らは忍耐、時間、費用、順応力とともにコツコツと複雑な問題に懸命に取り組んでいる(もちろんなかなか前に進まないことも多いが)。そのことを、私たちは忘れがちである。みな、頭がよく、世知に長け、思いやり深そうな人ばかりだ。

こうした研究者のほとんどは、米国のグーグル、アマゾン、アップル、IBM、マイクロソフト、フェイスブック、中国のバイドゥ、アリババ、テンセントといったテクノロジー関連の九つの巨大企業で働いている。いずれもAIをつくり、私たちを明るい未来へと導いてくれる企業であり、これらの企業のリーダーたちは、自分の利益のためではなく、大義のために働いていると私は信じている。彼らは、AIがヘルスケアや長寿に貢献し、差し迫った気候変動の問題を解決し、何百万もの人を貧困から救う可能性を見据えている。実際にこうした企業の仕事は、さまざまな業界で、さらには日常生活において目に見える効果を発揮している。

問題は、これらの九つの企業、ひいてはAI分野で働いている人たちにかかる外部からの圧力だ。その圧力が、私たちの未来をよりよいものにしようとする彼らの意志をくじいている。その責任はさまざまなところにある。アメリカでは、市場における絶え間ない需要の増大や、新しい製品やサービスに対する非現実的な要求によって、長期的な計画が成り立ちにくくなっているのも事実だ。私たちは、まるで研究開発の大躍進を事前に計画できるといわんばかりに、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック、マイクロソフト、IBMは年次会議でAIの新製品に関する重大な発表をしてくれるだろうと期待している。前年よりも優れた商品が発表されなければ、あたかもその企業が失敗をしたかのようなレッテルを貼り、あるいは、AIはもうおしまいなのだろうかと不安になる。さらに、その企業のリーダーシップまで疑ってしまう。企業はいつでも、定期的に私たちを感嘆させてくれるものと思い込んでいるからだ。

じっくりと研究に取り組む時間を与えていないにもかかわらず、数カ月間公式な発表がないだけで、私たちはその企業が何か世間を動揺させるような秘密の研究を進めているのではないかと勘ぐってしまう。アメリカ政府は、AIについても、私たちの長期的な未来に対しても、壮大な計画を持っているわけではない。政府内部の組織力を高め、国際的な協力体制を強化し、将来的に起こりうる戦争に向けて軍事組織を構築するといった国家戦略が優先され、AIはめまぐるしく変化する政治の犠牲となってきた。AIの研究開発は気まぐれな商業セクターやウォール街にゆだねられ、アメリカ政府はAIを、新たな仕事を生み出し、発展の機会を与えてくれるものとは捉えずに、AIによって技術分野での失業が広がることばかりを心配してきたのだ。そして、国内のテクノロジー系大企業に非難の目を向け、戦略的な計画を立てる政府の中枢に企業が参加するのを許してこなかった。つまり、AIの開拓者たちは、私たち市民や学校、病院、都市、企業と信頼関係を築くために、互いに競争するしかなかったのだ。

現在のアメリカは、未来が見通せないという悲劇的な状況にある。第一に、「いまが大切」と考え、数年先のことしか見据えていない。テクノロジーの進歩は歓迎するが、その先の発展や自分たちの行動の結果にまでは責任を持とうとしていない。だからこそ、AIの今後の発展を六つの企業にゆだねているのである。だがその六社は目覚ましい成果を上げているものの、その利益の追求は必ずしも私たち個人の自由や民主的な理想とは一致しない。一方、中国では、AIの発展の道は政府の壮大な野心に握られている。中国はAIの覇権国家となるべく着々と土台を固めており、二〇一七年七月には、二〇三〇年までにAIのグローバル・リーダーになる計画を打ち出した。二〇三〇年の国内AI産業額を少なくとも一五〇〇億ドルと見積もり、政府系投資ファンドの一部を新しい研究所やスタートアップ企業、さらには次世代のAIに長けた人材を育成するための学校に投資するという。

二〇一七年一〇月、習近平国家主席は数千人を前に行った長い演説の中で、AIとビッグデータに関する計画を明らかにし、AIによって中国は世界有数の先進国へと進化を遂げるだろう、と述べた。すでに中国の経済規模は三〇年前の三〇倍に拡大している。バイドゥ、テンセント、アリババは株式公開会社ではあるが、中国企業の常として、中国政府の意向に従わなければならない。中国の一四億もの人口、すなわち一四億人分のデータは、AI時代における最大かつ最重要な天然資源といえる。アルゴリズムのパターン認識の精度を高めるには、膨大な量のデータが必要だ。そのため中国の投資家はメグビー(Megvii)やセンスタイム(SenseTime)といった顔認識システムに関心を持ち、市民が電話をかけたり、オンラインで買い物をしたり、ソーシャル・ネットワーク・サービスに写真を投稿したりするたびに生み出すデータは、バイドゥやアリババやテンセントが優秀なAIシステムを構築するのに役立っている。これこそが中国の強みといえるだろう。アメリカでは進歩の速度を落とすことになりかねないセキュリティーやプライバシーの制限が、中国には存在しないのだ。

私たちは、AIの発展の道筋を、中国政府が将来に対していかに壮大な計画を立てているかを加味して考えなければならない。二〇一八年四月、習近平国家主席は中国を国際的な「サイバー超大国」にするというビジョンを語り、中国の国営通信社である新華社通信はこのスピーチの一部を配信した。それによると、新たなサイバー空間の統制ネットワークとインターネットは「ポジティブな情報を広め、正しい政治の方向性を守り、一般の意見や価値観を正しい方向に導く」という。中国が従わせようとしている権威主義的なルールは、西洋で大切にされている言論の自由や市場主導の経済、権力分立とは無縁である。

中国国内で発生する情報をすべて掌握し、住民のデータや戦略的パートナーのデータを監視しようとする法令にはAIが組み込まれている。たとえば、外国籍企業は中国国民のデータを中国国内のサーバーに保存することが義務づけられており、そうすることで治安当局は個人データに自由にアクセスができる。また、「ポリス・クラウド」は特定の人々を監視し、追跡するよう設計されているが、対象となるのは精神的に問題を抱えている人、政府を公に批判した人、それにウイグルというイスラム教徒の少数民族だ。二〇一八年八月の国連の発表によると、中国西部にある未公表の収容所に何百人ものウイグル人が収容されているとの報告があったという。中国の「一体化統合作戦プラットフォーム(IJOP)」は、AIを利用してパターンから外れたものを見つけだす。たとえば、請求書の支払いが遅れたときにはただちにAIが察知し、不正を働かせないようにする。

AIを利用した「社会信用システム(ソーシャル・クレジット・システム)」は、このような問題のない社会を目指して開発されたものだ。よい行いをしたら加点、交通違反切符を切られたら減点、といった具合に市民はさまざまなデータポイントで評価される。点数が低い人は、仕事を探すにしても、家を買うにしても、子どもを学校に入学させるにしても、困難にぶつかる。高得点の市民の顔が公開される都市もある。一方、山東などの都市では、交通規則や信号を無視して道路を横断した市民の顔がデジタル掲示板に公開され、そのデータは自動的にウェイボー(中国で人気のソーシャル・ネットワーク・サービス)に送られる。

あまりにも現実離れしていると感じるかもしれないが、中国はかつて一人っ子政策を導入して社会を変えようとした国だということを思い出せば、ありえない話ではない。こうした政策は、習近平国家主席の側近たちが考え出したものである。彼らはこの一〇年間で中国という国のイメージを変え、支配的なグローバル国家として生まれ変わらせることに専念してきた。現在の中国は、毛沢東が台頭していた時代以降でもっとも権威主義的だといえる。そして、その目的のために積極的にAIが活用されている。「一帯一路」というのは、かつてのシルクロードのように、中国とヨーロッパを中東とアフリカ経由でつなぐルートの広大なインフラストラクチャー計画である。

単に橋や高速道路をつくろうというのではない。監視技術を輸出し、その過程でデータを集める「グローバル・エネルギー・インターコネクション」は、自分たちで管理できる世界初の電力供給網を整備することを目指す計画だ。中国はすでに新種の高電圧ケーブルを開発しているという。この技術を用いて西方の地域から上海まで電力を運び、さらには近隣諸国の電力提供者になろうとしている。こうした計画は、長い時間をかけてじわじわと国の力を強めていくのに最適である。二〇一八年三月、中国の全国人民代表大会は、国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正案を採択した。これにより、習近平は生涯にわたって国家主席の座を保持できることになった。

彼の最終目的ははっきりしている。新たな世界秩序をつくり、その事実上のリーダーを中国が務めるというものだ。中国がその実現に向けて外交政策を推し進めているあいだ、アメリカは長年の国際協力や取り決めに背を向け、トランプ大統領は新たな竹のカーテン【訳注/とくに一九五〇年~一九六〇年代の中国と他国とのあいだの政治・軍事・思想的障壁】を構築した。AIの未来は現在、二つの道に分かれて進んでいて、そのどちらもが、必ずしも人類にとって最善の道とはいえない。中国のAI推進は習近平国家主席が率いる新たな世界秩序計画の一部となる一方で、アメリカでは、市場原理や消費者主義がAIの主な推進力となっている。この二つの道は、私たちが見逃している重大なポイントだ。それを明らかにすることがAIの問題を考えるうえで重要であり、本書の目的でもある。

先ほど言及した九つの企業は、機械に秘められた暗号を解き、人間と同じように思考できるシステムを構築するという崇高なゴールを目指しているのかもしれない。だがそれは、人類に取り返しのつかない害を及ぼす恐れがある。AIは根本的にポジティブな力だと、私は信じている。そして、次世代の人たちが理想的な未来を実現するのに役立つ、とも。

とはいえ、私は現実主義者だ。誰もが知っているとおり、どんなによい人でもうっかり他人に害を及ぼしてしまうことがある。テクノロジー、とくにAIに関しては、常に意図された「正しい使い方」と意図されていない「誤った使い方」を想定しておかなければならない。なぜそのことが現在、そして近い将来において重要なのかというと、世界経済や労働力、農業、運輸、銀行、環境モニタリング、教育、軍事、国家安全保障など、すでにすべてのことにAIがかかわっているからだ。このままアメリカと中国が現在の開発の道を進んでいけば、二〇六九年は二〇一九年とはだいぶ様相が変わっているはずである。社会構造や社会制度がAIに頼るようになればなるほど、私たちのためになされている決定が、私たちだけではなく機械にとっても都合がいいということがわかってくる。

技術的にも地政学的にも、AIの発展は重大な段階をいくつか通り過ぎようとしているが、AIが進歩を遂げるにつれて私たちの目には見えなくなってきている。データがどのように集められてふるいにかけられているかは曖昧であり、自律システムがどのように判断をしているのかもわかりにくくなっている。つまり私たちは現在、日常生活にAIがどのように影響を及ぼしているのかを理解できていないまま、この先何年も、あるいは何十年にもわたる急速なAIの発展を迎え入れようとしている。

AIの現状の歩みを見ていくことによって、AIに関する理解を深めてもらうのが本書の目的だ。人工知能についてわかりやすく伝えることによって、将来に備えて読者のみなさんにより多くの知識を持っていただきたいと思っている。手遅れになる前に、AIが存在する未来を明確にすることで、みなさんの個人的な生活にAIが関係していると実感してほしい。私たちは、文字どおり実存的危機に直面している。AIが出現して以降、誰もが根本的な疑問を呈してこなかった。少数の人たちがみんなのためという名目でつくったシステムに力を持たせると社会はどうなるのか?その判断に市場の力や野心的な政党のバイアスがかかっていたとしたらどうなるのか?

その答えは、アクセスの拒否、社会の慣習や経済のルール、他人とのコミュニケーションといった観点での私たちの未来にも反映される。本書は、AIについて一般的な議論をするものではない。よりよい未来のための警告であり、青写真だ。アメリカが長期的な計画を避けている状況に疑問を呈し、企業や学校、政府内でのAIに対する準備不足を取り上げ、中国の地政学、経済、外交戦略を浮き彫りにし、中国が新世界秩序の構築という壮大なビジョンに向けて歩む様子を明らかにする。この先を読んでいただくとわかるが、私たちの未来には英雄が必要なのだ。難しい状況下での勇敢なリーダーシップが求められる。

本書の第一部では、AIとは何か、「ビッグ・ナイン(九つの巨大企業)」がその開発にどう携わってきたかについて見ていき、アメリカの六社と中国三社(バイドゥ、アリババ、テンセント)についてさらに詳述する。第二部では、特化型人工知能、汎用人工知能、スーパーインテリジェンスと進化を遂げていくAIのこれからの五〇年を想定した未来の姿を描いていく。楽観的なもの、現実的なもの、悲劇的なもの、という三つのシナリオを用意した。シナリオはデータをもとにしたシリアスなものであり、AIがどのような進化を遂げうるか、その結果、私たちの生活がどのように変わりうるのかを垣間見ることができるだろう。第三部では、それぞれのシナリオに出てくる問題に対する解決案、今から準備できる案を提供し、私たちが行動を起こせるよう、具体策を提案する。

誰もが、人工知能の未来に対して大切な役割を果たすことができる。AIに関する決断は、たとえそれが些細な決断であっても人類の歴史を永久に変えてしまう恐れがある。利他的な志のもとで希望に満ちて設計されたはずのAIシステムが、もしかしたら、いつのまにか人類に破滅をもたらす存在になっていることに気がつくかもしれない。だが、そうでなくてもいい。とにかくページをめくってほしい。次はどうなるのか、ただぼんやりと思い描いている場合ではない。AIはすでに目の前に存在している。

エイミー・ウェブ (著), 稲垣みどり (翻訳)
出版社 : 光文社 (2020/1/15)、出典:出版社HP

業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち

「業界破壊企業」とは何か

業務破壊企業とは、斬新なビジネスモデルやテクノロジーを市場に持ち込み、劇的なスピードで顧客を獲得している企業のことです。本書では、イノベーティブな企業がピックアップされています。また、様々な業界でどのような現象が起こっているのかがわかります。

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP

はじめに

今、世の中では「イノベーション」という言葉をさかんに耳にします。「イノベーション」とは、「新しい技術やアイデアで、社会に新しい価値をもたらす変革」のこと。今や、どんな業界でも、どんな組織でも、あらゆる場所で「イノベーション」が求められる時代になりました。では、あなたは、世界で「どんなイノベーションが起こっているのか」について、どれくらいご存じでしょうか。

じつは今、世界では独自のアイデアやテクノロジーで、業界の勢力図を一変させているイノベーション企業が続々と登場しています。よく知られたところでいえばAirbnb(エアビーアンドビー)。サンフランシスコで生まれたこのビジネスは、「安くてユニークな旅行体験をしたい」という人と、「空いた空間で手軽に稼ぎたい」という人をマッチングするというアイデアひとつで、世界中に広がるビッグビジネスへと成長しました。発想自体は単純なのですが、これこそイノベーション。革新的なアイデアやビジネスモデルを知ると、それだけでワクワクしますし、楽しくなります。そんなユニークなアイデアで急成長を遂げているイノベーション企業の世界ランキングを、アメリカNBC系のニュース専用放送局CNBCが毎年発表しています。その名も、「ディスラプター8」。

そもそも「ディスラプト(disrupt)」とは「破壊する」という意味なので、ディスラプターを直訳すると「破壊者」となりますが、近年では、さまざまなイノベーションによって業界の勢力図を一変させてしまう新興企業やプレイヤーのことを「ディスラプター」と呼ぶようになりました。
本書のタイトルには、「業界破壊企業」とありますが、「破壊者」というより「革新者」というイメージに近いかもしれません。ニュース専用放送局CNBCは、そんな業界のディスラプターを毎年8社選出し、発表しているのです。

本書では、最近の「ディスラプター8」のなかから、とりわけユニークで、革新的なビジネスを展開している企業を3社ほど選び出し、ビジネスの着眼点から創業者の思い、業界独特のバックグラウンドや企業成長のストーリーなどを踏まえながら紹介していきます。「世界のいろんなイノベーション企業を、一気に、ざっくりと知りたい」という人にはまさにぴったりです。ぜひカタログ的に楽しんで、ビジネスの参考にしてください。

・基本的な「ビジネスパターン」を知ると世界が見えてくる
さらに、もう少し「イノベーションについて深く学びたい」という人のために、「ディスラプター6」で紹介している企業を取り上げつつ、ビジネスの特徴や基本パターン、イノベーションの作り方などについても詳しく解説を加えました。

単に「いろんな企業について知る」だけでなく、基本的なビジネスモデルやそのパターンを知っておくと、「なぜ、そのビジネスがうまくいくのか」「どんな考えや理論をもとに、ビジネスを展開しているのか」というカラクリが見えてきます。イノベーションと一言でいっても、単に奇抜なアイデアだけでビジネスをしているわけではないのです。こうした「ビジネスの勘所」を押さえながら読んでいくと、より深くイノベーションというものがわかってきますし、もう一段深い楽しみ方ができるはずです。「それと同時に、本書では所々でさまざまな「ビジネス理論」や「ビジネス用語」をちりばめながら説明していきます。

最近のトレンドでいえば、「サブスクリプション」や「サステナビリティ」。あるいは、「垂直統合」「水平統合」などのビジネスパターンについて。さらには、「無消費の考え方」「ジョブ理論」「リーンスタートアップ」などです。こうした用語や理論を知っている人はもちろん、「まったく聞いたことがない」という人にもわかりやすい解説を加えながら、実際の起業ストーリーに照らし合わせて話を進めていきます。用語や理論を、わざわざ取り出して解説するのではなく、あくまでもユニークなディスラプターを紹介するなかに盛り込んでいくので、すっきりと理解していただけると思います。

・成功と地獄を体験した「ジェットコースター」のような人生
さて、ここで少しだけ私の自己紹介をしておきたいと思います。私は現在、株式会社ループス・コミュニケーションズという「ソーシャルメディア活用とイノベーション創出」を核としたコンサルティング会社を経営しながら、大前研一さんが学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学の専任教授として「イノベーション」をテーマに講義を行っています。_2020年の3月までは、学習院大学で4年間、特別客員教授として「起業論」「インキュベーション塾」「企業経営とソーシャルキャピタル」などの講義を通じて、文字通り「起業のリアル」と最近の起業メソッドについて教えてきました。

教壇に立ち、学生たちに伝えてきた「起業のリアル」とは、私の人生そのものです。大学卒業後、IBMに入社した私は、29歳で会社を飛び出して、1991年に初めての起業をしました。ほとんど勢いだけでベンチャーの世界に飛び込んだわけですが、1年後には月商1億円に達し、ドットコムバブル時代にはインテルやメリルリンチなど世界的な企業から約30億円を資金調達、未上場ながら時価総額100億円を超えるまでに急成長しました。

・個人で3億円の借金を背負い、目覚めたこと
しかし、人生も、ビジネスも、甘い面だけではありません。「成功の裏側にあった現実は、蟻地獄のような借金、脅しまがいのクレーム、銀行の貸しはがし、資金ショートの綱渡りなど、先の見えないつらい日々でした。0歳のときには、自分で創業した会社を追われ、個人で3億円の借金を背負いました。そして大手銀行には訴えられ、家族や両親と住む自宅も競売にかけられました。そんな逆境続きのなかでも諦めずに新しい事業を起こし続け、ついには「人を幸せにするイノベーションを創出する」という起業家の使命に目覚めたことで、経営に対する確信を得られました。

また、30年近い連続起業の経験を踏まえて、さまざまな教育の場で「起業」や「イノベーション」についてお話しする機会に恵まれるようにもなりました。昇っては落ち、落ちては昇りを繰り返した、ジェットコースターのような人生です。そんな成功と失敗を実体験してきたからこそ「起業のリアル」を語ることができ、本書で取り上げる業界破壊企業についても、そのビジネスの本質をお伝えすることができると自負しています。そして本書の最後には、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としてさまざまな境遇をくぐり抜け、私がようやくたどり着いた、「ハッピーイノベーション」という新しい起業スタイルについてもお伝えします。

今という時代に求められるのは、「利益や規模、独占を目指したメガイノベーション」を超えて、「規模の大小にかかわらず、人々の幸せの連鎖を生み出すイノベーション」が大切になるのではないか。そんなお話です。カタログ的に「ディスラプター」のアイデアやビジネスモデルを楽しむもよし。「イノベーション」や「起業」に関するさまざまな理論や事業の作り方を学ぶもよし。スタートアップと投資家の関係を通じて、時代の空気を感じ取るもよし。私たちは大きな変革期を迎え、ビジネスを取り巻く環境も日々変わり続けています。本書はそんな「今」を感じることができる一冊として仕上げました。ぜひ、楽しみながら、最新の世界の息吹を感じながらお読みください。

斉藤徹

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 イノベーションが私たちの「業界」を破壊する
ソニーのイノベーション、ユニクロのイノベーション
「直接つなぐ」がイノベーションのキーワード
「Uber」は価格破壊型、「Airbnb」は価値創造型
プラットフォーム型ビジネスの「難しさ」とは?
インスタグラム×アマゾンという発想
ビジネスモデルを「四つの視点」で眺めてみる
「面倒だな」と思うことがビジネスチャンスになる
「無料サービス」はマネタイズポイントに注目しよう
サブスクは「アイデア×交渉力」の時代へ
ひとつのテクノロジーが「世界のあり方」を変える

第2章 プラットフォームによる業界破壊企業
住宅のリフォーム・プラットフォーム
成功のポイントは「小さく始める」こと
P2Pレンディングによる学生ローン
「母校の後輩を支援する」というストーリーで共感を集める
トラック輸送のマッチング。
オンライン宅配
オンライン宅配市場は8億ドル規模
プラットフォームに責任はあるか?
不動産のオンライン買取販売
不動産、即、買い取ります
30日住んでみて、気に入らなければキャッシュバック

第3章 ビジネスモデルによる業界破壊企業
オンライン教育
インターネットが広げた講義の可能性。
ハーバードやスタンフォードよりも人気の「ミネルバ大学」
不妊治療サービス
企業の急成長を支えたアメリカの社会と文化
在宅フィットネス
自宅にいながらでも「スタジオのライブ感」を演出する
「何でも自分たちでやってしまう」というビジネス戦略
女性向け投資顧問
男と女では「投資に対するイメージ」がまるで違う
メッセージとストーリーによってビジネスが広がる
スキル、お金、アクセス、時間の「無消費」を探せ
女性の生理用ショーツの販売
「生理の貧困」という社会問題に向き合う
オンライン寝具の販売
「顧客のジョブ」に着目するからビジネスが成功する
SNSで「眠りに関するコミュニティ」を作る
手数料なしの株式売買サービス
感覚的に株の売買ができるシンプルなアプリ
二つの収益源だけでサービスを維持できるのか
第三の収益源は「顧客の売買データ」
糖尿病のオンライン診察
診断は医師が、生活習慣の改善はコーチがサポートする
テクノロジーによってコストダウンを図っていく
まだまだ多くの可能性を秘める「健康促進ビジネス」

第4章 テクノロジーによる業界破壊企業
微生物による農業効率化
微生物を使ったまったく新しい農業技術のイノベーション
新しいテクノロジーを導入しやすいしくみを作る
微生物のガス発酵技術
地中から掘り出した資源を何度も再利用する
三井物産、全日空ら日本企業とも提携
「自ら作る」ではなく「ライセンスを売る」というビジネスモデル
食品コーティング
コーティング剤で世界の食糧問題を解決する
たったひとつのテクノロジーがさまざまな問題を解決する
半導体による冷却機器製造
半導体を使って冷蔵庫を作る?
製造コストという壁をどう乗り越えるのか?
植物を使った人工肉製造
世界の温室効果ガスの約20パーセントは畜産関連から
「食の安全」とどう向き合っていくか
セキュリティ検査ハッカーに「あえて攻撃させる」ことで脆弱性を把握する
参加するハッカーの選別には細心の注意を払う
アメリカ国防総省やアメリカ国税庁でも導入

第5章 起業は、小さく始める、かしこく学ぶ
創業者の4割以上が、ミレニアル世代という衝撃
ミレニアル世代を意識したCasperの戦略
暴力でもなく、富でもなく、知識でもなく
「共感」こそがもっとも大切なビジネスリソースとなる
ミレニアル世代のライフスタイルがマーケットを変える
「サステナブル」がイノベーションを生み出す
共感を集めるためにも「サステナブル」が欠かせない
「リーンスタートアップ」=無駄を省いて起業する
お金をかけず「小さな仮説・検証」を繰り返す
最初は「とりあえず始めてみた」というノリでいい
投資家たちが熱狂した「ドットコムバブル」と、その時代
世界の投資をリードする孫正義というキーパーソン
投資家たちは「ビジネススピード」を見る

第6章 「ハッピーイノベーション」で不穏な時代を乗り越える
シェアワークスペース
We Workによって見えてきた「終わりの始まり」
We Work、Uber、そして新型コロナウイルス・ショック
ハッピーイノベーション=幸せの連鎖を生むサステナブルな起業
まだお金がほしい?もっと称賛されたい?
恵まれない子どもたちに「教育の機会」を提供する
ドローンによる無人配送
「思い」と「イノベーション」のかけ合わせによって幸せな社会を作る
働く人もお客さんも笑顔になる、「注文をまちがえる料理店」
なぜ今、幸せ視点に価値観がシフトしているのか
コロナショックは、時計の針を加速させる
1996年以降に生まれた「ソーシャルネイティブ」たち
ハッピーイノベーションを創り出す、新しい起業のプロセス
「お金のチカラ」から「人のチカラ」の時代に
ハッピーイノベーションが私たちの生活の基盤になる

あとがき

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP